説明

送電線事故区間検出装置

【課題】送電線の充電電流を小さくするために送電線を複数の区間に分割する場合、盲点領域や重複領域が生じることなく事故発生区間を正確に検出できるようにする。
【解決手段】送電線100に沿って異なる位置に配設され、送電線100に流れる電流を検出する複数の光電流センサS1〜S5と、隣り合う2つの光電流センサS1〜S5が検出した電流に基づいて当該2つの電流センサS1〜S5に挟まれた区間で事故が生じたか否かを判定するディジタル形電流差動リレー104と、ディジタル形電流差動リレー104が事故発生と判定した区間の情報を出力する出力リレー108とを備え、両端の光電流センサS1、S5以外の光電流センサS2〜S4を、光電流センサS2〜S4の両側の区間を形成するために兼用することにより、隣り合う2つの光電流センサS1〜S5によって挟まれた区間が複数連続的に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線の事故区間を検出する送電線事故区間検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力を送電する送電線は、架空送電線と地中送電線とに分けられる。架空送電線は、鉄塔、木柱、コンクリート柱等に電力ケーブルを敷設し電力を空中搬送するもので、雷、鳥獣、風雨、設備の劣化等の要因によって送電線事故が発生する。
また、地中送電線は、洞道等に電力ケーブルを敷設し電力を地中搬送するもので、設備の劣化等による送電設備の絶縁破壊によって送電線事故が発生する。
【0003】
そこで、送電設備に各種センサを取り付け、送電線のどの区間で事故が発生したのかを検出する送電線事故区間検出装置が開発されている。
地中送電線の両端に電流センサを取り付け、各電流センサの電流検出情報を用いた電流差動リレーによって、地中送電線の地絡事故が発生した事故区間を検出する従来の送電線事故区間検出装置では、各電流センサから前記電流差動リレーに流入する電流のベクトル和である差動電流に基づいて事故区間を検出するように構成している。前記送電線事故区間検出装置では、区間外部の事故時に発生する地中送電線の充電電流の流出によって電流差動リレーが不要に動作しないような対策が行われている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載された発明では、地中送電線の充電電流に所定の余裕度を加味した電流値を、事故が生じたか否かを判定する基準電流として電流差動リレーの検出感度を下げることにより、電流差動リレーが不要に動作しないようにしている。これにより、地中送電線の事故区間を検出することは可能である。
しかしながら、特許文献1記載の発明では、地絡事故を確実に検出するためには、検出感度を、中性点抵抗器電流を基準に選定(通常60%〜80%)する必要があるが、長距離地中送電線等では、充電電流が中性点抵抗器電流よりも大きくなるため、適用できないという問題がある。
【0005】
一方、特許文献2には、いくつかに分割した送電線の各区間毎に、その両端部に変流器を設置し、両変流器の出力の差電流を検出器にて検出するようにした発明が開示されている。
特許文献1記載の発明に係る前記問題を解決するために、特許文献2に記載された発明を利用するとすれば、図5に示すように、中性点抵抗111を介して接地された送電線100を複数区間(電流センサS1、S2によって挟まれた区間K1、電流センサS3、S4によって挟まれた区間K2)に分割し、各区間K1、K2毎に電流差動リレーRY1、RY2で事故検出を行うようにすることが考えられる。
【0006】
即ち、図5において、電流差動リレーRY1は電流センサS1、S2が検出した電流の差をとり、前記差が所定値以上になると区間K1で事故が発生したと判定する。また、電流差動リレーRY2は電流センサS3、S4が検出した電流の差をとり、前記差が所定値以上になると区間K2で事故が発生したと判定する。これにより、どの区間で事故が発生したかを判定することができる。
しかしながら、図5記載の発明では、各区間K1、K2毎に各区間K1、K2の両端に電流センサS1、S2、S3、S4を配設しているため、各区間が連続せず、区間と区間の間事故を検出できない領域(盲点領域)NKが生じるという問題がある。
【0007】
前記盲点領域を無くす方法として、図6に示すように、送電線100を複数区間(電流センサS1、S2によって挟まれた区間K3、電流センサS3、S4によって挟まれた区間K4)に分割し、各区間K3、K4の一部を重複させて境界領域DKを形成する方法が考えられる。
係る構成により、区間K3で事故が生じた場合は差動リレーRY1によって検出でき、区間K4で事故が生じた場合はRY2区間によって検出することが可能になり、図5のような盲点領域が生じることを防止できる。
【0008】
しかしながら、境界領域DKに事故が発生した場合、差動リレーRY1、RY2の両方が検出することになる。したがって、差動リレーRY1、RY2の両方によって事故が検出された場合、境界領域DKに事故が発生したことを判定するための回路の追加(又は人的な判断手段)が必要になるという問題がある。
このように回路を追加する場合でも、事故発生箇所が境界領域DKなのか、あるいは2区間に跨る同時事故なのかを判定することはできず、事故発生区間を特定できないという問題がある。
【0009】
また、非特許文献1に記載された発明では、区間外部の事故時に地中送電線の充電電流の流出によって生じる差動電流は零相電圧と逆位相になり、区間内部の事故時に生じる差動電流は零相電圧と同位相になることから、零相電圧と差動電流との位相判別要素が逆位相のときは電流差動リレーの動作を阻止するようにしている。
しかしながら、非特許文献1記載の発明では、零相電圧を装置内に取り込めない場合があり、事故区間を判定できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−321316号公報
【特許文献2】特開平6−294837号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「系統保護継電方式の標準的な考え方(デジタル編)」平成4年3月電気事業連合会工務部
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、送電線の充電電流を小さくするために送電線を複数の区間に分割する場合、盲点領域や重複領域が生じることなく事故発生区間を正確に検出できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、送電線に沿って異なる位置に配設され前記送電線に流れる電流を検出し、前記検出した電流値に対応する検出信号を出力する複数の電流センサと、隣り合う2つの前記電流センサからの前記検出信号に基づいて当該2つの電流センサに挟まれた区間で事故が生じたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が事故発生と判定した区間の情報を出力する出力手段とを備え、両端の電流センサ以外の電流センサを、当該電流センサの両側の区間を形成するために兼用することにより、隣り合う2つの電流センサによって挟まれた区間が複数連続的に形成されて成ることを特徴とする送電線事故区間検出装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、送電線の充電電流を小さくするために送電線を複数の区間に分割する場合、盲点領域や重複領域が生じることなく事故発生区間を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の各実施の形態に係る送電線事故区間検出装置のブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置の説明図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置の説明図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置の説明図である。
【図5】送電線事故区間検出装置の説明図である。
【図6】送電線事故区間検出装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置のブロック図で、後述する各実施の形態に共通するブロック図である。
図1において、中性点抵抗111を介して接地された送電線100に沿って複数の光電流センサS1〜S5が配設されている。光電流センサS1〜S5は、ファラデー効果を利用して送電線100に流れる電流を検出するセンサである。
【0017】
光電流センサS1〜S5は、各光電流センサS1〜S5が配設された位置の送電線100に流れる電流を検出し、光ケーブル110−1〜110−5を介して、検出した電流値に対応する光信号を検出信号として検出部102に出力する。図1には5個の光電流センサS1〜S5を配設した例を示しているが、複数個あればよく、送電線100の長さ等に応じて適宜増減することができる。
【0018】
隣り合う2つの光電流センサ(S1とS2、S2とS3、S3とS4、S4とS5)に挟まれた領域は各々、送電線100の地絡事故発生地点を特定するための区間を構成している。
これらの電流センサのうち、送電線100に沿って配設された複数の電流センサS1〜S5のうち、両端の電流センサS1、S5以外の電流センサS2〜S4を、当該電流センサS2〜S4の両側の区間を形成するために兼用することにより、隣り合う2つの電流センサS1〜S5によって挟まれた区間が複数連続的に形成されている。
【0019】
このように各区間は連続しており、前述したような盲点領域や重複領域は存在しないように構成されている。
光電流センサS1〜S5、光ケーブル110−1〜110−5及び検出部102は送電線事故区間検出装置101を構成している。
【0020】
検出部102は、光ケーブル110−1〜110−5を介して光電流センサS1〜S5からの検出信号を受信し前記検出信号に対応するレベルのアナログ電気信号(アナログ検出信号)に変換して出力する光電変換器103、光電変換器103から入力されたアナログ検出信号の中の隣り合う2つの光電流センサS1〜S5に対応するアナログ検出信号に基づいて事故発生区間を判定し、事故発生区間を表す出力リレー108の接点を閉状態に駆動するデジタル形電流差動リレー104、デジタル形電流差動リレー104によって事故発生区間に対応する出力リレー108が閉状態に駆動される出力リレー108、送電線事故区間検出装置101を構成する各電気的構成要素に駆動電力を供給する電源109を備えている。
【0021】
デジタル形電流差動リレー104は、光電変換器103からのアナログ検出信号を増幅して出力するアナログ入力部105、アナログ入力部105からのアナログ検出信号をデジタル信号(デジタル検出信号)に変換して出力するアナログ/デジタル(A/D)変換器106、A/D変換器106から入力されたデジタル検出信号中の隣り合う2つの光電流センサS1〜S5に対応するデジタル検出信号に基づいて事故発生区間を判定し、事故発生区間に対応する出力リレー108の接点を閉状態に駆動する中央処理装置(CPU)107を備えている。
【0022】
光電変換器103及びアナログ入力回路105は、光電流センサS1〜S5に対応する数設けられ又、出力リレー108は区間に対応する数設けられている。A/D変換器106は、各アナログ入力部105から並列に入力されるアナログ検出信号を、時分割的にデジタル検出信号に変換して、CPU107へ直列的に出力する。CPU107は、図示しない記憶部に記憶されたプログラムを実行することにより、後述するような事故発生区間の判定処理等を行う。
ここで、光電流センサS1〜S5は電流検出手段を構成し、検出部102は検出手段を構成し、デジタル形電流差動リレー104は判定手段を構成している。また、光電変換器103は光電変換手段を構成し、CPU107は区間判定手段を構成し、出力リレー108は出力手段を構成している。
【0023】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置の説明図で、図1と同一部分には同一符号を付している。
図2(a)〜(d)は使用する光電流センサ数を変えた場合の例(換言すれば送電線100を分割する区間数を変えた場合の例)であり、2〜5個の光電流センサS1〜S5を使用した場合の、光電流センサS1〜S5と電流差動リレーRY1〜RY4の接続関係を示している。
図2において、中性点抵抗111を介して接地された送電線100に沿って、複数の光電流センサS1〜S5が配設されている。隣り合う2つの光電流センサS1〜S5によって挟まれた領域が、送電線100の事故発生を判定する区間を構成している。
【0024】
例えば、図2(d)の例では、光電流センサS1、S2に挟まれた領域、光電流センサS2、S3に挟まれた領域、光電流センサS3、S4に挟まれた領域、光電流センサS4、S5に挟まれた領域が各々区間を構成している。これらの複数の光電流センサS1〜S5のうち、両端の電流センサS1、S5以外の電流センサS2〜S4を、当該電流センサS2〜S4の両側の区間を形成するために兼用することにより、隣り合う2つの電流センサS1〜s5によって挟まれた区間が複数連続的に形成されている。
【0025】
隣り合う光電流センサS1、S2からの検出信号は電流差動リレーRY1の入力部に入力され、隣り合う光電流センサS2、S3からの検出信号は電流差動リレーRY2の入力部に入力され、隣り合う光電流センサS3、S4からの検出信号は電流差動リレーRY3の入力部に入力され、隣り合う光電流センサS4、S5からの検出信号は電流差動リレーRY4の入力部に入力される。
【0026】
各光電流センサS1〜S5は、送電線100に流れる電流が各区間に流入する方向に流れる場合又は各区間から流出する方向に流れる場合に正極性の電流として検出する。即ち、図2(d)に示すように、送電線100の電流が各光電流センサS1〜S5に対応付けて示した矢印方向に流れるとき正極性の電流として検出し、検出した電流値に対応する検出信号を出力し、前記矢印と逆方向に送電線100の電流が流れるとき負極性の電流として検出し、前記検出した電流値に対応する検出信号を出力する。
【0027】
光電流センサS1〜S5からの検出信号に基づいて、隣り合う2つの光電流センサ(S1とS2、S2とS3、S3とS4、S4とS5)によって挟まれた各区間に流入する電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすとき、当該隣り合う電流センサS1〜S5に挟まれた区間に事故が発生したと判定する。
【0028】
より具体的には、電流差動リレーRY1〜RY4は、隣り合う2つの電流センサS1〜S5からの検出信号に基づいて送電線100を流れる電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定値以上のときリレー接点が閉状態になり、これにより、前記隣り合う電流センサS1〜S5に挟まれた区間に事故が発生したと判定される。隣り合う2つの電流センサS1〜S5からの検出信号に基づいて送電線100を流れる電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定値以上でないときは、電流差動リレーRY1〜RY4が動作せず、前記隣り合う電流センサS1〜S5に挟まれた区間に事故は発生していないと判定する。
【0029】
送電線100の一端側Aに配設された第1番目の光電流センサS1の検出極性(一端側Aから他端側Bへ流れる電流(矢印方向)を正極性の電流と検出する。)を基準として、送電線100の他端側Bに行くに従って、偶数番目の光電流センサS2、S4の検出極性は逆極性、奇数番目の光電流センサS3、S5の検出極性は同極性としている。即ち、N番目の光電流センサの検出極性は、Nが偶数のときは第1番目の光電流センサS1と逆極性、Nが奇数のときは第1番目の光電流センサS1と同極性となるように配設している。
【0030】
これにより、第N(Nは正の整数)番目の電流差動リレーNは、N番目の光電流センサNからの検出信号と(N+1)番目の光電流センサ(N+1)からの検出信号を各々そのままの極性で入力し、交流電気量の加算(ベクトル量の加算)により差動電流(N番目の光電流センサからの検出信号に対応する電流と(N+1)番目の光電流センサからの検出信号に対応する電流とを加算した電流)を検出するように構成されている。このようにして、次の4つの式(1)が得られる。
【0031】
Id(1)=I(1)+I(2)
Id(2)=I(2)+I(3)
Id(3)=I(3)+I(4) ・・・・・(1)
Id(4)=I(4)+I(5)
但し、Id(N)は一端側Aから第N番目の区間の差動電流(ベクトル量)、I(N)は第N番目の光電流センサSNの検出電流(ベクトル量)、I(N+1)は第(N+1)番目の光電流センサS(N+1)の検出電流(ベクトル量)である。
【0032】
隣り合う2つの電流センサSN、S(N+1)からの検出信号を加算することによって得られる差動電流の大きさ(換言すれば、隣り合う2つの電流センサSN、S(N+1)からの検出信号に対応する電流を加算することによって得られる差動電流の大きさ)が所定値以上のとき、前記隣り合う電流センサに挟まれた区間Nに事故が発生したと判定する。
尚、図2において電流差動リレーRY1〜RY4は判定手段を構成している。また、図2の例では、光電流センサS1〜S5が出力する検出信号を加算する際に極性を反転する必要がない。但し、光電流センサS1〜S5を設置する際に極性に注意する必要がある。
【0033】
本発明の第1の実施の形態では、図1に示した構成により、図2に示した検出動作を行うようにしている。
以下、図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置の動作を説明する。
光電流センサS1〜S5は、送電線100に流れる電流を検出して光ケーブル110−1〜110−5を介して、送電線100に流れる電流に対応する光信号の検出信号を検出部102に出力する。
【0034】
検出部102の光電変換器103は、各光電流センサS1〜S5からの検出信号を受信し、対応するレベルのアナログ電気信号に変換してデジタル形電流差動リレー104に入力する。アナログ入力部105は、光電変換器103からのアナログ形式の検出信号を増幅し、A/D変換器106が前記アナログ形式の検出信号をデジタル形式の検出信号に変換する。
【0035】
CPU107は、デジタル形式の検出信号を受信し、図2に関して説明したように、各々隣り合う2つの光電流センサS1〜S5の検出信号を加算し、加算することによって得られる差動電流の大きさが所定値以上か否かを判定する(換言すれば、隣り合う2つの電流センサSN、S(N+1)からの検出信号に対応する電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定値以上か否かを判定する。)。
CPU107は、前記差動電流の大きさが所定値以上と判定すると、当該区間に事故が生じたと判定して、当該区間を表す出力リレー108を閉状態に駆動する。
これにより、図示しない表示装置に、閉状態に駆動された出力リレー108に対応する区間を表示する等の処理が行われる。
【0036】
以上述べたように、本発明の第1の実施の形態によれば、送電線100に沿って異なる位置に配設され、送電線100に流れる電流を検出する複数の電流センサS1〜S5と、隣り合う2つの電流センサS1〜S5が検出した電流に基づいて当該2つの電流センサS1〜S5に挟まれた区間で事故が生じたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が事故発生と判定した区間の情報を出力する出力リレー108とを備え、両端の電流センサS1、S5以外の電流センサS2〜S4を、当該電流センサS2〜S4の両側の区間を形成するために兼用することにより、隣り合う2つの電流センサS1〜S5によって挟まれた区間が複数連続的に形成されて成ることを特徴とする送電線事故区間検出装置が提供される。
【0037】
ここで、例えば前記判定手段は、隣り合う2つの電流センサS1〜S5からの検出信号に基づいて、前記隣り合う2つの電流センサS1〜S5に挟まれた区間に流入する方向の電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすと判定した場合、当該隣り合う電流センサS1〜S5に挟まれた区間に事故が発生したと判定するように構成している。
【0038】
また例えば、複数の電流センサS1〜S5は、送電線100の一端側Aから順に複数配設されると共に、一端側Aから第1番目の電流センサS1の検出極性を基準として、一端側Aから偶数番目に配設された電流センサS2、S4の検出極性は逆極性、一端側Aから奇数番目に配設された電流センサS3、S5の検出極性は同極性とされて成り、前記判定手段は、隣り合う2つの電流センサS1〜S5からの検出信号に基づいて、前記隣り合う2つの電流センサS1〜S5に挟まれた区間に流入する方向の電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすと判定した場合、当該隣り合う電流センサS1〜S5に挟まれた区間に事故が発生したと判定するように構成している。
したがって、本第1の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置によれば、送電線の充電電流を小さくするために送電線を複数の区間に分割する場合、盲点領域や重複領域が生じることなく事故発生区間を正確に検出ことが可能である。
また、少ない数の光電流センサS1〜S5によって構成することが可能になる。
【0039】
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置の説明図で、図1、図2と同一部分には同一符号を付している。
図3(a)〜(d)は使用する光電流センサ数を変えた場合の例であり、各々、2〜5個の光電流センサS1〜S5を使用した場合の、光電流センサS1〜S5と電流差動リレーRY1〜RY4の接続関係を示している。
【0040】
図3において、中性点抵抗111を介して接地された送電線100に沿って、複数の光電流センサS1〜S5が配設されている。隣り合う2つの光電流センサS1〜S5によって挟まれた領域が、送電線100の事故発生地点を判定する区間を構成している。図3の例では、光電流センサS1〜S5が出力する検出信号を加算する際に極性を反転する必要があるが、光電流センサS1〜S5を設置する際に全て同極性で設置できるため、設置時に極性にあまり注意を払う必要がない。
【0041】
例えば、図3(d)の例では、光電流センサS1、S2に挟まれた領域、光電流センサS2、S3に挟まれた領域、光電流センサS3、S4に挟まれた領域、光電流センサS4、S5に挟まれた領域が各々区間を構成している。
隣り合う光電流センサS1、S2からの検出信号のうち、光電流センサS1からの検出信号は電流差動リレーRY1の一方の入力部に直接入力され、光電流センサS2からの検出信号は極性反転回路301によって極性反転された後に電流差動リレーRY1の他方の入力部に入力される。
【0042】
同様に、隣り合う光電流センサS2、S3からの検出信号のうち、光電流センサS2からの検出信号は電流差動リレーRY2の一方の入力部に直接入力され、光電流センサS3からの検出信号は極性反転回路302によって極性反転された後に電流差動リレーRY2の他方の入力部に入力される。
また、隣り合う光電流センサS3、S4からの検出信号のうち、光電流センサS3からの検出信号は電流差動リレーRY3の一方の入力部に直接入力され、光電流センサS4からの検出信号は極性反転回路303によって極性反転された後に電流差動リレーRY3の他方の入力部に入力される。
【0043】
また、隣り合う光電流センサS4、S5からの検出信号のうち、光電流センサS4からの検出信号は電流差動リレーRY4の一方の入力部に直接入力され、光電流センサS5からの検出信号は極性反転回路304によって極性反転された後に電流差動リレーRY4の他方の入力部に入力される。
各光電流センサS1〜S5は電流を検出する極性が全て同一に構成されており、送電線100の電流が一端側Aから他端側B方向に流れときを正極性の電流として検出するように構成されている。即ち、各光電流センサS1〜S5は、各光電流センサS1〜S5に対応付けて示した矢印の方向に送電線100の電流が流れるとき、正極性の電流として検出し、前記矢印と逆方向に送電線100の電流が流れるとき、負極性の電流として検出する。
【0044】
第N番目の電流差動リレーNは、N番目の光電流センサNからの検出電流をそのまま入力し、(N+1)番目の光電流センサ(N+1)からの検出電流は極性反転回路によって極性を反転して入力し、4つの次式(2)で示すように、交流電気量の加算(ベクトル量の加算)により差動電流(N番目の光電流センサからの検出信号に対応する電流と(N+1)番目の光電流センサからの検出信号に対応する電流とを加算した電流)を検出する。
【0045】
Id(1)=I(1)+(−I(2))
Id(2)=I(2)+(−I(3))
Id(3)=I(3)+(−I(4)) ・・・・・(2)
Id(4)=I(4)+(−I(5))
【0046】
但し、Id(N)は一端側Aから第N番目の区間の差動電流(ベクトル量)、I(N)は第N番目の光電流センサSNの検出電流(ベクトル量)、I(N+1)は第(N+1)番目の光電流センサS(N+1)の検出電流(ベクトル量)である。
隣り合う2つの電流センサSN、S(N+1)が検出した電流に対応する検出信号を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすとき、例えば、隣り合う2つの電流センサSN、S(N+1)からの検出信号に対応する電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定値以上のとき、前記隣り合う電流センサSN、S(N+1)に挟まれた区間Nに事故が発生したと判定する。
尚、図3において電流差動リレーRY1〜RY4、極性判定回路301〜304は判定手段を構成している。
【0047】
本発明の第2の実施の形態では、図1に示した構成により、図3に示した検出動作を行うようにしている。
即ち、CPU107は、光電流センサS1〜S5からの検出信号を用いて、前記式(2)により、各区間での差動電流を算出する。前記差動電流の大きさが所定値以上の区間は事故が発生したと判定して、当該区間に対応する出力リレー108を閉状態に駆動する。CPU107は、前記差動電流の大きさが所定値以上の区間が無い場合は、事故が発生していないと判定する。
【0048】
以上述べたように、本第2の実施の形態に係る送電線故障区間検出装置によれば、前記第1の実施の形態と同様に、送電線の充電電流を小さくするために送電線を複数の区間に分割する場合、盲点領域や重複領域が生じることなく事故発生区間を正確に検出ことが可能である。
また、本第2の実施の形態では、全ての電流センサS1〜S5の検出極性は同極性とされて成り、前記判定手段は、隣り合う2つの電流センサS1〜S5が検出した各区間に流入する方向の電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすとき、前記隣り合う2つの電流センサS1〜S5に挟まれた区間に事故が発生したと判定するようにしている。
したがって、光電流センサS1〜S5が出力する検出信号を加算する際に極性を反転する必要があるが、光電流センサS1〜S5を設置する際に全て同極性で設置できるため、極性に対してあまり注意を払う必要がないため、設置が容易である。
【0049】
図4は、本発明の第3の実施の形態に係る送電線事故区間検出装置の説明図で、図1、図2と同一部分には同一符号を付している。
図4(a)〜(d)は使用する光電流センサ数を変えた場合の例であり、各々、2〜5個の光電流センサS1〜S5を使用した場合の、光電流センサS1〜S5と電流差動リレーRY1〜RY4の接続関係を示している。
【0050】
図4において、中性点抵抗111を介して接地された送電線100に沿って、複数の光電流センサS1〜S5が配設されている。隣り合う2つの光電流センサによって挟まれた領域が、送電線100の事故発生地点を判定する区間を構成している。図4の例では、光電流センサS1〜S5が出力する検出信号を加算する際に極性を反転する必要があるが、光電流センサS1〜S5を設置する際に第1番目の光電流センサS1以外は全て逆極性で設置できるため、設置時に極性に対する注意をあまり払う必要がない。
【0051】
例えば、図4(d)の例では、光電流センサS1、S2に挟まれた領域、光電流センサS2、S3に挟まれた領域、光電流センサS3、S4に挟まれた領域、光電流センサS4、S5に挟まれた領域が各々区間を構成している。
隣り合う光電流センサS1、S2からの検出信号はともに、電流差動リレーRY1の一方の入力部、他方の入力部に各々直接入力される。
【0052】
隣り合う光電流センサS2、S3からの検出信号のうち、光電流センサS2からの検出信号は極性反転回路401によって極性反転された後に電流差動リレーRY2の一方の入力部に入力され、光電流センサS3からの検出信号は電流差動リレーRY2の他方の入力部に直接入力される。
同様に、隣り合う光電流センサS3、S4からの検出信号のうち、光電流センサS3からの検出信号は極性反転回路402によって極性反転された後に電流差動リレーRY3の一方の入力部に入力され、光電流センサS4からの検出信号は電流差動リレーRY3の他方の入力部に直接入力される。
【0053】
また、隣り合う光電流センサS4、S5からの検出信号のうち、光電流センサS4からの検出信号は極性反転回路403によって極性反転された後に電流差動リレーRY4の一方の入力部に入力され、光電流センサS5からの検出信号は電流差動リレーRY4の他方の入力部に直接入力される。
このように、第N番目の光電流センサが検出した検出信号は(N−1)区間の電流差動リレー(N−1)にそのまま入力し、第N区間の電流差動リレーNには極性を反転して入力する。これにより、各区間の電流差動リレーRY1〜RY4の差動電流検出は、4つの次式(3)で示すように、全区間とも同一原理式で行うことが可能になる。
【0054】
Id(1)=I(1)+I(2)
Id(2)=(−I(2))+I(3)
Id(3)=(−I(3))+I(4) ・・・・・(3)
Id(4)=(−I(4))+I(5)
【0055】
但し、Id(N)は一端側Aから第N番目の区間の差動電流(ベクトル量)、I(N)は第N番目の光電流センサSNの検出電流(ベクトル量)、I(N+1)は第(N+1)番目の光電流センサS(N+1)の検出電流(ベクトル量)である。
隣り合う2つの電流センサSN、S(N+1)が検出した電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすとき(例えば差動電流の大きさが所定値以上のとき)、前記隣り合う電流センサに挟まれた区間Nに事故が発生したと判定する。
尚、図4において電流差動リレーRY1〜RY4、極性判定回路401〜403は判定手段を構成している。
【0056】
本発明の第3の実施の形態では、図1に示した構成により、図4に示した検出動作を行うようにしている。
即ち、CPU107は、光電流センサS1〜S5からの検出信号を用いて、前記式(3)により、各区間での差動電流(N番目の光電流センサからの検出信号に対応する電流と(N+1)番目の光電流センサからの検出信号に対応する電流とを加算した電流)を算出する。前記差動電流の大きさが所定値以上の区間は事故が発生したと判定して、当該区間に対応する出力リレー108を閉状態に駆動する。CPU107は、前記差動電流の大きさが所定値以上の区間が無い場合は、事故が発生していないと判定する。
【0057】
以上述べたように、本第3の実施の形態に係る送電線故障区間検出装置によれば、前記第1の実施の形態と同様に、送電線の充電電流を小さくするために送電線を複数の区間に分割する場合、盲点領域や重複領域が生じることなく事故発生区間を正確に検出ことが可能である。
また、複数の電流センサS1〜S5は、送電線100の一端側Aから順にN個配設されて成り、前記判定手段は、一端側Aから第1番目の電流センサS1の検出極性を基準として他の電流センサS2〜S5の検出極性を逆極性とし、前記隣り合う2つの電流センサS1〜S5が検出した区間に流入する方向の電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定値以上のとき、当該区間に事故が発生したと判定することを特徴としている。
したがって、光電流センサS1〜S5が出力する信号を加算する際に極性を反転する必要があるが、光電流センサS1〜S5を設置する際に全て同極性で設置できるため、設置時に極性に対する注意をあまり払う必要がない等の効果を奏する。
【0058】
尚、前記各実施の形態において、送電線100は、架空送電線と地中送電線のいずれであってもよい。
また、本発明では電流センサとしては、前述した光電流センサの他、従来の巻線型変流器(CT)でも適用することが可能である。但し、巻線型CTの場合、電流センサの設置については、分割できるCTを使用するか、さもなくば送電線の接続点において送電線の周りに全体を設置する工事を要する。これに対して光電流センサの場合は、電流センサを送電線に巻き付けるだけなので任意の箇所において設置できたり、試験的に設置や測定を行い、その後撤去することも容易であり、保守の上からも又経済的にも大きな効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0059】
架空送電線や地中送電線の事故区間検出に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
100・・・送電線
110−1〜110−5・・・光ケーブル
111・・・中性点抵抗
S1〜S5・・・光電流センサ
102・・・検出部
103・・・光電変換器
104・・・デジタル形電流差動リレー
105・・・アナログ入力部
106・・・アナログ/デジタル変換器
107・・・CPU
108・・・出力リレー
109・・・電源
301〜304、401〜403・・・極性反転回路
RY1〜RY4・・・電流差動リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線に沿って異なる位置に配設され前記送電線に流れる電流を検出し、前記検出した電流値に対応する検出信号を出力する複数の電流センサと、
隣り合う2つの前記電流センサからの前記検出信号に基づいて当該2つの電流センサに挟まれた区間で事故が生じたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が事故発生と判定した区間の情報を出力する出力手段とを備え、
両端の電流センサ以外の電流センサを、当該電流センサの両側の区間を形成するために兼用することにより、隣り合う2つの電流センサによって挟まれた区間が複数連続的に形成されて成ることを特徴とする送電線事故区間検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、隣り合う2つの電流センサからの検出信号に基づいて、前記隣り合う2つの電流センサに挟まれた区間に流入する方向の電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすと判定した場合、当該隣り合う電流センサに挟まれた区間に事故が発生したと判定することを特徴とする請求項1記載の送電線事故区間検出装置。
【請求項3】
前記複数の電流センサは、前記送電線の一端側から順に複数配設されると共に、前記一端側から第1番目の電流センサの検出極性を基準として、前記一端側から偶数番目に配設された電流センサの検出極性は逆極性、前記一端側から奇数番目に配設された電流センサの検出極性は同極性とされて成り、
前記判定手段は、隣り合う2つの電流センサからの検出信号に基づいて、前記隣り合う2つの電流センサに挟まれた区間に流入する方向の電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすと判定した場合、当該隣り合う電流センサに挟まれた区間に事故が発生したと判定することを特徴とする請求項1又は2記載の送電線事故区間検出装置。
【請求項4】
全ての前記電流センサの検出極性は同極性とされて成り、
前記判定手段は、隣り合う2つの電流センサからの検出信号に基づいて、前記隣り合う2つの電流センサに挟まれた区間に流入する方向の電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすと判定した場合、当該隣り合う電流センサに挟まれた区間に事故が発生したと判定することを特徴とする請求項1又は2記載の送電線事故区間検出装置。
【請求項5】
前記複数の電流センサは、前記送電線の一端側から順に複数配設されると共に、前記一端側から第1番目の電流センサは、他の全ての電流センサの検出極性とは逆極性とされて成り、
前記判定手段は、隣り合う2つの電流センサからの検出信号に基づいて、前記隣り合う2つの電流センサに挟まれた区間に流入する方向の電流を加算することによって得られる差動電流の大きさが所定条件を満たすと判定した場合、当該隣り合う電流センサに挟まれた区間に事故が発生したと判定することを特徴とする請求項1又は2記載の送電線事故区間検出装置。
【請求項6】
前記各電流センサは、検出した電流値に対応する光信号を前記検出信号として出力する光電流センサであり、
前記判定手段は、前記各光電流センサからの前記検出信号をアナログ電気信号に変換して出力する光電変換手段と、前記光電変換手段からのアナログ形式の検出信号をデジタル形式の検出信号に変換して出力するアナログ/デジタル変換手段と、前記アナログ/デジタル変換手段からのデジタル形式の検出信号に基づいて、事故が発生した区間を判定する区間判定手段とを備えて成り、
前記出力手段は、前記区間判定手段が事故発生と判定した区間の情報を出力することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一に記載の送電線事故区間検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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