説明

近接場光発生素子、及び近接場光発生素子の製造方法、近接場光ヘッド、近接場光ヘッドの製造方法並びに情報記録再生装置

【課題】近接場光発生部とコアとを精度良く位置決めして近接場光の発生効率を向上できる近接場光発生素子、及び近接場光発生素子の製造方法、近接場光ヘッド、近接場光ヘッドの製造方法並びに情報記録再生装置を提供する。
【解決手段】基板120上に第1クラッド24aを形成する第1クラッド形成工程と、第1クラッド24a上に金属膜母材151を形成する近接場光発生部形成工程と、金属膜母材151を覆うようにコア母材を形成するコア形成工程と、コア母材、及び金属膜母材151をパターニングして、コア23及び金属膜51を形成するパターニング工程と、第1クラッド24aとの間でコア23を挟み込むように、第2クラッド24bを形成する第2クラッド形成工程と、を有し、パターニング工程では、コア母材、及び金属膜母材151を同一工程で一括してパターニングすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光束を集光した近接場光を利用して磁気記録媒体に各種の情報を記録再生する近接場光発生素子、及び近接場光発生素子の製造方法、近接場光ヘッド、近接場光ヘッドの製造方法並びに情報記録再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ機器におけるハードディスク等の容量増加に伴い、単一記録面内における情報の記録密度が増加している。例えば、磁気ディスクの単位面積当たりの記録容量を多くするためには、面記録密度を高くする必要がある。ところが、記録密度が高くなるにつれて、記録媒体上で1ビット当たりの占める記録面積が小さくなっている。このビットサイズが小さくなると、1ビットの情報が持つエネルギーが、室温の熱エネルギーに近くなり、記録した情報が熱揺らぎ等のために反転したり、消えてしまったりする等の熱減磁の問題が生じてしまう。
【0003】
一般的に用いられてきた面内記録方式では、磁化の方向が記録媒体の面内方向に向くように磁気を記録する方式であるが、この方式では上述した熱減磁による記録情報の消失等が起こり易い。そこで、このような不具合を解消するために、近年では記録媒体に対して垂直な方向に磁化信号を記録する垂直記録方式が採用されている。この方式は、記録媒体に対して、単磁極を近づける原理で磁気情報を記録する方式である。この方式によれば、記録磁界が記録膜に対してほぼ垂直な方向を向く。垂直な磁界で記録された情報は、記録膜面内においてN極とS極とがループを作り難いため、エネルギー的に安定を保ち易い。そのため、この垂直記録方式は、面内記録方式に対して熱減磁に強くなっている。
【0004】
しかしながら、近年の記録媒体は、より大量且つ高密度情報の記録再生を行いたい等のニーズを受けて、さらなる高密度化が求められている。そのため、隣り合う磁区同士の影響や、熱揺らぎを最小限に抑えるために、保磁力の強いものが記録媒体として採用され始めている。そのため、上述した垂直記録方式であっても、記録媒体に情報を記録することが困難になっていた。
【0005】
そこで、上述した不具合を解消するために、光を集光したスポット光、若しくは、近接場光を利用して磁区を局所的に加熱して一時的に保磁力を低下させ、その間に記録媒体への書き込みを行うハイブリッド磁気記録方式の記録再生ヘッドが提供されている。
このような記録再生ヘッドのうち、近接場光を利用した記録再生ヘッド(以下、近接場光ヘッドという)は、スライダと、スライダ上に配置された主磁極及び補助磁極を有する記録素子と、照射されたレーザ光から近接場光を発生させる近接場光発生素子と、近接場光発生素子に向けてレーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光源から発せられたレーザ光を近接場光発生素子まで導く光導波路と、を主に備えている(例えば、特許文献1参照)。近接場光発生素子は、レーザ光を反射させながら伝播させるコア、及びコアに密着してコアを封止するクラッドを有する光束伝播素子と、コア及びクラッド間に配置されてレーザ光から近接場光を発生させる金属膜と、を有している。コアは、一端側(光入射側)から他端側(光出射側)に向かうレーザ光の伝播方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形されており、レーザ光を集光させながら他端側に向けて伝播させるようになっている。そして、コアにおける他端側の側面に上述した金属膜が配置されている。
【0006】
このように構成された近接場光ヘッドを利用する場合には、近接場光を発生させると同時に記録磁界を印加することで、記録媒体に各種の情報を記録している。すなわち、レーザ光源から出射されたレーザ光は光導波路を介して光束伝播素子内に入射する。そして、光束伝播素子に入射したレーザ光は、コア内を伝播して金属膜に達する。すると、金属膜では、レーザ光によって内部の自由電子が一様に振動させられるのでプラズモンが励起され、コアの他端側に近接場光を局在化させた状態で発生させる。その結果、磁気記録媒体の磁気記録層は、近接場光によって局所的に加熱され、一時的に保磁力が低下する。
また、上述したレーザ光の照射と同時に記録素子に駆動電流を供給することで、主磁極の先端に近接する磁気記録媒体の磁気記録層に対して記録磁界を局所的に印加する。その結果、保磁力が一時的に低下した磁気記録層に各種の情報を記録することができる。つまり、近接場光と磁場との協働により、磁気記録媒体への記録を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−152897号公報
【特許文献2】特許第3820849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した光束伝播素子を製造するには、例えば特許文献2に示すような方法が知られている。具体的には、まず基板の側面上にアンダークラッドを形成するとともに、アンダークラッド上に断面矩形状のコアを形成する。その後、コアをプラズマ中でスパッタエッチングし、断面三角形状のコアを形成し、その上にオーバークラッドを堆積させる。
そして、この方法を用いてコアの側面に金属膜を形成するには、アンダークラッド上に金属膜をパターニングした後、上述した特許文献2と同様の方法により、コア及びオーバークラッドを形成する方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、金属膜及びコアは、非常に微細なパターン(それぞれ寸法が数十nm程度)であるため、それぞれの位置合わせが難しいという問題がある。そして、金属膜とコアとが位置ずれした場合には、コアを伝播してきたレーザ光が金属膜に入射せずにコアから漏れてしまい、近接場光の発生効率が低下するという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、近接場光発生部とコアとを精度良く位置決めして近接場光の発生効率を向上できる近接場光発生素子、及び近接場光発生素子の製造方法、近接場光ヘッド、近接場光ヘッドの製造方法並びに情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る近接場光発生素子は、一端側に導入された光束を他端側に向けて集光しながら伝播するとともに、近接場光に生成した後に外部に発する近接場光発生素子であって、前記他端側に向けて前記光束を伝播させるコアと、前記コアにおける前記一端側から前記他端側に向かう前記光束の伝播方向に沿って配置され、前記コアとの界面に沿って前記光束を伝播させて、前記光束から前記近接場光を発生させる近接場光発生部と、を有し、前記コアは、前記伝播方向に沿って延在する複数の側面を有し、前記複数の側面は、前記近接場光発生素子が配置された一側面と、前記伝播方向から見て前記一側面の両側で、前記一側面の面方向に交差する方向に沿って配置された他側面と、を有し、前記伝播方向から見て、前記コアの前記他側面と同一面上に前記近接場光発生部の両端面が配置されていることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、伝播方向に直交する方向から見てコアと近接場光発生部とが重なり合うように配置されるため、コアの他端側まで伝播した光束を漏れなく近接場光発生部に入射させることができる。よって、近接場光の発生効率を向上させることができる。
【0013】
また、本発明に係る近接場光発生素子の製造方法は、一端側に導入された光束を他端側に向けて集光しながら伝播するとともに、近接場光に生成した後に外部に発する近接場光発生素子の製造方法であって、前記他端側に向けて前記光束を伝播させるコアと、前記コアにおける前記一端側から前記他端側に向かう前記光束の伝播方向に沿って配置され、前記コアとの界面に沿って前記光束を伝播させて、前記光束から前記近接場光を発生させる近接場光発生部と、を有し、前記近接場光発生部の母材を形成する近接場光発生部形成工程と、前記近接場光発生部を覆うように前記コアの母材を形成するコア形成工程と、前記コアの母材、及び前記近接場光発生部の母材をパターニングして、前記コア及び前記近接場光発生部を形成するパターニング工程と、を有し、前記パターニング工程では、前記コアの母材、及び前記近接場光発生部の母材を同一工程で一括してパターニングすることを特徴としている。
【0014】
この構成では、コアと近接場光発生部を同一のパターニング工程で一括してパターニングすることで、伝播方向から見てコアの他側面と近接場光発生部の両端面とが同一面上に配置されることになる。すなわち、伝播方向に直交する方向から見てコアと近接場光発生部とが重なり合うように形成される。
これにより、例えば、コアと近接場光発生部とをそれぞれ別工程でパターニングする場合と異なり、近接場光発生部とコアとを精度良く位置決めすることができる。よって、コアの他端側まで伝播した光束を漏れなく近接場光発生部に入射させることができるので、近接場光の発生効率を向上させることができる。
【0015】
また、前記近接場光発生部形成工程の前段に、少なくとも前記近接場光発生部の形成領域に第1遮光膜を形成する第1遮光膜形成工程を有し、前記パターニング工程において、前記コアの母材、及び前記近接場光発生素子部の母材とともに、前記第1遮光膜を一括してパターニングすることを特徴としている。
この構成によれば、近接場光発生部でプラズモン共鳴を起こさずに、近接場光発生部を透過してしまった光束を第1遮光膜で反射させてコア内に戻すことで、再び近接場光発生部に光束を入射させることができる。これにより、近接場光の発生効率をより向上できる。
また、第1遮光膜をコアと同一のパターニング工程で一括してパターニングすることで、第1遮光膜とコアとを精度良く位置決めすることができる。これにより、近接場光発生部を透過した光束を漏れなくコア内に戻すことができる。
【0016】
また、前記パターニング工程の後段に、前記コアを覆うように第2遮光膜を形成する第2遮光膜形成工程を有していることを特徴としている。
この構成では、コアを覆うように遮光膜を形成することで、コアに入射した光束は、外部に漏れることなく、第2遮光膜とコアとの界面で反射されながら、他端側に向けて伝播する。これにより、光束を効率的に近接場光発生部に入射させることができ、近接場光の発生効率をより向上できる。
【0017】
また、前記パターニング工程は、第1パターニング工程及び第2パターニング工程を有し、前記第1パターニング工程では、前記コアの形成領域における前記コアの母材を、前記伝播方向から見て矩形状になるようにパターニングし、前記第2パターニング工程では、前記コアの母材に対してプラズマ中でスパッタエッチングを行い、前記コアの母材を前記伝播方向から見て三角形状、または台形状になるようにパターニングすることを特徴としている。
この構成では、第1パターニング工程で矩形状に形成したコアの母材に対してスパッタエッチングを行うことで、コアの母材の角部が選択的にエッチングされて斜面が形成される。そして、この状態でさらにエッチングを続けると、斜面が底面に対して一定の角度を保ちながらエッチングされる。これにより、伝播方向から見て任意の幅や高さにコアを形成することができる。
【0018】
また、前記第2パターニング工程では、前記コアの母材とともに前記近接場光発生部の母材に対してスパッタエッチングを行うことを特徴としている。
この構成では、コアの母材をスパッタエッチングした後、スパッタエッチングを続けると、コアの母材は相似形を保ったままエッチングされるとともに、金属膜の母材がエッチングされる。これにより、伝播方向から見てコアの他側面と近接場光発生部の両端面とが同一面上に配置されることになる。すなわち、伝播方向に直交する方向から見てコアと近接場光発生部とが重なり合うように形成される。
【0019】
また、前記第1パターニング工程では、前記コアの形成領域以外における前記コアの母材を、前記コアの形成領域における前記コアの母材よりも薄い状態で残存させておくことを特徴としている。
この構成によれば、第1パターニング工程において、コアの形成領域以外におけるコアの母材を残存させておくことで、第2パターニング工程で近接場光発生部をエッチングする際に、近接場光発生部よりも下側の膜(例えば、第1クラッド)がオーバーエッチングされるのを防止できる。
【0020】
また、前記近接場光発生部は、金属材料からなり、前記近接場光発生部形成工程と前記コア形成工程との間に、少なくとも前記一端側に形成された前記近接場光発生部の母材を除去する除去工程を有していることを特徴としている。
この構成では、近接場光発生部形成工程とコア形成工程との間に近接場光発生部の母材を除去しておくことで、少なくとも一端側ではコアと、金属材料よりもコアとの密着性が高い膜(例えば、第1クラッド)と、を密着させることができる。これにより、製造途中における膜剥がれを抑制できる。
【0021】
また、前記パターニング工程の後、前記コアの他端面を研磨する研磨工程を有し、前記研磨工程では、前記コアが形成される基板上に前記コアの前記他端面と面一になるようにELG素子を形成し、前記ELG素子の抵抗値をモニタしながら前記他端面及び前記ELG素子を研磨することを特徴としている。
この構成によれば、研磨工程においてELGを用いることで、コアの他端側の端面を高精度に位置だしすることができる。これにより、近接場光をより効果的に発生させることができる。
【0022】
また、本発明に係る近接場光ヘッドの製造方法は、上記本発明の近接場光発生素子の製造方法を使用して、一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱するとともに、前記磁気記録媒体に対して記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光ヘッドの製造方法であって、前記近接場光発生部形成工程の前段に、記録磁界を発生させる磁極の母材を形成する磁極形成工程を有し、前記パターニング工程では、前記コアの母材、及び前記近接場光発生部の母材とともに、前記磁極の母材を同一工程で一括してパターニングすることを特徴としている。
この構成によれば、コア、及び近接場光発生部の母材とともに磁極の母材を同一のパターニング工程で一括してパターニングすることで、伝播方向から見てコアの他側面、近接場光発生部の両端面、及び磁極の外側端面が同一面上に配置されることになる。これにより、例えば、コア、近接場光発生部、及び磁極をそれぞれ別工程でパターニングする場合と異なり、近接場光発生部、コア、及び磁極を精度良く位置決めすることができる。さらに、高価な位置合わせ装置を用いることなく、コア、近接場光発生部、及び磁極を位置決めができるので、装置コストを低減できる。
この場合、磁極が、近接場光発生素子を間に挟んでコアの反対側から近接場光発生部を覆うように形成される。そのため、近接場光の発生位置と、磁極からの磁場の発生位置とを高精度に位置決めでき、近接場光ヘッド自体の書き込みの信頼性を高め、高品質化を図ることができる。
また、仮に近接場光発生部でプラズモン共鳴を起こさずに、光束が近接場光発生部を透過してしまった場合であっても、光束を磁極で反射させてコア内に戻すことで、再び近接場光発生部に光束を入射させることができる。これにより、近接場光の発生効率をより向上できる。さらに、光束が近接場光発生部でプラズモン共鳴を起こさずに外部に漏れるのを抑制できるので、コアの近傍のみに極めて小さい近接場光のスポットを生成させることができる。
【0023】
また、本発明に係る近接場光ヘッドは、一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱するとともに、前記磁気記録媒体に対して記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光ヘッドであって、前記磁気記録媒体の表面に対向配置されたスライダと、前記スライダの先端側に配置され、前記記録磁界を発生させる磁極を有する記録素子と、前記他端側を前記磁気記録媒体側に向けた状態で前記記録素子に隣接して固定された、上記本発明の近接場光発生素子と、前記スライダに固定され、前記一端側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の近接場光発生素子を備えているので、近接場光ヘッド自体の書き込みの信頼性を高めることができ、高品質化を図ることができる。
【0024】
また、前記磁極は、前記近接場光発生部を間に挟んで前記コアの前記一側面に対向配置されるとともに、前記伝播方向から見て、前記コアの前記他側面と同一面上に前記磁極の外側端面が配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、磁極が、近接場光発生素子を間に挟んでコアの反対側から近接場光発生部を覆うように形成されるため、近接場光の発生位置と、磁場の発生位置とを高精度に位置決めでき、近接場光ヘッド自体の書き込みの信頼性を高め、高品質化を図ることができる。
また、仮に近接場光発生部でプラズモン共鳴を起こさずに、光束が近接場光発生部を透過してしまった場合であっても、光束を磁極で反射させてコア内に戻すことで、再び近接場光発生部に光束を入射させることができる。これにより、近接場光の発生効率をより向上できる。さらに、光束が近接場光発生部でプラズモン共鳴を起こさずに外部に漏れるのを抑制できるので、コアの近傍のみに極めて小さい近接場光のスポットを生成させることができる。
【0025】
また、前記近接場光発生部と前記磁極との間には、前記近接場光発生部と前記磁極との間を画成する離間膜が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、近接場光発生部と磁極とが導電性を有する金属材料からなる場合に、近接場光発生部と磁極とを電気的に絶縁できるとともに、近接場光発生部の合金化を抑制できるので、近接場光発生部での自由電子の運動に悪影響が及ぶことがない。そのため、近接場光の発生効率をより向上できる。
【0026】
また、本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明の近接場光ヘッドと、前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、前記磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、前記光束伝播素子に対して前記光束を入射させる光源と、前記ビームの基端側を支持するとともに、前記ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、前記記録素子及び前記光源の作動を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、上記本発明の近接場光ヘッドを備えているので、書き込みの信頼性を高めることができ、高品質化を図ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る近接場光発生素子、及びその製造方法によれば、近接場光発生部とコアとを精度良く位置決めして近接場光の発生効率を向上できる。
本発明に係る近接場光ヘッド及び情報記録再生装置によれば、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応することができ、高品質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態における情報記録再生装置の構成図である。
【図2】記録再生ヘッドの拡大断面図である。
【図3】記録再生ヘッドの流出端側の側面を拡大した断面図である。
【図4】図3のA矢視図である。
【図5】図3のB矢視図である。
【図6】レーザ光源の周辺を拡大した図である。
【図7】情報記録再生装置により情報を記録再生する際の説明図であって、図3に相当する拡大断面図である。
【図8】図5に相当する図であって、近接場光発生素子の製造方法を説明するための工程図である。
【図9】図5に相当する図であって、近接場光発生素子の製造方法を説明するための工程図である。
【図10】図5に相当する図であって、第2実施形態における記録再生ヘッドを示す図である。
【図11】図10に相当する図であって、記録再生ヘッドの製造方法を説明するための工程図である。
【図12】図5に相当する図であって、第3実施形態における記録再生ヘッドを示す図である。
【図13】図12に相当する図であって、記録再生ヘッドの製造方法を説明するための工程図である。
【図14】図5に相当する図であって、記録再生ヘッドの他の製造方法を示す図である。
【図15】図5に相当する図であって、第4実施形態における記録再生ヘッドを示す図である。
【図16】図5に相当する図であって、記録再生ヘッドの他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態の情報記録再生装置1は、垂直記録層d2を有するディスク(磁気記録媒体)Dに対して、近接場光Rと記録磁界とを協働させたハイブリッド磁気記録方式によりディスクDに記録再生を行う装置である(図2参照)。
【0030】
(第1実施形態)
(情報記録再生装置)
図1は情報記録再生装置の構成図である。
本実施形態の情報記録再生装置1は、図1に示すように、記録再生ヘッド(近接場光ヘッド)2と、記録再生ヘッド2を支持するビーム3と、記録再生ヘッド2にレーザ光(光束)L(図2参照)を入射させる光束入射機構4と、ビーム3を移動させるアクチュエータ5と、ディスクDを一定方向に回転させるスピンドルモータ(回転駆動部)6と、上述した各構成品を総合的に制御する制御部8と、各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0031】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料により、上面視四角形状に形成されているとともに、内側に各構成品を収容する凹部9aが形成されている。また、このハウジング9には、凹部9aの開口を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。凹部9aの略中心には、スピンドルモータ6が取り付けられており、スピンドルモータ6に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定される。なお、本実施形態では、3枚のディスクDがスピンドルモータ6に固定されている場合を例に挙げて説明している。但し、ディスクDの数は3枚に限定されるものではない。
【0032】
凹部9aの隅角部には、アクチュエータ5が取り付けられている。このアクチュエータ5には、軸受10を介してキャリッジ11が取り付けられている。キャリッジ11は、例えば金属材を切削加工によって形成されたものであり、軸受10を介してアクチュエータ5に固定される基端部11aから先端に向かう部分が3枚のディスクDの上面に配置されるように3層構造となっている。つまり、キャリッジ11を側面から見た時に、E型になるように形成されている。そして、3層に分かれたキャリッジ11の各先端には、ビーム3の基端側が固定されている。よって、アクチュエータ5は、キャリッジ11を介してビーム3の基端側を支持しており、ビーム3をディスク面(磁気記録媒体の表面)D1(図2参照)に平行なXY方向に向けてスキャン移動させることができるようになっている。
【0033】
ビーム3は、上述したようにアクチュエータ5によってキャリッジ11とともにXY方向に移動可能とされているとともに、ディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態で記録再生ヘッド2を先端側で支持している。なお、ビーム3及びキャリッジ11は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ5の駆動によって、ディスクD上から退避するようになっている。
【0034】
(記録再生ヘッド)
図2は記録再生ヘッドの拡大断面図であり、図3は記録再生ヘッドの流出端側の側面を拡大した断面図である。
記録再生ヘッド2は、図2,図3に示すように、レーザ光Lから生成した近接場光Rを利用して回転するディスクDに各種の情報を記録再生するヘッドである。記録再生ヘッド2は、ディスク面D1から所定距離Hだけ浮上した状態でディスクDに対向配置されたスライダ20と、ディスクDに情報を記録する記録素子21と、ディスクDに記録されている情報を再生する再生素子22と、導入されたレーザ光Lを集光しながら伝播するとともに、近接場光Rに生成した後に外部に発する近接場光発生素子26と、を備えている。
【0035】
スライダ20は、石英ガラス等の光透過性材料や、AlTiC(アルチック)等のセラミック等によって直方体状に形成されている。このスライダ20は、ディスクDに対向する対向面20aを有しており、ジンバル部30(図2参照)を介してビーム3の先端にぶら下がるように支持されている。このジンバル部30は、X軸回り及びY軸回りにのみ変位するように動きが規制された部品である。これによりスライダ20は、上述したようにディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在とされている。
【0036】
また対向面20aには、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から、浮上するための圧力を発生させる凸条部20bが形成されている。この凸条部20bは、長手方向(X方向)に沿って延びるように形成されており、レール状に並ぶように間隔を空けて左右(Y方向)に2つ形成されている。但し、凸条部20bはこの場合に限定されるものではなく、スライダ20をディスク面D1から離そうとする正圧とスライダ20をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、スライダ20を最適な状態で浮上させるように設計されていれば、どのような凹凸形状でも構わない。なお、この凸条部20bの表面はABS(AIR BEARING SURFACE)20cと呼ばれている。
【0037】
そしてスライダ20は、この2つの凸条部20bによってディスク面D1から浮上する力を受けている。一方、ビーム3はディスク面D1に垂直なZ方向に撓むようになっており、スライダ20の浮上力を吸収している。つまり、スライダ20は、浮上した際にビーム3によってディスク面D1側に押さえ付けられる力を受けている。よってスライダ20は、この両者の力のバランスによって、上述したようにディスク面D1から所定距離H離間した状態で浮上するようになっている。しかもスライダ20は、ジンバル部30によってX軸回り及びY軸回りに回動するようになっているので、常に姿勢が安定した状態で浮上するようになっている。
なお、ディスクDの回転に伴って生じる空気流は、スライダ20の流入端側(ビーム3のX方向基端側)から流入した後、ABS20cに沿って流れ、スライダ20の流出端側(ビーム3のX方向先端側)から抜けている。
【0038】
記録素子21は、図3に示すように、ディスクDに記録磁界を作用させて情報を記録する素子であって、スライダ20の流出端側の側面(先端面)に固定された補助磁極31と、磁気回路32を介して補助磁極31に接続され、ディスクDに対して垂直な記録磁界を補助磁極31との間で発生させる主磁極(磁極)33と、磁気回路32を中心として磁気回路32の周囲を螺旋状に巻回するコイル34と、を備えている。つまり、スライダ20の流出端側から順に、補助磁極31、磁気回路32、コイル34、主磁極33が並んだ状態で配置されている。
【0039】
両磁極31,33及び磁気回路32は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)により形成されている。また、コイル34は、ショートしないように、隣り合うコイル線間、磁気回路32との間、両磁極31,33との間に隙間が空くように配置されており、この状態で絶縁体35によってモールドされている。そして、コイル34は、情報に応じて変調された電流が制御部8から供給されるようになっている。すなわち、磁気回路32及びコイル34は、全体として電磁石を構成している。なお、主磁極33及び補助磁極31は、ディスクDに対向する端面(Z方向端面)がスライダ20のABS20cと面一となるように設計されている。また、主磁極33の先端部分33a(レーザ光Lの出射側)は、絶縁体35から再生素子22側に向けて突出しており、後述する第1クラッド24a内に埋設されている。なお、主磁極33における先端部分33aを、基端部分と異なる材料(飽和磁束密度が高い材料)で構成しても構わない。
【0040】
図4は図3のA矢視図であり、図5は図3のB矢視図である。
図3から図5に示すように、光束伝播素子25は、レーザ光Lの入射側(Z方向一端側)がスライダ20の上方を向くとともに、出射側(Z方向他端側)がディスクD側を向いた状態で、記録素子21の主磁極33のX方向側に隣接して固定されている。この光束伝播素子25は、一端側から導入されたレーザ光LをディスクDに対向する他端側に伝播させるコア23と、コア23に密着するクラッド24とから構成されており、全体として略板状に形成されている。
【0041】
コア23は、一端側から他端側にかけて漸次絞り成形されており、レーザ光Lを内部で徐々に集光させながら伝播させることができるようになっている。具体的に、コア23は一端側から反射面23aと、光束集光部23bと、近接場光生成部23cと、を有し、レーザ光Lの伝播方向(Z方向)から見て三角形状に形成されている。
【0042】
反射面23aは、後述する光導波路(光束導入手段)42から導入されたレーザ光Lを導入方向とは異なる方向に反射させるものである。本実施形態では、レーザ光Lの向きが略90度変わるように反射させている。この反射面23aによって光導波路42から導入されたレーザ光Lは、コア23内で全反射を繰り返しながら他端側に向けて伝播する。
光束集光部23bは、一端側から他端側に向かうZ方向に直交する断面積(XY方向の断面積)が漸次減少するように絞り成形された部分であり、導入されたレーザ光Lを集光させながら他端側に向けて伝播させている。つまり、光束集光部23bに導入されたレーザ光Lのスポットサイズを、徐々に小さいサイズに絞ることができるようになっている。
近接場光生成部23cは、光束集光部23bの端部から他端側に向けてさらに絞り成形された部分である。具体的には、コア23の他端側の近傍において、内部を伝播するレーザ光Lの光軸(Z方向)に対して傾斜した状態で再生素子22に対向するように形成された傾斜面23hによって絞り成形されている。この傾斜面23hによって、コア23は他端側が尖形した状態となっている。
【0043】
なお、本実施形態では、光束集光部23b及び近接場光生成部23cがZ方向に沿う3つの側面を有するように形成されており、そのうちの1つの側面(一側面)23gが主磁極33に対向配置されるようになっている。この場合、側面23gの両端(Y方向両端)からは、再生素子22に向かって側面23gのY方向(面方向)に交差する方向に沿って延在する一対の側面(他側面)23dが形成され、これによりコア23はZ方向から見てX方向に向かって先細る三角形状に形成されている。そのため、図5に示すように、近接場光生成部23cの他端側で外部に露出する端面23eが三角形状に形成されている。また、この端面23eはスライダ20のABS20cと面一となるように設計されている。
【0044】
クラッド24は、図3から図5に示すように、コア23よりも屈折率が低い材料で形成されており、コア23の一端側と他端側の端面23eとを外部に露出させた状態でコア23の側面23d,23gに密着して、コア23を内部に封止している。具体的に、クラッド24は、コア23と記録素子21(主磁極33)との間でコア23の側面23g側を覆うように形成された第1クラッド24aと、コア23と再生素子22との間で側面23d側を覆うように形成された第2クラッド24bと、を備えている。このように、第1クラッド24a及び第2クラッド24bがコア23の側面23d,23gに密着しているので、コア23とクラッド24との間に隙間が生じないようになっている。なお、第1クラッド24の他端側におけるスライダ20の幅方向(Y方向)中央部には、上述した主磁極33の先端部分33aが埋設されるとともに、この先端部分33aは第1クラッド24からコア23側に露出している。
【0045】
なお、クラッド24及びコア23として使用される材料の組み合わせの一例を記載すると、例えば、石英(SiO2)でコア23を形成し、フッ素をドープした石英でクラッド24を形成する組み合わせが考えられる。この場合には、レーザ光Lの波長が400nmのときに、コア23の屈折率が1.47となり、クラッド24の屈折率が1.47未満となるので好ましい組み合わせである。
また、ゲルマニウムをドープした石英でコア23を形成し、石英(SiO2)でクラッド24を形成する組み合わせも考えられる。この場合には、レーザ光Lの波長が400nmのときに、コア23の屈折率が1.47より大きくなり、クラッド24の屈折率が1.47となるのでやはり好ましい組み合わせである。
特に、コア23とクラッド24との屈折率差が大きいほど、コア23内にレーザ光Lを閉じ込める力が大きくなるので、コア23に酸化タンタル(Ta25:波長が550nmのときに屈折率が2.16)を用い、クラッド24に石英やアルミナ(Al)等を用いて、両者の屈折率差を大きくすることがより好ましい。また、赤外領域のレーザ光Lを利用する場合には、赤外光に対して透明な材料であるシリコン(Si:屈折率が約4)でコア23を形成することも有効である。
【0046】
ここで、コア23と第1クラッド24aとの間には、金属膜(近接場光発生部)51が形成されている。金属膜51は、コア23内を伝播してきたレーザ光Lから近接場光Rを発生させ、近接場光Rを光束伝播素子25の他端側とディスクDとの間に局在化させるものであり、例えば金(Au)や白金(Pt)等により構成されている。金属膜51は、コア23における近接場光生成部23cの側面23g上に配置され、第1クラッド24a及び第1クラッド24aから露出する主磁極33の先端部分33aに接している。また、金属膜51は、Z方向において、一端側が近接場光生成部23cと光束集光部23bとの境界部分に位置するとともに、他端側がコア23の端面23eと面一になるように形成されている。
【0047】
また、図5に示すように、金属膜51は、Z方向から見て再生素子22側に向けて先細る等脚台形状に形成されている。このとき、金属膜51の上底51aのY方向における幅は、コア23の側面23gと同一の幅に形成されている。さらに、金属膜51の斜面51bは、コア23の側面23dと同一面上に配置されている。この場合、金属膜51のY方向両端部の角度θ1(斜面51bと下底51cとのなす角度)は、近接場光生成部23cのY方向両端部の角度θ2(側面23gと側面23dとのなす角度)と同等に形成されている。すなわち、コア23及び金属膜51の積層体は、Z方向から見てコア23の相似形状に形成されている(図5参照)。
【0048】
また、コア23と第2クラッド24bとの間には、遮光膜(第2遮光膜)52が形成されている。遮光膜52は、アルミニウム(Al)等の高反射率の材料からなり、近接場光生成部23cの側面23dを覆うように形成されている。すなわち、近接場光生成部23cは、側面23gが金属膜51に覆われ、側面23dが遮光膜52に覆われている。遮光膜52は、Z方向において、金属膜51よりも広範囲に亘って形成されている。具体的に、遮光膜52は、一端側が光束集光部23bの他端側に位置するとともに、他端側はコア23の端面23eと面一になるように形成されている。なお、遮光膜52は、Z方向において金属膜51と同等以上の範囲で形成されていれば構わない。また、遮光膜52のY方向両端部は、第1クラッド24a上をY方向に沿って延在する裾野部52aが形成されているが、少なくともコア23の側面23dを覆っていれば構わない。
【0049】
ところで、図3に示すように、スライダ20の上面(Z方向一端側)には光導波路42が固定されている。この光導波路42は、コア42aと、コア42aを覆うように形成されたクラッド42bと、からなり、コア42a内をレーザ光Lが伝播するようになっている。光導波路42の先端は、光束伝播素子25のコア23の一端側に接続されており、レーザ光Lを反射面23aに向けて出射させている。なお、コア42a及びクラッド42bは、上述したコア23及びクラッド24と同様の材料により構成されている。
【0050】
一方、光導波路42の基端側は、図1に示すように、ビーム3及びキャリッジ11に沿って引き出された後、レーザ光源(光源)43に接続されている。このレーザ光源43は、図1及び図6に示すように、キャリッジ11の基端部11aの側面に取り付けられた制御基板44上に図示しないICチップ等の各種電子部品とともに実装されている。特にレーザ光源43は、レーザ光Lを直線偏光の状態で出射するようになっている。すなわち、レーザ光源43及び光導波路42は、記録再生ヘッド2にレーザ光Lを直線偏光の状態で入射させる光束入射機構4として機能する。なお、図6はレーザ光源の周辺を拡大した図である。
【0051】
レーザ光源43が実装されている制御基板44は、可撓性のフラットケーブル(フレキシブル基板)45によって制御部8に接続されている。これにより制御部8は、各構成品に電気的な信号を送って総合的な制御を行っている。特にレーザ光源43は、レーザ光Lを出射するタイミングが制御部8によって制御されている。
【0052】
再生素子22は、ディスクDの垂直記録層d2(図2参照)から漏れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜であり、光束伝播素子25を間に挟んで記録素子21とは反対側のクラッド24(第2クラッド24b)の表面に形成されている。この再生素子22には、図示しないリード膜等を介して制御部8からバイアス電流が供給されている。これにより制御部8は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することでき、この電圧の変化から信号の再生を行うことができるようになっている。
【0053】
なお、本実施形態のディスクDは、図2に示すように、ディスク面D1に垂直な方向に磁化容易軸を有する垂直記録層d2と、高透磁率材料からなる軟磁性層d3との少なくとも2層で構成される垂直2層膜ディスクDを使用する。このようなディスクDとしては、例えば、基板d1上に、軟磁性層d3と、中間層d4と、垂直記録層d2と、保護層d5と、潤滑層d6とを順に成膜したものを使用する。
基板d1としては、例えば、アルミ基板やガラス基板等である。軟磁性層d3は、高透磁率層である。中間層d4は、垂直記録層d2の結晶制御層である。垂直記録層d2は、垂直異方性磁性層となっており、例えばCoCrPt系合金が使用される。保護層d5は、垂直記録層d2を保護するためのもので、例えばDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜が使用される。潤滑層d6は、例えば、フッ素系の液体潤滑材が使用される。
【0054】
(情報記録再生方法)
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する場合について以下に説明する。
まず、図1に示すように、スピンドルモータ6を駆動させてディスクDを一定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ5を作動させて、キャリッジ11を介してビーム3をXY方向にスキャンさせる。これにより、ディスクD上の所望する位置に記録再生ヘッド2を位置させることができる。この際、記録再生ヘッド2は、スライダ20の対向面20aに形成された2つの凸条部20bによって浮上する力を受けるとともに、ビーム3等によってディスクD側に所定の力で押さえ付けられる。記録再生ヘッド2は、この両者の力のバランスによって、図2に示すようにディスクD上から所定距離H離間した位置に浮上する。
【0055】
また、記録再生ヘッド2は、ディスクDのうねりに起因して発生する風圧を受けたとしても、ビーム3によってZ方向の変位が吸収されるとともに、ジンバル部30によってXY軸回りに変位することができるようになっているので、うねりに起因する風圧を吸収することができる。そのため、記録再生ヘッド2を安定した状態で浮上させることができる。
【0056】
図7は情報記録再生装置により情報を記録再生する際の説明図であって、図7は図3に相当する拡大断面図である。
ここで、図7に示すように、情報の記録を行う場合、制御部8はレーザ光源43を作動させて直線偏光のレーザ光Lを出射させるとともに、情報に応じて変調した電流をコイル34に供給して記録素子21を作動させる。
まず、レーザ光源43からレーザ光Lを光導波路42に入射させて、レーザ光Lをスライダ20側に導く。レーザ光源43から出射されたレーザ光Lは、光導波路42のコア42a内を先端(流出端)側に向かって進み、光束伝播素子25のコア23内に伝播する。コア23内に伝播したレーザ光Lは、反射面23aで略90度反射された後、光束集光部23b内を伝播する。光束集光部23bを伝播するレーザ光Lは、ディスクD側に位置する他端側に向かってコア23とクラッド24との間で全反射を繰り返しながら伝播する。特に、コア23の側面23d,23gにはクラッド24が密着しているので、コア23の外部に光が漏れることはない。よって、導入されたレーザ光Lを無駄にすることなく絞りながら他端側に伝播させて、近接場光生成部23cに入射させることができる。
この際、コア23は、Z方向に直交する断面積が漸次減少するように絞り成形されている。そのため、レーザ光Lは光束集光部23b内を伝播するにしたがって徐々に絞り込まれてスポットサイズが小さくなる。
【0057】
スポットサイズが小さくなったレーザ光Lは、続いて、近接場光生成部23cに入射する。この近接場光生成部23cは、他端側に向けてさらに絞り成形されており、端面23eが光の波長以下のサイズとされている。この場合、近接場光生成部23cの2つの側面23dは、遮光膜52によって遮光されている。よって、近接場光生成部23cに入射したレーザ光Lは、第2クラッド24b側に漏れることなく、遮光膜52と近接場光生成部23cとの界面で反射されながら伝播する。そして、近接場光生成部23cを伝播するレーザ光Lが金属膜51に入射すると、金属膜51には表面プラズモンが励起される。励起された表面プラズモンは、共鳴効果によって増強されながら金属膜51とコア23(近接場光生成部23c)との界面に沿いながら、コア23の他端側に向かって伝播する。そして、他端側に達した時点で、光強度の強い近接場光Rとなって外部に漏れ出す。つまり、光束伝播素子25の他端側とディスクDとの間に近接場光Rを局在化させることができる。するとディスクDは、この近接場光Rによって局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
【0058】
一方、制御部8によってコイル34に電流が供給されると、電磁石の原理により電流磁界が磁気回路32内に磁界を発生させるので、主磁極33と補助磁極31との間にディスクDに対して垂直方向の記録磁界を発生させることができる。すると、主磁極33側から発生した磁束が、ディスクDの垂直記録層d2を真直ぐ通り抜けて軟磁性層d3に達する。これによって、垂直記録層d2の磁化をディスク面D1に対して垂直に向けた状態で記録を行うことができる。また、軟磁性層d3に達した磁束は、軟磁性層d3を経由して補助磁極31に戻る。この際、補助磁極31に戻るときには磁化の方向に影響を与えることはない。これは、ディスク面D1に対向する補助磁極31の面積が、主磁極33よりも大きいので磁束密度が大きく磁化を反転させるほどの力が生じないためである。つまり、主磁極33側でのみ記録を行うことができる。
【0059】
その結果、近接場光Rと両磁極31,33で発生した記録磁界とを協働させたハイブリッド磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。しかも垂直記録方式で記録を行うので、熱揺らぎ現象等の影響を受け難く、安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性を高めることができる。
【0060】
また、ディスクDに記録された情報を再生する場合には、ディスクDの保磁力が一時的に低下している時に、再生素子22がディスクDの垂直記録層d2から漏れ出ている磁界を受けて、その大きさに応じて電気抵抗が変化する。よって、再生素子22の電圧が変化する。これにより制御部8は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができる。そして制御部8は、この電圧の変化から信号の再生を行うことで、ディスクDに記録されている情報の再生を行うことができる。
【0061】
(記録再生ヘッドの製造方法)
次に、上述した近接場光発生素子26を有する記録再生ヘッド2の製造方法について説明する。図8,図9は図5に相当する図であって、近接場光発生素子の製造方法を説明するための工程図である。なお、以下の説明では、記録再生ヘッド2の製造工程のうち、主として近接場光発生素子の製造工程について具体的に説明する。
本実施形態では、複数のスライダ20形成領域がY方向及びZ方向に沿って連なってなる基板120(例えば、AlTiC(アルチック)等)を用意し、この基板120におけるスライダ20の各形成領域上に記録素子21、近接場光発生素子26、及び再生素子22を順に形成して、Y方向及びZ方向に沿って連なる複数の記録再生ヘッド2とした後、記録再生ヘッド2の形成領域毎にダイシングすることで、記録再生ヘッド2を製造する。なお、図8,図9では、説明を分かり易くするため、基板120上に形成される記録素子21のうち、補助磁極31や、磁気回路32、コイル34と、それらをモールドする絶縁体35の記載を省略する。
【0062】
まず図8(a)に示すように、基板120上に記録素子21を形成した後、その上に光束伝播素子25及び金属膜51の母材を成膜する(第1クラッド形成工程、近接場光発生部形成工程、及びコア形成工程)。具体的には、基板120(主磁極33)上に第1クラッド24a、金属膜51(例えば、20nm程度)、コア23(数μm程度)の順で母材(第1クラッド母材124a、金属膜母材151、及びコア母材123)を成膜する。なお、各母材123,124a,151の成膜後には、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等でそれぞれの表面を研磨して、平坦面とする。
【0063】
なお、金属膜母材151は、第1クラッド母材124a上の全面に成膜した後、所定の領域のみ残存するように予めパターニングしておくことが好ましい。本実施形態では、少なくともZ方向において、コア母材123における近接場光生成部23c(図3参照)に相当する領域に金属膜母材151が残存するように(反射面23a及び光束集光部23b(図3参照)に相当する領域の金属膜母材151を除去するように)パターニングしている。この場合には、近接場光生成部23cに相当する領域では、コア母材123と第1クラッド母材124aとの間に金属膜母材151が挟持され、それ以外の領域では、コア母材123と第1クラッド母材124aとが密着することになる。これにより、コア母材123と第1クラッド母材124aとの密着性を向上させることができるので、製造途中における膜剥がれを抑制できる。
【0064】
また、上述した近接場光発生素子26(図2,3参照)では、Z方向においてコア23の光束集光部23bにも金属膜51が形成されていると、光束集光部23bを伝播するレーザ光Lが金属膜51で吸収されて損失となり、レーザ光Lの伝播効率が低下する虞がある。これに対して、近接場光生成部23cに相当する領域にのみ金属膜51を形成することで、近接場光生成部23cまではコア23とクラッド24との間でレーザ光Lを全反射条件で伝播させることができる。そのため、より多くのレーザ光Lを近接場光生成部23cまで導くことができ、レーザ光Lの伝播効率を向上できる。
【0065】
続いて、図8(b)に示すように、コア母材123上にフォトリソグラフィ技術を用いてコア母材123を除去すべき領域が開口したマスクパターン(不図示)を形成し、このマスクパターンを介して反応性イオンエッチング(RIE)を行う(第1パターニング工程)。これにより、マスクパターンが開口した領域のコア母材123がエッチングされ、Z方向から見て矩形状のコア母材123が形成される。また、コア母材123は、X方向から見て一端側から他端側にかけて先細る台形状に形成される。なお、第1パターニング工程においては、マスクパターンが開口した領域のコア母材123は、完全に除去せず僅かに残存させることが好ましい(図8(b)中残存部60参照)。
【0066】
次に、図8(c)に示すように、アルゴン(Ar)等のプラズマ中でコア母材123及び金属膜母材151をスパッタエッチングする(第2パターニング工程)。第2パターニング工程において、断面矩形状のコア母材123をスパッタエッチングすると、コア母材123の角部が選択的にエッチングされて斜面61が形成される。そして、この状態でさらにエッチングを続けると、斜面61が底面(図5中側面23gに相当)に対して一定の角度を保ちながらエッチングされることで、図8(d)に示すような断面三角形状のコア母材123が形成される。
【0067】
その後、さらにエッチングを続けると、図9(a)に示すように、コア母材123は相似形を保ちながら幅(Y方向における幅)、及び高さ(X方向における高さ)が縮小するとともに、残存部60が除去される。その結果、3つの側面23d,23gを有する三角形状のコア23が形成される。このように、第1パターニング工程で矩形状に形成したコア母材123に対してスパッタエッチングを行うことで、Z方向から見て任意の幅や高さにコア23を形成することができる。
【0068】
ここで、残存部60を除去した後、さらにエッチングを続けると、コア23は相似形を保ったままエッチングされるとともに、金属膜母材151がエッチングされる。この場合、図9(b)に示すように、金属膜母材151のY方向における端部(図5における斜面51bに相当)は、コア23の側面23dと側面23gとのなす角度と同一の角度にエッチングされる。
以上により、上底51aがコア23の側面23gと同一の幅を有するとともに、斜面51bがコア23の側面23dと同一面上に配置された金属膜51が形成される。なお、コア23以外の領域の金属膜母材151を完全に除去するためには、第1クラッド母材124aも僅かにエッチングされる。この場合、上述した第1パターニング工程において、コア母材123に残存部60を形成しておくことで、第2パターニング工程で第1クラッド母材124aがオーバーエッチングされるのを防止できる。
【0069】
次に、図9(c)に示すように、コア23及び金属膜51を覆うように遮光膜52を形成する(遮光膜形成工程)。具体的には、コア23の側面23dにおける近接場光生成部23cに相当する領域に、遮光膜52が残存するようにパターニングする。
そして、図9(d)に示すように、コア23及び遮光膜52を覆うように、第2クラッド24bを形成する(第2クラッド形成工程)。その後、CMP等で第2クラッド24bの表面を研磨して、平坦面に形成する。そして、第2クラッド24b上に再生素子22を形成する。これにより、基板120上に記録素子21、近接場光発生素子26、及び再生素子22が形成される。
【0070】
続いて、基板120を、Z方向に沿って各スライダ20形成領域ごとに間隔をあけた状態でY方向に沿ってダイシングし、一方向(Y方向)に沿って複数のスライダ20が連なった状態のバー(不図示)を形成する。その後、ダイシングしたバーの側面(切断面)を研磨する(研磨工程)。この研磨工程では、ELG(electro lapping guide)を用い、バーの側面の位置だしを行う。ELGとは、ELG素子の抵抗値を確認しながら研磨を行って研磨量を制御するものである。本実施形態では、例えばバーのELGエリア(後述するスライダ工程におけるダイシング代)に、ELG素子と、ELG素子の両端に接続された一対のパッドと、を形成し、パッドを介してELG素子に通電しながら研磨する。すると、バーの側面とともにELG素子も研磨され、ELG素子のZ方向における幅が減少し、電気抵抗が増加する。そこで、ELG素子の電気抵抗と研磨量との相関を予め求めておき、ELG素子の抵抗値をモニタしながら研磨して、抵抗値が所定の値に達した時点で所望の研磨量が得られたと判断して研磨を終了する。なお、ELG素子やパッドは研磨時に電気抵抗の変化を検出するのが基本的な機能であるため、極端な微細構造とする必要はない。
【0071】
その後、各スライダ20ごとの大きさになるようにバーをZ方向に沿って切断する(スライダ工程)。
以上により、上述した近接場光発生素子26を有する記録再生ヘッド2が完成する。
【0072】
このように、本実施形態では、成膜工程において第1クラッド母材124aとコア母材123との間に金属膜母材151を形成し、第2パターニング工程において、コア母材123及び金属膜母材151のエッチングを一括して行う構成とした。
この構成によれば、コア母材123と金属膜母材151を同一のパターニング工程で一括してパターニングすることで、上底51aがコア23の側面23gと同一の幅を有するとともに、斜面51bがコア23の側面23dと同一面上に配置された金属膜51を簡単に形成できる。すなわち、X方向から見てコア23と金属膜51とが重なり合うように形成される。
これにより、例えば、コア23と金属膜51とをそれぞれ別工程でパターニングする場合と異なり、金属膜51とコア23とを精度良く位置決めすることができる。よって、近接場光生成部23cまで伝播されたレーザ光Lを漏れなく金属膜51に入射させることができるので、近接場光Rの発生効率を向上させることができる。
【0073】
また、本実施形態では、コア23の側面23dを覆うように遮光膜52を形成することで、近接場光生成部23cに入射したレーザ光Lは、第2クラッド24b側に漏れることなく、遮光膜52と近接場光生成部23cとの界面で反射されながら伝播する。これにより、レーザ光Lを効率的に金属膜51に入射させることができ、近接場光Rの発生効率を向上できる。
また、研磨工程においてELGを用いることで、スライダ20の端面(例えば、近接場光発生素子26の他端側の端面23e)を高精度に位置だしすることができる。これにより、近接場光Rをより効果的に発生させることができる。
【0074】
そして、本発明の情報記録再生装置1(記録再生ヘッド2)は、上述した近接場光発生素子26を備えているので、情報の記録再生を正確且つ高密度に行うことができ、高品質化を図ることができる。
【0075】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10は、図5に相当する図であって、第2実施形態における記録再生ヘッドを示す図である。本実施形態では、コア23の側面23d、及び金属膜51の斜面51bとともに主磁極33の先端部分33a(後述する突出部211の斜面211b)を同一面上に配置する点で、上述した実施形態と相違している。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態の記録再生ヘッド202における主磁極33の先端部分33aは、第1クラッド24a内に埋設されたベース部210と、ベース部210からコア23側に向けてX方向に沿って突出する突出部211と、を有している。
【0076】
突出部211は、Z方向から見てコア23側に向けて先細る等脚台形状に形成されている。具体的に、突出部211の上底211aのY方向における幅は、金属膜51の下底51cと同一の幅に形成されている。さらに、突出部211の斜面211bは、コア23の側面23d、及び金属膜51の斜面51bと同一面上に配置されている。この場合、突出部211のY方向両端部の角度θ3(斜面211bとベース部210とのなす角度)は、上述した金属膜51の角度θ1や近接場光生成部23cの角度θ2と同等に形成されている。すなわち、コア23、金属膜51、及び突出部211の積層体は、Z方向から見てコア23の相似形状に形成されている。
【0077】
本実施形態の記録再生ヘッド202は、上述した第1実施形態の記録再生ヘッド2の製造方法とほぼ同等の工程を経ることで製造することができる。図11は、図10に相当する図であって、記録再生ヘッドの製造方法を説明するための工程図である。
まず、図11(a)に示すように、第1クラッド母材124aにおいて、主磁極33の先端部分33aの形成領域に開口部124bが形成されるようにパターニングし、この開口部124bを埋めるように、第1クラッド母材124a上に主磁極33の先端部分33aの母材(以下、磁極母材220という)を成膜する(磁極形成工程)。なお、第1クラッド124aの開口部124bは、絶縁体35、及び絶縁体35内にモールドされた主磁極33の基端部分が露出する深さまで形成する。これにより、図示しないが磁極母材220は、絶縁体35内で主磁極33の基端部分と接続される。
【0078】
次に、図11(b)に示すように、上述した第1実施形態と同様に金属膜母材151、及びコア母材123を成膜した後、上述した第1パターニング工程と同様の方法により、コア母材123に対してマスクパターン(不図示)を介して反応性イオンエッチング(RIE)を行う。この場合、Z方向から見て、コア母材123における矩形状に残存した部分のY方向における幅が、磁極母材220における第1クラッド124aの開口部124b内に埋設された部分の幅(Y方向の沿う開口部124bの幅)よりも狭くなるように、コア母材123をパターニングする。
【0079】
その後、上述した第2パターニング工程と同様の方法により、スパッタエッチングを行い、コア母材123、金属膜母材151、及び磁極母材220を一括してエッチングする。その後は、上述した第1実施形態の工程と同様の工程を経ることで、上述した図10に示す記録再生ヘッド202を製造できる。
【0080】
このように、本実施形態では、コア23、及び金属膜51とともに主磁極33の先端部分33aの母材を同一のパターニング工程で一括してパターニングすることで、Z方向から見てコア23の側面23d、金属膜51の斜面51b、及び主磁極33の突出部211における斜面211bが同一面上に配置されることになる。これにより、例えば、コア23、金属膜51、及び主磁極33をそれぞれ別工程でパターニングする場合と異なり、コア23、金属膜51、及び主磁極33を精度良く位置決めすることができる。さらに、高価な位置合わせ装置を用いることなく、コア23、金属膜51、及び主磁極33を精度良く位置決めすることができるので、装置コストを低減できる。
この場合、主磁極33の先端部分33aが、金属膜51を間に挟んでコア23の反対側から金属膜51を覆うように形成される。そのため、近接場光Rの発生位置と、主磁極33からの磁場の発生位置とを高精度に位置決めでき、記録再生ヘッド202自体の書き込みの信頼性を高め、高品質化を図ることができる。
【0081】
また、仮に金属膜51でプラズモン共鳴を起こさずに、光束が金属膜51を透過してしまった場合であっても、光束を突出部211の上底211aで反射させてコア23内に戻すことで、再び金属膜51に光束を入射させることができる。これにより、近接場光Rの発生効率をより向上できる。さらに、光束が金属膜51でプラズモン共鳴を起こさずに外部に漏れるのを抑制できるので、コア23の近傍のみに極めて小さい近接場光Rのスポットを生成することができる。
【0082】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図12は、図5に相当する図であって、第3実施形態における記録再生ヘッドを示す図である。
図12に示すように、本実施形態の記録再生ヘッド302では、主磁極33の先端部分303が第1クラッド24aと金属膜51との間に配置されている。主磁極33の先端部分303は、Z方向に沿う一端側が絶縁体35内にモールドされた主磁極33の基端部分に接続される一方、他端側がコア23の端面23eと面一となるように形成されている。また、先端部分303は、Z方向から見てコア23側に向けて先細る等脚台形状に形成されている。具体的に、先端部分303の上底303aのY方向における幅は、金属膜51の下底51cと同一の幅に形成されている。さらに、先端部分303の斜面303bは、コア23の側面23d、及び金属膜51の斜面51bと同一面上に配置されている。すなわち、コア23、金属膜51、及び先端部分303の積層体は、Z方向から見てコア23の相似形状に形成されるとともに、上述した積層体の各側面(及び斜面)全体が遮光膜52により覆われている。
【0083】
図13は、図12に相当する図であって、記録再生ヘッドの製造方法を説明するための工程図である。
図13(a)に示すように、本実施形態の記録再生ヘッドは302を製造するためには、まず第1クラッド24a上に磁極母材304を成膜する(磁極形成工程)。なお、図示しないが、磁極母材304は、第1クラッド24a、及び絶縁体35を通して主磁極33の基端部分と接続されている。
次に、図13(b)に示すように、上述した第1実施形態と同様に金属膜母材151、及びコア母材123を成膜した後、上述した第1パターニング工程と同様の方法により、コア母材123に対してマスクパターン(不図示)を介して反応性イオンエッチング(RIE)を行う。本実施形態の第1パターニング工程では、コア母材123、金属膜母材151、及び磁極母材304をX方向に沿って一括してエッチングすることで、Z方向から見てコア母材123、金属膜母材151、及び磁極母材304の積層体が矩形状に残存する。
【0084】
次に、図13(c)に示すように、上述した第2パターニング工程と同様の方法により、スパッタエッチングを行い、コア母材123、金属膜母材151、及び磁極母材304を一括してエッチングする。この際、第1クラッド24aの表面が僅かに除去されるまでエッチングを行うことで、磁極母材304の角部、及び側面が全て除去され、コア23の側面23d、及び金属膜51の斜面51bと同一面(斜面303b)を有する先端部分303が形成される。
【0085】
その後は、上述した第1実施形態の工程と同様の工程を経ることで、上述した図12に示す記録再生ヘッド302を製造できる。
【0086】
このように、本実施形態によれば、上述した第2実施形態と同様の効果を奏するとともに、金属膜51から発生する近接場光Rと、主磁極33の先端部分303から発生する磁場とをより縮小させ、高密度記録化に対応することができる。なお、上述した第3実施形態では、第2パターニング工程において、磁極母材304の角部、及び側面を全て除去する構成について説明したが、これに限らず、図14に示すように、磁極母材304の側面を残存させた状態でエッチングを終了しても構わない。
【0087】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図15は、図5に相当する図であって、第4実施形態における記録再生ヘッドを示す図である。
図15に示すように、本実施形態の記録再生ヘッド402では、金属膜51と主磁極33の先端部分303との間に両者をX方向で画成する離間膜401が形成されている。この離間膜401は、絶縁材料により構成されていることが好ましく、本実施形態では上述したコア23と同材料により形成されている。なお、Z方向から見て離間膜401の外側端面は、コア23の側面23d、金属膜51の斜面51b、及び主磁極33の先端部分303における斜面303bと同一面上に配置されている。
本実施形態によれば、金属膜51と主磁極33の先端部分303とを電気的に絶縁できるとともに、金属膜51の合金化を抑制できるので、金属膜51での自由電子の運動に悪影響が及ぶことがない。そのため、近接場光Rの発生効率をより向上できる。
【0088】
なお、本発明の技術範囲は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態で挙げた構成等はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、記録再生ヘッドを浮上させた空気浮上タイプの情報記録再生装置を例に挙げて説明したが、この場合に限られず、ディスク面に対向配置されていればディスクと記録再生ヘッドとが接触していても構わない。つまり、本発明の記録再生ヘッドは、コンタクトスライダタイプの記録再生ヘッドであっても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
さらに、上述した実施形態では、記録素子21に対してスライダ20の先端側に近接場光発生素子26を隣接配置した場合について説明したが、これに限らず近接場光発生素子26の先端側に記録素子21を隣接配置する等、スライダ20の先端側における近接場光発生素子26、記録素子21、及び再生素子22の順番は適宜設計変更が可能である。
【0089】
光束伝播素子25のコア23が一端側から他端側に向けて漸次絞り成形されている場合を例に挙げたが、この場合に限られず、ストレートに形成されていても構わない。また、コア23とクラッド24とをそれぞれ異なる材料で一体的に形成した光束伝播素子25を例に挙げたが、中空状に形成しても構わない。この場合には、中空となった空気部分がコアとなり、その周囲を囲んでいる部分がクラッドとなる。このように構成された光束伝播素子であっても、レーザ光Lを伝播させて近接場光発生素子26に入射させることができる。
また、上述した実施形態では、本発明の記録再生ヘッド2をディスクDに対して垂直な記録磁界を与える垂直磁気記録方式に採用する場合について説明したが、これに限らず、ディスクDに対して水平な記録磁界を与える面内記録方式に採用しても構わない。
【0090】
また、上述した第1パターニング工程において、コア23の残存部60を形成する方法について説明したが、残存部60を残さずにコア23の形成領域以外のコア23を全て除去しても構わない。
【0091】
さらに、図16に示すように、金属膜51と第1クラッド24aとの間にも遮光膜(第1遮光膜)52を形成しても構わない。すなわち、コア23の全周に亘って遮光膜52を形成しても構わない。この場合には、金属膜51でプラズモン共鳴を起こさずに、金属膜51を透過してしまったレーザ光Lを反射させてコア23内に戻すことで、再び金属膜51にレーザ光Lを入射させることができる。これにより、近接場光Rの発生効率をより向上できる。
【0092】
なお、図16に示す近接場光発生素子26を形成するには、上述した成膜工程において第1クラッド母材124aと金属膜母材151との間に遮光膜52の母材を形成しておき、上述した第2パターニング工程において、コア母材123及び金属膜母材151とともに遮光膜52の母材を一括してエッチングすればよい。これにより、遮光膜52とコア23とを精度良く位置決めすることができ、金属膜51を透過したレーザ光Lを漏れなくコア23内に戻すことができる。
【0093】
また、上述した実施形態では、Z方向から見て三角形状のコア23について説明したが、これに限らず、コア23のZ方向から見た断面形状は台形状や五角形状等の多角形状に適宜設計変更が可能である。
【0094】
また、上述した実施形態では、コア23の側面23gが平坦面の場合について説明したが、これに限らず、コア23の側面23gが湾曲面等であっても構わない。何れにせよ、金属膜51の側面51bや主磁極33の側面が、コア23の側面23gのY方向両側に角部を介して隣接する側面23dと同一面上に配置されれば構わない。
【符号の説明】
【0095】
1…情報記録再生装置 2…記録再生ヘッド(近接場光ヘッド) 3…ビーム 5…アクチュエータ 6…スピンドルモータ(回転駆動部) 8…制御部 20…スライダ 21…記録素子 23…コア 23d…側面(他側面) 23g…側面(一側面) 24…クラッド 24a…第1クラッド 24b…第2クラッド 26…近接場光発生素子 31…補助磁極 33…主磁極 42…光導波路(光束導入手段) 43…レーザ光源(光源) 51…金属膜(近接場光発生部) 51a…上底(界面) 52…遮光膜(第1遮光膜、第2遮光膜) 123…コア母材(コアの母材) 124a…第1クラッド母材(第1クラッドの母材) 151…金属膜母材(近接場発光部の母材) 220,304…磁極母材 401…離間膜 D…ディスク(磁気記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に導入された光束を他端側に向けて集光しながら伝播するとともに、近接場光に生成した後に外部に発する近接場光発生素子であって、
前記他端側に向けて前記光束を伝播させるコアと、
前記コアにおける前記一端側から前記他端側に向かう前記光束の伝播方向に沿って配置され、前記コアとの界面に沿って前記光束を伝播させて、前記光束から前記近接場光を発生させる近接場光発生部と、を有し、
前記コアは、前記伝播方向に沿って延在する複数の側面を有し、
前記複数の側面は、前記近接場光発生素子が配置された一側面と、前記伝播方向から見て前記一側面の両側で、前記一側面の面方向に交差する方向に沿って配置された他側面と、を有し、
前記伝播方向から見て、前記コアの前記他側面と同一面上に前記近接場光発生部の両端面が配置されていることを特徴とする近接場光発生素子。
【請求項2】
一端側に導入された光束を他端側に向けて集光しながら伝播するとともに、近接場光に生成した後に外部に発する近接場光発生素子の製造方法であって、
前記他端側に向けて前記光束を伝播させるコアと、
前記コアにおける前記一端側から前記他端側に向かう前記光束の伝播方向に沿って配置され、前記コアとの界面に沿って前記光束を伝播させて、前記光束から前記近接場光を発生させる近接場光発生部と、を有し、
前記近接場光発生部の母材を形成する近接場光発生部形成工程と、
前記近接場光発生部を覆うように前記コアの母材を形成するコア形成工程と、
前記コアの母材、及び前記近接場光発生部の母材をパターニングして、前記コア及び前記近接場光発生部を形成するパターニング工程と、を有し、
前記パターニング工程では、前記コアの母材、及び前記近接場光発生部の母材を同一工程で一括してパターニングすることを特徴とする近接場光発生素子の製造方法。
【請求項3】
前記近接場光発生部形成工程の前段に、少なくとも前記近接場光発生部の形成領域に第1遮光膜を形成する第1遮光膜形成工程を有し、
前記パターニング工程において、前記コアの母材、及び前記近接場光発生素子部の母材とともに、前記第1遮光膜を一括してパターニングすることを特徴とする請求項2記載の近接場光発生素子の製造方法。
【請求項4】
前記パターニング工程の後段に、前記コアを覆うように第2遮光膜を形成する第2遮光膜形成工程を有していることを特徴とする請求項2または請求項3記載の近接場光発生素子の製造方法。
【請求項5】
前記パターニング工程は、第1パターニング工程及び第2パターニング工程を有し、
前記第1パターニング工程では、前記コアの形成領域における前記コアの母材を、前記伝播方向から見て矩形状になるようにパターニングし、
前記第2パターニング工程では、前記コアの母材に対してプラズマ中でスパッタエッチングを行い、前記コアの母材を前記伝播方向から見て三角形状、または台形状になるようにパターニングすることを特徴とする請求項2ないし請求項4の何れか1項に記載の近接場光発生素子の製造方法。
【請求項6】
前記第2パターニング工程では、前記コアの母材とともに前記近接場光発生部の母材に対してスパッタエッチングを行うことを特徴とする請求項5記載の近接場光発生素子の製造方法。
【請求項7】
前記第1パターニング工程では、前記コアの形成領域以外における前記コアの母材を、前記コアの形成領域における前記コアの母材よりも薄い状態で残存させておくことを特徴とする請求項5または請求項6記載の近接場光発生素子の製造方法。
【請求項8】
前記近接場光発生部は、金属材料からなり、
前記近接場光発生部形成工程と前記コア形成工程との間に、少なくとも前記一端側に形成された前記近接場光発生部の母材を除去する除去工程を有していることを特徴とする請求項2ないし請求項7の何れか1項に記載の近接場光発生素子の製造方法。
【請求項9】
前記パターニング工程の後、前記コアの他端面を研磨する研磨工程を有し、
前記研磨工程では、前記コアが形成される基板上に前記コアの前記他端面と面一になるようにELG素子を形成し、前記ELG素子の抵抗値をモニタしながら前記他端面及び前記ELG素子を研磨することを特徴とする請求項2ないし請求項8の何れか1項に記載の近接場光発生素子の製造方法。
【請求項10】
請求項2ないし請求項9の何れか1項に記載の近接場光発生素子の製造方法を使用して、一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱するとともに、前記磁気記録媒体に対して記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光ヘッドの製造方法であって、
前記近接場光発生部形成工程の前段に、記録磁界を発生させる磁極の母材を形成する磁極形成工程を有し、
前記パターニング工程では、前記コアの母材、及び前記近接場光発生部の母材とともに、前記磁極の母材を同一工程で一括してパターニングすることを特徴とする近接場光ヘッドの製造方法。
【請求項11】
一定方向に回転する磁気記録媒体を加熱するとともに、前記磁気記録媒体に対して記録磁界を与えることで磁化反転を生じさせ、情報を記録させる近接場光ヘッドであって、
前記磁気記録媒体の表面に対向配置されたスライダと、
前記スライダの先端側に配置され、前記記録磁界を発生させる磁極を有する記録素子と、
前記他端側を前記磁気記録媒体側に向けた状態で前記記録素子に隣接して固定された、請求項1記載の近接場光発生素子と、
前記スライダに固定され、前記一端側から前記コア内に前記光束を導入させる光束導入手段と、を備えていることを特徴とする近接場光ヘッド。
【請求項12】
前記磁極は、前記近接場光発生部を間に挟んで前記コアの前記一側面に対向配置されるとともに、前記伝播方向から見て、前記コアの前記他側面と同一面上に前記磁極の外側端面が配置されていることを特徴とする請求項11記載の近接場光ヘッド。
【請求項13】
前記近接場光発生部と前記磁極との間には、前記近接場光発生部と前記磁極との間を画成する離間膜が形成されていることを特徴とする請求項11または請求項12記載の近接場光ヘッド。
【請求項14】
請求項11ないし請求項13の何れか1項に記載の近接場光ヘッドと、
前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、前記磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で前記近接場光ヘッドを先端側で支持するビームと、
前記光束導入手段に対して前記光束を入射させる光源と、
前記ビームの基端側を支持するとともに、前記ビームを前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に向けて移動させるアクチュエータと、
前記磁気記録媒体を前記一定方向に回転させる回転駆動部と、
前記記録素子及び前記光源の作動を制御する制御部と、を備えていることを特徴とする情報記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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