説明

逆止弁

【課題】低い流体圧力であっても確実に封止及び開封できる逆止弁を提供すること。
【解決手段】入口通路13を形成するメス型外装体12と、出口通路21を形成するオス型外装体19と、各外装体12,19の間に配置され、入口通路13側から出口通路21への流体の通過を許容する一方で出口通路21側から入口通路13側への流体の通過を規制するダイヤフラム26とを備えている。ダイヤフラム26は、円環状の固定部27、入口通路13及び出口通路21を連通して流体が通過可能な連通孔28を有する連通部29と、連通部29と固定部27との間を覆う薄膜状に形成され弾性変形可能な弁部30とを備えており、入口通路13には出口通路21側から流体圧力が付与された際、連通孔28を封止するように連通部29が当接(密着)される封止部16が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の通路に配設される逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、人工透析に用いられる医療用の血液回路には、当該血液回路内に生理食塩水や薬剤といった各種の薬液を投入するためのポートとして逆止弁が接続されている。この血液回路に接続される逆止弁は、外部から薬液の通過を許容する一方で、血液回路側から薬液や血液が外部に漏出することを規制するようになっている。このような逆止弁として、弾性変形可能な2つのアームを介して弁固定部に固定された弁部を有する逆止弁が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の逆止弁では、逆止弁内を通過する液体の圧力によって液体の進行方向に向かって弁部が移動し、当該弁部によって入口通路の出口端を閉じることで、出口通路側から入口通路側への液体の通過を規制するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−24159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の逆止弁では、弁固定部の中央に配設された弁体と2本のアーム以外が開口部とされており、弁体は弁体自身が受ける液体の圧力によって移動するようになっている。このため、出口通路側から付与される液体の圧力が低い場合には、十分に入口通路の出口端を封止できない虞があった。
【0005】
この発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、低い流体圧力であっても確実に封止及び開封できる逆止弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、流体が通過される第1通路及び第2通路を形成する外装体と、前記第1通路及び前記第2通路の間に配置され、前記第1通路側から前記第2通路側への流体の通過を許容する一方で、前記第2通路側から前記第1通路側への流体の通過を規制する弁体を備えた逆止弁であって、前記弁体は、環状に形成され前記外装体に固定される固定部と、前記固定部の内側に配置され、前記第1通路と前記第2通路とを連通し流体が通過可能な連通孔を有する連通部と、前記連通部と前記固定部の間の全体を覆う薄膜状に形成され弾性変形可能な弁部と、を有しており、前記第2通路側から前記弁部に流体の圧力が付与された場合には前記連通孔を封止するように前記連通部が当接される一方で前記第1通路側から前記弁部に流体の圧力が付与された場合には前記連通部が離間される封止部を備えたことを要旨とする。
【0007】
これによれば、連通孔を有する連通部と固定部の間を覆う薄膜状の弁部によって、弁体を通過しようとする流体の圧力を受けることができる。このため、流体が弁体を第2通路側から第1通路側へ通過しようとする場合、弁部が流体圧力によって第1通路側に弾性変形するとともに連通部が封止部に当接される。このため、連通孔が速やかに封止され、流体の通過を規制することができる。その一方で、流体が弁体を第1通路側から第2通路側へ通過しようとする場合、弁部が流体の圧力によって第2通路側に弾性変形するとともに連通部が封止部から離間される。このため、連通孔の封止が速やかに解除され、流体の通過が許容される。したがって、低い流体圧力であっても確実に封止及び開封することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の逆止弁において、前記弁体は全体が弾性を有する弾性材料より形成されており、前記固定部は円筒状に形成されており、前記弁部は前記固定部において前記第1通路側に形成されており、前記固定部の第2通路側には、内周面から全周に亘って内側に突出する円環状の凸部が形成されていることを要旨とする。
【0009】
これによれば、弁体は、弁部、固定部及び凸部により第2通路側に開口する袋状をなす。このため、弁部は、第2通路側から弁体を通過しようとする流体の圧力を逃がすことなく確実に受け止めることができる。したがって、第2通路側から付与される流体の圧力が低くても、連通部を封止部に当接させ、確実に封止することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の逆止弁において、前記弁部は、前記連通部を囲うように形成された襞部を備えたことを要旨とする。
これによれば、弁部は、連通部を囲うように形成された襞部を備えており、流体の圧力によってより速やかに弾性変形可能とすることができる。したがって、低い流体の圧力であっても確実に封止及び開封できる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の逆止弁において、前記外装体は、前記第1通路及び前記第2通路のうち何れか一方の通路を形成するとともに配管を接続可能な第1外装体と、他方の通路を形成するとともに配管を接続可能な第2外装体とを連結して構成されており、前記第1外装体及び前記第2外装体は、相互に回転可能に構成されており、前記第1外装体と前記第2外装体の連結部には、前記弁体とは別体に形成され前記連結部において前記第1通路及び前記第2通路が外部と連通しないように密封する密封手段が設けられていることを要旨とする。
【0012】
これによれば、第1外装体及び第2外装体が相互に回転可能となる。このため、例えば、逆止弁に接続された配管に捩れが生じた場合であっても、各外装体を回転させることで捩れを容易に解消することができる。そして、弁体とは別体に設けた密封手段により、第1外装体と第2外装体との連結部において、第1通路及び第2通路と外部とが連通しないように確実に密封することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、低い流体圧力であっても確実に封止及び開封できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は、第1の実施形態における逆止弁の正面図、(b)は、(a)の断面図。
【図2】(a)は、第1の実施形態におけるメス型外装体の正面図、(b)は、同じくメス型外装体の左側面図、(b)は、同じくメス型外装体の右側面図。
【図3】(a)は、第1の実施形態におけるダイヤフラムの側面図、(b)は、(a)の断面図。
【図4】(a)〜(c)は、第1の実施形態における逆止弁の拡大断面図。
【図5】(a)は、第2の実施形態における逆止弁の正面図、(b)は、(a)の断面図。
【図6】(a)は、第2の実施形態におけるメス型外装体の正面図、(b)は、同じくメス型外装体の左側面図、(c)は、同じくメス型外装体の右側面図。
【図7】(a)は、第2の実施形態におけるオス型外装体の正面図、(b)は、同じくオス型外装体の左側面図、(c)は、同じくオス型外装体の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した逆止弁の第1の実施形態を図1〜図4に基づき説明する。図1に示すように、本実施形態の逆止弁11は、図示しない配管(チューブなど)が接続されるメス型外装体12を備えている。メス型外装体12には、略円筒状をなすとともに内部に流体(例えば、生理食塩水や液状の薬剤など)が通過される入口通路(第1通路)13を形成するロック部14が設けられている。ロック部14の外周面には、雄ねじ14bが形成されているとともに、入口通路13(ロック部14の内周面)は所定のテーパ状をなしており、メス型外装体12(ロック部14)の全体として所定の規格形状(例えば、ISO594−1)をなしている。
【0016】
ロック部14の内側開口部13b側には、ロック部14の軸線と直交する面状をなすとともに、内側開口部13bの周囲を囲うように円形の押圧面14aが形成されている。また、入口通路13には、入口通路13の延びる方向に沿って延びる略円柱状の封止部16が、入口通路13(ロック部14)と同一軸線上に位置するように支持されている。より具体的に説明すると、図1及び図2に示すように、封止部16の外周面には、側面視において封止部16から均等な角度で放射状に延びるように形成され、封止部16の外周面とロック部14の内周面とを連結する複数(本実施形態では、3本)のリブRが形成されている。リブRは、封止部16及びロック部14と一体に形成されており、封止部16は、入口通路13内において移動しないように固定されている。そして、封止部16の周囲には、各リブRによって区切られるように、流体が通過可能な空間が形成されている。また、封止部16の入口側開口部13a側の端部は、半球状に形成されるとともに、他端側にはロック部14の軸線に直交する円形の封止面16aが形成されている。封止面16aの外周縁部には、内側開口部13b側に突出するリング状の突出部16bが形成されている。封止面16a及び突出部16bは、リブRにおいてロック部14とは反対側の端部から僅かに突出するように形成されている。また、押圧面14aの周縁部には、この押圧面14aからロック部14の反対側へ延びる円環状の保持部15が形成されている。保持部15には、保持部15の側方に開口し保持部15の内側と外側を連通する開口窓15aが形成されている。また、保持部15の内周面には内側に突出する円環状の突起部15bが形成されている。
【0017】
また、図1に示すように、メス型外装体12には、メス型外装体12の突起部15bと対応する形状に形成された溝状の嵌合部18が突起部15bに嵌合されることで、オス型外装体19が取着されている。メス型外装体12の突起部15b及びオス型外装体19の嵌合部18は、何れも側面視で円形をなしているとともに、嵌合部18の外径は、突起部15bの内径より僅かに小さく設定されている。このため、各外装体12,19は、軸線回りで相互に回転可能となっている。また、オス型外装体19には、円筒状をなしロック部14の軸線と同一軸線上に位置するルアー部20が設けられている。ルアー部20には、図示しない配管(チューブなど)が接続されるようになっている。また、ルアー部20は、所定のテーパ状をなしているとともに、ルアー部20の内側には、流体が通過される出口通路(第2通路)21が形成されている。ルアー部20において、メス型外装体12側に配置される開口部20aの周囲には、当該開口部20aの周囲を囲うように形成された溝状の収容部24が形成されている。また、オス型外装体19には、ルアー部20を囲う円環状をなし、内周面に雌ねじ22aが形成されたルアーロック部22が配設されている。そして、オス型外装体19は、全体として所定の規格形状(例えば、ISO594−2)をなしている。なお、本実施形態では、各外装体12,19により、逆止弁11の外装体が構成されている。
【0018】
メス型外装体12(入口通路13)とオス型外装体19(出口通路21)の間には、ダイヤフラム(弁体)26が配設されている。図1及び図3に示すように、ダイヤフラム26は、ゴム弾性を有する弾性材料(例えば、シリコンゴムやフッ素ゴムなどの熱可塑性エラストマ)によりその全体が形成されている。ダイヤフラム26は、望ましくは30度〜80度のゴム硬度とし、より望ましくは50度〜70度のゴム硬度とされている。ダイヤフラム26は、略円筒状をなす固定部27を備えており、この固定部27がメス型外装体12の押圧面14aとオス型外装体19の収容部24とに挟持されることで、固定(保持)されるようになっている。固定部27は、各外装体12,19によって挟持された状態において、押圧面14a及び収容部24にそれぞれ密着されるようになっている。なお、オス型外装体19はメス型外装体12に対して嵌合により取着されており、各外装体12,19は、ダイヤフラム26の固定部27との密着状態(気密性)を保ったまま軸線回りで相互に回転可能となっている。
【0019】
固定部27の内側には、中央に入口通路13と出口通路21とを連通し流体が通過可能な連通孔28を有する略円盤状の連通部29が配設されている。連通部29(連通孔28)及び固定部27は、同心円状に配置されている。この連通部29は、連通部29の周縁部と、固定部27において入口通路13側の端部との間の全体を覆うとともに弾性変形可能に形成された薄膜状(薄肉)の弁部30によって支持されている。ここで薄膜状(薄肉)とは、固定部27の直径方向の寸法に対して薄く(肉薄に)形成されていることを指し、弁部30の弾性や柔軟性を損なわない厚さに形成されていることを指す。弁部30の厚みは、望ましくは0.05mm〜1.5mmとし、より望ましくは0.1mm〜0.5mmとする。そして、弁部30には、固定部27及び連通部29と同心円状をなすように、折り返し形成された複数の襞部30a(本実施形態では、2つ)が設けられている。連通部29は、ダイヤフラム26(固定部27)を各外装体12,19で挟持した状態において、メス型外装体12の封止部16によって僅かに出口通路21側に押し込まれた状態となっている。このため、流体圧力が付与されていない状態において、連通部29の連通孔28は、封止部16の封止面16a及び突出部16bによって封止された(閉じられた)状態とされている。
【0020】
また、固定部27において、出口通路21側の内周面には、内周面から全周に亘って内側に突出する円環状の凸部31が形成されている。このため、本実施形態のダイヤフラム26は、弁部30、固定部27及び凸部31により出口通路21側に開口する略袋状をなしている。
【0021】
次に、本実施形態の逆止弁11の作用について流体が逆止弁11(ダイヤフラム26)を通過する際の動作を中心に説明する。
図4(a)に示すように、入口通路13及び出口通路21の何れからも流体圧力が付与されていない場合、連通部29は、封止部16によって出口通路21側に僅かに押し込まれた状態とされている。このため、連通部29と封止部16とが当接(接触)しており、連通孔28は封止面16a及び突出部16bによって封止された状態となっている。
【0022】
次に、図4(b)に示すように、入口通路13側から流体が流入されると、弁部30は、入口通路13側からの流体圧力によって出口通路21側に膨らむように弾性変形(膨張)するとともに、連通部29が出口通路21側へ移動される。このため、連通部29は、封止部16から離間され、封止面16a(突出部16b)による連通孔28の封止状態が解除される。即ち、ダイヤフラム26が開封(連通孔28が開放)され、流体の通過が許容される。そして、入口通路13に流入した流体は、封止部16の側方から連通孔28を通過して出口通路21に流入される(矢印Y1で示す)。
【0023】
次に、図4(c)に示すように、出口通路21側から流体が流入されると、弁部30は、出口通路21側からの流体圧力によって入口通路13側に弾性変形(膨張)するとともに、連通部29が弁部30に引っ張られるようにして封止部16の封止面16a及び突出部16bに密着(当接)される。このため、連通部29は、出口通路21側から流体圧力が付与されていない状態(図4(a)に示す状態)と比較して、より強く封止部16に密着される。即ち、出口通路21側からの流体圧力が高くなる程、連通部29がより強く封止部16に密着されるようになっている。また、出口通路21側からの流体圧力は、固定部27の内周面及び凸部31の内側に対しても付与される。このため、出口通路21側から付与される流体圧力は、弁部30の周囲から逃げることなく弁部30に対して付与される(矢印Y2で示す)。さらに、ダイヤフラム26の固定部27及び凸部31は、出口通路21側から付与される流体圧力が高い程、オス型外装体19の収容部24の内周面及び底面に強く密着される。
【0024】
したがって、第1の実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)連通部29及び固定部27の間の全体を覆うように薄膜状の弁部30を形成し、この弁部30で流体圧力を受けるようにした。このため、出口通路21側から入口通路13側へ流体がダイヤフラム26を通過しようとする場合、弁部30が流体圧力によって入口通路13側に弾性変形(膨張)するとともに連通部29が封止部16に密着(当接)される。このため、連通孔28は、速やかに且つ確実に封止され、流体の通過を規制することができる。その一方で、流体がダイヤフラム26を入口通路13側から出口通路21側へ通過しようとする場合、弁部30が流体圧力によって出口通路21側に弾性変形(膨張)するとともに、連通部29が封止部16から離間するように出口通路21側へ移動される。このため、連通孔28の封止が速やかに解除され、流体の通過が許容される。したがって、本実施形態の逆止弁11では、低い流体圧力であっても確実に封止及び開封することができる。
【0025】
(2)ダイヤフラム26を、弁部30、固定部27及び凸部31により出口通路21側に開口する略袋状に構成した。このため、出口通路21側から入口通路13側へダイヤフラム26を通過しようとする流体の圧力を逃がすことなく確実に受け止めることができる。したがって、出口通路21側から入口通路13側へ通過しようとする流体の圧力が低くても、連通部29を封止部16に密着(当接)させ、確実に連通孔28を封止することができる。さらに、ダイヤフラム26の固定部27及び凸部31は、出口通路21側から付与される流体圧力が高い程、オス型外装体19の収容部24の内周面及び底面に強く密着される。このため、出口通路21側の流体圧力が高くなっても、流体が固定部27及び凸部31と収容部24との間から漏出することを抑制できる。
【0026】
(3)弁部30を薄膜状(薄肉)に形成するとともに連通部29を囲うように襞部30aを設けた。このため、ダイヤフラム26を通過しようとする流体の圧力によって、弁部30を弾性変形し易くできる。したがって、出口通路21側から付与される流体圧力によって連通部29を封止部16に密着(当接)し易くできるとともに、入口通路13側から付与される流体圧力によって連通部29を封止部16から離間させ易くできる。したがって、低い流体圧力であっても確実に封止及び開封できる。
【0027】
(4)流体圧力が付与されていない状態において、連通部29は、封止部16によって出口通路21側に僅かに押し込まれた状態となるようにした。このため、流体圧力が付与されていなくても、連通孔28が封止部16の封止面16a及び突出部16bによって封止された状態とできる。したがって、出口通路21から付与される流体圧力が低くても連通孔28を封止部16で速やかに且つ確実に封止することができる。
【0028】
(5)オス型外装体19をメス型外装体12に対して嵌合により取着するとともに、ダイヤフラム26の固定部27が押圧面14a及び収容部24にそれぞれ密着されるようにした。このため、各外装体12,19は、ダイヤフラム26の固定部27との密着状態(気密性)を保ったまま軸線回りで相互に回転可能にできる。したがって、各外装体12,19に接続した配管(チューブ)が捩れてしまった場合、各外装体12,19を回転させることで配管を取り外すことなく捩れを解消することができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明を具体化した逆止弁の第2の実施形態を図5〜図7に基づき説明する。なお、以下の説明では、既に説明した実施形態と同一構造について同一符号を付すなどし、その重複する説明を省略又は簡略する。
【0029】
第2の実施形態の逆止弁では、各外装体12,19とダイヤフラム26とを密着させることで気密性を確保することに代えて、メス型外装体12とオス型外装体19の間に密封手段としてのOリング34を配設して気密性を確保している点で、第1の実施形態と異なる。以下、詳細に説明する。
【0030】
図5及び図6に示すように、第2の実施形態のメス型外装体12は、第1の実施形態と同様に入口通路13を形成するロック部14を備えているとともに、ロック部14の内側開口部13bの周囲には、押圧面14aが形成されている。押圧面14aの周縁部には、当該押圧面14aからロック部14とは反対側へ伸びる略円筒状(円環状)の保持部15が連設されている。保持部15の側部には、押圧面14aからロック部14とは反対側へ離間した位置に一対の開口窓15aが形成されている。保持部15の内周面において、開口窓15aよりも押圧面14aとは反対側には、開口窓15aに隣接するように、保持部15の内側に向けて突出する円弧状の突起部15bが形成されている。また、突起部15bにおいて押圧面14aの反対側には、保持部15の内径(直径)が保持部15の先端側に向かって大きくなるように傾斜するテーパ部15cが形成されている。また、保持部15の内周面は、平滑に形成されている。なお、第2の実施形態の封止部16は、封止部16及びロック部14と一体に形成された4本のリブRによって、入口通路13内において移動不能に固定されている。
【0031】
図5に示すように、メス型外装体12には、当該メス型外装体12に形成された保持部15に対し、略円筒状に形成された挿入部35が挿入されることでオス型外装体19が取着されている。本実施形態では、メス型外装体12の保持部15及びオス型外装体19の挿入部35が、メス型外装体12とオス型外装体19が連結される連結部Kをなしている。
【0032】
図5及び図7に示すように、オス型外装体19の挿入部35の先端部には、挿入部35の開口部33の全周にわたって断面視段状に形成され、ダイヤフラム26の全体を収容可能な凹状の収容部24が形成されている。ダイヤフラム26は、連通部29が挿入部35の先端側(メス型外装体12の入口通路13側)に配置された状態で収容部24に収容されるようになっている。また、収容部24の底部24aは、ダイヤフラム26の固定部27と接触する面となっている。
【0033】
挿入部35の外周面(側面)において、メス型外装体12の開口窓15aよりも押圧面14a側に対応する部分には、挿入部35の周方向に沿って全周に亘って取付溝36が形成されている。取付溝36には、ゴム弾性を有する弾性材料(例えば、シリコンゴムやフッ素ゴムなど)からなるOリング34が取り付けられている。本実施形態のOリング34は、断面形状が円形に形成されている。
【0034】
挿入部35の外周面において、取付溝36よりも基端側(抜き方向側)には、当該取付溝36に連続するように、テーパ部35bが形成されている。テーパ部35bは、先端側から基端側へ向けて挿入部35の外径(直径)が大きくなるように傾斜するように形成されている。そして、挿入部35の外周面において、テーパ部35bよりも基端側には、挿入部35の外周面の全周に亘って段状の係合部35aが連設されている。係合部35aは、メス型外装体12の突起部15bに係合するようになっている。挿入部35の基端側には、第1の実施形態と同様にルアー部20及びルアーロック部22が連設されている。そして、図5(b)に示すように、メス型外装体12及びオス型外装体19は、オス型外装体19の挿入部35がメス型外装体12の保持部15内に挿入されるとともに、オス型外装体19の係合部35aがメス型外装体12の突起部15bに係合されることで相互に回転可能な状態で連結(取着)されるようになっている。また、オス型外装体19は、係合部35aと突起部15bとの係合により、メス型外装体12から脱落しないようになっている。
【0035】
本実施形態では、メス型外装体12とオス型外装体19とが連結された状態において、押圧面14aと底部24aとの離間距離は、ダイヤフラム26の固定部27が押圧面14a及び底部24a(収容部24)に僅か(緩やか)に接触するものの、完全に密着しない大きさに設定されている。即ち、本実施形態のダイヤフラム26は、押圧面14aと底部24aとで固定(保持)されているものの、メス型外装体12とオス型外装体19の連結部Kにおいて、入口通路13及び出口通路21と外部(例えば、大気)とが連通しないように密封していない状態とされている。その一方で、保持部15の内周面と取付溝36の底面との離間距離は、Oリング34の太さ(線径)よりも小さくなるように設定されている。このため、本実施形態では、Oリング34が押し潰されつつ挿入部35の外周面(取付溝36)及び保持部15の内周面にそれぞれ密着しており、入口通路13及び出口通路21と外部(例えば、大気)とが連通しないように密封するようになっている。
【0036】
したがって、第2の実施形態によれば、第1の実施形態において記載した(1)〜(4)の効果に加えて、以下に示す効果を得ることができる。
(6)メス型外装体12とオス型外装体19とを相互に回転可能に連結するとともに、メス型外装体12の押圧面14aと、オス型外装体19の底部24a(収容部24)とでダイヤフラム26を固定(挟持)する一方で、Oリング34により、メス型外装体12とオス型外装体19との連結部Kにおいて入口通路13及び出口通路21と外部(例えば、大気)とが連通しないように密封するようにした。このため、各外装体12,19を回転させることで配管(チューブ等)の捩れを容易に解消できるとともに、ダイヤフラム26とは別体に設けたOリング34により、連結部Kにおいて入口通路13及び出口通路21と外部(例えば、大気)とが連通しないように確実に密封できる。
【0037】
(7)ダイヤフラム26は、ダイヤフラム26の固定部27が押圧面14a及び底部24a(収容部24)に僅か(緩やか)に接触するものの完全には密着しない状態で固定(保持)される一方で、連結部Kにおける気密性は、Oリング34により保つようにした。このため、押圧面14a及び底部24aが固定部27に密着する面積を減少させ、各外装体12,19を相互に回転させる際に要する力を低減することができる。例えば、ダイヤフラム26の固定部27を押圧面14a及び底部24a(収容部24)に密着させる場合には、密封とダイヤフラム26の固定を同時に行う必要があり、ダイヤフラム26と押圧面14a及び収容部24との接触面積を大きく設定する必要がある。この場合には、ダイヤフラム26がゴム弾性を有する弾性材料から形成されていることから、各外装体12,19を回転させる際の摩擦が大きくなり、各外装体12,19を回転させ難くなる可能性がある。これに対して、本実施形態では、ダイヤフラム26とは別体のOリング34により気密性を確保しており、このような問題を好適に解決している。
【0038】
(8)ダイヤフラム26とは別体のOリング34を設けた。このため、ダイヤフラム26を固定するために行う押圧面14aと底部24aとの離間距離の調整と、気密性を確保するために保持部15の内周面と挿入部35の外周面(取付溝36の底面)との離間距離の調整とを独立して行うことができる。したがって、ダイヤフラム26を押圧面14a及び底部24aで挟持することにより密封と固定を同時に行うのと比較して、それぞれ独立して適切な離間距離に調整することができる。特に、本実施形態では、ダイヤフラム26を固定するための調整を逆止弁11の軸線方向に対して行う一方で、連結部Kにおける気密性を確保するための調整を逆止弁11の軸線と直交する方向に対して行うことができ、各外装体12,19の離間距離の設定をより適切に行うことができる。
【0039】
(9)取付溝36の底面を粗面とする一方で、保持部15の内周面を平滑に形成した。このため、各外装体12,19を回転させる場合、Oリング34がオス型外装体19に対して滑り難い一方でメス型外装体12に対して滑り易くなり、メス型外装体12とオス型外装体19とを相互に回転させた際にOリング34が連結部K内で捩れることを抑制できる。
【0040】
(10)挿入部35の外周面(側面)にOリング34を配設した。このため、Oリング34の弾性力によって挿入部35(オス型外装体19)の軸線と、保持部15(メス型外装体12)の軸線とを一致させることができる。
【0041】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 第1の実施形態において、突起部15bを円環状に形成したが、保持部15の内周面において、開口窓15aよりも押圧面14aとは反対側であって、各開口窓15aに隣接する部分にのみ設けてもよい。
【0042】
○ 第2の実施形態において、突起部15bを円弧状に形成したが、保持部15の内周面の全周に亘って円環状に形成してもよい。
○ 第2の実施形態において、取付溝36の底面を平滑とする一方で、保持部15の内周面を粗面に形成してもよい。
【0043】
○ 第2の実施形態において、取付溝36は、保持部15の内周面に形成されていてもよい。
○ 第2の実施形態において、押圧面14aに内側開口部13bを囲うように側面視円形の取付溝36を設け、当該取付溝36に取り付けたOリング34を取付溝36の底面とオス型外装体19の挿入部35の先端面とで挟持するように構成してもよい。このように構成しても、気密性を保持したまま各外装体12,19を相互に回転可能に構成することができる。
【0044】
○ 第2の実施形態において、Oリング34に代えて、断面形状が多角形の角パッキンや、更に異なる断面形状の密封部材を用いてもよい。
○ 第2の実施形態において、メス型外装体12及びオス型外装体19を複数の部品から構成してもよい。この場合、例えば、メス型外装体12を第1のメス型外装体及び第2のメス型外装体の2つの部品から構成するとともに、第1のメス型外装体と第2のメス型外装体との連結部にダイヤフラム26を配設し、第2のメス型外装体とオス型外装体19との連結部にOリング34を配設してもよい。また、例えば、オス型外装体19において、ルアー部20とルアーロック部22を別体に形成してもよい。
【0045】
○ 第2の実施形態において、ダイヤフラム26を削除し、各外装体12,19に接続された配管(チューブ等)の捩れを解消する機能を有した「継手」として構成することも可能である。なお、この場合、メス型外装体12の封止部16、オス型外装体19の収容部24を同時に省略してもよい。従来から、医療施設や実験施設などでは、ゴムチューブ(配管)同士を接続して形成された流体回路(例えば、人工透析用の血液回路や、点滴用の点滴回路など)が広く用いられている。しかしながら、これらゴムチューブを接続して形成した流体回路では、回路の製造時や使用時においてゴムチューブに捩れが発生する場合がある。流体回路を形成するゴムチューブに捩れが発生した場合には、当該捩れた部分において流体が通過する通路の断面積が減少し、流体の通過が妨げられる虞がある。このような問題に対し、本別例(変形例)の「継手」によれば、当該本別例の継手を流体回路に組み込むことで、各外装体12,19同士を相互に回転させ、ゴムチューブ(配管)に生じた捩れを解消することができる。
【0046】
○ 各実施形態において、固定部27は略円筒状に形成したが異なる形状としてもよい。例えば、角パッキン状としたり、Oリング状としたりしてもよい。また、固定部27は、環状をなしておればよく、例えば、側面視において楕円形や、四角形、八角形などに形成してもよい。
【0047】
○ 各実施形態において、各外装体12,19は、所定の規格形状とすることに限られず、配管を接続可能な形状であればどのような形状としてもよい。例えば、各外装体12,19のロック部14及びルアー部20を入れ替えてもよい。また、出口通路21及び入口通路13は同一軸線上に配置することに限られず、各外装体12,19の軸線同士をずらしたり、出口通路21と入口通路13が同一方向に延びるように平行に配置したりしてもよい。
【0048】
○ 各実施形態において、各外装体12,19は、相互に回転できないように固定されていてもよい。具体的に言えば、各外装体12,19を超音波で溶着したり、接着したりしてもよい。
【0049】
○ 各実施形態において、弁部30の襞部30aを1つ、或いは3つ以上形成してよい。また、弁部30は、襞部30aを設けずに平面状としてもよいが、流体圧力を付与された際の弾性変形のし易さを向上させるために襞部30aを設けた方がより好ましい。
【0050】
○ 各実施形態において、連通部29は、弁部30と同一の厚さとして弁部30と一体に構成してもよい。即ち、連通部29は、封止部16に密着(当接)することで連通孔28を封止可能な形状であればどのような形状に構成してもよい。
【0051】
○ 各実施形態において、弁部30及び凸部31は、固定部27の開口端部に設けなくてもよい。また、本実施形態において、凸部31は削除してもよい。
○ 各実施形態において、封止部16は、出口通路21側に突出するとともに連通孔28を挿通するように配置される円錐状や棒状に形成してもよい。このように構成しても、連通孔28を封止することができる。
【0052】
○ 各実施形態において、ダイヤフラム26は、弁部30のみをゴム弾性を有する弾性材料で形成し、その他の固定部27、凸部31、及び連通部29をプラスチックや金属などの材料で形成してもよい。
【0053】
○ 各実施形態において、連通孔28(連通部29)は、固定部27と同心円状(中央)に配置されていなくてもよい。
○ 各実施形態において、連通部29は、流体圧力が付与されていない状態において封止部16から離間するように配置してもよい。このように構成しても、弁部30が流体圧力によって入口通路13側へ弾性変形し、連通部29が封止部16に密着(当接)されることで、連通孔28を封止することができる。
【0054】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(a)前記外装体は、前記第1通路を形成するとともに配管を接続可能な第1接続部を有する第1外装体と、前記第2通路を形成するとともに配管を接続可能な第2接続部を有する第2外装体とから構成されており、前記弁体は、前記固定部が第1外装体と第2外装体に密着された状態で挟持されることで第1通路と第2通路との間に配置されるようになっており、前記第1外装体及び前記第2外装体は、相互に回転可能に構成されている請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の逆止弁(以下、技術的思想(a)と示す)。
【0055】
(b)前記第1外装体には、前記固定部の外周面と密着した状態で前記固定部を収容可能な収容部が形成されている技術的思想(a)に記載の逆止弁。
【符号の説明】
【0056】
11…逆止弁、12…メス型外装体(外装体)、13…入口通路(第1通路)、16…封止部、16a…封止面、16b…突出部、19…オス型外装体(外装体)、21…出口通路(第2通路)、26…ダイヤフラム(弁体)、27…固定部、28…連通孔、29…連通部、30…弁部、30a…襞部、31…凸部、34…Oリング(密封手段)、K…連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が通過される第1通路及び第2通路を形成する外装体と、前記第1通路及び前記第2通路の間に配置され、前記第1通路側から前記第2通路側への流体の通過を許容する一方で、前記第2通路側から前記第1通路側への流体の通過を規制する弁体を備えた逆止弁であって、
前記弁体は、環状に形成され前記外装体に固定される固定部と、前記固定部の内側に配置され、前記第1通路と前記第2通路とを連通し流体が通過可能な連通孔を有する連通部と、前記連通部と前記固定部の間の全体を覆う薄膜状に形成され弾性変形可能な弁部と、を有しており、
前記第2通路側から前記弁部に流体の圧力が付与された場合には前記連通孔を封止するように前記連通部が当接される一方で前記第1通路側から前記弁部に流体の圧力が付与された場合には前記連通部が離間される封止部を備えた逆止弁。
【請求項2】
前記弁体は全体が弾性を有する弾性材料より形成されており、前記固定部は円筒状に形成されており、前記弁部は前記固定部において前記第1通路側に形成されており、前記固定部の第2通路側には、内周面から全周に亘って内側に突出する円環状の凸部が形成されている請求項1に記載の逆止弁。
【請求項3】
前記弁部は、前記連通部を囲うように形成された襞部を備えた請求項1又は請求項2に記載の逆止弁。
【請求項4】
前記外装体は、前記第1通路及び前記第2通路のうち何れか一方の通路を形成するとともに配管を接続可能な第1外装体と、他方の通路を形成するとともに配管を接続可能な第2外装体とを連結して構成されており、前記第1外装体及び前記第2外装体は、相互に回転可能に構成されており、
前記第1外装体と前記第2外装体の連結部には、前記弁体とは別体に形成され前記連結部において前記第1通路及び前記第2通路が外部と連通しないように密封する密封手段が設けられている請求項1〜請求項3のうち何れか一項に記載の逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−181028(P2010−181028A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251027(P2009−251027)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(596108287)コロナ技研工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】