説明

送配電線路の故障区間標定方法および同標定装置

【課題】片端抵抗接地系統以外の両端抵抗接地系統や両端電源系統、ループ系統でも標定
し、故障区間検出器からの方向も標定する。
【解決手段】送配電線路の鉄塔2、2a…に「鉄塔番号」を付与し、3相の各相電線に夫々
対向する非接触の電界磁界センサを鉄塔に設けると共に、電界磁界センサの検出信号を演
算し故障区間を標定する故障区間検出器FSを鉄塔2、2a…に設け、零相電圧、零相電流
、正相電流、逆相電流を算定し、各種位相を比較し、「鉄塔番号」と方向を示す「若番側
」または「老番側」で標定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空電線路における地絡故障や短絡故障の発生個所を標定する送配電線路の
故障区間標定方法および同標定装置に関し、特に片端抵抗接地系統の他、両端抵抗接地系
統、ループ系統でも故障点(故障区間検出器からの方向)を標定する送配電線路の故障区
間標定方法および同標定装置に関する
【0002】
従来、配電線路で故障が発生した時の電界と磁界の現象を上記配電線路をなす配電線に
非接触で検出する電界と磁界を複合させた電界磁界センサを、供給側電気所片端接地系架
空配電線路の任意かつ複数の電柱に二個ずつ配置するとともに、いずれかの電柱において
上記二個の電界磁界センサの磁界部の出力のいずれか一方もしくは双方が所定値以上に増
加したことを検出した時に、該電柱よりも上記供給側電気所からの電力供給方向先となる
需要側で上記供給側電気所片端接地系架空配電線路に短絡故障が発生したことを標定する
配電線路故障方向標定方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
詳細は後述するが、上記の標定方法では、片端抵抗接地系線路での故障区間標定は可能
であるが、両端抵抗接地系統、両端電源系統、ループ系統の線路における故障区間の標定
は困難又は不可能であった。
【0004】
〔送電系統および定義の説明〕
図1に示す様に、従来の故障区間検出器FSは、送電系統(本件出願では配電系統を含
む)の鉄塔、鉄柱等の任意箇所に設置されており、故障区間検出器FSからみて、電源容
量の大きな方向側、又は中性点電流(故障時に中性点に接続された抵抗NGRに流れる電
流)の大きな方向側を『電源側』(特許文献1の『供給側』に相当する)と、その反対方
向側を『負荷側』(特許文献1の『需要側』に相当する)と定義している。
図示のものでは、α変電所(図中、左側)が上位系統に接続されると共に、β変電所(
図中、右側)が下位系統に接続され、α変電所は三相交流のY結線の接続点(中性点)が
抵抗NGRを介して抵抗接地され、α変電所とβ変電所の間の送電線(送電系統)に複数
の故障区間検出器FS(図示のものでは、FS:A、FS:Bの2個)が設けられ、故障
区間検出器FSからみて、電源容量の大きな上位系統に接続されたα変電所の方向が『電
源側』で、β変電所の方向が『負荷側』である。
又、中性点電流の観点で言い換えると、故障時に流出する故障電流a、a’が大きな方
向であるα変電所の方向が『電源側』、故障電流a、a’が小さい、又は流出しない方向
であるβ変電所の方向が『負荷側』である。
尚、文中では、故障電流a、a’は流出の他、流れ込み、通過等で説明しており、その
関係は、変電所から流出した故障電流a、a’が故障区間検出器FSに流れ込んで通過す
る関係である。
【0005】
〔標定可能事例〕
図1に示す様な片端抵抗接地の送電系統において、送電線故障(地絡故障)が発生した
場合、故障点によっては故障電流が故障区間検出器FSを通過する場合としない場合があ
り、図2に示す様に、2個の故障区間検出器FS:AとFS:Bの間(C点)で地絡故障
bが発生し、故障区間検出器FS:Aは、故障電流aが通過したことを検出して、故障方
向は「負荷側」と標定し、故障区間検出器FS:Bは、故障電流が通過しないことにより
、故障方向は「電源側」と標定又は不動作となる。
尚、故障区間検出器FS:Bで「電源側」と標定するには、故障発生時の故障除去に伴
う送電系統の停電を、故障区間検出器FSに装備されている停電検出回路を用いて検出す
ることが必要である。
【0006】
〔標定不可能事例〕
上記の標定に際して、故障電流a、a’が通過したか否かの判断は、送電系統に合わせ
て予め設定されたしきい値(特許文献1の所定値に相当する)を超える大きさの電流が流
れたか否かのみで判断している。
つまり、従来の故障区間検出器FSは故障電流a、a’を大きさのみで検出するような
電流通過表示器の様なものであり、両端接地系統や両端電源系統(図3)、ループ系統(
図4)への適用は困難又は不可であった。
具体的には、図3に示す様に、α変電所とβ変電所が共に抵抗接地された両端接地系統
や、α変電所が交流主電源に接続されると共に、β変電所が大きな発電所(電源容量は交
流主電源>大きな発電所)に接続された両端電源系統(両端接地系統と両端電源系統は大
半が一致)では、α変電所とβ変電所のどちら側からも(両方向から)同じ様な大きさの
故障電流a、a’が流出する場合があり、どこで地絡故障bが故障発生しても故障方向は
「負荷側」と標定する。
又、図4に示す様に、α変電所が抵抗接地されると共に、α変電所からの送電系統がλ
変電所を介してループ状となっているループ系統では、故障区間検出器FS:Aではα変
電所から直接流出した故障電流aが流れると共に、故障区間検出器FS:Bではλ変電所
を経由してα変電所から流出した故障電流a’が流れ、故障区間検出器FS:A、FS:
Bは共に故障方向は「負荷側」と標定する。
従って、両端接地系統や両端電源系統、ループ系統では電流通過表示器の様な故障区間
検出器では、故障点によっては、誤標定となったり、標定不可であった。
【0007】
〔系統切替の問題〕
又、標定結果は故障区間検出器FSからみて「電源側」、「負荷側」のみであることか
ら、季節や時間、又は工事等の関係で『電源側』(基本的には中性点電流の大きな方向)
が切り替わる(後述の水力発電所の場合などを除き、潮流も切り替わる)可能性がある送
電系統での故障時には、『電源側』が故障区間検出器FSからみて、どちらの方向である
かを確認する必要が生ずる。
具体的には、図5に示す例は、故障区間検出器FSからみて故障方向が相違しても、故
障区間検出器FSはどちらも「負荷側」と標定する例を示しており、(a)の場合には、
α変電所が上位系統に接続されると共に、β変電所が下位系統に接続され、故障区間検出
器FSとβ変電所の間で故障発生した時に「負荷側」と標定し、(b)の場合には、α変
電所が下位系統に接続されると共に、β変電所が上位系統に接続され、故障区間検出器F
Sとα変電所の間で故障発生した時に「負荷側」と標定する。
よって、同じ「負荷側」標定でも、故障時の送電系統がどちら(図中(a)か(b))
であるかによって、故障区間検出器FSが示す故障区間(方向)が変わることとなり(「
電源側」標定も同様)、送電系統における『電源側』を確認する必要がある。
【0008】
又、故障時の『電源側』の確認に際して、次の様な問題点も存在する。
一般的に『電源側』方向の情報は系統運用部門が管理しており、故障区間検出器FSを
運用している保守担当部門へはその情報を逐一連絡していないことから、故障発生時には
『電源側』方向の情報を保守担当部門から系統運用部門へ早急に問合、確認を行うことが
必ず必要となる。
しかしながら、集中的な雷雨等で送電線故障が連続して発生した場合や、短時間のうち
に複数箇所で送電線故障が発生した場合などには、系統運用部門は本来の業務に忙殺され
てしまうことで、保守担当部門からの確認に支障が生じ、効率的な巡視(故障箇所の確認
作業)を行うことができなくなる可能性がある。
【0009】
〔系統誤認の問題〕
その他にも、故障区間検出器FSにおける『電源側』は、図1に関連して説明した様に
、電源容量の大きな方向側と定義されているが、送電線故障は稀にしか発生しないことか
ら、保守担当者によっては潮流が流れる元を『電源側』と一時的に勘違いする場合もあっ
た。
例えば、図6に示す様に、山間部などで故障区間検出器FSの『負荷側』に水力発電所
群(β1〜3水力発電所)のみしかない様な送電系統では、交流主電源に接続された電源
容量の大きなα変電所が本来は『電源側』であるが、常時の潮流が水力発電所群からの流
れとなっている為、潮流の発生元で本来は『負荷側』の水力発電所群側を『電源側』と間
違えて、間違った方向に巡視を行う可能性もあった。
【0010】
【特許文献1】特開2001−116792
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、片端抵抗接地系統以外の両端抵抗接地系統や両端電源系統、ループ系統でも標
定し、故障区間検出器からの方向も標定する様にした送配電線路の故障区間標定方法およ
び同標定装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、鋭意検討した結果、各鉄塔に付与されている鉄塔番号すると共に、3相の
位相を角度変換したベクトル図から鉄塔からの方向を特定すれば、故障点の正しい標定が
出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、上記従来技術に基づく、片端抵抗接地系統以外の送電系統で標定が困
難であったり、『電源側』の確認に問題が存在していた課題に鑑み、送配電線路の鉄塔に
「鉄塔番号」を付与し、3相の各相電線に夫々対向する非接触の電界磁界センサを鉄塔に
設けると共に、電界磁界センサの検出信号を演算し故障区間を標定する故障区間検出器F
Sを鉄塔に設け、零相電圧、零相電流、正相電流、逆相電流を算定し、各種位相を比較し
、「鉄塔番号」と方向を示す「若番側」または「老番側」で標定することによって、上記
課題を解決する。
【発明の効果】
【0014】
要するに本発明は、「鉄塔番号」、「若番側」あるいは「老番側」で標定する様にした
ので、「電源側」、「潮流」等の確認が不要で、かつ勘違いも発生しなくなり、早急なる
故障区間の標定で、故障後の巡視を迅速に、かつ効率的に開始することが可能となったり
、零相、正相、逆相の活用、比較基準位相の設定、位相の比較により、両端接地系統、ル
ープ系統でも標定することが出来る。
【0015】
標定動作条件の設定により、各種検出値の常時監視が不要で、特定種類の監視だけで良
く、電気回路を単純化したり、安定運用をすることが出来る。
【0016】
比較基準位相として電圧位相も使用することにより、潮流が無く電流を検出できなくて
も、標定することが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図7は送電系統に多数本の鉄塔(本件出願では、鉄柱その他の送電線支持物を含む)が
配置された状況を示す概略図であり、α変電所(図面ではα変)とβ変電所(図面ではβ
変)の間に送電線1が設けられると共に、該送電線1(本件出願では、配電線を含む)を
多数本の鉄塔2、2a…で架設(架空設置)し、更に、No.5の鉄塔2dに故障区間検出器
FSが設置された状況を示している。
図8は鉄塔2、2a…に故障区間検出器FSを設置した状態を示す図であり、鉄塔2、2a
…に2回線の送電線1を架設支持すると共に、夫々の送電線1は交流3相の各相電線3a、
3b、3cから成り、該各相電線3a、3b、3cに対向状態で電界磁界センサ4a、4b、4cを非接触
で配置し、3個の電界磁界センサ4a、4b、4cの信号を受信、演算、判定する故障区間検出
器FSを設けている。
図9はα変電所とβ変電所の間に設けられた2個の故障区間検出器FS:A、FS:B
の間のC点で地絡故障5が発生し、故障電流6、6aが送電線1から大地を通りα、β変電
所の中性点抵抗NGRに流れる様相を示している。
図10〜14は健全時および地絡故障時の電圧、電流のベクトル図である。
図15はα変電所とβ変電所の間に設けられた2個の故障区間検出器FS:A、FS:
Bの間のC点で、a相(各相電線3a)とb相(各相電線3b)で短絡故障7が発生し、故障
故障電流8、8aが各相電線3a、3bに流れる様相を示している。
図16〜17は短絡故障時の短絡電流のベクトル図、図18は正相、逆相変換を示すベ
クトル図、図19〜22は短絡故障時の正相電流のベクトル図、図23〜25は短絡故障
時の逆相電流のベクトル図、図26は2回線間の短絡故障時の正相電流のベクトル図であ
る。
図27は地絡故障時のベルトル図、図28は電気回路のブロック図である。
【0018】
次に本発明に係る送配電線路の故障区間標定方法について説明するが、先ず、全体的な
標定方法の概略を説明し、その後に、詳細な標定方法について説明する。
標定結果から説明すると、故障点を標定する故障区間検出器FSを設けた鉄塔の「鉄塔
番号」と、故障区間検出器FS(鉄塔)からの方向を示す「若番側」または「老番側」で
故障区間を標定する。
「若番側」または「老番側」の標定は、交流3相の零相、正相、逆相の電圧、電流のベ
クトルの合成(正弦波交流の合成)、位相比較などから標定し、1相地絡故障の場合は、
零相電圧と零相電流の合成ベクトル(合成波形)の位相比較で標定し、2、3相短絡故障
の場合は、正相電流または逆相電流の合成ベクトルの位相が比較基準位相に比較して、遅
れ位相か進み位相か、或いは、所定範囲内か範囲外か、で標定する。
尚、本件出願の説明では、位相をベクトルで説明しているが、運用上では、位相検出、
各相算定、位相比較などは、位相を時間(タイミング)で検出したり、時間的なずれを位
相差や位相角などで運用する。
【0019】
標定結果に使用する故障区間検出器FSからみた方向を示す「若番側」、「老番側」等
について説明する。
図7に示す様に、送配電線路には多数(図示の例では、α変電所とβ変電所の間に10
本)の鉄塔2、2a…が設けられると共に、各鉄塔2、2a…には「鉄塔番号」が付与されて
おり、一部または全部の鉄塔2、2a…(図示のものではNo.5の鉄塔2d)に故障区間検
出器FSが設置され、故障区間検出器FSからみて、小さい鉄塔番号側の方向を「若番側
」、大きい鉄塔番号側の方向を「老番側」としている。
送電線1において故障が発生した場合の標定時に、従来の「電源側」、「負荷側」を使
用せず、故障区間検出器FSが、「(故障区間検出器FSが設置された)鉄塔番号」と(
故障区間検出器FSからみた方向を示す)「若番側」あるいは「老番側」で標定する。
【0020】
故障区間検出器FSが故障方向を「若番側」、「老番側」と標定する為に、故障時に現
れる電圧Va、Vb、Vcと電流Ia、Ib、Icの大きさや位相を検出し、電圧Va、
Vb、Vcと電流Ia、Ib、Icがどのように変化し、1相地絡故障または2、3相短
絡故障の故障種類を判断し、故障点を標定すべく、電圧Va、Vb、Vcと電流Ia、I
b、Icを位相変換、位相比較で解析している。
【0021】
〔1相地絡故障の例〕
標定事例として、図9に示す故障例を説明する。
図9の送電系統(従来標定不可の図3の送電系統と同じ)は、「若番側」が中性点抵抗
NGRを有すると共に、交流主電源の上位系統に接続されているα変電所で、「老番側」
が中性点抵抗NGRを有すると共に、大きな発電所の下位系統に接続されているβ変電所
という様な、両端電源系統、両端抵抗接地系統の1回線の送電系統における故障例であり
、A点、B点に設置された2個の故障区間検出器FS:A、FS:Bの間のC点で地絡故
障5が発生した場合である。
【0022】
〔健全時の検出〕
先ず、健全時(非故障時)の場合における検出例を説明する。
「若番側」から「老番側」に向かって電流が流れている場合に、電圧相と電流相が同じ
になる様に電界磁界センサ4a、4b、4cを配置し、潮流が「若番側」から「老番側」に流れ
ていた場合、故障区間検出器FS:A、FS:Bで検出される、a相、b相、c相の相順
とする3相交流の電圧と電流のベクトルVa、Vb、Vc、Ia、Ib、Icを図10の
ベクトル図に表示している。
表示された各ベクトルVa〜Icは、長さが同一(電圧と電流の大きさが3相で同一)
で、b相はa相に比して120 °遅れた位相で、c相はa相に比して240 °遅れた
位相でb相に比して120 °遅れた位相であることを示している。
尚、仮に潮流が「老番側」から「若番側」に流れている場合の電流Ia、Ib、Icの
位相は、図10(b)を180°回転したものとなる。
【0023】
〔零相〕
本願発明では、1相地絡故障を標定するために、零相という概念を用いている。
零相とは3相交流の3相の電圧、電流を各々加算したものであり、電圧加算の結果を零
相電圧Vo、電流加算の結果を零相電流Ioと呼び、図11に示す様に、健全時には、零
相電圧Vo、零相電流Ioは基本的に零となる。
尚、図11のベクトル図では、ベクトル和が零の合成ベクトル(零相電圧Vo、零相電
流Io)を黒丸で表示すると共に、引出線を屈曲破線で示している。
【0024】
〔1相地絡故障時の零相〕
図9で示す送電系統(潮流は「若番側」から「老番側」への流れ)におけるC点(故障
区間検出器FS:Aと故障区間検出器FS:Bの間)で、3相中、c相で完全1相地絡故
障5が発生した場合について説明する。
図12に示す様に、故障区間検出器FS:A、FS:Bの電圧の検出結果は、健全時の
電圧と比して、電圧Va、Vbは変化しないが、地絡故障したC相電線3cの電圧Vcは大
地間電圧が零となる。
図中、太線矢印で示す零相電圧Vo’の合成ベクトルVo’(電圧Vcと電圧Va、V
b(図中、細線矢印)のベクトル差による合成ベクトル(図中、破線矢印)同志のベクト
ル和)は大地間電圧の3倍となると共に、地絡故障5が発生したc相における健全時の電
圧Vcの逆方向となる。
尚、合成ベクトルの起点は、検出値のベクトルと起点が同一となり、ベクトル図では若
干ずらして表示している。
【0025】
又、図13(a)、図13(b)に示す様に、故障区間検出器FS:A、FS:Bの電
流の検出結果は、両者で相違し、逆方向となる。
故障区間検出器FS:Aでは電流Icの他、故障電流6である地絡電流(電流Icまた
は零相電流Io’と重なるため図示せず)がα変電所から潮流と同一方向に流れ、電流I
a、Ib、Icの合成ベクトルは零のため、故障時の零相電流Io’は電流Icのベクト
ルIcと同方向のベクトルIo’となる。
故障区間検出器FS:Bでも電流Icの他、故障電流6aである地絡電流(零相電流Io
”と重なるため図示せず)がβ変電所から流れるが、故障電流6aは潮流と逆方向の流れと
なるため、故障電流6aは電流Icと180°位相が相違し、零相電流Io”は電流Icの
ベクトルIcと逆方向のベクトルIo”となる(以下、ベクトルの用語を一部で省略し、
例えば、電流IcのベクトルIcを電流Icと記載する)。
尚、故障電流6、6aと零相電流Io’、Io”の大きさは同一である。
【0026】
〔逆潮流時における1相地絡故障時の零相〕
次に、潮流が「老番側」から「若番側」に流れている場合の1相地絡故障時を説明する

電圧Va、Vb、Vc、零相電圧Vo’に関しては、潮流が「若番側」から「老番側」
に流れている場合と同一で、図12のベクトル図と同一である。
電流Ia、Ib、Ic、故障電流6、6a、零相電流Io’、Io”に関しては、図14
のベクトル図に示す様に、A点、B点における電流Ia、Ib、Icは図13のベクトル
図に比して180°回転し、A点では故障電流6と潮流の流れが逆方向で零相電流Io’
は電流Icの逆方向となると共に、B点では故障電流6aと潮流の流れが同一方向で零相電
流Io”は電流Icと同一方向となる。
【0027】
〔1相地絡故障時の零相による標定方法〕
潮流が「若番側」から「老番側」へ流れていた時のA点においては、図12に示す零相
電圧Vo’と、図13(a)に示す零相電流Io’は逆位相であり、B点においては、図
12に示す零相電圧Vo’と、図13(b)に示す零相電流Io”は同一位相となる。
又、潮流が「老番側」から「若番側」へ流れていた時のA点、B点においては、図14
に示す零相電流Io’、Io”の方向は、図13のものと同一であり、図12の零相電圧
Vo’との対比は同様関係となる。
潮流の方向に関係なく、零相電圧Vo’と零相電流Io’、Io”は特定関係を有する
ことから、1相地絡故障の場合は、地絡故障時に発生する零相電圧Vo’と零相電流Io
’、Io”との位相比較で標定を行い、零相電圧Vo’と零相電流Io’、Io”が同一
位相であれば故障区間検出器FSからみて「若番側」での故障、逆位相であれば「老番側
」での故障と標定する。
尚、上記説明では、c相で1相地絡故障が発生した場合を説明したが、a相やb相で発
生した場合も同様である。
【0028】
〔1相地絡故障時の標定動作条件の設定〕
健全時の零相電流Ioは零で、故障時の零相電流Io’、Io”は増加することにより
、又故障時に発生する零相電流Io’、Io”の大きさは、その箇所に流れた故障電流6
、6aの大きさに等しいことから、零相電流Io’、Io”の大きさを常時監視することで
、零相電流Io’、Io”が零から増加した時を1相地絡故障時の標定動作条件として用
いることができる。
尚、標定動作条件は零相電流Io’、Io”が零から増加した時としたが、電流Ia、
Ib、Icの検出精度が外乱その他で低下する恐れがあるので、適当な所定値(閾値)を
設定し、零相電流Io’、Io”が設定値を超過した時を標定動作条件としても良い。
【0029】
〔2相以上の短絡故障の例〕
標定事例として、図15に示すab相間2相短絡の故障例を説明する。
短絡故障例を説明する図15の送電系統(潮流は「若番側」から「老番側」への流れ)
は、1相地絡故障時の図9の送電系統と同じ(従来標定不可の図3の送電系統と同じ)で
ある。
「若番側」が中性点抵抗NGRを有すると共に、交流主電源の上位系統に接続されてい
るα変電所で、「老番側」が中性点抵抗NGRを有すると共に、大きな発電所の下位系統
に接続されているβ変電所という様な、両端電源系統、両端抵抗接地系統の1回線の送電
系統における故障例であり、A点、B点に設置された2個の故障区間検出器FS:A、F
S:Bの間のC点で、各相電線3a、3bの間で短絡故障7が発生した場合である。
【0030】
〔2相以上の短絡故障時の検出例〕
a相電線3aとb相電線3bで短絡故障7が発生した時、交流3相はabc相の相順である
ために、故障電流8、8aはa相電線3aから短絡故障7を介してb相電線3bに流れ、a相電
線3aとb相電線3bでの故障電流8、8aの流れ方向は逆方向となり、b相電線3bの故障電流
8、8aの位相はa相電線3aの故障電流8、8aの位相とは逆位相となる。
短絡故障時の検出電流のベクトル図を、A点に関しては図16(a)に、B点に関して
は図17(a)に示しており、ベクトル図では、a相電線3aに流れる短絡電流をIsa、
b相電線3bに流れる短絡電流をIsb、c相電線3cに流れる短絡電流をIscとしている

又、短絡電流Isa、Isb、Iscは潮流(健全電流Ia、Ib、Ic)に比して、
通常は非常に大きいため、ベクトル図では、短絡電流Isa、Isb、Iscを破線表示
の電流Ia、Ib、Icより長く太く表示している。
更に、ベクトルの方向に関して、流出側の各相電線3a、3b、3cでは、健全時の各相の位
相から、送電系統のRL回路による角度に応じた(線路角と呼ぶ)分、遅れた位相の短絡
電流Isa、Isb、Iscが流れることを表示すると共に、流入側の各相電線3a、3b、
3cでは、流出側の逆位相の短絡電流Isa、Isb、Iscが流れることを表示している

【0031】
図16(a)に示す様に、A点におけるab相短絡時のベクトル図では、a相電線3aの
電流Iaに対して短絡電流Isaは位相が遅れた長いベクトルとなり、b相電線3bの短絡
電流Isb はa相電線3aの短絡電流Isa の逆位相のベクトルとなる。
又、B点におけるab相短絡時のベクトルを図17(a)のベクトル図に示しており、
a相電線3aの電流Iaに対して短絡電流Isaは位相が遅れると共に逆位相のベクトルと
なり、b相電線3bの短絡電流Isbはa相電線3aの短絡電流Isaの逆位相のベクトルと
なる。
A点の図16(a)とB点の図17(a)のベクトル図を対比すると、a相電線3aの短
絡電流Isaをみると、A点では電流Iaに対して遅れたベクトルとなることに対して、
B点では遅れると共に逆位相となっている関係がある。
尚、b相電線3bの短絡電流Isbについては、A点、B点共に、a相電線3aの短絡電流
Isaの逆位相となっている関係は同一である。
【0032】
2相以上の短絡故障例として、図15の送電系統ではab相2相短絡を説明したが、以
下の検出例では、その他の2相短絡および3相短絡も、上記と同様に図15のC点で発生
した場合としている。
bc相短絡時の検出例は、A点のものは図16(b)に示しており、b相電線3bの流出
側の短絡電流Isbは電流Ibに遅れ、c相電線3cの流入側の短絡電流Iscはb相電線
3bの短絡電流Isbの逆位相となり、B点のものは図17(b)に示しており、A点のも
のに比して逆位相となっている。
ca相短絡時の検出例は、A点のものは図16(c)に示しており、c相電線3cの流出
側の短絡電流Iscは電流Icに遅れ、a相電線3aの流入側の短絡電流Isaはc相電線
3cの短絡電流Iscの逆位相となり、B点のものは図17(c)に示しており、A点のも
のに比して逆位相となっている。
又、3相短絡時の検出例は、A点のものは図16(d)に示しており、abc相電線3a
、3b、3cの短絡電流Isa、Isb、Iscは共に、電流Ia、Ib、Icから遅れ、B
点のものは図17(d)に示しており、短絡電流Isa、Isb、Iscは共に、電流I
a、Ib、Icから遅れると共に、逆位相となっており、A点のものに比して逆位相とな
っている。
【0033】
尚、短絡故障7の発生時には、地絡故障5も同時発生する場合があり、短絡電流Isa
、Isb、Iscと地絡電流6、6aを同時検出した時に、短絡電流Isa、Isb、Is
cは地絡電流6、6aに比して大きく、地絡電流をベクトル図に反映させていない。
又、短絡故障7と同時発生した地絡故障5は、短絡故障7の標定とは別途で、前記の地
絡故障5の標定方法により標定する。
【0034】
〔2相以上の短絡故障時の標定方法〕
2、3相短絡時には、A点、B点の故障区間検出器FS:A、FS:Bで検出した故障
電流8、8aが、短絡電流Isa、Isb、Iscの2種または3種であるか、位相が遅れ
るだけであるか、逆位相であるか、更に、A点とB点のベクトルは逆位相となっているこ
とから、これらの違いを以て、「短絡故障が2相間か3相間か」、「電線の特定」および
「若番側」か「老番側」かの標定を行うことが一応は可能となる。
【0035】
しかしながら、2、3相短絡時には、図16、17に示すだけでも8種類(故障区間検
出器FSの若番側か老番側かによって各4種類)の故障様相があり、迅速で正確な標定は
困難になる。
【0036】
〔新たな標定方法〕
短絡故障7における標定は、abc相電線3a、3b、3cに流れる短絡電流Isa、Isb
、Iscと電流Ia、Ib、Icの位相のずれ(線路角(遅れ位相角度)および逆位相)
を判断することで標定可能としたが、正相、逆相の考え方を用いる新たな標定方法を以下
、説明する。
【0037】
2、3相短絡故障を標定するために用いる正相、逆相を、先ず、説明する。
正相、逆相は3相の電流Ia、Ib、Icを位相変換して加算したものであり、電流、
電圧加算の結果を正相電流If、逆相電流Ir、正相電圧Vfと呼ぶ。
〔正相〕
図18(a)に示す様に、a相を基準位相とすると、a相の電流Iaの位相はそのまま
(変換せず)で、a相(基準位相)の電流Ia(基準電流)の位相よりも120°遅れた
b相の電流Ib(次位相電流)の位相を120°進め、a相(基準位相)の電流Iaの位
相よりも240°遅れたc相の電流Ic(次々位相電流)の位相を240°進める。
そして、a相の電流Ia(基準電流)、b相の位相変換した電流Ib’(次位相電流)
およびc相の位相変換した電流Ic’(次々位相電流)を加算したものが、正相電流If
である。
尚、潮流(電流Ia、Ib、Ic)の大きさを|Ix|とした場合、正相電流Ifの大
きさは|Ix|の3倍となる。
又、図18(c)に示す様に、図18(a)に示すベクトル図の電流Iを電圧Vに入れ
換えて、同様に位相変換および加算したものが正相電圧Vf(後述の〔比較基準位相の設
定〕で使用)であり、大地間電圧(電圧Va、Vb、Vc)の大きさを|Vx|とした場
合、正相電圧Vfの大きさは|Vx|の3倍となる。
〔逆相〕
図18(b)に示す様に、a相を基準位相とすると、a相の電流Iaの位相はそのまま
(変換せず)で、a相の電流Iaの位相よりも120°遅れたb相の電流Ibの位相を1
20°遅らせ、a相の電流Iaの位相よりも240°遅れたc相の電流Icの位相を12
0°進め、a相の電流Ia、b相の位相変換した電流Ib’およびc相の位相変換した電
流Ic’を加算したものが、逆相電流Irである(次位相等は正相と同様)。
逆相電流Irの大きさは、潮流の大きさに関係なく基本的には、零相電流Io(図11
(b)参照)と同様に零である。
【0038】
〔2、3相短絡故障時の正相〕
図16(a)〜(d)に示すA点における2、3相短絡時の検出電流を正相変換したベ
クトル図を図19(a)〜(d)に示す。
図19(a)に示す様に、ab相間2相短絡時には、基準位相を電流Iaの位相とする
と、短絡電流Isaはそのままで、短絡電流Isbは位相を120°進め、短絡電流Is
aと位相変換した短絡電流Isb’のベクトル和が正相電流Ifとなり、該正相電流If
の位相は電流Iaと電流Ibの中間位相(基準位相の電流Iaの位相から180°未満の
遅れ位相の範囲内)となる。
以下、同様に、図19(b)に示す様に、bc相間2相短絡時には、位相変換した短絡
電流Isb’、Isc’のベクトル和である正相電流Ifの位相は電流Iaと電流Ibの
中間位相となり、図19(c)に示す様に、ca相間2相短絡時には、位相変換した短絡
電流Isc’と短絡電流Isaのベクトル和である正相電流Ifの位相は電流Iaと電流
Ibの中間位相となる。
又、図19(d)に示す様に、abc相間3相短絡時には、短絡電流Isaと位相変換
した短絡電流Isb’、Isc’のベクトル和である正相電流Ifの位相は電流Iaと電
流Ibの中間位相となる。
尚、図19(d)のベクトル図では、短絡電流Isaおよび位相変換した短絡電流Is
b’、Isc’、正相電流Ifは全て重なるが、ずらして表示している(後述の図20(
d)も同じ)。
【0039】
図17(a)〜(d)に示すB点における2、3相短絡時の検出電流を正相変換したベ
クトル図を図20(a)〜(d)に示す。
図20(a)に示す様に、ab相間2相短絡時には、短絡電流Isaと位相変換した短
絡電流Isb’のベクトル和である正相電流Ifの位相は電流Ibと電流Icの中間位相
で、A点のもの(図19(a)参照)における逆位相(電流Iaの位相から180°未満
の進み位相の範囲内)となる。
図20(b)に示す様に、bc相間2相短絡時には、位相変換した短絡電流Isb’、
Isc’のベクトル和である正相電流Ifの位相は電流Ibと電流Icの中間で、A点の
もの(図19(b)参照)における逆位相となり、図20(c)に示す様に、ca相間2
相短絡時には、位相変換した短絡電流Isc’と短絡電流Isaのベクトル和である正相
電流Ifの位相は電流Ibと電流Icの中間位相で、A点のもの(図19(c)参照)に
おける逆位相となる。
又、図20(d)に示す様に、abc相間3相短絡時には、短絡電流Isaと位相変換
した短絡電流Isb’、Isc’のベクトル和である正相電流Ifの位相は電流Ibと電
流Icの中間位相で、A点のもの(図19(d)参照)における逆位相となる。
【0040】
〔2、3相短絡故障時の正相による標定方法〕
図19(a)〜(d)のベクトル図は故障区間検出器FS:Aからみて「老番側」での
短絡故障、図20(a)〜(d)は故障区間検出器FS:Bからみて「若番側」での短絡
故障である。
「老番側」での短絡故障の場合の正相電流Ifの位相は、電圧Vaの位相に相当する電
流Ia(比較基準位相)の位相に比べて180°未満遅れ位相の範囲にあり、「若番側」
での短絡故障の場合の正相電流Ifの位相は、電流Ia(比較基準位相)の位相に比べて
180°未満進み位相の範囲に現れており、
電流Ia(比較基準位相)の位相に比べて正相電流Ifの位相が「遅れ位相」か「進み
位相」かで、「老番側」か「若番側」で故障が発生したことを夫々標定する。
尚、短絡電流Isa、Isb、Iscは、RL回路(抵抗成分とリアクタンス成分を有
する回路)による線路角(遅れ位相角度)相当分は0°超過ないし60°未満であり、正
相電流Ifの位相は、電流Iaの位相と相違すると共に、電流Iaの位相から180°未
満の遅れ位相または進み位相の範囲となる。
尚、線路角は電圧の比較基準位相に対する90°未満(一般的に60°〜80°)の遅
れ位相であり、電圧の遅れ位相相当分を電流の遅れ位相に換算すると0°超過ないし60
°未満となる。
又、短絡電流Isa、Isb、Isc、正相電流Ifは、故障電流と潮流の両方の成分
が合成して現れることから、これらの位相は潮流が大きいほど電流Ia等の位相に近づく

【0041】
〔逆潮流時における2相短絡故障時の正相による標定方法〕
次に、潮流が「老番側」から「若番側」に流れている場合の2相短絡故障時における正
相電流による標定方法を説明する。
図21(a)のベクトル図に示す様に、電流Ia、Ib、Icは図16(a)のベクト
ル図に比して180°回転し、A点では故障電流と潮流の流れが逆方向で短絡電流Isa
の方向は電流Iaの方向に線路角を加えた逆方向となると共に、短絡電流Isbは短絡電
流Isaの逆方向となる。
この検出電流のベクトル図を正相変換したベクトル図を図21(b)に示し、短絡電流
Isbを120°進め、短絡電流Isaと位相変換した短絡電流Isb’のベクトル和で
ある正相電流Ifは、図19(a)と同様となる。
そして、標定に際しては、詳細は後述するが、図21(c)に示す様に、電圧Vaの位
相に電流Iaの位相を一致させる様に、電流Ia、Ib、Icを180°変換したものを
比較基準位相と成し、電圧Vaに相当する位相変換した電流Ia’と正相電流Ifを比較
し、正相電流Ifは電流Ia’の位相に比して180°未満遅れ位相の範囲にあり、図1
9(a)の場合と同様に「若番側」で故障したと標定する。
尚、上記説明では、ab相短絡やA点でのものを説明したが、その他の2相の短絡時や
B点でも同様に標定する。
【0042】
尚、上記説明では、電流Ia等の位相を基準位相および比較基準位相として説明したが
、基準位相等は電流Iaの位相の他、送電系統に合わせた任意の位相でも良い。
電流Ibの位相を基準位相とする場合は、基準位相から120°遅れた次位相の電流I
cの位相を120°進め、基準位相から240°遅れた次々位相の電流Iaを240°進
め、標定時に、短絡電流Isa、Isb、Iscの正相電流Ifが基準位相の電流Ibの
位相から180°未満「遅れ位相」か「進み位相」かで標定する。
又、電流Icの位相を基準位相とする場合は、同様に、電流Iaの位相を120°進め
、電流Ibの位相を240°進め、標定時に、正相電流Ifが基準位相の電流Icの位相
から180°未満「遅れ位相」か「進み位相」かで標定する。
【0043】
〔逆潮流時における3相短絡故障時の正相による標定方法〕
次に、潮流が「老番側」から「若番側」に流れている場合の3相地絡故障時における正
相電流による標定方法を説明する。
図22(a)のベクトル図に示す様に、電流Ia、Ib、Icは図16(d)のベクト
ル図に比して180°回転し、A点では故障電流と潮流の流れが逆方向で、短絡電流Is
a、Isb、Iscの方向は電流Ia、Ib、Icの方向に線路角を加えた逆方向と夫々
なる。
この検出電流のベクトル図を正相変換したベクトル図を図22(b)に示し、短絡電流
Isb、Iscを夫々120°、240°進め、短絡電流Isaと位相変換した短絡電流
Isb’、Isc’のベクトル和である正相電流Ifは、図19(a)と同様となる。
そして、標定に際しては、詳細は後述するが、図22(c)に示す様に、電圧Vaの位
相に電流Iaの位相を一致させる様に、電流Ia、Ib、Icを180°変換したものを
比較基準位相と成し、電圧Vaに相当する位相変換した電流Ia’と正相電流Ifを比較
し、正相電流Ifは電流Ia’の位相に比して180°未満遅れ位相の範囲にあり、図1
9(d)の場合と同様に「若番側」で故障したと標定する。
尚、上記説明では、A点でのものを説明したが、上記と同様にB点でも標定する。
【0044】
〔(2、)3相短絡故障時の標定動作条件の設定〕
〔2相以上の短絡故障時の検出例〕で説明した様に、短絡電流Isa、Isb、Isc
は健全時の電流Ia、Ib、Icに比して非常に大きいため、健全時の正相電流Ifに比
して短絡故障時の正相電流Ifは大きいことから、健全時の正相電流Ifより相当大きな
所定値(閾値)を設定し、正相電流Ifの大きさを常時監視することで、正相電流Ifが
設定値を超過した時を2、3相短絡故障時の標定動作条件として用いることができる。
但し、図19(a)〜(c)、図20(a)〜(c)の2相短絡時と、図19(d)、
図20(d)の3相短絡時を比較すると、2相短絡時の正相電流Ifは短絡電流Isa、
Isb、Iscの√3倍であることに対して、3相短絡時のものは3倍であり、更に、後
述する2相短絡時の逆相電流Irは零から増加の変化であるから、正相電流Ifを2、3
相短絡故障時の標定動作条件とすることができるが、正相電流Ifは3相短絡故障時の標
定動作条件とすると共に、2相短絡故障時の標定動作条件は後述の逆相電流Irとするこ
とが好ましい。
又、図18(a)に示す健全時の正相電流Ifの位相に比して、図19、20に示す正
相電流Ifの位相はずれて同一でなく位相差を有するから、正相電流Ifの位相を常時監
視することで、正相電流Ifの位相ずれを検出した時を2相以上の短絡故障時の標定動作
条件として用いることができる。
【0045】
〔2、3相短絡故障時の逆相〕
図16(a)〜(d)に示すA点における2、3相短絡時の検出電流を逆相変換したベ
クトル図を図23(a)〜(d)に示す。
図23(a)に示す様に、ab相間2相短絡時には、短絡電流Isaはそのままで、短
絡電流Isbは位相を120°遅らせ、短絡電流Isaと位相変換した短絡電流Isb”
のベクトル和が逆相電流Irとなり、該逆相電流Irの位相は電流Iaの位相と同一傾向
(同一を含む)となる。
具体的には、図示のものでは、短絡電流Isaの位相が電流Iaの位相に比して25°
遅れ、短絡電流Isbは205°遅れ、位相変換した短絡電流Isb”は325°遅れ、
逆相電流Irは短絡電流Isbと位相変換した短絡電流Isb”の中間で355°遅れ、
比較基準位相である電流Iaの位相と5°の位相差で同一傾向となっている。
RL回路による線路角の遅れ位相は0°超過ないし60°未満であるため、逆相電流I
rの位相は電流Iaの位相(比較基準位相)より30°未満の進み位相ないし30°未満
の遅れ位相(以下、±30°未満の位相と称する)の範囲内となり、因みに、短絡電流I
saが30°遅れの時には、逆相電流Irの位相は電流Iaの位相と同一となる。
【0046】
図23(b)に示す様に、bc相間2相短絡時には、位相変換した短絡電流Isb”と
Isc”のベクトル和である逆相電流Irの位相は、電流Icの位相と同一傾向となり、
図23(c)に示す様に、ca相間2相短絡時には、位相変換した短絡電流Isc”と短
絡電流Isaのベクトル和である逆相電流Irの位相は、電流Ibの位相と同一傾向とな
る。
尚、同一傾向となる位相の比較関係は、図23(a)に示すab相間2相短絡時と同様
に、比較基準位相の「遅れ」または「進み」の30°未満の位相の範囲内となる。
【0047】
尚、abc3相短絡時の逆相電流Ir等のベクトル図は、図23(d)に示しており、
短絡電流Isaと位相変換した短絡電流Isb”、Isc”のベクトル和である逆相電流
Irは零となる。
【0048】
図17(a)〜(d)に示すB点における2、3相短絡時の検出電流を逆相変換したベ
クトル図を図24(a)〜(d)に示す。
図24(a)に示す様に、ab相間2相短絡時には、短絡電流Isaと位相変換した短
絡電流Isb”のベクトル和が逆相電流Irとなり、該逆相電流Irの位相は電流Ibと
電流Icの中間となり、A点のもの(図23(a)参照)における逆位相となる。
B点での逆相電流Irの位相はA点のものに比して逆位相であると共に、A点での逆相
電流Irの位相は電流Iaの位相(比較基準位相)の±30°未満の位相であるため、B
点での逆相電流Irの位相は電流Iaの位相の180°±30°未満の位相の範囲内とな
る。
位相角180°は電流Ibと電流Icの中間位相(位相差は夫々60°)に相当するこ
とにより、B点での逆相電流Irの位相の180°±30°未満の位相の範囲は、電流I
bと電流Icの位相の±30°未満の位相の範囲外(電流Iaの位相に対しても同様)と
なり、逆相電流Irの位相は全ての比較基準位相(電流Ia、Ib、Icの位相)の±3
0°未満以外の位相の範囲内となる。
【0049】
図24(b)に示す様に、bc相間2相短絡時には、位相変換した短絡電流Isb”と
Isc”のベクトル和である逆相電流Irの位相は、電流Iaと電流Ibの中間で、A点
のもの(図23(b)参照)における逆位相となり、図24(c)に示す様に、ca相間
2相短絡時には、位相変換した短絡電流Isc”と短絡電流Isaのベクトル和である逆
相電流Irの位相は、電流Icと電流Iaの中間で、A点のもの(図23(c)参照)に
おける逆位相となる。
そして、bc相間2相短絡時に電流Iaと電流Ibの中間となる逆相電流Irの位相や
、ca相間2相短絡時に電流Icと電流Iaの中間となる逆相電流Irの位相は、図24
(a)に示すab相間2相短絡時と同様に、比較基準位相である電流Ia、Ib、Icの
±30°未満の位相の範囲外となる。
【0050】
尚、abc3相短絡時の逆相電流Ir等のベクトル図は、図24(d)に示しており、
短絡電流Isaと位相変換した短絡電流Isb”、Isc”のベクトル和である逆相電流
Irは零となる。
【0051】
〔2相短絡故障時の逆相による標定方法〕
図23(a)〜(c)のベクトル図は故障区間検出器FS:Aからみて「老番側」での
短絡故障、図24(a)〜(c)は故障区間検出器FS:Bからみて「若番側」での短絡
故障である。
「老番側」での短絡故障の場合の逆相電流Irの位相は、電流Ia、Ib、Icの位相
のいずれか1相(比較基準位相)の±30°未満の範囲内にあり、「若番側」での短絡故
障の場合の逆相電流Irの位相は、電流Ia、Ib、Icの位相の全ての位相(比較基準
位相)の±30°未満以外の範囲(±30°未満の範囲外、±30°超過の範囲内)に現
れており、
電流Ia、Ib、Icの位相(比較基準位相のいずれか又は全て)に比べて逆相電流I
rの位相が±30°未満の範囲内か範囲外かで、「老番側」か「若番側」で故障が発生し
たことを標定する。
【0052】
尚、上記説明では、電流Iaの位相を基準位相として説明したが、基準位相は電流Ia
の位相の他、送電系統に合わせた任意の位相でも良い。
電流Ibの位相を基準位相とする場合は、基準位相から120°遅れた次位相の電流I
cの位相を120°遅らせ、基準位相から240°遅れた次々位相の電流Iaを120°
進め、電流Icの位相を基準位相とする場合は、同様に、電流Iaの位相を120°遅ら
せ、電流Ibの位相を120°進める。
標定時には、逆相電流Irが比較基準位相の電流Ia、Ib、Icのいずれか又は全て
の位相の±30°未満の範囲内か範囲外かで標定する。
【0053】
〔逆潮流時における2相短絡故障時の逆相による標定方法〕
次に、潮流が「老番側」から「若番側」に流れている場合の2相短絡故障時における逆
相電流による標定方法を説明する。
図25(a)のベクトル図に示す様に、電流Ia、Ib、Icは図16(a)のベクト
ル図に比して180°回転し、A点では故障電流と潮流の流れが逆方向で短絡電流Isa
の方向は電流Iaの方向に線路角を加えた逆方向となると共に、短絡電流Isbは短絡電
流Isaの逆方向となる(図21(a)と同一のベクトル図)。
この検出電流のベクトル図を逆相変換したベクトル図を図25(b)に示し、短絡電流
Isbを120°遅らせ、短絡電流Isaと位相変換した短絡電流Isb”のベクトル和
である逆相電流Irは、図23(a)と同様となる。
そして、標定に際しては、詳細は後述するが、図25(c)に示す様に、電圧Vaの位
相に電流Iaの位相を一致させる様に、電流Ia、Ib、Icを180°変換したものを
比較基準位相と成し、電圧Vaに相当する位相変換の電流Ia’と逆相電流Irを比較し
、逆相電流Irは電流Ia’の位相に比して±30°未満の範囲にあり、図23(a)の
場合と同様に「老番側」と標定する。
尚、上記説明では、ab相短絡、A点のものを説明したが、その他の2相の短絡時、B
点でも同様に標定し、又基準位相等も上記と同様にb相、c相としても良い。
【0054】
〔2相短絡故障時の標定動作条件の設定〕
図18(b)に示すとおり、健全時の逆相電流Irは零、図23(a)〜(c)、図2
4(a)〜(c)に示すとおり、短絡故障時に発生する逆相電流Irは短絡故障電流の√
3 倍であり、逆相電流Irは潮流の大きさには関係しないから、逆相電流Irの大きさを
常時監視することで、逆相電流Irが零から増加した時を2相短絡故障時の標定動作条件
として用いることができる。
尚、零相電流Io’、Io”の場合と同様に、零から増加した時を設定値を超過した時
としても良い。
但し、図23(d)と図24(d)を見て分かるように、3相短絡故障時の場合は故障
電流が3相ともに平衡して流れることから、逆相電流Irの大きさは変化しない為、前記
のとおり、3相短絡故障時の場合は前記の正相電流Ifを用いることが必要になる。
【0055】
〔2回線間での短絡故障への適用〕
上記説明では、1回線の送電系統で短絡故障が発生した場合について説明したが、2回
線の場合についても適用することが出来る。
図8に示す様に、鉄塔2、2a…には、各相電線3a、3b、3cが1組で1回線となる送電系
統(送電線1)が2回線以上架設されていることが多く、2回線の間で短絡故障7が発生
した場合を説明する。
例えば、一方の送電系統のa相と他方の送電系統のb相で短絡故障7が発生した場合の
ベクトル図を図26に示す。
図26(a)に示す様に、一方の送電系統のa相電線3aでは短絡電流Isaが流れ、図
26(b)に示す様に、他方の送電系統のb相電線3bでは短絡電流Isbが流れ、2回線
の送電系統のベクトルを合算した正相電流Ifを示すベクトル図は図26(c)となり、
同様のベクトル図となる図19(c)と同様に標定する。
【0056】
尚、その他の相(同相同志を除く)でも同様であると共に、逆相、B点、逆潮流でも同
様である。
又、3回線以上の送電系統についても、全回線の全電線から検出した電流を同一位相毎
に加算することにより、適用することが出来る。
【0057】
〔1相地絡故障時の逆相による標定方法〕
1相地絡故障時の標定は図13等に示す零相電流Io’、Io”で標定する方法を示し
たが、逆相でも1相地絡故障を標定できるので、以下、説明する。
図27に示す様に、c相1相地絡時のA点における故障電流を120°位相変換した逆
相電流Irは電流Ibと同一となり、B点における故障電流の逆相電流Irは電流Ibの
逆位相となる。
これらは、逆相標定時の範囲を適用でき、図27(a)の同一位相は電流Iaの±30
°未満の範囲内にあり、図27(b)は電流Ib、Icと60°差で±30°未満以外の
範囲となり、(a)は「老番側」と(b)は「若番側」と標定する。
尚、c相以外での1相地絡、逆潮流も同様であり、又標定動作に関しても同様である。
【0058】
尚、上記説明では、両端抵抗接地系統(両端電源系統)について説明したが、零相電流
Io、正相電流If、逆相電流Irの位相による故障区間の標定は、片端抵抗接地系統、
ループ系統での標定も可能である。
片端抵抗接地系統では、図2のC点で地絡故障5、短絡故障7が発生したとすると、接
地側のみ故障電流6、8が流れ、非接地側では流れないため、故障区間検出器FS:Aだ
けが故障電流6、8を検出し、両端抵抗接地系統と同様に標定する。
ループ系統では、図4のC点で地絡故障5、短絡故障7が発生したとすると、故障区間
検出器FS:A、FS:Bの両者が故障電流6、6a、8、8aを検出し、故障区間検出器F
S:A、FS:Bは両端抵抗接地系統と同様に標定する。
【0059】
〔比較基準位相の設定〕
正相電流Ifまたは逆相電流Irの位相の比較対象となる基準位相または比較基準位相
は、電圧Va、Vb、Vcの位相と同一位相である電流Ia、Ib、Icの位相等とする
ことが好ましいことを説明する。
電界磁界センサ4a、4b、4cによる電圧、電流の検出は電界、磁界を検出しているが、電
界磁界センサ4a、4b、4cと各相電線3a、3b、3cの間に障害物、遮蔽物が、例えば、鉄塔の
構造材の一部が部分的にでも存在すると、電界磁界センサ4a、4b、4cによる検出精度は磁
界に比して電界が低い。
一方、電流(磁界)の検出精度は電圧(電界)に比して高いが、潮流の変化により電流
の位相が変化したり、潮流が無い場合には電流を検出できない。
そこで、正相電流Ifまたは逆相電流Irの位相の比較対象となる比較基準位相として
は、理論的には電圧Va、Vb、Vcの位相と成すと共に、運用上では電流Ia、Ib、
Icの位相と成し、更に、基準位相となる電圧位相は、電圧Va、Vb、Vcのいずれか
としても良いが、電圧の検出精度が低かったり安定しないため、高出力となる正相電圧V
f(図18(c)参照)を理論的な基準としている。
具体的には、電圧と電流が同一位相の時には、検出精度が高い電流の位相を比較基準位
相と成し、電圧と電流が逆位相の時(図21、25に示す潮流変化がある2相短絡時の標
定時)には、電流を180°回転変換して比較基準位相と成し、潮流が無い場合は電圧位
相を比較基準位相と成している。
尚、これらの場合にあっても、基準位相は3相(abc相)中、任意の位相のものから
選択できることは勿論である。
【0060】
〔電気回路〕
次に、電気回路について説明するが、図28に示す電気回路10では、電源、制御、出力
、通信機器、加算処理していない電圧、電流信号の別途処理などの回路を図示していない
が、これらの回路は適宜、構成する。
電気回路10は故障区間検出器FS内に設けられると共に、電界磁界センサ4a、4b、4cは
電界、磁界積分増幅器11、12に接続され、電界積分増幅器11は零相電圧Vo、正相電圧V
fの加算器13、22に調整器20、位相変換調整増幅器21を介して接続されると共に、該加算
器13、22は判定回路14に接続されている。
又、磁界積分増幅器12は零相電流Io、正相電流If、逆相電流Irの加算器15、16、
17に調整器23、位相変換調整増幅器18、19を介して接続される共に、加算器15、16、17は
判定回路14に接続されている。
【0061】
各種回路(信号処理機器)の機能は次の通りである。
・電界磁界センサ4a、4b、4c
電界センサと磁界センサが一体になったもので、送電線1(各相電線3a、3b、3c)
からの電界と磁界を検出するセンサであり、磁界センサとしては従来の非接触センサ
以外に、ロゴスキーコイルなどのセンサを適用することも可能である。
・積分増幅回路(電界、磁界積分増幅器11、12)
電界磁界センサ4a、4b、4cから出力される信号は、センサが受けた信号が微分され
た形で出力されることから、積分処理して元信号に戻す。
また、微分された信号は高調波などの信号も強調されているため、標定には不要な
信号を同時に除去する。
・零相変換回路(加算器13、15、調整器20、23)
積分増幅回路から出力された各種信号を、増幅、加算する回路である。
・正相、逆相変換回路(加算器16、17、22、位相変換調整増幅器18、19、21)
積分増幅回路から出力された各種信号を、増幅、位相変換、加算する回路である。
・判定回路14
零相、正相、逆相変換回路の出力信号を、予め設定したデータを元に故障発生の判
定、故障方向の判定を行う。
【0062】
次に信号処理を説明する。
電界磁界センサ4a、4b、4cから出力され電界積分増幅器11で処理された電圧Va、Vb
、Vcを調整器20と加算器13により零相電圧Voに調整して判定回路14に出力される。
電界磁界センサ4a、4b、4cから出力され電界積分増幅器11で処理された電圧Va、Vb
、Vcを位相変換調整増幅器21と加算器22により正相電圧Vfに調整して判定回路14に出
力される。
電界磁界センサ4a、4b、4cから出力され磁界積分増幅器12で処理された電流Ia、Ib
、Icを調整器23と加算器15により零相電流Ioに調整して判定回路14に出力される。
電界磁界センサ4a、4b、4cから出力され磁界積分増幅器12で処理された電流Ia、Ib
、Icを位相変換調整増幅18と加算器16により正相電流Ifに調整して判定回路14に出力
される。
電界磁界センサ4a、4b、4cから出力され磁界積分増幅器12で処理された電流Ia、Ib
、Icを位相変換調整増幅器19と加算器17により逆相電流Irに調整して判定回路14に出
力される。
尚、電界磁界センサ4から出力される信号は、自相(例えば、電界磁界センサ4aに対す
るa相電線3a)成分以外の他相(例えば、電界磁界センサ4aに対するbc相電線3b、3c)
成分を含んでいるが、調整器20、23、位相変換調整増幅器18、19、21は既知の方法(省略
)を用いて他相成分を除去することで対向関係を有する電線(例えば、電界磁界センサ4a
に対するa相電線3a)だけの電圧、電流の大きさ、位相を得ている。
そして、判定回路14では、入力された零相電流Io、正相電流If、逆相電流Irが健
全時か異常発生時かを判定して、標定動作を開始し、1相地絡、2相短絡、故障区間など
を標定する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】従来の故障区間検出方式および電源側等を示す図である。
【図2】両端接地系統での故障発生時の標定状況を示す図である。
【図3】両端接地系統や両端電源系統での故障発生時の標定状況を示す図である。
【図4】ループ系統での故障発生時の標定状況を示す図である。
【図5】電源側の切替状態における標定状況を示す図である。
【図6】電源側を間違え易い送電系統を示す図である。
【図7】鉄塔を表示した送電系統を示す図である。
【図8】故障区間検出器および電界磁界センサ等の設置例を示す鉄塔の模式図である。
【図9】両端接地系統や両端電源系統の送電系統における1相地絡故障例を示す図である。
【図10】健全時の電圧位相と電流位相を示すベクトル図である。
【図11】健全時の零相電圧と零相電流を示すベクトル図である。
【図12】c相の1相地絡故障時のA点、B点における零相電圧を示すベクトル図である。
【図13】c相の1相地絡故障時のA点、B点における零相電流を示すベクトル図である。
【図14】潮流が逆方向時のc相の1相地絡故障時のA点、B点における零相電流を示すベクトル図である。
【図15】両端接地系統や両端電源系統の送電系統における2相短絡故障例を示す図である。
【図16】各相電線間2相短絡故障時のA点における短絡電流を示すベクトル図である。
【図17】各相電線間2相短絡故障時のB点における短絡電流を示すベクトル図である。
【図18】正相電流、逆相電流および正相電圧を示すベクトル図である。
【図19】図16に示すベクトル図を正相変換したベクトル図である。
【図20】図17に示すベクトル図を正相変換したベクトル図である。
【図21】潮流が逆方向時の2相短絡時の正相に関するベクトル図である。
【図22】潮流が逆方向時の3相短絡時の正相に関するベクトル図である。
【図23】図16に示すベクトル図を逆相変換したベクトル図である。
【図24】図17に示すベクトル図を逆相変換したベクトル図である。
【図25】潮流が逆方向時の2相短絡時の逆相に関するベクトル図である。
【図26】2回線のab相間2相短絡時に関するベクトル図である。
【図27】c相の1相地絡故障時のA点、B点における逆相電流を示すベクトル図である。
【図28】電気回路を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0064】
1 送電線
2、2a… 鉄塔
3a、3b、3c 各相電線
4a、4b、4c 電界磁界センサ
5 地絡故障
6、6a 故障電流
7 短絡故障
8、8a 故障電流
FS 故障区間検出器
Vo 零相電圧
Io 零相電流
If 正相電流
Ir 逆相電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相の各相電線に夫々対向する非接触の電界磁界センサを鉄塔に設けると共に、電界磁
界センサの検出信号を演算し故障区間を標定する故障区間検出器を鉄塔に設け、
3相交流の3相の電圧および電流を各々加算して零相電圧および零相電流を各々算定す
ると共に、零相電圧および零相電流の位相を比較し、
零相電圧および零相電流の位相が同一位相の時は、故障区間検出器を設けた鉄塔の「鉄
塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「若番側」で1相地絡故障が発生したことを標定し

零相電圧および零相電流の位相が逆位相の時は、故障区間検出器を設けた鉄塔の「鉄塔
番号」と、該鉄塔からの方向を示す「老番側」で1相地絡故障が発生したことを標定する
様にした
ことを特徴とする送配電線路の故障区間標定方法。
【請求項2】
零相電流が零から増加した時に、又は、設定値を超過した時に、標定動作を開始する様
にした
ことを特徴とする請求項1記載の送配電線路の故障区間標定方法。
【請求項3】
3相の各相電線に夫々対向する非接触の電界磁界センサを鉄塔に設けると共に、電界磁
界センサの検出信号を演算し故障区間を標定する故障区間検出器を鉄塔に設け、
3相中任意相の電流を基準電流と成すと共に、該基準電流の位相を基準位相と成し、
位相が基準位相より120°遅れた次位相電流の位相を120°進めて位相変換すると
共に、位相が基準位相より240°遅れた次々位相電流の位相を240°進めて位相変換
し、
基準電流、位相変換した次位相電流および位相変換した次々位相電流を加算して正相電
流を算定し、
電流と電圧の位相が同一位相の時に基準位相を比較基準位相に設定するか、電流と電圧
の位相が非同一位相の時に基準位相を180°変換して比較基準位相を設定し、故障発生
時に正相電流の位相と比較基準位相を比較し、
正相電流の位相が比較基準位相より180°遅れ位相の範囲内の時は、故障区間検出器
を設けた鉄塔の「鉄塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「老番側」で2相以上の短絡故
障が発生したことを標定し、
正相電流の位相が比較基準位相より180°進み位相の範囲内の時は、故障区間検出器
を設けた鉄塔の「鉄塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「若番側」で2相以上の短絡故
障が発生したことを標定する様にした
ことを特徴とする送配電線路の故障区間標定方法。
【請求項4】
3相中任意相の電流を基準電流と成すと共に、又は、設定値を超過した時に、該基準電
流の位相を基準位相と成し、
位相が基準位相より120°遅れた次位相電流の位相を120°遅らせて位相変換する
と共に、位相が基準位相より240°遅れた次々位相電流の位相を120°進めて位相変
換し、
基準電流、位相変換した次位相電流および位相変換した次々位相電流を加算して逆相電
流を算定し、
逆相電流が零から増加した時に、又は、設定値を超過した時に、2相短絡故障の標定動
作を開始する様にした
ことを特徴とする請求項3記載の送配電線路の故障区間標定方法。
【請求項5】
正相電流が設定値を超過した時に、又は、正相電流の位相ずれを検出した時に、2相以
上の短絡故障の標定動作を開始する様にした
ことを特徴とする請求項3記載の送配電線路の故障区間標定方法。
【請求項6】
3相の各相電線に夫々対向する非接触の電界磁界センサを鉄塔に設けると共に、電界磁
界センサの検出信号を演算し故障区間を標定する故障区間検出器を鉄塔に設け、
3相中任意相の電流を基準電流と成すと共に、該基準電流の位相を基準位相と成し、
位相が基準位相より120°遅れた次位相電流の位相を120°遅らせて位相変換する
と共に、位相が基準位相より240°遅れた次々位相電流の位相を120°進めて位相変
換し、
基準電流、位相変換した次位相電流および位相変換した次々位相電流を加算して逆相電
流を算定し、
電流と電圧の位相が同一位相の時に、基準電流、位相変換した次位相電流および位相変
換した次々位相電流の位相を比較基準位相に設定するか、電流と電圧の位相が非同一位相
の時に、基準電流、位相変換した次位相電流および位相変換した次々位相電流の位相を1
80°変換して比較基準位相を設定し、
故障発生時に逆相電流の位相と比較基準位相を比較し、
逆相電流の位相が比較基準位相のいずれかの位相の±30°未満の範囲内の時は、故障
区間検出器を設けた鉄塔の「鉄塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「老番側」で1相地
絡故障又は2相短絡故障が発生したことを標定し、
逆相電流の位相が比較基準位相の全ての位相の±30°未満以外の範囲内の時は、故障
区間検出器を設けた鉄塔の「鉄塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「若番側」で1相地
絡故障又は2相短絡故障が発生したことを標定する様にした
ことを特徴とする送配電線路の故障区間標定方法。
【請求項7】
逆相電流が零から増加した時に、又は、設定値を超過した時に、1相地絡故障又は2相
短絡故障の標定動作を開始する様にした
ことを特徴とする請求項6記載の送配電線路の故障区間標定方法。
【請求項8】
正相電流または逆相電流の位相の比較対象となる比較基準位相は、電流の位相に変えて
電圧の位相と成した
ことを特徴とする請求項3、4、5、6又は7記載の送配電線路の故障区間標定方法。
【請求項9】
3相の各相電線に夫々対向する非接触の電界磁界センサを鉄塔に設けると共に、電界磁
界センサの検出信号を演算し故障区間を標定する故障区間検出器を鉄塔に設け、
故障区間検出器は、
3相交流の3相の電圧および電流を各々加算して零相電圧および零相電流を各々算定す
る手段と、
零相電圧および零相電流の位相を比較する手段と、
零相電圧および零相電流の位相が同一位相の時は、故障区間検出器を設けた鉄塔の「鉄
塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「若番側」で1相地絡故障が発生したことを標定す
る手段と、
零相電圧および零相電流の位相が逆位相の時は、故障区間検出器を設けた鉄塔の「鉄塔
番号」と、該鉄塔からの方向を示す「老番側」で1相地絡故障が発生したことを標定する
手段を備えた
ことを特徴とする送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項10】
故障区間検出器は、
零相電流が零から増加した時に、又は、設定値を超過した時に、標定動作を開始する手
段を備えた
ことを特徴とする請求項9記載の送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項11】
3相の各相電線に夫々対向する非接触の電界磁界センサを鉄塔に設けると共に、電界磁
界センサの検出信号を演算し故障区間を標定する故障区間検出器を鉄塔に設け、
故障区間検出器は、
3相中任意相の電流を基準電流と成すと共に、該基準電流の位相を基準位相と成し、
位相が基準位相より120°遅れた次位相電流の位相を120°進めて位相変換すると
共に、位相が基準位相より240°遅れた次々位相電流の位相を240°進めて位相変換
し、基準電流、位相変換した次位相電流および位相変換した次々位相電流を加算して正相
電流を算定する手段と、
電流と電圧の位相が同一位相の時に基準位相を比較基準位相に設定するか、電流と電圧
の位相が非同一位相の時に基準位相を180°変換して比較基準位相を設定し、故障発生
時に正相電流の位相と比較基準位相を比較する手段と、
正相電流の位相が比較基準位相より180°遅れ位相の範囲内の時は、故障区間検出器
を設けた鉄塔の「鉄塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「老番側」で2相以上の短絡故
障が発生したことを標定する手段と、
正相電流の位相が比較基準位相より180°進み位相の範囲内の時は、故障区間検出器
を設けた鉄塔の「鉄塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「若番側」で2相以上の短絡故
障が発生したことを標定する手段を備えた
ことを特徴とする送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項12】
3相中任意相の電流を基準電流と成すと共に、該基準電流の位相を基準位相と成し、
位相が基準位相より120°遅れた次位相電流の位相を120°遅らせて位相変換する
と共に、位相が基準位相より240°遅れた次々位相電流の位相を120°進めて位相変
換し、基準電流、位相変換した次位相電流および位相変換した次々位相電流を加算して逆
相電流を算定する手段と、
逆相電流が零から増加した時に、又は、設定値を増加した時に、2相短絡故障の標定動
作を開始する手段を備えた
ことを特徴とする請求項11記載の送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項13】
正相電流が設定値を超過した時に、又は、正相電流の位相ずれを検出した時に、2相以
上の短絡故障の標定動作を開始する手段を備えた
ことを特徴とする請求項11記載の送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項14】
3相の各相電線に夫々対向する非接触の電界磁界センサを鉄塔に設けると共に、電界磁
界センサの検出信号を演算し故障区間を標定する故障区間検出器を鉄塔に設け、
故障区間検出器は、
3相中任意相の電流を基準電流と成すと共に、該基準電流の位相を基準位相と成し、
位相が基準位相より120°遅れた次位相電流の位相を120°遅らせて位相変換する
と共に、位相が基準位相より240°遅れた次々位相電流の位相を120°進めて位相変
換し、基準電流、位相変換した次位相電流および位相変換した次々位相電流を加算して逆
相電流を算定する手段と、
電流と電圧の位相が同一位相の時に、基準電流、位相変換した次位相電流および位相変
換した次々位相電流の位相を比較基準位相に設定するか、電流と電圧の位相が非同一位相
の時に、基準電流、位相変換した次位相電流および位相変換した次々位相電流の位相を1
80°変換して比較基準位相を設定し、故障発生時に逆相電流の位相と比較基準位相を比
較する手段と、
逆相電流の位相が比較基準位相のいずれかの位相の±30°未満の範囲内の時は、故障
区間検出器を設けた鉄塔の「鉄塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「老番側」で1相地
絡故障又は2相短絡故障が発生したことを標定する手段と、
逆相電流の位相が比較基準位相の全ての位相の±30°未満以外の範囲内の時は、故障
区間検出器を設けた鉄塔の「鉄塔番号」と、該鉄塔からの方向を示す「若番側」で1相地
絡故障又は2相短絡故障が発生したことを標定する手段を備えた
ことを特徴とする送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項15】
逆相電流が零から増加した時に、又は、設定値を超過した時に、1相地絡故障又は2相
短絡故障の標定動作を開始する手段を備えた
ことを特徴とする請求項14記載の送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項16】
正相電流または逆相電流の位相の比較対象となる比較基準位相は、電流の位相に変えて
電圧の位相と成す手段を備えた
ことを特徴とする請求項11、12、13、14又は15記載の送配電線路の故障区間
標定装置。
【請求項17】
請求項9、11および14記載の標定装置を備えた
ことを特徴とする送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項18】
請求項10、12、13および15記載の標定装置を備えた
ことを特徴とする請求項17記載の送配電線路の故障区間標定装置。
【請求項19】
請求項16記載の標定装置を備えた
ことを特徴とする請求項17又は18記載の送配電線路の故障区間標定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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