説明

近視野光学ヘッド

【課題】 近視野光プローブを持つスライダーを使用して近視野光と記録媒体との相互作用によって、高密度な記録媒体に対して高速で信頼性の高い情報の記録および読取を実現させるための情報記録/読取装置を提供することを目的としている。
【解決手段】 近視野光プローブを持つスライダー1を記録媒体3に対して近接させ、さらに発光素子2と微小開口7との距離も短くし、圧電素子によって記録媒体3からの微小開口の突出量を制御することによって、プローブにおける光強度あるいは光検出部における光強度を上げ、記録媒体3との相互作用を増加する。このことにより高感度で正確な情報記録及び情報読取装置を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、近視野光学ヘッドに関し、より詳しくは、近視野顕微鏡技術をハードディスクなどに代表される記録装置のヘッドに適用した近視野光学ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
近視野光を利用する光プローブを備えた近視野顕微鏡では、光の回折限界以上の高分解能にて試料を観測することができる。このような近視野顕微鏡では、当該光プローブの試料対向端部として、先鋭化した光ファイバー先端に設けた微小開口や異方性エッチングを施して形成されたシリコン基板上のチップに設けた微小開口を用いたり、光ファイバーの先鋭化された先端や当該チップによる微小突起を用いている。
【0003】
一方、このような観測原理を応用した、例えば(E. Betzig et al., Science 257,189(1992))に開示されているような近視野光学メモリも提案されている。
このような応用例においては、記録または読取ヘッドに形成される微小開口または微小突起を記録媒体表面に伝搬光である照射光の波長以下に近接または当接させる必要がある。
【0004】
ヘッドと記録媒体とを近接させる機構として提案されているものは例えば、(第44回応用物理学関係連合講演会講演予稿集28p−ZG−3)に示されているように、シリコン基板に異方性エッチングにより微小な開口を形成したヘッドを、ハードディスクドライブで用いられているフライングヘッドのように、記録媒体を回転させることによりヘッドと記録媒体間に押し込まれる空気の膜で浮上させ、ヘッドと記録媒体とを近接させる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記一般的なフライングヘッドシステムでは、ヘッドと記録媒体間に押し込まれる空気の膜が厚く、ヘッド底面と記録媒体表面間の距離が数十〜数百ナノメートルであり、近視野光を用いた記録/読取を高分解能かつ効率良く実現するには大き過ぎる距離となっている。この場合、近視野光の強度は微小開口から離れるほど指数関数的に急激に減少することから、ヘッドと記録媒体が離れているため近視野光強度が小さく、十分な信号強度が得られない、さらに高い分解能の実現も困難である、という問題点があった。
【0006】
また、ヘッド上面に置かれた発光素子あるいは受光素子とヘッド底面の微小開口との距離はスライダーの厚みと等しくなっており、発光素子を用いた場合には微小開口を照射する光強度はこの距離の2乗に比例して減衰するため、十分な信号強度が得られないという問題点があり、受光素子を用いた場合には受光部を大面積にしなければ十分な信号強度が得られないという問題点があった。
【0007】
また、ヘッドの休止中にはスライダー表面が記録媒体に接触しているため、記録媒体表面の吸着水によってスライダーと記録媒体の吸着が強くなり、ヘッドの運転開始時にスライダー及び記録媒体を損傷するという問題点があった。従来はこの問題点を回避するためにスライダーを記録媒体に対して垂直方向に移動する機構が必要となり、ヘッドの小型化の障害になるという問題点があった。
【0008】
また、ヘッドの浮上時にはスライダーが記録媒体表面に対して傾いた構造を持っているが、このため微小開口が記録媒体表面に対して傾いて配置されることになり、微小開口の一部が記録媒体から離れてしまうことになる。近視野光強度は微小開口と記録媒体の距離に対して指数関数的に減衰することから、微小開口のうち記録媒体から離れている部分は記録媒体と十分な相互作用を持てなくなり、十分な信号強度が得られないという問題点があった。
【0009】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡単な構造でしかも記録媒体とヘッドとの距離を小さくし、この記録媒体とヘッドとの距離を制御し、運転開始時及び停止時のスライダーと記録媒体の接触面積を小さくし、運転休止中はプローブと記録媒体が接触しないことでプローブおよび記録媒体の損傷を防止する高感度高分解能近視野光学ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る近視野光学ヘッドは、負荷加重を与えるサスペンションアームにより支持されると共に記録媒体との相対運動により浮上力を得、前記負荷加重と前記浮上力との均衡により記録媒体との間に隙間をつくるスライダーと、前記スライダー底面に形成され、近視野光を発生させる、あるいは前記記録媒体表面に発生した近視野光を伝播光に変換させるプローブとを備え、前記スライダーが前記記録媒体表面を走査するときに、前記近視野光を介して前記記録媒体と前記プローブが相互作用することによって情報の記録および再生を行う近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブが前記スライダー底面から突出していることを特徴としている。
【0011】
よって、スライダーと記録媒体との距離が数十〜数百ナノメートルであっても、プローブと記録媒体との距離は数〜数十ナノメートルと小さくすることが可能となり、それによって近視野光と記録媒体との相互作用を増大させることで、高感度高密度の記録が可能となり、また、ヘッドの運転開始時および停止時にはスライダー底面と記録媒体との接触面積が小さいため接触による損傷を防止できる。
【0012】
また、本発明に係る近視野光学ヘッドは前記最初の近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブは微小開口であることを特徴としている。
よって、前記最初の効果の上に、記録媒体とプローブの相互作用が主に近視野光を主成分とした光によって起こるようにすることができ、高いS/N比が得られる。
【0013】
また、本発明に係る近視野光学ヘッドは前記最初の近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブは微小突起であることを特徴としている。
よって、前記最初の効果の上に、プローブとして内部構造を持たない単純な突起を形成すれば良いことから、プローブ作成がより容易になり、低コストで安定的に作成できる。
【0014】
また、本発明に係る近視野光学ヘッドは前記いずれかの近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブを、前記情報記録あるいは再生時以外は、前記スライダー底面あるいは前記スライダー内部に収納しておき、前記情報記録あるいは再生時に、前記プローブを、前記スライダー底面から所定の量あるいは方向に突出させる機構を備えていることを特徴としている。
【0015】
よって、前記いずれかの効果の上に、ヘッドの休止中と運転開始/停止時のそれぞれのモードにおいてスライダー底面と記録媒体表面の損傷を防止することができる。また、プローブを記録媒体表面に対して平行に配置することによって高感度ヘッドが実現される。
また、本発明に係る近視野光学ヘッドは前記いずれかの近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブは前記スライダー底面に複数個形成され、前記複数のプローブの前記突出量あるいは突出方向あるいはその両者が、前記プローブのおのおのに対して個別に設定されていることを特徴としている。
【0016】
よって、前記いずれかの効果の上に、おのおののプローブごとに感度を設定することが可能となる。また、一つのプローブをトラッキングに利用したり、高速再生に利用したりすることができる。
また、本発明に係る近視野光学ヘッドは前記いずれかの近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブの前記突出量あるいは突出方向あるいはその両者の制御と、前記スライダーの前記記録媒体上走査を同時に行う機構を備えていることを特徴としている。
【0017】
よって、前記いずれかの効果の上に、データの記録/再生と同時に感度、分解能などの制御が可能となる。また、記録媒体表面に凹凸がある場合でも記録/再生が可能なので、高密度化が可能となる。
また、本発明に係る近視野光学ヘッドは、負荷加重を与えるサスペンションアームにより支持されると共に記録媒体との相対運動により浮上力を得、前記負荷加重と前記浮上力との均衡により記録媒体との間に隙間をつくるスライダーと、当該スライダーを貫通し頂部が前記スライダー底面における微小開口となるように形成された少なくとも1つの逆錐状の穴と、当該逆錐状の穴の底部に発光素子あるいは受光素子とを備え、前記微小開口と前記発光素子あるいは受光素子との距離を前記スライダーの厚みよりも短くしたことを特徴とする。
【0018】
よって、スライダーの厚みが数百ミクロンであっても、微小開口と発光素子あるいは受光素子との距離を数十ミクロン以下にすることができ、微小開口での光強度を大きくすることが可能であり、それによって高感度ヘッドが実現される。
【発明の効果】
【0019】
この発明の近視野光学ヘッドによれば、負荷加重を与えるサスペンションアームにより支持されると共に記録媒体との相対運動により浮上力を得、前記負荷加重と前記浮上力との均衡により記録媒体との間に隙間をつくるスライダーと、前記スライダー底面に形成され、近視野光を発生させる、あるいは前記記録媒体表面に発生した近視野光を伝播光に変換させるプローブとを備え、前記スライダーが前記記録媒体表面を走査するときに、前記近視野光を介して前記記録媒体と前記プローブが相互作用することによって情報の記録および再生を行う近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブが前記スライダー底面から突出していることを特徴としているので、スライダーと記録媒体との距離が数十〜数百ナノメートルであっても、プローブと記録媒体との距離は数〜数十ナノメートルと小さくすることが可能となり、それによって近視野光と記録媒体との相互作用を増大させることで、高感度高密度の記録が可能となり、また、ヘッドの運転開始時および停止時にはスライダー底面と記録媒体との接触面積が小さいた
め接触による損傷を防止できる。
【0020】
また、本発明の近視野光学ヘッドによれば、前記最初の近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブは微小開口であることを特徴としているので、前記最初の効果の上に、記録媒体とプローブの相互作用が主に近視野光を主成分とした光によって起こるようにすることができ、高いS/N比が得られる。
また、本発明の近視野光学ヘッドによれば、前記最初の近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブは微小突起であることを特徴としているので、前記最初の効果の上に、プローブとして内部構造を持たない単純な突起を形成すれば良いことから、プローブ作成がより容易になり、低コストで安定的に作成できる。
【0021】
また、本発明の近視野光学ヘッドによれば、前記いずれかの近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブを、前記情報記録あるいは再生時以外は、前記スライダー底面あるいは前記スライダー内部に収納しておき、前記情報記録あるいは再生時に、前記プローブを、前記スライダー底面から所定の量あるいは方向に突出させる機構を備えていることを特徴としているので、前記いずれかの効果の上に、ヘッドの休止中と運転開始/停止時のそれぞれのモードにおいてスライダー底面と記録媒体表面の損傷を防止することができる。また、プローブを記録媒体表面に対して平行に配置することによって高感度ヘッドが実現される。
【0022】
また、本発明の近視野光学ヘッドによれば、前記いずれかの近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブは前記スライダー底面に複数個形成され、前記複数のプローブの前記突出量あるいは突出方向あるいはその両者が、前記プローブのおのおのに対して個別に設定されていることを特徴としているので、前記いずれかの効果の上に、おのおののプローブごとに感度を設定することが可能となる。また、一つのプローブをトラッキングに利用したり、高速再生に利用したりすることができる。
【0023】
また、本発明の近視野光学ヘッドによれば、前記いずれかの近視野光学ヘッドにおいて、前記プローブの前記突出量あるいは突出方向あるいはその両者の制御と、前記スライダーの前記記録媒体上走査を同時に行う機構を備えていることを特徴としているので、前記いずれかの効果の上に、データの記録/再生と同時に感度、分解能などの制御が可能となる。また、記録媒体表面に凹凸がある場合でも記録/再生が可能なので、高密度化が可能となる。
【0024】
また、本発明の近視野光学ヘッドによれば、本発明に係る近視野光学ヘッドは負荷加重を与えるサスペンションアームにより支持されると共に記録媒体との相対運動により浮上力を得、前記負荷加重と前記浮上力との均衡により記録媒体との間に隙間をつくるスライダーと、当該スライダーを貫通し頂部が前記スライダー底面における微小開口となるように形成された少なくとも1つの逆錐状の穴と、当該逆錐状の穴の底部に発光素子あるいは受光素子とを備え、前記微小開口と前記発光素子あるいは受光素子との距離を前記スライダーの厚みよりも短くしたことを特徴とするので、スライダーの厚みが数百ミクロンであっても、微小開口と発光素子あるいは受光素子との距離を数十ミクロン以下にすることができ、微小開口での光強度を大きくすることが可能であり、それによって高感度ヘッドが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
(実施の形態1)
図7は本発明の実施の形態1に係る近視野光学ヘッドを用いた情報記録/再生装置の構成を示す。この情報再生装置20は、レーザ発振器21と、レーザ光の偏光方向を制御する波長板22と23、前記レーザ光を伝送する光導波路24、微小開口を持つ光ヘッド1、光ヘッド駆動アクチュエータ30、近視野光7と記録媒体33の相互作用によって発生した散乱光を集光するレンズ29、散乱光を受光する受光素子25、出力信号処理回路26、制御回路27、記録媒体33の位置を制御する記録媒体駆動アクチュエータ34を備えている。レーザ発振器21から発生した光は波長板22,23によって偏光方向を制御され、光導波路24を介して光ヘッド1に導かれる。図1で後述するように光ヘッドの底面において発生した近視野光7は記録媒体33と相互作用の結果散乱光が発生する。図7においては散乱光が記録媒体から上面に反射したものを検出する構造を示したが、記録媒体を透過する構造にすることも容易にできる。散乱光は集光レンズ29によって集光され、受光素子25で電気信号に変換される。この信号は出力信号処理回路26に送られ、信号成分の抽出などの処理を行った後、制御回路27に送られる。制御回路27は受け取った信号をもとにデータ出力28を生成し、光ヘッド駆動アクチュエータ30と、記録媒体駆動アクチュエータ34に制御用信号を送る。
【0026】
図1は、この発明の実施の形態1による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。より詳しくは、記録媒体の断面構造とともに当該記録媒体にアクセスする際の姿勢を示すものである。スライダー1は、サスペンションアーム(図示省略)により支持される。これらサスペンションアームとスライダー1とによって浮上ヘッド機構が構成される。サスペンションアームは、ボイスコイルモータ(図示省略)を駆動源とし揺動軸を中心に揺動する。スライダー1の走査方位には、テーパ1aが設けてある。このテーパ1aとスライダー底面1bおよび記録媒体3の表面とにより、くさび膜形状の空気流路1cを形成する。スライダー1には、サスペンションアームおよびジンバルバネにより、記録媒体3側への負荷加重が与えられている。スライダー1は、シーク制御およびフォローイング制御により記録媒体3のトラック上に位置決めされている。スライダー1には逆錐状の穴が光の通路5となるように開けられている。本実施の形態においては光の通路5は逆錐状になっているが、直方体あるいは円柱状になっていても良い。光の通路5の先端はスライダー1の底面における微小開口7となり、反対側の先端はスライダー1の上面に接着された発光素子2によって覆われている。記録媒体3上に単位データを収納する記憶領域4が形成されている。スライダー底面のうち微小開口7の近傍部分6がスライダー1の底面から記録媒体3の方向に突出している。このため、スライダー底面1bと記録媒体3表面との距離hに比べ、微小開口7と記録媒体3表面との距離h'のほうが小さくなっている。このような構造を持つスライダーは異方性エッチングなどの半導体微細加工技術により作成される。発光素子2によって発生した光は光の通路5を通って微小開口7に導かれる。ここで微小開口7は光の波長よりも小さいため、微小開口7の記録媒体3側には近視野光を主成分とする光場が形成される。この近視野光と記憶領域4との相互作用によりデータの記録/読取を行う。スライダー1の底面と記録媒体3の表面との距離hは典型的には数十から数百ナノメートルであり、近視野光を十分な強度で記憶領域4と相互作用させることは困難であるが、微小開口7の近傍部分6がスライダー底面の他の部分よりも突出しているため、微小開口7は記録媒体3の表面に近接している。近視野光の強度は微小開口7からの距離に対して指数関数的に減衰するため、微小開口7を記憶領域4に可能なかぎり近接させることが重要であるが、本実施例の構成にすることにより、微小開口7を記録媒体3の表面に近接させることができ、十分な強度の近視野光相互作用を起こさせることが可能となり、高感度の光ヘッドが実現された。また、微小開口7が記録媒体3の表面に近接しているため、記録媒体3表面の記憶領域4を小面積にすることができ、高分解能の光ヘッドが実現された。また、スライダー1と記録媒体3表面が微小開口7の近傍部分6においてのみ接触した構造になっているため、吸着水などによるスライダー1と記録媒体3との吸着力が弱くなり、ヘッドの運転開始時及び停止時にスライダー1と記録媒体3に機械的損傷が起きにくくなった。
【0027】
同様の効果は発光素子2に代えて受光素子を用いた場合においても得られた。微小開口7が記録媒体3に近接しているため、十分な強度の近視野光相互作用を起こさせることが可能となり、散乱された近視野光が伝播光となって受光素子に高い強度で到達する。これにより高感度高分解能の光ヘッドが実現された。
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。動作機構は実施の形態1と同一であるので説明は省略する。本実施の形態においては発光素子2を接着するスライダー1の上面が他の部分に比べて掘り下げられた構造になっている。このような構造を持つスライダーは異方性エッチングなどの半導体製造技術によって作製される。従来の構造では発光素子2からの光はスライダー1の上面から微小開口7までd1の距離を進まなければならないが、本実施例においてはd2の距離を進めばよい。微小開口7における光強度は発光素子2から微小開口7までの距離の2乗に比例して減衰するため、発光素子2と微小開口7の距離は可能なかぎり小さくすることが重要であるが、本実施例には発光素子2が微小開口7に近づいた構成になっており、微小開口7での入力光強度を向上させることができた。データの記録/読取を高感度で行うためには十分な強度の近視野光を発生させることが重要であり、それを実現する方法のひとつは微小開口7での光強度を上げることである。本実施例でこれが実現された。同様の効果は発光素子2に代えて受光素子を用いても得られた。受光素子を接着するスライダー1の上面が他の部分に比べて掘り下げられた構造になっているため、受光素子は微小開口7に近づいた構成になっており、小面積の受光部で十分な信号強度が得られるため、高分解能の光ヘッドが実現された。
【0028】
(実施の形態3)
図3は、本発明の実施の形態3による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。実施の形態1との違いは発光素子2を接着するスライダー1の上面が他の部分に比べて掘り下げられた構造になっている点である。その他の構造および製造方法は実施の形態1と同様であり、説明を省略する。実施の形態1では発光素子2からの光はスライダー1の上面から微小開口7までd1の距離を進まなければならないが、本実施例においてはd2の距離を進めばよい。実施の形態2と同様に微小開口7での入力光強度を向上させることができ、さらにスライダー底面のうち微小開口7の近傍部分6が記録媒体方向に突出していることによって、微小開口7を記録媒体3に近接させることが可能となった。本実施例においては、高感度で高密度なデータの記録/読取を実現するために近視野光が到達しなければならない距離が、従来のhではなくそれよりも短いh'であるため、十分な強度の近視野光相互作用が起こされ、高感度で高密度なデータの記録/読取が実現された。また、ヘッドの運転休止時においては、スライダー1は記録媒体3表面か
ら浮上せず記録媒体3表面に接触しているが、スライダー1と記録媒体3表面が微小開口7の近傍部分6においてのみ接触した構造になっているため、吸着水などによるスライダー1と記録媒体3との吸着力が弱くなり、ヘッドの運転開始時及び停止時にスライダー1と記録媒体3に機械的損傷が起きにくくなった。実施の形態1,2および3と同様に、発光素子2のかわりに受光素子を用いても同様の効果が得られた。
【0029】
(実施の形態4)
図4は、本発明の実施の形態4による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。実施の形態3との違いは微小開口部7が圧電素子8によってスライダー1から突出する構造になっている点である。その他の構造および製造方法は実施の形態3と同様であり、説明を省略する。図4(b)はヘッドの上面図で、圧電素子8は微小開口部7の両側に接着されている。図4(c)に示すように、圧電素子8に電位を印加することによって体積変化を起こさせ、スライダーの微小開口部7の近傍部分6を記録媒体3方向に突出させる。圧電素子8に印加する電位を制御することによって、微小開口部7をスライダー1底面に収納あるいはスライダー1底面から突出させることができる。
【0030】
ヘッドの休止中には微小開口部7をスライダー1底面に収納しておくことによって、スライダー1と記録媒体3の密着性を上げ、外部振動による損傷を防止する。ヘッドの運転開始時および停止時には微小開口部7をスライダー1底面より突出させ、スライダー1と記録媒体3の密着性を下げ、抵抗の小さい状態での運転開始および停止を行う。このような機構にすることによって、本実施例においてはスライダー1を記録媒体3から垂直方向に移動させる機構が不必要になった。また、ヘッドの運転中にはスライダー1の微小開口部7は記録媒体3方向に突出していることによって、微小開口7を記録媒体3に近接させることが可能となった。これにより、高感度で高密度なデータの記録/読取を実現するために近視野光が到達しなければならない距離が、従来のhではなくそれよりも短いh'であるため、十分な強度の近視野光相互作用が起こされ、高感度で高密度なデータの記録/読取が実現された。同様の効果は発光素子2に代えて受光素子を用いても得られた。
【0031】
(実施の形態5)
図5は、本発明の実施の形態5による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。スライダー1の底面が記録媒体3の表面に対して傾いた配置になっている点、および圧電素子8と8'の体積変化量が異なっている点以外は実施の形態4と同様であり、説明を省略する。本実施の形態は実施の形態4の持つ効果に加えて、圧電素子8と8'に対して異なる印加電圧をかけることによって、スライダー1の記録媒体3に対する傾きを補正し、微小開口7が記録媒体3に対して平行に配置されるように制御することが可能となった。近視野光は微小開口7からの距離に対し指数関数的に減衰するため、微小開口7を記録媒体3に対して平行に配置することで、微小開口7全体に均一な強度で近視野光を発生させることが実現した。これにより本実施の形態においては実施の形態4が持つ効果を実現したが、それ以外の効果として微小開口7の全域が近視野光発生源となり、十分な強度の近視野光相互作用が得られた。
【0032】
(実施の形態6)
図6は、本発明の実施の形態6による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。複数個の微小開口11,12部がスライダー1底面に形成され、それぞれが圧電素子8,8',8'',8'''によって、記録媒体3方向に突出する。その他の構造と製造方法は実施の形態4と同様であり、説明を省略する。図6(b)はヘッドの上面図で、圧電素子8,8',8'',8'''は微小開口11,12の両側に接着されている。圧電素子8,8'に印加する電位より圧電素子8'',8'''に印加する電位を大きくすることによって、h''がh'より小さくなり、スライダー底面のうち微小開口の近傍部分10のほうが9よりも記録媒体3表面に近接する。この構成により、本実施の形態は実施の形態4の持つ効果に加えて、微小開口12は11より高感度での相互作用を起こす。微小開口12をデータの記録/再生に使用し、微小開口11をトラッキングに使用することが可能となった。また、微小開口11を高速で粗い記録/再生に使用し、微小開口12を高密度記録/再生あるいは再生情報のヴェリファイに使用するなど、多種類の応用が可能である。
【0033】
(実施の形態7)
実施の形態4、5および6において、圧電素子8,8',8'',8'''に印加する電位を高速に変化させることにより、記録/読取と同時に微小開口7部をスライダー1平面から突出あるいはスライダー1平面へ収納させることができる。これにより、本実施の形態においては実施の形態4、5および6がもつ効果に加えて、記録媒体表面がランド・グルーブ記録方式のように凹凸がある場合でも、ランドだけでなくグルーブに対してもアクセスできるため、高密度な記録/再生が可能となった。
【0034】
(実施の形態8)
図8は、本発明の実施の形態8に係る情報記録/再生装置の概略構成を示すブロック図である。図7との違いは近視野光ヘッド231として先端に図7のような微小開口ではなく、100nm程度の大きさの先鋭な突起を持つプローブを用いた点と、レーザー201からの入射光を記録媒体206の下方から入射し、全反射によって近視野光205を記録媒体206表面に発生させている点である。他は図7と同じであるので、説明を省略する。入射光は光ファイバ(図示略)などによって記録媒体206の側面に導入され、記録媒体206中を全反射によって伝播する。記録媒体206の表面には内部の全反射のために近視野光205が発生している。近視野光205は記録媒体206の表面の光学特性すなわちデータマークの有無によってその強度分布が異なる。この近視野光205が近視野光プローブ231によって散乱されて散乱光208となり、受光素子204で検出される。検出された信号は信号処理回路214に送られ、信号処理回路214からは出力信号215と、制御回路212に送られる信号が出力される。制御回路
212はアクチュエータ207、211に対する信号を出し、それによって記録媒体206のz方向位置を粗動機構210と微動機構209が制御する。
【0035】
図9は、本実施の形態における近視野光学ヘッドを示す。図1との違いはプローブとして微小開口ではなく、微小突起301を用いている点である。入射光206と記憶領域4との相互作用によって発生した近視野光205は微小突起301によって散乱光208に変換される。散乱光208は図8に示すように記録媒体206の上方向に向かうものを検出しても良いし、図9に示すように記録媒体206内部を透過したものを検出することも可能である。近視野光205は記録媒体表面から離れるにつれて指数関数的に減衰するため、微小突起301はできるだけ記録媒体表面に近接させる必要があるが、本実施の形態においては微小突起部がスライダー底面から記録媒体方向に突出した構造をとっているために、より近接した形で近視野光と相互作用させることが可能である。これにより高感度な近視野光学ヘッドが実現された。また、実施の形態4のように微小突起部を上下に移動する機構と組み合わせることによって微小突起部をヘッド休止中に損傷から保護することもできる。
【0036】
(実施の形態9)
図10は、本発明の実施の形態9による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。図4との違いは図10において開口部がスライダー底面よりも上側に陥没した位置にある点である。その他の構造および動作機構については実施の形態4と同一であるので説明を略す。ヘッドの休止中には開口部はスライダー底面よりも上にあるため、記録媒体3と接触することが無く、開口部の損傷を防止することができた。同様の構造は実施の形態8のような微小突起からなるプローブにおいても実現することができ、同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施の形態1による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。
【図4】この発明の実施の形態4による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。
【図5】この発明の実施の形態5による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。
【図6】この発明の実施の形態6による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る近視野光学ヘッドを用いた情報再生装置の構成図である。
【図8】この発明の実施の形態8に係る近視野光学ヘッドを用いた情報再生装置の概略構成ブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態8による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。
【図10】この発明の実施の形態9による近視野光学ヘッドを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0038】
1 スライダー
1a テーパ
1b スライダー底面
1c 空気流路
2 発光素子あるいは受光素子
3 記録媒体
4 記憶領域
5 光の通路
6 スライダー底面のうち微小開口の近傍部分
7 微小開口
8,8',8'',8''' 圧電素子
9 スライダー底面のうち微小開口の近傍部分
10 スライダー底面のうち微小開口の近傍部分
11 微小開口
12 微小開口
20 情報再生装置
21 レーザ発振器
22、23 波長板
24 光導波路
25 受光素子
26 出力信号処理回路
27 制御回路
28 データ出力
29 レンズ
30 光ヘッド駆動アクチュエータ
33 記録媒体
34 記録媒体駆動アクチュエータ
202 レーザ
204 受光素子
205 近視野光
206 情報記録媒体
207 アクチュエータ
208 散乱光
209 微動機構
210 粗動機構
211 アクチュエータ
212 制御回路
213 支持体
214 信号処理回路
215 出力信号
231 近視野光ヘッド
301 微小突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷加重を与えるサスペンションアームにより支持されると共に記録媒体との相対運動により浮上力を得、前記負荷加重と前記浮上力との均衡により記録媒体との間に隙間をつくるスライダーと、
前記スライダーを貫通し頂部が前記スライダー底面における微小開口となるように形成された少なくとも1つの逆錐状の穴と、
前記逆錐状の穴の底部に発光素子あるいは受光素子とを備え、
前記微小開口と前記発光素子あるいは受光素子との距離を前記スライダーの厚みよりも短くしたことを特徴とする近視野光学ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−273086(P2007−273086A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168729(P2007−168729)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【分割の表示】特願平11−84291の分割
【原出願日】平成11年3月26日(1999.3.26)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】