説明

逆火防止器

【課題】可燃性ガスの圧力が低下して、ガス導出側における逆火の爆発力が小さい場合でも、可燃性ガスを確実に遮断できる逆火防止器を提供すること。
【解決手段】ケース部材100内の中空部10でかつケース部材100の内周面とロッド23の周面23Bとの間には、遮断スプリング28によりガス導入路11側に付勢するように設けられて、移動子21に当接された状態で転動自在なステンレスボール22が配置され、ケース部材100の内周面には、通常時にステンレスボール22を係止して、移動子21にかかる遮断スプリング28の付勢力を断つ段部3Aが形成され、ロッド23の周面23Bには、逆火が発生してロッド23がガス導入路11側に移動した場合に、段部3Aでのステンレスボール22の係止を解除して、前記ステンレスボール22を転動可能な状態で係止する溝部23Cが形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガス等の爆発する可能性がある可燃性ガスを供給する装置、配管の供給路などに適用され、ガス導出路側で逆火が発生した場合に、可燃性ガスを確実に遮断するとともに、不意の復帰を防止できる逆火防止器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、トーチ等が位置するガス導出路側で発生する逆火を止め、かつ可燃性ガスを遮断することができる逆火防止器として、特許文献1に示すような乾式逆火防止器が開示されている。
この乾式逆火防止器は、ケース部材内の遮断弁ホルダーに形成されたガス供給路内に、スプール弁で構成した遮断弁体を進退移動可能に内嵌し、遮断弁体の端部(ガス導出側端部)に形成した逆止弁座に、逆止弁バネで付勢した逆止弁体を当接させるようになっている。
【0003】
そして、遮断弁体の(ガス導入路側)脚部先端は、遮断弁ホルダーに装着されていて、逆火作動時に、ケース部材から外部に突出するようになっている。
また、ケース部材でかつ遮断弁体の脚部先端の移動経路には、遮断弁体の脚部周面に当接するボールが、作動圧調整機構により当接圧力変更可能に装着され、一方、遮断弁体の脚部周面には、逆火作動時に、ケース部材側のボールが嵌まり込むための凹部が形成されている。
かかる構成により、逆火作動時には、遮断弁体の脚部周面の凹部に嵌まり込んだボールにより、遮断弁体がケース部材内のガス供給路が遮断された状態で固定され、これにより新たな可燃性ガスの導入が強制に遮断されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005‐240840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に示される逆火防止器では、ケース部材側のボールが、遮断弁体の脚部周面に当接するだけの構造、すなわち、ボールが転動自在の構造であるので、作動圧調整機構の調整ねじによりその当接圧力が調整されているにしても、ねじの緩みなどが原因となって誤作動する可能性がある。
【0006】
具体的には、例えば、作動圧調整機構の調整ねじが緩んだ状態で、可燃性ガスの供給圧力が低下して、逆止弁体が、逆止弁バネの付勢力によって遮断弁体端部の逆止弁座に当接してしまうと、その圧力が、遮断弁体にまで伝達されて、遮断弁体が誤作動してしまう可能性がある。
【0007】
また、例えば、水素ガスや水素を多く含む混合ガスでは、トーチ側での逆火時の爆発的な燃焼の後、爆発前の圧力が小さい時は負圧になるため、作動圧調整機構のねじ調整が十分でない場合、逆火防止器は、逆火後の圧力低下で逆止弁・遮断弁とも自動復帰してしまう可能性があった。
【0008】
また、上記特許文献1に記載の逆火防止器は、作動圧調整機構の調整ねじが強く締め過ぎている場合には、トーチ側での逆火時の爆発力が小さい場合に、遮断弁体が正常に作動せずに、可燃性ガスの供給が遮断されない可能性があった。
【0009】
また、引用文献1以外に、遮断弁体をロックピンにより押さえ、逆火が発生したときに、ロックピンを押し上げて遮断弁体との係止状態を解除する技術も開示されているが、かかる構成では、逆火の爆発状態や大きさにより、ロックピンの解除動作にバラツキが発生する可能性があり、充分な信頼性が確保できないという可能性がある。
【0010】
以上のような、逆火防止器の遮断弁体の誤作動を解消して信頼性を向上するために、所望の圧力がかかってはじめて作動し、かつ一旦作動した後は、遮断した状態を保持して、不意の復帰が防止できる遮断機構に対する強い技術的要請があった。
【0011】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、可燃性ガスの供給圧力が低下して、ガス導出側における逆火の爆発力が小さい場合でも、可燃性ガスを確実に遮断でき、かつ不意の復帰が防止できる逆火防止器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、可燃性ガスが供給されるガス導入路及び前記可燃性ガスが導出されるガス導出路に接続される中空部を内部に有するケース部材と、前記ケース部材内の前記中空部の軸線方向に移動自在に設けられて、かつ前記ガス導入路側に付勢されて、ガス導入圧力が相対的に低下した場合に、前記ガス導入路を閉鎖する側に移動する逆止弁と、前記ケース部材内の中空部内に設けられ、前記ガス導出路からの逆火時の爆発による圧力により、前記逆止弁を閉鎖する側に移動させる逆火防止機構と、を有し、前記逆火防止機構は、前記中空部の軸線方向に移動自在に設けられて、逆火時の爆発による圧力を受けた場合に、前記ガス導入路側に移動する感圧子と、前記中空部の軸線方向に移動自在に設けられて、逆火により前記感圧子が前記ガス導入路側に移動した場合に、前記感圧子に押圧されて前記ガス導入路側に移動するロッドと、前記ロッドと前記逆止弁との間にて、前記中空部の軸線方向に移動自在に設けられて、前記ロッドに押圧された場合に、前記逆止弁を前記ガス導入路側に移動させて前記ガス導入路を閉鎖する移動子とを有し、前記中空部内には、前記ケース部材の内周面と前記ロッドの外周面との間に、前記移動子に当接された状態で転動自在な転動部材と、前記転動部材を前記ガス導入路側に付勢する遮断スプリングが配置されており、前記ケース部材の内周面には、通常時に、前記転動部材を係止して前記遮断スプリングの付勢力が前記移動子に伝達されるのを規制する段部が形成され、かつ前記ロッドの外周面には、逆火が発生して前記ロッドがガス導入路側に移動した場合に、前記転動部材の前記段部による係止を解除するとともに前記転動部材を係止する溝部が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る逆火防止器によれば、ガス導出側で逆火が生じると、逆火の圧力で感圧子が移動し、感圧子の移動がロッドに伝達される。ロッドが移動すると、ロッドの溝部に転動部材が嵌り込み、段部に係止されていた転動部材及びロッドが軸線方向に移動自在となり、遮断スプリングの付勢力が転動部材を介して移動子及び逆止弁に伝達されて逆火防止機構が作動する。
その結果、逆火の圧力が加わらない限り、逆火防止機構が作動することはなく、可燃性ガスの供給圧力が低下しても、振動等による逆止弁の誤作動が防止される。
また、上記逆火防止器によれば、通常時、ケース部材の内周面に形成された段部に転動部材が係止されているので、逆火による爆発が生じて所定以上の圧力が感圧子に印加されて、感圧子がロッドを移動させて、ロッドの溝部に転動部材が嵌り込む位置に移動した場合に限って、転動部材が段部から解除され、遮断スプリングが伸張して逆止弁がガス導入路を閉止するとともに、ロッドがその位置で保持される。
その結果、逆火による爆発の圧力が所定圧力に達しない場合には、逆火防止機構が作動しないので誤作動が抑制され、また、保持されたロッド及び逆止弁は、逆方向に所定の力が負荷されない限りガス導出側に移動することがないので、不意に遮断が不意に復帰するのが防止される。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の逆火防止器であって、前記転動部材は、球体であることを特徴とする。
【0015】
この発明に係る逆火防止器によれば、転動部材が球体であるため、安定して転動し、その結果、逆火防止器としての作動信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る逆火防止器によれば、逆火による爆発が生じた場合に、可燃性ガスの供給を確実に遮断するとともに、遮断後は遮断状態を確実に維持することができる。
その結果、逆火防止器の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】通常時の逆火防止器を示す正断面図である。
【図2】逆火時の逆火防止器を示す正断面図である。
【図3】逆火状態から通常状態に復帰させるためのリセット棒を挿入した際の逆火防止器を示す正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る逆火防止器について、図1〜図3を参照して説明する。
一実施形態に係る逆火防止器は、可燃性ガス(例えば、水素ガス)をガス切断機に供給する経路に設けられ、図1において、符号1は弁本体部を、符号2は弁本体部1の図中右端部に結合されたキャップを、符号3は弁本体部1内に設けられたロッド23及び感圧子24(後述する)を保持するためのフィルタ受けを、符号4は弁本体部1内におけるキャップ2とフィルタ受部材3との間に設けられた焼結金属を示している。
ケース部材100は、弁本体部1と、キャップ2と、フィルタ受部材3と、焼結金属4とを備えている。また、キャップ2の図中右端部には、図示しない配管や減圧弁に接続するためのナット5が螺合されている。
【0019】
ケース部材100を構成する弁本体部1、キャップ2及びフィルタ受部材3の内部には、軸線Aに沿うように可燃性ガスのガス供給路となる中空部10が形成され、この中空部10の図中右端にはガス導入路11が、図中左端にはガス導出路12がそれぞれ形成されている。
【0020】
中空部10内には、軸線Aに沿う可燃性ガスのガス供給方向(矢印a方向)に沿って、逆止弁20、移動子21、ステンレスボール(転動部材)22、ロッド23、感圧子24が順次配置されている。
これら逆止弁20、移動子21、ステンレスボール22、ロッド23、感圧子24は、それぞれ軸線Aに沿って矢印a‐b方向に移動自在に設けられている。
【0021】
逆止弁20は、移動子21との間に配置された圧縮バネからなる逆止弁スプリング25により、ガス供給方向aと逆方向の矢印b方向に付勢されるものであり、矢印a方向への可燃性ガス供給圧が低下した場合に、逆止弁スプリング25の付勢力によりキャップ2上の逆止弁座2Aに当接する。
また、逆止弁20のガス導入路11側には、Oリング20Aが設けられ、逆止弁20が矢印b方向に移動した場合に、Oリング20Aがキャップ2上の逆止弁座2Aに当接及び密着して、ガス導入路11を閉鎖するようになっている。
【0022】
移動子21は、断面視、コ字状体に形成され、コ字状体の凹部21A内にロッド23の一端部23Aが挿入され、ロッド23が矢印b方向に移動することにより、凹部21Aの底面に当接するようになっている。
ロッド23は、矢印b側の一端部23A近傍が平滑な周面23Bとなっており、周面23Bの途中に溝部23Cが形成されており、この溝部23C内に、ステンレスボール22が嵌まり込むようになっている。
【0023】
ステンレスボール22は、ロッド23の周面23Bとフィルタ受部材3の内周面との間にて矢印a―b方向に転動可能に設けられ、矢印a方向に転動した場合には、フィルタ受部材3の内周面に形成された段部3A内に嵌まり込み、また、矢印b方向に転動した場合には、ロッド23の溝部23C内に嵌まり込むようになっている。
【0024】
また、ステンレスボール22は、通常時は、フィルタ受部材3の段部3Aに嵌まり込み、かつロッド23の周面23B上に当接した状態とされ、逆火時には、(矢印b方向に移動した)ロッド23の溝部23C内に嵌り込んだ後、フィルタ受部材3の段部3Aから、段部3Aに接続される平滑部3B上に乗り上げて転動するようになっている。
【0025】
中空部10内のロッド23の外周には、ステンレスボール22に接触する座金26が設けられている。
座金26は、感圧子24近傍に位置するロッド23のスプリング固定部23Dとの間にロッドスプリング27を保持し、ロッド23の他端部23Eは、ロッドスプリング27により感圧子24に押し付けられるようになっている。
【0026】
また、フィルタ受部材3の矢印a側に位置するリブ3Cと、座金26との間には、座金26を介して、ステンレスボール22を矢印b方向に付勢するための遮断スプリング28が設けられている。
なお、この実施形態において、ロッドスプリング27及び遮断スプリング28は、例えば、いずれも圧縮バネが使用され、遮断スプリング28のバネ力がロッドスプリング27よりも強く設定されている。
【0027】
感圧子24は、Oリング29を介してフィルタ受部材3に保持されたものであって、ロッド23の他端部23Eに接触された状態にある。なお、感圧子24は、ガス導入路11からガス導出路12へのガス移動を許容しつつ、トーチ等ガス導出路12側における逆火時の爆発圧を受圧面24Aで受ける構造とされ、爆発圧を受けた際に、矢印b方向へ移動するようになっている(図2)。
【0028】
なお、以上のような構成において、移動子21、ステンレスボール22、ロッド23、感圧子24、座金26、ロッドスプリング27、遮断スプリング28により、逆火防止機構101が構成される。
【0029】
次に、本実施形態に示す逆火防止器において、逆火が発生した時の動作について図1を参照して説明する。
通常時において、逆止弁20は、図1に示すように、移動子21との間に配置された逆止弁スプリング25により、ガス供給方向aと逆方向の矢印b方向に付勢されている。
軸線Aに沿う矢印a方向に可燃性ガスのガス供給方向が供給されているときには、逆止弁20は、その供給圧力により、逆止弁スプリング25の付勢力に抗して開いた状態(図1で示す状態)にある。
このとき、可燃性ガスの供給圧を「F1」、逆止弁スプリング25の付勢力を「F2」とすれば、「F1>F2」の関係が成立する。
【0030】
次に、本実施形態に示す逆火防止器において、逆火が発生した時の動作について図1及び図2を参照して説明する。なお、これらの図において、図1は逆火が発生する前の通常時の状態、図2は逆火時の状態を示している。
ステンレスボール22は、図1に示す通常の状態において、フィルタ受部材3の段部3Aに係止されかつロッド23の周面23B上に位置した状態にあり、ロッドスプリング27、遮断スプリング28により矢印b方向へ付勢されても、段部3Aにより同方向への移動が規制されている。
【0031】
(1)ガス導出路12の出口側から加わる逆火時の爆発による圧力を、広い受圧面を持つ感圧子24が受けると、感圧子24が押されて、ガス導入路11側の矢印b方向に移動する。
【0032】
(2)感圧子24の矢印b方向への移動にともない、感圧子24に接触した状態にあるロッド23も同方向に移動する。
【0033】
(3)ロッド23が、矢印b方向に沿って予め設定した所定量(例えば、1.1mm)移動すると、ロッド23の周面23Bとフィルタ受部材3の段部3Aと間にあるステンレスボール22が、ロッド23の周面23Bに形成された溝部23Cに嵌まり込み、段部3Aからステンレスボール22が外れる。
溝部23Cに嵌まり込むと、フィルタ受部材3の段部3Aから外れたステンレスボール22がフィルタ受部材3の平滑部3Bに乗り上げ、かつ平滑部3B上を転動可能な状態となる。
【0034】
(4)ステンレスボール22が溝部23Cに嵌り込んだロッド23は、遮断スプリング28に押されて、矢印b方向に移動する。このとき、ロッド23の溝部23Cに嵌まり込んだステンレスボール22は、フィルタ受部材3の平滑部3B上を転動する。
【0035】
(5)その後、ロッド23は、移動子21の凹部21A内に接触した後、移動子21を、逆止弁20のOリング20Aがキャップ2の逆止弁座2Aに接触する状態となるまで矢印b方向に移動させ、これによりガス導入路11からの可燃性ガス流入を遮断する。
このとき、遮断スプリング28の付勢力が常に逆止弁20に加わることで遮断が確実に持続することが可能であり、この動作により、逆火による爆発の圧力が、水素ガスの場合において圧力が小さい場合でも確実にガスの遮断が可能で、逆止弁20を強い力で固定しておくことができる。
【0036】
なお、 逆火防止機構101は、
可燃性ガスの供給圧による逆止弁の開方向の力を「F1」、逆止弁スプリング25の付勢力を「F2」、ロッドスプリング27の付勢力を「F3」、遮断スプリング28の付勢力を「F4」、逆火により感圧子24に作用する力を「F5」とすると、
逆火が生じるまでは、ステンレスボール22が段部3Aに係止されているので、F1>F2 の関係が成立するときに逆止弁20が開放され、成立しないときに逆止弁20が閉鎖される。この逆止弁スプリング25の付勢力「F2」は、可燃性ガスの最低使用圧力未満に対応するわずかな力に設定されていれば充分である。その結果、ガス導入路11側における可燃性ガスの供給圧力が低下しても、可燃性ガスが使用圧力範囲にある場合には、逆止弁20の開状態で維持されるので、可燃性ガスを安定して使用することができる。
そして、逆火が生じて、 F1<F4+F5−F2−F3 の関係が成立すると、逆止弁20が閉鎖される。
逆止弁20が、一旦閉鎖されると、逆火による圧力がなくなりF5がゼロになっても、F1<F4−F2−F3 の関係が成立する限り、逆止弁20の閉止が維持される。
【0037】
また、上述した逆火が収まり、逆火防止機構101を初期状態(図1で示される状態)に復帰させる場合には、図3で示すように、ガス導入路11側から矢印a方向にリセット棒30を挿入する。このとき、リセット棒30を「F2+F3+F4」より強い力で矢印a方向に押し込むと、ロッド23も同方向に移動し、かつロッド23の溝部23C内に嵌り込んでいたステンレスボール22も転動しながら同方向に移動する。
【0038】
このとき、ステンレスボール22は、フィルタ受部材3側の段部3Aに嵌まり込むまで移動し、段部3Aに嵌まった時点で、ロッド23の溝部23Cからロッド23の周面23B上に乗り上げ、この状態で、ロッド23はさらに感圧子24が、フィルタ受部材3の末端部3Dに接触するまで矢印a方向に移動し、これにより図1で示す初期状態にリセットされることになる。
【0039】
本実施形態に係る逆火防止器によれば、ガス導入圧力が相対的に低下した場合に、ケース部材100の中空部10内に設けられた逆止弁20が、ガス導入路11側に付勢されてガス導入路11を閉鎖するので、可燃性ガスの逆流が防止される。
【0040】
また、通常時には、ステンレスボール22が、ケース部材100の内周面に形成された段部3Aに係止され、遮断スプリング28の付勢力が移動子21に伝達されるのを抑止しているので、移動子21を介して逆止弁20が移動することがなく、可燃性ガスが安定して流通する。
【0041】
一方、ガス導出路12側で逆火が発生した場合には、逆火時の爆発による圧力を感圧子24が受けて、感圧子24及び感圧子24に押圧されたロッド23が矢印b方向に移動する。
その結果、ステンレスボール22は、段部3Aでの係止が解除されて溝部23Cに係止され、遮断スプリング28の付勢により、移動子21を介して逆止弁20が逆止弁座2A側に移動してガス導入路11を遮断する。
【0042】
一実施形態に係る逆火防止器によれば、感圧子24が軸線方向に付勢された遮断スプリング25を介してステンレスボール22に伝達され、ステンレスボール22が移動してはじめて逆火防止機構101が作動するので、可燃性ガスの供給圧力が低下しても、振動等による逆止弁20の誤作動が防止される。
【0043】
また、通常時、ケース部材100の内周面に形成された段部3Aにステンレスボール22が係止されているので、逆火による爆発が生じて所定以上の圧力が感圧子24に印加されて、遮断スプリング28を介して、ステンレスボール22に伝達される所定以上の力が加わった場合に限って、ステンレスボール22が段部3Aから解除されて、ガス導入路11側に移動するとともにロッド23に形成された溝部23Cに嵌まり込んで、逆止弁20がガス導入路11を閉止するとともに、その位置でロッド23が保持される。
【0044】
また、保持されたロッド23及び逆止弁20は、逆方向に所定の力が負荷されない限りガス導出側に移動することがないので、不意に遮断が不意に復帰するのが防止される。
【0045】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0046】
例えば、上記実施の形態においては、転動部材が、ステンレスボール22である場合について説明したが、逆火発生時に、遮断スプリング28の付勢力の伝達を規制するための段部3Aからロッド外周面の溝部23Cに乗り移り可能であれば、ボールに代えて、多面体を用いてもよいし、又、ボールや多面体等の一部からなる部材を用いてもよい。また、ボールである場合に、ステンレスに限定されず、セラミックス等、他の材質が適用できることはいうまでもない。
【0047】
また、ロッドスプリング27により、ロッド23の他端部23Eを、感圧子24に押し付けるようにしたが、ロッド23の他端部23Eを、感圧子24に押し付けるための付勢手段は、ロッドスプリング27に限定されず、例えば、ロッド23と感圧子24との間に引張バネを配置してもよい。
【0048】
また、上記実施の形態においては、可燃性ガスが水素ガスである場合について説明したが、例えば、水素とプロパン等の炭化水素とを混合した混合ガス、水素と酸素等の支燃性ガスとを混合した混合ガス、水素、炭化水素、支燃性ガスとを混合した混合ガスのほか、アセチレン等の炭化水素単体のガスにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、水素等の可燃性ガスを供給する装置、配管の供給路などに適用されて、ガス導出路側で発生する逆火を止め、可燃性ガスを遮断することができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
10 中空部
11 ガス導入路
12 ガス導出路
21 移動子
22 ステンレスボール(転動部材)
23 ロッド
24 感圧子
28 遮断スプリング
100 ケース部材
101 逆火防止機構
A 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃性ガスが供給されるガス導入路及び前記可燃性ガスが導出されるガス導出路に接続される中空部を内部に有するケース部材と、
前記ケース部材内の前記中空部の軸線方向に移動自在に設けられて、かつ前記ガス導入路側に付勢されて、ガス導入圧力が相対的に低下した場合に、前記ガス導入路を閉鎖する側に移動する逆止弁と、
前記ケース部材内の中空部内に設けられ、前記ガス導出路からの逆火時の爆発による圧力により、前記逆止弁を閉鎖する側に移動させる逆火防止機構と、を有し、
前記逆火防止機構は、
前記中空部の軸線方向に移動自在に設けられて、逆火時の爆発による圧力を受けた場合に、前記ガス導入路側に移動する感圧子と、
前記中空部の軸線方向に移動自在に設けられて、逆火により前記感圧子が前記ガス導入路側に移動した場合に、前記感圧子に押圧されて前記ガス導入路側に移動するロッドと、
前記ロッドと前記逆止弁との間にて、前記中空部の軸線方向に移動自在に設けられて、前記ロッドに押圧された場合に、前記逆止弁を前記ガス導入路側に移動させて前記ガス導入路を閉鎖する移動子と、を有し、
前記中空部内には、前記ケース部材の内周面と前記ロッドの外周面との間に、前記移動子に当接された状態で転動自在な転動部材と、前記転動部材を前記ガス導入路側に付勢する遮断スプリングが配置されており、
前記ケース部材の内周面には、通常時に、前記転動部材を係止して前記遮断スプリングの付勢力が前記移動子に伝達されるのを規制する段部が形成され、
かつ前記ロッドの外周面には、逆火が発生して前記ロッドがガス導入路側に移動した場合に、前記転動部材の前記段部による係止を解除するとともに前記転動部材を係止する溝部が形成されていることを特徴とする逆火防止器。
【請求項2】
請求項1に記載の逆火防止器であって、
前記転動部材は、球体であることを特徴とする逆火防止器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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