説明

送液装置、送液方法、微小気泡発生装置及び異物除去装置

【課題】安定した送液を維持し、さらに、作業性を向上させる。
【解決手段】送液装置は、液体が流れる液体流路と、液体流路を流れる液体を通して液体中に微小気泡を発生させる微小気泡発生装置8とを備え、微小気泡発生装置8は、貫通孔12aを有する微小気泡発生部材12を具備する。微小気泡発生部材12は、貫通孔12aの一端の開口であって液体が流入する流入口H1と、貫通孔12aの他端の開口であって流入口H1から流入した液体が流出する流出口H2とを有しており、少なくとも、流入口H1と流出口H2とが入れ替る回転範囲で回転可能に液体流路である内部流路11a内に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、送液装置、送液方法、微小気泡発生装置及び異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
送液装置は、例えばタンクや配管、送液ポンプなどを備えており、送液ポンプによりタンク内の液体を配管に流して送液する装置である。この種の送液装置は、タンク内の液体を浄化する液浄化装置として用いられたり(例えば、特許文献1参照)、あるいは、供給対象となる装置にタンク内の液体を供給する液供給装置として用いられたりする。このような送液装置は、配管内を流れる液体中に例えばオリフィス部材により微小気泡を発生させる微小気泡発生装置、あるいは、配管内を流れる液体からフィルタにより異物を除去する異物除去装置などを備えている。
【0003】
ここで、前述の供給対象装置としては、加工装置や基板処理装置などが挙げられる。加工装置の例示としては、液供給装置から供給された液体である切削液を切削具と被切削物との切削箇所に供給しながら切削を行う装置がある。また、基板処理装置の例示としては、半導体装置や液晶表示装置などの製造工程において、液供給装置から供給された液体である処理液を基板表面に供給し、その基板表面を処理する装置がある。この基板処理装置としては、基板表面からレジスト膜を除去するレジスト除去装置や基板表面を洗浄する洗浄装置などが挙げられる。
【0004】
このような加工装置や基板処理装置でも、近年、加工性能や処理性能の向上を目的に、マイクロバブルやマイクロナノバブル、ナノバブルなどの微小気泡を含む液体が使用されており、その微小気泡を含む液体は送液装置により供給されている。この送液装置としては、前述のようにオリフィス部材などにより液体中に微小気泡を発生させる微小気泡発生装置を備える送液装置が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−182170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、液体を配管に流して送液することを長期間行うと、液体流路の経路中のオリフィス部材やフィルタは、配管内を流れる液体中の異物(例えば微粒汚染物質など)により通過流量の低下や目詰まりを起こすことがある。特に、液浄化装置においては、液体の汚染度が高いため、通過流量の低下や目詰まりの発生頻度が高くなる。これにより、送液性能が低下するため、安定した送液を維持することができなくなってしまう。また、安定した送液を維持するためには、前述の通過流量の低下や目詰まりなどが発生するたびに作業員がオリフィス部材あるいはフィルタを取り外して清掃や交換を行う必要があるため、手間がかかり、作業性が低下してしまう。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、安定した送液を維持することができ、さらに、作業性を向上させることができる送液装置、送液方法、微小気泡発生装置及び異物除去装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る送液装置は、液体が流れる液体流路と、液体流路を流れる液体を通して液体中に微小気泡を発生させる貫通孔を有する微小気泡発生部材とを備え、微小気泡発生部材は、貫通孔の一端の開口であって液体が流入する流入口と、貫通孔の他端の開口であって流入口から流入した液体が流出する流出口とを有しており、少なくとも、流入口と流出口とが入れ替る回転範囲で回転可能に液体流路の経路中に設けられている。
【0009】
本実施形態に係る送液装置は、液体が流れる液体流路と、液体流路を流れる液体を通して液体中から異物を除去するフィルタ部材とを備え、フィルタ部材は、液体が流入する流入面と、流入面から流入した液体が流出する流出面とを有しており、少なくとも、流入面と流出面が入れ替る回転範囲で回転可能に液体流路の経路中に設けられている。
【0010】
本実施形態に係る送液方法は、液体が流れる液体流路と、液体流路を流れる液体を通して液体中に微小気泡を発生させる貫通孔を有する微小気泡発生部材とを備える送液装置を用いて送液を行う送液方法であって、微小気泡発生部材を貫通孔の一端の開口であって液体が流入する流入口と貫通孔の他端の開口であって流入口から流入した液体が流出する流出口とが入れ替るまで回転させ、液体を微小気泡発生部材の流出口から流入させて流入口から流出させる。
【0011】
本実施形態に係る送液方法は、液体が流れる液体流路と、液体流路を流れる液体を通して液体中から異物を除去するフィルタ部材とを備える送液装置を用いて送液を行う送液方法であって、フィルタ部材を液体が流入する流入面と流入面から流入した液体が流出する流出面とが入れ替るまで回転させ、液体をフィルタ部材の流出面から流入させて流入面から流出させる。
【0012】
本実施形態に係る微小気泡発生装置は、液体が流れる内部流路を有する本体と、内部流路を流れる液体を通して液体中に微小気泡を発生させる貫通孔を有する微小気泡発生部材とを備え、微小気泡発生部材は、貫通孔の一端の開口であって液体が流入する流入口と、貫通孔の他端の開口であって流入口から流入した液体が流出する流出口とを有しており、少なくとも、流入口と流出口とが入れ替る回転範囲で回転可能に内部流路内に設けられている。
【0013】
本実施形態に係る異物除去装置は、液体が流れる内部流路を有する本体と、内部流路を流れる液体を通して液体中から異物を除去するフィルタ部材とを備え、フィルタ部材は、液体が流入する流入面と、流入面から流入した液体が流出する流出面とを有しており、少なくとも、流入面と流出面が入れ替る回転範囲で回転可能に内部流路内に設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安定した送液を維持することができ、さらに、作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る送液装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す送液装置が備える微小気泡発生装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る送液装置が備える異物除去装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】図3に示す異物除去装置の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、第1の実施形態に係る送液装置1は、切削などの加工に使用した汚れた液体である切削液を貯留するタンク2と、そのタンク2内の切削液を循環させる液体流路となる配管3と、酸化性ガスなどの気体を供給する気体供給部4と、配管3を流れる切削液中に気体を溶解させる溶解部5と、送液用のポンプ6と、配管3内への異物の侵入を防ぐストレーナ(濾過器)7と、切削液中に微小気泡を発生させる微小気泡発生装置8とを備えている。
【0018】
タンク2は、切削液を貯留する貯留部であり、例えば上端開口の箱形状に形成されており、切削などの加工に使用した切削液が流れ込むように構成されている。例えば、タンク2には、切削などの加工を行う加工機につながる排液管が接続されており、その排液管を介して使用済の切削液が供給される。
【0019】
配管3はタンク2の左端側(図1中)から切削液をくみ上げてタンク2の右端側(図1中)に送液するための循環流路となる。この配管3としては、例えば、パイプやチューブなどが用いられる。
【0020】
気体供給部4は、気体(ガス)が流れる気体供給配管4aにより溶解部5及びポンプ6に接続されており、その溶解部5及びポンプ6に気体供給配管4aを介して気体を供給する。この気体供給部4は、開閉弁などを有しており、開閉弁の駆動により気体供給の開始や終了を行うことが可能に形成されている。なお、気体としては、例えば、酸素(O)やオゾン(O)などの酸化性ガスが用いられるが、それ以外にも窒素(N)などの不活性ガスが用いられることもある。
【0021】
気体供給配管4aは途中で二本に分岐され、その二本が個別に溶解部5及びポンプ6に接続されている。分岐後の二本の気体供給配管4aには、気体供給部4から供給される気体の圧力を調整可能とするエアレギュレータ4bや流量を調整可能とする絞り弁4cがそれぞれ設けられている。溶解部5につながる気体供給配管4aを流れる気体の圧力や流量は、所望量の気体が液体中に溶存するようにあらかじめ設定されている。また、ポンプ6につながる気体供給配管4aを流れる気体の圧力や流量も、ポンプ6が所望の送液力を得るようにあらかじめ設定されている。
【0022】
溶解部5は、配管3の途中に設けられており、その内部を通過する切削液中に、気体供給部4により気体供給配管4aを介して供給された気体を溶解させる。この溶解部5としては、例えば、T字管やアスピレータなどが用いられるが、液体中に気体を溶解させることが可能な構造であれば良く、その構造は特に限定されるものではない。なお、溶解部5としてアスピレータを用いた場合には、他の装置を用いた場合に比べ、ベンチュリ効果により切削液に対する気体の溶解量を増加させることができる。
【0023】
ポンプ6は、配管3の途中であって溶解部5より下流側(液体の進行方向の下流側)に設けられており、気体供給部4により気体供給配管4aを介して供給された気体により駆動し、タンク2内の切削液をタンク2内の左端側から右端側の微小気泡発生装置8に送液する駆動源である。このポンプ6は、タンク2内の切削液を配管3に流して自身の位置まで吸い上げ、吸い上げた切削液を自身の位置から加圧してタンク2内の微小気泡発生装置8に供給する。したがって、配管3においてポンプ6より下流側は加圧ラインとなる。なお、ポンプ6としては、例えば、エア駆動ポンプが用いられているが、それ以外にも電動ポンプなどが用いられても良い。
【0024】
ここで、配管3においてポンプ6より下流側は加圧ラインとなるため、ポンプ6より上流側に溶解部5が設けられている。これは、加圧前の切削液に対して気体を供給した方が、その気体が切削液に溶け込みやすいためである。ただし、切削液に対する気体溶解量が減少しても問題がない場合には、溶解部5とポンプ6の順番を逆にしても良い。
【0025】
ストレーナ7は、配管3の一端である左端(図1中)である一端に接続されてタンク2内に設けられており、タンク2内の切削液から配管3内への異物の侵入を防ぐ濾過器である。このストレーナ7としては、例えば、金属板に多数の穴を開けたパンチングメタルや金属線を編み込んだ金網などが用いられる。なお、ストレーナ7は機器の保護を目的として異物を除去するものである。
【0026】
微小気泡発生装置8は、配管3においてポンプ6より下流側(液体の進行方向の下流側)、すなわち配管3の一端である右端(図1中)に接続されてタンク2内に設けられており、配管3から供給された切削液中に微小気泡を発生させ、その微小気泡を切削液と共にタンク2内の切削液中に放出する。
【0027】
なお、微小気泡は、マイクロバブル(MB)やマイクロナノバブル(MNB)、ナノバブル(NB)などの概念を含む気泡である。例えば、マイクロバブルは10μm〜数十μmの直径を有する気泡であり、マイクロナノバブルは数百nm〜10μmの直径を有する気泡であり、ナノバブルは数百nm以下の直径を有する気泡である。
【0028】
図2に示すように、微小気泡発生装置8は、液体流路となる内部流路11aを有する本体11と、内部流路11aを流れる切削液中に微小気泡を発生させる微小気泡発生部材12と、その微小気泡発生部材12を内蔵して回転可能なボール状の弁体13と、その弁体13を両側から挟み込む一対のシートリング(ボールシート)14と、その弁体13に連結した回転軸となるステム15と、そのステム15と本体11との間をシールするシール部材16と、ステム15を回転させる操作を受け付けるハンドル17とを備えている。
【0029】
本体11は、ボディ11bとボディキャップ11cとにより構成されており、それらボディ11bとボディキャップ11cが一体化されて形成されている。内部流路11aは本体11を貫通する液体流路であり、その内部流路11aの一端に配管3が接続される。切削液は、内部流路11aの一端からその内部に流入し、内部流路11aを通過して内部流路11aの他端から流出する。なお、本体11、すなわち微小気泡発生装置8は配管3の両端部の一方に設けられているが、これに限るものではなく、配管3の途中に設けられても良い。
【0030】
微小気泡発生部材12は、切削液中に微小気泡を発生させる一つ(この数は限定されない)の貫通孔12aを有するオリフィス部材であり、弁体13の内部に設けられている。この微小気泡発生部材12は、貫通孔12aの一端の開口であって切削液が流入する流入口H1と、貫通孔12aの他端の開口であって流入口H1から流入して貫通孔12aを通過した切削液が流出する流出口H2とを有しており、その貫通孔12aを通過する切削液中の溶存気体を減圧して開放し、その切削液中に多量の微小気泡を発生させる。
【0031】
貫通孔12aの直径は、例えば3mm程度であり、減圧開放により微小気泡を発生させることが可能な大きさに設計されている。したがって、切削液が微小気泡発生部材12の貫通孔12aを通過すると、切削液中の溶存気体が減圧開放されてその切削液中に多量の微小気泡が発生することになる。
【0032】
なお、本実施形態において微小気泡発生部材12としては、前述のオリフィス部材以外にも、例えば、ベンチュリ管(貫通孔12aがベンチュリ構造である)などを用いることが可能であるが、液体中に微小気泡を発生させることが可能な構造であれば良く、その構造は特に限定されるものではない。
【0033】
弁体13は、本体11の内部流路11aにつながる貫通孔13aを有しており、その貫通孔13a内に微小気泡発生部材12を内蔵している。この弁体13は本体11の内部流路11a内に回転可能に設けられており、貫通孔13aを開閉可能に形成されている。弁体13はステム15に連結されており、そのステム15につながるハンドル17が作業員により操作されると、ステム15が回転し、このステム15の回転により弁体13も回転する。
【0034】
この弁体13の回転範囲は、微小気泡発生部材12の流入口H1と流出口H2とが入れ替る回転範囲である。この回転範囲は、内部流路11aや貫通孔13aの経によって変わるが、例えば、本実施形態の場合、弁体13内の微小気泡発生部材12の貫通孔12aと本体11の内部流路11aとが平行である場合(図2に示す状態)の回転角度を0(ゼロ)度とすると、回転角度が90度より大きく270度未満の範囲であり、好ましくは、180度以上から270度未満の範囲である。なお、弁体13が90度回転した場合、本体11の内部流路11aは閉状態となり、さらに、弁体13が0度あるいは180度回転した場合、本体11の内部流路11aは完全な開状態になる。
【0035】
ここで、弁体13が180度回転した場合には、微小気泡発生部材12の流入口H1と流出口H2とが反転して完全に入れ替り、流入口H1が流出口として機能し、流出口H2が流入口として機能する。また、例えば、弁体13が135度回転した場合でも、微小気泡発生部材12の流入口H1と流出口H2とは入れ替わっており、流入口H1が流出口として機能し、流出口H2が流入口として機能する。すなわち、弁体13の回転範囲は、回転により流入口H1が流出口として機能し、流出口H2が流入口として機能し、さらに、回転により流入口H1が元通り流入口として機能し、流出口H2が元通り流出口として機能する範囲である。ただし、これは少なくともこの範囲で弁体13が回転できるという意味であって、この範囲以上に弁体13が回転できないという意味ではなく、例えば、弁体13は360度回転可能であっても良い。また、回転は一方向、双方向のいずれであっても構わない。
【0036】
シートリング14は、例えばボールシートと呼ばれる環状の部材であり、二つのシートリング14がボール状の弁体13を両側から挟み込むように設けられている。また、ステム15は、弁体13の上部に連結されており、本体11に回転可能に設けられている。シール部材16は、パッキンなどの部材であり、ステム15と本体11のボディ11bとの間をステム15の回転が可能にシールする。ハンドル17はナットなどの締結部材17aによりステム15に固定されている。なお、シートリング14やシール部材16は、例えば、樹脂などの材料により形成されている。
【0037】
次に、前述の送液装置1の送液動作(送液方法)について説明する。
【0038】
まず、気体が所定の圧力及び流量で気体供給部4から気体供給配管4aを介して溶解部5及びポンプ6に供給される。この気体供給によりポンプ6が駆動すると、タンク2内の切削液がストレーナ7を介して配管3内に流入し、その配管3内を流れて溶解部5に流入する。溶解部5はその内部を通過する切削液中に、気体供給部4により供給された気体を溶解させる。その後、溶存気体を含む切削液が配管3内を流れてポンプ6を通過して、タンク2内の微小気泡発生装置8に流入する。
【0039】
微小気泡発生装置8に流入した切削液は、その微小気泡発生装置8内の内部流路11aを流れ、その内部流路11aに連通する貫通孔12aを通過する。切削液は流入口H1から貫通孔12a内に流れ込み、その貫通孔12a内を通過して流出口H2から流れ出す。このとき、切削液中の溶存気体は減圧されてから開放され、切削液中に多量(多数)の微小気泡が生成され、この多量の微小気泡を含む切削液が微小気泡発生装置8からタンク2内の切削液中に放出される。
【0040】
タンク2内の切削液は配管3及び微小気泡発生装置8内の液体流路を循環するため、タンク2内の切削液中に大量の微小気泡が発生した状態が保たれる。これにより、タンク2内の切削液中の溶存酸素量が高まるので、切削液中の腐敗臭の原因となる嫌気性バクテリアを死滅させて切削液を浄化することができる。このタンク2内の切削液は、加工装置が加工を行う場合、タンク2内に接続された他の配管あるいは配管3の途中に接続された配管(図示せず)などにより加工装置に供給される。
【0041】
なお、微小気泡の発生を停止する場合には、作業員によりハンドル17が操作され、弁体13が0度から90度まで回転する。これにより、切削液の流れが止められ、タンク2内の切削液中の微小気泡は時間と共に減少していく。また、微小気泡の発生を再開する場合には、作業員によりハンドル17が操作され、弁体13が90度から元の0度まで回転する。これにより、切削液の流れが再開され、タンク2内の切削液中の微小気泡は時間と共に増加していく。
【0042】
ここで、前述の微小気泡発生部材12は配管3内を流れる切削液中の異物(例えば微粒汚染物質など)により通過流量の低下や目詰まりを起こすことがある。そこで、通過流量の低下や目詰まりを起こした場合、あるいは、通過流量の低下や目詰まりを起こす前に定期的に、ハンドル17が作業員により操作され、弁体13が0度から180度まで回転する。
【0043】
これにより、微小気泡発生部材12の流入口H1と流出口H2とが入れ替る。この状態では、流入口H1が流出口として機能し、流出口H2が流入口として機能し、切削液は流出口H2から貫通孔12a内に流入し、その貫通孔12aを通過して流入口H1から流出する。これにより、流入口H1を塞いでいた異物や流入口H1を狭くしていた異物などは、流出口H2から流入した切削液の水流により取り除かれ、切削液と共に流れていく。
【0044】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、微小気泡発生部材12は、貫通孔12aの一端の開口であって液体が流入する流入口H1と、貫通孔12aの他端の開口であって流入口H1から流入した液体が流出する流出口H2とを有しており、流入口H1と流出口H2とが入れ替る回転範囲で回転可能に液体流路の経路中に設けられている。これにより、微小気泡発生部材12が流入口H1と流出口H2とが入れ替るまで回転すると、液体は流出口H2から流入して流入口H1から流出することになる。このとき、流入口H1を塞いでいた異物や流入口H1を狭くしていた異物などは流出口H2から流入した切削液と共に流れて取り除かれる。このようにして、微小気泡発生部材12における通過流量の低下や目詰まりを抑止あるいは解消することが可能となり、安定した送液を維持することができる。さらに、安定した送液を維持するため、前述の通過流量の低下や目詰まりなどが発生するたびに作業員が微小気泡発生部材12を取り外して清掃や交換を行う作業が不要となるので、作業性を向上させることができる。
【0045】
なお、弁体13の回転、すなわち微小気泡発生部材12の回転は、作業員がハンドル17を回転させる操作により行われているが、これに限るものではなく、ステム15を回転させるモータなどの駆動源やその駆動源を制御する制御部を設け、制御部により駆動源を制御し、所定のタイミングで微小気泡発生部材12を回転させるようにしても良い。この場合には、作業員はハンドル17を操作する必要が無くなるため、より作業性を向上させることができる。ここで、所定のタイミング例としては、タイマーを用いて予め設定した時間間隔で微小気泡発生部材12を定期的に回転させることや、配管3における微小気泡発生部材12より下流側位置での流量を計測器を用いて計測し、その計測値が予め設定した許容値より下回ったときをタイミングとすることなどを挙げることができる。
【0046】
また、微小気泡発生装置8を配管3の途中に設け、タンク2外に配置するようにしても良い。これにより、微小気泡発生装置8がタンク2内にある場合に比べ、作業員がハンドル17を操作しやすくなるので、より作業性を向上させることができる。あるいは、微小気泡発生装置8のステム15を伸ばしてハンドル17をタンク2内の切削液外に位置付けるようにしても良い。この場合にも、作業員がハンドル17を操作しやすくなるので、より作業性を向上させることができる。
【0047】
また、ポンプ6の出力を制御する制御部、さらに、微小気泡発生部材12における流入口H1と流出口H2とが入れ替わったことを検知する検知部を設け、その検知部により流入口H1と流出口H2とが入れ替わったことを検知した場合、制御部によりポンプ6を制御してポンプ6による加圧力を高め、微小気泡発生部材12の貫通孔12aを通過する切削液の流速を高めるようにしても良い。この場合には、より確実な異物除去を実現することができる。なお、検知部としては、例えば微小気泡発生部材12が180度回転するとオン状態となるスイッチなどを用いることが可能である。
【0048】
また、微小気泡発生部材12としてベンチュリ管(貫通孔12aがベンチュリ構造である)などのように、貫通孔12aを通過する液体の流れ方向が一方向に決まっているものを用いた場合には、微小気泡発生部材12を回転させて貫通孔12aを清掃した後、再度、回転させて元の位置に戻す必要がある。一方、前述のオリフィス部材のように、貫通孔12aを通過する液体の流れ方向が一方向に決まっていないものを用いた場合には、回転した微小気泡発生部材12を元に位置に戻すことなく、微小気泡を発生させることが可能であるため、元の位置に戻す作業が不要となり、より作業性を向上させることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図3及び図4を参照して説明する。
【0050】
第2の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0051】
図3に示すように、第2の実施形態に係る異物除去装置21は、基本的に第1の実施形態に係る微小気泡発生装置8(図2参照)と同じであるが、微小気泡発生装置8の微小気泡発生部材12に替えて、内部流路11aを流れる処理液中から異物を除去するフィルタ部材22を備えている。この異物除去装置21が微小気泡発生装置8に替えて配管3の端部あるいは途中に設けられている。
【0052】
フィルタ部材22は、弁体13の貫通孔13a内に設けられおり、切削液が流入する流入面M1と、流入面M1から流入してフィルタ部材22の内部を通過した切削液が流出する流出面M2とを有している。このフィルタ部材22としては、例えば、網目状のフィルタや繊維系のフィルタなどの様々なフィルタが用いられる。
【0053】
弁体13は、フィルタ部材22の流入面M1と流出面M2とが入れ替る回転範囲で回転可能に形成されている。この回転範囲は、内部流路11aや貫通孔13aの経によって変わるが、例えば、本実施形態の場合、弁体13内のフィルタ部材22の流入面M1と本体11の内部流路11aとが直交する場合(図3に示す状態)の回転角度を0(ゼロ)度とすると、回転角度が90度より大きく270度未満の範囲であり、好ましくは、180度以上から270度未満の範囲である。なお、弁体13が90度回転した場合、本体11の内部流路11aは閉状態となり、さらに、弁体13が0度あるいは180度回転した場合、本体11の内部流路11aは完全な開状態となる。
【0054】
ここで、弁体13が180度回転した場合には、フィルタ部材22の流入面M1と流出面M2とが反転して完全に入れ替り、流入面M1が流出面として機能し、流出面M2が流入面として機能する。また、例えば、弁体13が135度回転した場合でも、フィルタ部材22の流入面M1と流出面M2とは入れ替わっており、流入面M1が流出面として機能し、流出面M2が流入面として機能する。すなわち、弁体13の回転範囲は、回転により流入面M1が流出面として機能し、流出面M2が流入面として機能し、さらに、回転により流入面M1が元通り流入面として機能し、流出面M2が元通り流出面として機能する範囲である。なお、これは少なくともこの範囲で弁体13が回転できるという意味であって、この範囲以上に弁体13が回転できないという意味ではないことや、回転は一方向、双方向のいずれであっても構わないことは、第1の実施形態と同様である。
【0055】
このような異物除去装置21に流入した切削液は、その異物除去装置21内の内部流路11aを流れ、その内部流路11a内のフィルタ部材22を通過する。切削液は流入面M1からフィルタ部材22の内部に流れ込み、そのフィルタ部材22の内部を通過して流出面M2から流れ出す。このとき、切削液中の異物はフィルタ部材22により除去される。
【0056】
タンク2内の切削液は配管3及び異物除去装置21内の液体流路を循環するため、タンク2内の切削液中から異物が除去され、切削液は時間と共に浄化されることになる。このタンク2内の切削液は、加工装置が加工を行う場合、タンク2内に接続された他の配管あるいは配管3の途中に接続された配管(図示せず)などにより加工装置に供給される。
【0057】
なお、切削液の浄化を停止する場合には、作業員によりハンドル17が操作され、弁体13が0度から90度まで回転する。これにより、弁体13により切削液の流れが止められ、浄化が中断される。また、切削液の浄化を再開する場合には、作業員によりハンドル17が操作され、弁体13が90度から元の0度まで回転する。これにより、切削液の流れが再開され、タンク2内の切削液は時間と共にきれいになっていく。
【0058】
ここで、前述のフィルタ部材22は配管3内を流れる切削液中の異物(例えば微粒汚染物質など)により通過流量の低下や目詰まりを起こすことがある。そこで、通過流量の低下や目詰まりを起こした場合、あるいは、通過流量の低下や目詰まりを起こす前に定期的に、異物除去装置21のハンドル17が作業員により操作され、弁体13が0度から180度まで回転する。
【0059】
これにより、フィルタ部材22の流入面M1と流出面M2とが入れ替る。この状態では、流入面M1が流出面として機能し、流出面M2が流入面として機能し、切削液は流出面M2からフィルタ部材22の内部に流入し、その内部を通過して流入面M1から流出する。これにより、フィルタ部材22の流入面M1側の内部やその流入面M1に存在する異物などは、流出面M2から流入した切削液の水流により取り除かれ、切削液と共に流れていく。
【0060】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、フィルタ部材22が、液体が流入する流入面M1と、流入面M1から流入した液体が流出する流出面M2とを有しており、流入面M1と流出面M2とが入れ替る回転範囲で回転可能に液体流路の経路中に設けられている。これにより、フィルタ部材22が流入面M1と流出面M2とが入れ替るまで回転すると、液体は流出面M2から流入して流入面M1から流出することになる。このとき、流入面M1に付着した異物などは流出面M2から流入した切削液と共に流れて取り除かれる。このようにして、フィルタ部材22における通過流量の低下や目詰まりを抑止あるいは解消すること可能となり、安定した送液を維持することができる。さらに、安定した送液を維持するため、前述の通過流量の低下や目詰まりなどが発生するたびに作業員がフィルタ部材22を取り外して清掃や交換を行う作業が不要となるので、作業性を向上させることができる。
【0061】
なお、フィルタ部材22のフィルタ機能を実現するため、フィルタ部材22を通過する液体の流れ方向が一方向に決まっているフィルタを用いた場合には、フィルタ部材22を回転させて清掃した後、再度、回転させて元の位置に戻す必要がある。一方、液体の流れ方向が一方向に決まっていないフィルタを用いた場合には、回転したフィルタ部材22を元に位置に戻すことなく、異物除去を行うことが可能であるため、元の位置に戻す作業が不要となり、より作業性を向上させることができる。
【0062】
また、フィルタ部材22としては、図4に示すように、複数の貫通孔22aを有する多孔質なフィルタ部材22を用いるようにしても良い。なお、貫通孔22aの直径は、例えば1mm程度であり、異物を除去することが可能な大きさに設計されている。このフィルタ部材22も、前述と同様に、流入面M1と流出面M2とが入れ替る回転範囲で回転可能に液体流路の経路中に設けられており、前述と同様な効果を得ることができる。なお、多孔質なフィルタ部材22としては、金属板の全体に多数の貫通孔22aが形成されたフィルタ部材などが用いられるが、これに限るものではなく、例えば、セラミックフィルタなどを用いるようにしても良い。
【0063】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0064】
前述の実施形態においては、微小気泡発生部材12あるいはフィルタ部材22を弁体13の内部に前述の回転範囲で回転可能に設けているが、これに限るものではなく、例えば、配管3の途中に前述の回転範囲で回転可能に設けても良く、要は液体流路の経路中に設けるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0065】
1 送液装置
3 配管(液体流路)
8 微小気泡発生装置
11 本体
11a 内部流路(液体流路)
12 微小気泡発生部材
12a 貫通孔
21 異物除去装置
22 フィルタ部材
H1 流入口
H2 流出口
M1 流入面
M2 流出面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる液体流路と、
前記液体流路を流れる液体を通して前記液体中に微小気泡を発生させる貫通孔を有する微小気泡発生部材と、
を備え、
前記微小気泡発生部材は、前記貫通孔の一端の開口であって前記液体が流入する流入口と、前記貫通孔の他端の開口であって前記流入口から流入した前記液体が流出する流出口とを有しており、少なくとも、前記流入口と前記流出口とが入れ替る回転範囲で回転可能に前記液体流路の経路中に設けられていることを特徴とする送液装置。
【請求項2】
液体が流れる液体流路と、
前記液体流路を流れる液体を通して前記液体中から異物を除去するフィルタ部材と、
を備え、
前記フィルタ部材は、前記液体が流入する流入面と、前記流入面から流入した前記液体が流出する流出面とを有しており、少なくとも、前記流入面と前記流出面が入れ替る回転範囲で回転可能に前記液体流路の経路中に設けられていることを特徴とする送液装置。
【請求項3】
液体が流れる液体流路と、前記液体流路を流れる液体を通して前記液体中に微小気泡を発生させる貫通孔を有する微小気泡発生部材とを備える送液装置を用いて送液を行う送液方法であって、
前記微小気泡発生部材を前記貫通孔の一端の開口であって前記液体が流入する流入口と前記貫通孔の他端の開口であって前記流入口から流入した前記液体が流出する流出口とが入れ替るまで回転させ、前記液体を前記微小気泡発生部材の前記流出口から流入させて前記流入口から流出させることを特徴とする送液方法。
【請求項4】
液体が流れる液体流路と、前記液体流路を流れる液体を通して前記液体中から異物を除去するフィルタ部材とを備える送液装置を用いて送液を行う送液方法であって、
前記フィルタ部材を前記液体が流入する流入面と前記流入面から流入した前記液体が流出する流出面とが入れ替るまで回転させ、前記液体を前記フィルタ部材の前記流出面から流入させて前記流入面から流出させることを特徴とする送液方法。
【請求項5】
液体が流れる内部流路を有する本体と、
前記内部流路を流れる液体を通して前記液体中に微小気泡を発生させる貫通孔を有する微小気泡発生部材と、
を備え、
前記微小気泡発生部材は、前記貫通孔の一端の開口であって前記液体が流入する流入口と、前記貫通孔の他端の開口であって前記流入口から流入した前記液体が流出する流出口とを有しており、少なくとも、前記流入口と前記流出口とが入れ替る回転範囲で回転可能に前記内部流路内に設けられていることを特徴とする微小気泡発生装置。
【請求項6】
液体が流れる内部流路を有する本体と、
前記内部流路を流れる液体を通して前記液体中から異物を除去するフィルタ部材と、
を備え、
前記フィルタ部材は、前記液体が流入する流入面と、前記流入面から流入した前記液体が流出する流出面とを有しており、少なくとも、前記流入面と前記流出面が入れ替る回転範囲で回転可能に前記内部流路内に設けられていることを特徴とする異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−200707(P2012−200707A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69698(P2011−69698)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】