説明

送信装置、受信装置、プログラム、送信方法、及び受信方法

【課題】極力解読され難い暗号化通信技術を提供する。
【解決手段】送信装置において、対応する受信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、前記受信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段と、送信データの暗号化に使用する暗号鍵を、前記暗号鍵記憶手段が記憶している暗号鍵のうちから所定のタイミングにおいて順次変更しながら選択する選択手段と(ステップ51)、送信データを順次、所定単位毎に前記暗号同期情報とともに、前記選択手段が選択中の暗号鍵により暗号化する暗号化手段と(ステップ53)、順次暗号化される前記所定単位毎の送信データ及び暗号同期情報の対を用い、順次送信フレームを生成するフレーム生成手段とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗号化通信を行う送信装置、受信装置、プログラム、送信方法、及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信においては、当事者間で通信に使用している周波数に対し、第三者が自身の無線機の周波数を同調させることにより、当該第三者は容易に当事者間の通信内容を傍受することができる。そこで従来、通話の秘匿性を確保するために、通信内容を暗号化して通信を行う暗号化通信を採用している。
【0003】
従来の暗号化通信では、使用する暗号アルゴリズム及び暗号鍵を、あらかじめ各無線端末間において一致するように各無線端末機に設定しておき、発信側では、設定された暗号アルゴリズム及び暗号鍵を使用して音声符号化データを暗号化し、着信側では、設定された暗号アルゴリズム及び暗号鍵を使用して、暗号化されている音声符号化データの復号(以下、音声復号と区別するため「暗号復号」ともいう。)を行うようにしている。これによれば、発信側と着信側とで同一の暗号設定を用いているので、着信側では正しく暗号復号を行うことができ、正常な音声信号を得ることができる。
【0004】
このようにあらかじめ暗号アルゴリズム及び暗号鍵を設定しておく方法によれば、無線端末は1つの暗号設定しか保有できないために、運用上の柔軟性に劣る欠点がある。そこで、より高度な暗号化通信を行うために、複数の暗号鍵を保有するようにすることによって、たとえば無線端末の使用者が自由に暗号鍵を選択することができるという柔軟性を付与したものもある。この場合、着信側で正しく暗号復号を行うことができるようにするために、発信側では、使用した暗号鍵に対応する暗号設定を制御情報内に含めて音声情報とともに送信し、着信側では、はじめに制御情報から暗号設定情報を抽出し、その暗号設定に関連する暗号アルゴリズム及び暗号鍵を使用して、音声情報中の音声符号化データの暗号復号を行うようにしている。このような手段を用いることによって、より高度な暗号化通信を行うことが可能となっている。
【0005】
図7はこのような暗号化通信に適用するフレーム構造を例示する。同図に示すように、1つの通信フレームは前から順番にフレーム同期ワード、制御情報及び2つの音声情報により構成される。制御情報には、無線端末識別子や暗号設定識別子等の制御信号が含められる。
【0006】
図8は図7の通信フレームにおける音声情報の詳細構造を示す。同図に示すように、音声情報は音声符号化データ及び誤り訂正データにより構成される。音声符号化データは、マイク等から入力された音声信号を符号化したものである。誤り訂正データは、音声符号化データに対して誤り訂正符号化を行い、その結果として生じる冗長データである。秘匿化した音声通信を行う場合、フレーム全体に対して暗号を適用するのではなく、通常は音声符号化データに対してのみ暗号化を施し、暗号化された音声符号化データから誤り訂正データを求めることになる。
【0007】
図7では、1フレーム中に1つの制御情報を設定するフレーム構造を示したが、たとえば社団法人電波産業界から発行されているARIB STD=T61(狭帯域デジタル通信方式)標準規格を参照すると、図9に示すように1つの制御情報(SACCH:Slow Associated Control Channel;低速付随制御チャネル)は、少なくとも8つに分割され、8つのフレームを費やして、伝送される仕様となっている。着信側では、少なくとも8つのフレームを受信し、それぞれのフレームに含まれている分割されたSACCHを抽出し、組み立てることによって、1つの制御情報を受信できることになる。このようなデータ構造は一般的にスーパーフレーム構造と呼ばれており、送るべき情報容量に対する制御情報の冗長性を減少させることに寄与している。
【0008】
なお、暗号化通信を行う他の方法として、送信する音声信号に対して所定の信号を合成することによりいわゆるスクランブルを施してから送信を行い、受信側では前記所定の信号と同一の信号を用いてスクランブルを解除するようにしたものも知られている(たとえば特許文献1参照)。前記所定の信号は、少なくとも送信毎に変化するように、かつ送信側及び受信側に共通のパスワードによって暗号化され、音声信号とともに送信されるようになっている。
【0009】
【特許文献1】特開平5−219049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の図7及び図8のフレーム構造による暗号化通信の場合には、制御情報に暗号設定識別子が含まれているので、盗聴者が、制御情報から暗号設定識別子を抽出し、該暗号設定識別子に基づいて暗号鍵を入手してしまう危険性が高い。
【0011】
図9のスーパーフレーム構造を採る場合、1つのフレームに2つの音声情報が埋め込まれているとすると、少なくとも8×2=16個の音声符号化データに対して同一の暗号設定が適用されることになる。これは最低限の個数であり、実際にはより多くの音声符号化データに対して同一の暗号設定が適用されることになる。暗号解読に対する強度を考えた場合、長い期間にわたって同一の暗号鍵を用いることは、解読される危険性が増加することに他ならないので、図9のようなスーパーフレーム構造を採用し、かつ制御情報に含めて暗号識別子を送る方法によれば、解読される確率が一層高くなる。
【0012】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、極力解読され難い暗号化通信技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するため、第1の発明に係る送信装置は、対応する受信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、前記受信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段と、送信データの暗号化に使用する暗号鍵を、前記暗号鍵記憶手段が記憶している暗号鍵のうちから所定のタイミングにおいて順次変更しながら選択する選択手段と、送信データを順次、所定単位毎に前記暗号同期情報とともに、前記選択手段が選択中の暗号鍵により暗号化する暗号化手段と、順次暗号化される前記所定単位毎の送信データ及び暗号同期情報の対を用い、順次送信フレームを生成するフレーム生成手段とを具備することを特徴とする。
【0014】
ここで、送信装置としては、たとえばデジタル無線機に内蔵された無線送信手段が該当する。所定のタイミングとしては、たとえば、所定単位の送信データ毎のタイミングや、フレーム毎、複数のフレーム毎のタイミングが該当する。送信フレームとしては、たとえば、所定単位の送信データの1又は複数分により構成されるものが該当する。暗号同期情報としては、たとえば、1又は複数ワードからなるものが該当する。
【0015】
この構成において、送信装置は予め、対応する受信装置と同一の複数の暗号鍵を記憶しており、また、該受信装置と同一の暗号同期情報を記憶している。そして、送信データに基づいて送信フレームを生成する際には、送信データの暗号化に使用する暗号鍵が、暗号鍵記憶手段が記憶している暗号鍵のうちから所定のタイミングにおいて順次変更しながら選択される。この間、送信データは順次、所定単位毎に暗号同期情報とともに、選択手段が選択中の暗号鍵によって暗号化され、暗号化された所定単位毎の送信データ及び暗号同期情報の対を用いて、順次送信フレームが生成される。
【0016】
受信装置では、受信フレーム中の前記複数の暗号鍵のうちのいずれかにより暗号化されている受信データ及び暗号同期情報の各対毎に、該受信データの暗号化に使用された暗号鍵が識別され、使用される。その際、暗号鍵の識別は、該暗号化されている暗号同期情報が、受信装置が記憶しているどの暗号鍵を用いて復号化した場合に、受信装置が記憶している暗号同期情報に一致するかに基づいて行われる。
【0017】
第2の発明に係る送信装置は、第1発明において、前記暗号化手段により暗号化された所定単位毎の送信データ及び暗号同期情報の各対に対して誤り訂正符号化処理を施す手段を有することを特徴とする。
【0018】
第3の発明に係る受信装置は、対応する送信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、前記送信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段と、受信フレーム中の前記複数の暗号鍵のうちのいずれかにより暗号化されている受信データ及び暗号同期情報の各対毎に、該受信データの暗号化に使用された暗号鍵を識別する識別手段とを備え、前記識別手段は、該暗号化されている暗号同期情報が、前記暗号鍵記憶手段が記憶しているどの暗号鍵を用いて復号化した場合に、前記暗号同期記憶手段が記憶している暗号同期情報に一致するかに基づき、前記暗号鍵の識別を行うものであることを特徴とする。
【0019】
第4の発明に係る受信装置は、第3発明において、前記受信フレーム中の暗号化されている受信データ及び暗号同期情報の各対毎に、対応する誤り訂正データに基づき、誤り訂正復号化処理を施す手段を有することを特徴とする。
【0020】
第5の発明に係るプログラムは、第1〜第4のいずれかの発明に係る装置における各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0021】
第6の発明に係る送信方法は、対応する受信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、前記受信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段とを備えた送信装置による送信方法であって、送信データの暗号化に使用する暗号鍵を、前記暗号鍵記憶手段が記憶している暗号鍵のうちから所定のタイミングにおいて順次変更しながら選択する選択工程と、送信データを順次、所定単位毎に前記暗号同期情報とともに、前記選択工程により選択中の暗号鍵により暗号化する暗号化工程と、順次暗号化される前記所定単位毎の送信データ及び暗号同期情報の対を用い、順次送信フレームを生成するフレーム生成工程とを具備することを特徴とする。
【0022】
第7の発明に係る受信方法は、対応する送信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、前記送信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段とを備えた受信装置による受信方法であって、受信フレーム中の前記複数の暗号鍵のうちのいずれかにより暗号化されている受信データ及び暗号同期情報の各対毎に、該受信データの暗号化に使用された暗号鍵を識別する識別工程を備え、前記識別工程では、該暗号化されている暗号同期情報が、前記暗号鍵記憶手段が記憶しているどの暗号鍵を用いて復号化した場合に、前記暗号同期記憶手段が記憶している暗号同期情報に一致するかに基づき、前記暗号鍵の識別を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、送信装置及び受信装置において同一の複数の暗号鍵を記憶しかつ同一の暗号同期情報を記憶するとともに、送信装置において送信フレームを生成する際には、所定のタイミングで順次変更しながら暗号鍵を選択し、選択中の暗号鍵によって、送信データを順次、所定単位毎に暗号同期情報とともに暗号化し、順次送信フレームを生成するようにしたため、受信装置においては、受信フレーム中の暗号化されている受信データ及び暗号同期情報の各対毎に、該受信データの暗号化に使用された暗号鍵を、該暗号化されている暗号同期情報が、受信装置が記憶しているどの暗号鍵を用いて復号化した場合に、受信装置が記憶している暗号同期情報に一致するかに基づいて識別することができる。したがって、所定単位の送信データ毎に暗号鍵を変更することができる。したがって、暗号鍵の切替え周期を高速化し、暗号が解読される危険性を減少させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線端末の概略構成図である。この無線端末では、受信モードにおいて、基地局又は相手側の無線端末からの電波が、アンテナ11により捕捉され、RF信号に変換される。RF信号は、図示していない第1段IF生成部により第1段IF信号に変換され、さらに第2段IF生成部14により第2段IF信号に変換される。第2段IF信号は、アンプ15により増幅され、A/Dコンバータ16によりデジタル信号に変換される。
【0025】
無線端末は、A/Dコンバータ16が出力するデジタル信号をDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)20により復調してシンボルデータを抽出し、受信フレームを生成する。DSP20は、生成した受信フレームから制御情報を抽出し、マイコン26へ送る。マイコン26は、DSP20からのデータやメモリ25内のデータ等に基づき、DSP20に対して各種処理についての指示を行う。
【0026】
マイコン26は、メモリ25に格納されている暗号鍵テーブル及びプログラムに基づいて、各受信フレームの音声情報における暗号化されたデータについての暗号鍵を決定し、該暗号鍵を用いて各暗号化されたデータの復号を行う。DSP20が有するボコーダ21は、コーデック部24と共働し、復号化された音声情報に基づき、音声信号を再生する。再生された音声信号は、アンプ28により増幅され、さらに音量調整部29によってレベル調整がなされ、最終的にスピーカ30から音として出力される。
【0027】
一方、送信モードにおいては、無線端末は、マイクロホン35を介して入力された音声信号をアンプ36によって増幅し、コーデック部24へ供給する。コーデック部24及びボコーダ21は共働して、アンプ36からの音声信号に基づき音声符号化データを生成する。該音声符号化データはDSP20により暗号化され、送信フレームに組み込まれて出力される。
【0028】
コーデック部24は、DSP20が出力する送信フレームに基づき、デジタル変調信号を出力する。出力されたデジタル変調信号は、スイッチ40、アンプ41及びレベル調整部42を経て電圧制御発振器43に供給される。電圧制御発振器43は、供給されたデジタル変調信号に基づき、RF信号を生成する。該RF信号は、アンテナ11から電波として発信される。
【0029】
図2はDSP20において生成される受信フレーム及び送信フレーム、すなわち通信フレームの構造を示す。同図に示すように、1つのフレームは、前から順に、フレーム同期ワード、制御情報、及び2つの音声情報により構成される。フレーム同期ワードは、送受信間におけるフレーム・タイミングの同期に使用される情報である。制御情報は無線端末識別子等の制御信号により構成される。
【0030】
図3は図2の通信フレームにおける音声情報の構成要素を示す。同図に示すように、音声情報は、前から順に、暗号同期ワード、音声符号化データ、及び誤り訂正データにより構成される。暗号同期ワードは、発信側及び着信側の無線端末においてメモリ25内に予め格納されている同一のデータであり、発信側で用いた暗号鍵を着信側において選択することができるようにするためのものである。かかる音声情報のうち、暗号同期ワード及び音声符号化データが暗号化の対象となり、誤り訂正データは暗号化の対象とはならない。
【0031】
図4はメモリ25に格納されている暗号鍵テーブルの一例を示す。暗号鍵テーブルには「暗号アルゴリズム」欄の各暗号アルゴリズム毎に、「暗号鍵」欄の各暗号鍵が登録されている。同図の暗号鍵テーブルにおいては1つの暗号アルゴリズムについての4つの暗号鍵が登録されいるが、暗号アルゴリズムや暗号鍵の数はこれに限定されるものではない。このような暗号鍵テーブルとして、発信側及び着信側の無線端末は、同一内容のものを、予め保持している。
【0032】
図5は発信側の無線端末において1つの音声情報を構築する処理の詳細を示すフローチャートである。処理を開始すると、発信側の無線端末は、まずステップ51において、暗号化に使用する暗号鍵を図4に示すような暗号鍵テーブルの暗号鍵のうちから選択する。暗号鍵の選択は、図5の処理を行う毎に異なる暗号鍵が選択されるようにすることができる。たとえば、暗号鍵テーブルにおけるレコード順に選択することができる。
【0033】
次に、ステップ52において音声符号化処理を行う。すなわち、マイク35から入力された、1つの音声情報に対応する音声信号について音声符号化を行い、音声符号化データを得る。次にステップ53において、上述の暗号同期ワード及びステップ52で得られた音声符号化データについて、ステップ51で選択した暗号鍵を用い、暗号化処理を行う。暗号化に使用するアルゴリズムとしては、たとえばDES(データ・エンクリプション・スタンダード)やAES(アドバンスト・エンクリプション・スタンダード)等の標準化された暗号方式を用いることができるが、これらに限るものではない。
【0034】
次に、ステップ54において、ステップ53で暗号化したデータについて誤り訂正符号化を行う。この処理は、無線通信環境ではフェージングにより着信側において受信誤りが発生するので、これを訂正することができるようにするために行われるものである。これにより、1つの音声情報を構成する暗号同期ワード、音声符号化データ、及び誤り訂正データの準備が完了する。この音声情報は、もう1つの音声情報とともに1つの送信フレームを構成するのに用いられることになる。
【0035】
図6は着信側の無線端末において1つの音声情報を復号化する処理の詳細を示すフローチャートである。音声情報の復号化に際し、従来は、受信フレームにおける制御情報中の暗号設定識別子により特定される暗号アルゴリズム及び暗号鍵を用いるようにしていた。この代わりにここでは、図4の暗号鍵テーブルの暗号鍵のうちいずれを使用して復号した暗号同期ワードが、メモリ25に格納されている暗号同期ワードに等しいかどうかに基づいて発信側で使用された暗号鍵を特定し、これを用いるようにしている。
【0036】
すなわち図6に示すように、まずステップ61において1つの音声情報を受信すると、ステップ62において、該音声情報について、その誤り訂正データに基づき、無線環境下で付加されたエラーを除去するための誤り訂正復号処理を行う。これにより、暗号化された状態の暗号同期ワード及び音声符号化データが得られる。
【0037】
次に、ステップ63において、暗号鍵テーブル中の各レコードの暗号鍵のうちから選択した1つの暗号鍵を使用し、該暗号同期ワード及び音声符号化データについて暗号復号処理を行う。使用する暗号鍵は例えばレコード順に選択される。次に、ステップ64において、復号化した暗号同期ワードが、メモリ25に格納されている暗号同期ワードに一致するか否かを判定する。一致しないと判定した場合には、ステップ66において、直前のステップ63で使用した暗号鍵が暗号鍵テーブル中の最後のレコードのものであるか否かを判定する。最後のレコードのものではないと判定した場合には、ステップ63に戻り、次のレコードの暗号鍵を使用して再度、当該暗号化された状態の暗号同期ワード及び音声符号化データについての暗号復号処理を行う。
【0038】
ステップ64において両暗号同期ワードが一致すると判定した場合には、直前のステップ63で使用した暗号鍵が、発信側において該暗号同期ワード及び音声符号化データの暗号化に使用したものであることを意味する。つまり、その暗号鍵により復号した音声符号化データは正しく暗号復号されたものであることが証明されたことになる。したがってこの場合にはステップ65へ進み、暗号復号処理がなされた音声符号化データについて音声復号処理を行い、図6の処理を終了する。音声複合処理により得られた音声信号は、スピーカ30から出力されることになる。
【0039】
一方、ステップ66において、直前のステップ63で使用した暗号鍵が暗号鍵テーブル中の最後のレコードのものであると判定した場合には、この判定はステップ63の暗号復号処理で使用したすべての暗号鍵が暗号化に使用したものと一致せず、正しい暗号復号を行うことができない状態にあることを意味するので、ステップ67へ進み、ロストフレーム処理を行う。ロストフレーム処理では、音声復号処理(ステップ65)を行うことができなかった音声複合化データに係る音声信号に代えて、背景雑音等の音声信号を出力し、音声信号の出力が途切れるのを防止する。この後、図6の処理を終了する。
【0040】
本実施形態によれば、発信側及び着信側の無線端末において共通の暗号同期ワードをメモリ25に記憶しておき、発信側では音声符号化データの暗号化に使用する暗号鍵を用いて暗号同期ワードを暗号化し、暗号化した音声符号化データとともに送信するとともに、受信側においては、暗号同期ワードを暗号復号した結果がメモリ25の暗号同期ワードと一致する暗号鍵テーブル中の暗号鍵を、該音声復号化データの暗号化に使用した暗号鍵であると判定するようにしたため、暗号鍵を音声情報毎に変更しながら適用することができる。したがって、暗号鍵の切替え周期を高速化し、暗号が解読される危険性を減少させることができる。なお、従来のように、複数の音声情報あるいは複数フレームに渡って同じ暗号鍵を使用することも可能である。どの程度の周期で暗号鍵を切り替えるかは任意である。
【0041】
なお、本発明は、上述実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては、暗号鍵テーブルとして、図4に示すような1つの暗号アルゴリズムに係る暗号鍵を登録したものを用いているが、これに限らず、たとえば複数の暗号アルゴリズム毎に複数の暗号鍵を登録したものを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線端末の概略構成図である。
【図2】DSP20において生成される通信フレームの構造を示す図である。
【図3】図2の通信フレームにおける音声情報の構成要素を示す図である。
【図4】図1の無線端末のメモリに格納されている暗号鍵テーブルの一例を示す図である。
【図5】発信側の無線端末において1つの音声情報を構築する処理の詳細を示すフローチャートである。
【図6】着信側の無線端末において1つの音声情報を復号化する処理の詳細を示すフローチャートである。
【図7】従来の暗号化通信に適用するフレーム構造を例示する図である。
【図8】図7の通信フレームにおける音声情報の詳細構造を示す図である。
【図9】スーパーフレーム構造を例示する図である。
【符号の説明】
【0043】
11:アンテナ、14:第2段IF生成部、15:アンプ、16:A/Dコンバータ、20:DSP、21:ボコーダ、24:コーデック部、25:メモリ、26:マイコン、28:アンプ、29:音量調整部、30:スピーカ、35:マイクロホン、36:アンプ、40:スイッチ、41:アンプ、42:レベル調整部、43:電圧制御発振機。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応する受信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、
前記受信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段と、
送信データの暗号化に使用する暗号鍵を、前記暗号鍵記憶手段が記憶している暗号鍵のうちから所定のタイミングにおいて順次変更しながら選択する選択手段と、
送信データを順次、所定単位毎に前記暗号同期情報とともに、前記選択手段が選択中の暗号鍵により暗号化する暗号化手段と、
順次暗号化される前記所定単位毎の送信データ及び暗号同期情報の対を用い、順次送信フレームを生成するフレーム生成手段とを具備することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記暗号化手段により暗号化された所定単位毎の送信データ及び暗号同期情報の各対に対して誤り訂正符号化処理を施す手段を有することを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
対応する送信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、
前記送信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段と、
受信フレーム中の前記複数の暗号鍵のうちのいずれかにより暗号化されている受信データ及び暗号同期情報の各対毎に、該受信データの暗号化に使用された暗号鍵を識別する識別手段とを備え、
前記識別手段は、該暗号化されている暗号同期情報が、前記暗号鍵記憶手段が記憶しているどの暗号鍵を用いて復号化した場合に、前記暗号同期記憶手段が記憶している暗号同期情報に一致するかに基づき、前記暗号鍵の識別を行うものであることを特徴とする受信装置。
【請求項4】
前記受信フレーム中の暗号化されている受信データ及び暗号同期情報の各対に対し、対応する誤り訂正データに基づき、誤り訂正復号化処理を施す手段を有することを特徴とする請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの装置における各手段としてコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項6】
対応する受信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、
前記受信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段とを備えた送信装置による送信方法であって、
送信データの暗号化に使用する暗号鍵を、前記暗号鍵記憶手段が記憶している暗号鍵のうちから所定のタイミングにおいて順次変更しながら選択する選択工程と、
送信データを順次、所定単位毎に前記暗号同期情報とともに、前記選択工程により選択中の暗号鍵により暗号化する暗号化工程と、
順次暗号化される前記所定単位毎の送信データ及び暗号同期情報の対を用い、順次送信フレームを生成するフレーム生成工程とを具備することを特徴とする送信方法。
【請求項7】
対応する送信装置が記憶する複数の暗号鍵と同一の複数の暗号鍵を記憶する暗号鍵記憶手段と、
前記送信装置が記憶するのと同一の暗号同期情報を記憶する暗号同期情報記憶手段とを備えた受信装置による受信方法であって、
受信フレーム中の前記複数の暗号鍵のうちのいずれかにより暗号化されている受信データ及び暗号同期情報の各対毎に、該受信データの暗号化に使用された暗号鍵を識別する識別工程を備え、
前記識別工程では、該暗号化されている暗号同期情報が、前記暗号鍵記憶手段が記憶しているどの暗号鍵を用いて復号化した場合に、前記暗号同期記憶手段が記憶している暗号同期情報に一致するかに基づき、前記暗号鍵の識別を行うことを特徴とする受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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