説明

近赤外線吸収コーティング剤

【課題】耐溶剤性の低い基材上に塗布することができ、近赤外線吸収能及び耐久性が良好な近赤外線吸収コーティング組成物を提供する。
【解決手段】近赤外線吸収色素、アルコール系溶媒及び樹脂からなる近赤外線吸収コーティング剤である。アルコール系溶媒としては、沸点が100℃以上のアルコールが好ましく、例えばノルマルブチルアルコール、ダイアセトンアルコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が好ましい。近赤外線吸収材料に本発明は、上記近赤外線吸収コーティング剤を透明基材に塗布したものである。透明基材としてはポリカーボネート等が好ましい。この近赤外線吸収材料は、薄型ディスプレーや光半導体素子用の光学部材や光情報記録材料などに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外線吸収コーティング剤、近赤外線吸収コーティング剤を塗布してなる近赤外線吸収材料、薄型ディスプレー用光学フィルム等に関する。特に、本発明はアルコール系溶媒を主とする近赤外線吸収コーティング剤、当該近赤外線吸収コーティング剤を塗布してなる近赤外線吸収材料、当該近赤外線吸収材料を用いてなる薄型ディスプレー用光学部材等に関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外線吸収材料は、LCD(液晶ディスプレー)、PDP(プラズマディスプレー)、CCDカメラ等の光半導体素子等に用いられている。近赤外線吸収材料に用いられる近赤外線吸収色素としては、従来、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、金属ジチオール錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素、無機酸化物粒子が使用されている。中でもジイモニウム系色素、シアニン色素は近赤外線の吸収能が高く、可視光領域での透明性が高いことから多用されている(例えば、特許文献1から4参照)。
【特許文献1】特開2003−96040号公報
【特許文献2】特開2000−80071号公報
【特許文献3】特開2001−305335号公報
【特許文献4】特開平10−50261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、薄型で大画面とされうる液晶ディスプレーやPDP(Plasma Display Panel)等の薄型ディスプレーが注目されている。ところが、液晶ディスプレーの冷陰極管やPDPパネルからは近赤外線(800〜1100nm)が発生し、この近赤外線が家電用リモコンの誤作動を誘発することが判明した。そこで、近赤外線の吸収能が高く、可視領域での透明性が高い近赤外線吸収材料が求められている。また、CCDカメラ等に使用される光半導体素子も近赤外線領域の感度が高いため、近赤外線の除去が必要である。さらに、近赤外線吸収材料は、CD−R、CD−ROM、DVD等の光記録材料にも用いられる。
【0004】
薄型ディスプレー、光半導体素子に使用される光学部材又は光記録材料には、様々な透明基材が使用されている。この透明基材として、ポリカーボネート系基材、ポリスチレン系基材、(メタ)アクリル系基材、ラクトン環構造を有する樹脂系基材等が使用されることがある。しかし、これらの透明基材は溶剤に溶けやすいため、コーティング剤によりヘイズの上昇や反りが発生しやすい。このため、コーティング剤の塗布による透明基材フィルムの高機能化は困難であった。
【0005】
また、近赤外線吸収色素には溶解性に劣るものがあり、コーティング剤に配合される場合、色素に適した溶媒を選択する必要があった。さらに、近赤外線吸収色素は耐久性が劣る場合がある。耐久性に劣る近赤外線吸収色素では、近赤外線の吸収能の低下や着色が発生し、これらはディスプレー用途や光半導体素子用途において重大な問題となりうる。この劣化は、熱、水分、光等の様々な要因により色素が変質することで引き起こされると考えられる。このため、従来から近赤外線吸収色素の耐久性の改良が試みられてきたが、その効果は十分なものではない。特に1000nm以上の近赤外線を吸収する色素の種類は限られており、色素の選択も容易ではなかった。
【0006】
本発明の目的は、溶剤に溶解しやすい基材に塗布することができ、高い近赤外線吸収能と高耐久性とを示す近赤外線吸収コーティング剤を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、可視領域での透明性と耐久性に優れる薄型ディスプレー用光学材料等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、近赤外線吸収色素、溶媒、樹脂について鋭意検討を行なった。その結果、本発明者は、近赤外線吸収色素、アルコール系溶媒及び樹脂からなる近赤外線吸収コーティング剤は、色素及び樹脂の溶解性が良好で、耐溶剤性の劣る基材に塗布することができ、且つ耐久性の良好な近赤外線吸収コーティング剤となりうることを見出した。また、この近赤外線吸収コーティング剤を使用することによって、耐久性に優れかつ可視領域の透明性に優れた薄型ディスプレー用光学フィルムが得られうることを見出した。本発明者は、これらの知見に基づいて、本発明を完成させた。本発明の目的は、近赤外線吸収色素、アルコール系溶媒及び樹脂からなる近赤外線吸収コーティング剤により達成される。また、上記他の目的は、本発明の近赤外線吸収コーティング剤を透明基材に塗布することで得られる近赤外線吸収材料によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の近赤外線吸収コーティング剤は、耐溶剤性の劣る基材に対しても塗布することができる。さらに、本発明の近赤外線吸収コーティング剤を透明基材に塗布して得られた近赤外線吸収材料は可視領域の透明性と耐久性が高いため、薄型ディスプレー等において好適に使用されうる。また、本発明の近赤外線吸収コーティング剤又は近赤外線吸収コーティング材料を使用した光学フィルターは、近赤外線の吸収能及び可視光領域での透明性を長期間にわたって維持しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
1.[近赤外線吸収色素]
本発明の近赤外線吸収コーティング剤で使用できる近赤外線吸収色素は、アルコール系溶媒中で析出しないものが好ましく、可視光領域の透明性と近赤外線吸収能があるものが好ましく、耐久性の高いものが好ましい。近赤外線吸収色素の具体例として、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、ジチオール金属錯体系色素、フタロシアニン系色素、ジイモニウム系色素等が挙げられる。これらの中でも、ジイモニウム系の近赤外線吸収色素及びシアニン系の近赤外線吸収色素は、可視領域の透明性に優れるので好ましい。また、フタロシアニン系の近赤外線吸収色素は耐久性に優れるため、好ましい。
【0010】
近赤外線吸収能を高める観点から、近赤外線吸収色素の最大吸収波長は、800nm以上1100nm以下であるのが好ましい。
【0011】
本発明における好ましい上記ジイモニウム色素は、下記式(a)で示されるカチオンと、対アニオンからなる塩である。ただし式(a)においてRからRは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基又は置換基を有する炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0012】
【化1】

【0013】
からRを構成するハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
【0014】
からRを構成する炭素数1〜10のアルキル基として、直鎖アルキル基、分岐状アルキル基、脂環式アルキル基等が挙げられる。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0015】
また、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基に結合しうる置換基としては、シアノ基;ヒドロキシル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、メトキシブトキシ基、エトキシブトキシ基等の炭素数2〜8のアルコキシアルコキシ基;メトキシメトキシメトキシ基、メトキシメトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基等の炭素数3〜15のアルコキシアルコキシアルコキシ基;アリルオキシ基;フェノキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜12のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;メチルカルボニルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルキルカルボニルオキシ基;メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n−プロポキシカルボニルオキシ基、n−ブトキシカルボニルオキシ基等の炭素数2〜7のアルコキシカルボニルオキシ基等がある。具体的には、R〜Rとして、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3,−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基等が挙げられる。
【0016】
本発明では、R〜Rは、同一であってもあるいは異なるものであってもよいが、すべて同じであることが好ましい。
【0017】
ジイモニウムカチオンは、上記式(a)で示されるように、2価の陽イオンである。よって、例えば、塩化物イオン等の1価のアニオンが使用される場合には、本発明によるジイモニウム系色素は、ジイモニウムカチオン1個に対して、2個のアニオンが結合する形態である。
【0018】
ジイモニウム色素の対アニオンは、特に限定はされず、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、P−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、4−モルホリノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオール銅錯体アニオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酢酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、硫酸イオン、バナジン酸イオン、ホウ酸イオンなどが使用できる。
【0019】
これらのうち分子量が250以上の有機アニオンは色素の溶解性及び耐久性が良好であるため、好ましい。具体的にはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン(分子量679.0)、4−モルホリノスルホニル−1,2−ベンゼンジチオール銅錯体アニオン(分子量642.4)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン(分子量411.2)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン(分子量280.1)、イミドイオン、等が挙げられる。
【0020】
また、本発明に係る近赤外線吸収色素としてシアニン系色素が使用できる。シアニン系色素は近赤外線吸収能に優れるものであれば好ましく、インドリウム系カチオン又はベンゾチアゾリウム系カチオンと、対アニオンとからなる塩が好ましく使用できる。インドリウム系カチオン又はベンゾチアゾリウム系カチオンとしては、下記式(b)〜(m)で示されるカチオンが好ましく使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
【化7】

【0027】
【化8】

【0028】
【化9】

【0029】
【化10】

【0030】
【化11】

【0031】
【化12】

【0032】
【化13】

【0033】
インドリウム系カチオン又はベンゾチアゾリウム系カチオンの対アニオンは、特に制限されず、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、硝酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、P−トルエンスルホン酸イオン、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン、プロピル硫酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、テトラフェニルホウ酸イオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(フルオロスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、2,2,2−トリフルオロ−N−(トリフルオロメタンスルフォニル)アセタミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ベンゼンスルフィン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酢酸イオン、安息香酸イオン、シュウ酸イオン、コハク酸イオン、マロン酸イオン、オレイン酸イオン、ステアリン酸イオン、クエン酸イオン、一水素二リン酸イオン、二水素一リン酸イオン、ペンタクロロスズ酸イオン、クロロスルホン酸イオン、フルオロスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、モリブデン酸イオン、タングステン酸イオン、チタン酸イオン、ジルコン酸イオン、硫酸イオン、バナジン酸イオン、ホウ酸イオンなどが使用できる。
【0034】
上記式(b)〜(m)で示されるカチオンを含む色素として、以下に例示される市販品が用いられ得る。具体的には、上記式(b)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS812MI(対アニオンはヨウ化物イオン)が用いられうる。上記式(c)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0712(対アニオンはヘキサフルオロリン酸イオン)が用いられうる。上記式(d)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0726(対アニオンは塩化物イオン)が用いられうる。上記式(e)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、アメリカンダイソース社製のADS780MT(対アニオンはp−トルエンスルホン酸イオン)が用いられうる。上記式(f)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0006(対アニオンは過塩素酸イオン)が用いられうる。上記式(g)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0081(対アニオンは過塩素酸イオン)が用いられうる。上記式(h)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製のS0773(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン)が用いられうる。上記式(i)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0772(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン)が用いられうる。上記式(j)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0734(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン)が用いられうる。上記式(k)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0813(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン)が用いられうる。上記式(l)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、FEWケミカル社製の商品名S0889(対アニオンはテトラフルオロホウ酸イオン)が用いられうる。上記式(m)で表されるカチオンを含むシアニン系色素として、Exciton社製の商品名IR140(対アニオンは過塩素酸イオン)が用いられうる。シアニン系色素を使用することにより可視領域の透明性が高い近赤外線吸収組成物が得られる。これらのうち上記一般式(j)〜(l)のカチオンを含むシアニン色素は最大吸収波長(メタノール中での測定値)が1000nm以上であり、近赤外線の吸収能が高く、可視透明性も高いので好ましい。
【0035】
また、近赤外線吸収色素の融点が200℃以上であると、さらに耐久性が向上する。耐久性向上の観点から、より好ましくは、近赤外線吸収色素の融点は210℃以上である。融点が200℃以上であるジイモニウム色素として、CIR−RL(日本カーリット製 ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド塩、融点:235℃)、CIR−1085F(日本カーリット製 ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド塩、融点:210℃)等が挙げられる。融点が200℃以上であるシアニン色素として、SDB3535(H.W.SANDS製 最大吸収波長1030nm 融点237℃)、SDA4428(H.W.SANDS製 最大吸収波長1014nm 融点239℃)等が挙げられる。
【0036】
本発明で使用できるフタロシアニン系化合物はとしては、近赤外線吸収能に優れるものが好ましく、公知のフタロシアニン系化合物が使用できる。好ましいフタロシアニン系化合物として、下記式(ア)で表される化合物、又は下記式(イ)で表される化合物が挙げられる。
【0037】
[式(ア)で示されるフタロシアニン系化合物]

【化14】

【0038】
上記式(ア)において、A〜A16は官能基を表す。上記式(ア)において、A〜A16は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアラルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基、置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基又は置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。A〜A16の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。式(ア)においてMは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子又はオキシ金属を表す。なお、本明細書において、「アシル基」とは、日刊工業新聞社発行の第三版科学技術用語大辞典の17頁に記載される定義と同様であり、具体的には、有機酸からヒドロキシル基が除去された基であり、式:RCO−(Rは、脂肪基、脂環基又は芳香族基である)で表される基である。
【0039】
(末端がアミノ基以外の官能基の場合)
上記式(ア)において、官能基A〜A16のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、等の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、等の、直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の、直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、等の直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていても良い炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基;ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基;ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフチルカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
また、上記式(ア)において、官能基A〜A16のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基又は複素環基が置換されている場合、これらの官能基A〜A16に存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0041】
(末端がアミノ基である官能基の場合)
上記式(ア)において、官能基A〜A16の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基又は置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は0個、1個又は2個存在していてもよく、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0042】
上記置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基又は置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0043】
また、金属Mとしての2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。金属Mとしての3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、In−C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Ru−Cl等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。金属Mとしての4価の置換金属原子の例としては、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、ZrCl、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、TiF、TiCl、TiBr、Ge(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Sn(OH)、Zr(OH)、Cr(R、Ge(R、Si(R、Sn(R、Ti(R{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基又はそれらの誘導体を表す}Cr(OR、Ge(OR、Si(OR、Sn(OR、Ti(OR、{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基又はそれらの誘導体を表す}、Sn(SR、Ge(SR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基又はそれらの誘導体を表す}などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。金属Mとしてのオキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0044】
[式(イ)で示されるフタロシアニン系化合物]

【化15】

【0045】
上記式(イ)において、B〜B24は官能基を表す。B〜B24は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ヒドロキシスルホニル基、カルボキシル基、チオール基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルスルホニル基、置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアラルキルオキシカルボニル基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基、置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基、置換されていてもよいアミノ基又は置換されていてもよいアミノスルホニル基又は置換されていてもよいアミノカルボニル基を表す。B〜B24の官能基は同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていてもよく、官能基同士が連結基を介して繋がっていても良い。Mは2個の水素原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子又はオキシ金属を表す。
【0046】
(末端がアミノ基以外の官能基の場合)
上記式(イ)において、官能基B〜B24のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等の、直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、iso−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、t−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基等の、直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ジフェニルメチルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、sec−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、n−ペンチルチオ基、n−ヘキシルチオ基、シクロヘキシルチオ基、n−ヘプチルチオ基、n−オクチルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基等の、直鎖、分岐又は環状のアルキルチオ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数6〜20個のアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアラルキルチオ基としては、ベンジルチオ基、フェネチルチオ基、ジフェニルメチルチオ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、n−プロピルスルホニル基、iso−プロピルスルホニル基、n−ブチルスルホニル基、iso−ブチルスルホニル基、sec−ブチルスルホニル基、t−ブチルスルホニル基、n−ペンチルスルホニル基、n−ヘキシルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、n−ヘプチルスルホニル基、n−オクチルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基等の、直鎖、分岐又は環状のアルキルスルホニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていても良い炭素原子数6〜20個のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよいアラルキルスルホニル基としては、ベンジルスルホニル基、フェネチルスルホニル基、ジフェニルメチルスルホニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数1〜20個のアシル基としてはメチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基;ベンジルカルボニル基、フェニルカルボニル基等のアリールカルボニル基;ベンゾイル基等のアラルキルカルボニル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、iso−プロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、iso−ブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、t−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールオキシカルボニル基としては、フェノキシカルボニル、ナフチルカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルオキシカルボニル基としては、ベンジルオキシカルボニル基、フェネチルオキシカルボニル基、ジフェニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個のアルキルカルボニルオキシ基としては、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、iso−プロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、iso−ブチルカルボニルオキシ基、sec−ブチルカルボニルオキシ基、t−ブチルカルボニルオキシ基、n−ペンチルカルボニルオキシ基、n−ヘキシルカルボニルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基、n−ヘプチルカルボニルオキシ基、3−ヘプチルカルボニルオキシ基、n−オクチルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数7〜20個のアリールカルボニルオキシ基としては、ベンゾイルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数8〜20個のアラルキルカルボニルオキシ基としては、ベンジルカルボニルオキシ基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換されていてもよい炭素原子数2〜20個の複素環基としては、ピロール基、イミダゾール基、ピペリジン基、モルホリン基等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
上記式(イ)において、官能基B〜B24のアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アラルキルスルホニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基又は複素環基が置換されている場合、これら官能基B〜B24に存在する置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0048】
(末端がアミノ基である官能基の場合)
上記式(イ)において、官能基B〜B24の置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基又は置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基としては、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;アセチル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、iso−プロピルカルボニル基、n−ブチルカルボニル基、iso−ブチルカルボニル基、sec−ブチルカルボニル基、t−ブチルカルボニル基、n−ペンチルカルボニル基、n−ヘキシルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、n−ヘプチルカルボニル基、3−ヘプチルカルボニル基、n−オクチルカルボニル基等の直鎖、分岐又は環状のアルキルカルボニル基;ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基等のアリールカルボニル基;ベンジルカルボニル基等のアラルキルカルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらの置換基はさらに置換基で置換されていても良い。これらの置換基は0個、1個又は2個存在していてもよく、2個存在する場合にはお互いが同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基が2個の場合、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0049】
上記置換されていてもよいアミノ基、置換されていてもよいアミノスルホニル基、置換されていてもよいアミノカルボニル基への置換基であるアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基などに更に存在しても良い置換基として、例えば、ハロゲン原子、アシル基、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、カルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、アルコキシスルホニル基、アルキルチオ基、カルバモイル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、複素環基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの置換基は複数個存在していてもよく、複数個存在する場合には同種若しくは異種のいずれであってもよく、同種の場合においても同一若しくは異なっていても良い。また、置換基同士が連結基を介して繋がっていてもよい。
【0050】
また、金属Mとしての2価の金属の例としては、Cu(II)、Co(II)、Zn(II)、Fe(II)、Ni(II)、Ru(II)、Rh(II)、Pd(II)、Pt(II)、Mn(II)、Mg(II)、Ti(II)、Be(II)、Ca(II)、Ba(II)、Cd(II)、Hg(II)、Pb(II)、Sn(II)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。金属Mとしての3価の置換金属原子の例としては、Al−F、Al−Cl、Al−Br、Al−I、Fe−Cl、Ga−F、Ga−Cl、Ga−I、Ga−Br、In−F、In−Cl、In−Br、In−I、Tl−F、Tl−Cl、Tl−Br、Tl−I、Al−C、Al−C(CH)、In−C、In−C(CH)、In−C、Mn(OH)、Mn(OC)、Mn〔OSi(CH〕、Ru−Cl等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。金属Mとしての4価の置換金属原子の例としては、CrCl、SiF、SiCl、SiBr、SiI、ZrCl、GeF、GeCl、GeBr、GeI、SnF、SnCl、SnBr、TiF、TiCl、TiBr、Ge(OH)、Mn(OH)、Si(OH)、Sn(OH)、Zr(OH)、Cr(R、Ge(R、Si(R、Sn(R、Ti(R{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基又はそれらの誘導体を表す}、Cr(OR、Ge(OR、Si(OR、Sn(OR、Ti(OR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、トリアルキルシリル基、ジアルキルアルコキシシリル基又はそれらの誘導体を表す}、Sn(SR、Ge(SR{Rは、アルキル基、フェニル基、ナフチル基、又はその誘導体を表す}などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。金属Mとしてのオキシ金属の例としては、VO、MnO、TiOなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0051】
式(ア)で示されるフタロシアニン系化合物の具体例として、商品名イーエクスカラーIR−10A、イーエクスカラーIR−12、イーエクスカラーIR−14やTX−EX−906B、TX−EX−910B、TX−EX−902K、TX−EX−817(いずれも日本触媒製)が挙げられる。
【0052】
2.[アルコール系溶媒]
本発明の近赤外線吸収コーティング剤は、アルコール系溶媒を含むのが好ましい。このアルコール系溶媒の具体例として、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、ダイアセトンアルコール等のアルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテルが挙げられる。
【0053】
これらのアルコール系溶媒のうち、沸点が100℃以上のアルコール系溶媒は、色素の溶解性及び樹脂の溶解性に優れているため、特に好ましい。沸点が100℃以上のアルコール系溶媒の具体例として、ノルマルブチルアルコール(沸点118℃)、ダイアセトンアルコール(沸点169℃)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(沸点150℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(沸点135℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(沸点121℃)等が挙げられる。
【0054】
アルコール系溶媒により、透明基材のヘイズ改善や反り抑制が効果的に達成されうる。アルコール系溶媒は、塗布される透明基材がポリカーボネート基材の場合に特に効果的である。アルコール系溶媒は、ポリカーボネート基材のヘイズを効果的に低減させうる。アルコール系溶媒は、ポリカーボネート基材の反りを効果的に抑制しうる。
【0055】
アルコール系溶媒の使用量は特に規定されないが、近赤外線吸収コーティング剤に使用される全溶媒に対するアルコール系溶媒の割合Rは、30重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。アルコール系溶媒の割合が30%未満であると、耐溶剤性に劣る基材に塗工した場合、ヘイズが高くなったり反りが発生したりしやすい。
【0056】
上記アルコール系の溶媒に、上記アルコール系溶媒以外の溶媒が併用されてもよい。この併用されてもよい溶媒については後述される。樹脂や色素の溶解性を高める観点から、併用される溶媒としては、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。他の溶媒が併用される場合、アルコール系溶媒の割合Rは、80重量%以下が好ましく、75重量%以下がより好ましい。近赤外線吸収コーティング剤に使用される全溶媒に対する、アルコール系溶媒以外の溶媒の割合Rは、20重量%以上が好ましく、25重量%以上がより好ましい。アルコール系溶媒の割合Rを上記好ましい値とする観点から、アルコール系溶媒以外の溶媒の割合Rは、70重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、50重量%以下がより好ましい。
【0057】
3.[樹脂]
本発明の近赤外線吸収コーティング剤は、樹脂を含む。この樹脂は、色素を保持するとともに色素の劣化を抑制する役割を果たす。また、この樹脂が近赤外線吸収層を形成し、この層の厚みにより、近赤外線吸収能の調整が可能となる。
【0058】
本発明の近赤外線吸収コーティング剤に使用される樹脂は、アルコール系溶媒に溶解しやすく、透明性の高いものが好ましい。また、樹脂のガラス転移温度(Tg)が70℃よりも高くされることにより、熱や水分による色素の劣化を効果的に抑制されうる。この観点から、好ましい樹脂として(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂の具体例として、スミペックス(住友化学製)、オプトレックス(日立化成工業製)、ハルスハイブリッドIR(日本触媒製)等が挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルモノマーを重合してなるポリマーである。(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、炭素数が1〜10である直鎖型アルキル基を有するもの、炭素数が1〜10である分岐型アルキル基を有するもの、炭素数が1〜10である脂環式アルキル基を有するもの、炭素数が1〜10である多環性脂環式アルキル基を有するものが用いられうる。(メタ)アクリル酸エステルモノマーの具体例として、メチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート等が挙げられる。この(メタ)アクリル系樹脂は、1種のメタクリル酸エステル単量体からなるポリマーであってもよいし、複数のメタクリル酸エステル単量体からなる共重合体であってもよい。
【0060】
疎水性及び色素の耐久性を高める観点から、脂環式アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、炭素数が4以上の分岐型アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとを共重合した樹脂が特に好ましい。
【0061】
また、樹脂は、上記のメタクリル酸エステル以外の単量体と上記メタクリル酸エステルとを共重合したポリマーであってもよい。上記のメタクリル酸エステル以外の単量体として、スチレン、メチルスチレン等の芳香族系モノマー;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;メタクリル酸、アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;炭素数1〜15のアルキル基を有するアクリル酸エステル;ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシ基を有する単量体;AA−6、AA−2、AS−6、AB−6、AK−5(いずれも東亜合成製)等のマクロモノマー、ライトエスエルEG、ライトエスエル1,4BG、ライトエステルNP、ライトエステルTMP(いずれも共栄社化学製)等の多官能モノマー等が挙げられる。上記のメタクリル酸エステル以外の単量体の使用量は、全ての単量体の総重量に対して、好ましくは50重量%未満、より好ましくは30重量%未満、さらに好ましくは10重量%未満である。
【0062】
樹脂の重合に使用する開始剤は過酸化物系、アゾ系等、市販のものが使用できる。過酸化物系の開始剤としては、パーブチルO、パーヘキシルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシエステル系;パーロイルL、パーロイルO(いずれも日本油脂製)などのパーオキシジカーボネート系;ナイパーBW、ナイパーBMT(いずれも日本油脂製)などのジアシルパーオキサイド系;パーヘキサ3M、パーヘキサMC(いずれも日本油脂製)などのパーオキシケタール系;パーブチルP、パークミルD(いずれも日本油脂製)などのジアルキルパーオキサイド系;パークミルP、パーメンタH(いずれも日本油脂製)などのハイドロパーオキサイド系等が挙げられる。アゾ系の開始剤としてはABN−E、ABN−R、ABN−V(いずれも日本ヒドラジン工業製)等が挙げられる。パーテトラA、BTTB−50(いずれも日本油脂製)、トリゴノックス17−40MB、パーカドックス12−XL25(いずれも火薬アクゾ製)等の多官能開始剤を使用してもよい。
【0063】
樹脂の重合の際には必要に応じて連鎖移動剤が用いられても良い。連鎖移動剤は、樹脂の分子量を所定の値に調整しうるものであれば特に制約されず、ノルマルドデシルメルカプタン、ジチオグリコール、チオグリコール酸オクチル、メルカプトエタノール等のチオール化合物等が使用できる。ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等の多官能連鎖移動剤が用いられても良い。
【0064】
また、樹脂の重合は無溶媒で行ってもよいし、有機溶媒中で行ってもよい。有機溶媒中で重合する際には、本発明で使用するアルコール系溶媒中で重合がなされてもよいし、アルコール系でない溶媒中で重合された重合物を脱溶媒した後、この重合物をアルコール溶媒に再溶解させてもよい。
【0065】
樹脂の分子量は特に規定されない。しかし、樹脂の分子量が低すぎると、近赤外線吸収コーティング剤よりなる層において割れが発生しやすくなる。また、樹脂の分子量が高すぎると樹脂がアルコール溶媒に溶解しにくくなる。これらの観点から、この樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1万以上50万以下、より好ましくは3万以上30万以下、最も好ましくは5万以上15万以下である。この重量平均分子量は、ポリスチレン換算値である。この重量平均分子量は、ゲルろ過クロマトグラフィー(GPC)により測定される。測定装置は東ソー製HLC−8120GPCを用い、カラムはTSK−GELG5000HXL、TSK−GEL、GMHXL−L及びTSK−GUARDCOLOMN−HXL−Hを連結して使用した。試料はテトラヒドロフランで0.2重量%に希釈され、展開溶媒にもテトラヒドロフランを用いた。検量線は東ソー製の標準ポリスチレンを用いて作製した。
【0066】
また、樹脂は、単一の組成からなるものでもよいし、異なる組成のポリマーを複合化したポリマーアロイやポリマーブレンドであってもよい。
【0067】
5.[近赤外線吸収コーティング剤]
本発明の近赤外線吸収コーティング剤は、近赤外線吸収色素、アルコール溶媒及び樹脂を含む。近赤外線吸収色素の配合割合は、色素の種類と用途によって適宜選択することが出来る。近赤外線吸収コーティング剤は、透明基材に塗布される。近赤外線吸収コーティング剤は、層を構成する。例えば、近赤外線吸収コーティング剤からなる層の厚さが10μm程度である場合、近赤外線吸収色素の配合割合は、樹脂の固形分に対して、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.1〜5重量%である。配合割合が0.01重量%未満であると、十分な近赤外線吸収能が達成できなくなる可能性がある。逆に10重量%を超えると、添加に見合う効果が得られず経済的でない上、逆に可視領域での透明性が損なわれる可能性がある。近赤外線吸収能を高める観点から、近赤外線吸収コーティング剤からなる層の厚さTは、0.5μm以上であるのが好ましい。塗工性の観点から、厚さTは100μm以下が好ましい。
【0068】
本発明の近赤外線吸収コーティングに含まれる溶媒は主にアルコール溶媒であるが、色素や樹脂の溶解性が不足する場合は、その性能を失わない範囲で他の溶媒が併用されてもよい。
【0069】
この際使用できる溶媒としては、例えばシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族系;トルエン、キシレンなどの芳香族系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;アセトニトリル等のニトリル系;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系;塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系等が挙げられる。
【0070】
コーティング剤の粘度は塗工機の種類によって適宜選択される。マイクログラビアコーター等のような小径グラビアキスリバース方式で塗工する場合、粘度は1〜1000mPa・sが一般的であり、ダイコーター等押し出し方式で塗工する場合、粘度は100〜10000mPa・sが一般的である。コーティング剤の固形分は塗料粘度に合わせて調整される。
【0071】
本発明の近赤外線吸収コーティング剤に下記式(1)で表されるアニオンを含むホウ酸塩が添加されてもよい。このホウ酸塩は下記式(1a)で表される。このホウ酸塩が添加されることにより、色素の溶解性と耐久性とが向上する。
【0072】
【化16】

【0073】
n+(BR4−m ) ・・・ (1a)
【0074】
ただし式(1a)中、Xは有機カチオン又は無機カチオンを表し、nは整数を表す。式(1a)及び式(1)中、Rは電子吸引性基を有するアリール基を表し、Rは有機基、ハロゲン原子又は水酸基を表し、mは1〜4の整数を表す。
【0075】
上記式(1)中のRは、電子吸引性基を有するアリール基を表す。Rは、炭素数6〜12のアリール基に電子吸引性基が結合したものであることが好ましく、例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基に電子吸引性基が結合したもの等が挙げられる。上記例示のアリール基のうち、フェニル基に電子吸引性基が結合したもの(即ち、Rが、電子吸引性基を有するフェニル基であること)は、経済的であり好ましい。
【0076】
また、上記式(1)中のRが有する電子吸引性基としては、特に限定されるものではないが、具体的には、−C2p+1(pは自然数)、−NO、−CN、−F、−Clおよび−Brからなる群より選ばれる少なくとも一種の置換基が好ましく、−CF、−Cおよび−Fからなる群より選ばれる少なくとも一種の置換基がさらに好ましく、−Fが特に好ましい。また、アリール基に複数の電子吸引性基が含まれる場合、各電子吸引性基は同一であってもよく異なっていてもよい。特に、Rの有する電子吸引性基が−Fである場合、耐熱性及び耐湿熱性が向上しうる。したがって、上記式(1)において、Rは、ペンタフルオロフェニル基(−C)、−CHF、−C、−C、−CF、−CCF、−C(CF、−C(CF、−CF(CF、−C(CFなどが好ましく、ペンタフルオロフェニル基であることが特に好ましい。
【0077】
上記式(1)中のRで示される置換基は、有機基、ハロゲン原子又は水酸基であればよい。Rが有機基である場合、この有機基は電子吸引性基を有していてもよい。この有機基としては、例えば、炭素数6〜12のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基)、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基等が挙げられるが、特に限定されるものではない。具体的には、この有機基として、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、1−エチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などの、直鎖、分岐鎖又は脂環式のアルキル基などが挙げられる。特に、有機基がアルキル基である場合、この有機基が電子吸引性基を有していることがより好ましく、有機基の有する水素原子の全部又は一部がフッ素原子で置換されていることがさらに好ましい。具体的には、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基などが挙げられる。ハロゲン原子としては、具体的には、例えば、−F、−Cl、−Br及び−Iが挙げられるが、−Fがより好ましい。
【0078】
本発明において、上記式(1)中のmは、1〜4であればよいが、好ましくはmは4である。即ち、好ましくは、上記式(1)は、[BRである。なお、本発明においてmが2以上の場合には複数のRがホウ酸アニオンに含まれるが、この場合に複数のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0079】
上記式(1)で示されるホウ酸アニオンとしては、例えば、[B(C、[B(CCF、[B(C(C)]、[B(C(C、[B(C)(C、[B(CF]、[B(C、[B(C)F、[B(C(CF)]、[B(C(CF、[B(C)(CF、[B(C(CCF)]、[B(C(CCF、[B(C)(CCF、[B(CCFF]、[B(CCF、[B(CCF)F、[B(CCF(CF)]、[B(CCF(CF、[B(CCF)(CF、[B(C(C13)]、[B(C(C13、[B(C)(C13、[B(CCF、[B(C等が挙げられる。本発明では上記例示のホウ酸アニオンのうち、[B(C(テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)がより好ましい。
【0080】
上記式(1a)で表される塩は、上記ホウ酸アニオンの塩が好ましい。上記式(1a)で表される塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属塩;ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属塩;銀、銅等の遷移金属塩;アンモニウム、n−ブチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリイソプロピルアンモニウム、トリ−n−ブチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラ−n−ブチルアンモニウム、N,N−ジメチルシクロヘキシルアンモニウム等のアンモニウム塩;N−メチルアニリニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジメチル−4−メチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−ジフェニルアニリニウム、N,N,N−トリメチルアニリニウム等のアニリニウム塩;ピリジニウム、N−メチルピリジニウム、N−ブチルピリジニウム、N−メチル−4−メチル−ピリジニウム、N−ベンジルピリジニウム、3−メチル−N−ブチルピリジニウム、2−メチルピリジニウム、3−メチルピリジニウム、4−メチルピリジニウム、2,3−ジメチルピリジニウム、2,4−ジメチルピリジニウム、2,6−ジメチルピリジニウム、3,4−ジメチルピリジニウム、3,5−ジメチルピリジニウム、2,4,6−トリメチルピリジニウム、2−フルオロピリジニウム、3−フルオロピリジニウム、4−フルオロピリジニウム、2,6−ジフルオロピリジニウム、2,3,4,5,6−ペンタフルオロピリジニウム、2−クロロピリジニウム、3−クロロピリジニウム、4−クロロピリジニウム、2,3−ジクロロピリジニウム、2,5−ジクロロピリジニウム、2,6−ジクロロピリジニウム、3,5−ジクロロピリジニウム、3,5−ジクロロー2,4,6−トリフルオロピリジニウム、2−ブロモピリジニウム、3−ブロモピリジニウム、4−ブロモピリジニウム、2,5−ジブロモピリジニウム、2,6−ジブロモピリジニウム、3,5−ジブロモピリジニウム、2−シアノピリジニウム、3−シアノピリジニウム、4−シアノピリジニウム、2−ヒドロキシピリジニウム、3−ヒドロキシピリジニウム、4−ヒドロキシピリジニウム、2,3−ジヒドロキシピリジニウム、2,4−ジヒドロキシピリジニウム、2−メチル−5−エチルピリジニウム、2−クロロ−3−シアノピリジニウム、4−カルボキサミドピリジニウム、4−カルボキシアルデヒドピリジニウム、2−フェニルピリジニウム、3−フェニルピリジニウム、4−フェニルピリジニウム、2,6−ジフェニルピリジニウム、4−ニトロピリジニウム、4−メトキシピリジニウム、4−ビニルピリジニウム、4−メルカプトピリジニウム、4−t−ブチルピリジニウム、2,6−ジt−ブチルピリジニウム、2−ベンジルピリジニウム、3−アセチルピリジニウム、4−エチルピリジニウム、2−カルボン酸ピリジニウム、4−カルボン酸ピリジニウム、2−ベンゾイルピリジニウム等のピリジニウム塩;イミダゾリウム、1−メチル−イミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウム、1−メチル−N−ベンジルイミダゾリウム、1−メチル−3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリウム、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム塩;1−エチル−1−メチル−ピロリジニウム、1−ブチル−1−メチル−ピロリジニウム等のピロリジニウム塩;キノリニウム、イソキノリニウム等のキノリニウム塩;トリフェニルカルベニウム、トリ−4−メトキシフェニルカルベニウム等のカルベニウム塩;ジメチルフェニルフォスフォニウム、トリフェニルフォスフォニウム、テトラエチルフォスフォニウム、テトラフェニルフォスフォニウム等のフォスフォニウム塩;トリメチルスルフォニウム、トリフェニルスルフォニウム、等のスルフォニウム塩;ジフェニルヨードニウム、ジ−4−メトキシフェニルヨードニウム等のヨードニウム塩などが使用できる。また、上記式(1a)中のXは、式(a)のジイモニウムカチオンや式(b)〜(m)のシアニン系カチオンであってもよい。この場合には、ホウ酸塩自体が近赤外線吸収色素となる。
【0081】
本発明の近赤外線吸収材料における式(1a)のホウ酸塩の配合割合は、用途によって適宜選択することが出来るが、近赤外線吸収色素1モルに対して、好ましくは式(1)のホウ酸アニオンが0.5〜8モル、より好ましくは1〜5モルである。この際、アニオン塩の配合割合が0.5モル未満である場合、色素の溶解性向上効果や耐久性向上効果が十分に発現しない可能性があり、逆に8モルを超えると、添加に見合う効果が得られず経済的でない可能性がある。なお、上記ホウ酸塩は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
本発明の近赤外線吸収コーティング剤には、必要に応じて可視光を吸収する色素が添加されてもよい。可視光を吸収する色素としては、シアニン系、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、ポルフィリン系、テトラアザポルフィリン系、金属ジチオール錯体系、スクアリリウム系、アズレニウム系、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、オキサジン系、アジン系、チオピリリウム系、ビオローゲン系、アゾ系、アゾ金属錯体系、ビスアゾ系、アントラキノン系、ペリレン系、インダンスロン系、ニトロソ系、インジコ系、アゾメチン系、キサンテン系、オキサノール系、インドアニリン系、キノリン系、ジケトピロロピロール系等、従来公知の色素が用いられうる。
【0083】
本発明の近赤外線吸収組成物をPDP用の光学フィルターとして使用する場合、不要なネオン発光を吸収する目的で、最大吸収波長が550〜650nmの可視吸収色素が併用されるのが好ましい。ネオン発光を吸収する色素の種類は特に限定されず、例えばシアニン色素、テトラアザポルフィリン色素が使用できる。具体的にはアデカアークルズGPZ−101(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−171(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−100(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−102(旭電化工業社製)、アデカアークルズTY−235(旭電化工業社製)、TAP−2(山田化学工業製)、TAP−18(山田化学工業製)、TAP−45(山田化学工業製)、商品名NK−5451(林原生物化学研究所製)、NK−5532(林原生物化学研究所製)、NK−5450(林原生物化学研究所製)等が用いられうる。ネオン発光を吸収するための色素の添加割合は色素の種類によって異なるが、最大吸収波長での透過率が20〜80%程度になるように添加されるのが好ましい。
【0084】
また、近赤外線吸収コーティング剤からなる薄膜の色調を調整するために、近赤外線吸収コーティング剤に、調色用の可視光吸収色素が添加されてもよい。調色用の色素の種類は特に限定されないが、1:2クロム錯体、1:2コバルト錯体、銅フタロシアニン、アントラキノン、ジケトピロロピロール等が使用されうる。具体的には、オラゾールブルーGN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールブルーBL(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールレッド2B(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールレッドG(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールブラックCN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールイエロー2GLN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、オラゾールイエロー2RLN(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、マイクロリスDPPレッドB−K(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)、等が挙げられる。
【0085】
更に、本発明の近赤外線吸収コーティング剤は、必要に応じて、その性能を失わない範囲で、添加剤、硬化剤を1種又は2種以上含んでいてもよい。添加剤としては、フィルムやコーティング膜等を形成する樹脂組成物に使用される従来公知の添加剤を用いることができ、分散剤、レベリング剤、消泡剤、粘性調整剤、つや消し剤、粘着付与剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収材、光安定化剤、消光剤、硬化剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。この硬化剤として、イソシアネート化合物、チオール化合物、エポキシ化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、オキサゾリン化合物、シランカップリング剤、UV硬化剤等が用いられうる。
【0086】
6.[近赤外線吸収材料]
本発明に係る近赤外線吸収材料は、本発明の近赤外線吸収コーティング剤を透明基材に塗布することによって得られる。
【0087】
透明基材は、一般に光学材に使用し得るものであって、実質的に透明であればよい。透明基材の具体例として、ガラス;PET等のポリエステル;トリアセチルセルロース;シクロポリオレフィン、非晶質ポリオレフィン等のオレフィン系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のメタクリル樹脂系ポリマー;ポリスチレン;ポリカーボネート;ブチラール樹脂等のポリビニルアセタール;ポリアリールエーテル系樹脂等が挙げられる。
【0088】
これらの透明基材のうち特に本発明の近赤外線吸収コーティング剤に適しているのはポリカーボネート系基材、ポリスチレン系基材、メタクリル樹脂系基材又は下記式(2)で表されるラクトン環構造を有する樹脂系基材である。
【0089】
【化17】

【0090】
ただし式(2)において、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0091】
これらの基材は芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒によってヘイズや反りが発生しやすく、外観が低下しやすい。しかし、本発明の近赤外線吸収コーティング剤を使用することにより、ヘイズや反りの低減が可能となる。
【0092】
透明基材に、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理がなされてもよい。透明基材に、アンカーコート剤、プライマー、反射防止層、光拡散層、帯電防止層等が積層されていてもよい。また、透明基材に、公知の添加剤、耐熱老化防止剤、滑剤、帯電防止剤等が配合されていてもよい。
【0093】
本発明で使用される透明基材の製法は特に限定されない。透明基材は、公知の射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶融させてキャスティングする方法などにより、フィルム又はシート状に成形される。かかる透明基材は、未延伸でも延伸されていてもよく、また他の基材と積層されていてもよい。
【0094】
本発明の近赤外線吸収コーティング剤は、光学用、農業用、建築用もしくは車両用の近赤外線吸収材料;感光紙などの画像記録材料;光ディスク用などの情報記録用材料;色素増感型太陽電池などの太陽電池;半導体レーザー光などを光源とする感光材料又は眼精疲労防止材に使用されうる。
【0095】
透明基材に近赤外線吸収コーティング剤を塗布する際には公知の塗工機が使用できる。塗工機として、例えば、コンマコーター等のナイフコーター、スロットダイコーター、リップコーター等のファウンテンコーター、マイクログラビアコーター等のキスコーター、グラビアコーター、リバースロールコーター等のロールコーター、フローコーター、スプレーコーター、バーコーターが挙げられる。塗布前に、コロナ放電処理、プラズマ処理等の公知の方法により基材の表面処理がなされてもよい。塗布後の乾燥・硬化方法としては、熱風、遠赤外線、UV硬化等公知の方法が使用できる。乾燥・硬化後は公知の保護フィルムとともに巻き取ってもよい。
【0096】
塗膜の乾燥方法は特に限定されず、熱風乾燥や遠赤外線乾燥が用いられうる。乾燥温度は乾燥ラインの長さ、ライン速度、塗布量、残存溶剤量、基材の種類等を考慮して決めればよい。基材がPETフィルムであれば、一般的な乾燥温度は50〜150℃である。1ラインに複数の乾燥機がある場合は、それぞれの乾燥機が異なる温度、風速に設定されてもよい。塗工外観の良好な塗膜を得るためには、入り口側の乾燥条件をよりマイルドにするのが好ましい。
【0097】
本発明の近赤外線吸収材の厚みは一般に0.1μmから10mm程度であるが、目的に応じて適宜決定される。また近赤外線吸収材に含まれる近赤外線吸収色素の含有量も目的に応じて、適宜決定される。
【0098】
7.[薄型ディスプレー、光半導体素子用光学部材]
薄型ディスプレーは反射光を抑えるために反射防止フィルム、ぎらつき防止フィルム(アンチグレアフィルム)等が用いられる。PDPには電磁波遮蔽フィルムが用いられており、LCDには光拡散フィルム、プリズムシート、輝度上昇フィルム、偏光フィルムなど多数のフィルムが使用されている。本発明の近赤外線吸収材料は、外観が良好で近赤外線の吸収能が高いため、薄型ディスプレー用の光学部材又は光半導体素子用の光学部材になりうる。
【0099】
光学部材用の近赤外線吸収材料は、可視領域の全光線透過率が40%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは60%以上である。近赤外線の透過率は用途によって適宜決めることが出来る。
【0100】
光学部材用の近赤外線吸収材料には、本発明の近赤外線吸収コーティング剤からなる近赤外線吸収層のほかに、紫外線吸収層、電磁波遮蔽層、反射防止層、ぎらつき防止(アンチグレア)層、光拡散層、偏光層、傷付き防止層、色調整層、透明基材等の支持体などが設けられていてもよい。
【0101】
本発明の近赤外線吸収コーティング剤を積層した光学部材が薄型ディスプレーに搭載された場合、赤外線によるリモコンの誤作動が抑制されるとともに、良好な画質が維持されうる。プラズマディスプレー用の光学部材では、近赤外線吸収コーティング剤からなる層が、反射防止フィルムや電磁波遮蔽フィルムとともに積層されてもよい。液晶ディスプレー用の光学部材としては、近赤外線吸収コーティング剤からなる層が、偏光フィルムや光拡散フィルムとともに積層されてもよい。
【実施例】
【0102】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。なお、以下の成分比率に関し、特に説明した場合を除き、「部」は重量部を意味し、「%」は重量%を意味する。
【0103】
(1)溶解性の評価
近赤外線吸収コーティング剤を配合した後に色素、樹脂の溶解性を目視で評価した。
【0104】
(2)外観の評価
近赤外線吸収材料の外観を、ヘイズ及び反りにより評価した。ヘイズの測定は濁度計NDH2000(日本電色工業製)にて行った。反りの有無は目視で評価した。
【0105】
(3)近赤外線吸収能及び色調の評価
近赤外線吸収材料作製後に初期の近赤外線吸収能及び初期の色調を評価した。近赤外線吸収能については、UV−3700(島津製作所製)を使用して、350〜1250nmの透過スペクトルを測定し、波長1014nmでの透過率により評価した。この初期透過率が、下記の表で示される。色調の評価は測定したスペクトルからクロマティクネス指数を計算し、C光源2°視野でのb*値で行った。この初期b*が下記の表で示される。
【0106】
(4)耐熱性の評価
耐熱試験として、近赤外線吸収材料を100℃の熱風乾燥機中に120時間静置した。その後、UV−3700(島津製作所製)を使用して、350〜1250nmの透過スペクトルを測定した。この透過スペクトルから、波長1014nmでの透過率及びb*値を求めた。耐熱性の評価は、耐熱試験前後での波長1014nmでの透過率変化(%)及びb*値の変化の大きさから評価した。耐熱試験後の透過率から初期透過率を引いた値が、「透過率変化」として下記の表で示される。耐熱試験後のb*から初期b*を引いた値が、「b*変化」として下記の表で示される。
【0107】
[実施例1]
ポリメタクリル酸メチル(ポリスチレン換算の重量平均分子量5.4万)をプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し、固形分30%の樹脂溶液1を調整した。次に、ジイモニウム色素としてCIR−1085(日本カーリット社製、融点190℃)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分2%のジイモニウム色素溶液1を調整した。6.7部の樹脂溶液1、2.0部のジイモニウム色素溶液1及び1.0部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを混合して、固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤A1を得た。この近赤外線吸収コーティング剤A1において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は、74.4%である。この近赤外線吸収コーティング剤A1において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0108】
近赤外線吸収コーティング剤A1をバーコーター(No34)にて、ポリカーボネート基材(タキロン社製、紫外線吸収剤入り、厚さ2mm)上に塗布し、120℃の熱風乾燥機中で3分間乾燥させて、近赤外線吸収材料A1を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表1に示した。近赤外線吸収材料A1の初期状態(耐熱試験前)での可視−近赤外線吸収スペクトルを図1に示した。
【0109】
[実施例2]
CIR−RL(日本カーリット社製 融点235℃)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分2%のジイモニウム色素溶液2を調整した。ジイモニウム色素溶液1に代えてジイモニウム色素溶液2を用いた他は実施例1の近赤外線吸収コーティング剤A1と同様にして、固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤A2を得た。この近赤外線吸収コーティング剤A2において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は、74.4%である。この近赤外線吸収コーティング剤A2において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0110】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティングA2を使用した他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料A2を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表1に示した。近赤外線吸収材料A2の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図2に示した。
【0111】
[比較例1]
ポリメタクリル酸メチル(ポリスチレン換算の重量平均分子量5.4万)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分30%の樹脂溶液2を得た。6.7部の樹脂溶液2、2.0部のジイモニウム色素溶液1及び1.0部のメチルエチルケトンを混合して、固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤B1を得た。この近赤外線吸収コーティング剤B1において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は、0%である。この近赤外線吸収コーティング剤B1において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0112】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティングB1を使用した他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料B1を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表1に示した。近赤外線吸収材料B1の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図3に示した。
【0113】
[比較例2]
6.7部の樹脂溶液2、2.0部のジイモニウム色素溶液2及び1.0部のメチルエチルケトンを混合して固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤B2を得た。この近赤外線吸収コーティング剤B2において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は、0%である。この近赤外線吸収コーティング剤B2において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0114】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティング剤B2を使用した他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料B2を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表1に示した。近赤外線吸収材料B2の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図4に示した。
【0115】
【表1】

【0116】
表1において、いずれの近赤外線吸収材料も近赤外線吸収能は良好である。しかし、実施例1及び実施例2が基材の反りがなくヘイズも小さいため外観が良好であるのに対して、アルコール系溶媒の用いなかった比較例1及び比較例2は反りが発生し、ヘイズも高くなることが確認された。また、融点の高いジイモニウム色素を使用した近赤外線吸収コーティング剤A2を使用した場合は、耐熱性試験前後の透過率変化やb*変化が小さく、耐熱性が良好であることが確認された。
【0117】
[実施例3]
シアニン色素としてのS0734(FEW CHEMICALS製 上記式(j)で表されるカチオンとテトラフルオロホウ酸イオンからなる塩)をメチルエチルケトンに溶解し、固形分0.3%のシアニン色素溶液1を調整した。次に、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウムをプロピレングリコールモノメチルエーテルに溶解し、固形10%のホウ酸塩溶液1を調整した。6.7部の樹脂溶液1、2.0部のシアニン色素溶液1、0.5部のホウ酸塩溶液1及び0.6部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを混合して、固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤A3を得た。この近赤外線吸収コーティング剤A3において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は、74.4%である。この近赤外線吸収コーティング剤A3において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0118】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティング剤A3を用いた他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料A3を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表2に示した。近赤外線吸収材料A3の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図5に示した。
【0119】
[実施例4]
ジイモニウム色素としてN,N,N',N'−テトラキス{p−ジ(iso−ブチル)アミノフェニル}フェニレンジイモニウムの六フッ化アンチモン酸塩をメチルエチルケトンに溶解し、固形分2.0%のジイモニウム色素溶液3を調整した。6.7部の樹脂溶液1、2.0部のジイモニウム色素溶液3、0.5部のホウ酸塩溶液1、及び0.8部のプロピレングリコールモノメチルエーテルを混合して固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤A4を得た。この近赤外線吸収コーティング剤A4において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は、75.2%である。この近赤外線吸収コーティング剤A4において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0120】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティング剤A4を用いた他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料A4を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表2に示した。近赤外線吸収材料A4の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図6に示した。
【0121】
[比較例3]
6.7部の樹脂溶液2、2.0部のシアニン色素溶液1及び0.9部のメチルエチルケトンを混合して、固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤B3を得た。この近赤外線吸収コーティング剤B3において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は、0%である。この近赤外線吸収コーティング剤B3において、色素の溶解性は悪く、色素が完全に溶解しなかった。
【0122】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティング剤B3を用いた他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料B3を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表2に示した。近赤外線吸収材料B3の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図7に示した。
【0123】
[比較例4]
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸ナトリウムをメチルエチルケトンに溶解し、固形10%のホウ酸塩溶液2を調整した。6.7部の樹脂溶液2、2.0部のシアニン色素溶液1、0.5部のホウ酸塩溶液2及び0.9部のメチルエチルケトンを混合して固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤B4を得た。この近赤外線吸収コーティング剤B4において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は0%である。この近赤外線吸収コーティング剤B4において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0124】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティング剤B4を用いた他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料B4を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表2に示した。近赤外線吸収材料B4の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図8に示した。
【0125】
[比較例5]
6.7部の樹脂溶液2、2.0部のジイモニウム色素溶液3及び1.0部のメチルエチルケトンを混合して、固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤B5を得た。この近赤外線吸収コーティング剤B5において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は0%である。この近赤外線吸収コーティング剤B5において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0126】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティング剤B5を用いた他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料B5を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表2に示した。近赤外線吸収材料B5の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図9に示した。
【0127】
[比較例6]
6.7部の樹脂溶液2、2.0部のジイモニウム色素溶液3、0.5部のホウ酸塩溶液2及び0.8部のメチルエチルケトンを混合して固形分21%の近赤外線吸収コーティング剤B6を得た。この近赤外線吸収コーティング剤B6において、全溶媒に占めるアルコール系溶剤の割合は0%である。この近赤外線吸収コーティング剤B6において、樹脂及び色素の溶解性は良好だった。
【0128】
近赤外線吸収コーティング剤A1に代えて近赤外線吸収コーティング剤B6を用いた他は実施例1と同様にして、近赤外線吸収材料B6を作製した。これを試験体として、外観、近赤外線吸収能、色調、耐熱性を評価し、表2に示した。近赤外線吸収材料B6の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルを図10に示した。
【0129】
なお図11は、実施例1から4及び比較例1から6で用いられたポリカーボネート基材の可視−近赤外線吸収スペクトルを示す。
【0130】
【表2】

【0131】
表2において、比較例3の近赤外線吸収材料B3は、外観が劣っていただけでなく。色素の溶解性が悪く、近赤外線吸収能も劣っていた。近赤外線吸収材料B4はホウ酸塩の添加によって、色素の溶解性が向上し、近赤外線吸収能は良好になったが、外観は劣ったままであった。しかし、本発明の近赤外線吸収材料A3は良好な外観、近赤外線吸収能、耐久性を発現した。また、比較例の近赤外線吸収材料B5、B6は近赤外線吸収能は良好であったが、アルコール系溶媒を使用していないために外観が劣っていた。それに対し、本発明の近赤外線吸収材料A4では、外観、近赤外線吸収能及び耐久性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の近赤外線吸収コーティング剤は、耐溶剤性の低い基材上に塗布しても良好な外観が得られ、近赤外線吸収能と耐久性に優れることから、薄型ディスプレー用の光学材料として有用である。本発明の近赤外線吸収コーティング剤は、光半導体素子用光学部材又は光記録材料としても用いられうる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】図1は、実施例1で作製された近赤外線吸収材料A1の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図2】図2は、実施例2で作製された近赤外線吸収材料A2の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図3】図3は、比較例1で作製された近赤外線吸収材料B1の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図4】図4は、比較例2で作製された近赤外線吸収材料B2の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図5】図5は、実施例3で作製された近赤外線吸収材料A3の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図6】図6は、実施例4で作製された近赤外線吸収材料A4の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図7】図7は、比較例3で作製された近赤外線吸収材料B3の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図8】図8は、比較例4で作製された近赤外線吸収材料B4の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図9】図9は、比較例5で作製された近赤外線吸収材料B5の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図10】図10は、比較例6で作製された近赤外線吸収材料B6の初期状態での可視−近赤外線吸収スペクトルである。
【図11】図11は、実施例1から4及び比較例1から6で使用されたポリカーボネート基材の可視−近赤外線吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線吸収色素、アルコール系溶媒及び樹脂を含む近赤外線吸収コーティング剤。
【請求項2】
上記近赤外線吸収色素として、ジイモニウム系色素又は最大吸収波長が1000nm以上であるシアニン色素を含む請求項1に記載の近赤外線吸収コーティング剤。
【請求項3】
上記近赤外線吸収色素の融点が210℃以上である請求項1又は2に記載の近赤外線吸収コーティング剤。
【請求項4】
上記アルコール系溶媒の沸点が100℃以上である請求項1から3のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤。
【請求項5】
上記近赤外線吸収コーティング剤に使用される全溶媒に対するアルコール系溶媒の割合が50重量%以上である請求項1から4のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤。
【請求項6】
上記樹脂が(メタ)アクリル樹脂であり、この樹脂の重量平均分子量が1万〜50万である請求項1から5のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤。
【請求項7】
下記式(1a)で表されるホウ酸塩を更に含む請求項1から6のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤。
n+(BR4−m ) ・・・ (1a)
ただし式(1a)中、Xは有機カチオン又は無機カチオンを表し、Rは電子吸引性基を有するアリール基を表し、Rは有機基、ハロゲン原子又は水酸基を表し、mは1〜4の整数を表し、nは整数を表す。
【請求項8】
透明基材に塗布するための、請求項1〜7のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤。
【請求項9】
上記透明基材がポリカーボネート系基材、ポリスチレン系基材、トリアセチルセルロース系基材、メタクリル樹脂系基材又はラクトン環構造を有する樹脂基材である請求項8に記載の近赤外線吸収コーティング剤。
【請求項10】
透明基材と、請求項1〜9のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤からなる層とを有する近赤外線吸収材料。
【請求項11】
上記透明基材がポリカーボネート系基材、ポリスチレン系基材、トリアセチルセルロース系基材、メタクリル樹脂系基材又はラクトン環構造を有する樹脂基材である請求項10に記載の近赤外線吸収材料。
【請求項12】
請求項1から9のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤又は請求項10から11のいずれかに記載の近赤外線吸収材料を用いてなる薄型ディスプレー。
【請求項13】
請求項1から9のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤又は請求項10から11のいずれかに記載の近赤外線吸収材料を用いてなる光半導体素子用光学部材。
【請求項14】
請求項1から9のいずれかに記載の近赤外線吸収コーティング剤又は請求項10から11のいずれかに記載の近赤外線吸収材料を用いてなる光記録材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−224926(P2008−224926A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61377(P2007−61377)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】