説明

送信装置、受信装置、通信システム及び通信方法

【課題】STBC方式又はDSTBC方式により信号を送信する送信装置において、効果的に通信を行う。
【解決手段】STBC方式又はDSTBC方式により信号を送信する送信装置において、次のような構成とした。すなわち、所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられる。送信装置では、符号化手段が、送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化を行う。また、STBC方式又はDSTBC方式により信号を通信する通信システムや通信方法として実施することも可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時空間符号化(STBC:Space−Time Block Coding)方式又は差動時空間符号化(DSTBC:Differential Space−Time Block Coding)方式により通信を行う送信装置や受信装置や通信システムや通信方法に関し、特に、効果的に通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、STBC方式やDSTBC方式により通信を行う技術について検討等されている。
一例として、通信されるフレームには、通信対象のデータ信号、同期ワード(SW:Synchronous Word又はSync.Word)などからなる既知の信号、通信対象のデータ信号が配置され、これについて、既知の信号以外のデータ信号に対してSTBC方式やDSTBC方式により符号化が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−303086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、STBC方式やDSTBC方式については、更なる開発が要求されていた。
本発明は、このような従来の事情に鑑み為されたもので、STBC方式又はDSTBC方式により効果的に通信を行うことを可能とする送信装置や受信装置や通信システムや通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(送信装置の一構成例の説明)
上記目的を達成するため、本発明では、STBC方式又はDSTBC方式により信号を送信する送信装置において、次のような構成とした。
すなわち、所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられる。符号化手段が、送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化を行う。
【0006】
従って、フレームの全体を符号化することにより、STBC方式又はDSTBC方式により効果的に通信を行うことができる。
ここで、送信としては、例えば、無線による送信が用いられる。
また、フレームに同期ワードが配置される所定箇所としては、例えば、フレームの先頭より後ろの箇所が用いられ、他の構成例として、フレームの先頭の箇所が用いられても構わない。
【0007】
(受信装置の一構成例の説明)
上記目的を達成するため、本発明では、DSTBC方式により送信された信号を受信する受信装置において、次のような構成とした。
すなわち、所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられる。送信側において、送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してDSTBC方式により符号化が行われる。
当該受信装置では、受信手段が、前記送信側から送信された信号を受信する。A/D変換手段が、前記受信手段により受信された信号をA/D変換する。ダウンサンプル手段が、前記A/D変換手段によりA/D変換された後の受信信号をダウンサンプル(間引き)する。第1のDSTBC復号手段が、前記ダウンサンプル手段によりダウンサンプルされた信号に対してDSTBC方式で復号を行う。第2のDSTBC復号手段が、前記A/D変換手段によりA/D変換された後であって前記ダウンサンプル手段によりダウンサンプルされる前の受信信号に対してDSTBC方式で復号を行う。同期ワード情報記憶手段が、DSTBC方式により符号化が行われる前の前記同期ワードに対応した情報を記憶する。相関値取得手段が、前記第2のDSTBC復号手段により得られた復号結果の信号と前記同期ワード情報記憶手段に記憶された前記同期ワードに対応した情報の信号との相関値を取得する。サンプリングタイミング制御手段が、前記相関値取得手段により取得された相関値に基づいて、前記A/D変換手段に対してサンプリングタイミングの制御を行う。
【0008】
従って、DSTBC方式において、サンプル毎にDSTBC復号を行って、同期ワードに関する相関値に基づいてサンプリングタイミングを制御することにより、DSTBC方式により効果的に通信を行うことができる。
ここで、送信や受信としては、例えば、無線による送信や受信が用いられる。
また、フレームに同期ワードが配置される所定箇所としては、例えば、フレームの先頭より後ろの箇所が用いられ、他の構成例として、フレームの先頭の箇所が用いられても構わない。
また、記憶手段としては、例えば、メモリなどを用いて構成することができる。
【0009】
(受信装置の他の一構成例の説明)
上記目的を達成するため、本発明では、STBC方式又はDSTBC方式により送信された信号を受信する受信装置において、次のような構成とした。
すなわち、所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられる。送信側において、送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化が行われる。前記送信側で前記符号化が行われた後の前記同期ワードに対応した信号が所定のパターン(例えば、固定的な一定のパターン)となる。
当該受信装置では、受信手段が、前記送信側から送信された信号を受信する。A/D変換手段が、前記受信手段により受信された信号をA/D変換する。復号手段が、前記A/D変換手段によりA/D変換された後の信号に対してSTBC方式又はDSTBC方式で復号を行う。同期ワード情報記憶手段が、STBC方式又はDSTBC方式により符号化が行われた後の前記同期ワードに対応した情報(前記した所定のパターンに対応した情報)を記憶する。相関値取得手段が、前記A/D変換手段によりA/D変換された後の信号であって前記復号手段により復号が行われる前の信号と前記同期ワード情報記憶手段に記憶された前記同期ワードに対応した情報の信号との相関値を取得する。サンプリングタイミング制御手段が、前記相関値取得手段により取得された相関値に基づいて、前記A/D変換手段に対してサンプリングタイミングの制御を行う。
【0010】
従って、STBC方式又はDSTBC方式において、例えばサンプル毎にSTBC復号又はDSTBC復号を行わずに、同期ワードに関する相関値に基づいてサンプリングタイミングを制御することにより、STBC方式又はDSTBC方式により効果的に通信を行うことができる。
ここで、送信や受信としては、例えば、無線による送信や受信が用いられる。
また、フレームに同期ワードが配置される所定箇所としては、例えば、フレームの先頭より後ろの箇所が用いられ、他の構成例として、フレームの先頭の箇所が用いられても構わない。
また、記憶手段としては、例えば、メモリなどを用いて構成することができる。
【0011】
また、同期ワード情報記憶手段や相関値取得手段については、例えば、STBC方式又はDSTBC方式では、送信側から送信される信号の系列が2つ(例えば、A系列、B系列)あることから、それぞれの系列毎に処理を行う機能を有する。また、この場合、サンプリングタイミング制御手段では、例えば、これら2つの系列の相関値について、和や、自乗値の和や、平均値などに基づいて、制御を行うことができる。
【0012】
(通信システムの一構成例の説明)
上記目的を達成するため、本発明では、STBC方式又はDSTBC方式により信号を送信装置から受信装置へ送信する通信システムにおいて、次のような構成とした。
すなわち、所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられる。前記送信装置では、符号化手段が、送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化を行う。
【0013】
従って、フレームの全体を符号化することにより、STBC方式又はDSTBC方式により効果的に通信を行うことができる。
ここで、通信(送信や受信)としては、例えば、無線による通信が用いられる。
また、フレームに同期ワードが配置される所定箇所としては、例えば、フレームの先頭より後ろの箇所が用いられ、他の構成例として、フレームの先頭の箇所が用いられても構わない。
【0014】
(通信方法の一構成例の説明)
上記目的を達成するため、本発明では、STBC方式又はDSTBC方式により信号を送信装置から受信装置へ送信する通信方法において、次のような構成とした。
すなわち、所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられる。前記送信装置では、送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化を行う。
【0015】
従って、フレームの全体を符号化することにより、STBC方式又はDSTBC方式により効果的に通信を行うことができる。
ここで、通信(送信や受信)としては、例えば、無線による通信が用いられる。
また、フレームに同期ワードが配置される所定箇所としては、例えば、フレームの先頭より後ろの箇所が用いられ、他の構成例として、フレームの先頭の箇所が用いられても構わない。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によると、STBC方式又はDSTBC方式により効果的に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の一実施例(第1実施例)に係るSTBC送信機の構成例を示す図であり、(b)は本発明の一実施例(第1実施例)に係るDSTBC送信機の構成例を示す図である。
【図2】(a)は本例(提案方式)に係る符号化の様子の一例を示す図であり、(b)は比較方式に係る符号化の様子の一例を示す図であり、(c)は入力されるビットデータのフレームの構成例を示す図である。
【図3】本発明の一実施例(第2実施例)に係るDSTBC受信機の構成例を示す図である。
【図4】(a)はタイミング同期追従における同期状態であるときの相関自乗値のシミュレーション計算例を示す図であり、(b)は受信信号と受信機でのタイミングとの関係の例を示す図である。
【図5】本発明の一実施例(第3実施例)に係る受信機(STBC受信機又はDSTBC受信機)の構成例を示す図である。
【図6】(a)はタイミング同期追従における同期状態であるときの相関自乗値のシミュレーション計算例(ケース1)を示す図であり、(b)はタイミング同期追従における同期状態であるときの相関自乗値のシミュレーション計算例(ケース2)を示す図である。
【図7】タイミング同期追従における同期状態であるときの相関自乗値のシミュレーション計算例(ケース3)を示す図である。
【図8】参考出願1の一実施例に係るDSTBC方式を用いた基地局装置の送信機の構成例を示す図である。
【図9】初期値更新部の入力から出力への変換表の一例を示す図である。
【図10】シミュレーション結果(ケース1−1)の例を示す図である。
【図11】シミュレーション結果(ケース1−2)の例を示す図である。
【図12】第2のシミュレーションに係る差動符号化部の信号配置の一例を示す図である。
【図13】第2のシミュレーションに係るS2m、S2m+1の信号配置の組み合わせの一例を示す図である。
【図14】第2のシミュレーションに係る初期値更新部の入力から出力への変換表の一例を示す図である。
【図15】シミュレーション結果(ケース2−1)の例を示す図である。
【図16】シミュレーション結果(ケース2−2)の例を示す図である。
【図17】列車無線システムの構成例を示す図である。
【図18】DSTBC方式を用いた基地局装置の送信機の構成例を示す図である。
【図19】送信フレームのフォーマットの一例を示す図である。
【図20】QPSK変調における信号配置の一例を示す図である。
【図21】DSTBCの信号配置の一例を示す図である。
【図22】DSTBCの信号配置の一例を示す図である。
【図23】S2m、S2m+1の信号配置の組み合わせの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1実施例を説明する。
本例では、STBC方式により無線により通信を行う送信装置、DSTBC方式により無線により通信を行う送信装置について説明する。また、本例と同様な特徴を有する送信装置を備えた無線の通信システムや、本例と同様な特徴を有する無線の通信方法(例えば、送信方法)を実施することも可能である。なお、本例では、デジタルの通信が行われる。
【0020】
例えば、基地局装置などと移動体(移動局装置)との間で通信を行う際に移動局装置の受信品質を向上させる手段の1つとして、STBC方式による送信ダイバーシチ方式がある。
STBC方式は、送信したい時系列データに対して、2シンボルを1つの処理単位として演算し、2本のアンテナから時間領域と空間領域で信号を組み換えて伝送する方式であり、2本のアンテナからそれぞれ直交する2種の系列(例えば、第1の系列であるA系列、第2の系列であるB系列)を出力する。
【0021】
図1(a)には、本発明の一実施例に係るSTBC方式により無線通信を行う送信装置に設けられる送信機(STBC送信機)の構成例を示してある。なお、本例では、ベースバンド部に関する構成例を示してある。
本例のSTBC送信機は、入力されるビットデータについて2シンボルを1つの処理単位にまとめるためのS/P(Serial to Parallel)変換部301、S/P変換部301からの2個の出力のそれぞれについてシンボルマッピングを行う2個のシンボルマッピング部302、303、2個のシンボルマッピング部302、303からの出力xw−1=sw−1、x=sについて時間領域と空間領域で信号の組み換えを行うことでSTBC方式の符号化を行うSTBC符号化部305を備えている。STBC符号化部305からは、A系列の信号sw−1、−sとB系列の信号s、sw−1が出力される。
【0022】
なお、入力されるビットデータには、同期ワード(SW)が含まれる。
また、w(シンボルに対する番号)は、1シンボル時間毎に変化する0から始まる時系列番号であり、フレームの先頭でゼロ(0)にクリアされる。
【0023】
ここで、STBC方式は、送信機にチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)を用いることなく送信ダイバーシチを実現することができるため、フェージング環境下では有効であるが、受信機の側でCSIが必要となる。CSIは、信号が空間等を伝搬するときの伝播特性であり、その変動がゆるやかな時にはトレーニング信号等により受信側で推定することができるが、受信機が高速で移動するような通信システムに適用する場合には、トレーニングしている間にパラメータが変動してしまうため、適用が困難である。
【0024】
そこで、送信機と受信機にCSIを必要としないDSTBC方式が提案されている。
DSTBC方式は、受信機の側においてもCSIが不要であるため、例えば、STBC方式では追従することができなかった高速フェージング環境下においても有効である。DSTBC方式による送信ダイバーシチ方式を用いることもできる。
【0025】
図1(b)には、本発明の一実施例に係るDSTBC方式により無線通信を行う送信装置に設けられる送信機(DSTBC送信機)の構成例を示してある。なお、本例では、ベースバンド部に関する構成例を示してある。
本例のDSTBC送信機の構成は、図1(a)に示されるSTBC送信機の構成と比べて、2個のシンボルマッピング部302、303とSTBC符号化部305との間に差動符号化部304が備えられている点以外は、同様である。なお、本例では、説明の便宜上から、これらの概略的に同様な処理部301〜303、305については同一の符号を付してある。
【0026】
本例のDSTBC送信機では、差動符号化部304は2個のシンボルマッピング部302、303からの出力xw−1、xについて差動符号化を行い、STBC符号化部305は差動符号化部304からの2個の出力sw−1、sについて時間領域と空間領域で信号の組み換えを行うことでSTBC方式の符号化を行ってA系列の信号sw−1、−sとB系列の信号s、sw−1を出力する。
【0027】
なお、STBC送信機やDSTBC送信機において、第1のアンテナ(アンテナA)から送信される第1の系列(A系列)の信号パターンと、第2のアンテナ(アンテナB)から送信される第2の系列(B系列)の信号パターンとは直交し、信号の周波数は同一である。
【0028】
本例のSTBC送信機やDSTBC送信機における主な特徴について説明する。
本例では、通信されるフレームには、通信対象のデータ信号、同期ワード(SW)の信号、通信対象のデータ信号が配置され、これについて、フレームの全体に対してSTBC方式やDSTBC方式により符号化を行う。
【0029】
図2(a)には、本例(提案方式)に係る符号化の様子の一例を示してある。
本例では、A系列の1フレームは、A系列のデータ信号、A系列の同期ワード信号(SW)、A系列のデータ信号から構成されている。そして、同期ワード信号も含めた1フレームの全てが、STBC送信機ではSTBC方式により符号化され、又は、DSTBC送信機ではDSTBC方式により符号化される。
同様に、本例では、B系列の1フレームは、B系列のデータ信号、B系列の同期ワード信号(SW)、B系列のデータ信号から構成されている。そして、同期ワード信号も含めた1フレームの全てが、STBC送信機ではSTBC方式により符号化され、又は、DSTBC送信機ではDSTBC方式により符号化される。
【0030】
図2(b)には、参考として、比較方式に係る符号化の様子の一例を示してある。
比較方式では、図2(a)に示される本例のフレームの構成と同様であるが、A系列やB系列について、データ信号のみがSTBC方式又はDSTBC方式により符号化され、同期ワード信号については符号化されない。この為、A系列における同期ワード信号(SW)とB系列における同期ワード信号(SW)は同一の信号となる。
【0031】
図2(c)には、図1(a)、(b)に示されるS/P変換部301に入力されるビットデータのフレームの構成例を示してある。本例では、1フレームは、データ信号、同期ワード信号(SW)、データ信号から構成されている。このフレームの構成は、A系列とB系列で共通のフォーマットであり、且つ、図2(a)に示される提案方式と図2(b)に示される比較方式で共通のフォーマットである。
【0032】
ここで、本例の構成は、例えば、同期ワード信号が無線フレームフォーマットの先頭以外の位置(先頭より後ろの箇所)に配置される場合に適用されるが、同期ワード信号がフレームの先頭の位置に配置される場合に適用されても構わない。
【0033】
以上のように、本例のように通信フレームの全体をSTBC符号化又はDSTBC符号化することにより、効果的に通信を行うことができ、具体例として、次のような(効果の例1)〜(効果の例2)を得ることができる。
(効果の例1)STBC符号化とDSTBC符号化に関し、データ信号の部分ばかりでなく同期ワード信号(SW、SW)の部分についても、ダイバーシチの効果を得ることができる。これに対して、図2(b)に示される比較方式では、データ信号の部分のみについてダイバーシチの効果が得られる。
【0034】
(効果の例2)DSTBC符号化に関し、同期ワード信号(SW、SW)の後に続くデータ信号の最初の2シンボル部分を通信に使用することができる。これに対して、図2(b)に示される比較方式では、同期ワード信号がDSTBC符号化されないため、同期ワード信号の後に続くデータ信号の最初の2シンボル部分が不定となって通信に使用することができない。なお、図2(a)及び図2(b)において、DSTBC方式では、通常、符号化の先頭の2シンボル部分(例えば、これらに共通な部分として、先頭のデータ信号の最初の2シンボル部分)については不定となって通信に使用することができない。
【0035】
なお、図1(a)に示される本例のSTBC方式の送信装置におけるSTBC送信機では、STBC符号化部305の機能により符号化手段が構成されている。
また、図1(b)に示される本例のDSTBC方式の送信装置におけるDSTBC送信機では、差動符号化部304やSTBC符号化部305の機能により符号化手段が構成されている。
【実施例2】
【0036】
本発明の第2実施例を説明する。
本例では、DSTBC方式により無線により通信を行う受信装置について説明する。また、本例と同様な特徴を有する受信装置を備えた無線の通信システムや、本例と同様な特徴を有する無線の通信方法(例えば、受信方法)を実施することも可能である。なお、本例では、デジタルの通信が行われる。
また、本例では、前提として、第1実施例で示されるように、通信フレームの全体(同期ワード信号も含む)が送信側でDSTBC方式により符号化されて送信される場合を示す。
【0037】
例えば、DSTBC方式による通信技術では、受信側でシンボルタイミングの同期が取れていることが前提であり、シンボルタイミングの同期を良好に取るための一般的な手法は確立されていない。ここで、シンボルタイミングとは、送信側で信号に情報(シンボル)を載せるタイミングであり、受信側ではこのタイミングに同期しないと情報を復元することができない。
【0038】
図3には、本発明の一実施例に係るDSTBC方式により無線通信を行う受信装置に設けられる受信機(DSTBC受信機)の構成例を示してある。
本例のDSTBC受信機は、受信用のアンテナ401、受信部402、A/D(Analog to Digital)変換器403、直交検波部404、ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)405、ルートロールオフフィルタ406、ダウンサンプル器407、第1のDSTBC復号部408、復号判定部409、第2のDSTBC復号部411、SWテーブル412、相関演算部413、最大値検索部414、タイミング検出部415、タイミング生成部416を備えている。
【0039】
アンテナ401は、送信側から無線により送信されたDSTBC変調波の信号を受信する。
受信部402は、アンテナ401により受信された信号について、受信周波数の信号から所望の中間周波数(IF:Intermediate Frequency)の信号へ変換する。
A/D変換器403は、受信部402により得られた信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。以降の処理はデジタル信号処理となる。
【0040】
直交検波部404は、A/D変換器403により得られたデジタル信号(IFの受信データ)をベースバンドへ周波数変換し、同相値(In−phase)Iと、直交値(Quadrature)Qの成分として出力する。
LPF405は、直交検波部404により得られて出力された信号について、IFに対するイメージ成分を除去する。
ルートロールオフフィルタ406は、LPF405により得られた信号をフィルタリングする。
【0041】
ダウンサンプル器407は、ルートロールオフフィルタ406により得られた信号について、ダウンサンプル(間引き)処理を行う。具体的には、A/D変換器403のサンプリング周波数と伝送シンボルレートの周波数との関係に基づいて、(オーバサンプル数)=(サンプリング周波数)/(伝送シンボルレート)=Mに対して、1/Mの間引き処理を行う。
ここで、間引き処理では、シンボル点を抜き出すことが行われ、例えば、1シンボル時間でIQのアイパターンが最も開口するサンプルポイントを選択して、それ以外のポイントについては破棄する。
【0042】
第1のDSTBC復号部408は、ダウンサンプル器407により得られた信号について、(式1)で表される演算を2シンボル時間に1回行う。これにより、送信側で行われた差動符号化とSTBC符号化の両方が解かれる。
【数1】

【0043】
ここで、w(シンボルに対する番号)は、1シンボル時間毎に変化する0から始まる時系列番号であり、フレームの先頭でゼロ(0)にクリアされる。本例では、wは、ダウンサンプル器407の出力を規定点(基準)とする。また、本例では、(式1)は、wが奇数値であるときに演算される。フレームの先頭であるw=1のときの演算結果hx、hxについては不定であり保障されない。
また、rは、シンボル時間wにおけるダウンサンプル器407からの出力IQの値により、r=I+jQ(jは虚数単位)で表される複素数である。
また、*は、共役複素数を表す演算子である。
また、hxw−1とhxは、第1のDSTBC復号部408からの出力信号であり、例えば図1(b)に示されるDSTBC送信機におけるシンボルマッピング部302、303からの出力xw−1とxの推定値であり複素数である。
【0044】
復号判定部409は、第1のDSTBC復号部408により得られたhxの信号復号の結果により、ビットデータ(送信側から送信されたビットデータを推定したもの)を復元して出力する。
【0045】
第2のDSTBC復号部411は、ルートロールオフフィルタ406により得られた信号について、(式1)で表されるのと同様な演算を行う。これにより、送信側で行われた差動符号化とSTBC符号化の両方が解かれる。
ここで、第2のDSTBC復号部411の主たる機能は、第1のDSTBC復号部408と同様であるが、演算のタイミングが異なっており、第2のDSTBC復号部411では、同期ワード(SW)信号の前後のタイミングで、ダウンサンプル無しの入力に対して、例えば1フレーム毎に1通りまとめて演算する。
以下の説明において、第2のDSTBC復号部411については、(式1)をサンプル時間での次元に拡張して表記し直した(式2)を基本式として参照する。
【数2】

【0046】
ここで、Mは、オーバサンプル数である。
また、z(サンプルに対する番号)は、サンプル時間毎に変化する0から始まる時系列番号であり、フレームの先頭でゼロ(0)にクリアされる。本例では、zは、ルートロールオフフィルタ406の出力を規定点(基準)とし、z mod M=0であるときにz/M=wという関係にある(modはモジュロ演算子とする)。
また、rは、サンプル時間zにおけるルートロールオフフィルタ406からの出力IQの値により、r=I+jQ(jは虚数単位)で表される複素数である。
また、hxは、第2のDSTBC復号部411からの出力信号である。
【0047】
SWテーブル部412は、同期ワード(SW)のビットパターンに対応する信号配置、すなわち、例えば図1(b)に示されるようなDSTBC送信機における同期ワードのビットパターンに対応するシンボルマッピング部302、303からの出力I、Qをメモリにテーブルで保有(記憶)しており、相関演算部413の基準信号として使用する。
本例では、フレーム中の同期ワードのシンボル長が10シンボルであるとし、基準信号配置c〜c(複素数)を保有することとする。
【0048】
相関演算部413は、第2のDSTBC復号部411から出力される信号復号の結果hxとSWテーブル部412から出力される基準信号配置c〜cを使用して、(式3)で表される相関演算を行う。
【数3】

【0049】
ここで、C(z)は、相関演算部413からの出力(相関値)である。
また、c(i=0、1、2、・・・、9)は、同期ワードの信号配置に対応しており、SWテーブル部412が保有するテーブルに格納されている。
【0050】
最大値検索部414は、(式4)により、相関演算部413からの出力C(z)の自乗値の最大値CMAX及びその最大値のサンプル番号Kを求める。
【数4】

【0051】
タイミング検出部415は、最大値検索部414から出力された最大値のときのサンプル番号Kの結果に基づいて、サンプリングタイミングに関してタイミング誤差を計算し、サンプリングタイミングの補正値を出力する。
タイミング生成部416は、タイミング検出部415から出力されたサンプリングタイミングの補正値(タイミング誤差の情報)に基づいて、A/D変換器403のサンプリングタイミングを調整する。
【0052】
本例のDSTBC受信機において行われる動作の例を説明する。
受信アンテナ401により受信されるDSTBC変調波に対して、受信部402からダウンサンプル器407までで行われる各処理は、本例では、例えば、一般的なデジタル無線用の受信機と同様な処理であり、詳細な動作の説明を省略する。
本例のDSTBC受信機では、ダウンサンプルされた入力に対して、第1のDSTBC復号部408において(式1)の演算によりシンボルを復号し、復号判定部409においてビット符号に復元して出力する。
【0053】
ここで、一般に、無線システムでは、送信側と受信側のハードウエア構成の違いにより、それぞれの内部周波数やタイミング信号の精度が僅かながらでも異なることが問題となる。前者はAFC(Automatic Frequency Control)処理により、後者はタイミング同期追従処理により、受信側で送信側の精度に追従する処理が必要となる。受信側では受信信号を分析して内部の周波数やタイミング精度を調整するが、これらの処理はビットパターンが固定(受信機側でも既知)である同期ワード(SW)の信号配置を基準信号とする。
【0054】
本例のDSTBC受信機では、第2のDSTBC復号部411及びSWテーブル部412からタイミング生成部416が、タイミング同期追従のための処理ブロックとなる。その動作について説明する。
第2のDSTBC復号部411は、(式2)により、サンプル毎に信号を復号する。相関演算部413は、第2のDSTBC復号部411による復号の結果とSWテーブル部412で保有する同期ワードの基準信号との相関演算を(式3)により計算する。最大値検索部414は、受信信号のサンプル毎の信号復号結果と基準信号配置との相関演算結果の大きさを比較することで、基準信号に最も近い信号配置となるサンプルを検出することができる。具体的には、最大値検索部414は、相関演算部413からの出力の自乗値を計算し、(式4)のCMAX及びKを求める。
【0055】
図4(a)、(b)を参照して、DSTBC方式における相関自乗値の計算例を示す。
図4(a)には、本例のタイミング同期追従における、同期状態であるときの相関自乗値の計算例を示してある。本例では、M=8であり、フレームにおいて同期ワード(SW)が先頭から60シンボル番目に開始する場合を示してある。
図4(b)には、受信信号と受信機でのタイミングとの関係の例を示してある。本例では、同期状態のときの関係と、受信信号が遅れているときの関係と、受信信号が早いときの関係を示してある。
図4(a)、(b)のグラフでは、横軸はサンプル番号(z)を表しており、縦軸は|C(z)|/CMAXを表している。
【0056】
受信信号と受信機での処理のタイミングが完全に同期した状態では、図4(a)に示されるように、|C(z)|が最大値となるz(=K)は、8×60=480となる。しかしながら、図4(b)に示されるように、受信機の(内部)タイミングに対して受信信号(すなわち、送信機のタイミング)が遅い場合には、Kの値は480より大きくなり、逆に、受信機の(内部)タイミングに対して受信信号が早い場合には、Kの値は480より小さくなる。このとき、1サンプルのズレは1/Mシンボルのズレに相当する。
【0057】
タイミング検出部415は、基準サンプル番号(本例では、480)とKの値との差をタイミング誤差(サンプリングタイミングの補正値の一例)として検出して出力する。
タイミング生成部416は、タイミング検出部415からのタイミング誤差が正の値であるとき(K−480>0であるとき)には、受信信号が受信機のサンプリングタイミングに対して遅いことから、サンプリングタイミングを遅くするようにA/D変換器403を制御し、逆に、タイミング検出部415からのタイミング誤差が負の値であるとき(K−480<0であるとき)には、受信信号が受信機のサンプリングタイミングに対して早いことから、サンプリングタイミングを早くするようにA/D変換器403を制御する。これにより、受信信号に追従したサンプリングタイミングの生成が可能となる。
【0058】
ここで、本例の構成は、例えば、同期ワード信号が無線フレームフォーマットの先頭以外の位置(先頭より後ろの箇所)に配置される場合に適用されるが、同期ワード信号がフレームの先頭の位置に配置される場合に適用されても構わない。
【0059】
以上のように、本例のDSTBC受信機では、DSTBC方式を採用する受信機のタイミング同期追従において、サンプル毎にDSTBC復号処理を行い、同期ワード(SW)の相関演算を行う。
このように、本例では、DSTBC方式の復調処理におけるタイミング同期追従において、サンプル毎に復号してシンボルタイミングの同期追従を行うことにより、精度が良く、良好なシンボルタイミング同期を実現することができ、効果的に通信を行うことができる。
【0060】
なお、図3に示される本例のDSTBC方式の受信装置のDSTBC受信機では、アンテナ401や受信部402の機能により受信手段が構成されており、A/D変換器403の機能によりA/D変換手段が構成されており、ダウンサンプル器407の機能によりダウンサンプル手段が構成されており、第1のDSTBC復号部408の機能により第1のDSTBC復号手段が構成されており、第2のDSTBC復号部411の機能により第2のDSTBC復号手段が構成されており、SWテーブル部412の機能により同期ワード情報記憶手段が構成されており、相関演算部413の機能により相関値取得手段が構成されており、最大値検索部414やタイミング検出部415やタイミング生成部416の機能によりサンプリングタイミング制御手段が構成されている。
【実施例3】
【0061】
本発明の第3実施例を説明する。
本例では、STBC方式又はDSTBC方式により無線により通信を行う受信装置について説明する。また、本例と同様な特徴を有する受信装置を備えた無線の通信システムや、本例と同様な特徴を有する無線の通信方法(例えば、受信方法)を実施することも可能である。なお、本例では、デジタルの通信が行われる。
また、本例では、前提として、第1実施例で示されるように、通信フレームの全体(同期ワード信号も含む)が送信側でSTBC方式又はDSTBC方式により符号化されて送信される場合を示す。
【0062】
まず、本例における送信側に関する前提を説明する。
本出願人は、参考出願1(特願2010−088918号)において、DSTBC送信機における同期ワード(SW)の信号配置を固定パターンにすることができる技術を提案している。これにより、不定であったDSTBC符号化後の同期ワードの信号配置を固定パターンにすることができ、例えば、DSTBC方式を採用する受信機のAFC処理における問題を解決することができる。
本例のDSTBC受信機におけるタイミング同期追従処理においても、このように固定化されたDSTBC符号化後の信号配置パターンを基準信号として使用することとし、送信側(DSTBC送信機)の構成や動作が参考出願1に示されるものと同様な機能が適用されたものであるとする。
また、STBC方式については、差動処理が行われないため、もともと、STBC送信機における同期ワード(SW)の信号配置は固定パターンである。
【0063】
次に、本例のSTBC受信機やDSTBC受信機について説明する。
図5には、本発明の一実施例に係るSTBC方式又はDSTBC方式により無線通信を行う受信装置に設けられる受信機(STBC受信機又はDSTBC受信機)の構成例を示してある。
本例の受信機は、受信用のアンテナ501、受信部502、A/D(Analog to Digital)変換器503、直交検波部504、ローパスフィルタ(LPF:Low Pass Filter)505、ルートロールオフフィルタ506、ダウンサンプル器507、復号部(STBC復号部又はDSTBC復号部)508、復号判定部509、第1のSWテーブル部(SWテーブル部A)511、第1の相関演算部(相関演算部B)512、第2のSWテーブル部(SWテーブル部B)513、第2の相関演算部(相関演算部B)514、演算部515、最大値検索部516、タイミング検出部517、タイミング生成部518を備えている。
【0064】
ここで、本例の受信機をSTBC方式に適用した場合には、復号部508としてSTBC方式の復号部(STBC復号部)を用い、各SWテーブル部511、513にSTBC方式に対応した情報を記憶しておく一方、本例の受信機をDSTBC方式に適用した場合には、復号部508としてDSTBC方式の復号部(DSTBC復号部)を用い、各SWテーブル部511、513にDSTBC方式に対応した情報を記憶しておく。これらの点以外については、本例では、STBC方式とDSTBC方式とでは、受信機の構成や動作が同様であるため、まとめて説明する。なお、実施において、STBC方式とDSTBC方式の差によって生じる設計事項については、本例で述べたもの以外についても、適宜設定されてもよい。
【0065】
アンテナ501は、送信側から無線により送信された変調波(STBC変調波又はDSTBC変調波)の信号を受信する。
受信部502は、アンテナ501により受信された信号について、受信周波数の信号から所望の中間周波数(IF:Intermediate Frequency)の信号へ変換する。
A/D変換器503は、受信部502により得られた信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換する。以降の処理はデジタル信号処理となる。
【0066】
直交検波部504は、A/D変換器503により得られたデジタル信号(IFの受信データ)をベースバンドへ周波数変換し、同相値(In−phase)Iと、直交値(Quadrature)Qの成分として出力する。
LPF505は、直交検波部504により得られて出力された信号について、IFに対するイメージ成分を除去する。
ルートロールオフフィルタ506は、LPF505により得られた信号をフィルタリングする。
【0067】
ダウンサンプル器507は、ルートロールオフフィルタ506により得られた信号について、間引き処理を行う。具体的には、A/D変換器503のサンプリング周波数と伝送シンボルレートの周波数との関係に基づいて、(オーバサンプル数)=(サンプリング周波数)/(伝送シンボルレート)=Mに対して、1/Mの間引き処理を行う。
ここで、間引き処理では、シンボル点を抜き出すことが行われ、例えば、1シンボル時間でIQのアイパターンが最も開口するサンプルポイントを選択して、それ以外のポイントについては破棄する。
【0068】
復号部508は、ダウンサンプル器507により得られた信号について、復号を行う。
ここで、復号部508がSTBC復号部である場合には、送信側で行われたSTBC符号化が解かれて、STBC送信機におけるシンボルマッピング部からの出力の推定値(複素数)を取得して出力する。
また、復号部508がDSTBC復号部である場合には、送信側で行われた差動符号化とSTBC符号化の両方が解かれて、DSTBC送信機におけるシンボルマッピング部からの出力の推定値(複素数)を取得して出力する。なお、DSTBC復号部においては、例えば、第2実施例(図3)の場合と同様に、ダウンサンプル器507により得られた信号について、(式1)で表される演算を2シンボル時間に1回行う。
【0069】
復号判定部509は、復号部508により得られた信号復号の結果により、ビットデータ(送信側から送信されたビットデータを推定したもの)を復元して出力する。
【0070】
第1のSWテーブル部511は、送信側の同期ワード(SW)のビットパターンに対応するA系列の信号配置として、送信機において符号化(STBC方式による符号化又はDSTBC方式による符号化)が行われた後のA系列の同期ワード(SW)の信号(I、Q)をメモリにテーブルで保有(記憶)しており、第1の相関演算部512の基準信号として使用する。
本例では、フレーム中の同期ワードのシンボル長が10シンボルであるとし、A系列の基準信号配置a〜a(複素数)を保有することとする。
ここで、A系列の基準信号配置a〜aは、図2(a)に示されるSWに相当する。
【0071】
ここで、STBC受信機においては、STBC送信機においてSTBC符号化された後の同期ワードに対応したA系列の基準信号配置が予めテーブルに設定される。
また、DSTBC受信機においては、DSTBC送信機においてDSTBC符号化(差動符号化及びSTBC符号化)された後の同期ワードに対応したA系列の基準信号配置が予めテーブルに設定される。なお、本例のDSTBC送信機では、同期ワードのDSTBC符号化後の信号配置のパターンが固定化されており、予め把握することが可能である。
【0072】
第1の相関演算部512は、ルートロールオフフィルタ506から出力される信号rと第1のSWテーブル部511から出力されるA系列の基準信号配置a〜aを使用して、(式5)で表されるA(z)に関する相関演算を行う。
ここで、A(z)は第1の相関演算部512からの出力(相関値)となる。
また、a(i=0、1、2、・・・、9)は、同期ワード(SW)が符号化(STBC符号化又はDSTBC符号化)された後の基準信号配置であり、第1のSWテーブル部511に格納されている。
【数5】

【0073】
第2のSWテーブル部513は、送信側の同期ワード(SW)のビットパターンに対応するB系列の信号配置として、送信機において符号化(STBC方式による符号化又はDSTBC方式による符号化)が行われた後のB系列の同期ワード(SW)の信号(I、Q)をメモリにテーブルで保有(記憶)しており、第2の相関演算部514の基準信号として使用する。
本例では、フレーム中の同期ワードのシンボル長が10シンボルであるとし、B系列の基準信号配置b〜b(複素数)を保有することとする。
ここで、B系列の基準信号配置b〜bは、図2(a)に示されるSWに相当する。
【0074】
ここで、STBC受信機においては、STBC送信機においてSTBC符号化された後の同期ワードに対応したB系列の基準信号配置が予めテーブルに設定される。
また、DSTBC受信機においては、DSTBC送信機においてDSTBC符号化(差動符号化及びSTBC符号化)された後の同期ワードに対応したB系列の基準信号配置が予めテーブルに設定される。なお、本例のDSTBC送信機では、同期ワードのDSTBC符号化後の信号配置のパターンが固定化されており、予め把握することが可能である。
【0075】
第2の相関演算部514は、ルートロールオフフィルタ506から出力される信号rと第2のSWテーブル部513から出力されるB系列の基準信号配置b〜bを使用して、(式5)で表されるB(z)に関する相関演算を行う。
ここで、B(z)は第2の相関演算部514からの出力(相関値)となる。
また、b(i=0、1、2、・・・、9)は、同期ワード(SW)が符号化(STBC符号化又はDSTBC符号化)された後の基準信号配置であり、第2のSWテーブル部513に格納されている。
【0076】
ここで、本例の送信機では、A系列/B系列の2種類の出力系列があるため、本例の受信機では、A系列に対応したテーブル値a〜aとB系列に対応したテーブル値b〜bの両方を保有し、それぞれの系列に対応した相関値A(z)、B(z)を演算する。なお、A系列に対応したテーブル値a〜aとB系列に対応したテーブル値b〜bは、例えば、互いに直交する値となる。
【0077】
演算部515は、第1の相関演算部512により得られたA系列の相関値A(z)の自乗値|A(z)|と第2の相関演算部514により得られたB系列の相関値B(z)の自乗値|B(z)|とを加算して、その加算結果(和)である|A(z)|+|B(z)|を最大値検索部516へ出力する。
ここで、各系列の相関値の自乗値は、本例では、演算部515で演算され、他の構成例として、各相関演算部512、514で演算されてもよく、この場合には、演算部515は加算器から構成され、或いは、他のところに、相関値の自乗値を演算する機能が備えられてもよい。
【0078】
最大値検索部516は、(式6)により、演算部515からの出力|A(z)|+|B(z)|の最大値ABMAX及びその最大値のサンプル番号Kを求める。
【数6】

【0079】
タイミング検出部517は、最大値検索部516から出力された最大値のときのサンプル番号Kの結果に基づいて、サンプリングタイミングに関してタイミング誤差を計算し、サンプリングタイミングの補正値を出力する。
タイミング生成部518は、タイミング検出部517から出力されたサンプリングタイミングの補正値(タイミング誤差の情報)に基づいて、A/D変換器503のサンプリングタイミングを調整する。
【0080】
本例の受信機において行われる動作の例を説明する。
受信アンテナ501により受信される変調波に対して、受信部502からダウンサンプル器507までで行われる各処理は、本例では、例えば、一般的なデジタル無線用の受信機と同様な処理であり、詳細な動作の説明を省略する。
本例の受信機では、ダウンサンプルされた入力に対して、復号部508において演算によりシンボルを復号し、復号判定部509においてビット符号に復元して出力する。
【0081】
ここで、一般に、無線システムでは、送信側と受信側のハードウエア構成の違いにより、それぞれの内部周波数やタイミング信号の精度が僅かながらでも異なることが問題となる。前者はAFC(Automatic Frequency Control)処理により、後者はタイミング同期追従処理により、受信側で送信側の精度に追従する処理が必要となる。受信側では受信信号を分析して内部の周波数やタイミング精度を調整するが、これらの処理はビットパターンが固定(受信機側でも既知)である同期ワード(SW)の信号配置を基準信号とする。
【0082】
本例の受信機では、SWテーブル部511、513からタイミング生成部518が、タイミング同期追従のための処理ブロックとなる。その動作について説明する。
第1の相関演算部512は、ルートロールオフフィルタ506からの出力と第1のSWテーブル部511で保有する同期ワードのA系列の基準信号との相関演算を(式5)により計算する。同様に、第2の相関演算部514は、ルートロールオフフィルタ506からの出力と第2のSWテーブル部513で保有する同期ワードのB系列の基準信号との相関演算を(式5)により計算する。
【0083】
ここで、本例では、基準信号は、同期ワード(SW)の符号化後の信号配置点であり、A系列とB系列の2種類の基準信号がある。受信アンテナ501で受信する変調波においてA系列の要素が強いか或いはB系列の要素が強いか或いはいずれの系列の要素も同じ程度のレベルであるかは特別な処理無しには受信機側で判定することができないため、同期追従のための相関演算では、A系列の同期ワードとの相関値A(z)とB系列の同期ワードとの相関値B(z)の両方を(式5)により計算する。
【0084】
最大値検索部516は、演算部515からの出力に基づいて、A系列の相関値A(z)の自乗値とB系列の相関値B(z)の自乗値との加算結果(和)の大きさを比較することで、両方の系列の総合的に、基準信号に最も近い信号配置となるサンプルを検出することができる。具体的には、最大値検索部516は、(式6)のABMAX及びKを求める。
【0085】
図6(a)、(b)及び図7を参照して、DSTBC方式における相関自乗値の計算例を示す。なお、ここでは、DSTBC方式を例として示すが、STBC方式についても同様である。
また、本例の方式(本方式)に係る計算例とともに、比較方式として第2実施例(図3)における相関自乗値の計算例を示してある。
また、本例では、M=8であり、フレームにおいて同期ワード(SW)が先頭から60シンボル番目に開始する場合を示す。
【0086】
図6(a)には、本例のタイミング同期追従における、同期状態であるときの相関自乗値の計算例を示してあり、DSTBC受信波がB系列のみであるときの例を示してある。
図6(b)には、本例のタイミング同期追従における、同期状態であるときの相関自乗値の計算例を示してあり、DSTBC受信波がA系列のみであるときの例を示してある。
図7には、本例のタイミング同期追従における、同期状態であるときの相関自乗値の計算例を示してあり、DSTBC受信波がA系列とB系列の合成波で両者の電力が等しいときの例を示してある。
図6(a)、(b)及び図7のグラフでは、横軸はサンプル番号(z)を表しており、縦軸は、本方式については(|A(z)|+|B(z)|)/ABMAXを表しており、比較方式については|C(z)|/CMAXを表している。
【0087】
受信信号と受信機での処理のタイミングが完全に同期した状態では、図6(a)、(b)、図7に示されるように、(|A(z)|+|B(z)|)が最大値となるz(=K)は、8×60=480となる。このように、所望のタイミングで相関自乗値(本例では、(|A(z)|+|B(z)|))が最大となる。
【0088】
タイミング検出部517は、基準サンプル番号(本例では、480)とKの値との差をタイミング誤差(サンプリングタイミングの補正値の一例)として検出して出力する。
タイミング生成部518は、タイミング検出部517からのタイミング誤差が正の値であるとき(K−480>0であるとき)には、受信信号が受信機のサンプリングタイミングに対して遅いことから、サンプリングタイミングを遅くするようにA/D変換器503を制御し、逆に、タイミング検出部517からのタイミング誤差が負の値であるとき(K−480<0であるとき)には、受信信号が受信機のサンプリングタイミングに対して早いことから、サンプリングタイミングを早くするようにA/D変換器503を制御する。これにより、受信信号に追従したサンプリングタイミングの生成が可能となる。
【0089】
ここで、本例の構成は、例えば、同期ワード信号が無線フレームフォーマットの先頭以外の位置(先頭より後ろの箇所)に配置される場合に適用されるが、同期ワード信号がフレームの先頭の位置に配置される場合に適用されても構わない。
【0090】
以上のように、本例の受信機(STBC受信機又はDSTBC受信機)では、受信機のタイミング同期追従において、例えば、サンプル毎(又は、他のタイミング毎)に復号処理(STBC復号処理又はDSTBC復号処理)を行わずに、予め設定された同期ワード(SW)に関する相関演算を行うことで、演算処理量を少なくする(低減する)ことができる。このように、本例では、STBC方式又はDSTBC方式の復調処理におけるタイミング同期追従において本例の構成を用いることで、効果的に通信を行うことができる。
【0091】
一例として、STBC方式が用いられる場合に、送信側ではフレームの全体(同期ワードも含む)をSTBC符号化し、受信側ではSTBC符号化された同期ワード(A系列、B系列)を記憶しておき、相関演算等を行うことで、サンプリングタイミングを制御する。
他の一例として、DSTBC方式が用いられる場合に、送信側ではフレームの全体(同期ワードも含む)をDSTBC符号化し且つDSTBC符号化後の同期ワードのところを一定シンボルにしておき、受信側では一定シンボル化された同期ワード(A系列、B系列)を記憶しておき、相関演算等を行うことで、サンプリングタイミングを制御する。
【0092】
なお、図5に示される本例のSTBC方式又はDSTBC方式の受信装置のSTBC受信機又はDSTBC受信機では、アンテナ501や受信部502の機能により受信手段が構成されており、A/D変換器503の機能によりA/D変換手段が構成されており、復号部(STBC復号部又はDSTBC復号部)508の機能により復号手段が構成されており、2つの系列のSWテーブル部511、513の機能により同期ワード情報記憶手段が構成されており、2つの系列の相関演算部512、514の機能により相関値取得手段が構成されており、演算部515や最大値検索部516やタイミング検出部517やタイミング生成部518の機能によりサンプリングタイミング制御手段が構成されている。
【0093】
(以下、参考出願1の内容の説明)
以下で、参考出願1(特願2010−088918号)の内容を説明しておく。この内容は、適宜、本発明に適用されてもよい。概略的には、DSTBC送信機における同期ワード(SW)の信号配置を固定パターンにすることができる技術である。
なお、図8や図18に示される構成例では、一方の基地局装置1、201から第1の系列(A系列)の信号が送信され、他方の基地局装置2、202から第2の系列(B系列)の信号が送信される。なお、これらの基地局装置と系列との組み合わせは逆でもよい。
【0094】
また、上記した本発明の実施形態の説明と、以下で示す参考出願1の内容の説明とで、使用される文字が異なるところがあるため、対応を説明しておく。
(対応1)シンボルマッピング部からの出力信号について、上記した本発明の実施形態の説明ではxを使用しているのに対して、以下で示す参考出願1の内容の説明ではXを使用している。
(対応2)STBC符号化部からの出力信号について、上記した本発明の実施形態の説明ではsを使用しているのに対して、以下で示す参考出願1の内容の説明ではSを使用している。
(対応3)時系列番号(シンボル番号)の表記方法として、上記した本発明の実施形態の説明では、1シンボル時間毎に変化する時系列番号としてw(w=0、1、2、・・・)を使用して、xw−1、xやsw−1、sと表記しているのに対して、以下で示す参考出願1の内容の説明では、2シンボル時間毎に変化する時系列番号としてm(m=0、1、2、・・・)を使用して、X2m、X2m+1やS2m、S2m+1と表記している。ここで、mの最大値は、wの最大値の半分となる。なお、wについてはwが奇数であるときに各演算が行われるため、wを使用した表記もmを使用した表記も実質的には同じことを意味している。
【0095】
(送信機の説明) 参考出願1の一構成例では、DSTBC方式により信号を送信する送信機において、次のような構成とした。
すなわち、先頭より後ろの所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられる。
そして、初期値制御手段が、フレームの先頭から同期ワードより前の値に基づいて、送信対象を処理するDSTBC符号器において同期ワードの直前に対応する信号点が一定の点になるように、前記送信対象を処理するDSTBC符号器で前記フレームを処理するときの差動符号化の初期値を設定する。
【0096】
従って、送信対象を処理するDSTBC符号器(本線のDSTBC符号器)において同期ワードの直前に対応する信号点が一定の点になるようにすることにより、例えば、フレームの先頭から同期ワードより前の値(例えば、その一部)が送信対象のデータ内容により変化するような場合においても、同期ワードのマッピング配置を固定されたマッピングパターンとすることができ、送信機と受信機との間で、DSTBC方式により効率的に通信を行うことができる。
【0097】
ここで、フレームとしては、種々なものが用いられてもよく、例えば、先頭から同期ワードより前に送信対象となる音声などの変化し得るデータが配置されるフレームが用いられる。
また、同期ワードの直前に対応する信号点(シンボル値)が一定の点になるようにすることに関して、当該一定の点としては、種々な点が用いられてもよく、例えば、予め設定される。
【0098】
本例に係る送信機では、一構成例として、次のような構成とした。
すなわち、前記初期値制御手段では、フレームの先頭から同期ワードより前の値について、S/P変換手段がシリアル/パラレル変換を行い、シンボルマッピング手段が当該シリアル/パラレル変換結果についてシンボルマッピングを行い、差動符号化手段が当該シンボルマッピング結果について所定の初期値を用いて差動符号化を行い、初期値更新手段が当該差動符号化結果に基づいて前記送信対象を処理するDSTBC符号器で前記フレームを処理するときの差動符号化の初期値を更新して設定する。
【0099】
(上記した送信機に対応した送信方法の説明)
参考出願1の一構成例では、DSTBC方式により信号を送信する送信方法において、次のような処理を実行する。
すなわち、先頭より後ろの所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられる。
そして、フレームの先頭から同期ワードより前の値について、シリアル/パラレル変換を行い、当該シリアル/パラレル変換結果についてシンボルマッピングを行い、当該シンボルマッピング結果について所定の初期値を用いて差動符号化を行い、当該差動符号化結果に基づいて送信対象を処理するDSTBC符号器で前記フレームを処理するときの差動符号化の初期値を更新して設定する処理を、前記送信対象を処理するDSTBC符号器において同期ワードの直前に対応する信号点が一定の点になるように実行する。
【0100】
従って、送信対象を処理するDSTBC符号器(本線のDSTBC符号器)において同期ワードの直前に対応する信号点が一定の点になるようにすることにより、例えば、フレームの先頭から同期ワードより前の値(例えば、その一部)が送信対象のデータ内容により変化するような場合においても、同期ワードのマッピング配置を固定されたマッピングパターンとすることができ、送信機と受信機との間で、DSTBC方式により効率的に通信を行うことができる。
【0101】
(効果の説明)
以上説明したように、参考出願1の構成によると、DSTBC方式により効率的に通信を行うことができる。
【0102】
(実施するための形態の説明)
【0103】
参考出願1に係る実施例を図面を参照して説明する。
図17には、無線通信システムの一例として、列車無線システムの構成例を示してある。
本例の列車無線システムは、中央卓101、中央装置102、複数(ここでは、2つを例示した)の基地局装置111、112、列車の移動局装置121を備えている。
【0104】
ここで、中央卓101は中央装置102に対して制御等を行う。
また、中央装置102と各基地局装置111、112とは、例えば光ファイバのような有線回線で接続されており、これらの間で{0、1}のビット系列でデジタル化された信号が伝送される。
また、各基地局装置111、112と移動局装置121とは、無線回線で接続される。そして、中央卓101と移動局装置121との間で、中央装置102や基地局装置111、112を介して、音声による通話及びデータ通信を行う。
【0105】
例えば、列車無線システムのように、無線周波数として1波が与えられ、複数の基地局装置111、112で1つのゾーンを構成する場合には、各基地局装置111、112からは同一の周波数で同一の信号が送信される。このとき、移動局装置121での受信電力は、2つの基地局装置111、112からの到達成分の位相関係によって変動し、例えば、2つの到達波の電力が等しく位相差が180度となる最悪のケースでは受信信号が消失する。この現象は、同一波干渉と呼ばれる。
【0106】
このような問題に対する対策として、デジタル無線通信において、同一波干渉を回避する手法として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術を応用したDSTBC方式がある。
【0107】
(本例の基本となる構成例の説明)
図18には、DSTBC方式を用いた基地局装置の送信機の構成例を示してある。本例では、4値デジタル変調(2bit/1シンボル)を用いた場合を示してある。
本例では、識別情報(ID)が1である基地局装置201の送信機の構成例と、IDが2である基地局装置202の送信機の構成例を示してある。
【0108】
第1の基地局装置201の送信機は、入力部211a、チャネルコーデック部212a、シリアル/パラレル(S/P)変換部213a、2つのシンボルマッピング部214−1a、214−2a、初期値設定部215a、差動符号化部216a、基地局ID通知部217a、STBC符号化部218a、送信部219a、電力増幅部220a、送信アンテナ221aを備えている。
本例では、初期値設定部215a、差動符号化部216a、STBC符号化部218aからDSTBC符号器が構成されている。
【0109】
第2の基地局装置202の送信機は、入力部211b、チャネルコーデック部212b、シリアル/パラレル(S/P)変換部213b、2つのシンボルマッピング部214−1b、214−2b、初期値設定部215b、差動符号化部216b、基地局ID通知部217b、STBC符号化部218b、送信部219b、電力増幅部220b、送信アンテナ221bを備えている。
本例では、初期値設定部215b、差動符号化部216b、STBC符号化部218bからDSTBC符号器が構成されている。
【0110】
本例の基地局装置201、202の送信機における動作の一例を示す。
なお、各基地局装置201、202の送信機における概略的な動作は同様であるため、第1の基地局装置201の送信機を代表させて説明し、第2の基地局装置202の送信機についても異なる点について説明する。
入力部211aは、中央装置から送信される音声信号等をデジタル化した信号(音声データ)を入力して、チャネルコーデック部212aへ出力する。
【0111】
チャネルコーデック部212aは、指定されたフレームフォーマットに従って、入力部211aからの音声データ(TCH:Traffic Channel)や、受信側(例えば、移動局装置の側)での復調処理のために使用される同期ワード(SW:Sync.Word)等の既知の固定ビット値情報、などで構成される送信フレームデータを生成し、{0、1}のビット系列{b;t=0、1、・・・、T−1}をS/P変換部213aへ出力する。なお、Tは自然数である。
図19には、チャネルコーデック部212aから出力される送信フレーム231のフォーマットの一例を示してある。本例では、T=320である。
【0112】
S/P変換部213aは、チャネルコーデック部212aからの1フレーム分の入力ビット列を2シンボル毎に分割してシンボルタイミングで各シンボルマッピング部214−1a、214−2aへ出力する。具体的には、4値デジタル変調(2bit/1シンボル)を用いた場合には、4bit(ビット)分の入力(b4n、b4n+1、b4n+2、b4n+3)を前半の(b4n、b4n+1)と後半の(b4n+2、b4n+3)の2シンボルに分割し、初めのシンボルタイミングで(b4n、b4n+1)を第1のシンボルマッピング部214−1aへ出力し、次のシンボルタイミングで(b4n+2、b4n+3)を第2のシンボルマッピング部214−2aへ出力する。
ここで、n=0、1、・・・、T/4−1は、4bit毎に変化する時系列番号である。
【0113】
第1のシンボルマッピング部214−1aは、S/P変換部213aから(b4n、b4n+1)が入力されると、予め指定されたシンボル変調に従ってマッピングして、その結果X2mを差動符号化部216aへ出力する。
第2のシンボルマッピング部214−2aは、S/P変換部213aから(b4n+2、b4n+3)が入力されると、予め指定されたシンボル変調に従ってマッピングして、その結果X2m+1を差動符号化部216aへ出力する。
【0114】
これら2つのシンボルマッピング部214−1a、214−2aにより、S/P変換部213aで分割した2シンボルに対して、(b4n、b4n+1)の入力に対するシンボル変調X2mを出力するとともに、(b4n+2、b4n+3)の入力に対するシンボル変調X2m+1を出力する。
ここで、mは、m=n(m=0、1、・・・、T/4−1)で、2シンボル毎に変化する時系列番号であり、X2m、X2m+1は複素数となる。
図20には、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調の時におけるX(X2mやX2m+1)の信号配置の一例を示してある。横軸は同相(I)成分を表し、縦軸は直交(Q)成分を表す。
【0115】
差動符号化部216aは、2つのシンボルマッピング部214−1a、214−2aからX2m、X2m+1が入力された後、(式7)の演算で得られるS2m、S2m+1をSTBC符号化部218aへ出力する。
なお、*は共役複素数を表す。S2m、S2m+1は複素数となる。
初期値設定部215aは、m=0における初期値S−2、S−1を差動符号化部216aへ出力して設定する。
【0116】
【数7】

【0117】
基地局ID通知部217aは、STBC符号化部218aへ基地局ID番号を出力して通知する。本例では、第1の基地局装置201の基地局ID通知部217aでは基地局ID番号として1(ID=1)をSTBC符号化部218aへ通知し、第2の基地局装置202の基地局ID通知部217bでは基地局ID番号として2(ID=2)をSTBC符号化部218bへ通知する。
【0118】
STBC符号化部218aは、差動符号化部216aからの入力S2m、S2m+1に基づく値S2m、−S2m+1、S2m+1、S2mを取得し、また、スイッチ機能を有しており、当該スイッチ機能により、基地局ID通知部217aから通知される基地局ID番号を判別し、その結果に応じて、差動符号化部216aからの入力S2m、S2m+1に基づく値のうちで選択した値を送信部219aへ出力する。
本例では、STBC符号化部218a、218bのスイッチ機能は、基地局ID番号が奇数であるか或いは偶数であるかを判別し、この結果、基地局ID番号が奇数である場合(本例では、第1の基地局装置201の場合)には、S2m、−S2m+1の順に送信部219a、219bへ出力し、また、基地局ID番号が偶数である場合(本例では、第2の基地局装置202の場合)にはS2m+1、S2mの順に送信部219a、219bへ出力する。
【0119】
送信部219aは、STBC符号化部218aからの入力に対し、D/A(Digital to Analog)変換や直交変調の処理を施した後に、所望の無線送信周波数に変調して、その結果の信号を電力増幅部220aへ出力する。
電力増幅部220aは、送信部219aからの出力を無線出力レベルまで増幅して、送信アンテナ221aへ出力する。
送信アンテナ221aは、電力増幅部220aから入力された信号を無線により送信出力する。
【0120】
ここで、本例では、STBC符号化部218a、218bに前記したスイッチ機能を備えた構成例を示したが、他の構成例として、このようなスイッチ機能を有するスイッチをSTBC符号化部218a、218bと送信部219a、219bとの間(DSTBC符号器の内部又は外部)に備えることも可能であり、この場合、基地局ID通知部217a、217bは、(STBC符号化部218a、218bではなく)各スイッチへ基地局ID番号を出力して通知し、STBC符号化部218a、218bは、差動符号化部216a、216bからの入力S2m、S2m+1に基づく値S2m、−S2m+1、S2m+1、S2mを取得して各スイッチへ出力し、各スイッチは、基地局ID通知部217a、217bから通知される基地局ID番号を判別し、その結果に応じて、STBC符号化部218a、218bから入力された値のうちで選択した値を送信部219a、219bへ出力し、送信部219a、219bは、(STBC符号化部218a、218bからの入力ではなく)各スイッチからの入力を処理する。
【0121】
次に、シンボルマッピング部214−1a、214−2aと差動符号化部216aの動作について例を挙げて説明する。
シンボルマッピング部214−1a、214−2aがQPSK変調に対応する場合、その出力X(X2mやX2m+1)は(式8)で示される。
なお、jは虚数を表す。
【0122】
【数8】

【0123】
(式7)を用いて、差動符号化部216aからの出力S2m、S2m+1を計算する。
一例として、初期値設定部215aからの出力S−2、S−1を(式9)で与え、シンボルマッピング部214−1a、214−2aの入力ビットをランダムに変化させたとき、(式8)のX(X2mやX2m+1)を(式7)に代入すると、差動符号化部216aからの出力信号の配置は図21に示されるようになる。
図21には、DSTBCの信号配置の一例を示してある。横軸は同相(I)成分を表し、縦軸は直交(Q)成分を表す。
【0124】
【数9】

【0125】
他の一例として、初期値設定部215aからの出力S−2、S−1を(式10)で与え、シンボルマッピング部214−1a、214−2aの入力ビットをランダムに変化させたとき、(式8)のX(X2mやX2m+1)を(式7)に代入すると、差動符号化部216aからの出力信号の配置は図22に示されるようになる。
図22には、DSTBCの信号配置の一例を示してあり、その20点の座標Sを示してあり、各シンボル値に番号(マッピング点番号)を付してある。横軸は同相(I)成分を表し、縦軸は直交(Q)成分を表す。
【0126】
【数10】

【0127】
具体的には、図22に示されるマッピング配置では、出力20点に[1]〜[20]の番号付けをしてある。
(式7)の計算結果によると、S2m、S2m+1の組み合わせは、図23の表に示される24通りの組み合わせ状態となることが確認される。
図23の表には、(式10)を初期値としたときにおけるS2m、S2m+1の信号配置の組み合わせ及びそれに対応する状態番号(状態No)の一例を示してある。
【0128】
図21の信号配置と図22の信号配置とを比較すると、初期値の選び方によりSのマッピング点数と配置点は異なるが、初期値が図23に示される状態番号(状態No)のいずれかであれば、図22に示されるものと同じ20点の中で偏移することが確認されている。
【0129】
また、(式7)は、DSTBC方式の出力のマッピング(S2m、S2m+1)がそれより前のタイミングの出力(S2m−2、S2m−1)に依存すること(又は、m=0の場合には初期値(S−2、S−1)に依存すること)を示している。
このことは、シンボルマッピング部214−1a、214−2aの入力が同期ワードのような既知の固定ビットパターンであり、Xの配置、偏移が固定であっても、そのDSTBCのマッピング配置は、直前の出力マッピング配置すなわち同期ワード(SW)以前の音声データ入力のビットパターンに依存して変化することを示す。
【0130】
一般的に、デジタル無線方式の場合、移動局装置(例えば、図17に示される移動局装置121)に実装される復調処理の機能部では、同期ワードのマッピング配置が既知であることを前提としたアルゴリズムを採用している。その中で、例えば、自動周波数制御(AFC:Automatic Frequency Control)処理では、同期ワードの復調デマッピング配置結果と、同期ワードの既知のマッピング配置との位相誤差を計算することで受信周波数の補正を行っている。
【0131】
しかしながら、DSTBC方式を用いた変調処理では、上述のように、同期ワードのマッピング配置は直前の音声データ入力に依存して変化するため、例えば、受信側でAFC処理をするような際には、基準となるマッピング配置点が不定となり対策が必要となるといった問題があった。
【0132】
(実施例)
図8には、参考出願1の一実施例に係るDSTBC方式を用いた基地局装置の送信機の構成例を示してある。本例では、4値デジタル変調(2bit/1シンボル)を用いた場合を示してある。
本例では、識別情報(ID)が1である基地局装置1の送信機の構成例と、IDが2である基地局装置2の送信機の構成例を示してある。
【0133】
第1の基地局装置1の送信機は、入力部11a、チャネルコーデック部12a、シリアル/パラレル(S/P)変換部13a、2つのシンボルマッピング部14−1a、14−2a、差動符号化部15a、基地局ID通知部16a、STBC符号化部17a、送信部18a、電力増幅部19a、送信アンテナ20aを備えており、また、S/P変換部31a、2つのシンボルマッピング部32−1a、32−2a、初期値設定部33a、差動符号化部34a、初期値更新部35aを備えている。
本例では、差動符号化部15a、STBC符号化部17a、S/P変換部31a、2つのシンボルマッピング部32−1a、32−2a、初期値設定部33a、差動符号化部34a、初期値更新部35aからDSTBC符号器が構成されている。
【0134】
第2の基地局装置2の送信機は、入力部11b、チャネルコーデック部12b、シリアル/パラレル(S/P)変換部13b、2つのシンボルマッピング部14−1b、14−2b、差動符号化部15b、基地局ID通知部16b、STBC符号化部17b、送信部18b、電力増幅部19b、送信アンテナ20bを備えており、また、S/P変換部31b、2つのシンボルマッピング部32−1b、32−2b、初期値設定部33b、差動符号化部34b、初期値更新部35bを備えている。
本例では、差動符号化部15b、STBC符号化部17b、S/P変換部31b、2つのシンボルマッピング部32−1b、32−2b、初期値設定部33b、差動符号化部34b、初期値更新部35bからDSTBC符号器が構成されている。
【0135】
本例の基地局装置1、2の送信機における動作の一例を示す。
なお、各基地局装置1、2の送信機における概略的な動作は同様であるため、第1の基地局装置1の送信機を代表させて説明する。
また、本例では、図18に示される基地局装置201、202の送信機の構成や動作との相違点を中心に説明し、同様な部分については詳しい説明を省略する。
また、本例では、チャネルコーデック部12a、12bで生成する送信フレームフォーマットは、図19に示されるものに従っていることを前提とする。
【0136】
まず、入力部11a、チャネルコーデック部12a、S/P変換部13a、2つのシンボルマッピング部14−1a、14−2a、差動符号化部15a、基地局ID通知部16a、STBC符号化部17a、送信部18a、電力増幅部19a、送信アンテナ20aの構成や動作は、それぞれ、図18に示される対応する処理部と概略的に同様である。これらについて、本例で、図18に示されるものと相違する点は、チャネルコーデック部12aがフレームフォーマットに従って送信1フレームを生成して{0、1}のビット系列{b;t=0、1、・・・、T}(本例では、T=319)をS/P変換部13aへ出力するだけではなくこれとともにS/P変換部31aへも出力する点と、差動符号化部15aに入力される初期値S−2、S−1が初期値更新部35aから出力される点である。
【0137】
続いて、本例の主な特徴であるS/P変換部31a、2つのシンボルマッピング部32−1a、32−2a、初期値設定部33a、差動符号化部34a、初期値更新部35aについて説明する。
S/P変換部31aは、主たる機能はS/P変換部13aと同じであるが、S/P変換部13aでは入力bit数が送信1フレーム分(320bit)であるのに対して、S/P変換部31aでは入力bit数が先頭から同期ワードの直前までの120bit(図19に示されるR、P、TCH)である。また、S/P変換部13aではシンボルタイミングに同期して出力するのに対して、S/P変換部31aでは以後の処理が終わったら順次シンボル分割及び出力を行う。
【0138】
具体的には、S/P変換部31aは、チャネルコーデック部12aからの送信1フレームの内、先頭から同期ワードまでの120bitを取り込んだ後、この120bit分の入力ビット列について、4bit分の入力(b4n、b4n+1、b4n+2、b4n+3)を前半の(b4n、b4n+1)と後半の(b4n+2、b4n+3)の2シンボル(本例では、2bit/1シンボル)に分割し、初めの(b4n、b4n+1)を第1のシンボルマッピング部32−1aへ出力し、次の(b4n+2、b4n+3)を第2のシンボルマッピング部32−2aへ出力する。
【0139】
各シンボルマッピング部32−1a、32−2aは、主たる機能は各シンボルマッピング部14−1a、14−2aと同じである。
具体的には、第1のシンボルマッピング部32−1aは、S/P変換部31aから(b4n、b4n+1)が入力されると、予め指定されたシンボル変調に従ってマッピングして、その結果X2mを差動符号化部34aへ出力する。
また、第2のシンボルマッピング部32−2aは、S/P変換部31aから(b4n+2、b4n+3)が入力されると、予め指定されたシンボル変調に従ってマッピングして、その結果X2m+1を差動符号化部34aへ出力する。
このように、シンボルマッピング部32−1a、32−2aにより、順次、X2m、X2m+1に変調する。
【0140】
差動符号化部34aは、2つのシンボルマッピング部32−1a、32−2aからX2m、X2m+1が入力された後、(式11)の演算をすることで、順次、S’2m、S’2m+1を計算し、これにより得られるm=29のときの値S’58、S’59(120bitについての最後の2つの値)を初期値更新部35aへ出力する。
初期値設定部33aは、m=0における初期値S’−2、S’−1として(式12)に示される値を差動符号化部34aへ出力して設定する。
【0141】
【数11】

【数12】

【0142】
初期値更新部35aは、差動符号化部34aからの出力S’58、S’59から、差動符号化部15aの初期値S−2、S−1を求めて差動符号化部15aへ出力する。
ここで、他の構成例として、差動符号化部34aが値S’58、S’59に対応した状態番号(状態No)を初期値更新部35aへ出力し、初期値更新部35aが差動符号化部34aからの状態Noから差動符号化部15aの初期値S−2、S−1を求める構成とされてもよい。
なお、差動符号化部15aでは、図18に示されるものと同様に、(式7)の計算を行い、本例では、初期値更新部35aから与えられる初期値S−2、S−1を用いる。
【0143】
次に、初期値更新部35aにより行われる処理について詳しく説明する。
本例では、初期値更新部35aは、図9に示される表(変換表)の内容に従って、差動符号化部34aからの出力S’58、S’59(或いは、状態No)から、差動符号化部15aの初期値S−2、S−1を求めて、差動符号化部15aへ出力する。
【0144】
図9には、初期値更新部35aの入力から出力への変換表の一例を示してある。
具体的には、前段の差動符号化部34aからの同期ワード直前についての出力値S’58、S’59及びそれに対応する状態No(初期値更新部35aの入力に関する情報)の一覧を示してあり、これについては図23に示される内容と同じであり、また、後段の差動符号化部15aの初期値S−2、S−1及びそれに対応する状態No(初期値更新部35aの出力に関する情報)の一覧を示してある。そして、初期値更新部35aでは、入力の状態Noが判定されると、それに対応する状態No(図9の変換表では、同じ行にある状態No)の出力を行う。なお、マッピング点番号[1]〜[20]は図22に示されるものと同じシンボル値を示す。
【0145】
本例では、S/P変換部31a〜初期値更新部35aによりフレームの先頭からの120bit分を処理して初期値S−2、S−1を求めた後に、S/P変換部13a以降の処理部(例えば、S/P変換部13a〜STBC符号化部17aなど)の処理を開始して、シンボルマッピング部14−1a、14−2aでX2m、X2m+1を順次求めて、差動符号化部15aでS2m、S2m+1を順次計算して、フレームの先頭からの320bit分を処理する。この場合に、m=0のときのS、Sについては、初期値S−2、S−1を用いて計算する。
【0146】
ここで、本例のような初期値S−2、S−1を用いて差動符号化部15aで(式7)を計算すると、m=29のときの計算結果すなわち同期ワード直前のS58、S59の組み合わせが必ず状態Noが1であるものとなり、同期ワードのS2m、S2m+1(m=30〜34)のマッピング配置を固定ビットパターンに応じた固定マッピングパターンにすることができる。
【0147】
(第1のシミュレーションの例の説明)
図10には、シミュレーション結果(ケース1−1)の例を示してある。このケースでは、S’58、S’59の組み合わせが状態No4に対応することから、図9の変換表に基づいて、状態No12に対応する初期値S−2、S−1を用いている。
図11には、シミュレーション結果(ケース1−2)の例を示してある。このケースでは、S’58、S’59の組み合わせが状態No24に対応することから、図9の変換表に基づいて、状態No20に対応する初期値S−2、S−1を用いている。
【0148】
ここで、本例のシミュレーションでは、同期ワードまでの入力をランダムビット入力とし、同期ワードは固定パターンとしている。また、図10及び図11では、入力パターンによるS2m、S2m+1の偏移、S’2m、S’2m+1の遷移を状態Noの偏移で表している。
図10の結果と図11の結果とでは、ランダムビット入力の120bitのビットパターンが異なるが、同期ワード直前の状態Noが1となり、同期ワードのマッピングパターンが固定マッピングパターンになることが示されている。なお、入力データとして他の入力パターンにおいても検証済みであり、同様の結果が得られている。
【0149】
(第2のシミュレーションの例の説明)
図12〜図16を参照して説明する。
まず、第2のシミュレーションに係る送信機の構成や動作について、図8を参照して上述した内容とは異なる点について説明する。
第2のシミュレーションに係る各シンボルマッピング部14−1a、14−2a、32−1a、32−2aの主たる機能は、上述した内容と同じであるが、第2のシミュレーションでは、S/P変換部13a、31aからの第1の出力(b4n、b4n+1)と第2の出力(b4n+2、b4n+3)に対して、それぞれ異なるシンボル変調を定義している。
【0150】
第1のシンボルマッピング部(シンボルマッピングA部)となるシンボルマッピング部14−1a、32−1aは、それぞれ、前段のS/P変換部13a、31aから第1の出力(b4n、b4n+1)を入力し、(式8)と同様な(式13)で与えられるX2mを演算して後段の差動符号化部15a、34aへ出力する。
第2のシンボルマッピング部(シンボルマッピングB部)となるシンボルマッピング部14−2a、32−2aは、それぞれ、前段のS/P変換部13a、31aから第2の出力(b4n+2、b4n+3)を入力し、(式14)で与えられるX2m+1を演算して後段の差動符号化部15a、34aへ出力する。ここで、(式14)はIQ平面において(式13)を−45°回転させたものである。
【0151】
【数13】

【数14】

【0152】
更に、シンボルマッピング部32−1a、32−2a、初期値設定部33a、差動符号化部34aを例とすると、(式15)に示される初期値S’−2、S’−1を用いて(式11)を計算すると、差動符号化部34aの出力信号の配置は、図12に示されるようになり、原点を含まない信号配置となる。
図12には、差動符号化部34aの信号配置の一例を示してあり、その24点の座標Sを示してあり、各シンボル値に番号(マッピング点番号)を付してある。横軸は同相(I)成分を表し、縦軸は直交(Q)成分を表す。
【0153】
【数15】

【0154】
具体的には、図12に示されるマッピング配置では、出力24点に[1]〜[24]の番号付けをしてある。
(式11)の計算結果によると、S’2m、S’2m+1の組み合わせは、図13の表に示される24通りの組み合わせ状態となることが確認される。
図13の表には、第2のシミュレーションにおけるS’2m、S’2m+1(S2m、S2m+1も同様)の信号配置の組み合わせ及びそれに対応する状態番号(状態No)の一例を示してある。ここで、初期値が図13に示される状態Noのいずれかであれば、図12に示されるものと同じ24点の中で偏移することが確認されている。
【0155】
このことをシンボルマッピング部14−1a、14−2a、差動符号化部15a、STBC符号化部17aに当てはめて考えると、差動符号化部15aの出力信号の配置は、図12に示されるようになり、原点を含まない信号配置となり、また、後段のSTBC符号化部17aの出力も同様な信号配置となり、原点を含まない信号配置にすることができる。
【0156】
このように、第2のシミュレーションに係る送信機では、STBC符号化部17aの出力信号配置が原点(ゼロ点)を含まないようにシンボル変調を行うシンボルマッピング部14−1a、14−2aを備えた。そして、DSTBC符号器における信号配置の原点にシンボルが無いことが実現されるように、DSTBC符号器の入力を所定の演算で求めており、信号配置において原点を含まないため、例えば、送信波形の包絡線振幅の変動を低減することができ、これにより、電力増幅部19aに要求される性能を緩和することができる。
【0157】
続いて、初期値更新部35aにより行われる処理について詳しく説明する。
第2のシミュレーションに係る送信機では、初期値更新部35aは、図14に示される表(変換表)の内容に従って、差動符号化部34aからの出力S’58、S’59(或いは、状態No)から、差動符号化部15aの初期値S−2、S−1を求めて、差動符号化部15aへ出力する。
【0158】
図14には、初期値更新部35aの入力から出力への変換表の一例を示してある。
具体的には、前段の差動符号化部34aからの同期ワード直前についての出力値S’58、S’59及びそれに対応する状態No(初期値更新部35aの入力に関する情報)の一覧を示してあり、これについては図13に示される内容と同じであり、また、後段の差動符号化部15aの初期値S−2、S−1及びそれに対応する状態No(初期値更新部35aの出力に関する情報)の一覧を示してある。そして、初期値更新部35aでは、入力の状態Noが判定されると、それに対応する状態No(図14の変換表では、同じ行にある状態No)の出力を行う。なお、マッピング点番号[1]〜[24]は図12に示されるものと同じシンボル値を示す。
【0159】
ここで、本例のような初期値S−2、S−1を用いて差動符号化部15aで(式7)を計算すると、m=29のときの計算結果すなわち同期ワード直前のS58、S59の組み合わせが必ず状態Noが1であるものとなり、同期ワードのS2m、S2m+1(m=30〜34)のマッピング配置を固定ビットパターンに応じた固定マッピングパターンにすることができる。
【0160】
図15には、シミュレーション結果(ケース2−1)の例を示してある。このケースでは、S’58、S’59の組み合わせが状態No16に対応することから、図14の変換表に基づいて、状態No20に対応する初期値S−2、S−1を用いている。
図16には、シミュレーション結果(ケース2−2)の例を示してある。このケースでは、S’58、S’59の組み合わせが状態No23に対応することから、図14の変換表に基づいて、状態No19に対応する初期値S−2、S−1を用いている。
【0161】
ここで、第2のシミュレーションでは、同期ワードまでの入力をランダムビット入力とし、同期ワードは固定パターンとしている。また、図15及び図16では、入力パターンによるS2m、S2m+1の偏移、S’2m、S’2m+1の遷移を状態Noの偏移で表している。
図15の結果と図16の結果とでは、ランダムビット入力の120bitのビットパターンが異なるが、同期ワード直前の状態Noが1となり、同期ワードのマッピングパターンが固定マッピングパターンになることが示されている。なお、入力データとして他の入力パターンにおいても検証済みであり、同様の結果が得られている。
【0162】
(参考出願1に係る実施例のまとめ)
以上のように、本例のDSTBC方式を採用した送信機では、フレームの先頭より後ろの所定箇所に同期ワードが配置される場合に、フレームの先頭から同期ワードより前の値(例えば、ビット値)に基づいて、本線の処理(本例では、S/P変換部13a〜STBC符号化部17aの処理)において同期ワードの直前に対応する信号点が一定の点になるように、前記値(フレームの値)を処理するときの差動符号化の初期値S−2、S−1を設定する。
【0163】
具体的には、通常、デジタル無線におけるAFC処理は、同期ワードのマッピング配置が既知であることを前提としているため、受信側では、同期ワードを復調したマッピング配置結果との誤差を演算して補正をかけていたが、DSTBC方式を用いると、従来では、マッピング配置が直前のデータ(例えば、音声データ)の入力に依存して変化するため、基準となるマッピング配置が不定となり、対策を講じる必要があった。そこで、本例では、差動符号化部15aに入力される初期値S−2、S−1を受信データのフレームの最初から同期ワード直前までの120bitのデータから演算し、その演算結果を初期値として設定することにより、同期ワードのマッピング配置を固定されたマッピングパターンとして、基準マッピングパターンとして比較することを可能にした。
【0164】
このように、本例では、DSTBC方式を採用する無線機において、従来では他の入力データに依存して不定であった同期ワードのマッピングパターン(マッピング配置)を固定のマッピングパターン(例えば、既知の固定配置)にすることができ、例えば、受信側のAFC処理において基準となるマッピング配置点を予め定義することが可能となる。
【0165】
ここで、本例の構成を適用することが可能な無線通信システムの一例として、同報型無線システムである列車無線システム(例えば、図17に示されるようなシステム)について概略的に説明する。
列車無線システムでは、例えば、線路に沿って複数の基地局装置が設置されており、1つの中央装置が送信対象となるデータ列Sを各基地局装置へ同時に配信(送信)し、各基地局装置は当該データ列Sから生成したデータ列の信号をアンテナから無線により送信する。そして、線路を走行する列車の移動局装置が基地局装置からの無線信号(電波)を受信する。なお、各基地局装置は、例えば、互いに異なる無線通信領域を有する(重複部分があってもよい)指向性アンテナからなる2本のアンテナを備えている。
【0166】
このようなシステムでは、従来において、同一の周波数を使用する複数の基地局装置でシステムを運用しようとすると、隣接する基地局装置の通信エリア(無線通信領域)において重複するエリアでは電波干渉が生じてしまっていた。
そこで、一構成例として、各基地局装置において、DSTBCを用いて送信信号を符号化し、隣接する基地局装置について重複するエリアに対しては各基地局装置から互いに直交する異なる符号化列(例えば、データ列SからDSTBCにより生成される互いに直交するデータ列A、B)が送信されるように、各基地局装置の各アンテナ毎に送信データ系列を選択や設定することで、同一波干渉を防ぐことが考えられる。
(以上、参考出願1の内容の説明)
【0167】
(実施例のまとめ)
ここで、本発明に係るシステムや装置などの構成としては、必ずしも以上に示したものに限られず、種々な構成が用いられてもよい。また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法或いは方式や、このような方法や方式を実現するためのプログラムや当該プログラムを記録する記録媒体などとして提供することも可能であり、また、種々なシステムや装置として提供することも可能である。
また、本発明の適用分野としては、必ずしも以上に示したものに限られず、本発明は、種々な分野に適用することが可能なものである。
また、本発明に係るシステムや装置などにおいて行われる各種の処理としては、例えばプロセッサやメモリ等を備えたハードウエア資源においてプロセッサがROM(Read Only Memory)に格納された制御プログラムを実行することにより制御される構成が用いられてもよく、また、例えば当該処理を実行するための各機能手段が独立したハードウエア回路として構成されてもよい。
また、本発明は上記の制御プログラムを格納したフロッピー(登録商標)ディスクやCD(Compact Disc)−ROM等のコンピュータにより読み取り可能な記録媒体や当該プログラム(自体)として把握することもでき、当該制御プログラムを当該記録媒体からコンピュータに入力してプロセッサに実行させることにより、本発明に係る処理を遂行させることができる。
【符号の説明】
【0168】
1、2、111、112、201、202・・基地局装置、 11a、b、211a、b・・入力部、 12a、b、212a、b・・チャネルコーデック部、 13a、b、31a、b、213a、b・・S/P変換部、 14−1a、b、14−2a、b、32−1a、b、32−2a、b、214−1a、b、214−2a、b・・シンボルマッピング部、 15a、b、34a、b、216a、b・・差動符号化部、 16a、b、217a、b・・基地局ID通知部、 17a、b、218a、b・・STBC符号化部、 18a、b、219a、b・・送信部、 19a、b、220a、b・・電力増幅部、 20a、b、221a、b・・送信アンテナ、 33a、b、215a、b・・初期値設定部、 35a、b・・初期値更新部、 101・・中央卓、 102・・中央装置、 121・・移動局装置、
301・・S/P変換部、 302、303・・シンボルマッピング部、 304・・差動符号化部、 305・・STBC符号化部、 401、501・・アンテナ、 402、502・・受信部、 403、503・・A/D変換器、 404、504・・直交検波部、 405、505・・LPF、 406、506・・ルートロールオフフィルタ、 407、507・・ダウンサンプル器、 408、411・・DSTBC復号部、 409、509・・復号判定部、 412、511、513・・SWテーブル部、 413、512、514・・相関演算部、 414、516・・最大値検索部、 415、517・・タイミング検出部、 416、518・・タイミング生成部、 508・・復号部(STBC復号部又はDSTBC復号部)、 515・・演算部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
STBC方式又はDSTBC方式により信号を送信する送信装置において、
所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられ、
送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化を行う符号化手段を備えた、
ことを特徴とする送信装置。
【請求項2】
DSTBC方式により送信された信号を受信する受信装置において、
所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられ、送信側において送信対象となるフレームについて前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してDSTBC方式により符号化が行われ、
前記送信側から送信された信号を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された信号をA/D変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段によりA/D変換された後の受信信号をダウンサンプルするダウンサンプル手段と、
前記ダウンサンプル手段によりダウンサンプルされた信号に対してDSTBC方式で復号を行う第1のDSTBC復号手段と、
前記A/D変換手段によりA/D変換された後であって前記ダウンサンプル手段によりダウンサンプルされる前の受信信号に対してDSTBC方式で復号を行う第2のDSTBC復号手段と、
DSTBC方式により符号化が行われる前の前記同期ワードに対応した情報を記憶する同期ワード情報記憶手段と、
前記第2のDSTBC復号手段により得られた復号結果の信号と前記同期ワード情報記憶手段に記憶された前記同期ワードに対応した情報の信号との相関値を取得する相関値取得手段と、
前記相関値取得手段により取得された相関値に基づいて前記A/D変換手段に対してサンプリングタイミングの制御を行うサンプリングタイミング制御手段と、
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項3】
STBC方式又はDSTBC方式により送信された信号を受信する受信装置において、
所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられ、送信側において送信対象となるフレームについて前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化が行われ、前記送信側で前記符号化が行われた後の前記同期ワードに対応した信号が所定のパターンであり、
前記送信側から送信された信号を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された信号をA/D変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段によりA/D変換された後の信号に対してSTBC方式又はDSTBC方式で復号を行う復号手段と、
STBC方式又はDSTBC方式により符号化が行われた後の前記同期ワードに対応した情報を記憶する同期ワード情報記憶手段と、
前記A/D変換手段によりA/D変換された後の信号であって前記復号手段により復号が行われる前の信号と前記同期ワード情報記憶手段に記憶された前記同期ワードに対応した情報の信号との相関値を取得する相関値取得手段と、
前記相関値取得手段により取得された相関値に基づいて前記A/D変換手段に対してサンプリングタイミングの制御を行うサンプリングタイミング制御手段と、
を備えたことを特徴とする受信装置。
【請求項4】
STBC方式又はDSTBC方式により信号を送信装置から受信装置へ送信する通信システムにおいて、
所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられ、
前記送信装置は、送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化を行う符号化手段を備えた、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項5】
STBC方式又はDSTBC方式により信号を送信装置から受信装置へ送信する通信方法において、
所定箇所に同期ワードが配置されるフレームが用いられ、
前記送信装置では、送信対象となるフレームについて、前記同期ワードを含む前記フレームの全体に対してSTBC方式又はDSTBC方式により符号化を行う、
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−134729(P2012−134729A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284602(P2010−284602)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】