説明

逆浸透処理装置

【課題】圧力容器内の集水配管の内径を任意の位置で調節し、透過水量の不均一さを解消することができる逆浸透処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】一方の端部に被処理水を供給する導入管56を有し、他方の端部に濃縮水を排出する濃縮水排出管62を有する圧力容器24内に、逆浸透膜28を備える複数の逆浸透膜エレメント22が、被処理水が逆浸透膜28を通過した透過水が流れる集水配管34により直列に接続されており、圧力容器24の濃縮水排出管62側に透過水を排出する第1の排出管58を備え、集水配管34内の導入管56側に抵抗配管90を備えることを特徴とする逆浸透処理装置10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆浸透処理装置に係り、特に、供給水側のエレメントと濃縮水側のエレメントの透過水量の不均一さを解消する逆浸透処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜(以下、RO(Reverse Osmosis)膜)を使用した脱塩処理装置では、逆浸透圧を利用するため、図13に示すように、円筒状に構成された加圧容器224内に複数のRO膜エレメント222を直列で配置し、RO膜エレメント222の中央にある集水配管234で各RO膜エレメント222が接続されている。供給水は、脱塩処理装置の一方から高圧ポンプにより供給され、濃縮水側に設置されたバルブの開度によって、加圧容器224内を加圧にする。加圧された圧力が、供給水の浸透圧を越えた場合に、RO膜を透過し、中央の集水配管234に脱塩水(透過水)が流れ込む。
【0003】
加圧容器224内に供給した供給水は、供給水側から濃縮水側に向って、塩濃度が高くなるため、加圧容器224内の圧力は最終的には最終段の塩濃度と透過水量、膜面の供給水流速によって加圧される圧力が決定される。したがって、加圧容器224内の供給水側は、必要以上に圧力がかかるため、透過水量が増加する。例えばRO膜エレメント222を7本直列で配置した場合のRO膜エレメントの位置とRelative Flux(相対的流束)の関係を図14に示す。図14中のエレメント位置は、供給水側からの本数である。図14に示すように、供給水側の透過水量が多く、濃縮水側にいくにつれ、透過水量が下がることがわかる。これは、被処理水は濃縮水側にいくにつれ塩濃度が高くなるため、濃縮水側では、高い圧力が必要になるが、供給水側においても同じ圧力がかかっているため、供給水側でより多くの透過水が生成されるからである。このように、図14に示すように、加圧容器224内における透過水量が不均一であることにより、必要動力の増加、供給水側のRO膜エレメントの汚染が進行する。
【0004】
このような問題を解決するため、例えば、下記の特許文献1には、複数の分離膜エレメントが直列に接続されており、原水側から透過水側に向って、分離膜エレメントに設けられた集水管の内径が大きくなっている膜分離システムが記載されている。集水配管の内径を大きくすることで、分離膜エレメントにおける透過流束が等しくなるように集水管における圧力損失を容易に設定することができ、分離膜エレメントの位置に関係なく全ての分離膜エレメントの運転条件の均一化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−167358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている膜分離システムは、分離膜エレメントごとに集水配管の内径を設定しており、さらに細かい調節をすることができていなかった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、圧力容器内の集水配管の内径を任意の位置で調節することで、各逆浸透膜エレメントの透過水量の不均一さを解消し、所望の透過水量を少ない動力で得ることができる逆浸透処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は前記目的を達成するために、一方の端部に被処理水を供給する導入管を有し、他方の端部に濃縮水を排出する濃縮水排出管を有する圧力容器内に、逆浸透膜を備える複数の逆浸透膜エレメントが、前記被処理水が前記逆浸透膜を通過した透過水が流れる集水配管により直列に接続されており、前記圧力容器の前記濃縮水排出管側に前記透過水を排出する第1の排出管を備え、前記集水配管内の前記導入管側に抵抗配管を備えることを特徴とする逆浸透処理装置を提供する。
【0009】
請求項1によれば、逆浸透膜を備える逆浸透膜エレメントの集水配管内の被処理水を供給する導入管側に抵抗配管を備えている。抵抗配管を設けることにより、集水配管の内径を小さくすることができるので、抵抗配管を設けた導入管側の透過水量を減らすことができる。これにより、濃縮水側では、被処理水量の増加、塩濃度を低くすることができるので、濃縮水側では、透過水量を増やすことができる。これにより、逆浸透膜エレメントの透過水量の不均一さを従来と比較し、抑制することができるとともに、全体として透過水量を増やすことができる。したがって、圧力を低くしても透過水量を増やすことができ、省動力化を図るとともに、極端に汚れ易い逆浸透膜エレメントの発生を防ぐことができ、長期の使用を可能とすることができる。
【0010】
請求項2は請求項1において、前記抵抗配管の側面に設けられた開口部の開口率が、前記集水配管の側面に設けられた前記逆浸透膜を透過した透過水が流れる透孔の開口率より小さいことを特徴とする。
【0011】
請求項2によれば、集水配管に設けられた透孔の開口率より、抵抗配管に設けられた開口部の開口率を小さくしているので、透過水の流量を抑えることができ、透過水量の不均一さを解消することができる。
【0012】
請求項3は請求項2において、前記抵抗配管は、前記集水配管の前記導入管側から前記第1の排出管側にいくにつれ、開口部の開口率が大きくなることを特徴とする。
【0013】
請求項3によれば、被処理液の導入管側から第1の排出管側にいくにつれ、抵抗配管の開口部の開口率を大きくしている。したがって、抵抗配管が設けられる部分においても、集水配管内の導入管側の透過水の量を減らし、第1の排出管側の透過水の量を増やすことができるので、透過水量の不均一さを解消することができる。
【0014】
請求項4は請求項1から3のいずれか1項において、前記抵抗配管は、前記集水配管の前記導入管側から前記第1の排出管側にいくにつれ、前記抵抗配管の厚みが薄くなることを特徴とする。
【0015】
請求項4によれば、被処理液の導入管側から第1の排出管側にいくにつれ、抵抗配管の厚みを薄くしている、つまり、集水配管の内径が大きくなっている。したがって、抵抗配管が設けられている部分においても、集水配管内の導入管側の透過水の量を減らし、第1の排出管側の透過水の量を増やすことができるので、透過水量の不均一さを解消することができる。
【0016】
請求項5は請求項1から4のいずれか1項において、前記抵抗配管は、複数の配管が接続されて形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5によれば、抵抗配管を複数の配管を接続することにより形成しているので、開口部の開口率、配管の厚みなど所望の抵抗配管を容易に形成することができる。
【0018】
請求項6は請求項1から5のいずれか1項において、前記集水配管中に、前記透過水を、前記被処理水の供給側である前段と、前記濃縮水の排出側である後段と、に分離する抵抗体と、前記導入管側に前段の前記透過水を排出する第2の排出管と、を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項6によれば、集水配管中に抵抗体を設け、その抵抗体の両側から第1の排出管により後段の透過水を排出し、第2の排出管により前段の透過水を排出している。したがって、抵抗体の前段と後段とで異なる流量で透過水を生成することができるので、被処理水の供給側の流量を抑えることで、透過水の量を減らすことができる。したがって、濃縮水側の塩濃度を低くすることができるので、透過水量を増やすことができ、逆浸透膜エレメントの透過水量の不均一さを抑制することができる。
【0020】
請求項7は請求項6において、前記抵抗体は、前記抵抗配管の前記第1の排出管側の端部に設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項7によれば、抵抗体を抵抗配管の第1の排出管側の端部に設けることで、抵抗配管により透過水の流量を減らす効果を効果的に発揮することができる。
【0022】
請求項8は請求項6又は7において、前記抵抗体は、非透水性であることを特徴とする。
【0023】
請求項8によれば、抵抗体により集水配管を分断させることができるので、抵抗体を境にして集水配管内の圧力を制御することができる。したがって、透過水量の調節を容易に行なうことができる。
【0024】
請求項9は請求項6又は7において、前記抵抗体は、透水性であることを特徴とする。
【0025】
請求項10は請求項9において、前記抵抗体は、多孔性材料で形成されていることを特徴とする。
【0026】
請求項11は請求項6から10のいずれか1項において、前記抵抗体に、透過水が通過するスリットが形成されていることを特徴とする。
【0027】
請求項9から11によれば、抵抗体を透水性、あるいは、スリットを設けて透過水を通過可能とすることで、集水配管内に抵抗を持たせることができるので、透過水量を等しくすることができる。
【0028】
請求項12は請求項9から11において、前記抵抗体が、前記集水配管中に複数設けられていることを特徴とする。
【0029】
請求項12によれば、抵抗体を集水配管中に複数設けることで、より細かく集水配管中の圧力を調節することができるので、透過水量の不均一さを解消することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、抵抗配管により、逆浸透膜エレメントの集水配管の内径を小さくする、あるいは集水配管の側面に設けられた透孔のいくつかを塞ぐことにより、集水配管内の透過水の抵抗を大きくすることができる。これにより、供給水側の透過水の流量を減らすことができるので、濃縮水側の塩濃度を低くすることができ、逆浸透膜エレメントの全体の圧力を下げることができる。したがって、逆浸透膜エレメントに効果的に圧力を付与して透過水を生成することができるので、省力化を図ることができ、コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施の形態の逆浸透処理装置が設置された脱塩処理システムのブロック図である。
【図2】実施の形態の逆浸透処理装置のエレメントの構成を示した斜視図である。
【図3】図2に示したエレメントのRO膜が巻回される前の状態を示したエレメントの正面図である。
【図4】図2に示したエレメントの正面図である。
【図5】実施の形態の逆浸透処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】実施の形態の逆浸透処理装置のRO膜エレメントの位置と透過水の相対的流束の関係を示したグラフ図である。
【図7】集水配管中の抵抗配管を示す断面図である。
【図8】集水配管中の他の抵抗配管の例を示す断面図である。
【図9】集水配管中のさらに他の抵抗配管の例を示す断面図である。
【図10】他の実施の形態の逆浸透処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図11】集水配管中の抵抗体を示す断面図である。
【図12】集水配管中の抵抗体を示す正面図である。
【図13】従来の逆浸透処理装置の概略構成を示す断面図である。
【図14】従来の逆浸透処理装置のRO膜エレメントの位置と透過水の相対的流束の関係を示したグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。本発明は以下の好ましい実施の形態により説明されるが、本発明の範囲を逸脱すること無く、多くの手法により変更を行なうことができ、本実施の形態以外の他の実施の形態を利用することができる。したがって、本発明の範囲内における全ての変更が特許請求の範囲に含まれる。
【0033】
図1は、実施の形態の逆浸透処理装置10が組み込まれた脱塩処理システム20のブロック図である。なお、本発明における脱塩処理システムは、例えば、排水再利用、純水製造、かん水淡水化、海水淡水化など、被処理水を逆浸透処理するシステムに用いることができる。
【0034】
同図に示す脱塩処理システム20は、被処理水が貯留されたタンク12、高圧ポンプ14、および逆浸透処理装置10から構成される。タンク12の被処理水は、高圧ポンプ14によって逆浸透処理装置10に高圧で供給され、逆浸透処理装置10の各RO膜(処理膜)によって逆浸透処理(脱塩処理)されることにより、脱塩された透過水(分離水)16と、塩分が濃縮された濃縮水(被処理水)18とに分離される。このようにして得られた透過水16は、排出管を介して逆浸透処理装置10の外部に排出され、濃縮水18も同様に、透過水を排出する排出管とは異なる排出管を介して逆浸透処理装置10の外部に排出される。なお、実施の形態の脱塩処理システム20は、高圧ポンプ14によって被処理水を逆浸透処理装置10に高圧で供給しているが、逆浸透処理装置10の濃縮水出口側にバルブを設け、バルブの開度により逆浸透処理装置10内の圧力を設定している。
【0035】
タンク12内の被処理水としては、原水をそのまま使用してもよいが、前処理を施して原水に含まれる濁質成分等を除去した被処理水を使用することが好ましい。前処理としては、フィルタ利用、および沈殿池に原水を導入して塩素等の殺菌剤を添加し、原水中の粒子を沈殿除去するとともに微生物を殺菌する等の処理がある。また、原水に塩化鉄等の凝集剤を添加して濁質成分を凝集させ、これを濾過して除去した被処理水を使用してもよい。
【0036】
逆浸透処理装置10は、図2に示すエレメント22を複数個直列に接続し、これを図5に示す円筒状のベッセル24に充填してモジュール26とし、このモジュール26を単独で、又は並列に接続することにより構成される。
【0037】
図2に示すようにエレメント22は、RO膜28と排出管30とを含む膜ユニット32が集水配管34の周囲に配置されて構成されている。膜ユニット32は図3の如く、4枚の袋体状のRO膜28、28…が集水配管34の外周部に放射状に接続され、これらのRO膜28、28…を、図4の如く集水配管34の周囲にスパイラル状に巻回することにより構成される。袋体状のRO膜28の一端は開口され、この開口部が図3に示す集水配管34の透孔36と連通するようにRO膜28が集水配管34に接着されている。被処理水は、RO膜28の外表面を流れ、RO膜28を透過することにより脱塩される。そして、RO膜28を透過した脱塩後の透過水は、RO膜28の内側からRO膜28の開口、および集水配管34の透孔36を介して集水配管34内に集水され、集水配管34から排出管30を介してエレメント22から排出される。なお、図3の符号38は、RO膜28の内部に配置されるメッシュ状のスペーサーである。このスペーサー38によって、RO膜28がスパイラル状に巻かれてもRO膜28の内部空間が潰れないように保持される。また、符号40は、隣接するRO膜28、28の間に配置されたメッシュ状のスペーサーである。このスペーサー40もRO膜28と同様に集水配管34の外周部に放射状に接着されている。
【0038】
図5は、実施の形態の逆浸透処理装置10の断面図である。ベッセル24の両端は、被処理水が導入、排出されるように開口されており、導入側の開口部に、高圧ポンプ14によって所定の操作圧力が負荷されるようになっている。なお、図5には、5個のエレメント22、22…を直列に接続したモジュール26が示されているが、エレメント22の個数は5個に限定されるものではない。また、ベッセル24は、高圧(5MPa以上)に耐え得るようにFRP等によって構成することもできる。
【0039】
図5に示すように、ベッセル24には、ベッセル24内に被処理液を導入する導入管56と、被処理水が集水配管34へ透過せず残った濃縮水を排出する濃縮水排出管62を備えている。濃縮水排出管62の出口には、ベッセル24内の圧力を調節する濃縮水排出バルブ64を備えている。RO膜28を通り、集水配管34内に集水された透過水は、濃縮水排出管62側に設けられた第1の排出管58を介してエレメント22から排出される。第1の排出管58の出口には、計測器66を備えている。
【0040】
このベッセル24によれば、図1のタンク12から導入管56を介して供給された被処理水は、流路57を介してエレメント22に導かれ、被処理水はエレメント22のRO膜28を順次通過したのち、集水配管34に集水される。本実施形態においては、集水配管34内に、抵抗配管90を設けることにより、集水配管34に設けられたRO膜28からの透過水が通過する透孔36を塞ぐことができる。あるいは、抵抗配管90が集水配管34の内径を狭くすることができる。これにより、集水配管34に集水される透過水の量を下げることができる。図5に示すように導入管56側に抵抗配管90を設けることにより、被処理水が供給水側のRO膜28を透過する量を減らすことができる。供給水側の透過水の量を減らすことで、濃縮水側の被処理水量の増加、塩濃度を低くすることができるので、エレメント22の最終段からの透過水の流量を増やすことができ、装置全体として透過水の量を増やすことができる。したがって、各エレメント22の透過水量をより均一にすることで、全体として低い圧力で透過水の流量を増やすことができるので、コストを下げることができる。
【0041】
図6は、実施の形態の逆浸透処理装置のRO膜エレメントの位置と透過水の相対的流束の関係を示した図である。なお、本発明のデータは、供給側から1個目と2本目のエレメントに、開口部92aの開口率が50%、外径が集水配管34の内径よりわずかに小さい(挿入可能な大きさ)の抵抗配管90aを設置し、エレメントの数を7個で実験を行なったデータである。図6に示すように、従来では、供給水側から多くの透過水が生成され、濃縮水側にいくにつれ、透過水の量が下がっていた。これに対し、本発明では、抵抗配管90を設けて、供給水側の透過水の流量を減らしているので、濃縮水側の塩濃度を従来に比べて低くすることができ、透過水の流量を増やすことができる。したがって、各RO膜エレメントの透過水量の不均一さを解消することができる。集水配管34内の圧力の調整は、計測器66により測定した数値により濃縮水排出バルブ64の開度を調節することで行なうことができる。また、透過水量を均一にすることで、供給水側のRO膜の汚れを抑制することができ、長期の使用を可能とすることができる。
【0042】
次に抵抗配管90の作用について説明する。図7は、集水配管34中の抵抗配管90aを示す断面図であり、図7(a)は、側面の断面図であり、図7(b)は正面の断面図である。抵抗配管90aは、壁面に開口部92aを有する配管である。抵抗配管90aの開口部92aの開口率は、集水配管34に設けられている透孔36の開口率より小さくなるように設定する。抵抗配管90aの開口率を小さくすることで、透孔36を抵抗配管90aにより塞ぐことができるので、RO膜28から通過する透過水の量を減らすことができる。開口率は、開口部92aの数を減らすことで小さくすることもできるし、開口部92aを集水配管34の透孔36より小さくすることで、開口率を小さくすることもできる。
【0043】
図8は、他の実施の形態の抵抗配管を示す側面の断面図である。図8に示す抵抗配管90bは、図中の矢印で示す供給水側から濃縮水側にいくにつれ、開口部92bの数が増えている点が、図7に示す実施の形態と異なっている。このような構成とすることで、供給水側の集水配管34に流入する透過水の量を減らし、濃縮水側にいくにつれ、透過水量を増やすことができ、透過水量の均一化を行なうことができる。
【0044】
図9は、さらに他の実施の形態の抵抗配管を示す側面の断面図である。図9に示す抵抗配管90cは、図中の矢印で示す供給水側から濃縮水側にいくにつれ、抵抗配管90cの厚さが薄くなるテーパー状に形成されている。このような構成とすることにより、供給水側の抵抗配管90cの内径を小さくし、濃縮水側にいくにつれ、抵抗配管90cの内径を大きくすることができる。このような構成とすることにより、供給水側から濃縮水側にいくにつれ、透過水量を増やすことができ、透過水量の均一化を行なうことができる。なお、図9においては、供給水側からテーパー形状で濃縮水側にいくにつれ、内径が広がる構成となっているが、これに限定されず、供給水側から濃縮水側にいくにつれ、階段状に内径が広がる構成とすることも可能である。
【0045】
抵抗配管90は、一本の配管を集水配管34内に挿入することで設置することもできるし、複数の配管を挿入することで、抵抗配管90とすることも可能である。複数の配管を用いることで、開口率の異なる配管を用い、図8に示すような供給水側から濃縮水側にいくにつれ、開口率を大きくする抵抗配管90bを設けることもできる。また、厚みの異なる抵抗配管を複数使用し、供給水側から濃縮水側にいくにつれ、段階的に集水配管34の内径が大きくなるように設けることもできる。また、用いる抵抗配管の数により、集水配管34中に設置する抵抗配管の長さも容易に設定することが可能である。複数の抵抗配管を用いて集水配管中に設置することで、様々な集類の抵抗配管を設置することが可能である。抵抗配管90を設ける箇所は、エレメント22単位ではなく、ベッセル24内の各エレメントを一本の長いエレメントと考え、その集水配管内の任意の位置に決定することができる。抵抗配管90の位置の調整は、エレメント22の端部から、抵抗配管90を挿入し、複数の配管を用いて長さを調節することができる。
【0046】
抵抗配管90の長さは、温度、供給水の塩濃度により、適宜設定する必要があるが、集水配管34の全長に対して、供給水側の端部から10%〜90%の範囲で設けることが好ましい。
【0047】
エレメント位置における透過水量の不均一さは、(1)水温、(2)供給水塩濃度、(3)RO膜自体の透水性および塩阻止率、(4)ベッセル内の全膜に平均化した膜面積辺りの透過水量、(5)回収率、(6)圧力、により決定される。この中で、(3)および(4)、(5)は設計時に決定するものである。(1)、(2)は環境の変化により、(6)は運転により膜が汚染した場合に変化する。(1)、(2)および(6)の変化に応じて、濃縮水排出バルブ64の開度、および、抵抗配管90の位置を調節することで、全体的に安定した透過水量を確保することができる。特に、(1)水温は、季節によって異なるため、水温の変化により適宜調整を行なう必要がある。
【0048】
図10は、他の実施の形態の逆浸透処理装置110の断面図である。逆浸透処理装置110は、集水配管34中に抵抗体80を備え、ベッセル24の供給水側に第2の排出管68、計測器72、第2のバルブ70を備えている点が、図5に示す逆浸透処理装置10と異なっている。
【0049】
逆浸透処理装置110によれば、導入管56を介して供給された被処理水は流路57を介してエレメント22に導かれ、被処理水はエレメント22のRO膜28を順次通過したのち、集水配管34に集水される。本実施形態においては、集水配管34中に抵抗体80を備え、抵抗体80を境にして、濃縮水側に集水された透過水は、第1の排出管58からベッセル24の外部に排出される。また、供給水側に集水された透過水は第2の排出管68からベッセル24の外部に排出される。RO膜28を通過しなかった濃縮水は、濃縮水排出管62を介してベッセル24の外部に排出される。
【0050】
本実施形態のように、抵抗体80を集水配管34中に設けることで、透過水を供給水側と濃縮水側に分割し、供給水側の透過水を第2の排出管68から排出することで、第2のバルブ70の開度を調整することで、供給水側の集水配管34内の圧力を調節することができる。さらに、集水配管34の供給水側から抵抗体80までの集水配管34中に抵抗配管90を設けることで、さらに、圧力を抑えることができるので、供給水側の集水配管34に集水される透過水量を調節することができる。供給水側の集水配管34に集水される透過水量を調節することで、濃縮水側の塩濃度を低くすることができるので、低い圧力で透過水を集水することができる。したがって、低い圧力で従来と同じ透過水を集水することができるのでコストを下げることができる。
【0051】
本実施形態においても、上述した(1)水温、(2)供給水塩濃度、(3)RO膜自体の透水性および塩阻止率、(4)ベッセル内の全膜に平均化した膜面積辺りの透過水量、(5)回収率、(6)圧力により、透過水量の不均一さが決定される。したがって、濃縮水排出バルブ64、第2のバルブ70の開度、および、抵抗体80、抵抗配管90の位置を調節することで、全体的に安定した透過水量を確保することができる。
【0052】
抵抗体80の位置は、エレメント単位、すなわち、エレメントの接続部に設けるのではなく、ベッセル内の各エレメントを一本の長いエレメントと考え、その集配管の抵抗体80の位置を任意に決定することができる。抵抗体80の位置の調整には、エレメント22のいずれか一方から、長い棒のようなもので押し出すことで調整することができる。
【0053】
また、第1の排出管58および第2の排出管68に設けられた計測器66、72により濃縮水排出バルブ64、第2のバルブ70の開度を決定することで、透過水量の調整を行なうこともできる。計測器66、72としては、流量計、圧力計を用いることができる。
【0054】
次に抵抗体80について説明する。抵抗体80としては、図11(a)に示すように、抵抗体80全体が弾性体82である、あるいは、図11(b)に示すように、非弾性体84にOリング状に弾性体82を設置して、集水配管34の内壁に弾性体82を密着させることにより設置する。抵抗体80の位置調整は上述したように、集水配管34の端部から押し出すことにより調整するため、内壁との接触部分は弾性体82で構成されていることが好ましい。しかしながら、透過水の水流により位置が変わらないような、集水配管34の内壁と抵抗を有するものが好ましい。このような弾性体としては、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、シリコンなどを使用することができる。
【0055】
抵抗体80は図12(a)に示すように非透水性とし、抵抗体80aで集水配管34中を透過水が移動できないように完全に閉止することもできる。また、図8(b)に示すように、抵抗体80dとして多孔性材料を用いて透水性とすることも可能である。また、図8(c)、(d)に示すように、抵抗体80c、80dと集水配管34の内壁との間にスリットを設けて、透過水の移動を可能にすることもできる。透過水を抵抗体80間で移動可能とすることで、抵抗体80を挟んだ集水配管34内の両側で抵抗を持たせることができるので、透過水量を等しくすることができる。また、抵抗体80に透水性を持たせる場合は、抵抗体80の数は限定されず、複数設置することも可能である。複数設置することで、集水配管34内の圧力をより細かく調節することができるので、各RO膜の透過水量の不均一さを解消させることができる。同様に、主となる抵抗体80として透水性を有さない抵抗体80を用い、さらに、透過水量の調整を行なうために、透水性を有する抵抗体を併せて設置することも可能である。
【符号の説明】
【0056】
10、110…逆浸透処理装置、12…タンク、14…高圧ポンプ、16…透過水、18…濃縮水、20…脱塩処理システム、22…エレメント、24…ベッセル、26…モジュール、28…RO膜、30…排出管、32…膜ユニット、34…集水配管、36…透孔、38、40…スペーサー、56…導入管、57…流路、58…第1の排出管、62…濃縮水排出管、64…第1のバルブ、66、72…計測器、68…第2の排出管、70…第2のバルブ、80…抵抗体、82…弾性体、84…非弾性体、90…抵抗配管、92…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部に被処理水を供給する導入管を有し、他方の端部に濃縮水を排出する濃縮水排出管を有する圧力容器内に、逆浸透膜を備える複数の逆浸透膜エレメントが、前記被処理水が前記逆浸透膜を通過した透過水が流れる集水配管により直列に接続されており、
前記圧力容器の前記濃縮水排出管側に前記透過水を排出する第1の排出管を備え、
前記集水配管内の前記導入管側に抵抗配管を備えることを特徴とする逆浸透処理装置。
【請求項2】
前記抵抗配管の側面に設けられた開口部の開口率が、前記集水配管の側面に設けられた前記逆浸透膜を透過した透過水が流れる透孔の開口率より小さいことを特徴とする請求項1に記載の逆浸透処理装置。
【請求項3】
前記抵抗配管は、前記集水配管の前記導入管側から前記第1の排出管側にいくにつれ、開口部の開口率が大きくなることを特徴とする請求項2に記載の逆浸透処理装置。
【請求項4】
前記抵抗配管は、前記集水配管の前記導入管側から前記第1の排出管側にいくにつれ、前記抵抗配管の厚みが薄くなることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の逆浸透処理装置。
【請求項5】
前記抵抗配管は、複数の配管が接続されて形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の逆浸透処理装置。
【請求項6】
前記集水配管中に、前記透過水を、前記被処理水の供給側である前段と、前記濃縮水の排出側である後段と、に分離する抵抗体と、
前記導入管側に前段の前記透過水を排出する第2の排出管と、を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の逆浸透処理装置。
【請求項7】
前記抵抗体は、前記抵抗配管の前記第1の排出管側の端部に設けられていることを特徴とする請求項6に記載の逆浸透処理装置。
【請求項8】
前記抵抗体は、非透水性であることを特徴とする請求項6又は7に記載の逆浸透処理装置。
【請求項9】
前記抵抗体は、透水性であることを特徴とする請求項6又は7に記載の逆浸透処理装置。
【請求項10】
前記抵抗体は、多孔性材料で形成されていることを特徴とする請求項9に記載の逆浸透処理装置。
【請求項11】
前記抵抗体に、透過水が通過するスリットが形成されていることを特徴とする請求項6から10のいずれか1項に記載の逆浸透処理装置。
【請求項12】
前記抵抗体が、前記集水配管中に複数設けられていることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載の逆浸透処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−130839(P2012−130839A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−283592(P2010−283592)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】