逆入力遮断クラッチ
【課題】 トルク伝達手段におけるピンと凹溝の早期摩耗を防止する。
【解決手段】 入出力軸22,23と、固定外輪21と、固定外輪21と出力軸23間に係合離脱可能に設けられたローラおよびそのローラを固定外輪21と出力軸23間に係合させる方向に付勢する弾性部材からなり、出力軸23からの逆入力トルクに対して出力軸23をロックし、入力軸22からの回転トルクに対してロック状態を解除するロック手段と、入出力軸22,23間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力軸22からの回転トルクを出力軸23に伝達するトルク伝達手段とを備え、トルク伝達手段45は、出力軸23から入力軸22に向けて径方向に突出するピン28と、入力軸22に軸方向に沿って形成され、ピン28が嵌入されてトルク伝達時にピン28と係合する凹溝27とで構成され、トルク伝達時にピン28の外周面28aと凹溝27の係合面27aとが平行な状態で当接するように凹溝27の係合面27aの径方向角度θを設定する。
【解決手段】 入出力軸22,23と、固定外輪21と、固定外輪21と出力軸23間に係合離脱可能に設けられたローラおよびそのローラを固定外輪21と出力軸23間に係合させる方向に付勢する弾性部材からなり、出力軸23からの逆入力トルクに対して出力軸23をロックし、入力軸22からの回転トルクに対してロック状態を解除するロック手段と、入出力軸22,23間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力軸22からの回転トルクを出力軸23に伝達するトルク伝達手段とを備え、トルク伝達手段45は、出力軸23から入力軸22に向けて径方向に突出するピン28と、入力軸22に軸方向に沿って形成され、ピン28が嵌入されてトルク伝達時にピン28と係合する凹溝27とで構成され、トルク伝達時にピン28の外周面28aと凹溝27の係合面27aとが平行な状態で当接するように凹溝27の係合面27aの径方向角度θを設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動シャッターや自動車の操舵装置などに使用され、入力側からの入力トルクを出力側に伝達する一方、出力側からの逆入力トルクをロックして入力側に還流させない機能を具備した逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、駆動源からの入力トルクを出力側機構に伝達して所要の動作を行なう装置では、駆動源の停止時、出力側機構の位置が変動しないようにこれを保持する機能が求められる場合がある。例えば、電動シャッターの場合、開閉動作の途中で停電などによる駆動源の停止時には、シャッターの自重下降を防止する機能が必要である。また、自動車の操舵装置の場合には、駆動源からの回転力をボールねじ軸に伝達し、そのボールねじ軸を直動させることで車輪との連結ロッドを進退させて車輪を操舵する一方、車輪からの外力を受けた場合の駆動源への逆入力トルクを遮断する機能が必要である。
【0003】
このような出力側からの逆入力トルクをロックして入力側に還流させない機能を具備した機構の一つに逆入力遮断クラッチがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この逆入力遮断クラッチは、図9および図10に示すように固定外輪1に入力軸2と出力軸3を転がり軸受4,5を介して正逆回転自在に支承した構造を具備する。入力軸2には、軸中心から径方向外側へずれた位置にピン8が軸方向に突設され、出力軸3には、入力軸2と対向する端面に径方向に沿う凹溝7が形成されている。前述したピン8の先端を入力軸2の端面から突出させて、出力軸3の端面に形成された凹溝7に嵌入させることにより、入力軸2からの回転トルクを出力軸3に伝達可能としている。
【0005】
一方、図11に示すように入力軸2の出力軸側端部には径方向外側へ拡径したフランジ部2aが一体的に形成され、そのフランジ部2aの外周から軸方向の出力軸側へ連続して延びる複数(図では四つ)の柱部2bが円周方向等間隔に形成されている。この円周方向に隣接する柱部2b間の空間は、軸方向の一方に向かって開口した形態のポケット9を構成し、各ポケット9に一対のローラ10a,10bがそれぞれ配される。
【0006】
出力軸3の入力軸側外周には、前述した入力軸2の柱部2b間に位置するポケット9と対応させて複数対(図では四対)のカム面11a,11bが円周方向等間隔に形成されている。この出力軸3のカム面11a,11bと固定外輪1の内周面との間に、複数対(図では四対)のローラ10a,10bがそれぞれ配され、入力軸2の柱部2b間に形成されたポケット9に収容される。一対のローラ10a,10bのうち、一方のローラ10aは一対のカム面11a,11bのうちの一方のカム面11aに位置し、他方のローラ10bは他方のカム面11bに位置するように配されている。
【0007】
一対のローラ10a,10b間にはN字状をなす一対の弾性部材12a,12bが介挿され、それぞれの弾性部材12a,12bが一対のローラ10a,10bを互いに離れる方向に弾性的に押圧する。また、入力軸2からのトルク伝達時に一方のローラ10aに作用する弾性部材12aの押圧力と他方のローラ10bに作用する弾性部材12bの押圧力とを独立させる遮蔽板13を一対のローラ10a,10b間に配設し、その遮蔽板13の両面に弾性部材12a,12bをそれぞれ固着する。
【0008】
この逆入力遮断クラッチでは、図12に拡大して示す中立状態で、出力軸3に時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材12aの弾性力により反時計方向(回転方向後方)のローラ10aがその方向の楔隙間と係合して、出力軸3が固定外輪1に対して時計方向にロックされる。逆に、出力軸3に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材12bの弾性力により時計方向(回転方向後方)のローラ10bがその方向の楔隙間と係合して、出力軸3が固定外輪1に対して反時計方向にロックされる。従って、出力軸3からの逆入力トルクは、一対のローラ10a,10bによって正逆両回転方向にロックされる。
【0009】
一方、入力軸2に回転トルクが入力されて例えば時計方向に回動すると、図13に拡大して示すように、まず、入力軸2の反時計方向(回転方向後方)の柱部2bがその方向(回転方向後方)のローラ10aと係合して、これを一方の弾性部材12aの弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ10aがその方向の楔隙間から離脱して、出力軸3のロック状態が解除されてその出力軸3が時計方向に回動可能となる。
【0010】
入力軸2がさらに時計方向に回動すると、入力軸2のピン8が出力軸3の凹溝7の係合面に当接することにより、入力軸2からの時計方向の回転トルクがピン8と凹溝7との係合により出力軸3に伝達され、出力軸3が時計方向に回動する。この時、時計方向(回転方向前方)のローラ10bは、その方向の楔隙間と係合せず、出力軸3のカム面11bと固定外輪1の内周面に接触した状態で空転する。
【0011】
入力軸2に反時計方向の回転トルクが入力された場合は、前述とは逆の動作で出力軸3が反時計方向に回動する。従って、入力軸2からの正逆両回転方向の回転トルクは、ピン8と凹溝7との係合により出力軸3に伝達され、出力軸3が正逆両回転方向に回動する。
【特許文献1】特開2003−343601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献1に開示された逆入力遮断クラッチでは、入力軸2の端面にピン8が軸方向に突設され、出力軸3の入力軸2と対向する端面に径方向に沿う凹溝7が形成されている。このようなトルク伝達構造では、前述したピン8の先端を出力軸3の凹溝7に嵌入させることにより、入力軸2からの回転トルクを出力軸3に伝達可能としている。
【0013】
しかしながら、トルク伝達手段としてのピン8と凹溝7の構造は、入力軸2あるいは出力軸3の端面に形成するものに限らない。図14および図15に示す逆入力遮断クラッチは、ピン8を径方向に突出させたトルク伝達手段を具備した構造のものである。この構造は、例えばクラッチ自体が小型のもので、トルク伝達手段を入力軸2および出力軸3の端面に形成できない、または、ローラ10a,10bの本数が、保持性能上、少なくて済む場合に、円周方向のスペースを利用してトルク伝達手段を形成したものである。
【0014】
なお、この逆入力遮断クラッチは、図9および図10に示す従来の逆入力遮断クラッチと基本構成は同一であるため、同一または相当部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。図14および図15の逆入力遮断クラッチが図9および図10の逆入力遮断クラッチと異なる点は、トルク伝達手段であり、以下、このトルク伝達手段について説明する。
【0015】
この逆入力遮断クラッチにおけるトルク伝達手段は次のとおりである。図16(a)(b)〔同図(a)では固定外輪1は図示省略〕に示すように、出力軸3には、その径方向に貫通孔6(図14参照)が形成され、その貫通孔6にピン8を嵌挿することによりピン8の先端を出力軸3の外周面から径方向外側に突出させている。一方、入力軸2には、出力軸3から突出するピン8と対応する部位に凹溝7が軸方向に沿って形成されている。この凹溝7の円周方向幅はピン8の外径よりも大きく設定されている〔図14および図16(a)参照〕。この出力軸3のピン8を入力軸2の凹溝7に嵌入させることにより、入力軸2からの回転トルクを出力軸3に伝達可能としている。
【0016】
このトルク伝達手段では、図17(a)(b)〔同図(a)では固定外輪1は図示省略〕に示すように入力軸2が反時計方向が回動すると、入力軸2の凹溝7の係合面7aが出力軸3のピン8の外周面8aに当接することにより、入力軸2からの反時計方向の回転トルクがピン8と凹溝7との係合により出力軸3に伝達され、出力軸3が反時計方向に回動する。
【0017】
ところで、逆入力遮断クラッチの入出力側ともに静止状態の場合、出力軸3のピン8が入力軸2の凹溝7に対して中立位置にあり、この状態では、ピン8の外周面8aと凹溝7の係合面7aとは軸方向に沿って平行な位置関係にある〔図16(b)参照〕。一方、入力側からのトルクにより入力軸2が回転し始めるが、入力軸2の凹溝7の係合面7aが出力軸3のピン8の外周面8aに当接するまでは、出力軸3は回転停止状態にある。
【0018】
従って、回転トルクが入力される前に、出力軸3のピン8が入力軸2の凹溝7に対して中立位置にある状態で、ピン8の外周面8aと凹溝7の係合面7aが軸方向に沿って平行な位置関係にあっても、回転トルクの入力により入力軸2の凹溝7の係合面7aが出力軸3のピン8の外周面8aに当接してトルク伝達が始まる時には、図17(b)に示すようにピン8の外周面8aと凹溝7の係合面7aとの間に軸方向に沿う角度差θが生じるため、そのピン8と凹溝7との接触は、ピン8の先端部のみが凹溝7の係合面7aに当接した状態となる。
【0019】
ここで、前述したような円周方向スペースを利用したトルク伝達手段を持つ小型の逆入力遮断クラッチは、電動シャッター用途に比べて自動車用途の場合、厳しい条件下で機能しなければならず、特に操舵装置に適用する場合、タイヤからの逆入力トルクに振動成分を含んだ過大な逆入力トルクが作用する場合がある。
【0020】
回転トルクの伝達中に振動成分を含んだ過大な逆入力トルクを繰り返して受けると、前述したようにピン8の先端部のみが凹溝7の係合面7aに当接した接触状態では、そのピン8と凹溝7との接触部分が局部的な高面圧となり、ピン8の先端部あるいは凹溝7の係合面7aが早期に摩耗してしまい、クラッチのトルク伝達機能を損なうという問題が生じる。
【0021】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、簡便な手段により、トルク伝達手段におけるピンの先端部と凹溝の係合面が早期に摩耗することを未然に防止し得る逆入力遮断クラッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、その静止側部材と出力側部材との間に係合離脱可能に設けられた複数対の係合子、および各対の係合子間に配設されて両側の係合子をそれぞれ静止側部材と出力側部材に係合させる方向に付勢する弾性部材からなり、出力側部材からの逆入力トルクに対して出力側部材をロックし、入力側部材からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段と、入力側部材と出力側部材との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備えた逆入力遮断クラッチであって、トルク伝達手段は、入力側部材あるいは出力側部材のいずれか一方の部材に設けられて他方の部材へ向けて径方向に突出するピンと、他方の部材に軸方向に沿って形成され、ピンが嵌入されてトルク伝達時にピンと係合する凹溝とで構成され、トルク伝達時にピンの外周面と凹溝の係合面とが平行な状態で当接するように凹溝の係合面の径方向角度を設定したことを特徴とする。
【0023】
本発明の逆入力遮断クラッチでは、入力側部材に回転トルクが入力されると、まず、ロック手段によりロック状態が解除され、その状態で入力側部材からの回転トルクがトルク伝達手段を介して出力側部材に伝達される。一方、出力側部材からの逆入力トルクは、ロック手段を介して出力側部材と静止側部材との間でロックされる。従って、入力側からの回転トルクは出力側に伝達されるのに対して、出力側からの逆入力トルクは入力側に還流させない機能が得られる。
【0024】
この逆入力遮断クラッチにおけるトルク伝達手段では、入力側部材あるいは出力側部材のいずれか一方の部材に設けられて他方の部材へ向けて径方向に突出するピンと、他方の部材に軸方向に沿って形成され、ピンが嵌入されてトルク伝達時にピンと係合する凹溝とで構成され、トルク伝達時にピンの外周面と凹溝の係合面とが平行な状態で当接するように凹溝の係合面の径方向角度を設定したことにより、トルク伝達時に凹溝の係合面でその軸方向全域に亘ってピンの外周面が接触する状態を確保できる。その結果、ピンの先端部のみが凹溝の係合面に接触することによる早期摩耗を回避することができる。
【0025】
また、本発明におけるトルク伝達手段の凹溝は、トルク伝達時にピンの外周面と当接する係合面をピンの外周面と同等のR面状とすることが望ましい。このようにすれば、トルク伝達時に凹溝の係合面がその軸方向全域に亘ってピンの外周面が接触するだけでなく、円周方向にもピンの外周面を接触させることができ、凹溝とピンとの接触面積を増加させることができてその接触面圧の低減化が図れる。
【0026】
なお、「ロック手段」には、楔係合力、凹凸係合力、摩擦力、磁気力、電磁力、流体圧力、流体粘性抵抗力、微粒子媒体などによって回転拘束力を付与するものが含まれるが、構造や制御機構の簡素化、動作の円滑化、コストの面などから、楔係合力によって回転拘束力を付与するものが好ましい。具体的には、出力側部材と静止側部材との間に楔隙間を形成し、この楔隙間に対して係合子を係合・離脱させることによって、ロック・空転を切り替える構成とするのがよい。
【0027】
また、この構成には、楔隙間を形成するためのカム面を出力側部材または静止側部材に設けた構成(係合子としてローラ、ボール等の円形断面のものを用いる)、楔隙間を形成するためのカム面を係合子に設けた構成(係合子としてスプラグ等を用いる)が含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、トルク伝達手段は、入力側部材あるいは出力側部材のいずれか一方の部材に設けられて他方の部材へ向けて径方向に突出するピンと、他方の部材に軸方向に沿って形成され、ピンが嵌入されてトルク伝達時にピンと係合する凹溝とで構成され、トルク伝達時にピンの外周面と凹溝の係合面とが平行な状態で当接するように凹溝の係合面の径方向角度を設定したことにより、トルク伝達時に凹溝の係合面でその軸方向全域に亘ってピンの外周面が接触する状態を確保できる。その結果、ピンの先端部のみが凹溝の係合面に接触することによる早期摩耗を回避することができ、長期に亘って安定したトルク伝達が可能な長寿命の逆入力遮断クラッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明に係る逆入力遮断クラッチの実施形態を以下に詳述する。図1および図2は本発明の実施形態における逆入力遮断クラッチの全体構成を示し、図1は図2のB−B線に沿う断面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図である。本発明は、電動シャッター用途や自動車用途、特に自動車の操舵装置に好適な小型の逆入力遮断クラッチに適用される。
【0030】
この実施形態の逆入力遮断クラッチは、図1および図2に示すように回転が拘束される静止側部材としての固定外輪21と、固定外輪21の内周に先端部が挿入され、回転トルクが入力される入力側部材としての入力軸22と、固定外輪21の内周に入力軸22と対向する状態で挿入され、回転トルクが出力される出力側部材としての出力軸23と、その固定外輪21と出力軸23との間に係合離脱可能に設けられた複数対(図では二対)の係合子としてのローラ30a,30b、および各対のローラ30a,30b間に配設されて両側のローラ30a,30bを固定外輪21と出力軸23間に係合させる方向に付勢する弾性部材42a,42bからなり、出力軸23からの逆入力トルクに対して出力軸23と固定外輪21とをロックし、入力軸22からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段44と、入力軸22と出力軸23との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力軸22からの入力トルクを出力軸23に伝達するトルク伝達手段45とを備え、固定外輪21に入力軸22と出力軸23を転がり軸受24,25を介して正逆回転自在に同軸的に支承した構造を具備する。
【0031】
ロック手段44の構造は以下のとおりである。入力軸22の出力軸側端部には径方向外側へ拡径した大径の円筒部22aが一体的に形成され、その円筒部22aの円周方向180°対向位置に、軸方向開口端から切り欠いたスリット状のポケット29が形成され(図3参照)、これら二つのポケット29に一対のローラ30a,30bと各対のローラ30a,30b間に配された弾性部材42a,42bがそれぞれ収容される。
【0032】
出力軸23の入力軸側外周には、前述した入力軸22の円筒部22aのポケット29と対応させて複数対(図では二対)のカム面31a,31bが円周方向180°位置に形成されている。この出力軸23のカム面31a,31bと固定外輪21の内周面との間に、複数対(図では二対)のローラ30a,30bがそれぞれ配され、入力軸22の円筒部22aに形成されたポケット29に収容される。一対のローラ30a,30bのうち、一方のローラ30aは一対のカム面31a,31bのうちの一方のカム面31aに位置し、他方のローラ30bは他方のカム面31bに位置するように配されている。
【0033】
各対のローラ30a,30b間には弾性部材42が介挿され、この弾性部材42が各対のローラ30a,30bを互いに離れる方向に弾性的に押圧する。この弾性部材42は、出力軸23の外周面に形成されたスリット溝32に、伸縮方向の中央に形成されたU字状部42cが嵌め込まれ、そのU字状部42cの先端縁からM字状部42a,42bが一体的に延在している。
【0034】
また、入力軸22からのトルク伝達時に一方のローラ30aに作用する弾性部材42のM字状部42aの押圧力と他方のローラ30bに作用する弾性部材42のM字状部42bの押圧力とを独立させるU字状の遮蔽板43が、弾性部材42のU字状部42cの内側に嵌め込まれている。
【0035】
トルク伝達手段45の構造は次のとおりである。出力軸23の入力軸側端部近傍部位には、その径方向に貫通孔26が形成され、その貫通孔26に円柱状のピン28を嵌挿することによりピン28の先端を出力軸23の外周面から径方向外側に突出させている。一方、入力軸22の円筒部22aには、出力軸23から突出するピン28と対応する部位に凹溝27が軸方向に沿って形成されている。この凹溝27の円周方向幅はピン28の外径よりも大きく設定されている(図1参照)。この出力軸23のピン28を入力軸22の凹溝27に嵌入させることにより、入力軸22からの回転トルクを出力軸23に伝達可能としている。なお、この実施形態では、入力軸22にピン28を設け、出力軸23に凹溝27を形成しているが、逆に、出力軸23にピン28を設け、入力軸22に凹溝27を形成するような構造とすることも可能である。
【0036】
この逆入力遮断クラッチでは、図4に拡大して示す中立状態で、出力軸23に時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材42のM字状部42aの弾性力により反時計方向(回転方向後方)のローラ30aがその方向の楔隙間と係合して、出力軸23が固定外輪21に対して時計方向にロックされる。逆に、出力軸23に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材42のM字状部42bの弾性力により時計方向(回転方向後方)のローラ30bがその方向の楔隙間と係合して、出力軸23が固定外輪21に対して反時計方向にロックされる。従って、出力軸23からの逆入力トルクは、一対のローラ30a,30bによって正逆両回転方向にロックされる。
【0037】
一方、入力軸22に回転トルクが入力されて例えば時計方向に回動すると、図5に拡大して示すように、まず、入力軸22の反時計方向(回転方向後方)の柱部22bがその方向(回転方向後方)のローラ30aと係合して、これを一方の弾性部材42のM字状部42aの弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ30aがその方向の楔隙間から離脱して、出力軸23のロック状態が解除されてその出力軸23が時計方向に回動可能となる。
【0038】
入力軸22がさらに時計方向に回動すると、後述するように入力軸22のピン28の外周面28aが出力軸23の凹溝27の係合面27aに当接することにより、入力軸22からの時計方向の回転トルクがピン28と凹溝27との係合により出力軸23に伝達され、出力軸23が時計方向に回動する。この時、時計方向(回転方向前方)のローラ30bは、その方向の楔隙間と係合せず、出力軸23のカム面31bと固定外輪21の内周面に接触した状態で空転する。
【0039】
入力軸22に反時計方向の回転トルクが入力された場合は、前述とは逆の動作で出力軸23が反時計方向に回動する。従って、入力軸22からの正逆両回転方向の回転トルクは、ピン28と凹溝27との係合部分を介して出力軸23に伝達され、出力軸23が正逆両回転方向に回動する。
【0040】
この入力軸22からのトルク伝達時、一対のローラ30a,30b間に配設された遮蔽板43により、一方のローラ30aに作用する弾性部材42のM字状部42aの押圧力と他方のローラ30bに作用する弾性部材42のM字状部42bの押圧力とを独立させるようにしたから、一方のローラ30aに作用する弾性部材42のM字状部42aの押圧力が他方のローラ30bに作用する弾性部材42のM字状部42bの押圧力の大きさに影響することがないので、その他方のローラ30bに作用する弾性部材42のM字状部42bのばね荷重が増加することはない。その結果、入力軸22から出力軸23への回転伝達におけるトルク損失を低減させることができる。
【0041】
前述したトルク伝達手段45において、図6〜図8に示すように、トルク伝達時にピン28の外周面28aと凹溝27の係合面27aとが平行な状態で当接するように凹溝27の係合面27aの径方向角度θを設定している。図6(a)(b)〔同図(a)では固定外輪21は図示省略〕は、入力軸22からの回転トルクが作用していない中立状態でのピン28と凹溝27を示す。図7(a)(b)〔同図(a)では固定外輪21は図示省略〕は入力軸22から反時計方向に回転トルクが作用することにより凹溝27の係合面27aがピン28の外周面28aに当接したトルク伝達状態を示し、図8(a)(b)〔同図(a)では固定外輪21は図示省略〕は入力軸22から時計方向に回転トルクが作用することにより凹溝27の係合面27aがピン28の外周面28aに当接したトルク伝達状態を示す。
【0042】
図6(b)に示すように円柱状のピン28の外周面28aに対して、凹溝27の係合面27aを所定の径方向角度θでもって径方向外側に向けて拡開するように形成する。このように凹溝27の係合面27aを径方向角度θで形成することにより、図7(b)あるいは図8(b)に示すようにトルク伝達時にピン28の外周面28aと凹溝27の係合面27aとが平行な状態で当接することになる。なお、この径方向角度θは、図14および図15に示す逆入力遮断クラッチにおけるピン8の外周面8aと凹溝7の係合面7aとの間の角度差θに相当する〔図17(b)参照〕。
【0043】
このようにすれば、トルク伝達時に凹溝27の係合面27aでその軸方向全域に亘ってピン28の外周面28aが接触する状態を確保できる。その結果、ピン28の先端部のみが凹溝27の係合面27aに接触することによる早期摩耗を回避することができる。
【0044】
また、図6(a)に示すように、凹溝27において、トルク伝達時にピン28の外周面28aと当接する係合面27a、つまり、凹溝27の円周方向両側に位置する係合面27aをピン28の外周面28aと同等のR面状としている。このようにすれば、トルク伝達時に凹溝27の係合面27aがその軸方向全域に亘ってピン28の外周面28aが接触するだけでなく、図7(a)あるいは図8(a)に示すように、円周方向にもピン28の外周面28aを接触させることができ、凹溝27とピン28との接触面積を増加させることができてその接触面圧の低減化が図れる。
【0045】
以上のように、トルク伝達時に凹溝27の係合面27aでその軸方向全域に亘ってピン28の外周面28aが接触する状態を確保し、また、凹溝27とピン28との接触面積を増加させることができてその接触面圧の低減化が図れることにより、逆入力遮断クラッチを例えば自動車の操舵装置に適用するに際して、そのピン28と凹溝27との接触部分が局部的な高面圧となることがなく、ピン28あるいは凹溝27の早期摩耗を未然に防止でき、良好なトルク伝達機能を維持することができる。
【0046】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る逆入力遮断クラッチの実施形態で、図2のB−B線に沿う断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1の入力軸を示す斜視図である。
【図4】図1のロック手段において、中立状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】図1のロック手段において、入力軸から回転トルクが入力された状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】(a)は図1のトルク伝達手段において、中立状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図7】(a)は図1のトルク伝達手段において、入力軸から反時計方向の回転トルクが入力された状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図8】(a)は図1のトルク伝達手段において、入力軸から時計方向の回転トルクが入力された状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
【図9】逆入力遮断クラッチの従来例で、図10のG−G線に沿う断面図である。
【図10】図9のF−F線に沿う断面図である。
【図11】図9の入力軸を示す斜視図である。
【図12】図9のロック手段およびトルク伝達手段において、中立状態を示す要部拡大断面図である。
【図13】図9のロック手段およびトルク伝達手段において、入力軸から回転トルクが入力された状態を示す要部拡大断面図である。
【図14】ピンを径方向に突出させたトルク伝達手段を具備したタイプの逆入力遮断クラッチで、図15のI−I線に沿う断面図である。
【図15】図14のH−H線に沿う断面図である。
【図16】(a)は図14のトルク伝達手段において、中立状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のJ−J線に沿う断面図である。
【図17】(a)は図14のトルク伝達手段において、入力軸から反時計方向の回転トルクが入力された状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のK−K線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0048】
21 静止側部材(固定外輪)
22 入力側部材(入力軸)
23 出力側部材(出力軸)
27 凹溝
27a 係合面
28 ピン
28a 外周面
30a,30b 係合子(ローラ)
42 弾性部材
44 ロック手段
45 トルク伝達手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電動シャッターや自動車の操舵装置などに使用され、入力側からの入力トルクを出力側に伝達する一方、出力側からの逆入力トルクをロックして入力側に還流させない機能を具備した逆入力遮断クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、駆動源からの入力トルクを出力側機構に伝達して所要の動作を行なう装置では、駆動源の停止時、出力側機構の位置が変動しないようにこれを保持する機能が求められる場合がある。例えば、電動シャッターの場合、開閉動作の途中で停電などによる駆動源の停止時には、シャッターの自重下降を防止する機能が必要である。また、自動車の操舵装置の場合には、駆動源からの回転力をボールねじ軸に伝達し、そのボールねじ軸を直動させることで車輪との連結ロッドを進退させて車輪を操舵する一方、車輪からの外力を受けた場合の駆動源への逆入力トルクを遮断する機能が必要である。
【0003】
このような出力側からの逆入力トルクをロックして入力側に還流させない機能を具備した機構の一つに逆入力遮断クラッチがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この逆入力遮断クラッチは、図9および図10に示すように固定外輪1に入力軸2と出力軸3を転がり軸受4,5を介して正逆回転自在に支承した構造を具備する。入力軸2には、軸中心から径方向外側へずれた位置にピン8が軸方向に突設され、出力軸3には、入力軸2と対向する端面に径方向に沿う凹溝7が形成されている。前述したピン8の先端を入力軸2の端面から突出させて、出力軸3の端面に形成された凹溝7に嵌入させることにより、入力軸2からの回転トルクを出力軸3に伝達可能としている。
【0005】
一方、図11に示すように入力軸2の出力軸側端部には径方向外側へ拡径したフランジ部2aが一体的に形成され、そのフランジ部2aの外周から軸方向の出力軸側へ連続して延びる複数(図では四つ)の柱部2bが円周方向等間隔に形成されている。この円周方向に隣接する柱部2b間の空間は、軸方向の一方に向かって開口した形態のポケット9を構成し、各ポケット9に一対のローラ10a,10bがそれぞれ配される。
【0006】
出力軸3の入力軸側外周には、前述した入力軸2の柱部2b間に位置するポケット9と対応させて複数対(図では四対)のカム面11a,11bが円周方向等間隔に形成されている。この出力軸3のカム面11a,11bと固定外輪1の内周面との間に、複数対(図では四対)のローラ10a,10bがそれぞれ配され、入力軸2の柱部2b間に形成されたポケット9に収容される。一対のローラ10a,10bのうち、一方のローラ10aは一対のカム面11a,11bのうちの一方のカム面11aに位置し、他方のローラ10bは他方のカム面11bに位置するように配されている。
【0007】
一対のローラ10a,10b間にはN字状をなす一対の弾性部材12a,12bが介挿され、それぞれの弾性部材12a,12bが一対のローラ10a,10bを互いに離れる方向に弾性的に押圧する。また、入力軸2からのトルク伝達時に一方のローラ10aに作用する弾性部材12aの押圧力と他方のローラ10bに作用する弾性部材12bの押圧力とを独立させる遮蔽板13を一対のローラ10a,10b間に配設し、その遮蔽板13の両面に弾性部材12a,12bをそれぞれ固着する。
【0008】
この逆入力遮断クラッチでは、図12に拡大して示す中立状態で、出力軸3に時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材12aの弾性力により反時計方向(回転方向後方)のローラ10aがその方向の楔隙間と係合して、出力軸3が固定外輪1に対して時計方向にロックされる。逆に、出力軸3に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材12bの弾性力により時計方向(回転方向後方)のローラ10bがその方向の楔隙間と係合して、出力軸3が固定外輪1に対して反時計方向にロックされる。従って、出力軸3からの逆入力トルクは、一対のローラ10a,10bによって正逆両回転方向にロックされる。
【0009】
一方、入力軸2に回転トルクが入力されて例えば時計方向に回動すると、図13に拡大して示すように、まず、入力軸2の反時計方向(回転方向後方)の柱部2bがその方向(回転方向後方)のローラ10aと係合して、これを一方の弾性部材12aの弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ10aがその方向の楔隙間から離脱して、出力軸3のロック状態が解除されてその出力軸3が時計方向に回動可能となる。
【0010】
入力軸2がさらに時計方向に回動すると、入力軸2のピン8が出力軸3の凹溝7の係合面に当接することにより、入力軸2からの時計方向の回転トルクがピン8と凹溝7との係合により出力軸3に伝達され、出力軸3が時計方向に回動する。この時、時計方向(回転方向前方)のローラ10bは、その方向の楔隙間と係合せず、出力軸3のカム面11bと固定外輪1の内周面に接触した状態で空転する。
【0011】
入力軸2に反時計方向の回転トルクが入力された場合は、前述とは逆の動作で出力軸3が反時計方向に回動する。従って、入力軸2からの正逆両回転方向の回転トルクは、ピン8と凹溝7との係合により出力軸3に伝達され、出力軸3が正逆両回転方向に回動する。
【特許文献1】特開2003−343601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、特許文献1に開示された逆入力遮断クラッチでは、入力軸2の端面にピン8が軸方向に突設され、出力軸3の入力軸2と対向する端面に径方向に沿う凹溝7が形成されている。このようなトルク伝達構造では、前述したピン8の先端を出力軸3の凹溝7に嵌入させることにより、入力軸2からの回転トルクを出力軸3に伝達可能としている。
【0013】
しかしながら、トルク伝達手段としてのピン8と凹溝7の構造は、入力軸2あるいは出力軸3の端面に形成するものに限らない。図14および図15に示す逆入力遮断クラッチは、ピン8を径方向に突出させたトルク伝達手段を具備した構造のものである。この構造は、例えばクラッチ自体が小型のもので、トルク伝達手段を入力軸2および出力軸3の端面に形成できない、または、ローラ10a,10bの本数が、保持性能上、少なくて済む場合に、円周方向のスペースを利用してトルク伝達手段を形成したものである。
【0014】
なお、この逆入力遮断クラッチは、図9および図10に示す従来の逆入力遮断クラッチと基本構成は同一であるため、同一または相当部分には同一参照符号を付して重複説明は省略する。図14および図15の逆入力遮断クラッチが図9および図10の逆入力遮断クラッチと異なる点は、トルク伝達手段であり、以下、このトルク伝達手段について説明する。
【0015】
この逆入力遮断クラッチにおけるトルク伝達手段は次のとおりである。図16(a)(b)〔同図(a)では固定外輪1は図示省略〕に示すように、出力軸3には、その径方向に貫通孔6(図14参照)が形成され、その貫通孔6にピン8を嵌挿することによりピン8の先端を出力軸3の外周面から径方向外側に突出させている。一方、入力軸2には、出力軸3から突出するピン8と対応する部位に凹溝7が軸方向に沿って形成されている。この凹溝7の円周方向幅はピン8の外径よりも大きく設定されている〔図14および図16(a)参照〕。この出力軸3のピン8を入力軸2の凹溝7に嵌入させることにより、入力軸2からの回転トルクを出力軸3に伝達可能としている。
【0016】
このトルク伝達手段では、図17(a)(b)〔同図(a)では固定外輪1は図示省略〕に示すように入力軸2が反時計方向が回動すると、入力軸2の凹溝7の係合面7aが出力軸3のピン8の外周面8aに当接することにより、入力軸2からの反時計方向の回転トルクがピン8と凹溝7との係合により出力軸3に伝達され、出力軸3が反時計方向に回動する。
【0017】
ところで、逆入力遮断クラッチの入出力側ともに静止状態の場合、出力軸3のピン8が入力軸2の凹溝7に対して中立位置にあり、この状態では、ピン8の外周面8aと凹溝7の係合面7aとは軸方向に沿って平行な位置関係にある〔図16(b)参照〕。一方、入力側からのトルクにより入力軸2が回転し始めるが、入力軸2の凹溝7の係合面7aが出力軸3のピン8の外周面8aに当接するまでは、出力軸3は回転停止状態にある。
【0018】
従って、回転トルクが入力される前に、出力軸3のピン8が入力軸2の凹溝7に対して中立位置にある状態で、ピン8の外周面8aと凹溝7の係合面7aが軸方向に沿って平行な位置関係にあっても、回転トルクの入力により入力軸2の凹溝7の係合面7aが出力軸3のピン8の外周面8aに当接してトルク伝達が始まる時には、図17(b)に示すようにピン8の外周面8aと凹溝7の係合面7aとの間に軸方向に沿う角度差θが生じるため、そのピン8と凹溝7との接触は、ピン8の先端部のみが凹溝7の係合面7aに当接した状態となる。
【0019】
ここで、前述したような円周方向スペースを利用したトルク伝達手段を持つ小型の逆入力遮断クラッチは、電動シャッター用途に比べて自動車用途の場合、厳しい条件下で機能しなければならず、特に操舵装置に適用する場合、タイヤからの逆入力トルクに振動成分を含んだ過大な逆入力トルクが作用する場合がある。
【0020】
回転トルクの伝達中に振動成分を含んだ過大な逆入力トルクを繰り返して受けると、前述したようにピン8の先端部のみが凹溝7の係合面7aに当接した接触状態では、そのピン8と凹溝7との接触部分が局部的な高面圧となり、ピン8の先端部あるいは凹溝7の係合面7aが早期に摩耗してしまい、クラッチのトルク伝達機能を損なうという問題が生じる。
【0021】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、簡便な手段により、トルク伝達手段におけるピンの先端部と凹溝の係合面が早期に摩耗することを未然に防止し得る逆入力遮断クラッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、その静止側部材と出力側部材との間に係合離脱可能に設けられた複数対の係合子、および各対の係合子間に配設されて両側の係合子をそれぞれ静止側部材と出力側部材に係合させる方向に付勢する弾性部材からなり、出力側部材からの逆入力トルクに対して出力側部材をロックし、入力側部材からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段と、入力側部材と出力側部材との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備えた逆入力遮断クラッチであって、トルク伝達手段は、入力側部材あるいは出力側部材のいずれか一方の部材に設けられて他方の部材へ向けて径方向に突出するピンと、他方の部材に軸方向に沿って形成され、ピンが嵌入されてトルク伝達時にピンと係合する凹溝とで構成され、トルク伝達時にピンの外周面と凹溝の係合面とが平行な状態で当接するように凹溝の係合面の径方向角度を設定したことを特徴とする。
【0023】
本発明の逆入力遮断クラッチでは、入力側部材に回転トルクが入力されると、まず、ロック手段によりロック状態が解除され、その状態で入力側部材からの回転トルクがトルク伝達手段を介して出力側部材に伝達される。一方、出力側部材からの逆入力トルクは、ロック手段を介して出力側部材と静止側部材との間でロックされる。従って、入力側からの回転トルクは出力側に伝達されるのに対して、出力側からの逆入力トルクは入力側に還流させない機能が得られる。
【0024】
この逆入力遮断クラッチにおけるトルク伝達手段では、入力側部材あるいは出力側部材のいずれか一方の部材に設けられて他方の部材へ向けて径方向に突出するピンと、他方の部材に軸方向に沿って形成され、ピンが嵌入されてトルク伝達時にピンと係合する凹溝とで構成され、トルク伝達時にピンの外周面と凹溝の係合面とが平行な状態で当接するように凹溝の係合面の径方向角度を設定したことにより、トルク伝達時に凹溝の係合面でその軸方向全域に亘ってピンの外周面が接触する状態を確保できる。その結果、ピンの先端部のみが凹溝の係合面に接触することによる早期摩耗を回避することができる。
【0025】
また、本発明におけるトルク伝達手段の凹溝は、トルク伝達時にピンの外周面と当接する係合面をピンの外周面と同等のR面状とすることが望ましい。このようにすれば、トルク伝達時に凹溝の係合面がその軸方向全域に亘ってピンの外周面が接触するだけでなく、円周方向にもピンの外周面を接触させることができ、凹溝とピンとの接触面積を増加させることができてその接触面圧の低減化が図れる。
【0026】
なお、「ロック手段」には、楔係合力、凹凸係合力、摩擦力、磁気力、電磁力、流体圧力、流体粘性抵抗力、微粒子媒体などによって回転拘束力を付与するものが含まれるが、構造や制御機構の簡素化、動作の円滑化、コストの面などから、楔係合力によって回転拘束力を付与するものが好ましい。具体的には、出力側部材と静止側部材との間に楔隙間を形成し、この楔隙間に対して係合子を係合・離脱させることによって、ロック・空転を切り替える構成とするのがよい。
【0027】
また、この構成には、楔隙間を形成するためのカム面を出力側部材または静止側部材に設けた構成(係合子としてローラ、ボール等の円形断面のものを用いる)、楔隙間を形成するためのカム面を係合子に設けた構成(係合子としてスプラグ等を用いる)が含まれる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、トルク伝達手段は、入力側部材あるいは出力側部材のいずれか一方の部材に設けられて他方の部材へ向けて径方向に突出するピンと、他方の部材に軸方向に沿って形成され、ピンが嵌入されてトルク伝達時にピンと係合する凹溝とで構成され、トルク伝達時にピンの外周面と凹溝の係合面とが平行な状態で当接するように凹溝の係合面の径方向角度を設定したことにより、トルク伝達時に凹溝の係合面でその軸方向全域に亘ってピンの外周面が接触する状態を確保できる。その結果、ピンの先端部のみが凹溝の係合面に接触することによる早期摩耗を回避することができ、長期に亘って安定したトルク伝達が可能な長寿命の逆入力遮断クラッチを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明に係る逆入力遮断クラッチの実施形態を以下に詳述する。図1および図2は本発明の実施形態における逆入力遮断クラッチの全体構成を示し、図1は図2のB−B線に沿う断面図、図2は図1のA−A線に沿う断面図である。本発明は、電動シャッター用途や自動車用途、特に自動車の操舵装置に好適な小型の逆入力遮断クラッチに適用される。
【0030】
この実施形態の逆入力遮断クラッチは、図1および図2に示すように回転が拘束される静止側部材としての固定外輪21と、固定外輪21の内周に先端部が挿入され、回転トルクが入力される入力側部材としての入力軸22と、固定外輪21の内周に入力軸22と対向する状態で挿入され、回転トルクが出力される出力側部材としての出力軸23と、その固定外輪21と出力軸23との間に係合離脱可能に設けられた複数対(図では二対)の係合子としてのローラ30a,30b、および各対のローラ30a,30b間に配設されて両側のローラ30a,30bを固定外輪21と出力軸23間に係合させる方向に付勢する弾性部材42a,42bからなり、出力軸23からの逆入力トルクに対して出力軸23と固定外輪21とをロックし、入力軸22からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段44と、入力軸22と出力軸23との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力軸22からの入力トルクを出力軸23に伝達するトルク伝達手段45とを備え、固定外輪21に入力軸22と出力軸23を転がり軸受24,25を介して正逆回転自在に同軸的に支承した構造を具備する。
【0031】
ロック手段44の構造は以下のとおりである。入力軸22の出力軸側端部には径方向外側へ拡径した大径の円筒部22aが一体的に形成され、その円筒部22aの円周方向180°対向位置に、軸方向開口端から切り欠いたスリット状のポケット29が形成され(図3参照)、これら二つのポケット29に一対のローラ30a,30bと各対のローラ30a,30b間に配された弾性部材42a,42bがそれぞれ収容される。
【0032】
出力軸23の入力軸側外周には、前述した入力軸22の円筒部22aのポケット29と対応させて複数対(図では二対)のカム面31a,31bが円周方向180°位置に形成されている。この出力軸23のカム面31a,31bと固定外輪21の内周面との間に、複数対(図では二対)のローラ30a,30bがそれぞれ配され、入力軸22の円筒部22aに形成されたポケット29に収容される。一対のローラ30a,30bのうち、一方のローラ30aは一対のカム面31a,31bのうちの一方のカム面31aに位置し、他方のローラ30bは他方のカム面31bに位置するように配されている。
【0033】
各対のローラ30a,30b間には弾性部材42が介挿され、この弾性部材42が各対のローラ30a,30bを互いに離れる方向に弾性的に押圧する。この弾性部材42は、出力軸23の外周面に形成されたスリット溝32に、伸縮方向の中央に形成されたU字状部42cが嵌め込まれ、そのU字状部42cの先端縁からM字状部42a,42bが一体的に延在している。
【0034】
また、入力軸22からのトルク伝達時に一方のローラ30aに作用する弾性部材42のM字状部42aの押圧力と他方のローラ30bに作用する弾性部材42のM字状部42bの押圧力とを独立させるU字状の遮蔽板43が、弾性部材42のU字状部42cの内側に嵌め込まれている。
【0035】
トルク伝達手段45の構造は次のとおりである。出力軸23の入力軸側端部近傍部位には、その径方向に貫通孔26が形成され、その貫通孔26に円柱状のピン28を嵌挿することによりピン28の先端を出力軸23の外周面から径方向外側に突出させている。一方、入力軸22の円筒部22aには、出力軸23から突出するピン28と対応する部位に凹溝27が軸方向に沿って形成されている。この凹溝27の円周方向幅はピン28の外径よりも大きく設定されている(図1参照)。この出力軸23のピン28を入力軸22の凹溝27に嵌入させることにより、入力軸22からの回転トルクを出力軸23に伝達可能としている。なお、この実施形態では、入力軸22にピン28を設け、出力軸23に凹溝27を形成しているが、逆に、出力軸23にピン28を設け、入力軸22に凹溝27を形成するような構造とすることも可能である。
【0036】
この逆入力遮断クラッチでは、図4に拡大して示す中立状態で、出力軸23に時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材42のM字状部42aの弾性力により反時計方向(回転方向後方)のローラ30aがその方向の楔隙間と係合して、出力軸23が固定外輪21に対して時計方向にロックされる。逆に、出力軸23に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材42のM字状部42bの弾性力により時計方向(回転方向後方)のローラ30bがその方向の楔隙間と係合して、出力軸23が固定外輪21に対して反時計方向にロックされる。従って、出力軸23からの逆入力トルクは、一対のローラ30a,30bによって正逆両回転方向にロックされる。
【0037】
一方、入力軸22に回転トルクが入力されて例えば時計方向に回動すると、図5に拡大して示すように、まず、入力軸22の反時計方向(回転方向後方)の柱部22bがその方向(回転方向後方)のローラ30aと係合して、これを一方の弾性部材42のM字状部42aの弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ30aがその方向の楔隙間から離脱して、出力軸23のロック状態が解除されてその出力軸23が時計方向に回動可能となる。
【0038】
入力軸22がさらに時計方向に回動すると、後述するように入力軸22のピン28の外周面28aが出力軸23の凹溝27の係合面27aに当接することにより、入力軸22からの時計方向の回転トルクがピン28と凹溝27との係合により出力軸23に伝達され、出力軸23が時計方向に回動する。この時、時計方向(回転方向前方)のローラ30bは、その方向の楔隙間と係合せず、出力軸23のカム面31bと固定外輪21の内周面に接触した状態で空転する。
【0039】
入力軸22に反時計方向の回転トルクが入力された場合は、前述とは逆の動作で出力軸23が反時計方向に回動する。従って、入力軸22からの正逆両回転方向の回転トルクは、ピン28と凹溝27との係合部分を介して出力軸23に伝達され、出力軸23が正逆両回転方向に回動する。
【0040】
この入力軸22からのトルク伝達時、一対のローラ30a,30b間に配設された遮蔽板43により、一方のローラ30aに作用する弾性部材42のM字状部42aの押圧力と他方のローラ30bに作用する弾性部材42のM字状部42bの押圧力とを独立させるようにしたから、一方のローラ30aに作用する弾性部材42のM字状部42aの押圧力が他方のローラ30bに作用する弾性部材42のM字状部42bの押圧力の大きさに影響することがないので、その他方のローラ30bに作用する弾性部材42のM字状部42bのばね荷重が増加することはない。その結果、入力軸22から出力軸23への回転伝達におけるトルク損失を低減させることができる。
【0041】
前述したトルク伝達手段45において、図6〜図8に示すように、トルク伝達時にピン28の外周面28aと凹溝27の係合面27aとが平行な状態で当接するように凹溝27の係合面27aの径方向角度θを設定している。図6(a)(b)〔同図(a)では固定外輪21は図示省略〕は、入力軸22からの回転トルクが作用していない中立状態でのピン28と凹溝27を示す。図7(a)(b)〔同図(a)では固定外輪21は図示省略〕は入力軸22から反時計方向に回転トルクが作用することにより凹溝27の係合面27aがピン28の外周面28aに当接したトルク伝達状態を示し、図8(a)(b)〔同図(a)では固定外輪21は図示省略〕は入力軸22から時計方向に回転トルクが作用することにより凹溝27の係合面27aがピン28の外周面28aに当接したトルク伝達状態を示す。
【0042】
図6(b)に示すように円柱状のピン28の外周面28aに対して、凹溝27の係合面27aを所定の径方向角度θでもって径方向外側に向けて拡開するように形成する。このように凹溝27の係合面27aを径方向角度θで形成することにより、図7(b)あるいは図8(b)に示すようにトルク伝達時にピン28の外周面28aと凹溝27の係合面27aとが平行な状態で当接することになる。なお、この径方向角度θは、図14および図15に示す逆入力遮断クラッチにおけるピン8の外周面8aと凹溝7の係合面7aとの間の角度差θに相当する〔図17(b)参照〕。
【0043】
このようにすれば、トルク伝達時に凹溝27の係合面27aでその軸方向全域に亘ってピン28の外周面28aが接触する状態を確保できる。その結果、ピン28の先端部のみが凹溝27の係合面27aに接触することによる早期摩耗を回避することができる。
【0044】
また、図6(a)に示すように、凹溝27において、トルク伝達時にピン28の外周面28aと当接する係合面27a、つまり、凹溝27の円周方向両側に位置する係合面27aをピン28の外周面28aと同等のR面状としている。このようにすれば、トルク伝達時に凹溝27の係合面27aがその軸方向全域に亘ってピン28の外周面28aが接触するだけでなく、図7(a)あるいは図8(a)に示すように、円周方向にもピン28の外周面28aを接触させることができ、凹溝27とピン28との接触面積を増加させることができてその接触面圧の低減化が図れる。
【0045】
以上のように、トルク伝達時に凹溝27の係合面27aでその軸方向全域に亘ってピン28の外周面28aが接触する状態を確保し、また、凹溝27とピン28との接触面積を増加させることができてその接触面圧の低減化が図れることにより、逆入力遮断クラッチを例えば自動車の操舵装置に適用するに際して、そのピン28と凹溝27との接触部分が局部的な高面圧となることがなく、ピン28あるいは凹溝27の早期摩耗を未然に防止でき、良好なトルク伝達機能を維持することができる。
【0046】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る逆入力遮断クラッチの実施形態で、図2のB−B線に沿う断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1の入力軸を示す斜視図である。
【図4】図1のロック手段において、中立状態を示す要部拡大断面図である。
【図5】図1のロック手段において、入力軸から回転トルクが入力された状態を示す要部拡大断面図である。
【図6】(a)は図1のトルク伝達手段において、中立状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図7】(a)は図1のトルク伝達手段において、入力軸から反時計方向の回転トルクが入力された状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図8】(a)は図1のトルク伝達手段において、入力軸から時計方向の回転トルクが入力された状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
【図9】逆入力遮断クラッチの従来例で、図10のG−G線に沿う断面図である。
【図10】図9のF−F線に沿う断面図である。
【図11】図9の入力軸を示す斜視図である。
【図12】図9のロック手段およびトルク伝達手段において、中立状態を示す要部拡大断面図である。
【図13】図9のロック手段およびトルク伝達手段において、入力軸から回転トルクが入力された状態を示す要部拡大断面図である。
【図14】ピンを径方向に突出させたトルク伝達手段を具備したタイプの逆入力遮断クラッチで、図15のI−I線に沿う断面図である。
【図15】図14のH−H線に沿う断面図である。
【図16】(a)は図14のトルク伝達手段において、中立状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のJ−J線に沿う断面図である。
【図17】(a)は図14のトルク伝達手段において、入力軸から反時計方向の回転トルクが入力された状態を示す要部拡大側面図、(b)は(a)のK−K線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0048】
21 静止側部材(固定外輪)
22 入力側部材(入力軸)
23 出力側部材(出力軸)
27 凹溝
27a 係合面
28 ピン
28a 外周面
30a,30b 係合子(ローラ)
42 弾性部材
44 ロック手段
45 トルク伝達手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、その静止側部材と前記出力側部材との間に係合離脱可能に設けられた複数対の係合子、および各対の係合子間に配設されて両側の係合子をそれぞれ静止側部材と出力側部材に係合させる方向に付勢する弾性部材からなり、出力側部材からの逆入力トルクに対して出力側部材をロックし、入力側部材からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段と、前記入力側部材と出力側部材との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備えた逆入力遮断クラッチであって、
前記トルク伝達手段は、入力側部材あるいは出力側部材のいずれか一方の部材に設けられて他方の部材へ向けて径方向に突出するピンと、前記他方の部材に軸方向に沿って形成され、ピンが嵌入されてトルク伝達時に前記ピンと係合する凹溝とで構成され、トルク伝達時にピンの外周面と凹溝の係合面とが平行な状態で当接するように前記凹溝の係合面の径方向角度を設定したことを特徴とする逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記凹溝は、トルク伝達時にピンの外周面と当接する係合面を前記ピンの外周面と同等のR面状とした請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記係合子がローラあるいはスプラグのいずれかである請求項1又は2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項1】
回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、その静止側部材と前記出力側部材との間に係合離脱可能に設けられた複数対の係合子、および各対の係合子間に配設されて両側の係合子をそれぞれ静止側部材と出力側部材に係合させる方向に付勢する弾性部材からなり、出力側部材からの逆入力トルクに対して出力側部材をロックし、入力側部材からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段と、前記入力側部材と出力側部材との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段とを備えた逆入力遮断クラッチであって、
前記トルク伝達手段は、入力側部材あるいは出力側部材のいずれか一方の部材に設けられて他方の部材へ向けて径方向に突出するピンと、前記他方の部材に軸方向に沿って形成され、ピンが嵌入されてトルク伝達時に前記ピンと係合する凹溝とで構成され、トルク伝達時にピンの外周面と凹溝の係合面とが平行な状態で当接するように前記凹溝の係合面の径方向角度を設定したことを特徴とする逆入力遮断クラッチ。
【請求項2】
前記凹溝は、トルク伝達時にピンの外周面と当接する係合面を前記ピンの外周面と同等のR面状とした請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
【請求項3】
前記係合子がローラあるいはスプラグのいずれかである請求項1又は2に記載の逆入力遮断クラッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−164103(P2008−164103A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−355728(P2006−355728)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
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