説明

透明なパネル体及びタッチパネル

【課題】操作面に透明導電膜形状が現れることを防止でき、且つ可視光波長域での平坦な透過特性を実現することにより、ガラスに近い透明性を実現したパネル体及びそれを用いた静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【解決手段】透明基板の上面に下地層と、当該下地層の上に透明導電膜からなるパターン部を形成し、下地層は透明基板の下面側から光を入射した際に、パターン部と、それ以外の非パターン部との透過率に差が小さくなるように調整したものであって、当該下地層は屈折率に高低差を有する2層からなるとともに透明基板側が相対的に高屈折率層で透明導電膜に接する側が低屈折率層になっていて、可視光の全領域において透過率が88%以上の概ね均一になっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光領域での透明均一性の向上に適したパネル体及びタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶パネル等の表示画像を視認しながら、指やペンなどで接触操作して接触位置を入力するタッチパネルが広く用いられている。
このタッチパネルとして、近年は携帯電話機等の表示パネルでは指で触れた位置の静電容量変化を検出する静電容量式タッチパネルが普及しつつある。
この従来の静電容量式タッチパネルでは、透明基板上にマトリックス状の透明導電膜からなる第1電極パターンと第2電極パターンを設けているが、操作面側から見て透明導電膜を設けている範囲と設けていない範囲が存在することになる。
このため、透明導電膜を設けた範囲と透明導電膜を設けていない範囲では、透明導電膜からの透過光と、電極パターン部以外の透明基板からの透過光に差が生じてしまうことになり、透明導電膜形状が視認される問題があった。
特徴文献1には基板と透明導電膜の間に、屈折率の異なる2層を介在させ、パターン部と非パターン部の反射率の差を調整するタッチパネルを開示する。
しかしながら、上記のタッチパネルでは、パターン部と非パターン部の反射率の差は小さくなりパターンが視認されにくくなるものの、可視光波長域での平坦な透過特性を保証するものではなく、透過率が必ずしも高いものではない。
【0003】
【特許文献1】特開2008−98169号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記技術的課題に鑑みて、操作面に透明導電膜形状が現れることを防止でき、且つ可視光波長域での平坦な透過特性を実現することにより、ガラスに近い透明性を実現したパネル体及びそれを用いた静電容量式タッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るパネル体は、透明基板の上面に下地層と、当該下地層の上に透明導電膜からなるパターン部を形成し、下地層は透明基板の下面側から光を入射した際に、パターン部と、それ以外の非パターン部との透過率の差が小さくなるように調整したものであって、当該下地層は屈折率に高低差を有する2層からなるとともに透明基板側が相対的に高屈折率層で透明導電膜に接する側が低屈折率層になっていて、可視光の全領域において透過率が88%以上の概ね均一になっていることを特徴とする。
これにより、ガラスに近い透明性を有し、且つ透明電極パターンが視認されにくい透明なパネル体とすることができる。
【0006】
本発明において透明基板は、可視光領域の光に対する平均透過率が90%以上のガラス基板であり、透明導電膜は、ITO膜であり、高屈折率層は、チタン、タンタル、ニオブ、インジウム、スズのいずれかの酸化物あるいは窒化物を主材料とするものであり、低屈折率層は酸化ケイ素膜又はフッ化マグネシウム膜のいずれかであることが好ましい。
ここでITO膜とはインジウム錫酸化物の膜をいう。
上記材料はいずれも、種々の方法による薄膜の形成が容易であり、また高屈折率と低屈折率との差を広く取れる組み合わせであることから、最適な膜厚を求める場合の設計の自由度が増すという効果を有する。
【0007】
本発明において、さらにITO膜の膜厚は15nm〜25nmの範囲にあり、高屈折率層は膜厚が5.0nm〜7.0nmのニオブ酸化膜であり、低屈折率層は膜厚が40nm〜70nmの酸化ケイ素膜であることことが望ましい。
これにより、透明導電膜の抵抗値がタッチパネル等の用途に関しての実用的な範囲にあり、可視光の全領域に渡って光透過率が88%以上のパネル体とすることができる。
【0008】
本発明に係る静電容量式タッチパネルは、請求項1〜3のいずれかに記載のパネル体を用いたものであって、パターン部は、複数の第1電極と第2電極とを、行と列の交差部を有するマトリックス状で且つ下地層の同一面上に形成してあり、行方向に配列した複数の第1電極は第1導通部で行方向に連結してあり、列方向に配列した複数の第2電極は第2導通部で列方向に連結してあり、第1導通部と第2導通部との交差部の間には中間絶縁層を介してあることを特徴とする。
屈折率に高低差を有する2層からなる下地層の上に電極パターンを形成した場合に、下地層に直接接しているパターン部は本発明に係る下地層の効果で電極パターンが目立たなくなる。
従って、請求項4に係る発明にあっては、行方向に配列した第1電極と列方向に配列した第2電極がともに同じ下地層の同一面上に形成してあるので両方とも目立たなく、且つ全体の透過率が高く透明度が高い。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明に係るパネル体においては、従来透明下地層を設けなかった場合に比較して、透明導電膜を設けた範囲と、透明導電膜を設けていない範囲の透過率の差を小さく出来るので、透明導電膜のパターンが目立たなくなる。また、可視光領域の全域で透過率が高く、透明度に優れる。
本発明のパネル体を用いたタッチパネルは、LCD等の表示画面上に配置した場合、表示画像のコントラストが透明導電膜の縁部付近において不連続になることを防止して、表示面に透明導電膜形状が現れることを防止出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るパネル体を適用した静電容量式タッチパネルの例について、図を用いて説明する。
なお、本発明はパターン部を有する各種パネルに適用できる。
図1(a)は操作面側から見たタッチパネル10の説明図を示し、図1(b)は拡大斜視図を示す。
図3にパターン部の製作手順例を示し、図2に図3(c)のA−A線断面図及びB−B線断面図を示す。
また、図4はタッチパネル10の外観図を示す。
図はいずれも、分かりやすくするために模式的に表してあり、実際よりも部分的に拡大や縮小をしてある。
タッチパネル10は、ガラス基板等の透明基板11の一方の片面上(上面)に、可視光の透過率を調整するための下地層20を形成し、この下地層20の上にセンサ部Sを形成してある。
センサ部Sは下地層20の上に、同層の透明導電膜よりなる第1電極(X電極)12と第2電極(Y電極)14及び第1導通部(X導通部)13とを有し、第1導通部13を横切るように第2導通部15を有し、第1導通部13と第2導通部15の間には、有機物層からなる中間絶縁層16を有している。
第1電極12は、パネル水平方向(X方向)に隣接する第1電極12同士を第1導通部13で接続してある。
第1電極12及び第1導通部13はITO膜(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜である。
これにより、第1電極12と第1導通部13とで行を形成し、必要に応じて、複数の行を形成し、第1電極パターンになる。
第2電極14は、パネル垂直方向(Y方向)に隣接する第2電極14同士を第2導通部15で接続してある。
第2電極14及び第2導通部15はITO膜等の透明導電膜である。
これにより、第Y電極14と第2導通部15とで列を形成し、必要に応じて、複数の列を形成し、第2電極パターンになる。
第1電極12と第2電極14は、パネルの相互に直交する方向に交互配置したマトリクス状になっている。
また、第1電極12と第2電極14との間に、所定の容量の電荷が蓄えられるように、所定の隙間部dを設けて配置してある。
この隙間部dを本明細書では非パターン部と称する。
第1導通部13と第2導通部15は、中間絶縁層16を間に挟んで交差している。
中間絶縁層16はおおむね第1電極12及び第2電極14に重ならない大きさである。
第1電極パターンと第2電極パターンを本明細書ではパターン部と称する。
【0011】
図3は、第1電極12、第1導通部13、第2電極14、第2導通部15、中間絶縁層16を形成する方法例の説明図を示す。
先ず、図3(a)に示すように、下地層20上に第1導通部13を形成する。
次いで図3(b)に示すように、この第1導通部13において第2導通部15と交差する所定範囲を覆う中間絶縁層16をフォトレジスト等で形成する。
そして、図3(c)に示すように、第1電極12と第2電極14及び第2導通部15とを一括で形成する。
【0012】
次に、下地層20の構造を詳細に説明する。
下地層20は図2に示すように、透明基板11に接する高屈折率層20bと、センサ部Sを構成する透明導電膜からなる電極パターン部に接する低屈折率層20aとの2層構造になっている。
ここで低屈折率層20a,高屈折率層20bは、相対的に屈折率差があることを意味し、低屈折率層は多くの場合、屈折率1.35〜1.50の範囲となるように設定され、高屈折率層は屈折率1.7〜2.5の範囲となるように設定され、それぞれの屈折率設定値の実現に適した材料が用いられる。
低屈折率層は酸化ケイ素、フッ化マグネシウムの薄膜を採用することができ、高屈折率層としてはチタン、タンタル、ニオブ、インジウム、スズの酸化物又は窒化物を主材料とする薄膜を採用できる。
低屈折率層の薄膜と高屈折率層の薄膜からなる2層構造の下地層20を形成したことにより次のような効果がある。
透明基板11の下面側に位置する表示画像から入射された可視光は図1にて説明すると、第1電極12,第2電極14等から形成されたパターン部を透過してくる光線とそれ以外の部分である非パターン部を透過してくる光線とが存在する。
従来のように下地層がない場合には、パターン部を形成する透明導電膜の屈折率と透明基板の屈折率が異なるためにパターン部が目立ちやすくなる問題があったが、本発明においては、2層構造の下地層20にてパターン部と非パターン部の透過率が近似するように作用し、且つ、透過率が高く透明性に優れる。
【0013】
下地層を構成する薄膜の組み合せ及び膜厚は透明導電膜の膜厚等によって、適宜調整することができ、透明導電膜の膜厚19nm、低屈折層が膜厚60nmの二酸化ケイ素膜で、高屈折率が膜厚5.5nmのニオブ酸化膜のときの、パターン部及び非パターン部の可視光領域の透過率曲線を図5に示す。
なお、比較のために下地層が無い場合のパターン部の透過率曲線も示した。
この結果、本発明にかかる下地層を形成した場合に、パターン部と非パターン部とで可視光領域の全域にてほぼ均一に透過率89%以上を有し、パターン部が目立ちにくく、全体として透明度が高いことが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)は操作面側から見たタッチパネルの説明図を示し、(b)は拡大斜視図を示す。
【図2】(a)はA−A線断面図を示し、(b)はB−B線断面図を示す。
【図3】第1電極、第1導通部、第2電極、第2導通部、中間絶縁層を形成する方法の説明図を示す。
【図4】タッチパネルの外観図を示す。
【図5】可視光領域の透過率曲線を示す。
【符号の説明】
【0015】
10 静電容量式タッチパネル
11 透明基板
12 第1電極(X電極)
13 第1導通部
14 第2電極(Y電極)
15 第2導通部
16 中間絶縁層
17 交差部
20 下地層
20a 低屈折率層
20b 高屈折率層
d 隙間部(非パターン部)
S センサ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板の上面に下地層と、当該下地層の上に透明導電膜からなるパターン部を形成し、前記下地層は透明基板の下面側から光を入射した際に、パターン部と、それ以外の非パターン部との透過率の差が小さくなるように調整したものであって、前記下地層は屈折率に高低差を有する2層からなるとともに、前記透明基板側が相対的に高屈折率層で前記透明導電膜に接する側が低屈折率層になっていて、可視光の全領域において透過率が88%以上の概ね均一になっていることを特徴とするパネル体。
【請求項2】
前記透明基板は、可視光領域の光に対する平均透過率が90%以上のガラス基板であり、
前記透明導電膜は、ITO膜であり、
前記高屈折率層は、チタン、タンタル、ニオブ、インジウム、スズのいずれかの酸化物あるいは窒化物を主材料とするものであり、
前記低屈折率層は酸化ケイ素膜又はフッ化マグネシウム膜のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のパネル体。
【請求項3】
前記ITO膜の膜厚は15nm〜25nmの範囲にあり、
前記高屈折率層は膜厚が5.0nm〜7.0nmのニオブ酸化膜であり、
前記低屈折率層は膜厚が40nm〜70nmの酸化ケイ素膜であることを特徴とする請求項2記載のパネル体。
【請求項4】
前記パターン部は、複数の第1電極と第2電極とを、行と列の交差部を有するマトリックス状で且つ下地層の同一面上に形成してあり、行方向に配列した複数の第1電極は第1導通部で行方向に連結してあり、
列方向に配列した複数の第2電極は第2導通部で列方向に連結してあり、
第1導通部と第2導通部との前記交差部の間には中間絶縁層を介してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のパネル体を用いた静電容量式タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−152809(P2010−152809A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332511(P2008−332511)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000102500)SMK株式会社 (528)
【出願人】(591124765)ジオマテック株式会社 (35)
【Fターム(参考)】