説明

逆止弁及びそれを用いた蒸気供給システム

【課題】閉弁状態で弁座の全周に弁体が面当接する状態で弁口を閉弁する面閉塞型の逆止弁の固有流量特性を変化させる。
【解決手段】弁口22の外周縁部に設けた環状の弁座23の全周に面当接する状態で弁座23に着座して弁口22を閉弁する弁体24を設け、付勢手段25の付勢力によって弁体24を閉弁側に付勢し、且つ、弁口22からの流体流入圧によって付勢手段25の付勢力に抗して弁体24が弁座23から離れる側に移動して弁口22を開弁する構造にしてある逆止弁10であって、弁体24の弁口22側に、弁体24が弁座23から離れる側に移動するときに弁体24の弁座当接部と弁座23との間に形成される隙間A1の面積よりも弁口22の内面との間に形成される隙間A2の面積を小さく保つ形態で流体の通過流量を制御する流量制御用の突出部30を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の流体の逆流防止に使用される逆止弁及びそれを用いた蒸気供給システムに関し、詳しくは、弁口の外周縁部に設けた環状の弁座の全周に面当接する状態で弁座に着座して弁口を閉弁する弁体を設け、付勢手段の付勢力によって前記弁体を閉弁側に付勢し、且つ、前記弁口からの流体流入圧によって前記付勢手段の付勢力に抗して弁体が弁座から離れる側に移動して弁口を開弁する構造にしてある逆止弁及びそれを用いた蒸気供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の逆止弁は、閉弁状態において弁座の全周に面当接する状態で弁体が弁座に着座するため、種々の逆止弁の中でも極めて高い止水性能を有している。そして、従来では、図8に示すように、弁口41側の面42aが平面となるディスク状の弁蓋部42を弁体43に形成したものが知られている(例えば、下記特許文献1参照)。なお、44は流入路、45は流出路、46は圧縮コイルスプリング(前記付勢手段の一例)、47は弁室、48は環状の弁座である。また、図8(a)は閉弁状態を示し、図8(b)は流量(Cv値)約20%時の開弁状態を示す。
【0003】
この従来の逆止弁は、流体の流体圧による弁体43の移動に伴い弁体43の弁座当接部(弁蓋部42の下面42aの外周部)と環状の弁座48との間に形成される環状の隙間A1の面積が流体の流入通路の最小面積となるため、開弁時における環状の隙間A1の面積によって流体の通過流量が決定されることになるが、弁体43の弁座48から離れる側への移動量(ストローク)に基づく弁開度の増大に伴う隙間A1の面積の増大率が弁開度の増大に連れて徐々に小さくなるために、図2の(a)に示すタイプの固有流量特性、つまり、弁開度の増大に伴う流量の増大率が弁開度の大きな大開度域よりも弁開度の小さな小開度域で大きくなる固有流量特性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−202624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の逆止弁は、種々の設備で要求される閉弁時の高い止水性能を有する優れた利点はあるものの、図2の(a)に示すタイプの固有流量特性を有する関係上、弁開度の小さな小開度域で弁開度の増大に伴う流量の増加率が比較的大きいことから、弁開度に基づく最小調整可能流量があまり小さくはなく(換言すれば、レンジアビリティがあまり広くはなく)、そのため、小流量域での通過流量の微妙な調整が要求される設備への適用が難しいなど、図2の(a)に示すタイプの固有流量特性とは異なる固有流量特性が要求される種々の設備への適用が難しい問題があった。
【0006】
本発明は上述の如き実情に鑑みてなされたものであって、その主たる課題は、弁構造の合理的な改良により、上記の如き問題点を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、逆止弁に係り、その特徴は、
弁口の外周縁部に設けた環状の弁座の全周に面当接する状態で弁座に着座して弁口を閉弁する弁体を設け、付勢手段の付勢力によって前記弁体を閉弁側に付勢し、且つ、前記弁口からの流体流入圧によって前記付勢手段の付勢力に抗して弁体が弁座から離れる側に移動して弁口を開弁する構造にしてある逆止弁であって、
前記弁体の弁口側に、弁体が弁座から離れる側に移動するときに弁体の弁座当接部と弁座との間に形成される隙間の面積よりも弁口の内面との間に形成される隙間の面積を小さく保つ形態で流体の通過流量を制御する流量制御用の突出部を設けた点にある。
【0008】
上記構成によれば、弁体の弁体当接部と環状の弁座の全周とが面当接することによる閉弁時の高い止水性能は維持しながらも、弁体の弁口側に形成された流量制御用突出部でもって従来の固有流量特性(図2の(a)に示す固有流用特性)とは異なるタイプの固有流量特性を有するものとすることができるから、種々の固有流用特性が要求される種々の設備への適用を可能にすることができる。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記弁体を前記弁口の開口面に直交する方向に沿って移動案内する弁軸を設けるとともに、
前記流量制御用突出部を、前記弁口の開口面の中心軸芯周りで対称性又は略対称性を有する形状に構成した点にある。
【0010】
上記構成によれば、先ずは、前記弁体を前記弁口の開口面に直交する方向に沿って移動案内する弁軸によって流体の流入圧による弁体の移動(閉弁姿勢から開弁姿勢への移動)に効率的に行わせることができる。
【0011】
そして、前記流量制御用突出部を、前記弁口の開口面の中心軸芯周りで対称性(所謂、回転対象性)又は略対称性を有する形状に構成してあるから、流体の流入圧を受けて弁体が開口面に直交する方向に沿って移動するときに流体の流入圧を流体の流入方向で均等に受け流す形態でその流体の流入圧を利用して弁体を所定姿勢に保つことができる。
【0012】
したがって、弁体の移動時における弁体の所定姿勢からの変動で弁軸の支持部周りや弁軸と弁体との接続部周り等の弁軸との干渉部位に損傷や磨耗が生じる不具合を効果的に抑止することができて、所期の性能を長く保つことができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、第1又は第2特徴構成の実施に好適な構成であり、その特徴は、
前記流量制御用突出部を、前記弁体が前記弁座に近づく側に移動して弁座に着座するまでの移動過程において前記弁口の内周面又は弁座に接触しない外郭形状に構成した点にある。
【0014】
上記構成によれば、閉弁動作に伴う流体制御用突出部と弁口の内周面及び弁座との接触によって流体制御用突出部の外郭形状が変化する不具合を防止することができるから、流体制御用突出部の外面形状が変化することに伴う流量制御の精度の低下を抑止することができる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、蒸気供給システムに係り、その特徴は、
前記第1〜第3特徴構成のいずれかの逆止弁を用いた蒸気供給システムであって、
蒸気使用機器に蒸気を供給する蒸気供給路に減圧弁を介装し、前記蒸気供給路における減圧弁の下流側に蒸気エゼクタを介装するとともに、前記蒸気エゼクタの吸引部と復水を再蒸発させる再蒸発タンクとを吸引路で接続し、
前記減圧弁の通過蒸気を蒸気エゼクタの駆動蒸気とする形態で再蒸発タンク内の再蒸発蒸気を蒸気エゼクタで吸引して前記通過蒸気と混合する構成にするとともに、
前記再蒸発タンクへの蒸気の逆流を抑止するように前記逆止弁を前記吸引路に介装し、
前記蒸気供給路における前記蒸気エゼクタの下流側の蒸気の温度又は圧力に応じて前記減圧弁の弁開度を調整する構成にし、
前記逆止弁が、それの弁開度の増大に伴う流量の増大率が弁開度の小さな小開度域と弁開度の大きな大開度域とで同等となる固有流量特性又は前記増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性を有するように、前記流量制御用突出部の外郭形状を構成した点にある。
【0016】
つまり、この蒸気供給システムは、前記蒸気供給路に介装した前記蒸気エゼクタによる吸引作用でもって前記再蒸発タンク内の再蒸発蒸気を前記蒸気使用機器に対する供給蒸気に活用することで蒸気プラント等の設備全体の省エネ化を図る。
【0017】
しかしながら、近年になって、極めて小流量の再蒸発蒸気をも蒸気エゼクタの吸引作用で利用して設備全体の省エネ効果を更に高めることと、蒸気使用機器の種別やそれを備える大元の設備の種別或いは設備管理者の意向等の種々の事情に応じて蒸気使用機器に対する供給蒸気等を精密に制御することとの双方が同時に求められてきている。そして、この蒸気使用機器に対する供給蒸気等は減圧弁の開度調整による蒸気エゼクタの吸い込み圧の調整で制御される。
【0018】
ところが、従来、この種の蒸気供給システムでは、前記吸引路に介装した逆止弁を、弁開度の小さな小開度域で弁開度の増大に伴う流量の増加率が比較的大きい固有流量特性(図2の(a)で示す固有流量特性)を有する構造としていたことから、その逆止弁の弁開度に基づく最小調整可能流量があまり小さくはなく(換言すれば、レンジアビリティがあまり広くはなく)、そのため、極めて少流量の再蒸発蒸気を活用すべく減圧弁による弁開度の調整で蒸気エゼクタの吸い込み圧をかなり低く保つようにしたときに、逆止弁が僅かな開弁状態と閉弁状態とを繰り返す(弁体が繰り返し弁座をたたく)不安定な状態(所謂、チャタリング)が発生し、そのことで、蒸気エゼクタの吸い込み圧が不安定になって減圧弁による蒸気の制御が不精密になっていた。
【0019】
それに比べ、上記構成によれば、前記吸引路に介装した逆止弁の前記小開度域での前記増大率が小さくなるから、その分、逆止弁の開弁状態での最小調整可能流量が小さくなって、前述したチャタリングが逆止弁に発生しない安定した状態でより小流量の再蒸発蒸気を通過させることができる。
【0020】
したがって、より小流量の再蒸発蒸気を活用すべく減圧弁の開度の調整で蒸気エゼクタの吸い込み圧を低く保つ場合でも、逆止弁のチャタリングの発生で蒸気エゼクタの吸い込み圧が不安定になるのを抑止することができ、減圧弁の蒸気制御の精度を高めることができる。
【0021】
それ故に、蒸気供給路における蒸気エゼクタの下流側の蒸気の温度又は圧力に応じて減圧弁の弁開度を調整する上記構成にあって、蒸気エゼクタの下流側の蒸気の温度又は圧力を高精度に制御することできるから、精密に制御された蒸気を要する蒸気使用機器に対しても再蒸発蒸気を利用した省エネ効果の高い蒸気供給を行うことができる。
【0022】
しかも、前述の従来の蒸気供給システムに比べ、前記逆止弁の前記大開度域での前記増大率が大きくなるから、チャタリングの発生し得ない大開度域では大流量の再蒸発蒸気に素早く対応して、その大流量の再蒸発蒸気を素早く通過させることができる。
【0023】
さらに、前述の如く、逆止弁のチャタリングの発生を抑止することによって、そのチャタリングの発生で逆止弁の弁体や弁座の磨耗や損傷をも抑止することができ、システムの維持コストの低廉化も図ることができる。
【0024】
そして、弁口の外周縁部に設けた環状の弁座の全周に面当接する状態で弁座に着座して弁口を閉弁する弁体を設けることに対し、弁体の弁口側に形成された流量制御用突出部の外郭形状によって前記固有流量特性を有するものとするから、弁体の弁体当接部と環状の弁座の全周とが面当接することによる閉弁時の高い止水性能を得ながらも、故障や誤動の少ない安定した状態で前記固有流量特性を発揮させることができる。
【0025】
本発明の第5特徴構成は、蒸気供給システムに係り、その特徴は、
前記第1〜第3特徴構成のいずれかの逆止弁を用いた蒸気供給システムであって、
蒸気使用機器に蒸気を供給する蒸気供給路に減圧弁を介装し、前記蒸気供給路における減圧弁の下流側に蒸気エゼクタを介装するとともに、前記蒸気エゼクタの吸引部と復水を再蒸発させる再蒸発タンクとを吸引路で接続し、
前記減圧弁の通過蒸気を蒸気エゼクタの駆動蒸気とする形態で再蒸発タンク内の再蒸発蒸気を蒸気エゼクタで吸引して前記通過蒸気と混合する構成にするとともに、
前記再蒸発タンクへの蒸気の逆流を抑止するように前記逆止弁を前記吸引路に介装し、
前記減圧弁の通過蒸気の温度又は圧力に応じて前記減圧弁の弁開度を調整する構成にし、
前記逆止弁が、それの弁開度の増大に伴う流量の増大率が弁開度の小さな小開度域と弁開度の大きな大開度域とで同等となる固有流量特性又は前記増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性を有するように、前記流量制御用突出部の外面形状を構成した点にある。
【0026】
上記構成によれば、前記第4特徴構成と同様、前述の従来の蒸気供給システムに比べ、前記吸引路に介装した逆止弁の前記小開度域での前記増大率が小さくなるから、その分、逆止弁の開弁状態での最小調整可能流量が小さくなって、前述したチャタリングが逆止弁に発生しない安定した状態でより小流量の再蒸発蒸気を通過させることができる。
【0027】
したがって、より小流量の再蒸発蒸気を活用すべく減圧弁の開度の調整で蒸気エゼクタの吸い込み圧を低く保つ場合でも、逆止弁のチャタリングの発生で蒸気エゼクタの吸い込み圧が不安定になるのを抑止することができ、減圧弁の蒸気制御の精度を高めることができる。
【0028】
それ故に、前記減圧弁の通過蒸気の温度又は圧力に応じて前記減圧弁の弁開度を調整する上記構成にあって、減圧弁の出口側の蒸気(換言すれば、蒸気エゼクタの駆動蒸気)の温度又は圧力をその蒸気エゼクタの構造や要求される性能等に応じた好適なものに高精度に制御することができるから、蒸気エゼクタの高効率化や長寿命化を効果的に達成することができる。
【0029】
しかも、前述の従来の蒸気供給システムに比べ、前記逆止弁の前記大開度域での前記増大率が大きくなるから、チャタリングの発生し得ない大開度域では大流量の再蒸発蒸気に素早く対応して、その大流量の再蒸発蒸気を素早く通過させることができる。
【0030】
さらに、前述の如く、逆止弁のチャタリングの発生を抑止することによって、そのチャタリングの発生で逆止弁の弁体や弁座の磨耗や損傷をも抑止することができ、システムの維持コストの低廉化も図ることができる。
【0031】
そして、弁口の外周縁部に設けた環状の弁座の全周に面当接する状態で弁座に着座して弁口を閉弁する弁体を設けることに対し、弁体の弁口側に形成された流量制御用突出部の外郭形状によって前記固有流量特性を有するものとするから、弁体の弁体当接部と環状の弁座の全周とが面当接することによる閉弁時の高い止水性能を得ながらも、故障や誤動の少ない安定した状態で前記固有流量特性を発揮させることができる。
【0032】
本発明の第6特徴構成は、蒸気供給システムに係り、その特徴は、
前記第1〜第3特徴構成のいずれかの逆止弁を用いた蒸気供給システムであって、
蒸気使用機器に蒸気を供給する蒸気供給路に減圧弁を介装し、前記蒸気供給路における減圧弁の下流側に蒸気エゼクタを介装するとともに、前記蒸気エゼクタの吸引部と復水を再蒸発させる再蒸発タンクとを吸引路で接続し、
前記減圧弁の通過蒸気を蒸気エゼクタの駆動蒸気とする形態で再蒸発タンク内の再蒸発蒸気を蒸気エゼクタで吸引して前記通過蒸気と混合する構成にし、
前記再蒸発タンクへの蒸気の逆流を抑止するように前記逆止弁」」を前記吸引路に介装し、
前記再蒸発タンク内の再蒸発蒸気の温度又は圧力に応じて前記減圧弁の弁開度を調整する構成にし、
前記逆止弁が、それの弁開度の増大に伴う流量の増大率が弁開度の小さな小開度域と弁開度の大きな大開度域とで同等となる固有流量特性又は前記増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性を有するように、前記流量制御用突出部の外面形状を構成した点にある。
【0033】
上記構成によれば、前記第4、第5特徴構成と同様、前述の従来の蒸気供給システムに比べ、前記吸引路に介装した逆止弁の前記小開度域での前記増大率が小さくなるから、その分、逆止弁の開弁状態での最小調整可能流量が小さくなって、前述したチャタリングが逆止弁に発生しない安定した状態でより小流量の再蒸発蒸気を通過させることができる。
【0034】
したがって、より小流量の再蒸発蒸気を活用すべく減圧弁の開度の調整で蒸気エゼクタの吸い込み圧を低く保つ場合でも、逆止弁のチャタリングの発生で蒸気エゼクタの吸い込み圧が不安定になるのを抑止することができ、減圧弁の蒸気制御の精度を高めることができる。
【0035】
それ故に、前記減圧弁を通過中の蒸気の温度又は圧力に応じて前記減圧弁の弁開度を調整する上記構成にあって、減圧弁の通過蒸気(換言すれば、蒸気エゼクタの駆動蒸気)の温度又は圧力をその蒸気エゼクタの構造や要求される性能等に応じた好適なものに高精度に制御することができるから、蒸気エゼクタの高効率化や長寿命化を効果的に達成することができる。
【0036】
しかも、前述の従来の蒸気供給システムに比べ、前記逆止弁の前記大開度域での前記増大率が大きくなるから、チャタリングの発生し得ない大開度域では大流量の再蒸発蒸気に素早く対応して、その大流量の再蒸発蒸気を素早く通過させることができる。
【0037】
さらに、前述の如く、逆止弁のチャタリングの発生を抑止することによって、そのチャタリングの発生で逆止弁の弁体や弁座の磨耗や損傷をも抑止することができ、システムの維持コストの低廉化も図ることができる。
【0038】
そして、弁口の外周縁部に設けた環状の弁座の全周に面当接する状態で弁座に着座して弁口を閉弁する弁体を設けることに対し、弁体の弁口側に形成された流量制御用突出部の外郭形状によって前記固有流量特性を有するものとするから、弁体の弁体当接部と環状の弁座の全周とが面当接することによる閉弁時の高い止水性能を得ながらも、故障や誤動の少ない安定した状態で前記固有流量特性を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】蒸気供給システムの第1実施形態を示す構成図
【図2】逆止弁における弁開度と流量の関係を示すグラフ
【図3】(a)逆止弁の閉弁状態を示す縦断面図、(b)要部の拡大図
【図4】(a)逆止弁の開弁状態を示す縦断面図、(b)要部の拡大図
【図5】蒸気供給システムの第2実施形態を示す構成図
【図6】蒸気供給システムの第3実施形態を示す構成図
【図7】蒸気供給システムの別実施形態を示す構成図
【図8】(a)従来の逆止弁の閉弁状態を示す縦断面図、(b)従来の逆止弁の開弁状態を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0040】
[第1実施形態]
図1は、蒸気プラント等の蒸気使用設備に用いられる蒸気供給システムの概略図を示し、蒸気使用機器(図示しない)に蒸気S(本例では、中圧又は低圧の蒸気)を供給する蒸気供給路1に減圧弁3を介装するとともに、蒸気供給路1における減圧弁3の下流側に蒸気エゼクタ4を介装してある。
【0041】
2は、復水D1(本例では、蒸気Sよりも高圧の蒸気から生じた高温の復水)を再蒸発させる再蒸発タンクであり、この再蒸発タンク2には、復水D1を流入させる復水流入路5を接続し、再蒸発2タンクの下層側には、再蒸発後の復水D2を排出する復水排出路6を接続してある。また、復水排出路6には、蒸気トラップ7を介装してある。
【0042】
そして、再蒸発タンク2の上層域と蒸気エゼクタ4の吸引部8とを吸引路9で接続するとともに、この吸引路9には、再蒸発タンク2への蒸気の逆流を抑止する逆止弁10を介装してある。
【0043】
つまり、この蒸気供給システムは、減圧弁3の通過蒸気S´を蒸気エゼクタ4の駆動蒸気とする形態で再蒸発タンク2内の再蒸発蒸気FSを蒸気エゼクタ4で吸引して通過蒸気Sと混合し、この混合蒸気MAを蒸気使用機器に供給する構成にしてある。
【0044】
また、混合蒸気MSの圧力を検出する圧力センサ11を蒸気供給路1における蒸気エゼクタ4の下流側に設けるとともに、この圧力センサ11と前記減圧弁3とを電気的に接続し、圧力センサ11の検出値に応じて混合蒸気MAの圧力が所定値になるように減圧弁3の弁開度を調整する構成(蒸気供給路1における蒸気エゼクタ4の下流側の蒸気の温度又は圧力に応じて減圧弁3の弁開度を調整する構成の一例)にしてある。
【0045】
前記逆止弁10としては、弁開度(弁体24の移動量に基づく弁開度)dの増大に伴う流量r(本例では、流量係数(Cv値))の増大率が弁開度dの小さな小開度域と弁開度の大きな大開度域とで同等となる固有流量特性(図2中の(b)で示す固有流量特性)又は前記増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性(図2中の(c)で示す固有流量特性)を有する構造のものが望ましく、本例では、後者の固有流量特性を有する構造のものを用いている。
【0046】
なお、Cv値は、弁の容量を表す数値であって、具体的には次式で表される。
Cv=Q√(G/Δp)
Q:流量(gal(US)/min)
G:比重
Δp:差圧(1lbf/in2
【0047】
つまり、この蒸気供給システムでは、吸引路9に介装する逆止弁10として、前記増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性を有するものを採用することによって、逆止弁10の小開度域での小さな前記増大率でもって開弁状態での最小調整可能流量を小さくする形態で逆止弁10にチャタリングの発生しない状況下で極めて少流量の再蒸発蒸気FSを活用できるようにし、さらに、大開度域での大きな前記増大率でもってチャタリングの発生し得ない大開度域では大流量の再蒸発蒸気に素早く対応して通過させることができるようにしてある。
【0048】
前記減圧弁3の下部には、減圧弁3への流入蒸気Sから復水を分離するように気液分離機12と蒸気トラップ13を一体的に設け、また、気液分離機12と蒸気トラップ13を経て分離された復水D3を再蒸発タンク2の上方域に導く連通管14を設けることによって、蒸気エゼクタ4の吸込部4aに内蔵されたノズル部(図示しない)に復水の混入率の極めて低い通過蒸気S´を供給する構成にしてある。なお、15は連通管14に介装した逆止弁15である。
【0049】
図3、図4に示すように、前記吸引路9に介装された前記逆止弁10は、弁室16及び流出路17を内部に有する出口側弁ケース18と、流入路19及び環状の弁座23とを有する略円筒状の入口側弁ケース21を気密状態で一体的に組み付けて構成してある。
【0050】
前記弁室16には、流入路19を弁室16に開口させる弁口22の外周縁部に形成した前記弁座23の全周に面当接する状態で弁座23に着座して弁口22を閉弁可能な弁体24を内装するとともに、弁室16における弁体24と出口側弁ケース18との間には、弁体24を閉弁側に付勢する圧縮コイルスプリング25(付勢手段の一例)を設けてある。
【0051】
また、前記弁室16には、弁体24を弁口22の開口面に直交するX方向に沿って移動案内する弁軸26を設けてある。この弁軸26は、流体(本例では、再蒸発蒸気FS)の通過方向(本例では前記X方向)に沿って一直線状になるように弁体24の両端側に突出させた一対の棒状部から構成されている。
【0052】
前記弁室16における流出路19側の部位には、弁軸26の一端側(図中の上端側)を弁口22の開口面に直交するX方向に沿って移動自在に支持する一端側軸受け27を設けるとともに、流入路19の内部には、弁軸26の他端側を前記X方向に沿って摺動自在に支持する他端側軸受け28が設けられている。
【0053】
つまり、この逆止弁10は、基本的には、圧縮コイルスプリング25の付勢力で弁口22を閉弁した閉弁状態(図3に示す状態)にしておき、所定の流体流入圧を受けたときのみ、その流体流入圧で圧縮コイルスプリング25の付勢力に抗して弁体24が弁座23から離れる側(図3中の上方側)に移動することによって弁口22を開弁した開弁状態(図4に示す状態)となる構造にしてある。なお、図4に示す開弁状態はCv値が約20%の状態である。
【0054】
前記弁体24は、弁軸26の径方向に沿って鍔状に突出する弁蓋部29と、弁体24が弁座23から離れる側に移動するときに弁体24の弁座当接部(具体的には、弁蓋部29の下面の外周部)と弁座23との間に形成される環状の隙間(開口面)A1の面積よりも弁口22の内面との間に形成される隙間(開口面)A2の面積を小さくする形態で再蒸発蒸気FSの通過流量を制御するよう弁蓋部29の弁口22側の面の中央位置に突出させた流量制御用突出部30と、前記弁軸26とが一体形成されている。
【0055】
前記流量制御用突出部30の形状(具体的には、外郭形状)は、弁開度dの増大に伴う流量rの増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性(図2の(c)で示す固有流量特性)を有するように構成してあり、詳しくは、弁体24の上方側への移動量に対する弁蓋側半部30a(図中の上半部)での隙間A2の面積の増大率が弁口側半部30b(図中の下半部)での隙間A2の面積の増大率よりも小さくなるように弁蓋側半部30aよりも弁口側半部30bが急に収斂する形状、具体的には、弁口22の開口面の中心軸芯周り(本例では、前記X方向に沿う軸芯周り、弁軸26の軸芯周り)で対称性(所謂、回転対称性)を有する半球状又は略半球状に構成してある。
【0056】
また、流量制御用突出部30の弁蓋部29側端の外径R1(つまり、流量制御用突出部30の最大径)を流入路19の内径R2と同一に構成するとともに、弁口22の内縁部を面取りして弁口22の内径R3を流量制御用突出部30の弁蓋部29側端の外径R1よりも僅かに大に構成することによって、弁体24が弁座23に近づく側に移動して弁蓋部29が弁座23に着座するまでの移動過程において流量制御用突出部30が弁口22の内周面及び弁座23及び流入路19の内周面のいずれにも接触しないように構成してある。
【0057】
[第2実施形態]
前述の第1実施形態では、前記蒸気供給路1における前記蒸気エゼクタ4の下流側の蒸気の圧力に応じて前記減圧弁3の弁開度を調整する構成を例に示したが、前記再蒸発タンク2内の再蒸発蒸気FSの圧力に応じて前記減圧弁3の弁開度を調整する構成にしてもよい。
【0058】
本実施形態では、図5に示すように、再蒸発タンク2内の再蒸発蒸気FSの圧力を検出する圧力センサ32を再蒸発タンク2に設けるとともに、この圧力センサ32と前記減圧弁3とを電気的に接続し、圧力センサ32の検出値に応じて再蒸発タンク2内の再蒸発蒸気FSの圧力が所定値になるように減圧弁3の弁開度を調整する構成にしてある。
【0059】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0060】
[第3実施形態]
前述の第1実施形態では、前記蒸気供給路1における前記蒸気エゼクタ4の下流側の蒸気の圧力に応じて前記減圧弁3の弁開度を調整する構成を例に示したが、前記減圧弁の通過蒸気S´の圧力に応じて前記減圧弁3の弁開度を調整する構成にしてもよい。
【0061】
本実施形態では、図6に示すように、蒸気供給路1における減圧弁3と蒸気エゼクタ2の間の箇所に減圧弁3の通過蒸気S´の圧力を検出する圧力センサ33を設けるとともに、この圧力センサ33と前記減圧弁3とを電気的に接続し、圧力センサ33の検出値に応じて再蒸発タンク2内の再蒸発蒸気FSの圧力が所定値になるように減圧弁3の弁開度を調整する構成にしてある。
【0062】
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0063】
[別実施形態]
前述の各実施形態では、圧力センサ11、32、33の検出値に応じて前記減圧弁3の弁開度を調整する構成を例に示したが、例えば、図7に示すように、パイロット管34を通じてのパイロット圧に応じて前記減圧弁3の弁開度を機械的に調整する構成にしてもよい。
【0064】
前述の各実施形態では、圧力センサ11、32、33の検出値に応じて前記減圧弁3の弁開度を調整する構成を例に示したが、飽和蒸気の圧力と温度は一定の関係を示すことから、圧力センサに代えて温度センサを設け、この温度センサの検出値に応じて前記減圧弁3の弁開度を調整する構成にしてもよい。
【0065】
前述の各実施形態では、前記逆止弁10を、それの弁開度dの増大に伴う流量rの増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性(図2の(c)に示す固有流量特性)を有する構造にする場合を例に示したが、前記逆止弁10を、弁開度dの増大に伴う流量rの増大率が弁開度dの小さな小開度域と弁開度dの大きな大開度域とで同等となる固有流量特性(図2の(b)に示す固有流量特性)を有する構造にしてもよい。
【0066】
前記流量制御用突出部30の形状等の具体的構成は、前述の半球状又は略半球状に限らず、円錐状、円錐台状、角錐状、角錐台状等、所望の固有流量特性を有するように適宜に変更すればよい。
【0067】
前述の各実施形態では、逆止弁10の付勢手段が圧縮コイルスプリング25から構成されている場合を例に示したが、ゴム等の弾性体や重力を付勢力とする弁構造等から構成されていてもよい。
【0068】
前述の各実施形態では、弁体24が弁座23に近づく側に移動して弁蓋部29が弁座23に着座するまでの移動過程において流量制御用突出部30が弁口22の内周面及び弁座23及び流入路19の内周面のいずれにも接触しないように構成するのに、流量制御用突出部30の弁蓋部29側端の外径R1を流入路19の内径R2と同一に構成し、弁口22の内縁部を面取りして弁口22の内径R3を流量制御用突出部30の弁蓋部29側端の外径R1よりも僅かに大に構成する場合を例に示したが、例えば、流量制御用突出部30の弁蓋部29側端の外径R1を流入路19の内径R2及び弁口22の内径R3よりも小に構成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 蒸気供給路
2 再蒸発タンク
3 減圧弁
4 蒸気エゼクタ
4a 吸引部
9 吸引路
10 逆止弁
22 弁口
23 弁座
24 弁体
25 付勢手段
26 弁軸
30 流量制御用突出部
S 蒸気
S´ 減圧弁の通過蒸気
FS 再蒸発蒸気
MS 混合蒸気
d 弁開度
r 流量
A1 隙間
A2 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁口の外周縁部に設けた環状の弁座の全周に面当接する状態で弁座に着座して弁口を閉弁する弁体を設け、付勢手段の付勢力によって前記弁体を閉弁側に付勢し、且つ、前記弁口からの流体流入圧によって前記付勢手段の付勢力に抗して弁体が弁座から離れる側に移動して弁口を開弁する構造にしてある逆止弁であって、
前記弁体の弁口側に、弁体が弁座から離れる側に移動するときに弁体の弁座当接部と弁座との間に形成される隙間の面積よりも弁口の内面との間に形成される隙間の面積を小さく保つ形態で流体の通過流量を制御する流量制御用の突出部を設けてある逆止弁。
【請求項2】
前記弁体を前記弁口の開口面に直交する方向に沿って移動案内する弁軸を設けるとともに、
前記流量制御用突出部を、前記弁口の開口面の中心軸芯周りで対称性又は略対称性を有する形状に構成してある請求項1記載の逆止弁。
【請求項3】
前記流量制御用突出部を、前記弁体が前記弁座に近づく側に移動して弁座に着座するまでの移動過程において前記弁口の内周面又は弁座に接触しない外郭形状に構成してある請求項1又は2記載の逆止弁。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の逆止弁を用いた蒸気供給システムであって、
蒸気使用機器に蒸気を供給する蒸気供給路に減圧弁を介装し、前記蒸気供給路における減圧弁の下流側に蒸気エゼクタを介装するとともに、前記蒸気エゼクタの吸引部と復水を再蒸発させる再蒸発タンクとを吸引路で接続し、
前記減圧弁の通過蒸気を蒸気エゼクタの駆動蒸気とする形態で再蒸発タンク内の再蒸発蒸気を蒸気エゼクタで吸引して前記通過蒸気と混合する構成にするとともに、
前記再蒸発タンクへの蒸気の逆流を抑止するように前記逆止弁を前記吸引路に介装し、
前記蒸気供給路における前記蒸気エゼクタの下流側の蒸気の温度又は圧力に応じて前記減圧弁の弁開度を調整する構成にし、
前記逆止弁が、それの弁開度の増大に伴う流量の増大率が弁開度の小さな小開度域と弁開度の大きな大開度域とで同等となる固有流量特性又は前記増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性を有するように、前記流量制御用突出部の外郭形状を構成してある蒸気供給システム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の逆止弁を用いた蒸気供給システムであって、
蒸気使用機器に蒸気を供給する蒸気供給路に減圧弁を介装し、前記蒸気供給路における減圧弁の下流側に蒸気エゼクタを介装するとともに、前記蒸気エゼクタの吸引部と復水を再蒸発させる再蒸発タンクとを吸引路で接続し、
前記減圧弁の通過蒸気を蒸気エゼクタの駆動蒸気とする形態で再蒸発タンク内の再蒸発蒸気を蒸気エゼクタで吸引して前記通過蒸気と混合する構成にするとともに、
前記再蒸発タンクへの蒸気の逆流を抑止するように前記逆止弁を前記吸引路に介装し、
前記減圧弁の通過蒸気の温度又は圧力に応じて前記減圧弁の弁開度を調整する構成にし、
前記逆止弁が、それの弁開度の増大に伴う流量の増大率が弁開度の小さな小開度域と弁開度の大きな大開度域とで同等となる固有流量特性又は前記増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性を有するように、前記流量制御用突出部の外郭形状を構成してある蒸気供給システム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の逆止弁を用いた蒸気供給システムであって、
蒸気使用機器に蒸気を供給する蒸気供給路に減圧弁を介装し、前記蒸気供給路における減圧弁の下流側に蒸気エゼクタを介装するとともに、前記蒸気エゼクタの吸引部と復水を再蒸発させる再蒸発タンクとを吸引路で接続し、
前記減圧弁の通過蒸気を蒸気エゼクタの駆動蒸気とする形態で再蒸発タンク内の再蒸発蒸気を蒸気エゼクタで吸引して前記通過蒸気と混合する構成にし、
前記再蒸発タンクへの蒸気の逆流を抑止するように前記逆止弁を前記吸引路に介装し、
前記再蒸発タンク内の再蒸発蒸気の温度又は圧力に応じて前記減圧弁の弁開度を調整する構成にし、
前記逆止弁が、それの弁開度の増大に伴う流量の増大率が弁開度の小さな小開度域と弁開度の大きな大開度域とで同等となる固有流量特性又は前記増大率が前記大開度域よりも前記小開度域で小さくなる固有流量特性を有するように、前記流量制御用突出部の外郭形状を構成してある蒸気供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−69479(P2011−69479A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223195(P2009−223195)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000133733)株式会社テイエルブイ (913)
【Fターム(参考)】