説明

送信方法及びセルラー無線システム

【課題】本発明の目的は、無線システムにおける遅延に関わりなくベースステーションがハンドオフ中に加入者ターミナルへ信号を同時に送信するようにソフトハンドオフを実現することである。
【解決手段】本発明は、ベースステーション及び少なくとも1つのボコーダを備え、これらベースステーション及びボコーダは互いに信号を送信し、ベースステーションはボコーダへ信号を実質的に同時に送信し、そしてボコーダはその実質的に同時に送信された信号を異なる受信時間に受信するようなセルラー無線システムであって、ボコーダにより受信される信号の異なる受信時間の間の遅延差を測定するための測定手段と、ボコーダにより送信された信号をベースステーションが実質的に同時に受信するように、ベースステーションへ送信されるべき信号を必要に応じて遅延するための遅延手段とを備えたセルラー無線システム、及び送信方法に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、テレコミュニケーションシステムに係り、より詳細には、ソフトハンドオフを用いたデジタルセルラー無線システムに係る。
【背景技術】
【0002】
先行技術の説明
典型的なセルラー無線システムは、固定ベースステーションネットワークを備え、加入者ターミナルが該ネットワークの1つ以上のベースステーションと通信する。ベースステーションは、加入者ターミナルから到着する通信を転送する。加入者ターミナルは、移動中又は静止したままである間に、ベースステーションを介して互いにそして他の電話システムの加入者ターミナルへメッセージを送信することができる。加入者ターミナルがベースステーションネットワークの有効到達エリアに位置するときにメッセージの送信が可能となる。加入者ターミナルがセルラー無線システムにより提供されるサービスを利用できるためには、あらゆる状況のもとで少なくとも1つのベースステーションへの接続を維持しなければならない。
【0003】
加入者ターミナルがベースステーションネットワークにより提供されるサービスを利用しないときには、ベースステーションネットワークへの接続を必要とせず、アイドル状態でベースステーションを聴取する。加入者ターミナルがベースステーションネットワークにおいて1つのベースステーションの有効到達エリアから別のベースステーションの有効到達エリアへ移動するときには、チャンネル又はベースステーションを切り換える必要が生じる。
【0004】
典型的なセルラー無線システムでは、加入者ターミナルは一度に1つのベースステーションのみと通信するが、例えば、特にCDMAシステムでは、加入者ターミナルは、多数のベースステーションと同時に通信することができる。公知のソフトハンドオフでは、ベースステーションネットワークへの接続がハンドオフに関わりなく維持される。このようなハンドオフでは、通常、ベースステーションが切り換えられる。又、公知技術は、ベースステーションが切り換えられず、使用ベースステーションのセクターが切り換えられるソフターハンドオフも備えている。ソフト及びソフターハンドオフは、メーク・ビフォア・ブレーク(ブレークの前のメークする)型のハンドオフであり、これは、以前のベースステーションへの接続が終了する前に加入者ターミナルに対して新たな接続が設定されることを意味する。いずれのハンドオフにおいても、使用周波数帯域は切り換えられない。
【0005】
セルラー無線システムは、通常、ボコーダを備え、このボコーダは、信号をソースエンコードし、そして信号送信レートを、例えば公衆交換電話ネットワーク(PSTN)のような送信ネットワークに適応させる。ボコーダは、例えば、TRAU(トランスコーダ/レートアダプタユニット)に配置され、TRAUは、例えばベースステーションコントローラ又は移動サービス交換センターに関連して配置される。TRAUは、TRAUフレームを形成し、ベースステーションへ送信する。信号のコード化により、例えば、ベースステーションへの送信ラインにおける信号データレートが減少される。ボコーダ及びベースステーションは、TRAUフレームを形成するデータパケットより成る信号を互いに送信及び受信する。
【0006】
ソフトハンドオフにおいては、加入者ターミナルが多数のベースステーションと同時に通信する。ソフトハンドオフでは、加入者ターミナルが同じ情報より成る信号をベースステーションへ送信し、この信号はボコーダへ転送される。又、加入者ターミナルは、同じ情報より成る信号をベースステーションからも受け取り、ベースステーションは、その信号をボコーダから受け取っている。
【0007】
セルラー無線システムでは、ボコーダから異なるベースステーションへの信号ルートが著しく変化し、ボコーダとベースステーションとの間の通信経路の長さが大きく変化する。特に、送信経路の長さは、ボコーダとベースステーションとの間に送信されるべき信号に遅延を生じさせ、それ故、ベースステーションは、ボコーダによって送信された信号を異なる時間に受信する。遅延の長さは、特に使用する信号ルートに基づいて大きく変化する。遅延は、特にベースステーションによる加入者ターミナルへの信号の同時送信においてソフトハンドオフ中に問題を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明の要旨
本発明の目的は、無線システムにおける遅延に関わりなくベースステーションがハンドオフ中に加入者ターミナルへ信号を同時に送信するようにソフトハンドオフを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これは、ベースステーション及び少なくとも1つのボコーダを備え、データパケットより成る信号がベースステーションとボコーダとの間に送信され、ベースステーションはボコーダに信号を実質的に同時に送信し、そしてボコーダはその実質的に同時に送信された信号を異なる受信時間に受信するようなセルラー無線システムに使用される送信方法であって、ボコーダにより受信される信号の異なる受信時間の間の遅延差を測定し、そしてボコーダにより送信された信号をベースステーションが実質的に同時に受信するように、ベースステーションへ送信されるべき信号を必要に応じて遅延するという段階を備えた本発明の方法によって達成される。
【0010】
又、本発明は、ベースステーション及び少なくとも1つのボコーダを備え、これらベースステーション及びボコーダは互いに信号を送信し、ベースステーションはボコーダへ信号を実質的に同時に送信し、そしてボコーダはその実質的に同時に送信された信号を異なる受信時間に受信するようなセルラー無線システムであって、ボコーダにより受信される信号の異なる受信時間の間の遅延差を測定するための測定手段と、ボコーダにより送信された信号をベースステーションが実質的に同時に受信するように、ベースステーションへ送信されるべき信号を必要に応じて遅延するための遅延手段とを備えたセルラー無線システムにも係る。
【発明の効果】
【0011】
本発明による構成体は、特にソフトハンドオフにおいて多数の効果を発揮する。この構成体は、受信信号の遅延差を測定しそしてその遅延差に基づいて送信されるべき信号を遅延させることを含む。本発明の構成体では、ボコーダとベースステーションとの間の距離は、本発明にとって重要ではない。ボコーダにより受信される信号は、フレーム構造にされる。フレームに与えられたフレーム番号により異なるフレームが検出される。フレーム番号は、信号を互いに区別できるようにする。又、信号は適当な遅延で遅延される。適当に遅延された信号は、ベースステーションに同時に到着し、ベースステーションは、それら信号を加入者ターミナルへ同時に転送する。本発明の構成体に使用されるフレーム構造の信号は、スーパーフレームを形成し、フレームの長さを延長すると、信号遅延差の裕度を広げることができる。
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明による方法が使用されるセルラー無線システムを示す図である。
【図2】図2は、セルラー無線システムにおけるハンドオフ中の加入者ターミナルの移動を示す図である。
【図3】図3は、本発明によるセルラー無線システムの構造を詳細に示すブロック図である。
【図4】図4は、信号遅延のタイミングを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
好ましい実施形態の詳細な説明
図1は、本発明による方法が使用されるセルラー無線システムを示す。しかしながら、本発明による構成体は、このシステムに限定されるものではなく、拡散スペクトルシステム、特にCDMAシステムにも適用することができる。セルラー無線システムは、多数の加入者ターミナル10、20と、ベースステーション100、200、300と、ベースステーションコントローラ500と、移動サービス交換センター600とを備えている。ベースステーションコントローラ500の機能は、ベースステーション100、200、300を制御することである。セルラー無線システムは、更に、スピーチコーダとして働くボコーダ400も備えている。スピーチコード化に関しては、ボコーダ400は、既知の技術に基づいて実現される。図示された加入者ターミナル10、20は、実際には、例えば移動電話である。
【0015】
移動サービス交換センター600は、送信リンク550によりベースステーションコントローラ500に接続される。ベースステーションコントローラ500は、送信リンク450によりボコーダ400に接続される。ボコーダ400は、送信リンク150を経てベースステーション100と通信し、送信リンク250を経てベースステーション200と通信し、そして送信リンク350を経てベースステーション300と通信する。送信リンク150、250、350、450及び550は、例えば、PCM技術で実施される。又、これらの送信リンクは、例えば無線リンクで実施することもできる。図示された構成では、ボコーダ400は、ベースステーションコントローラ500と、ベースステーション100、200、300との間に配置される。しかしながら、ボコーダ400は、例えば、ベースステーションコントローラ500又は移動サービス交換センター600に関連してセルラー無線システムの他の何らかの部分に配置することもできる。図示された加入者ターミナル10、20は、アンテナ11を備えている。ベースステーション100、200、300は、アンテナ101を備えている。これらのアンテナ11、101は、トランシーバアンテナとして動作する。
【0016】
図2は、ハンドオフ中のセルラー無線システムにおける加入者ターミナル10の移動を示す。図示されたように、各ベースステーション100、200、300は、それ自身の有効到達エリア110、210、310を有している。加入者ターミナル10は、最初、ベースステーション100の有効到達エリア110を移動する。加入者ターミナル10が他の加入者ターミナル20への接続を設定する場合には、加入者ターミナル10は、ベースステーション100へ信号を送信する。信号は送信リンク150を経てボコーダ400へ伝播し、そこから、信号は更に既知の技術に基づく経路に沿って別の加入者ターミナル20へ伝播する。加入者ターミナル10からベースステーション100、200、300を経てボコーダ400へ至る信号の伝播は、逆方向と称する。
【0017】
加入者ターミナル10がベースステーション200の有効到達エリア220に位置する加入者ターミナル20との接続を設定する場合には、信号が例えば既知の技術に基づく経路に沿ってベースステーションコントローラ500へ伝播する。信号は、ベースステーションコントローラ500からボコーダ400へ伝播する。ボコーダ400は、送信リンク250を経てベースステーション200へ信号を送信する。ベースステーション200は、無線経路を経て加入者ターミナル20へ受信信号を送信する。ボコーダ400からベースステーション100、200、300へそして更にベースステーションから加入者ターミナル10、20へ至る信号の伝播は、順方向と称する。セルラー無線システムの構造に基づき、信号は、システムの異なるネットワーク要素、例えば、ベースステーション100、200、300、ボコーダ400、及びベースステーションコントローラ500間を伝播するときに遅延される。又、ベースステーション100、200、300は、信号を処理するときにも信号に遅延を生じさせる。しかしながら、ベースステーション100、200、300は、実質的に等しい長さの処理遅延を生じさせると仮定することができる。又、ベースステーション100、200、300と加入者ターミナル10との間のエアインターフェイスに生じる遅延は、加入者ターミナル10と通信する全てのベースステーション100、200、300において実質的に等しいと仮定することもできる。
【0018】
ボコーダ400及びベースステーション100、200、300は、フレーム構造の信号においてデータパケットを互いに送信する。データパケットは、例えば、0から3までの値が与えられたフレーム番号フィールドを含む。フレームは、スーパーフレームを形成し、そしてフレーム番号は、スーパーフレームにおけるフレームの位置に依存する。スーパーフレームの長さは、例えば、80msであり、そしてデータパケットの長さは、20msである。ベースステーション100、200、300により送信されるデータパケットは、ベースステーションが逆方向に信号を同時に送信するように同期される。
【0019】
加入者ターミナル10が別の加入者ターミナル20への接続を設定すると仮定する。加入者ターミナル10は、図2に示すように、接続中に、ベースステーション100の有効到達エリア110からベースステーション200の有効到達エリア210へ移動する。1つの有効到達エリアから別の有効到達エリアへの移行時に、セルラー無線システムは、加入者ターミナル10により設定される接続が切断されたり又は干渉されたりしないようなソフトハンドオフを使用する。ソフトハンドオフ中に、加入者ターミナル10は、ベースステーション100、200と同時に通信し、これらベースステーションは、同じデータを含む逆方向信号をボコーダ400へ送信する。ボコーダ400も、同じ情報を含む順方向信号を各ベースステーション100、200へ送信する。その後、ベースステーション100、200は、それらが受信した信号を加入者ターミナル10へ送信する。
【0020】
図3は、本発明によるセルラー無線システムの構造を詳細に示すブロック図である。特に、ボコーダ400とベースステーション100、200、300との間に送信されるべき信号に生じる遅延は、特にハンドオフ中に問題を引き起こす。本発明による構成体は、ボコーダ400により受け取られる信号の受信の瞬間の間の遅延差を測定するための測定手段410(MEAS)を備えている。同じデータより成る信号がボコーダ400に到着する瞬間から遅延差が測定される。ボコーダ400とベースステーション100、200、300との間の送信リンク150、250、350を経て送られる信号の遅延差は、逆方向及び順方向におけるスーパーフレームの長さのせいぜいほぼ半分である。しかしながら、必要であれば、スーパーフレームの長さを増加することにより許容遅延差を増加することもできる。
【0021】
又、セルラー無線システムは、遅延手段420も備えている。この遅延手段420は、ボコーダ400によってベースステーション100、200、300へ送信される信号を必要に応じて遅延させる。この遅延により、ベースステーション100、200、300は、たとえ信号送信に遅れがあっても、ボコーダ400により送信された信号を実質的に同時に受け取る。遅延手段420は、測定手段410により行なわれた遅延測定に基づいて信号を遅延させる。ベースステーション100、200、300によって受信されそして同じデータを含んでいる信号の遅延差は、信号を構成するデータパケットの長さに実質的にほぼ等しくなる。データパケットの長さは、通常、20msの周期に対応する。
【0022】
ハンドオフ中に、加入者ターミナル10は、ベースステーション100、200、300へ信号を送信すると仮定する。ベースステーション100、200、300は、信号を受信し、そしてそれをボコーダ400へ転送する。ベースステーション100、200、300は、ボコーダ400へ信号を実質的に同時に送信する。ボコーダ400への信号のルートが異なるので、信号は、異なる長さの遅延を伴って供給される。又、送信リンク250に沿って伝播する信号は、送信リンク350に沿って伝播する信号の例えば1ミリ秒前にボコーダ400に到着すると仮定する。測定手段410は、ベースステーション200、300により送信された信号を測定し、そして上記の1ミリ秒をそれら信号間の遅延差として得る。逆方向において測定手段410により測定された遅延差に関するデータは、遅延手段420に送られ、この遅延手段は、順方向に送信リンク250に沿って加入者ターミナル10へ送信されるべき信号を遅延させる。この遅延により、ボコーダ400により送信された信号は、ベースステーション100、200、300に実質的に同時に到着し、その後、データパケットは、加入者ターミナル10へ実質的に同時に送信することができる。
【0023】
又、セルラー無線システムは、ボコーダ400により受け取られた信号から、異なるベースステーション100、200、300から送信されたデータパケットを検出して識別するための検出手段430(DET)も備えている。この検出手段430は、フレーム番号に基づいて異なるデータパケットを検出しそして識別する。遅延手段420は、ボコーダ400によって受信されたフレームと同じフレーム番号を有するデータパケットを、検出手段430で行なわれた検出及び識別に基づいて遅延させる。ボコーダ400により受信及び送信される信号が同じフレーム番号を含む場合には、そのフレーム番号が互いに対応する。セルラー無線システムに含まれる測定手段410、遅延手段420及び検出手段430は、ボコーダとして働くTRAUに配置されるのが好ましい。図3においては、測定手段410、遅延手段420及び検出手段430が、ボコーダと、ベースステーション100、200、300との間に配置される。しかしながら、これら手段410、420及び430は、セルラー無線システムの他の部分に配置することもできる。
【0024】
図4は、データパケットより成る信号の遅延のタイミングを概略的に示す。より詳細には、この図は、逆方向及び順方向における3つのベースステーション100、200、300及びボコーダ400の信号の遅延を示している。この図において、ベースステーション100、200、300は、それらの信号を実質的に同じ時間T0にボコーダ400へ送信する。この図において、ベースステーション100、200、300が信号の送信を開始したときに時間の経過が始まると仮定する。測定手段410は、ボコーダ400により受信される信号の受信の瞬間に基づいて信号遅延差を測定する。ボコーダ400は、最初、ベースステーション100により送信された信号を時間T1=40msに受信する。それ故、ベースステーション100により送信された信号がボコーダ400に到着するのに40msを要する。ベースステーション200により送信された信号は、時間T3=80msにボコーダ400に受信される。更に、ベースステーション300により送信された信号は、時間T2=60msにボコーダ400に受信される。ベースステーション100、200、300は、0ないし3で指示されたフレームにおいて信号を送信する。図示された例では、ベースステーション100、200、300は、フレーム番号0のフレームから送信を開始する。
【0025】
それ故、ベースステーション200により送信された信号は、ベースステーション100、200、300により送信された全ての信号の最後にボコーダ400に到着する。これは、ベースステーション100、300とボコーダ400との間のルートよりも、ベースステーション200とボコーダ400との間の遅延が長いことを意味する。遅延手段420は、最後に到着した信号の受信の瞬間T3の後に信号の遅延を開始する。より詳細には、遅延は、時間T3より時間ΔTの後に開始する。遅延手段420は、順方向に信号を遅延する。遅延手段420は、逆方向に測定手段410により実行された遅延測定に基づいて信号を遅延する。ボコーダ400は、最後のフレームが受信されたときよりΔTだけ後にフレーム番号0で示されたフレームをベースステーション200へ送信する。これは、フレーム番号0で示されたフレームが最初に時間T4=ΔT+T3にベースステーション200へ送信されることを意味する。図示された構成では、時間ΔTは、例えば、フレームの長さに比して短い。
【0026】
ボコーダ400は、次いで、フレーム番号0で示されたフレームをベースステーション300へ送信する。この送信は、時間T5=ΔT+T3+(T3−T2)に行なわれる。従って、ベースステーション300へのフレームは、ベースステーション200への送信の20ms後に送信される。ボコーダ400は、最後に、フレーム番号0で示されたフレームをベースステーション100へ送信する。この送信は、時間T6=ΔT+T3+(T2−T1)に行なわれる。ベースステーション100への送信は、ベースステーション200への送信の40ms後に行なわれる。本発明による構成では、逆方向及び順方向にボコーダ400により行われる信号処理動作は、同期されない。更に、ボコーダ400は、ベースステーション100、200、300と同期される必要がない。本発明による構成では、信号の全遅延は重要ではなく、測定される必要がない。むしろ、信号の遅延差が重要である。ボコーダがベースステーションへ送信されるべきデータパケットを適当に遅延したときには、データパケッドがベースステーション100、200、300に同時に到着する。図4に示す構成では、ベースステーション100、200、300は、ボコーダ400が異なる時間に送信した信号を実質的に同じ時間T7に受信する。ハンドオフ中に、ベースステーション100、200、300に同時に到着する信号は、加入者ターミナル10へも信号を容易に同時に送信できるようにする。時間ΔTの長さを変更することにより、ベースステーションにおいて順方向遅延を最小にすることができる。換言すれば、周期ΔTの長さが変更されるときには、ベースステーション100、200、300のエアインターフェイスの同期された送信の瞬間にできるだけ近い状態で信号がベースステーション100、200、300に到着するように、順方向信号を調整することができる。遅延手段420は、周期ΔTの長さを効果的に調整する。
【0027】
添付図面の例を参照して本発明を以上に詳細に説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、請求の範囲に記載した本発明の範囲内で種々の変更がなされ得ることが明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースステーション及び少なくとも1つのボコーダを備え、データパケットより成る信号がベースステーションとボコーダとの間に送信され、ベースステーションはボコーダに信号を実質的に同時に送信し、そしてボコーダはその実質的に同時に送信された信号を異なる受信時間に受信するようなセルラー無線システムに使用される送信方法において、
上記ボコーダにより受信される信号の異なる受信時間の間の遅延差を測定し、そして
上記ボコーダにより送信された信号を上記ベースステーションが実質的に同時に受信するように、上記ベースステーションへ送信されるべき信号を必要に応じて遅延する、
という段階を備えたことを特徴とする方法。
【請求項2】
測定で得られた遅延差に基づいて信号を遅延する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
信号受信の瞬間と、その信号に先行する信号の受信の瞬間との間の差に等しい遅延差で信号を遅延する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記ボコーダは、最後の信号を受信した後に、第1の遅延された信号を送信する請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ベースステーションへ送信されるべき信号は、ボコーダにより最初に受信される信号が最大に遅延される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ベースステーションへ送信されるべき信号は、ボコーダにより最後に受信される信号が最小に遅延される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
フレーム構造の信号を使用し、フレームには番号が与えられ、それに基づいて同じフレーム番号をもつ信号が検出され、そしてボコーダにより受信された信号から識別される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ボコーダから送信されるべき信号は、上記検出及び識別に基づいて遅延される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
多数のフレームより成るスーパーフレームを形成するのに使用されるフレーム構造の信号を使用する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
上記スーパーフレームの長さは、ボコーダにより受信される異なる信号間の遅延差に比して少なくとも2倍である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
多数のベースステーションと同時に通信する少なくとも1つの加入者ターミナルを備えたセルラー無線システムにおいてソフトハンドオフ中に使用される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ボコーダによりベースステーションへ送信されるべき信号の送信の瞬間は、実質的にベースステーションのエアインターフェイスの同期された送信の瞬間にそれら信号がそれらベースステーションに到着するように調整される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
ベースステーション及び少なくとも1つのボコーダを備え、これらベースステーション及びボコーダは互いに信号を送信し、ベースステーションはボコーダへ信号を実質的に同時に送信し、そしてボコーダはその実質的に同時に送信された信号を異なる受信時間に受信するようなセルラー無線システムにおいて、
ボコーダにより受信される信号の異なる受信時間の間の遅延差を測定するための測定手段と、
ボコーダにより送信された信号をベースステーションが実質的に同時に受信するように、ベースステーションへ送信されるべき信号を必要に応じて遅延するための遅延手段と、を備えたことを特徴とするセルラー無線システム。
【請求項14】
上記信号は、上記測定手段から得られた遅延差に基づいて遅延される請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項15】
上記遅延手段は、信号受信の瞬間と、その信号に先行する信号の受信の瞬間との間の差に等しい遅延差で信号を遅延する請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項16】
上記ボコーダは、最後の信号を受信した後に、第1の遅延された信号を送信する請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項17】
上記遅延手段は、ベースステーションへ送信されるべき信号を、ボコーダにより最初に受信される信号に対して最大に遅延する請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項18】
上記遅延手段は、ベースステーションへ送信されるべき信号を、ボコーダにより最後に受信される信号に対して最小に遅延する請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項19】
多数のフレームより成るスーパーフレームを形成するのに使用されるフレーム構造の信号を使用する請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項20】
上記システムは、フレーム構造の信号を使用し、そしてボコーダにより受信された信号から同じフレーム番号を有する信号を検出しそして識別するための検出手段を備えた請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項21】
上記遅延手段は、上記検出及び識別に基づいて送信されるべき信号を遅延する請求項20に記載のセルラー無線システム。
【請求項22】
上記ボコーダは、フレーム構造の信号からスーパーフレームを形成し、そしてボコーダにより受信される信号の遅延差は、スーパーフレームの長さのせいぜい半分である請求項20に記載のセルラー無線システム。
【請求項23】
上記信号はデータパケットより成り、そして異なるベースステーションにより受信される信号間の遅延差は、データパケットの長さに比してせいぜい2倍である請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項24】
上記システムは、ソフトハンドオフ中に多数のベースステーションと同時に通信する少なくとも1つの加入者ターミナルを備えた請求項13に記載のセルラー無線システム。
【請求項25】
上記遅延手段は、ボコーダによりベースステーションへ送信されるべき信号の送信の瞬間を、実質的にベースステーションのエアインターフェイスの同期された送信の瞬間にそれら信号がベースステーションに到着するように調整する請求項13に記載のセルラー無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−24249(P2011−24249A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204097(P2010−204097)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【分割の表示】特願2009−88803(P2009−88803)の分割
【原出願日】平成9年12月19日(1997.12.19)
【出願人】(398012616)ノキア コーポレイション (1,359)
【Fターム(参考)】