説明

近接センサ付きトラックボール、トラックボール用近接センサおよびそのアンテナ

【課題】 トラックボールの誤動作・誤作動を、操作性を損なうことなく有効に防止することのできる、近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサを提供すること。
【解決手段】 近接センサ付きトラックボール10は、ボールB周囲において予め設定された範囲内への操作者身体Hの進入やボールBへの接触を検知するための近接センサ1と、近接センサ1により検知された信号に基づいてのみボールB回転に伴う移動量の位置指示情報への変換処理を行う位置指示情報変換部5とを備えてなり、近接センサ1は、身体H進入や接触による静電容量変化の発生が可能な板状のアンテナ2と、アンテナ2において発生する信号を処理する演算処理部3とを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサ等に係り、特にトラックボールの誤動作・誤作動を、操作性を損なうことなく有効に防止することのできる、近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサ等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックボールは、医療機器、アミューズメント、FA分野等を主として従来から広く用いられている、ボールが回転する移動量を定量的に出力するポインティングデバイスである。トラックボールにおいては、ボールに操作者の手が接触しない状態においては位置指示がなされていないのであるから、当然ながらボールはその位置を維持、すなわち静止していなければならない。
【0003】
しかし、振動や音響の影響を受けてボールが勝手に移動してしまう現象が発生し、操作者による位置指示がなされていないのに装置上において位置指示用のポインタが移動してしまう場合がある。従来は、ボール抑えを用いたり、ボールの接触摩擦力を上げることによって、振動などによってボールが容易に動かないようにして、かかる問題に対処してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表平9−511086号公報「多入力近接検出器およびタッチパッドシステム」
【特許文献2】特開平1−184571号公報「ディスプレイ消費電力制御機能付きコンピュータおよびディスプレイ消費電力制御方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、上述したように、接触摩擦力を上げることによってボールの移動を抑制し、ボールおよびそれに連動する表示装置上のポインタの位置が勝手に移動してしまうことは防止できるようになる。しかしながら摩擦力を上げた分、ボールに対して大きな操作力が必要となる上、扱いの観点からは感触が低下してしまう。また、摩擦力を一定に保持制御することは、管理の面でも相当の負担を要するものだった。
【0006】
他方、トラックボール同様ポインティングデバイスであるタッチパッドには、静電容量方式が主として用いられている。前掲特許文献1もコンピュータにタッチパッドを用いた一例であり、静電容量的作用により動作し、適当な誘電媒体を通して操作可能であり、モニタ画面と結合してコンピュータインタフェースとして使用するための構成が開示されているものである。
【0007】
また特許文献2には、コンピュータにおいて、キーボードに人が近づいたか否かを静電容量で検出し、電源の切断を制御するものであり、特に静電容量により人の手の接触の有無によって制御するという技術である。
【0008】
このような静電容量方式をトラックボールにも利用して、上述した不操作時におけるボールの不用意な移動と、それによる位置指示操作上の不便・不都合とを防止できればよいのだが、そのような技術は未だに提案されたことがない。また、タッチパッドやタッチパネルのように、あるいはマイクロコンピュータ(マイコン)のように、基板表面にパターンを設けて、パターンへの指等の接触による静電容量検出を行う構成という従来の構成は、トラックボールには使用できない。なぜならば、ボールの動作および操作の都合上、ボール上にパターンを形成することができないからである。
【0009】
さらに、ボールの物理的な移動を、コンピュータ等装置の表示画面上における移動および位置指示へと反映させるか否か、すなわちポインティングデバイスとして機能させるか否かの切り替えが、ボールへの指等の接触の有無によってなされる構成は、決して充分に望ましいものとはいえない。なぜならば、トラックボールのボールは、それ自体は物理的な移動・位置変化のない静止したタッチパッド等とは異なり、それ自体が自由かつ滑らかに回転移動する動的なものだからである。
【0010】
つまり、指等がボールに掛かる時点では既に、円滑な位置指示ができる状態になっていることが望ましく、そのためには、手・指が触れる前に切り替えが為される方式であることが必要である。しかしながら、かかる方式を提案した例、実現した例は認められない。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術の問題点を除き、トラックボールの誤動作・誤作動を、操作性を損なうことなく有効に防止することのできる、近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサを提供することである。すなわち、不操作時におけるボールの不用意な移動と、それによる位置指示操作上の不便・不都合とを有効に防止できる、近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサ等を提供することである。
【0012】
また、上記課題解決のために静電容量方式を利用するにあたり、トラックボールのボール上にパターンを形成することなく当該方式を利用可能な近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサ等を提供することも、本発明の課題である。
【0013】
さらにまた、本発明の課題は、指等がボールに触れる前に、切り替えが為され得る構成とすること、つまり、ボールの移動をコンピュータ等装置の表示画面上におけるポインタやカーソルの移動および位置指示へと反映させるか否か、換言すればポインティングデバイスとして機能させるか否かの切り替えを、ボールへの指等の接触の有無に関わらず可能とする、近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサ等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明者は上記課題について検討した結果、静電容量方式を用い、ボール上のパターン形成ではなく、同様機能を備えたアンテナをボールの近傍に設ける構成とすることにより課題を解決できることに想到し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される発明、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0015】
(1) ボール周囲において予め設定された範囲内への操作者身体の進入や該ボールへの接触を検知するための近接センサと、該近接センサにより検知された信号に基づいてのみ、ボール回転に伴う移動量の位置指示情報への変換処理を行う位置指示情報変換部と、を備えてなる近接センサ付きトラックボールであって、該近接センサは、上記身体進入や接触による静電容量変化の発生が可能な板状のアンテナと、該アンテナにおいて発生する信号を処理する演算処理部とを備えてなる、近接センサ付きトラックボール。
(2) 前記アンテナは、トラックボールのボール以外の部分に設けられていることを特徴とする、(1)に記載の近接センサ付きトラックボール。
(3) 前記アンテナは、トラックボールのケース上面に設けられていることを特徴とする、(1)に記載の近接センサ付きトラックボール。
(4) 前記アンテナは、前記ケース上面全周に亘って設けられた環状の形状であることを特徴とする、(3)に記載の近接センサ付きトラックボール。
【0016】
(5) 前記近接センサは、前記ボールと操作者身体との距離に基づき前記進入や接触の検知を行うことを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の近接センサ付きトラックボール。
(6) トラックボールのボール周囲において予め設定された範囲内への操作者身体の進入や該ボールへの接触を検知するためのトラックボール用近接センサであって、上記身体進入や接触による静電容量変化の発生が可能な板状のアンテナと、該アンテナにおいて発生する信号を処理する演算処理部とからなる、トラックボール用近接センサ。
(7) 前記アンテナは環状であり、トラックボールのケース上面に設置可能な形状に形成されていることを特徴とする、(6)に記載のトラックボール用近接センサ。
【0017】
(8) 前記ボールと操作者身体との距離に基づき前記進入や接触の検知を行うことを特徴とする、(6)または(7)に記載のトラックボール用近接センサ。
(9) トラックボールのボール周囲において予め設定された範囲内への操作者身体の進入や該ボールへの接触を検知するためのトラックボール用近接センサに用いるアンテナであって、上記身体進入や接触による静電容量変化の発生が可能な材料により板状に形成されている、近接センサ用アンテナ。
【0018】
静電容量により検出し、人の手・指のタッチの有無によってポインティングデバイスの動きと実際の位置指示との接続を制御するという方式は従来、トラックボールにおいては存在しない。しかも本発明は、手・指によるボールとの接触がなくても、予め設定された所定の空間範囲内に手・指が入る(入っている)か否かによって、つまり、「接触」ではなく「接近」の検出の有無によって、接続がON/OFF切り替えされるというものであり、かかる機能を実現するために、ボール上へのパターン形成ではなく、近傍へのアンテナ設置という構成に想到したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサ等は上述のように構成されるため、これによれば、トラックボールの誤動作・誤作動を、操作性を損なうことなく有効に防止することができる。すなわち、不操作時におけるボールの不用意な移動と、それによる位置指示操作上の不便・不都合とを有効に防止することができる。
【0020】
また本発明によれば、静電容量方式を利用しつつも、トラックボールのボール上にパターンを形成する必要がないため、ボールの動作および操作上の不都合を生じることなく、トラックボールの誤動作・誤作動を防止することができる。
【0021】
さらにまた本発明によれば、ボールの移動をコンピュータ等装置の表示画面上におけるポインタやカーソルの移動および位置指示へと反映させるか否か、つまりポインティングデバイスとして機能させるか否かの切り替えを、ボールへの指等の接触を必要とすることなく円滑に実現でき、指等がボールに触れる時点では既に切り替えがなされているため、快適な操作性を実現することにもなる。
【0022】
本願発明の近接センサ方式では摩擦力は全く関係がない。つまり、「接触」ではなく「接近(近接)」を検出する構成であることにより、トラックボールの誤動作を非接触で防止することができる。したがって、ボールが手に触れているかもしくは近くにある状態でのみ出力するように構成されることにより、たとえば振動が多いとか、スピーカの前に設置されるといったトラックボールの設置環境に何ら左右されることなく、操作性良好に使用することができる。つまり本願発明によれば、従来の軽微警戒な操作力・快適な操作性や感触はそのまま維持しながら、振動等による誤動作を有効に防止することができる。
【0023】
たとえば、トラックボールがスピーカ前の設置や振動がある装置に設置される場合には従来、振動等によるボールの移動によって勝手に表示画面上のポインタやカーソルが動いしてしまうという問題があったが、本願発明によれば上述の通り、ボールの操作性等を何ら損なうことなく、手が触れてボールを動かしている時だけ移動量の出力(位置指示)を機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明近接センサ付きトラックボールの基本構成を示す説明図である。
【図2A】本発明板状アンテナの実施例を示す写真図である。
【図2B】本発明近接センサ付きトラックボールの実施例のアンテナを主とした要部構成を示す写真図である。
【図3】本発明のトラックボール用近接センサの基本構成を示す説明図である。
【図4】図2A等に示した本発明実施例における近接センサ用アンテナを示す写真図である。
【図5】本発明実施例に係るトラックボールの外観仕様を示す正投影図であり、(a)は平面図、(b)〜(d)は各側面図、(e)は底面図を示す。
【図6A】図6Aは、実施例に係る近接センサ用アンテナの平面図である。
【図6B】図6Bは、実施例に係る近接センサ用アンテナの使用状態を示す説明図である。図6B中、(b)は平面図、(c)は側面図である。
【図6C】実施例に係る近接センサ用アンテナの接続部位の拡大説明図である。
【図6D】図6Cに示す接続部位の先端部分の拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明近接センサ付きトラックボールの基本構成を示す説明図である。図示するように本近接センサ付きトラックボール10は、ボールB周囲において予め設定された範囲内への操作者身体Hの進入やボールBへの接触を検知するための近接センサ1と、近接センサ1により検知された信号に基づいてのみ、ボールB回転に伴う移動量の位置指示情報への変換処理を行う位置指示情報変換部5とを備えてなり、近接センサ1は、身体H進入や接触による静電容量変化の発生が可能な板状のアンテナ2と、アンテナ2において発生する信号を処理する演算処理部3とを備えて構成される。なお板状のアンテナ2は、トラックボールのボールB以外の部分に設ける。
【0026】
かかる構成により本近接センサ付きトラックボール10では、ボールB周囲に予め設定された範囲内に操作者身体Hの進入あるいはボールBへの接触が生じると、それにより、近接センサ1を構成する板状のアンテナ2において静電容量変化(信号)が発生し、その信号は同じく近接センサ1を構成する演算処理部3において処理される。このようにして近接センサ1において、ボールB周囲において予め設定された範囲内への操作者身体Hの進入やボールBへの接触が信号として検知される。
【0027】
近接センサ1は、ボールBと操作者身体Hとの距離に基づいて、その進入や接触の検知を行うセンサである。つまり、ボールBからの所定の距離範囲を進入等検知範囲とし、その範囲内における身体Hの存在の有無によって、検知か非検知かがなされる。
【0028】
位置指示情報変換部5では、近接センサ1により検知された信号に基づいて、ボールB回転に伴う移動量の位置指示情報への変換処理がなされ、ポインティングデバイスとして作動する。なお、位置指示情報変換部5における変換処理は、近接センサ1により検知された信号以外ではなされないように構成されている。
【0029】
したがって、操作者身体HがボールB周囲に予め設定された範囲内に進入して来ない限り、たとえボールBに誤動作による回転が生じた場合でも、近接センサ1による検知信号は発生しないため、位置指示情報変換部5における変換処理がなされることはない。つまり、操作者身体Hが設定された範囲内に入った時にのみ、本トラックボールはポインティングデバイスとして機能し、それ以外の時には機能しないように(誤作動しないように)構成されている。
【0030】
図2Aは、本発明板状アンテナの実施例を示す写真図である。また、
図2Bは、本発明近接センサ付きトラックボールの実施例のアンテナを主とした要部構成を示す写真図である。これらに図示するように本実施例近接センサ付きトラックボールのアンテナ22は、トラックボールのケース28上面に設けるものとすることができる。図示するようにアンテナ22は特に、ケース28上面の全周に亘って設けられた環状の形状とすることができる。
【0031】
板状アンテナ22は、ボール(B)へ接近してくる操作者身体(H)を検知するためのものであり、操作者身体は通常、トラックボールの上方から接近してくるものである。したがってアンテナ22は、トラックボール全体の中でより上方に設置されることが望ましい。
【0032】
またトラックボールの場合、操作者身体の接近方向は必ずしも一定とはならない可能性が高い。そこで、どの方向からの接近に対しても同等の検知感度を得るために、ボールの周囲を囲繞するように設けることが望ましい。そこで実施例では、ケース28の上面あるいはその近傍に、かつ、ボールを囲繞するような環状の形状にてアンテナ22を構成したものである。
【0033】
なお本実施例は、ケースの平面形状が円形のトラックボールであるが、本発明がこれに限定されないことはいうまでもない。平面形状が正方形のもの、あるいは他の形状のものであっても、板状アンテナはトラックボール構造のより上方に、かつボールを囲繞するような環状にて形成されることが望ましい。
【0034】
なおまた図2A、2Bに示す実施例では、環状に形成されたアンテナ22はケース28の上面に設け、その上にカバー27を被せ、さらにリング29を載せてボールの収容構造を完成する構成である。したがって板状アンテナ22は、外部に露出せずにトラックボール構造中に隠れた形態となる。かかる構成はアンテナ22の保護上好ましい。しかしながら本発明は、アンテナを露出させて設ける構成を排除するものではない。
【0035】
板状アンテナには、微小な静電容量変化の検知感度の高さが必要であるため、金属板など導電性を有する材料にて形成することが望ましい。一方トラックボールのケースは、合成樹脂など絶縁材料にて形成することが通常である。したがって、板状アンテナはこれをケースとは別途、ケースに装着可能な仕様にて、より望ましくはケースに着脱可能な仕様にて製造するのがよい。
【0036】
図3は、本発明のトラックボール用近接センサの構成例を示す説明図である。図示するように本トラックボール用近接センサ31は、トラックボールのボール周囲において予め設定された範囲内への操作者身体の進入や該ボールへの接触を検知するためのセンサであって、身体進入や接触による静電容量変化の発生が可能な板状のアンテナ32と、板状アンテナ32において発生する信号を処理する演算処理部33とからなることを、主たる構成とする。トラックボール用近接センサ31は、ボールと操作者身体との距離に基づき進入や接触の検知を行うことができる。
【0037】
図示するように、板状のアンテナ32はトラックボールのケース形状に合わせた環状の形状とすることができる。また、板状のアンテナ32と演算処理部33との接続は適宜の方法・構成にて行うようにすればよいが、図に例示するようにコネクタ34を演算処理部33に設け、一方板状のアンテナ32にはコネクタ34と接続するための接続部位32Aを設け、両者を接続することによって行うこととしてもよい。
【0038】
コネクタ34により板状のアンテナ32と演算処理部33とを接続する構成とすることにより、近接センサ31を構成する各要素をそれぞれの好ましい設置位置に配置することができる。つまり、板状のアンテナ32は好ましい設置位置であるケース上面に設置し、一方演算処理部33はその好ましい設置位置といえるケース内部に設置し、両者をコネクタ34で接続することができる。
【0039】
なお図に例示するように、接続部位32Aをアンテナ32本体から外方に延設された舌状片とし、これと適合する形状に形成したコネクタ34に該舌状片を挿入することで、板状のアンテナ32と演算処理部33とを接続するものとすることができる。またコネクタ34はケース内の基板に実装する、あるいはケース自体にコネクタ固定用もしくは収容用の構造を予め形成してそこに固定もしくは収容するようにしてもよい。
【0040】
図4は、図2A等に示した本発明実施例における近接センサ用アンテナを示す写真図である。図示するように本実施例に係る近接センサ用アンテナ(板状のアンテナ)22は環状に、かつ、トラックボールのケース28上面に設置可能な形状に形成されている。
【0041】
図示した本実施例は、ケースの平面形状が円形のトラックボールに係るものであるが、本発明がこれに限定されないものであることは上述の通りである。つまり本発明近接アンテナにおける「環状」とは、環の形状が円または略円形であれ、多角形であれ略多角形であれ、あるいはその他の形状であれ、トラックボールのボールを囲繞するように形成された形状を全て含む。また「環状」には、たとえば「O」字状に閉じた「環」のみならず、たとえば「C」字状に一部に間隙があって開いたものも含む。
【0042】
なお近接センサ用アンテナ22は、身体進入や接触による静電容量変化の発生が可能な材料であれば、特に限定なくあらゆる種類の材料を用いることができる。後述するステンレス鋼(SUS)は、生産性等の条件も考慮した最適な材料の一例である。
【実施例】
【0043】
既に述べた本発明の実施例についてさらに補足説明するが、本発明がかかる実施例に限定されるものではない。
<実施例 >
図5は、本発明実施例に係るトラックボールの外観仕様を示す正投影図であり、(a)は平面図、(b)〜(d)は各側面図、(e)は底面図を示す。また、
図6Aは、実施例に係る近接センサ用アンテナの平面図、
図6Bは、実施例に係る近接センサ用アンテナの使用状態を示す説明図である。図6B中、(b)は平面図、(c)は側面図である。また、
図6Cは、実施例に係る近接センサ用アンテナの接続部位の拡大説明図、そして、
図6Dは、図6Cに示す接続部位の先端部分の拡大説明図である。
【0044】
既に述べた通り本実施例に係る近接センサは、マイクロコンピュータ(マイコン)で用いられる静電容量方式を用いるものだが、従来のようなパターンを用いた検知ではなく、ボール直近位置にプレート状のアンテナを設置して、これを基板に実装されるコネクタと連結し、演算処理部(マイコン)へと接続する構成としたものである。
【0045】
図5に示すように、本実施例の近接センサの板状アンテナは露出していないため、外観には形態が表れない。また、演算処理部・コネクタもトラックボールのケース内に実装される。
【0046】
タッチバッドのような従来の静電容量方式のセンサとは異なり、本実施例に係る近接センサでは、操作者が直接手でアンテナに接触することが不要である。したがって、調子感度の調整を行うことによって、ボールと指との間隔が予め設定した一定の範囲内となったら、ゲインをONするという動作が可能である。
【0047】
板状のアンテナ52は、量産性、コスト、感度等を考慮した結果、0.15mm厚SUS材をプレスで加工することにより製造した。図6A等に示す本実施例板状のアンテナ52は、良好な形状を得ることができ、また近接センサ用のアンテナとしての性能も充分なものだった。
【0048】
図6A、6Bで示す通り、板状のアンテナ52の接続部位52Aは、環状の本体から延設された舌状片とし、トラックボールのケースに設置する際は接続部位52Aを下方に折曲げ、ケース中に実装されるコネクタ(図示せず)に挿入して演算処理部(マイコン)と接続するようにした。
【0049】
なお本実施例では、接続用のコネクタとして0.3mmのプレートと適合可能な0.3mm厚仕様のものを用いたため、接続部位52Aでは、アンテナ52の本体の厚さ0.15mmにさらに段差を設けて厚みを確保することとした。
【0050】
以上の構成による本実施例近接センサ付きトラックボールの作動を試験したところ、ボールがいくら誤動作回転しても、操作者の身体が所定の範囲内に接近しない限りポインティングデバイスとして機能せず、ボールへの接近や接触を検知して初めて機能した。したがって、所期の狙いを充分に実現できるトラックボールを構成できたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の近接センサ付きトラックボールおよびトラックボール用近接センサ等によれば、トラックボールの誤動作・誤作動を、操作性を損なうことなく有効に防止することができるため、医療機器、アミューズメント、FA分野を始めとしてトラックボールをポインティングデバイスとする装置が関連する全産業分野において、利用性が高い発明である。
【符号の説明】
【0052】
1…近接センサ
2、22、32、52…板状のアンテナ(近接センサ用アンテナ)
3、33…演算処理部
5…位置指示情報変換部
10…近接センサ付きトラックボール
27、57…カバー
28、58…ケース
29、59…リング
31…トラックボール用近接センサ
32A、52A…接続部位
34…コネクタ
B、5B…ボール
H…操作者身体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボール周囲において予め設定された範囲内への操作者身体の進入や該ボールへの接触を検知するための近接センサと、
該近接センサにより検知された信号に基づいてのみ、ボール回転に伴う移動量の位置指示情報への変換処理を行う位置指示情報変換部と、
を備えてなる近接センサ付きトラックボールであって、
該近接センサは、上記身体進入や接触による静電容量変化の発生が可能な板状のアンテナと、
該アンテナにおいて発生する信号を処理する演算処理部とを備えてなる、
近接センサ付きトラックボール。
【請求項2】
前記アンテナは、トラックボールのボール以外の部分に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の近接センサ付きトラックボール。
【請求項3】
前記アンテナは、トラックボールのケース上部のリング上に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の近接センサ付きトラックボール。
【請求項4】
前記アンテナは、前記リング上面全周に亘って設けられた環状の形状であることを特徴とする、請求項3に記載の近接センサ付きトラックボール。
【請求項5】
前記近接センサは、前記ボールと操作者身体との距離に基づき前記進入や接触の検知を行うことを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の近接センサ付きトラックボール。
【請求項6】
トラックボールのボール周囲において予め設定された範囲内への操作者身体の進入や該ボールへの接触を検知するためのトラックボール用近接センサであって、
上記身体進入や接触による静電容量変化の発生が可能な板状のアンテナと、
該アンテナにおいて発生する信号を処理する演算処理部とからなる、
トラックボール用近接センサ。
【請求項7】
前記アンテナは環状であり、トラックボールのリング上面に設置可能な形状に形成されていることを特徴とする、請求項6に記載のトラックボール用近接センサ。
【請求項8】
前記ボールと操作者身体との距離に基づき前記進入や接触の検知を行うことを特徴とする、請求項6または7に記載のトラックボール用近接センサ。
【請求項9】
トラックボールのボール周囲において予め設定された範囲内への操作者身体の進入や該ボールへの接触を検知するためのトラックボール用近接センサに用いるアンテナであって、上記身体進入や接触による静電容量変化の発生が可能な材料により板状に形成されている、近接センサ用アンテナ。






















【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図4】
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