説明

送電線故障箇所標定方法、装置並びにプログラム

【課題】従来の急峻な変化だけでなく緩やかな変化のサージ到達時点の抽出精度を向上させて故障箇所の標定精度を向上させることを可能とする。
【解決手段】送電線の両端において電圧を計測し(S1)、電圧の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧波形データの量子化雑音の除去を行う(S2)と共に量子化雑音除去後の計測時点別電圧波形データを折れ線近似し(S3〜S7)、折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち一定の条件を満たす最初の折れ点、又は、所定の条件を満たさない場合には近似折れ線のピーク点である折れ点を計測時点別電圧波形データにおける送電線の故障によるサージ電圧が到達した時点であると判断し(S8)、送電線の両端におけるサージ電圧が到達した時点の差に基づいて送電線の故障箇所を標定する(S9)ようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線故障箇所標定方法、装置並びにプログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、落雷等による送電線の故障箇所を送電線の端点において検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線では、落雷により碍子(がいし)が破損したり風氷雪により電線同士が接触したりすると停電を伴う故障が発生する場合がある。そのような場合には保守を行うために速やかに現地へ出向し対応する必要があるが、故障箇所の特定は容易ではなく多大な労力を要している。
【0003】
落雷等の主要な障害による故障箇所の早期発見を目的とする従来の送電線の故障箇所標定方法としては、例えば送電線故障情報システムがある(非特許文献1,2,3)。この送電線故障情報システムは、落雷等により送電線の一点(即ち故障箇所)で生じたサージ電圧・サージ電流(以下、単にサージとも表記する)は送電線の両側に伝播するという性質を利用するものであり、送電線の端点の電気所等の検出局に電磁界センサーを設置し、当該電磁界センサーで故障箇所で発生するサージを計測する。そして、予め設定されたトリガーレベルを超える電圧・電流(現実の計測の対象は電界・磁界である)が計測された場合に、故障箇所で発生したサージの影響が現れた電圧・電流波形の送電線の両端点の検出局への到達時間差Δtから数式1を用いて故障箇所を標定するものである。
【0004】
(数1)x=(L−νΔt)/2
ここに、x:送電線の一方の端点から故障箇所までの距離,L:送電線亘長,ν:送電線中のサージの伝播速度,Δt:故障波形の到達時間差。
【0005】
【非特許文献1】酒井晃 他:送電線故障情報システムFASTを用いた誘導雷サージの観測,平成18年電気・情報関係学会北海道支部連合大会,p.49,2006年
【非特許文献2】酒井晃 他:送電線故障情報システムFASTによる雪害事故時の標定精度,平成19年度電気学会全国大会,p.221,2007年
【非特許文献3】A.Tanimura,M.Kobayashi,T.Nakazawa,T.Sawada,Y.Kubouchi,and E.Tsukazaki,"A New Fault Locator System for Overhead Transmission Line"," in Proc. ICEE2004,p.OF3-6.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1及び2の送電線故障情報システムでは、特に22kVや33kV非接地系送電線では樹木接触や雪害・塩害等による障害も多く、この場合のサージの変化の立ち上がりは緩やかであり、例えば図7に示すように緩やかなサージの変化に微細な雑音が含まれた波形が量子化されている場合には(図中符号101)、落雷等によって生じたサージが送電線を伝播して検出局に到達した影響が電圧・電流波形に現れる時点(以下、サージ到達時点と呼ぶ;図中符号102)を誤って検出してしまう場合や検出できない場合もあり故障箇所の標定の信頼性が高いとは言えないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、急峻な変化だけでなく緩やかな変化のサージ到達時点の抽出精度を向上させて故障箇所の標定精度を向上させることができる送電線故障箇所標定方法、装置並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の送電線故障箇所標定方法は、送電線の両端において電圧若しくは電流を計測し、電圧若しくは電流の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形データの量子化雑音の除去を行うと共に量子化雑音除去後の計測時点別電圧若しくは電流波形データを折れ線近似し、折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、計測時点別電圧若しくは電流波形データにおける送電線の故障によるサージ電圧若しくは電流が到達した時点であると判断し、送電線の両端におけるサージ電圧若しくは電流が到達した時点の差に基づいて送電線の故障箇所を標定するようにしている。
【0009】
また、請求項2記載の送電線故障箇所標定装置は、送電線の両端において計測している電圧若しくは電流の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形データが入力される手段と、計測時点別電圧若しくは電流波形データの量子化雑音の除去を行う手段と、量子化雑音除去後の計測時点別電圧若しくは電流波形データの折れ線近似を行う手段と、折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、抽出すると共に抽出した折れ点を計測時点別電圧若しくは電流波形データにおける送電線の故障によるサージ電圧若しくは電流が到達した時点であると判断する手段と、送電線の両端におけるサージ電圧若しくは電流が到達した時点の差に基づいて送電線の故障箇所を標定する手段とを有するようにしている。
【0010】
また、請求項3記載の送電線故障箇所標定プログラムは、送電線の両端において計測している電圧若しくは電流の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形データが入力されるコンピュータに、計測時点別電圧若しくは電流波形データの入力を受ける処理と、計測時点別電圧若しくは電流波形データの量子化雑音の除去を行う処理と、量子化雑音除去後の計測時点別電圧若しくは電流波形データの折れ線近似を行う処理と、折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、抽出すると共に抽出した折れ点を計測時点別電圧若しくは電流波形データにおける送電線の故障によるサージ電圧若しくは電流が到達した時点であると判断する処理と、送電線の両端におけるサージ電圧若しくは電流が到達した時点の差に基づいて送電線の故障箇所を標定する処理とを行わせるようにしている。
【0011】
(条件1−1)Δy>max(α・R,1) 且つ Δy/Δx>β
(条件1−2)Δy>γ
ただし、Δx:隣り合う折れ点の時間差,Δy:隣り合う折れ点の電圧若しくは電流レベル差,R:電圧若しくは電流波形全体の最大レベルと最小レベルとの間の差。
また、α,β,γ:定数。
【0012】
なお、本発明において、電圧若しくは電流の時系列の推移のデータのことを計測時点別電圧若しくは電流波形データと呼び、当該波形データにおける変位が最大の箇所のことをピーク点と呼ぶ。
【0013】
この送電線故障箇所標定方法、装置並びにプログラムによると、送電線の両端において計測された計測時点別電圧若しくは電流波形データの量子化雑音の除去を行うようにしているので、電圧若しくは電流波形に量子化単位と同程度の微細な高調波雑音が含まれる場合のデジタルデータへの量子化の際の微細振動が除去される。
【0014】
また、本発明によると、一定時間内の計測時点別電圧若しくは電流波形データ全体を折れ線近似するようにしているので、波形の急峻な変化が認められる比較的狭い領域に限って分析するのではなく波形全体を分析して波形の緩急の変化を捉えることができ、平坦から緩やかな変化または緩やかな変化から急峻な変化などが生じる変化点である近似折れ線の頂点の折れ点もサージ到達時点の候補として導出することができる。
【0015】
ここで、故障箇所で発生したサージは送電線を伝播する過程で変歪する一方でサージの波頭はこのような変化を受けにくいので、基本的に波頭をサージ到達時点とするのが適切である。しかし、誘導電圧による前駆現象が発生している雷の場合には、前駆現象による波頭よりも雷の主放電サージによる変位が最大の箇所(即ちピーク点)の方が特徴が明確であるので到達時点として適している。
【0016】
そして、本発明は、前駆現象の有無に応じてサージ到達時点特定の判断基準を切り替えるようにしているので、計測時点別電圧若しくは電流波形データを近似する折れ線の折れ点の中から波形の特性に応じて適切な到達時点が選択される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の送電線故障箇所標定方法、装置並びにプログラムによれば、電圧若しくは電流波形に量子化単位と同程度の微細な高調波雑音が含まれる場合のデジタルデータへの量子化の際の微細振動が除去されるので、急峻な変化だけでなく緩やかな変化のサージ到達時点の抽出精度を向上させて故障箇所の標定精度の向上を図ることが可能になる。
【0018】
また、本発明によれば、波形全体を分析して波形の緩急の変化を捉えることができ、平坦から緩やかな変化または緩やかな変化から急峻な変化などが生じる変化点である近似折れ線の頂点の折れ点もサージ到達時点の候補として導出することができるので、急峻な変化だけでなく緩やかな変化のサージ到達時点の抽出精度を向上させて故障箇所の標定精度の向上を図ることが可能になる。
【0019】
さらに、本発明によれば、計測時点別電圧若しくは電流波形データを近似する折れ線の折れ点の中から波形の特性に応じて適切な到達時点が選択されるので、急峻な変化だけでなく緩やかな変化のサージ到達時点の抽出精度を向上させて故障箇所の標定精度の向上を図ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1から図6に、本発明の送電線故障箇所標定方法、装置並びにプログラムの実施形態の一例を示す。この送電線故障箇所標定方法は、送電線4の両端において電圧若しくは電流を計測し、電圧若しくは電流の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形データの量子化雑音の除去を行うと共に量子化雑音除去後の計測時点別電圧若しくは電流波形データを折れ線近似し、折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、計測時点別電圧若しくは電流波形データにおける送電線4の故障によるサージ電圧若しくは電流が到達した時点であると判断し、送電線4の両端におけるサージ電圧若しくは電流が到達した時点の差に基づいて送電線4の故障箇所Xを標定するようにしている。
【0022】
(条件1−1)Δy>max(α・R,1) 且つ Δy/Δx>β
(条件1−2)Δy>γ
ただし、Δx:隣り合う折れ点の時間差,Δy:隣り合う折れ点の電圧若しくは電流レベル差,R:電圧若しくは電流波形全体の最大レベルと最小レベルとの間の差。
また、α,β,γ:定数。
【0023】
ここで、以下の説明においては、電圧若しくは電流のことを単に電圧と表記する。
【0024】
そして、上記送電線故障箇所標定方法は、図1に示すように、監視対象の送電線の端点における計測時点別電圧波形データの入力を受けるステップ(S1)と、S1の処理で入力された計測時点別電圧波形データの量子化雑音の除去を行うステップ(S2)と、S2の処理が施された量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データの直線近似を行うステップ(S3)と、量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データのうち近似折れ線による近似の誤差の絶対値が最大になる時点を選択するステップ(S4)と、最大近似誤差と近似収束判断閾値とを比較して近似折れ線による量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データの近似処理が収束しているか否かを判断するステップ(S5)と、S4の処理の結果得られる近似誤差の絶対値が最大になる点を近似折れ線の折れ点として追加するステップ(S6)と、S2の処理が施された量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データについて近似折れ線始点及び近似折れ線終点並びに全ての折れ点を用いて折れ線近似を行うステップ(S7)と、近似折れ線の形状の特性に基づいてサージ到達時点の同定を行うステップ(S8)と、送電線の両端におけるサージ電圧が到達した時点の差に基づいて送電線の故障箇所を標定するステップ(S9)とからなる処理構成によって実現される。
【0025】
また、上記送電線故障箇所標定方法は、本発明の送電線故障箇所標定装置として実現される。本発明の送電線故障箇所標定装置は、送電線の両端において計測している電圧の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧波形データが入力される手段と、計測時点別電圧波形データの量子化雑音の除去を行う手段と、量子化雑音除去後の計測時点別電圧波形データの折れ線近似を行う手段と、折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、一定時間の計測時点別電圧の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、抽出すると共に抽出した折れ点を計測時点別電圧波形データにおける送電線の故障によるサージ電圧が到達した時点であると判断する手段と、送電線の両端におけるサージ電圧が到達した時点の差に基づいて送電線の故障箇所を標定する手段とを備える。
【0026】
上述の送電線故障箇所標定方法並びに装置は、本発明の送電線故障箇所標定プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、送電線故障箇所標定プログラムをコンピュータ上で実行する場合を例に挙げて説明する。
【0027】
送電線故障箇所標定プログラム17を実行するための本実施形態の送電線故障箇所標定装置10の全体構成を図2に示す。この送電線故障箇所標定装置10は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線により接続されている。
【0028】
制御部11は、記憶部12に記憶されている送電線故障箇所標定プログラム17により送電線故障箇所標定装置10全体の制御並びに送電線の故障箇所の標定に係る演算を行うものであり、例えばCPUである。
【0029】
記憶部12は、少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。入力部13は、少なくとも作業者の命令を制御部11に与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。表示部14は、制御部11の制御により文字や図形等の表示を行うものであり、例えばディスプレイである。メモリ15は、制御部11が各種制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となる。
【0030】
送電線4の両端において計測している電圧の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧波形データが入力される送電線故障箇所標定装置10の制御部11には、送電線故障箇所標定プログラム17を実行することにより、計測時点別電圧波形データの入力を受けるデータ入力受部11aと、計測時点別電圧波形データの量子化雑音の除去を行う量子化雑音除去部11bと、量子化雑音除去後の計測時点別電圧波形データの折れ線近似を行う直線近似部11c及び誤差最大時点判断部11d及び近似収束判断部11e及び折れ点追加部11f及び折れ線近似部11gと、折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、一定時間の計測時点別電圧波形の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、抽出すると共に抽出した折れ点を計測時点別電圧波形データにおける送電線の故障によるサージ電圧が到達した時点であると判断する到達時点同定部11hと、送電線の両端におけるサージ電圧が到達した時点の差に基づいて送電線の故障箇所を標定する故障箇所標定部11iとが構成される。
【0031】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、解析局1に送電線故障箇所標定装置10が設置されると共に、両端に検出局2,検出局3が設けられた送電線4の途中で故障が発生し、検出局2及び3から計測データを解析局1に送って送電線故障箇所標定装置10において故障箇所Xの位置の標定を行う場合を例に挙げて説明する。なお、送電線4の全長は既知であるとする。
【0032】
検出局2,3は、計測器5と、波形記録装置6と、通信装置7と、高精度時計8とを有する。
【0033】
計測器5は送電線4の広帯域の電圧波形を計測するものである。本発明の計測器5としては、例えば、0.2μ秒以下のサンプリング間隔で電圧(又はその相当物である電界若しくは磁界等)を計測すると共に1000μ秒程度以上のデータを記録することができる装置であれば良い。具体的には例えば電磁界センサーが用いられる。
【0034】
波形記録装置6は、計測器5から送られてくる電圧の大きさや変動の度合いが予め設定されたトリガーレベルを超えた場合にトリガーレベルを超えた時点の前後一定時間の電圧波形を記録(即ち保存)すると同時に解析局1に当該一定時間の計測データを送信する。なお、本実施形態では、計測器5によって計測される電圧と電流とのうち電圧の変動に着目して送電線4の故障箇所Xを標定する場合について説明する。
【0035】
計測データ送信のトリガーレベルは、所定の割合で送電電圧が増減した場合とする。増減の程度は特定の値に限定されるものではなく、例えば送電電圧の5%〜60%程度の範囲で設定することが考えられる。
【0036】
また、電圧の大きさがトリガーレベルを超える増減をした場合に波形記録装置6が解析局1に送信する電圧波形の計測データの時間長は、例えば電圧の変動の度合いがトリガーレベルに達した時点の前後500μ秒以上ずつ即ち全体で1000μ秒以上に亘る電圧波形の計測データが送信されるようにすることが考えられる。
【0037】
計測時点別電圧波形データは通信装置7及び9を介して波形記録装置6から送電線故障箇所標定装置10のデータ入力受部11aに入力される。
【0038】
なお、検出局2,3における計測時刻は同期される。全ての検出局における計測時刻を同期する方法は高精度時計8を用いる。
【0039】
また、検出局2,3は通信装置7を介して計測時点別電圧波形データを解析局1に送信する。通信装置7としては、解析局1への計測時点別電圧波形データの送信に用いられる装置や仕組みに対応して当該装置や仕組みと波形記録装置6とを接続する装置であって具体的には例えば電話回線やインターネット回線と波形記録装置6との接続装置が用いられる。
【0040】
解析局1は、送電線故障箇所標定装置10と通信装置9とを有する。送電線故障箇所標定装置10は、通信装置9を介して検出局2,3から送信される計測時点別電圧波形データを用いて送電線4の故障箇所Xの標定を行う。なお、通信装置9としては通信装置7と同様の接続装置が用いられる。
【0041】
なお、各処理の説明においては明記しないが、解析局1は、検出局2から送信される計測時点別電圧波形データと検出局3から送信される計測時点別電圧波形データとのそれぞれについて以下のS1からS9までの処理を行う。
【0042】
本発明の送電線故障箇所標定方法の実行にあたっては、まず、制御部11のデータ入力受部11aは、監視対象の送電線の端点における計測時点別電圧波形データの入力を受ける(S1)。
【0043】
具体的には、本実施形態では、電圧の大きさがトリガーレベルである送電電圧の10%を超える増減をした場合に6000時点の計測時点別電圧波形データが通信装置7及び通信装置9を介して波形記録装置6からデータ入力受部11aに入力される。
【0044】
そして、データ入力受部11aは、入力された計測時点別電圧波形データをメモリ15に記憶させる。
【0045】
次に、制御部11の量子化雑音除去部11bは、S1の処理で入力された計測時点別電圧波形データの量子化雑音の除去を行う(S2)。
【0046】
計測器5によって計測される電圧波形に量子化単位と同程度の微細な高調波雑音が含まれると、デジタルデータに量子化する際に±1の範囲で電圧レベルに振動が生じる。
【0047】
そして、電圧レベルの振動は、電圧波形の時系列推移における緩やかな立ち上がり点の見極めを困難にする。そこで、本発明では、S1の処理で入力された計測時点別電圧波形データに対し、デジタルデータに量子化する際の微細振動である量子化雑音の除去処理を施す。
【0048】
量子化雑音の除去処理の方法は、計測時点別電圧波形データ中の局所的な雑音(即ち、量子化の単位と同程度の微細振動)を除去することができる方法であれば何れの方法でも良く、特定の方法に限定されるものではない。本実施形態では、±1以内の変動をする区間に対して、画像処理においていわゆるゴマ塩雑音と呼ばれる雑音の除去処理に使われるメディアンフィルタなどの局所的多数決処理と同様の処理を行って量子化雑音を除去する。なお、局所的多数決処理自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する(酒井幸市:デジタル画像処理入門,CQ出版,2002年)。
【0049】
量子化雑音除去部11bは、S1の処理において入力されメモリ15に記憶された計測時点別電圧波形データをメモリ15から読み込む。そして、計測時点別電圧波形データに対し局所的多数決処理を用いて量子化雑音の除去処理を行う。
【0050】
そして、量子化雑音除去部11bは、量子化雑音除去処理後の計測時点別電圧波形データをメモリ15に記憶させる。
【0051】
続いて、送電線故障箇所標定装置10は、落雷等によって送電線4の故障箇所Xで生じたサージが送電線4を伝播して検出局2,3に到達した影響が電圧波形に現れるサージ到達時点を同定するための処理を行う。
【0052】
ここで、電圧波形データの急峻な変化は従来手法によるように比較的狭い領域の分析で検出することが可能である。しかし、緩い変化は局所的にはほぼ一定値であり、数レベル以下の微細な電圧レベルの変化の発生間隔の違いによって一定の増加傾向や傾向の変化が生じる。このため、波形全体を分析して波形の緩急の変化を適切にモデル化する必要がある。
【0053】
本発明では、電波波形データにおけるサージ到達時点を同定するために区分線形近似(即ち折れ線近似;この折れ線のことを近似折れ線と呼ぶ)を用いる。近似折れ線の「折れ点」は、平坦から緩やかな変化や緩やかな変化から急峻な変化などが生じる複数の「変化点」に対応し、サージ到達時点の候補となる。波形の折れ線近似手法には複数の手法があるが、本実施形態では、平均誤差最小化などに比べて曲率が変化する点を的確に捕らえ易く且つ高速な解法であることを考慮して最大絶対値誤差の最小化を行うトップダウン手法を用いる。
【0054】
そこで、送電線故障箇所標定装置10は、量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データに対して波形変化の緩急のモデル化のためにS3〜S7の処理を行って電圧波形データ系列の区分線形近似(即ち折れ線近似)の近似誤差の絶対値の最大値が閾値以下になる近似折れ線を求める(図4)。
【0055】
まず、制御部11の直線近似部11cは、S2の処理が施された量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データの直線近似を行う(S3)。
【0056】
具体的には、直線近似部11cは、S2の処理においてメモリ15に記憶させた量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データを読み込む。
【0057】
ここで、以下において、S1の処理において入力された計測データの始まりの時点と当該時点における電圧レベルとの組み合わせである計測データ点を近似折れ線始点と呼び、計測データの終わりの時点と当該時点における電圧レベルとの組み合わせである計測データ点を近似折れ線終点と呼ぶ。なお、図4において、符号21sの点が近似折れ線始点であり、符号21eの点が近似折れ線終点である。また、符号22(22a〜22eを含む)の各点は量子化雑音除去後の計測時点別電圧波形データのプロットである。
【0058】
直線近似部11cは、近似折れ線始点21sと近似折れ線終点21eとを結ぶ直線20の傾き及び切片を求める。
【0059】
そして、直線近似部11cは、近似折れ線始点及び近似折れ線終点をメモリ15に記憶させると共に、この二点を結ぶ直線の傾き及び切片を近似折れ線の傾き及び切片としてメモリ15に記憶させる。
【0060】
次に、制御部11の誤差最大時点判断部11dは、量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データのうち近似折れ線による近似の誤差の絶対値が最大になる時点を選択する(S4)。
【0061】
具体的には、誤差最大時点判断部11dは、S2の処理においてメモリ15に記憶された量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データをメモリ15から読み込むと共に、メモリ15に記憶されている近似折れ線の傾き及び切片をメモリ15から読み込む。そして、誤差最大時点判断部11dは、量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データに基づく電圧レベルと近似折れ線に基づく電圧レベルとの間の差即ち近似誤差を計測時点毎に算出し、近似誤差の絶対値が最大になる時点を選択する。
【0062】
なお、S5及びS6の処理を経てS7の処理からS4の処理に戻ってきた場合には、複数の直線が連なる近似折れ線がメモリ15に記憶されている。よってこの場合には、誤差最大時点判断部11dは、複数の直線が連なる近似折れ線に基づく電圧レベルと量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データに基づく電圧レベルとの間の近似誤差を計測時点毎に算出し、近似誤差の絶対値が最大になる時点を選択する。
【0063】
そして、誤差最大時点判断部11dは、近似誤差の絶対値が最大になる時点(以下、近似誤差最大時点と呼ぶ)をメモリ15に記憶させると共に近似誤差最大時点における電圧レベル並びに近似誤差の絶対値を最大近似誤差としてメモリ15に記憶させる。
【0064】
次に、制御部11の近似収束判断部11eは、最大近似誤差と近似収束判断閾値とを比較して近似折れ線による量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データの近似処理が収束しているか否かを判断する(S5)。
【0065】
具体的には、近似収束判断部11eは、S4の処理においてメモリ15に記憶された最大近似誤差をメモリ15から読み込み、最大近似誤差が近似収束判断閾値以下か否かを判断する。
【0066】
近似収束判断閾値は、量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データに基づく電圧レベルと近似折れ線に基づく電圧レベルとの間の差即ち近似誤差に基づいて、計測時点別電圧波形データにおけるサージ到達時点を適切に判断にすることができる程度まで十分に近似折れ線が電圧波形データを近似しているか否かを判断するための指標である。なお、近似収束判断閾値は送電線故障箇所標定プログラム17上に予め規定しておく。
【0067】
近似収束判断閾値は特定の値や範囲に限定されるものではなく、例えば電圧レベルで1〜3程度の範囲で作業者が適宜設定する。
【0068】
そして、制御部11は、最大近似誤差が近似収束判断閾値よりも大きい場合(S5;No)にはS6の処理に進み、最大近似誤差が近似収束判断閾値以下の場合(S5;Yes)にはS8の処理に進む。
【0069】
最大近似誤差が近似収束判断閾値よりも大きい場合(S5;No)は、制御部11の折れ点追加部11fは、S4の処理の結果得られる近似誤差の絶対値が最大になる(即ち最大近似誤差に対応する)点を近似折れ線の折れ点として追加する(S6)。
【0070】
折れ点追加部11fは、S4の処理においてメモリ15に記憶された近似誤差最大時点並びに近似誤差最大時点における電圧レベルをメモリ15から読み込む。
【0071】
そして、折れ点追加部11fは、メモリ15から読み込んだ近似誤差最大時点及び近似誤差最大時点における電圧レベルの組み合わせを追加の折れ点としてメモリ15に記憶させる。
【0072】
次に、制御部11の折れ線近似部11gは、S2の処理が施された量子化雑音除去後計測時点別電圧波形データについて、近似折れ線始点及び近似折れ線終点並びに全ての折れ点を用いて折れ線近似を行う(S7)。
【0073】
折れ線近似部11gは、S3の処理においてメモリ15に記憶された近似折れ線始点及び近似折れ線終点、並びに、S6までの処理によってメモリ15に記憶された全ての折れ点をメモリ15から読み込む。
【0074】
そして、折れ線近似部11gは、近似折れ線始点と全ての折れ点と近似折れ線終点とを計測時点順に並べ、計測時点の順に、二点間を結ぶ各直線の傾き及び切片を求める。
【0075】
そして、折れ線近似部11gは、電波波形データを近似する折れ線を構成する各直線の傾き及び切片をメモリ15に記憶させる。
【0076】
上述のS3の処理に続くS4〜S7の処理の例として図4について説明する。なお、図4は、S3の処理に続けてS4〜S7の処理が4回繰り返された結果である。
S3)近似折れ線始点21sと近似折れ線終点21eとを結ぶ直線20が設定される。
S4)直線20に対して最大近似誤差になるものとして点22aが選択される。
S5)点22aに対応する最大近似誤差と近似収束判断閾値とを対比する。
その結果、最大近似誤差が近似収束判断閾値よりも大きい(S5;No)。
S6)点22aを近似折れ線の折れ点として追加する。
S7)始点21s−折れ点22a−終点21eを結ぶ折れ線を新たな近似折れ線とする。
S4)新たな近似折れ線に対して最大近似誤差になるものとして点22bが選択される。
S5)点22bに対応する最大近似誤差と近似収束判断閾値とを対比する。
その結果、最大近似誤差が近似収束判断閾値よりも大きい(S5;No)。
S6)点22bを近似折れ線の折れ点として追加する。
S7)始点21s−折れ点22b−22a−終点21eを結ぶ折れ線を新たな近似折れ線とする。
S4〜S6)同様にして、点22cを近似折れ線の折れ点として追加する。
S7)始点21s−折れ点22b−22a−22c−終点21eを新たな近似折れ線とする。
S4〜S6)同様にして、点22dを近似折れ線の折れ点として追加する。
S7)始点21s−折れ点22b−22d−22a−22c−終点21eを新たな近似折れ線とする。
S4)新たな近似折れ線に対して最大近似誤差になるものとして点22eが選択される。
S5)点22eに対応する最大近似誤差と近似収束判断閾値とを対比する。
その結果、最大近似誤差が近似収束判断閾値以下である(S5;Yes)。
【0077】
そして、最大近似誤差が近似収束判断閾値以下の場合(S5;Yes)は、制御部11の到達時点同定部11hは、近似折れ線の形状の特性に基づいてサージ到達時点の同定を行う(S8)。
【0078】
本発明では、折れ点の中から波形の特性に応じて適切な到達時点を選択する。安定した同定が可能なサージ到達時点としては、i)波頭、ii)電圧レベルの変動が最大の点(ピーク点)の2種類が考えられる。故障箇所Xで生じたサージは、送電線4を伝播する過程で変歪するが、サージの波頭(即ち立ち上り時点;図5(b)及び(c)中の記号○)はこのような変化を受けにくい。このため、基本的に波頭をサージ到達時点とすることが適切である。
【0079】
しかし、誘導電圧による前駆現象が発生している雷(通常は電圧変化が大きい)の場合には、前駆現象による波頭よりもむしろ雷の主放電サージによる変位が最大の箇所(即ちピーク点)の方が、特徴が明確であり送電線の故障発生時点であるためサージ到達時点として適している(図6中の記号○)。
【0080】
したがって、前駆現象の有無に応じて選択を切り替えるようにすることにより、急峻な変化だけでなく緩やかな変化のサージ到達時点の抽出精度を向上させて故障箇所の標定精度を向上させることができる。本発明では、前駆現象の有無は、波形記録装置6から送信される一定時間の計測時点別電圧波形データの折れ線近似に一定数以上の折れ点を必要とする場合に前駆現象有りと判定する。
【0081】
具体的には、到達時点同定部11hは、条件0を満たす場合にはピーク点である折れ点をサージ到達時点とし、条件1−1若しくは条件1−2を満たす場合には最初の折れ点をサージ到達時点とする。
【0082】
(条件0)一定時間の計測時点別電圧波形の先頭からピーク点までの折れ点数がN個以上
【0083】
条件0は、誘導雷に伴う前駆現象などで短周期の変動が重畳された波形を検出するものである。前駆現象有りと判定する基準となる折れ点数Nの値は実際の事例に基づいて適切な値が設定される。例えば、各事例で求められる折れ点に対し、折れ点の時刻、レベル、前後の折れ点の情報、波形の最大最小レベル差などの属性と到達時点としての適否とを記したデータベースを作成し、当該データに基づいて設定されることが考えられる。
【0084】
(条件1−1)Δy>max(α・R,1) 且つ Δy/Δx>β
(条件1−2)Δy>γ
ただし、Δx:現在の折れ点と次の折れ点との時間差,Δy:現在の折れ点と次の折れ点との電圧レベル差,R:電圧波形全体の最大レベルと最小レベルとの間の差である。
【0085】
条件1−1は、「一定以上の変化率(Δy/Δx)で一定以上の電圧変動が生じた場合にサージ到達時点(波頭)と判断する」という判定基準を表し、αが電圧変動の下限値を、βが変化率の下限値を表す。
【0086】
条件1−2は「充分に大きな電圧変動があった場合にサージ到達時点と判断する」という判定基準を表し、γはその下限値を表す。
【0087】
α,β,γは、例えば、実際の事例で求められる折れ点に対して折れ点の時刻、電圧レベル、前後の折れ点の情報、電圧波形全体の最大レベルと最小レベルとの間の差などの属性と到達時点としての適否とを記したデータに基づいて設定される。
【0088】
そして、到達時点同定部11hは、検出局2から送信された計測時点別電圧波形データについて同定したサージ到達時点と検出局3から送信された計測時点別電圧波形データについて同定したサージ到達時点とをメモリ15に記憶させる。
【0089】
次に、制御部11の故障箇所標定部11iは、送電線の両端におけるサージ到達時点の差に基づいて送電線の故障箇所の標定を行う(S9)。
【0090】
具体的には、故障箇所標定部11iは、S8の処理において同定されメモリ15に記憶された検出局2のサージ到達時点と検出局3のサージ到達時点とをメモリ15から読み込み、数式2を用いて送電線4の故障箇所Xを標定する。
【0091】
(数2)x=(L−νΔt)/2
ここに、x:送電線4の一方の端点(検出局2又は3)から故障箇所Xまでの距離,L:送電線4の亘長,ν:送電線4中のサージの伝播速度,Δt:サージ到達時点の差。
【0092】
そして、送電線故障箇所標定装置10は、以上の処理により標定した送電線4の故障箇所Xを例えば表示部14に表示したりメモリ15に記憶させて送電線4の故障箇所Xの標定処理を終了する(END)。
【0093】
以上のように構成された本発明の送電線故障箇所標定方法、装置並びにプログラムによれば、急峻な変化だけでなく緩やかな変化のサージ到達時点の抽出精度を向上させて故障箇所の標定精度を向上させることができる
【0094】
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、電圧の変動に着目すると共に電圧波形の計測データを用いるようにしているが、これに限られず、電流の変動に着目すると共に電流波形の計測データを用いるようにしても良い。また、電圧・電流の両者を用い、両者のサージ到達点のうちいずれか早く到着したサージ到着点をサージ到着点とするなど、両者を組み合わせて用いるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の送電線故障箇所標定方法の実施形態の一例を説明するフローチャートである。
【図2】本実施形態の送電線故障箇所標定方法をプログラムを用いて実施する場合の送電線故障箇所標定装置の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態の送電線故障箇所標定装置を備えた解析局並びに検出局を含む本発明の適用の全体構成を説明する図である。
【図4】折れ線近似を説明する図である。
【図5】前駆現象を伴わない場合のサージ到達時点の同定を説明する図である。
【図6】前駆現象を伴う場合のサージ到達時点の同定を説明する図である。
【図7】従来の送電線の故障箇所標定方法による場合に到達時点の同定が難しい例を説明する図である。
【符号の説明】
【0096】
10 送電線故障箇所標定装置
11 制御部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 メモリ
17 送電線故障箇所標定プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線の両端において電圧若しくは電流を計測し、前記電圧若しくは電流の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形データの量子化雑音の除去を行うと共に前記量子化雑音除去後の計測時点別電圧若しくは電流波形データを折れ線近似し、前記折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、前記一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、前記計測時点別電圧若しくは電流波形データにおける前記送電線の故障によるサージ電圧若しくは電流が到達した時点であると判断し、前記送電線の両端における前記サージ電圧若しくは電流が到達した時点の差に基づいて前記送電線の故障箇所を標定することを特徴とする送電線故障箇所標定方法。
(条件1−1)Δy>max(α・R,1) 且つ Δy/Δx>β
(条件1−2)Δy>γ
ただし、Δx:隣り合う折れ点の時間差,Δy:隣り合う折れ点の電圧若しくは電流レベル差,R:電圧若しくは電流波形全体の最大レベルと最小レベルとの間の差。
また、α,β,γ:定数。
【請求項2】
送電線の両端において計測している電圧若しくは電流の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形データが入力される手段と、前記計測時点別電圧若しくは電流波形データの量子化雑音の除去を行う手段と、前記量子化雑音除去後の計測時点別電圧若しくは電流波形データの折れ線近似を行う手段と、前記折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、前記一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、抽出すると共に前記抽出した折れ点を前記計測時点別電圧若しくは電流波形データにおける前記送電線の故障によるサージ電圧若しくは電流が到達した時点であると判断する手段と、前記送電線の両端における前記サージ電圧若しくは電流が到達した時点の差に基づいて前記送電線の故障箇所を標定する手段とを有することを特徴とする送電線故障箇所標定装置。
(条件1−1)Δy>max(α・R,1) 且つ Δy/Δx>β
(条件1−2)Δy>γ
ただし、Δx:隣り合う折れ点の時間差,Δy:隣り合う折れ点の電圧若しくは電流レベル差,R:電圧若しくは電流波形全体の最大レベルと最小レベルとの間の差。
また、α,β,γ:定数。
【請求項3】
送電線の両端において計測している電圧若しくは電流の大きさがトリガーレベルを超えて変化した時点の前後一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形データが入力されるコンピュータに、前記計測時点別電圧若しくは電流波形データの入力を受ける処理と、前記計測時点別電圧若しくは電流波形データの量子化雑音の除去を行う処理と、前記量子化雑音除去後の計測時点別電圧若しくは電流波形データの折れ線近似を行う処理と、前記折れ線近似の結果得られる近似折れ線の折れ点のうち、前記一定時間の計測時点別電圧若しくは電流波形の先頭からピーク点までの折れ点数が一定数を超える場合はピーク点である折れ点を、超えない場合は条件1−1若しくは条件1−2を満たす最初の折れ点を、抽出すると共に前記抽出した折れ点を前記計測時点別電圧若しくは電流波形データにおける前記送電線の故障によるサージ電圧若しくは電流が到達した時点であると判断する処理と、前記送電線の両端における前記サージ電圧若しくは電流が到達した時点の差に基づいて前記送電線の故障箇所を標定する処理とを行わせることを特徴とする送電線故障箇所標定プログラム。
(条件1−1)Δy>max(α・R,1) 且つ Δy/Δx>β
(条件1−2)Δy>γ
ただし、Δx:隣り合う折れ点の時間差,Δy:隣り合う折れ点の電圧若しくは電流レベル差,R:電圧若しくは電流波形全体の最大レベルと最小レベルとの間の差。
また、α,β,γ:定数。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−216587(P2009−216587A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61385(P2008−61385)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【出願人】(000241957)北海道電力株式会社 (78)
【出願人】(000154886)株式会社北計工業 (6)
【Fターム(参考)】