説明

送り装置

【課題】シート材を送る際にシワ状の浮き上がりが発生するのを抑制する。
【解決手段】ロール状に巻かれてなる金属製のコイル材Cを送るロールフィーダ40が、コイル材Cを挟持するロール本体45,55の回転方向に対してはロール本体45,55と噛み合ってステッピングモータ59の回転駆動力をロール本体45,55に伝達すると共に軸方向に対してはロール本体45,55がスライドできるようボールスプライン嵌合されてなるフローティング機構46,56を備える。これにより、コイル材Cはガイドされるときにロール本体45,55と共に軸方向にスライドできるので、ガイドされる部分とロール本体45,55に挟持される部分との間の歪みを小さくすることができる。この結果、コイル材Cを送る際にシワ状の浮き上がりが発生するのを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻かれてなる金属製のシート材をガイドしながら送る送り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロール状に巻かれてなる鋼帯をドラムシャーで所定長さの矩形状の鋼帯シートに剪断する剪断機に搭載され、鋼帯の上下面をロールで挟持するピンチロールによって鋼帯を送る送り装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−116021号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような送り装置において、鋼帯自体に幅方向の曲がりやねじれ,幅方向の厚みの不均一などの形状不良がある場合、送る際にその姿勢が安定せず送り方向に対して左右に振られて真っ直ぐに送られないことがある。このとき、鋼帯を両側面から挟む側面ガイドや端面に当接するストッパなどにより鋼帯をガイドすることが考えられるが、上述した送り装置のように鋼帯がピンチロールによって挟持されていると、その部分で鋼帯が拘束され、ガイドされる部分と挟持される部分との間に歪みが生じ、鋼帯にシワ状の浮き上がりが発生する場合がある。鋼帯のガイドは、剪断時の基準を出すためになされることが多いが、シワ状の浮き上がりが発生すると不安定な剪断となり、剪断精度が低下するなどの問題が生じる。
【0004】
本発明の送り装置は、シート材を送る際にシワ状の浮き上がりが発生するのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の送り装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の送り装置は、
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材をガイドしながら送る送り装置であって、
前記シート材を上下面から挟んで回転することにより該シート材を送る送りローラと、
回転駆動力を発生させるモータと、
前記送りローラの回転方向に対しては該送りローラと噛み合って前記モータの回転駆動力を伝達すると共に該送りローラの軸方向に対しては該送りローラがスライドできるよう構成されてなるフローティング機構と
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の送り装置では、シート材を上下面から挟んで回転することによりシート材を送る送りローラの回転方向に対しては送りローラと噛み合ってモータの回転駆動力を伝達すると共に送りローラの軸方向に対しては送りローラがスライドできるよう構成されてなるフローティング機構を備える。これにより、シート材はガイドされるときに送りローラと共に軸方向にスライドできるので、ガイドされる部分と送りローラに挟持される部分との間に生じる歪みを小さくすることができる。この結果、シート材を送る際にシワ状の浮き上がりが発生するのを抑制することができる。
【0008】
こうした本発明の送り装置において、前記フローティング機構は、前記送りローラが前記シート材を挟まないときに該送りローラを初期位置に戻すよう該送りローラの両側面を付勢する付勢手段が配置されてなるものとすることもできる。こうすれば、簡易な構成で送りローラを初期位置に戻すことができるので、送りローラがスライドできる限界位置に達したときにそれ以上スライドできないことにより生じる歪みを防止することができる。
【0009】
また、本発明の送り装置において、前記送りローラは、中空のロール本体と該ロール本体に挿入されるロール軸とから構成され、前記フローティング機構は、前記ロール本体の内周面と前記ロール軸の外周面とにそれぞれ形成されたスプライン溝に転動可能なボールが配置され、該ロール本体と該ロール軸とをボールスプライン結合する機構であるものとすることもできる。こうすれば、回転方向に確実に回転駆動力を伝達しつつ軸方向にスムーズにスライドすることができる。
【0010】
さらに、本発明の送り装置において、前記送りローラは、中央部が両端部よりも大きな外径の樽状に形成されてなるものとすることもできる。外径が均一な円筒状の送りローラを用いる場合において、シート材の幅方向の厚みが不均一なときには、シート材と送りローラとの接触面積に軸方向で差が生じシート材が真っ直ぐ送られずガイドにより生じる歪みが大きくなりやすいが、中央部のみを挟持して比較的真っ直ぐ送ることができるので歪みを小さくすることができる。
【0011】
また、本発明の送り装置において、前記シート材は、ベルトがエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTの該リングの製造に用いられるものとすることもできる。ベルト式のCVTに用いられるリングは、要求される品質レベルが高く、ごく小さな表面疵も許されないものであるが、シワ状の浮き上がりの発生を防止することで送りローラや他の送り設備との接触疵などを防止できるので、本発明を適用する意義が大きい。
【0012】
さらに、本発明の送り装置において、前記送り装置は、ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送り出して所定長さ毎に切断する切断装置に搭載されてなるものとすることもできる。このような切断装置では、切断時の基準を出すためにシート材をガイドする必要があり、本発明を適用する意義が大きい。特に、ベルト式のCVTに用いられるリングの製造においては、切断後に筒状に曲げ加工して切断面同士を溶接することから、切断されたシート材の切断面同士の平行度や切断面と側面との直角度が厳しく要求され、シート材のガイドが不可欠であるから本発明を適用する意義が大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明の一実施例としての送り装置を搭載する切断装置20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、図1の切断装置20の上面図であり、図3は、図1のロールフィーダ40のA−A断面を示す断面図であり、図4は、ロールフィーダ40のロール43,53の拡大図である。実施例の切断装置20は、例えばエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTのリングの製造に用いる金属製のシートがロール状に巻かれてなるコイル材Cを送り出して所定長さ毎に切断する装置として構成されている。切断装置20は、図1に示すように、コイル材Cを送り出すアンコイラ30と、送り出されたコイル材Cを上下に配置されたロール43,53により挟持して送るロールフィーダ40と、ロールフィーダ40により送られるコイル材Cを上下に配置された切断刃62によりダウンカット方式で切断するシャー60と、シャー60の切断刃62よりも下流側に配置され送られるコイル材Cをガイドするガイド80と、電源をオンオフする電源ボタンスイッチ91などの各種ボタンスイッチからなる操作パネル90と、装置全体のコントロールを司るメインコントローラ100とを備える。なお、送り装置は、ロールフィーダ40が該当する。
【0015】
アンコイラ30は、図1に示すように、図示しないステッピングモータの回転軸に接続されると共に図示しない油圧シリンダによりコイル材Cの内周面に当接するよう拡開してコイル材Cを回転させるマンドレル32と、コイル材Cを送り出すうちに徐々に小さくなる外径に追従してコイル材Cの外周面に当接するよう図示しないエアシリンダによりコイル材Cの径方向に向かって押圧されコイル材Cの回転に伴って回転する複数の押えローラ34と、略円弧状に形成され送り出されるコイル材Cを下側からガイドするループガイド36とを備える。
【0016】
ロールフィーダ40は、図1および図3に示すように、フレーム40aの上方に取り付けられたエアシリンダ41の駆動により支持軸42aを中心として弧を描くように上下に昇降するロールフレーム42と、ロールフレーム42にベアリングを介して回転自在に取り付けられロールフレーム42に連動する上ロール43と、本体フレーム40aにベアリングを介して回転自在に取り付けられる下ロール53と、下ロール53とカップリング59aを介して接続され下ロール53を回転駆動するステッピングモータ59とを備え、エアシリンダ41の駆動により、上ロール43が下端に位置するときにはエアシリンダ41の押圧力により上ロール43と下ロール53とでコイル材Cを挟持して送り、上ロール43が上端に位置するときにはコイル材Cの挟持を解除する。上ロール43は、略中央部に軸方向にスプライン溝が形成されたシャフト44と、シャフト44にフローティング機構46を介して軸方向にスライド可能に取り付けられるロール本体45と、シャフト44の図3中の右端に取り付けられるスプロケット48とを備える。下ロール53は、上ロール43と同一の構成であるため、説明を省略する。なお、フローティング機構46,56の説明については後述する。ロール本体45,55は、図4に示すように、中央部の外径が両端部の外径よりもわずかに大きく(3/100mm程度)なるような加工(いわゆるクラウン加工)が施されており、両端部から中央部に向かうにつれて径が徐々に大きくなる樽状に形成されている。スプロケット48とスプロケット58とは、エアシリンダ41の駆動により上ロール43が下端に位置するときに噛み合ってステッピングモータ59の駆動力を上ロール43に伝達し、上ロール43を下ロール53の回転方向と逆方向に回転させることができる。このため、上ロール43が下端に位置するときに、コイル材Cを挟持してシャー60側に送ることができる。なお、上ロール43が上端に位置するときには、スプロケット48とスプロケット58との噛み合いが解除され上ロール43に駆動力は伝達されなくなる。また、ステッピングモータ59の回転量とその回転に伴うロールフィーダ40によるコイル材Cの送り量との関係が予め把握されてROM104に記憶されており、コイル材Cを送る際には、送り量に応じた必要な回転量がメインコントローラ100から駆動信号としてステッピングモータ59に出力される。
【0017】
ここで、フローティング機構46,56について説明する。なお、フローティング機構46,56は同一の構成であるため、フローティング機構46について説明し、フローティング機構56については説明を省略する。フローティング機構46は、シャフト44に形成されたスプライン溝内に配置される複数のボール46aと、ボール46aを保持すると共に外周にロール本体45が固定された円筒部材46bと、ロール本体45を挟むようにシャフト44に取り付けられるスプリング受け46cと、ロール本体45とスプリング受け46cとの間に設けられロール本体45をシャフト44の中央側に向かって付勢するスプリング46dとを備え、ボールスプライン嵌合により、ロール本体45をシャフト44と一体となって回転させると共にロール本体45をシャフト44に対して軸方向にスライドさせることができる。これにより、コイル材Cはロールフィーダ40によって挟持され送られているときでも幅方向(ロール本体45の軸方向)にスライドすることができる。また、スプリング46dは、左右で同じバネ定数のものを使用し、コイル材Cを挟持していない初期状態で、ロール本体45の左側に設けられたスプリング46dによりロール本体45に作用する付勢力flとロール本体45の右側に設けられたスプリング46dによりロール本体45に作用する付勢力frとが釣り合って、ロール本体45を図中略中央の初期位置で保持することができる。また、ロールフィーダ40によるコイル材Cの挟持が解除されたときには、スプリング46dの付勢力によりロール本体45は初期位置に戻る。
【0018】
シャー60は、図1に示すように、ダウンカット方式で切断するクランク型シャーとして構成されており、上刃62aが取り付けられ初期状態で上端位置で待機するシャー本体64と、上刃62aと向かい合って設置される下刃62bとを備え、図示しないモータおよびクランク機構の駆動によりシャー本体64をフレーム60aに沿って下降させることにより上刃62aと下刃62bとでコイル材Cを剪断する。このモータは、メインコントローラ100からの駆動信号によりシャー本体64が一往復の昇降動作を行うよう回転駆動する。また、切断済みのシートは、シャー60の下流側に設けられ図示しないモータにより駆動する搬出ロール25により搬出されると共に搬出台24に取り付けられたフリーローラ26上を自重により移動し搬出台24の先端に設けられた搬出ストッパ27に当接して停止する。
【0019】
ガイド80は、図2に示すように、クランクシャー60の切断刃62(図中は下刃62bを図示)の下流側に配置され、コイル材Cを両側面から対向して挟むよう対となって配置される一組のガイド82,83と一組のガイド84,85の計二組のガイドを備える。ここで、ガイド82,83とガイド84,85とのコイル材Cの送り方向の間隔は、コイル材Cが幅方向に曲がっているときでもコイル材Cの側面を切断刃62に対して略垂直に保ってガイドできるような間隔とされている。ガイド82〜85は、それぞれアクチュエータとしてのエアシリンダ82a〜85aと、エアシリンダ82a〜85aのロッドの先端に図示しないローラフレームを介して回転可能に取り付けられたローラ82b〜85bとを備えており、コイル材Cの送り方向に対して右側(図中下側)に配置されるガイド82,84は、位置決め用ストッパ82c,84cと、エアシリンダ82a,84aのロッドから位置決め用ストッパ82c,84cが設置された方向に突出した突出部82d,84dとを更に備えている。なお、ガイドの構成要素については、ガイド84についてのみ図中に符号を付した。このようにして構成されたガイド80の各ガイド82〜85は、メインコントローラ100からのエアシリンダ82a〜85aに対する駆動信号により、コイル材Cに当接する方向にスライドしてコイル材Cの側面を両側から挟んでガイドしたり、コイル材Cから離間する方向にスライドしてコイル材Cのガイドを解除したりする。コイル材Cをガイドするときには、ガイド82,84は、突出部82d,84dが位置決め用ストッパ82c,84cに当接する位置で停止し、ガイド83,85は、ローラ83b,85bがコイル材Cに当接する位置で停止する。このとき、前述したようにロールフィーダ40はフローティング機構46,56を備えロール本体45,55が軸方向にスライドするので、コイル材Cは送られているときでも幅方向にスライド可能であり、コイル材Cの側面が送り方向に近付くようにガイドすることができる。
【0020】
操作パネル90は、図1に示すように、電源をオンオフするための電源ボタンスイッチ91や切断装置20を自動運転させる自動モード中に切断開始を指示するスタートボタンスイッチ92,自動モード中に切断終了を指示するストップボタンスイッチ93,切断についての各種設定を行う各種設定スイッチ94,切断装置20を自動モードにするか操作者による手動操作が可能な手動モードにするかを切り替えるモードセレクトスイッチ95,図示しない手動モード用の各種操作ボタンスイッチなどがあり、内部通信インターフェース108を介してメインコントローラ100に操作者の指示を入力できるようになっている。
【0021】
メインコントローラ100は、CPU102を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムなどを記憶したROM104と、一時的に各種データを記憶するRAM106と、操作パネル90との通信を可能とする内部通信インタフェース108とを備え、これらは互いに信号のやり取りが可能なように接続されている。メインコントローラ100は、操作パネル90の操作に応じて発生する操作信号を入力する。また、コイル材Cの送り量に応じた駆動信号をロールフィーダ40のステッピングモータ59に出力したり、シャー60に駆動信号を出力したり、搬出ロール25に駆動信号を出力したりする。また、ロールフィーダ40のエアシリンダ41に駆動信号を出力して上ロール43を昇降させたり、ガイド80のエアシリンダ82a〜85aに駆動信号を出力して各ガイドによるコイル材Cのガイドとガイドの解除とを行う。なお、ロールフィーダ40のステッピングモータ59に駆動信号を出力したときには、アンコイラ30のステッピングモータに対してもコイル材Cの送りに伴う必要な回転を行うよう駆動信号が出力されているものとする。
【0022】
次に、こうして構成された本実施形態の切断装置20の動作について説明する。図5は、メインコントローラ100により実行される自動切断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。この処理は、コイル材Cがセットされモードセレクトスイッチ95により自動モードにされてスタートボタンスイッチ92が押下されたときに実行される。なお、通常は、コイル材Cをセットする際に手動モードでの段取り作業(例えば、巻き癖がきつく使用できないコイル材Cの先端部の切り捨て作業など)がなされるので、スタートボタンスイッチ92が押下されたときにコイル材Cの先端が下刃62b上の位置にある。
【0023】
自動切断処理ルーチンが実行されると、メインコントローラ100のCPU102は、まず、ロールフィーダ40の上ロール43が下降するようエアシリンダ41を駆動制御して、ロールフィーダ40でコイル材Cを挟持する(ステップS100)。このとき、ロール本体45,55は初期位置でコイル材Cの上下面を挟持する。次に、ガイド80のエアシリンダ82a〜85aを駆動制御して、ガイド80でコイル材Cをガイドし(ステップS110)、ロールフィーダ40を駆動制御して、コイル材Cを送り量Lだけ送る(ステップS120)。ここで、送り量Lは、コイル材Cを所定長さ(例えば、300mm)で切断する際の送り量として定められたものである。コイル材Cが送られると、シャー60を駆動制御して、コイル材Cを切断する(ステップS130)。続いて、ロールフィーダ40の上ロール43が上昇するようエアシリンダ41を駆動制御して、ロールフィーダ40のコイル材Cの挟持を解除する(ステップS140)。挟持を解除するのは、コイル材Cの幅方向の曲がりなどによりロール本体45,55の軸方向へのスライドが限界位置に達しているとそれ以上同じ方向にスライドできないので、一旦初期位置に戻すためである。そして、ガイド80のガイドを解除して(ステップS150)、搬出ロール25を駆動制御して切断されたシートSを搬出台24に搬出してから(ステップS160)、再びステップS100以降の処理を繰り返す。この処理は、操作者によりストップボタンスイッチ93が押下されるまで繰り返し行われる。
【0024】
ここで、幅方向の曲がりやねじれ,幅方向の厚みの不均一などの形状不良があるコイル材Cを送って切断する場合について説明する。一例として幅方向の曲がりと幅方向の厚みの不均一を挙げる。まず、曲がりについて説明する。この曲がりは、素材としての鋼片を所定の厚みまで圧延してロール状に巻き取ってコイル材Cを製造する圧延工程において、幅方向に弓なりの曲がりを伴って圧延されることにより生じるものである。一旦生じた曲がりは、完全に解消されることがないので、コイル材Cを送るときに幅方向の曲がりを伴って送られることになる。図6は、上述した自動切断処理ルーチンで、曲がりのあるコイル材Cを送る様子を示す説明図である。図6(a)は、コイル材Cを送る前の様子を示す。図示するように、コイル材Cは曲がりにより側面が送り方向に対して右方向(図中下方向)に湾曲している。そして、ガイド80で両側面ガイドしながらコイル材Cを送り始めると(図6(b)参照)、コイル材Cは、送り方向に送られると共に図中上方向にスライドする。このとき、ロールフィーダ40のロール本体45,55もコイル材Cを挟持して送りながら上方向にスライドするので、ガイド80によりガイドされる部分とロールフィーダ40により挟持される部分との間で歪みが生じることがない。なお、図中点線は切断位置を示す。そして、コイル材Cが送り量Lまで送られる間に(図6(c)参照)、曲がりの影響によりコイル材Cのロールフィーダ40に挟持されている部分はさらに上方向にスライドするが、このときもロール本体45,55が上方向にスライドするので歪みを小さくすることができる。このように、ロールフィーダ40がフローティング機構46,56を備えるのでコイル材Cの姿勢を矯正するときに、ガイド80によりガイドされる部分との間に生じる歪みを小さくすることができる。また、コイル材Cを送っているときのロールフィーダ40の断面図を図7に示す。図7(a)が初期状態を示し、図7(b)がコイル材Cが送り量Lだけ送られたときの状態を示す。図示するように、初期状態に比べてコイル材Cが図中左側にスライドすると共にロール本体45,55も図中左側にスライドするので、図中左側に配置されたスプリング46d,56dが縮んでその付勢力flが大きくなり、図中右側に配置されたスプリング46d,56dが延びその付勢力frが小さくなっている。このため、コイル材Cを送り量Lだけ送って切断した後にロールフィーダ40による挟持を解除すると、ロール本体45,55は、付勢力flにより図7中の右方向に移動して初期位置に戻される。このように、ロール本体45,55は、切断後に初期位置に戻されるので、スライドできる限界位置に達したときにそれ以上スライドできないことにより生じる歪みの発生を防止することができる。ここで、比較例として、このようなフローティング機構46,56を備えないロールフィーダを搭載した切断装置で曲がりのあるコイル材Cを送る場合について説明する。図8は、比較例の切断装置120で曲がりのあるコイル材Cを送る様子を示す説明図である。この切断装置120では、フローティング機構を備えないためロール本体145,155(図示せず)が軸方向にスライドできず、ガイド80でコイル材Cをガイドしたときにコイル材Cがスムーズにスライドすることができない。このため、図示するように、ガイド80でガイドされる部分とロール本体145,155とに挟持される部分との間に歪みが生じ、シワ状の浮き上がりが発生する。この浮き上がりにより、コイル材Cにロール本体145,155との接触疵が生じたり、切断時にコイル材Cが動いてしまうため切断が不安定になるなどの問題が生じる。本実施例では、前述したように、比較例のような歪みが生じずシワ状の浮き上がりが発生することがないので、このような問題が生じることを防止することができる。
【0025】
次に、コイル材Cの厚みが幅方向で不均一なものを送る場合について比較例と比較しながら説明する。図9は、ロールフィーダでコイル材Cを挟持する様子を示す説明図である。図9(a)が比較例として外径が均一の円筒状のロール本体245,255でコイル材Cを挟持する様子、図9(b)が本実施例でのコイル材Cを挟持する様子を示す。比較例では、図9(a)に示すように、主にコイル材Cの厚みの厚い部分がロール本体245,255に挟持され(図中点線で図示)、厚みの薄い部分は挟持されていない。このため、コイル材Cが送られると、その幅方向で送り量に差が生じ、送り方向に対して真っ直ぐに送られない場合が生じる。これに対して、本実施例では、コイル材Cは中央部付近でロール本体45,55に挟持されるので(図中点線で図示)、比較例のように幅方向で送り量の差は生じにくくなり比較的真っ直ぐに送ることができる。このため、コイル材Cを送っているときに、幅方向での送り量の差による幅方向の曲がりの発生を抑えることができ、コイル材Cがガイド80によって姿勢を矯正されることが少なくなるので、歪みを小さくすることができる。
【0026】
以上説明した実施例の切断装置20によれば、ロールフィーダ40が、コイル材Cを挟持して送るロール本体45,55の回転方向に対してはロール本体45,55と噛み合ってステッピングモータ59の回転駆動力をロール本体45,55に伝達すると共に軸方向に対してはロール本体45,55がスライドできるようボールスプライン嵌合されてなるフローティング機構46,56を備える。これにより、コイル材Cはガイド80によりガイドされるときにロール本体45,55と共に軸方向にスライドできるので、ガイドされる部分とロール本体45,55に挟持される部分との間の歪みを小さくすることができる。この結果、コイル材Cを送る際にシワ状の浮き上がりが発生するのを抑制することができる。
【0027】
実施例の切断装置20では、ロール本体45,55は樽状に形成されるものとしたが、外径が均一の円筒状に形成されるものとしてもよい。
【0028】
実施例の切断装置20では、フローティング機構46,56はボールスプライン嵌合によりロール本体45,55をシャフト44,54に取り付けるものとしたが、これに限られず、ロール本体45,55をシャフト44,54と一体となって回転させると共にロール本体45,55をシャフト44,45に対して軸方向にスライドさせることができるものであれば如何なるものとしてもよい。また、ロール本体45,55とを初期位置に戻すためにスプリング46d,56dが配置されるものとしたが、スプリングに限られずロール本体45,55を初期位置に戻すことができるものであれば如何なるものとしてもよく、このようなロール本体45,55を初期位置に戻す構成を備えないものとしてもよい。
【0029】
実施例の切断装置20では、ガイド80をシャー60より下流側に備えるものとしたが、これに限られず、上流側に備えるものとしてもよいし、上流側と下流側とに備えるものとしてもよい。
【0030】
実施例の切断装置20では、コイル材Cの側面をガイドするものとしたが、これに限られず、コイル材Cをガイドするものであれば如何なるものとしてもよい。例えば、図10の変形例の切断装置320に示すように、本実施例と同様のロールフィーダ40と、切断刃62から距離Lだけ離れた位置に昇降式の端面ストッパ28とを備え、コイル材Cの端面を端面ストッパ28に当接させてガイドするものとしてもよい。図10(a)は、コイル材Cを送る前の様子を示す。コイル材Cが送られると、送り量Lの送りが完了する前に、曲がりによって端面の一部が端面ストッパ28に当接する(図10(b)参照)。この状態から送り量Lの送りが完了するようさらにコイル材Cが送られると、コイル材Cの端面全体が端面ストッパ28に当接して停止する(図10(c)参照)。このときも前述した実施例と同様に、ロール本体45,55はフローティング機構46,56によってコイル材Cを送りながらスライドできるので歪みを小さくし、シワ状の浮き上がりが発生するのを抑制することができる。
【0031】
実施例では、ロールフィーダ40が切断装置20に搭載されているものとしたが、これに限られず、ロール状に巻かれてなる金属材料を送る如何なる装置に搭載されるものとしてもよい。また、実施例の切断装置20では、ベルト式CVTのベルトに用いられる金属材料を切断するものとしたが、これに限られずロール状に巻かれてなる如何なる金属材料を切断するものとしてもよい。
【0032】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、ベルト式CVTの製造産業やコイル状の金属材料の加工産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施例としての切断装置20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】切断装置20の上面図である。
【図3】図1のロールフィーダ40のA−A断面を示す断面図である。
【図4】ロールフィーダ40のロール43,53の拡大図である。
【図5】自動切断処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図6】曲がりのあるコイル材Cを送る様子を示す説明図である。
【図7】コイル材Cを送っているときのロールフィーダ40の断面図である。
【図8】比較例の切断装置120で曲がりのあるコイル材Cを送る様子を示す説明図である。
【図9】ロールフィーダでコイル材Cを挟持する様子を示す説明図である。
【図10】変形例の切断装置320で曲がりのあるコイル材Cを送る様子を示す説明図である。
【符号の説明】
【0035】
20,120,320 切断装置、24 搬出台、25 搬出ロール、26 フリーローラ、27 搬出ストッパ、28 端面ストッパ、30 アンコイラ、32 マンドレル、34 押えローラ、36 ループガイド、40 ロールフィーダ、40a フレーム、41 エアシリンダ、42 ロールフレーム、42a 支持軸、43,143 上ロール、44 シャフト、45,145,245 ロール本体、46 フローティング機構、46a ボール、46b 円筒部材、46c スプリング受け、46d スプリング、48 スプロケット、53 下ロール、54 シャフト、55,255 ロール本体、56 フローティング機構、56a ボール、56b 円筒部材、56c スプリング受け、56d スプリング、58 スプロケット、59 ステッピングモータ、59a カップリング、60 シャー、60a フレーム、62 切断刃、62a 上刃、62b 下刃、64 シャー本体、80 ガイド、82,83,84,85 ガイド、82a,83a,84a,85a エアシリンダ、82b,83b,84b,85b ローラ、82c,84c 位置決め用ストッパ、82d,84d 突出部、90 操作パネル、91 電源ボタンスイッチ、92 スタートボタンスイッチ、93 ストップボタンスイッチ、94 各種設定スイッチ、95 モードセレクトスイッチ、100 メインコントローラ、102 CPU、104 ROM、106 RAM、108 インタフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻かれてなる金属製のシート材をガイドしながら送る送り装置であって、
前記シート材を上下面から挟んで回転することにより該シート材を送る送りローラと、
回転駆動力を発生させるモータと、
前記送りローラの回転方向に対しては該送りローラと噛み合って前記モータの回転駆動力を伝達すると共に該送りローラの軸方向に対しては該送りローラがスライドできるよう構成されてなるフローティング機構と
を備える送り装置。
【請求項2】
前記フローティング機構は、前記送りローラが前記シート材を挟まないときには該送りローラを初期位置に戻すよう該送りローラの両側面を付勢する付勢手段が配置されてなる請求項1記載の送り装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の送り装置であって、
前記送りローラは、中空のロール本体と該ロール本体に挿入されるロール軸とから構成され、
前記フローティング機構は、前記ロール本体の内周面と前記ロール軸の外周面とにそれぞれ形成されたスプライン溝に転動可能なボールが配置され、該ロール本体と該ロール軸とをボールスプライン結合する機構である
送り装置。
【請求項4】
前記送りローラは、中央部が両端部よりも大きな外径の樽状に形成されてなる請求項1ないし3いずれか1項に記載の送り装置。
【請求項5】
前記シート材は、ベルトがエレメントとリングとによって構成されるベルト式のCVTの該リングの製造に用いられる請求項1ないし4いずれか1項に記載の送り装置。
【請求項6】
前記送り装置は、ロール状に巻かれてなる金属製のシート材を送り出して所定長さ毎に切断する切断装置に搭載されてなる請求項1ないし5いずれか1項に記載の送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−280327(P2009−280327A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132337(P2008−132337)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(503158017)株式会社シーヴイテック (11)
【Fターム(参考)】