説明

逆流防止ストッパを有する洗浄注射器

静注器具(IV)洗浄注射器(20)組立体は、流体を保持するための小室(33)を画成する内側表面(32)と、開放した近位端(28)と、遠位壁(31)を含む遠位端(30)とを有する筒(22)を含み、貫通して小室(33)と流体連通する通路(38)を有する細長い先端(36)がこの遠位壁から遠位へ延びる。細長い本体部分(25)と、筒(22)の内側表面(32)と液密係合で滑動自在に配置されたストッパ(54)とを有するピストン(24)が設けられる。小室(33)から流体を送出することが完了して、ストッパ(54)が遠位壁(31)に接触するときにストッパの撓みを制御する逆流防止構造が設けられる。この逆流防止構造は、円錐形状の遠位表面(59)を有するストッパ(54)と、筒(22)の内側表面(32)とを含み、遠位壁(31)は円錐形状(35)であり、遠位壁(31)における筒(22)の内側表面(32)の全先端角Aは、ストッパ(54)の遠位表面(59)の全先端角Bよりも少なくとも6°大きい。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射器組立体に関し、特に、静注器具(IV)洗浄処置に使用するための注射器組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
IVカテーテルは、普通に用いられる治療用具である。多くの患者には、その治療法にしたがって、様々な処置に使用するばかりの状態で、または液体および薬剤を注入するためにIV系と流体連通の状態で、血管にIVカテーテルがつながれている。多くのIVセットは、カテーテルと流体連通の状態にあって、薬剤を患者に注射する目的のために、かつカテーテルの保全性を維持するための洗浄処置に利用可能なIV口を有する。医療施設は、カテーテルが患者の体内に留置されている時間量および使用されているカテーテルの種類に応じた洗浄計画書を有する。例えば、末梢穿刺中心静脈カテーテル(PICC)(peripherally inserted central catheter)は長い柔軟性のあるカテーテルであり、それは、典型的に肘前窩の表在静脈を経由して中心静脈系の中に挿入される(最適状態では、その先端が上大静脈の中で終端する)。PICC管は、中期または長期治療の処方時に使用するために設計されている。
【0003】
これらのカテーテル管は、計画書に応じて食塩洗浄溶液および/またはヘパリンロック洗浄溶液を使って定期的に洗浄されねばならない。とりわけ、食塩洗浄溶液はカテーテルから血液を除去し、ヘパリンは将来的な血餅形成を防止する助けとなる。最も一般的なIV口は、穿通可能な隔膜または予め細隙が設けられた隔膜によって蓋がされており、それは従来知られており、「必要が生じるときに」を意味するラテン語であるプロレナタ(pro re nata)から時に「PRN」と呼ばれる。この隔膜は、カテーテルの中に流体を注入したり、またはそこから流体を抜き出したりするために先の鋭い針カニューレの挿入を可能にするゴムまたは別のエラストマー系材料から作製されることが好ましい。針カニューレを引き抜くと、この隔膜は自然に封止状態になる。予め細隙が設けられた隔膜を有する口は、先の鈍いカニューレに使用される。典型的には、先の鈍いカニューレが注射器に装着されて、流体連通を確立するために、注射器は予め細隙が設けられた隔膜に対して軽く圧力を掛けるように動作し、この隔膜が先の鈍いカニューレによって押し開けられる。また、いくつかのIVセットは、カニューレを使用しないで注射器の内部とカテーテルとの間を流体連通させるように、注射筒の円錐台形状の先端に応答する出入り弁を有する。
【0004】
カテーテルは、様々な流体が充填された注射器組立体を使用して洗浄される。いくつかの場合では、異なる流体が洗浄計画書に準拠して順次に注入される。例えば、食塩溶液の後にヘパリンのような抗凝固剤が続く。IV管を洗浄するために使用される注射器の大きさは、カテーテルの大きさおよび長さを含めて様々な要因によって多様である。典型的には1ml、3ml、5ml、および10ml容積の注射器が使用される。
【0005】
洗浄処置では、カテーテルの中へ血液の引戻し(通常「逆流」と呼ばれる)を行わないことが重要であり、カテーテルでは血液が凝固してそれを封止する恐れがある。カテーテルの中に血液が逆流するのを防止するために、使用者は洗浄処置時に正の圧力を管中で維持することが勧められる。これには、洗浄処置時に、IV口から注射器およびカニューレを徐々に引き抜きながら、他方では依然として注射器のピストンロッドに圧力を加えていることが伴い得る。エラストマー系のストッパを備える注射器を使用するとき、このストッパが洗浄処置の完了時に注射筒の遠位端に接触すると、それはしばしば圧縮される。使用者が洗浄処置の完了後に注射器に対する圧力を解放するとき、ストッパは、膨張してその通常の大きさに復帰して液体をカテーテルから注射筒の中に引き込むことになる。これは、血液をカテーテルの遠位端からカテーテルの中へ進入させる(逆流)恐れがあるので望ましくない。血液がカテーテルの中へ逆流することに関わる問題は、現状ではIV管がカテーテル保守専門の人々のみならず、広範な医療作業者によって洗浄されているために増加傾向にある。このように担当する患者の多面的な看護を他に行う結果として、IV管の洗浄に充当する時間が大幅に少ない他の医療作業者は、カテーテル保守専門の人々ほど有能ではない。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6171287号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、たとえ洗浄計画書および手順に厳密に準拠していなくても、洗浄処置の実行時および処置実行後にカテーテル内部へ血液が逆流することを低減または排除する助けとなる、簡素かつ直截で製造が容易な注射器組立体に対する必要性が存在する。例えば、ストッパに対する圧縮力の時ならぬ解放は、血液をカテーテル内部へ逆流させる恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、洗浄応用例に使用するための注射器組立体に関する。本注射器組立体は、洗浄溶液を放出する通路に近接する筒の中心をストッパが最初に封止するように、筒の円錐形状の遠位壁の角度よりも小さい全先端角を有する円錐形状のストッパ表面を設けることによって、血液がカテーテルの中へ逆流するのを低減または排除する。逆流が低減または排除されるように、ストッパがさらに圧縮されても、このような封止に影響を与えることはない。
【0009】
IV洗浄注射器組立体は、流体を保持するための小室を画成する内側表面を有する円筒側壁を含む筒を備える。この筒は、開放した近位端と、遠位壁を有する遠位端とを含み、細長い先端がこの遠位壁から遠位へ延びる。この先端は、それを貫通して小室と流体連通する通路を含む。細長い本体部分を有するピストンは、近位端と、遠位端と、筒の内側表面と液密係合で滑動自在に配置されたストッパとを含み、このストッパを筒に対して移動させることによって流体を小室の中に引き込み、かつそこから流体を排出するようになっている。ピストンの細長い本体部分は筒の開放した近位端から外部に突出する。小室から流体を送出することが完了して、ストッパが筒の遠位壁に接触しているときにストッパの撓みを制御する逆流防止構造が設けられる。逆流防止構造は、円錐形状の遠位表面を有するストッパと、遠位壁に円錐形状に形成された内側表面を有する筒とを含む。遠位壁における筒の内側表面の全先端角が、ストッパの遠位表面の全先端角よりも少なくとも6度大きい。
【0010】
一実施形態では、ストッパの遠位表面の全先端角は約110度であり、筒の遠位壁の円錐形状に形成された内側表面の全先端角は約120度である。
【0011】
本注射器組立体は、ストッパの遠位表面が最初に筒の遠位壁の円錐形状に形成された内側表面に接触するときに、ストッパの遠位表面とこの円錐形状に形成された内側表面との間の空間の中にほとんどが配置された少なくとも1つの突出部をストッパの遠位表面上にさらに含み得る。
【0012】
本注射器組立体はまた、小室の中の洗浄溶液と、通路を封止するために注射筒の先端に着脱自在に結合された先端蓋とを含み得る。この洗浄溶液は、食塩洗浄溶液およびヘパリンロック溶液からなる群から選択可能である。
【0013】
本注射器組立体は、近位端、遠位端、およびこれらを貫通する内腔を有するカニューレを含む針組立体をさらに備え得る。ハブが、空洞を含む開放した近位端およびカニューレの近位端に装着された遠位端を有し、内腔がハブの空洞と流体連通するようになっている。針組立体は、内腔が筒の小室と流体連通するように、筒の先端をハブの空洞に係合させることによってその先端に着脱自在に装着される。
【0014】
本発明のIV洗浄注射器組立体の別の実施形態は、流体を保持するための小室を画成する内側表面を有する円筒側壁を含む筒を備える。この筒は、開放した近位端と、遠位壁を有する遠位端とを含み、貫通して小室と流体連通する通路を有する細長い先端がこの遠位壁から遠位へ延びる。ピストンが、近位端と、遠位端と、筒の内側表面と液密係合で滑動自在に配置されたストッパとを有する細長い本体部分を含み、このストッパを筒に対して移動させることによって流体を小室の中に引き込み、かつそこから流体を排出するようになっている。ピストンの細長い本体は筒の開放した近位端から外部に突出する。先端蓋が、通路を封止するために筒の細長い先端に着脱自在に結合される。一定量の洗浄溶液が、ストッパと遠位壁との間の小室の中に存在する。小室から流体を送出することが完了して、ストッパが遠位壁に接触しているときにストッパの撓みを制御する逆流防止構造が設けられる。逆流防止構造は円錐形状の遠位表面を有するストッパを含み、遠位壁における筒の内側表面は円錐形状であり得るが、遠位壁における筒の内側表面の全先端角がストッパの遠位表面の全先端角よりも少なくとも6度、好ましくは少なくとも約10度大きい。ストッパの遠位表面上に少なくとも1つの突出部が設けられる。この少なくとも1つの突出部は、ストッパが筒の内側表面に接触するとき、突出部の撓みがいずれも、通路に近接する筒の遠位端の内側表面からストッパが切り離される程度にまでストッパを近位へ移動させるほどの十分なエネルギーを蓄えることがないように配置され、かつ/またはサイズ決めされる。
【0015】
本発明のカテーテル洗浄方法は、流体を保持するための小室を画成する内側表面を有する円筒側壁と、開放した近位端と、遠位壁を含む遠位端とを有し、貫通して小室と流体連通する通路を有する細長い先端がこの遠位壁から遠位へ延びる筒と;近位端と、遠位端と、筒の内側表面と液密係合で滑動自在に配置されたストッパとを有する細長い本体部分を含み、ストッパを筒に対して移動させることによって流体を小室の中に引き込み、かつそこから流体を排出するようになっており、細長い本体部分は筒の開放した近位端から外部に突出するピストンと;前記小室の中の一定量の洗浄溶液と;小室から洗浄溶液を送出することが完了して、ストッパが遠位壁に接触しかつそれに押し付けられるときにストッパの撓みを最小化する逆流防止手段とを有する注射器組立体を提供するステップを含む。本方法は、近位端、遠位端、およびこれらを貫通する通路を有するカテーテルと、この通路と流体連通する中空内部を有する容器とを提供するステップをさらに含み、容器は、この容器の中空内部との流体連通を許容する、筒の細長い先端に係合可能な出入り弁を有する。本方法は、血管の中にカテーテルの遠位端を配置するステップと;筒の細長い先端の中の通路が容器の中空内部と流体連通するように、この先端を出入り弁に係合させるステップと;小室の中の洗浄溶液が通路を介して容器の中空小室の中へ流入し、さらにカテーテルの通路を通過するように、ピストンを筒に対して遠位方向へ移動させるようにピストンに力を加えるステップと;ストッパが筒の遠位壁に接触しかつそれを押圧するまで、ピストンに力を加え続けるステップと;前記注射器組立体を前記出入り弁から切り離すステップとをさらに含む。
【0016】
別法による方法は、針組立体を筒の細長い先端に装着するステップを含み得る。針組立体は、近位端、遠位端、およびこれらを貫通する内腔を有するカニューレと、空洞を含む開放した近位端およびカニューレの近位端に装着された遠位端を有するハブとを含み、内腔が空洞と流体連通するようになっている。針組立体は、ハブの中の空洞と細長い先端との間の摩擦係合によって筒に装着される。この別法による方法は、近位端、遠位端、およびこれらを貫通する通路を有するカテーテルと、カテーテルに連結されかつカテーテルの通路と流体連通する中空内部を有する容器と共に使用される。この容器は、中空内部との流体連通を許容する隔膜をさらに含む。流体連通は、カニューレの内腔が容器の中空内部と流体連通するように、カニューレの遠位端を隔膜に押し通すことによって確立される。また、カニューレは、ハブを使用してもまたは使用しなくても筒先端に永続的に装着可能である。洗浄処置の完了時に、カニューレは隔膜から引き抜かれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は、概ね筒22およびピストン24を備える本発明に係る注射器20を示す。筒22は、指掛り29を有する開放した近位端28と、遠位壁31を有する遠位端30と、流体を保持するための小室33を画成する内側表面32とを含む概ね円筒形の側壁23を有する。遠位壁における筒の内側表面は、数字35で示すように円錐形状である。筒の遠位壁の円錐形状に形成された内側表面は、図5に示す全先端角Aを有する。遠位端30は、小室と流体連通している通路38を有する先端36をさらに含む。筒22の遠位端には、必ずしも必要ではないが、先端36を同心状に包囲する固締ルア型(locking luer type)の環状部40が備わっていることが好ましい。この環状部の内側表面は、少なくとも1つのねじ山43を含む。カニューレ26は、近位端42、遠位端44、およびこれらを貫く内腔46を含む。この遠位端は、図示のように鋭い先端または鈍い先端48を含み得る。このカニューレは、内腔と小室との間の流体連通を確立するために注射筒の先端に直に連結可能である。また、カニューレは、空洞41を含む開放した近位端37と、この空洞とカニューレの内腔が流体連通するようにカニューレの近位端に装着された遠位端39とを有するハブ34を含む針組立体27の一部であってもよい。ハブの空洞は、図2、5、および6に例示するように、筒の先端に着脱自在に摩擦係合され得る。
【0018】
ピストン24は、細長い本体部分25、突縁51を有する近位端50、および遠位端52を含む。ストッパ54が、好ましくは螺合によってピストンの遠位端52の突出部53の上に配置される。ストッパ54は、その外径上に、少なくとも1つのリブ、好ましくは複数のリブ56を含む。ストッパは、このストッパを筒に対して移動させることによって、通路を介して流体を小室の中に引き込み、かつそこから流体を引き出すために、筒の内側表面と液密係合の状態で滑動自在に配置される。ストッパ54は、その内部にピストンの遠位端52上の突出部53に係合するための空洞57を有する近位端55を含む。ストッパ54は、その上に円錐形状の遠位表面59を有する遠位端58をさらに含む。円錐形状の遠位表面59は、図5に例示するように全先端角Bを有する。以下でさらに詳細に説明するように、遠位壁における筒の内側表面の全先端角Aは、ストッパの円錐形状の遠位表面の全先端角Bよりも大きい。角Aは、角Bよりも少なくとも6度、好ましくは少なくとも約10度大きい。この好ましい実施形態では、角Aは約120度であり、角Bは約110度である。
【0019】
ストッパ54は、円錐形状の遠位表面59上に少なくとも1つの突出部または突起60を含むことが好ましい。突出部60は、ストッパが組立過程時に相互に入れ子になったりまたは張り付いたりしないようにする。例えば、一方のストッパの円錐形状の遠位表面は、ストッパが組立て前に一体となる間に、もう1つのストッパの空洞の中で自然に位置が決まり得る。
【0020】
ストッパは、圧縮を受けている間に封止特性を与えるのに適切な任意の材料から作製可能である。例えば、ストッパは、エラストマー、天然ゴム、剛性ゴム、または熱可塑性材料、およびそれらの組合せから作製可能である。本実施形態におけるピストンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、および同様物のようなストッパよりも剛性が大きい材料から作製されることが好ましい。
【0021】
動作に際して、注射器20は針組立体に連結され、知られた方法を用いて洗浄溶液が充填される。この洗浄溶液は、洗浄用途の任意の溶液でよい。洗浄溶液は、食塩洗浄溶液およびヘパリンロック洗浄溶液からなる群から選択されることが好ましい。これらの溶液は従来から知られており、容易に入手可能である。食塩洗浄溶液の一実施例は、0.9%の米国薬局方(USP)塩化ナトリウムである。ヘパリンロック洗浄液の一実施例は、1ml当たり100USP単位のヘパリンナトリウムまたは1ml当たり10USP単位のヘパリンナトリウムを含む0.9%塩化ナトリウムである。針組立体が装着された注射器を使用して穿通可能な隔膜を穿通するか、または洗浄溶液を収容する小型容器の予め細隙を設けた隔膜の中に先の鈍いカニューレを挿入することが可能であり、洗浄溶液は、針カニューレを介して流体を流体小室33の中に引き込むために、筒22を保持しながらピストンロッドの突縁51を近位方向に引き抜くことによって注射筒の中に引き込まれる。
【0022】
別法として、注射器は、無菌充填法によって注射器の製造時に洗浄溶液が充填可能である。このような予め充填された注射器には、先端36に着脱自在に結合され、通路38を封止する先端蓋45のような先端蓋が設けられ得る。先端蓋は、天然ゴム、合成ゴム、および熱可塑性エラストマーのような熱可塑性材料ならびにエラストマー系材料の群から選択された材料から作製可能である。
【0023】
注射器は、今やIVセットのカテーテル洗浄に使用するばかりになっている。IVセットは、非常に複雑になる恐れがあり、いくつもの注射口、弁、および/または他の構成要素を含み得る。本発明を例示する目的のために、単純化したIVセット64が図7に例示されている。IVセット64は、中空内部68と、その近位端にある隔膜69とを有する容器67を含むIV部位65を備える。貫通導管を有するカテーテル70が、容器の遠位端から延びる。このIVセットでは、先の鈍いカニューレと共に使用するために隔膜69には予め細隙が設けられている。IV部位は、注射筒先端を受け入れかつカテーテルとの流体連通を確立するように、先端の挿入によって作動する構造を有する弁でもよく、このような弁が特許文献1に教示されている。
【0024】
カニューレ26の鈍い先端48は、IVセット64の予め細隙を設けた隔膜69に挿通可能である。別法として、針カニューレの鋭い先端を使用して、予め細隙が設けられていない隔膜を穿通してもよいし、または筒の先端をIV部位の弁と係合させてもよい。これによって、IVセットの内部68と注射筒の小室との間の流体連通を確立する。注射筒22は、指掛り29によって保持されることが好ましい。次いで、ピストンの突縁51に、例えば、親指によって遠位方向に圧力を加える。これによって、遠位端上にストッパ54を有するピストン24を移動させて、小室34からこの小室中の洗浄溶液71のような液体をカニューレ26に押し通し、さらにIVセットの内部68の中に押し入れ、次いでカテーテル70に押し通す。
【0025】
図6を参照すると、洗浄処置の完了時におけるピストンおよびストッパの位置が示されている。洗浄処置の完了時には、ストッパの円錐形状の遠位表面59が、通路30に近接する筒の遠位端壁の円錐形状に形成された内側表面35に接触して、ストッパがそれ以上に撓んでも通路およびカテーテルの中の液体に対してほとんど影響を与えないかまたは一切影響を与えないように通路を封止する。したがって、この時点で、ピストンに加えられた追加的な不必要な力によって引き起こされたストッパの撓みは、それは従来技術のストッパを使用していれば血液をカテーテルの中に逆流させる恐れがあるが、本発明のストッパによって最小化または排除される。ストッパは撓み得るが、この撓みは通路に通じる入口を包囲する封止域の概ね外側で生じることになる。さらには、突出部60がピストンに加えられた力によってストッパがさらに撓むとき、この突出部はストッパを近位へ押しやることができないように形作られている。すなわち、この突出部は、ストッパを近位へ移動させて逆流を引き起こすほどの十分な力を発生させることはできない。ストッパの遠位表面上の突出部は、図6に例示するように、ストッパの円錐形状の遠位表面と筒の遠位壁の円錐形状に形成された内側表面との間の空間61の中にほとんどが配置されていることが好ましい。この突出部は、それが撓むときにストッパを近位へ移動させ、さらにストッパと通路における筒との間の封止を破るほどの十分なエネルギーを吸収できないようにサイズ決めされ、かつ配置されるべきである。この突出部は、図6に例示するように、筒の内側表面35と同じ角度の遠位表面を有する角度付きの形状であり得る。
【0026】
図8および9は、本発明の注射器組立体の別法による実施形態を例示する。本実施形態では、注射器組立体120が、流体を保持するための小室133を画成する内側表面132を有する円筒側壁123を含む筒122を備える。この筒の遠位端130は遠位壁131を含み、そこから遠位へ延びる細長い先端136を有する。この先端は、小室と流体連通の状態にある通路138を含む。遠位壁は円錐形状に形成された内側表面135を含む。
【0027】
ピストン124は、遠位端152を有する細長い本体部分125と、筒の内側表面と液密係合で滑動自在に配置された弾性ストッパ154とを含む。このストッパは、少なくとも1つのリブ156と、遠位端158における円錐形状の遠位表面159とを含む。遠位壁131の円錐形状に形成された内側表面Aの全先端角は、ストッパ上の円錐形状の遠位表面Bよりも少なくとも8度大きい。本実施形態では、角度Aと角度Bとの間の差は約20度である。
【0028】
ストッパの遠位表面は複数の突出部または突起160を含み、それらはストッパが筒の遠位壁の円錐形状に形成された内側表面に接触するとき、ストッパの円錐形状の遠位表面の封止動作を妨げないようにサイズ決めおよび配置される。さらには、これらの突出部は、そのように配置されるか、かつ/またはそれらの一部が圧縮状態にあるときに、それらだけでは、ストッパを筒の中で近位へ押しやってストッパの円錐形状の遠位表面と通路に近接する筒との間の封止を解除できないように構成されるべきである。
【0029】
本明細書では特定の実施形態を参照して本発明を説明してきたが、これらの実施形態は本発明の原理および応用例の例示にすぎないことを理解すべきである。したがって、これらの例示的な実施形態に数多くの変更を加え得ること、および開示された本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく他の配置を考案し得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る注射器組立体を示す斜視図である。
【図2】針組立体が装着された、図1の注射器組立体を示す部分断面側面図である。
【図3】線3−3に沿って取った、図1の注射器組立体を示す断面図である。
【図4】図1の注射器組立体のピストンのストッパおよび遠位端を示す部分斜視図である。
【図5】図2の注射器の遠位端を拡大して示す部分断面側面図である。
【図6】洗浄処置の完了時が示されている注射器組立体の遠位端を拡大して示す部分断面側面図である。
【図7】カテーテル注射部位で使用する際の注射器組立体を例示する側面図である。
【図8】本発明の別の実施形態に係る注射器組立体を示す斜視図である。
【図9】線9−9に沿って取った、図8の注射器組立体を示す部分断面斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IV洗浄注射器組立体であって、
流体を保持するための小室を画成する内側表面を有する円筒側壁と、開放した近位端と、遠位壁を有する遠位端とを含み、前記遠位壁はそこから遠位へ延びる細長い先端を有し、前記細長い先端はこれを貫通して前記小室と流体連通する通路を有する筒と、
近位端と、遠位端と、前記筒の前記内側表面と液密係合で滑動自在に配置されたストッパとを有する細長い本体部分を含むピストンであって、前記ストッパを前記筒に対して移動させることによって流体を前記小室の中に引き込み、かつそこから流体を排出するようになっており、前記細長い本体部分は前記筒の前記開放した近位端から外部に突出するピストンと、
前記小室から流体を送出することが完了し且つ前記ストッパが前記遠位壁に接触しているときに、ストッパの撓みを制御する逆流防止手段とを備えることを特徴とする注射器組立体。
【請求項2】
前記逆流防止手段は円錐形状の遠位表面を有する前記ストッパを含み、前記遠位壁における前記筒の前記内側表面は円錐形状であり、前記遠位壁における前記筒の前記内側表面の前記全先端角は、前記ストッパの遠位表面の前記全先端角よりも少なくとも6°大きいことを特徴とする請求項1に記載の注射器組立体。
【請求項3】
前記ストッパの遠位表面の前記全先端角は約110°であることを特徴とする請求項2に記載の注射器組立体。
【請求項4】
前記筒の前記遠位壁の円錐形状に形成された内側表面の全先端角は約120°であることを特徴とする請求項2に記載の注射器組立体。
【請求項5】
前記ストッパの前記遠位表面が最初に前記円錐形状に形成された内側表面に接触するときに、前記遠位表面と前記遠位壁の前記円錐形状に形成された内側表面との間の空間の中にほとんどが配置される少なくとも1つの突出部を前記ストッパの前記遠位表面の上にさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の注射器組立体。
【請求項6】
前記小室の中に洗浄溶液を含むことを特徴とする請求項1に記載の注射器組立体。
【請求項7】
前記通路を封止するために前記注射筒の前記先端に着脱自在に結合された先端蓋をさら含むことを特徴とする請求項6に記載の注射器組立体。
【請求項8】
前記洗浄溶液は、食塩洗浄溶液およびヘパリンロック洗浄溶液からなる群から選択されることを特徴とする請求項6に記載の注射器組立体。
【請求項9】
前記ストッパは、熱可塑性エラストマー、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性材料、およびそれらの組合せからなるリストから選択された材料から作製されることを特徴とする請求項1に記載の注射器組立体。
【請求項10】
近位端、遠位端、およびこれらを貫通する内腔を有するカニューレと、空洞を含む開放した近位端および前記カニューレの前記近位端に装着された遠位端を有するハブとを含む針組立体をさらに備え、それにより前記内腔は前記空洞と流体連通するようになっており、前記針組立体は、前記内腔が前記小室と流体連通するように、前記筒の前記先端を前記空洞に係合させることによって前記先端に着脱自在に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の注射器組立体。
【請求項11】
IV洗浄注射器組立体であって、
流体を保持するための小室を画成する内側表面を有する円筒側壁と、開放した近位端と、遠位壁を含む遠位端とを含み、前記遠位壁はそこから遠位へ延びる細長い先端を有し、前記細長い先端はこれを貫通して前記小室と流体連通する通路を有する筒と、
近位端と、遠位端と、前記筒の前記内側表面に液密係合で滑動自在に配置されたストッパとを有する細長い本体部分を含むピストンであって、前記ストッパを前記筒に対して移動させることによって流体を前記小室の中に引き込み、かつそこから流体を排出するようになっており、前記細長い本体部分は前記筒の前記開放した近位端から外部に突出するピストンと、
前記通路を封止するために注射器の前記筒の前記先端に着脱自在に結合された先端蓋と、
前記ストッパと前記遠位壁との間における前記小室の中の一定量の洗浄溶液と、
前記小室から流体を送出することが完了し且つ前記ストッパが前記遠位壁に接触しているときに、ストッパの撓みを制御する逆流防止手段であって、前記逆流防止手段は円錐形状の遠位表面を有する前記ストッパを含み、前記遠位壁における前記筒の前記内側表面は円錐形状であり、前記遠位壁における前記筒の前記内側表面の前記全先端角が前記ストッパの前記遠位表面の全先端角よりも少なくとも6°大きい逆流防止手段と、
前記遠位表面が最初に前記円錐形状に形成された内側表面に接触するとき、前記遠位表面と前記遠位壁の前記円錐形状に形成された内側表面との間の空間の中にほとんどが配置される、前記ストッパの前記遠位表面上の少なくとも1つの突出部とを備えることを特徴とする注射器組立体。
【請求項12】
カテーテルを洗浄する方法であって、
(a)流体を保持するための小室を画成する内側表面を有する円筒側壁と、開放した近位端と、遠位壁を含む遠位端とを含み、前記遠位壁はそこから遠位へ延びる細長い先端を有し、前記細長い先端はこれを貫通して前記小室と流体連通する通路を有する筒と;近位端と、遠位端と、前記筒の前記内側表面に液密係合で滑動自在に配置されたストッパとを有する細長い本体部分を含むピストンであって、前記ストッパを前記筒に対して移動させることによって流体を前記小室の中に引き込み、かつそこから流体を排出するようになっており、前記細長い本体部分は前記筒の前記開放した近位端から外部に突出するピストンと;前記小室の中の一定量の洗浄溶液と;前記小室から前記洗浄溶液を送出することが完了し且つ前記ストッパが前記遠位壁に接触しているときにストッパの撓みを制御する逆流防止手段とを有する注射器組立体を提供するステップと、
(b)近位端、遠位端、およびこれらを貫通する通路を有するカテーテルと、前記カテーテルに連結しかつ前記通路と流体連通する中空内部を有する容器とを提供するステップであって、前記容器は前記中空内部との流体連通を許容する出入り弁を有するステップと、
(c)血管の中に前記カテーテルの前記遠位端を配置するステップと、
(d)注射器の前記筒の前記通路が前記容器の前記中空内部と流体連通するように前記筒の前記細長い先端を前記出入り弁に係合させるステップと、
(e)前記小室の中の前記洗浄溶液が前記通路を介して前記容器の前記中空小室の中へ且つ前記カテーテルの前記通路を通過して流れるように、前記ピストンを前記筒に対して遠位方向へ移動させるように前記ピストンに力を加えるステップと、
(f)前記ストッパが前記筒の前記遠位壁に接触しかつそれを押圧するまで、前記ピストンに力を加え続けるステップと、
(g)前記細長い先端を前記出入り弁から切り離すステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
カテーテルを洗浄する方法であって、
(a)流体を保持するための小室を画成する内側表面を有する円筒側壁と、開放した近位端と、遠位壁を含む遠位端とを含み、前記遠位壁はそこから遠位へ延びる細長い先端を有し、前記細長い先端はこれを貫通して前記小室と流体連通する通路を有する筒と;近位端と、遠位端と、前記筒の前記内側表面と液密係合で滑動自在に配置されたストッパとを有する細長い本体部分を含むピストンであって、前記ストッパを前記筒に対して移動させることによって流体を前記小室の中に引き込み、かつそこから流体を排出するようになっており、前記細長い本体部分は前記筒の前記開放した近位端から外部に突出するピストンと;前記小室の中の一定量の洗浄溶液と;近位端、遠位端、およびこれらを貫通する内腔を有するカニューレと、空洞を含む開放した近位端および前記カニューレの前記近位端に装着された遠位端を有するハブとを含む針組立体であって、前記内腔は前記空洞と流体連通するようになっており、前記内腔が前記小室と流体連通するように前記筒の前記先端に装着される針組立体と;前記小室から前記洗浄溶液を送出することが完了し且つ前記ストッパが前記遠位壁に接触しているときにストッパの撓みを制御する逆流防止手段とを有する注射器組立体を提供するステップと、
(b)近位端、遠位端、およびこれらを貫通する通路を有するカテーテルと、前記カテーテルに連結されかつ前記通路と流体連通する中空内部を有する容器とを提供するステップであって、前記容器は前記中空内部との流体連通を許容する隔膜を有するステップと、
(c)血管の中に前記カテーテルの前記遠位端を配置するステップと、
(d)前記内腔が前記容器の前記中空内部と流体連通するように前記カニューレの前記遠位端を前記隔膜に押し通すステップと、
(e)前記小室の中の前記洗浄溶液が前記通路を介して前記容器の前記中空小室の中へ且つ前記カテーテルの前記通路を通過して流れるように、前記ピストンを前記筒に対して遠位方向へ移動させるように前記ピストンに力を加えるステップと、
(f)前記ストッパが前記筒の前記遠位壁に接触しかつそれを押圧するまで、前記ピストンに力を加え続けるステップと、
(g)前記カニューレを前記隔膜から引き抜くステップとを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−506507(P2007−506507A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528021(P2006−528021)
【出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/028752
【国際公開番号】WO2005/032628
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】