説明

送信装置、受信装置、送信方法、受信方法、通信システム、通信方法およびプログラム

【課題】特別な通信デバイスを付加しなくても、近くにある装置同士で情報をやりとりすることのできる技術を提供すること。
【解決手段】送信装置は、送信データを取得する手段と、前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化手段と、前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより、当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させる出力手段と、を含む。受信装置は、マイクに入力される音声を示すPCM形式の入力音声データをAD変換器を介して取得する入力手段と、前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号手段と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送信装置、受信装置、送信方法、受信方法、通信システム、通信方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、比較的近くの装置の間で情報をやりとりする際には、赤外線通信などのデバイスを用いることが多かった。例えば、従来の携帯電話機は、赤外線通信用のデバイスを介して連絡先といった情報をやりとりする機能を有するものが多い。特許文献1には、赤外線通信を用いて携帯電話間で情報の送受信を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−154916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近くにある装置の間で通信をするために赤外線通信のような特別なデバイスを用いる場合、送信側の装置および受信側の装置にそのデバイスが装備されている必要がある。例えば、近年はスマートフォンのように赤外線通信の機能を有さないものが急速に普及しており、近くにあるスマートフォン等の間で情報をやりとりすることが難しくなっている。なお、通信の方法としては無線LANなどの電波を用いることも考えられるが、通信相手を位置関係により特定することが難しいため、セキュリティや利便性の問題が生じやすい。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、その目的は、特別な通信デバイスを付加しなくても、近くにある装置同士で情報をやりとりすることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明にかかる送信装置は、送信データを取得する手段と、前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化手段と、前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させる出力手段と、を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明にかかる受信装置は、マイクに入力される音声であって、送信データが符号化されてなる音声を示すPCM形式の入力音声データをAD変換器を介して取得する入力手段と、前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号手段と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明にかかる送信方法は、送信データを取得するステップと、前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化ステップと、前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより、当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させるステップと、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明にかかる受信方法は、マイクに入力される音声であって、送信データが符号化されてなる音声に基づいてAD変換器を介してPCM形式の入力音声データを取得する入力ステップと、前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号ステップと、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明にかかる送信用のプログラムは、送信データを取得する手段、前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化手段、および、前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させる出力手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0011】
また、本発明にかかる受信用のプログラムは、マイクに入力される音声であって、送信データが符号化されてなる音声を示すPCM形式の入力音声データをAD変換器を介して取得する入力手段、および、前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号手段、としてコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0012】
また、本発明にかかる通信システムは、上述の送信装置と受信装置を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明にかかる通信方法は、送信データを取得するステップと、前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化ステップと、前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより、当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させるステップと、前記スピーカが出力しマイクに入力される音声を示すPCM形式の入力音声データをAD変換器を介して取得する入力ステップと、前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、DA変換器の出力に応じて音を出すスピーカを含む装置と、AD変換器に音が変換された電圧信号を出力するマイクがある装置とを用いることにより、特別なデバイスを付加しなくてもそれらの装置の間で情報をやりとりすることができる。例えば、スマートフォン同士や、テレビとスマートフォンとの間などで情報をやりとりすることができる。
【0015】
本発明の一態様では、前記出力音声データは、非可聴周波数帯の音声を示すデータであってもよい。
【0016】
本発明の一態様では、前記非可聴周波数帯は、20kHz以上であってもよい。
【0017】
本発明の一態様では、受信装置は、前記入力音声データが示す音声から非可聴周波数帯の音声を抽出した抽出音声データを生成する抽出手段をさらに含み、前記復号手段は、前記抽出音声データに基づいて前記送信データを復号してもよい。
【0018】
本発明の一態様では、前記符号化手段は、前記出力音声データが示す音声の振幅変化を抑制するように当該出力音声データを出力してもよい。
【0019】
本発明の一態様では、前記符号化手段は、前記出力音声データが前記送信データに応じて複数の有音区間と隣り合う有音区間の間の無音区間とを有する音声を示し、かつ前記各有音区間は振幅が徐増する区間および振幅が徐減する区間のうち少なくとも一方を含むように当該出力音声データを出力してもよい。
【0020】
本発明の一態様では、前記複数の有音期間のそれぞれの時間幅は、予め定められた所定数の時間幅のうちいずれかであってよい。
【0021】
本発明の一態様では、前記復号手段は、前記抽出音声データが示す複数の有音区間であって、前記マイクに順に入力される複数の有音区間のそれぞれの時間の長さに基づいて前記送信データを復号してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態にかかる通信システムの構成の一例を示す図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる通信システムの機能を示す機能ブロック図である。
【図3】送信装置の処理フローの一例を示す図である。
【図4】出力音声データが示す音声の時間推移を示す図である。
【図5】有音区間における波形の一例を示す図である。
【図6】受信装置の処理フローの一例を示す図である。
【図7】テレビのスピーカを用いてデータを送信するシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下では、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。出現する構成要素のうち同一機能を有するものには同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかる通信システムの構成の一例を示す図である。この通信システムは、送信装置1と受信装置2とを含む。送信装置1は、プロセッサ11、メモリ12、表示操作部13、DA変換器14、およびスピーカ15を含み、受信装置2は、プロセッサ21、メモリ22、表示操作部23、AD変換器24、およびマイク25を含む。送信装置1はDA変換器14を介して音声用のスピーカに音声を出力させる装置であればよく、例えばスマートフォンや携帯電話であってよい。受信装置2は音声用のマイクから入力される音声を示すデータをAD変換器24を介して取得する装置であればよく、例えばスマートフォンや携帯電話であってよい。
【0025】
プロセッサ11およびプロセッサ21は、それぞれメモリ12およびメモリ22に格納されているプログラムに従って動作しうる。またプロセッサ11は表示操作部13やDA変換器14を制御し、プロセッサ21は表示操作部23やAD変換器24を制御する。なお、上記プログラムは、インターネット等のネットワークを介して提供されるものであってもよいし、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な情報記録媒体に格納されて提供されるものであってもよい。
【0026】
メモリ12およびメモリ22は、RAMやフラッシュメモリ等のメモリ素子やハードディスクドライブ等によって構成されている。メモリ12およびメモリ22は、上記プログラムを格納する。また、メモリ12およびメモリ22は、各部から入力される情報や演算結果を格納する。
【0027】
表示操作部13および表示操作部23は、液晶表示パネル等の表示出力デバイスを制御する手段や、タッチパネルやリモコン等の入力デバイスを制御する手段などによって構成されている。表示操作部13および表示操作部23は、それぞれプロセッサ11およびプロセッサ21の制御に基づいて、画像データ等を表示出力デバイスに対して出力し、入力デバイスより操作者(ユーザ)からの情報を取得する。
【0028】
DA変換器14は、プロセッサ11の制御に基づいて、PCM形式の出力音声データを出力信号電圧に変換する。DA変換器14は、例えばΔΣ法を用いてDA変換する。またDA変換器14は、操作者による設定に応じて出力信号電圧を変換するボリューム制御の機能も有する。
【0029】
スピーカ15は、DA変換器14が出力する出力信号電圧に応じた音声を出力する。スピーカ15は、音声出力用のスピーカであり、もちろん可聴周波数帯の音声も出力できる。
【0030】
マイク25は、入力される音声を入力信号電圧に変換する。送信装置1と通信する際にはこのマイク25には、送信装置1が出力する音声が入力される。マイク25は、音声入力用のマイクであり、もちろん可聴周波数帯の音声も入力できる。
【0031】
AD変換器24は、プロセッサ21の制御に基づいて、入力信号電圧をPCM形式の入力音声データに変換する。AD変換器24は、例えばΔΣ法を用いてAD変換を行う。
【0032】
図2は、本発明の実施形態にかかる通信システムの機能を示す機能ブロック図である。送信装置1は機能的に、送信データ取得部31、符号化部32、および音声出力部33を含む。これらの機能は、プロセッサ11がメモリ12に格納されたプログラムを実行し、DA変換器14や表示操作部13等を制御することで実現される。また受信装置2は機能的に、音声入力部41、抽出部42および復号部43を含む。これらの機能は、プロセッサ21がメモリ22に格納されたプログラムを実行し、AD変換器24や表示操作部23等を制御することで実現される。
【0033】
図3は、送信装置1の処理フローの一例を示す図である。以下ではこの処理フローに従い送信装置1が有する機能を説明する。
【0034】
送信データ取得部31は、プロセッサ11、メモリ12、および表示操作部13を中心として実現される。送信データ取得部31は、表示操作部13を介してユーザから入力される指示に基づいて動作し、表示操作部13から入力される情報や、メモリ12に記憶された情報から送信データを取得する(ステップS101)。送信装置1がスマートフォンである場合は、送信データは、例えば所有者の電話番号やメールアドレスのような情報や、スマートフォンを識別するためのIDといった情報である。
【0035】
符号化部32は、プロセッサ11およびメモリ12を中心として実現される。符号化部32は、送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する。
【0036】
出力音声データの形式について説明する。図4は、出力音声データが示す音声の時間推移を示す図である。出力音声データが示す音声は、出力開始を示す同期信号51と、出力終了を示す同期信号52と、時間的にみて同期信号51と同期信号52とに挟まれる複数の伝送信号区間53とからなる。これらの複数の伝送信号区間53は、送信データが変調された信号である。各伝送信号区間53は、音声が出力される有音区間であり、その出力される音声は、予め定められた2種類の音声のうち何れかである。各伝送信号区間53は、送信データを構成するビット配列のうちいずれかに対応する。ここでは、伝送信号区間53に出力される2種類の音声は、互いにその時間幅が異なる。具体的には、値が1となるビットに対応する伝送信号区間53の時間幅Tt1と、値が0となるビットに対応する伝送信号区間53の時間幅Tt0とが異なっている。本実施形態の例では、時間幅Tt1は6ms、時間幅Tt0は2msである。また、隣り合う伝送信号区間53の間には無音区間が配置され、また同期信号51,52とそれらの隣の伝送信号区間53との間にも無音区間が配置される。無音区間の時間幅Tnは10msである。なお、本実施形態では時間幅Tt1と時間幅Tt0とが異なっていれば、時間幅Tt0,Tt1,Tnの時間幅は上述のものと異なっていてもよい。
【0037】
次に符号化部32の処理の詳細について説明する。符号化部32は、まず出力音声データに同期信号51を示す音声データを設定し(ステップS102)、無音区間を示す音声データを追加する(ステップS103)。次に変数iに1を代入し(ステップS104)、複数の伝送信号区間53を出力音声データに追加する処理をする。
【0038】
符号化部32は、送信データからi番目のビットを取得する(ステップS105)。ここで、送信データは順序づけられて並ぶn個のビットの集合とみなす。次に、取得されたビットに応じた時間幅を有する有音区間を示す音声データを出力音声データに追加し(ステップS106)、さらに出力音声データに無音区間を示す音声データを追加する(ステップS107)。そして変数iの値を1増やし(ステップS108)、送信データを構成する全て(n個)のビットについて処理を行っていなければ(ステップS109のN)、ステップS105から処理を繰り返す。全てのビットについて処理を行っていれば(ステップS109のY)、出力音声データに同期信号52を示す音声データを追加する(ステップS110)。これらの処理により、符号化部32は送信データを2進数のビット列とした場合の各ビットに対応する種類の音声を順に出力する出力音声データを出力する。
【0039】
音声出力部33は、プロセッサ11、メモリ12を中心として実現される。音声出力部33は、出力音声データをDA変換器14に変換させることによりその出力音声データが示す音声をスピーカ15に出力させる。具体的には、まず音声出力部33は、出力音声データをDA変換器14に出力し(ステップS111)、DA変換器14はその出力音声データを出力信号電圧に変換する。DA変換器14から出力される出力信号電圧はスピーカ15に入力され、スピーカ15は出力信号電圧に応じた音声を出力する。
【0040】
ここで、有音区間の信号の詳細について説明する。図5は、有音区間における波形の一例を示す図である。実線は有音区間の音声の波形を示し、破線はその波形の振幅の時間変化を示す。有音区間においては、非可聴周波数帯、具体的には20kHz以上かつ出力可能な最大周波数(25kHz程度)以下の周波数の音声が出力されている。非可聴周波数帯の音声を通信に用いることで、周りの人間が不快なノイズを認識することを防ぐことができる。また、符号化部32は有音区間における音声の振幅の変化を抑制するように出力音声データを設定する。より具体的には、出力音声データが示す各有音区間は、音声の振幅が徐増する区間と、音声の振幅が徐減する区間とを有する。音声の振幅が徐増する区間は、無音区間から有音区間に切り替わった後の一定の区間であり、音声の振幅が徐減する区間は、有音区間から無音区間に切り替わる前の一定の区間である。本実施形態では、上述の特徴を有する有音区間の振幅は、有音区間の時間幅の2倍の周期のサイン関数から求められている。
【0041】
有音区間におけるタイムステップxにおける波形f(x)を示す式を以下に示す。ここで、PCM形式の出力音声データは16ビットであり、−32768〜32767の値を取ることができるとし、1タイムステップは1秒をサンプリングレートで割った時間とする。
【0042】
【数1】

【0043】
ここで、γは出力音声データのサンプリングレートを非可聴周波数帯の音声の周波数で割った値である。サンプリングレートは通信に用いる非可聴周波数帯の周波数の2倍以上かつ自然数倍にするとよい。サンプリング周期と音声の周期との違いにより目的とする周波数より低い周波数が出力されることを防ぐことができるからである。本実施形態では、サンプリングレートが44.1kHz、音声の周波数は22.05kHzとしている。Aは、有音区間のデータとして取りうる最大値を示している。Bは、サンプリングレートを振幅変化を示す周波数1000でわった値である。なお、実際の出力音声データは、f(x)が示す値のうち小数部の情報は切り捨てられている。
【0044】
f(x)の式は、非可聴周波数帯の音声を示すサイン波に、振幅の時間変化を抑制するサイン波をかけた式になっている。これにより、以下のfs(x)の式が示す有音区間における振幅を一定とするサイン波に比べ振幅の時間変化が抑制される。
【0045】
【数2】

【0046】
ここで、前述のように送信装置1のスピーカ15は音声用のスピーカであるので、20kHz以上の非可聴周波数帯の音を出力する場合、物理的な特性のために出力信号電圧の変化に追随できない現象が起きる場合がある。その現象がおきると、スピーカ15からより低い周波数のノイズのような音が出力される。上述の現象は、fs(x)が示す有音区間の音声を出力する場合にはほぼ確実に発生するが、f(x)のように振幅の時間変化を制限すると、スピーカ15が出力信号電圧の時間変化に追随しやすくなるため発生しなくなる。これにより、通信時にスピーカ15が発生するノイズであってユーザが認識できるノイズを大幅に減少させることができる。
【0047】
なお、符号化部32が出力する出力音声データにおける1つの伝送信号区間53が、必ずしも1ビットのデータを表さなくてもよい。例えば、1つの伝送信号区間53の時間幅の種類を4種類にし、1つの伝送信号区間53が送信データの2ビットに対応させてもよい。また送信データをk進数(k>3)の値の配列に変換し、k種類の音声のうちそれぞれの値に対応するものを出力するように符号化部32が出力音声データを出力してもよい。
【0048】
図6は、受信装置2の処理フローの一例を示す図である。以下ではこの処理フローに従い受信装置2が有する機能を説明する。
【0049】
音声入力部41は、プロセッサ21、メモリ22および表示操作部23を中心として実現される。音声入力部41は、表示操作部23を介してユーザから入力される指示に基づいて、AD変換器24からPCM形式の入力音声データを取得する(ステップS201)。この際、マイク25に送信装置1の出力する音声を入力させることで、入力音声データに送信データが符号化されてなる音声のデータを含むようにする。なお、本実施形態では、サンプリングレートは送信装置1と同じサンプリングレートとしている。
【0050】
抽出部42は、プロセッサ21およびメモリ22を中心として実現される。抽出部42は、音声入力部41が取得した入力音声データから非可聴周波数帯の音声を抽出し(ステップS202)、抽出された音声を示すデータをメモリ22に格納する。抽出部42は、非可聴周波数帯の音声を抽出するためにバンドパスフィルタ(bandpass filter)を用いる。この処理を行うことにより、周囲の人の声などのノイズの影響を取り除くことができる。雑音が少ない環境で通信を行う前提であれば、この処理を行なわずに復号部43に入力音声データをそのまま渡してもよい。
【0051】
復号部43は、プロセッサ21およびメモリ22を中心として実現される。復号部43は抽出された音声を示すデータに基づいて送信データを復号する。まず、復号部43は抽出された音声の振幅を正規化する(ステップS203)。これにより、マイク25に入力される音声の大きさが通信するごとに異なっていても、後続の処理で問題が生じなくなる。
【0052】
復号部43は、次に有音区間と無音区間との境界を検出し、複数の有音区間のそれぞれの時間幅を検出する(ステップS204)。復号部43は、検出された各有音期間の時間幅に応じて、ビットの値の配列を取得し(ステップS205)、取得した値の配列を復号された受信データとしてメモリ22等に出力する(ステップS206)。ここで、復号部43はCRC訂正などの公知の誤り訂正技術を用いて受信データの精度を向上させてもよい。また、送信装置1が出力する伝送信号区間53の時間幅の種類が3以上であれば、それに応じた値の配列を取得して受信データを復号してもよい。
【0053】
上述の技術により、DA変換器14に接続されるスピーカ15を含む送信装置1と、AD変換器24に接続されるマイク25を含む受信装置2とがあれば、他のデバイスを付加しなくても通信を行うことができる。非可聴周波数帯の音声は電波に比べれば指向性が強いので、送信内容を誤って別の装置が受信する恐れも少なくなり、電波を用いる場合のように混信を防ぐための機能を付加したり操作を複雑化する必要もない。しかも、非可聴周波数帯の音声を用い、かつノイズの発生も抑えられているので、スピーカを用いて通信を行っているにも関わらず、その通信により人が不快な音を認識することはない。そのため、人体への影響も少ない。
【0054】
また、DA変換器14とスピーカ15とを有する機器のほとんどはユーザによるボリューム調整が可能であるので、例えばセキュリティと通信エラーとのバランスを任意に調整することができる。ユーザが、送信側の機器と受信側の機器との距離が近い(例えば5cm)場合には音量を小さくし、遠い(例えば1m)場合は音量を大きくするといった調整をすればよいからである。
【0055】
また、上述の説明では送信装置1が出力する音声の時間幅を用いて送信データを符号化しているが、他の変調方法を用いて送信データを符号化してもよい。例えば、AM変調方式のように音声の振幅の違いによって送信するビット配列の各ビットを表してもよいし、FM変調方式のように音声の周波数の違いによってビット配列の各ビットを表してもよい。ただし、音声の時間幅を用いた方が、前者に比べてノイズ等の環境変化に強く、また後者に比べて復号に必要な計算量が少ない。
【0056】
これまでに説明した通信方法は、スマートフォンや携帯電話機などでは特に有効である。スマートフォンや携帯電話機のように音声を入出力するデジタル対応の携帯端末には必ずDA変換器14とそれに接続されるスピーカ15、AD変換器24とそれに接続されるマイク25を装備している。この特徴により、スマートフォンや携帯電話機にプログラムをインストールすることで、それらが送信装置1や受信装置2の機能を実現できる。つまり、外付けの通信デバイスを購入したり接続したりすることなく携帯端末を用いた通信を実現できる。例えば、2台のスマートフォンのうち一方又は両方が赤外線通信機能を有していないような場合であっても、プログラムをインストールすることで、それらの携帯電話機の間でメールアドレスの交換や、URLやメッセージの送受信等を行うことができる。もちろん携帯電話の基地局や、無線LANの親機からの電波が来ていなくてもそれらの情報をやりとりできる。また基地局等からの電波を受信できるのであれば、非可聴帯域の音声を用いた通信を用いて、電波を介するネットワークにおいて少なくとも一方のスマートフォン等を特定する情報を送受信し、電波を介してより大きなデータを送受信することも可能である。
【0057】
これまでは携帯電話機やスマートフォンの間での通信のように1対1の送受信の例を説明したが、送信側の装置が複数の受信装置2に向けてデータを送信してもよい。より具体的には、例えば、出力音声データをテレビ局やラジオ局で生成し、その出力音声データに応じた音声を各家庭のテレビ7等のスピーカから出力させてよい。テレビ7の前にある複数の携帯電話機やスマートフォン等は、その音声をマイク25を介して受信する。
【0058】
図7は、テレビ7のスピーカを用いてデータを送信するシステムの一例を示す図である。局側装置6は、テレビ局に設置される。局側装置6はプロセッサ61、記憶部62、および送信回路63を含む。またテレビ7は、受信回路71、表示回路72、DA変換器73およびスピーカ74を含む。局側装置6とテレビ7とをあわせた送信システムが、図1の送信装置1に対応する。局側装置6に含まれるプロセッサ61および記憶手段62はそれぞれ送信装置1に含まれるプロセッサ11およびメモリ12に対応し、テレビ7に含まれるDA変換器73およびスピーカ74は、それぞれ送信装置1に含まれるDA変換器14およびスピーカ15に対応する。
【0059】
送信回路63はテレビ7の表示回路72に表示させる映像データと、スピーカ73に出力させる出力音声データとを含む放送データを、テレビ局のアンテナを介して複数のテレビ7に送信する。また受信回路71は放送データを受信し、その放送データに含まれる映像データを表示回路に出力し、また放送データに含まれる出力音声データをDA変換器73に出力する。表示回路72は、映像処理回路や表示パネル等を含んでおり、映像データに基づく画像を表示する。図1に示す送信装置1とこの送信システムとの違いは、プロセッサ61および記憶手段62と、DA変換器73との間に、送信回路63および受信回路71が存在することで、データを転送する経路が長くなっている点である。
【0060】
この送信システムも、機能的には送信データ取得部31、符号化部32、および音声出力部33を含む。送信データ取得部31は、プロセッサ61、記憶部62を中心として実現される。この送信データ取得部31は、放送するコンテンツとなる映像データおよび音声データとそれらの映像データおよび音声データ中の先頭からの時間とに基づいて、送信データを取得する。映像データおよび音声データは、記憶部62に記憶されており、送信データは予め映像データおよび音声データとその時間的な区間とに関連づけて記憶部62に記憶されている。
【0061】
符号化部32は、プロセッサ61および記憶部62を中心として実現される。符号化部32は、送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する。その詳細は、図1に示す送信装置1で説明したものと同じである。
【0062】
音声出力部33は、プロセッサ61および記憶部62を中心として実現される。音声出力部33は、符号化部32が出力する出力音声データに放送するコンテンツとなる音声データを混合させて新たな出力音声データを生成し、その新たな出力音声データと、映像データとを含む放送データを送信回路63に出力する。そうすることで、音声出力部33は、出力音声データをテレビ7に含まれるDA変換器73に変換させることによりその出力音声データが示す音声をスピーカ74に出力させる。なお、音声データを出力音声データに混合しても、受信装置2は送信データを復号することができる。バンドパスフィルタによって非可聴周波数帯の音声をほとんど含まない音声データの影響が低減されるからである。
【0063】
このようにすることで、テレビ局の放送するコンテンツに応じて情報の紹介やキャンペーンの申込を行うWebページのURLや、番組名などの情報を、既存のテレビ7やスマートフォンのハードウェアを用いて送受信することができる。テレビの視聴者は従来は画面に表示されていた情報を、文字入力等の作業を経ずに取得することができ、利便性が大きく向上する。これは特にスマートフォンや携帯電話などの携帯端末を用いる場合に有利である。携帯端末は大きさの都合でPCのようなキーボードを装備できないため、文字入力を苦手とするからである。
【0064】
なお、局側装置6はデジタル放送を行うラジオ局に置いてもよい。この場合は、送信データ取得部31は、放送するコンテンツとなる音声データとその先頭からの時間とに基づいて、送信データを取得し、送信回路63は音声データを含む放送データを送信する。また、デジタル放送に対応したラジオが放送データを受信しスピーカからその音声を出力すればよい。
【符号の説明】
【0065】
1 送信装置、2 受信装置、6 局側装置、7 テレビ、11,21,61 プロセッサ、12,22 メモリ、13,23 表示操作部、14,73 DA変換器、15,74 スピーカ、24 AD変換器、25 マイク、31 送信データ取得部、32 符号化部、33 音声出力部、41 音声入力部、42 抽出部、43 復号部、51,52 同期信号、53 伝送信号区間、62 記憶部、63 送信回路、71 受信回路、72 表示回路、Tn,Tt0,Tt1 時間幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信データを取得する手段と、
前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化手段と、
前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させる出力手段と、
を含むことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記出力音声データは、非可聴周波数帯の音声を示すデータである、
ことを特徴とする請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記非可聴周波数帯は、20kHz以上である、
ことを特徴とする請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記符号化手段は、前記出力音声データが示す音声の振幅変化を抑制するように当該出力音声データを出力する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の送信装置。
【請求項5】
前記符号化手段は、前記出力音声データが前記送信データに応じて複数の有音区間と隣り合う有音区間の間の無音区間とを有する音声を示し、かつ前記各有音区間は振幅が徐増する区間および振幅が徐減する区間のうち少なくとも一方を含むように当該出力音声データを出力する、
ことを特徴とする請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
前記複数の有音期間のそれぞれの時間幅は、予め定められた所定数の時間幅のうちいずれかである、
ことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の送信装置。
【請求項7】
送信データを取得するステップと、
前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化ステップと、
前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより、当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させるステップと、
を含むことを特徴とする送信方法。

【請求項8】
送信データを取得する手段、
前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化手段、および、
前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させる出力手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項9】
マイクに入力される音声であって、送信データが符号化されてなる音声を示すPCM形式の入力音声データをAD変換器を介して取得する入力手段と、
前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号手段と、
を含むことを特徴とする受信装置。
【請求項10】
前記入力音声データが示す音声から非可聴周波数帯の音声を抽出した抽出音声データを生成する抽出手段をさらに含み、
前記復号手段は、前記抽出音声データに基づいて前記送信データを復号する、
ことを特徴とする請求項9に記載の受信装置。
【請求項11】
前記復号手段は、前記抽出音声データが示す複数の有音区間であって、前記マイクに順に入力される複数の有音区間のそれぞれの時間の長さに基づいて前記送信データを復号する、
ことを特徴とする請求項10に記載の受信装置。
【請求項12】
マイクに入力される音声であって、送信データが符号化されてなる音声に基づいてAD変換器を介してPCM形式の入力音声データを取得する入力ステップと、
前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号ステップと、
を含むことを特徴とする受信方法。
【請求項13】
マイクに入力される音声であって、送信データが符号化されてなる音声を示すPCM形式の入力音声データをAD変換器を介して取得する入力手段、および、
前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項14】
送信装置と受信装置とを含む通信システムであって、
前記送信装置は、
送信データを取得する手段と、
前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化手段と、
前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより、当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させる出力手段と、
を含み、
前記受信装置は、
前記スピーカが出力しマイクに入力される音声を示すPCM形式の入力音声データをAD変換器を介して取得する入力手段と、
前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号手段と、
を含む、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項15】
送信データを取得するステップと、
前記送信データが符号化されてなるPCM形式の出力音声データを出力する符号化ステップと、
前記出力音声データをDA変換器に変換させることにより、当該出力音声データに応じた音声をスピーカに出力させるステップと、
前記スピーカが出力しマイクに入力される音声を示すPCM形式の入力音声データをAD変換器を介して取得する入力ステップと、
前記入力音声データに基づいて前記送信データを復号する復号ステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−42399(P2013−42399A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178578(P2011−178578)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【特許番号】特許第5106664号(P5106664)
【特許公報発行日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【出願人】(399037405)楽天株式会社 (416)
【Fターム(参考)】