説明

透明導電性シートとその製造方法、加飾成形品

【課題】透光性、及び耐腐食性を有し、かつ金属薄膜層を構成する金属の種類を制限しない透明導電性シートとその製造方法と加飾成形品を提供する。
【解決手段】基体シート1の上に金属薄膜層2とレジスト層3とが互いに接し、かつレジスト層3が表面になるように少なくとも形成された金属薄膜シートのレジスト層3に、ナノインプリント法を用いてレジスト層3の一部または全部に多数の微細な凹部8を形成し、次いで形成した多数の微細な凹部8の底面に存在するレジスト層10をドライエッチングにより除去し、形成した多数の微細な凹部8の底面に金属薄膜層2を露出させ、次いで多数の微細な凹部8の底面に露出した金属薄膜層2をウエットエッチングにより除去することにより、レジスト層3及び金属薄膜層2の全部または一部が微細なメッシュ状形状を形成するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性を有するとともに、電磁波遮蔽性及び導電性を兼ね備えた透明導電性シートとその製造方法とその透明導電性シートを用いて製造する加飾成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの通信機器、電子情報機器、液晶ディスプレイ、太陽電池などにおいては、透明性および導電性にすぐれた透明導電シートが必要とされている。
【0003】
この透明導電性シートとしては、透明な基体シートと、透明な基体シートの上に設けられる透明導電薄膜層と、透明導電膜層の上に設けられ、銅を主成分とし、線幅が15μm、開口率が70〜90%よりなる正方形又は長方形の格子状パターンを有する銅パターン層と、銅パターン層の上に設けられ酸化銅又は硫化銅より構成される着色層とを備えたものがある。
【0004】
この透明導電性シートの製造方法としては、透明な基体シート1の片面に、ポリヒドロキシエチルアクリレートなどから構成される親水性樹脂層を設ける第1工程と、親水性樹脂層の上に無電解メッキ層を設ける第2工程と、無電解メッキ層を銅の無電解メッキ液で処理し、銅薄膜層をする第3工程と、更に、親水性樹脂層の上に電解による銅メッキを行って、1〜10μmの銅膜層を全面に設ける第四工程と、マスキングフィルムを用いて、銅膜層をフォトエッチングによって格子状銅パターンを形成する第五工程を少なくとも備えたものがある(たとえば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−330772
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この製造方法で作成される透明導電性シートは、透明性に欠けるといった問題や、マスキングフィルムを用い、フォトエッチングを行うことで格子状銅パターンを形成する方法というでは、非常に高価な設備が必要になり、透明導電性シートの生産性が大幅に低下するといった問題や、使用できる金属の種類が限定されるといった問題があった。
【0007】
したがって、本発明は、上記のような問題点を解消し、かつ透明性を有するとともに、導電性及び安定した電磁波遮蔽性を有する透明導電シートとその製造方法、透明導電加飾成形品を提供することを目的とする。本発明の透明導電性シートとその製造方法、加飾成形品は上記の目的を達成するために、次のように構成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、透明導電性シートの製造方法において、基体シートと、基体シートの上に形成される金属薄膜層と、金属薄膜層に接し、金属薄膜層の上に形成されるレジスト層とから少なくともなる金属薄膜シートに、ナノインプリント法を用いて、前記金属薄膜シートのレジスト層に微細な凹部を形成する第1工程と、前記微細な凹部の底面に残存するレジスト層のみをドライエッチングにより除去し、微細な凹部の底面に金属薄膜層を露出させる第2工程と、前記露出した金属薄膜層をウエットエッチングにより除去する第3工程と、を少なくとも備えることにより、前記レジスト層及び前記金属薄膜層を微細なメッシュ状形状に形成するように構成されたものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、金属薄膜層がアルミニウム、ニッケル、金、銅、銀、チタニウム、亜鉛のいずれかからなるように構成されたものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1から請求項2記載の発明の構成において、金属薄膜層の厚さが0.01μm〜30μmであるように構成されたものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3記載の発明の構成において、金属薄膜層における各微細なメッシュ状形状部位のメッシュ状パターンの線幅が0.01μm〜2μmであるように構成されたものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4記載の発明の構成において、金属薄膜層における各微細なメッシュ状形状部位のメッシュ状パターンの線間距離がメッシュ状パターンの線幅の5倍以上1000倍未満であるように構成されたものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、基体シート上の一部または全面に微細なメッシュ状形状を有する金属薄膜層が形成され、その上に少なくともレジスト層が前記金属薄膜層のメッシュ状形状に一致するような形状で表面に形成されるように構成されたものである。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載の発明の構成において、金属薄膜層がアルミニウム、ニッケル、金、銅、銀、チタニウム、亜鉛からなるように構成されたものである。
【0015】
請求項8記載の発明は、請求項6から請求項7記載の発明の構成において、金属薄膜層における各微細なメッシュ状形状部位のメッシュ状パターンの線幅が0.01μm〜2μmであるように構成されたものである。
【0016】
請求項9記載の発明は、請求項6から請求項8記載の発明の構成において、金属薄膜層における各微細なメッシュ状形状部位のメッシュ状パターンの線間距離がメッシュ状パターンの線幅の5倍以上1000倍未満であるように構成されたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の透明導電性シートの製造方法は、透明導電性シートの製造方法において、基体シートと、基体シートの上に形成される金属薄膜層と、金属薄膜層に接するように金属薄膜層の上に形成されるレジスト層と、から少なくともなる金属薄膜シートに、ナノインプリント法を用いて、前記金属薄膜シートのレジスト層に微細な凹部を形成する第1工程と、前記微細な凹部の底面に残存するレジスト層のみをドライエッチングにより除去し、微細な凹部の底面に金属薄膜層を露出させる第2工程と、前記露出した金属薄膜層をウエットエッチングにより除去する第3工程と、を少なくとも備えることにより、前記レジスト層及び前記金属薄膜層を微細なメッシュ状形状に形成するように構成したので、安定した電磁波遮蔽性、透光性及び耐腐食性を有し、かつ高価な設備を必要とせずに高生産性を維持して金属薄膜層2を構成する金属を自由に選択できる透明導電性シートを容易に得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいてさらに詳細に説明する。なお、本発明の実施例に記載した部材や部分の寸法、材質、形状、その相対位置などは、とくに特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
まず、この発明に使用する金属薄膜シートの詳細について説明する。
【0020】
図1(a)は、この発明の製造方法に使用する金属薄膜シート100の断面図、図1(b)は、この発明の製造方法に使用する金属薄膜シート100の変形例の断面図である。図1(a)を参照して、金属薄膜シート100は、基体シート1と、基体シート1の上に形成される金属薄膜層2と、金属薄膜層2に接するようにして金属薄膜層2の上に形成されるレジスト層3とから構成されている。以下で、この金属薄膜シート100の各構成要素について説明する。
【0021】
基体シート1は、金属薄膜層2やレジスト層3等をシート上に支持するためのものであって、透明な合成樹脂等から構成される。基体シート1の材質としては、特に限定されず、離型性を有するものや密着性を有するものを使用することができる。離型性を有する場合の基体シート1の材質としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などの樹脂シート、アルミニウム箔、銅箔などの金属箔、グラシン紙、コート紙、セロハンなどのセルロース系シート、あるいは以上の各シートの複合体などが挙げられる。基体シート1が密着性を有する場合の材質としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂シート、またはポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等の熱硬化性シート、その他ガラス板等の透明部材、あるいは以上の各シートの複合体などが挙げられる。
【0022】
金属薄膜層2は、透明を表現するためのものであり、基体シート1の上に形成されている。金属薄膜層2の材質としては、表現したい透明色に応じて、アルミニウム、スズ、ニッケル、金、白金、クロム、鉄、銅、インジウム、銀、チタニウム、鉛、亜鉛などの金属、これらの合金または化合物などを挙げることができる。また、金属薄膜層2の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法などが挙げられる。
【0023】
レジスト層3は、金属薄膜層2と接するように、金属薄膜層2の上に形成されている。レジスト層3の材質としては、ビニル系樹脂、エポキシ樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適宜体質顔料などの添加剤や顔料または染料などの着色剤を含有するインキなどを挙げることができる。さらには、東レ・ダウコーニング株式会社製FOX(登録商標)−12 FLOWABLE OXIDE、FOX(登録商標)−14 FLOWABLE OXIDE、FOX(登録商標)−15 FLOWABLE OXIDE、FOX(登録商標)−16 FLOWABLE OXIDE及びこれら混合物等のゾルゲル系材料を用いることもできる。レジスト層3の形成方法としては、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの通常の印刷法のほか、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法、リップコート法などのコート法を採用することができる。
【0024】
必要に応じて、離型層4が基体シート1と金属薄膜層2の間に形成されていてもよい。離型層4は、転写後に基体シート1を剥離した際に、基体シート1とともに金属薄膜層2から離型される層である。離型層4の材質としては、メラミン樹脂系離型剤、シリコーン樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤、セルロース誘導体系離型剤、尿素樹脂系離型剤、ポリオレフィン樹脂系離型剤、パラフィン系離型剤およびこれらの複合型離型剤などが挙げられる。離型層4の形成方法としては、ロールコート法、スプレーコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法が挙げられる。
【0025】
必要に応じて、剥離層5が離型層4と金属薄膜層2との間に配置されていてもよい。剥離層5は、転写後または成形同時転写後、基体シート1を剥離した際に、基体シート1または離型層4から剥離して被転写物の最外面に配置される層である。剥離層5の材質としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ゴム系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂などのほか、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂などのコポリマーなどが挙げられる。剥離層5に硬度が必要な場合には、紫外線硬化性樹脂などの光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などの放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂などを選定して用いるとよい。剥離層5は、着色したものでも、未着色のものでもよい。剥離層5の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0026】
必要に応じて、図柄層6が、剥離層5と金属薄膜層2との間に形成されていてもよい。
【0027】
図1(b)を参照して、さらに図柄層6が、金属薄膜層2やレジスト層3とは独立して、基体シート1の上に形成されていてもよい。
【0028】
図柄層6は、金属薄膜層2による透明模様以外に、種々のパターンや文字などの装飾機能を有する層である。図柄層6の材質としては、ポリビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適切な色の顔料または染料を着色剤として含有する着色インキ等が挙げられる。図柄層6の形成方法としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法などの通常の印刷法などが挙げられる。特に、多色刷りや階調表現を行うには、オフセット印刷法やグラビア印刷法が適している。また、単色の場合には、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法を採用することもできる。
【0029】
必要に応じて、アンカー層7が、金属薄膜層2と基体シート1との間に形成されていてもよい。アンカー層7は、金属薄膜層2の基体シート1との密着性を向上させるための層である。アンカー層7の材質としては、ニ液性硬化ウレタン樹脂、熱硬化ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、塩素含有ゴム系樹脂、塩素含有ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系共重合体樹脂などが挙げられる。アンカー層7の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法が挙げられる。
【0030】
次に、この発明の透明導電性シート110の製造方法について説明する。
【0031】
図2は、この発明の透明導電性シート110の製造方法の概略工程を示した図である。図2(a)は、この発明に係る製造方法の第1工程で使用される金属薄膜シート100とスタンパーSが一体化したときの断面図である。図2(b)は、この発明に係る製造方法の第1工程でレジスト層3に微細な凹部8が形成された後の金属薄膜シート100の断面図である。図2(c)は、この発明に係る製造方法の第2工程で、微細な凹部8の底面に存在する残存レジスト層10を除去させたときの金属薄膜シート100の断面図である。図2(d)は、この発明に係る製造方法の第3工程で微細な凹部8の底面に存在する金属薄膜層2を除去させるときの金属薄膜シート100の断面図である。
【0032】
図2(a)を参照して、この発明の第1工程では、ナノインプリント法を用い、金属薄膜シート100のレジスト層3の一部分または全面に、微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9が形成される。そして、金属薄膜シート100のレジスト層3に微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9が形成された後、この発明の第2工程に移行する。
【0033】
ナノインプリント法は、微細な凸部を設けたスタンパーSをレジスト層3に押し付け、レジスト層3に微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9とを形成する加工方法である。ナノインプリント法の代表的な方式としては、熱ナノインプリント法、光ナノインプリント法、室温ナノインプリント法がある。以下で、熱ナノインプリント法、光ナノインプリント法、室温ナノインプリント法のそれぞれを用いてレジスト層3に微細な凹部8と、メッシュ形状の微細な凸部9とを形成する方法について説明する。
【0034】
熱ナノインプリント法を用い、レジスト層3に微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9を形成する場合、金属薄膜シート100のレジスト層3には、ビニル系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリエステルウレタン系樹脂、セルロースエステル系樹脂、アルキド樹脂などの樹脂をバインダーとし、適宜体質顔料などの添加剤や顔料または染料などの着色剤を含有するインキなどを用いるとよい。熱ナノインプリント法を用い、レジスト層3に微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9を形成するには、まず電子線などで描いた母型の金型からニッケル電鋳からなるスタンパーSを作製する。次にそれをレジスト層3の上に配置し、高温高圧下で押し付けた後、冷却しスタンパーSをレジスト層3から外すことによりレジスト層3に微細な凹部8が形成される。押し付ける際のスタンパーSの温度はレジスト層3の軟化点以上であって、熱分解温度未満であればよい。押し付ける際の金属薄膜シート100にかかる圧力は、通常数MPa〜数十MPaの範囲で設定するとよい。上記のような条件の下、数秒から数分間の間、スタンパーSをレジスト層3に押圧し、急速冷却または自然冷却して、レジスト層3の表面が軟化点以下になるまで放置することで、レジスト層3に微細な凹部8と、メッシュ形状の微細な凸部9を形成することができる。
【0035】
光ナノインプリント法を用い、レジスト層3に微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9を形成する場合、金属薄膜シート100のレジスト層3には、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの光硬化性樹脂を用いるとよい。光ナノインプリント法を用い、レジスト層3に微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9を形成するには、まず石英などの紫外光が透過できる透明なスタンパーSを作製する。このスタンパーSを紫外光で硬化する光硬化樹脂を用いたレジスト層3上に配置し、押し付けた後、紫外光を照射して硬化させ、スタンパーSをレジスト層3から外して、レジスト層3に微小な凹部5を形成するとよい。光ナノインプリント法は、押し付ける際に高温にする必要がなく、圧力も数MPa以下で可能なため寸法変化が少ないという長所や、スタンパーSが透明であるためスタンパーSを通して、レジスト層3などとスタンパーSとの位置あわせが容易にできるといった長所がある。
【0036】
室温ナノインプリント法を用い、レジスト層3に微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9を形成する場合、金属薄膜シート100のレジスト層3には、ゾルゲル系材料、例えば東レ・ダウコーニング株式会社製FOX(登録商標)−12 FLOWABLE OXIDE、FOX(登録商標)−14 FLOWABLE OXIDE、FOX(登録商標)−15 FLOWABLE OXIDE、FOX(登録商標)−16 FLOWABLE OXIDE及びこれら混合物等のゾルゲル系材料用いることができる。室温ナノインプリントを用い、レジスト層3に微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9を形成するには、室温でスタンパーSをレジスト層3に押し付けつけるだけでよい。室温のままでスタンパーSをレジスト層3に押し付けつけることにより、レジスト層3に微小な凹部5を形成することができる。押し付ける際の圧力は一般的に数MPa〜数十MPaに設定するとよい。室温ナノプリント法は、他の方法と比べて冷却工程が不要となるといった長所を有する。
【0037】
ナノインプリント法の各種方式でレジスト層3の全部または一部に形成されるメッシュ形状の微細な凸部9の幅は、それぞれ0.01μm〜2μmの範囲となるように形成することが好ましい。より好ましくは、0.05μm〜0.5μmの範囲である。この範囲で、メッシュ形状の微細な凸部9がレジスト層3の全部または一部に形成されることにより、透明性が高くて、電波遮蔽性を有する透明導電性シート110を作成することができるからである。すなわち、メッシュ形状の微細な凸部9の幅が2μmを超えると、このメッシュ形状が視認できるようになるという問題が生じるのに対し、メッシュ形状の微細な凸部9の幅が0.01μm未満になると、この発明で作成される透明導電性シート110の電磁波遮蔽性が低下するという問題が生じるためである。
【0038】
図2(b)を参照して、この発明の第2工程では、レジスト層3に形成された微細な凹部8について、その底面部分に存在する残存レジスト層10を除去し、レジスト層3に形成された微細な凹部8の底面に金属薄膜層2を完全に露出させる。微細な凹部8の底面に金属薄膜層2を完全に露出させたのち、次の工程に移行する。
【0039】
この第2工程では、レジスト層3に形成された微細な凹部8において、その底面に存在する残存レジスト層10が完全に除去される。残存レジスト層10の除去方法としては、ドライエッチング法とウエットエッチング法とが挙げられる。
【0040】
ドライエッチング法とは、反応性の気体やイオン、ラジカルによって材料をエッチングする方法である。ドライエッチング法には、反応ガス中に材料を晒す反応性ガスエッチング、プラズマによりガスをイオン化・ラジカル化してエッチングする反応性イオンエッチング、不活性イオンをビーム状にしてターゲットをエッチングするイオンビームエッチング、化学的に活性なイオンをビーム状にしてターゲットをエッチングする反応性イオンビームエッチング、固体材料に強いレーザー光を照射し,ターゲットを構成する元素が様々な形態(原子,分子,ラジカル,クラスター,液滴,およびそれらのイオンなど) で爆発的に放出させ、ターゲット表面をエッチングする反応性レーザービームエッチングがあるが、いずれの方法により、微細な凹部8の底面に存在する残存レジスト層10を除去してもよい。とりわけ反応性イオンエッチングの場合、六フッ化硫黄や四フッ化炭素、トリフルオロメタンなどといったフッ素系の気体をエッチングガスとして、反応性ガスエッチングの場合、ニフッ化キセノンをエッチングガスとして使用し、微細な凹部8の底面に存在する残存レジスト層10を取り除くとよい。
【0041】
ウエットエッチング法とは、金属との反応性が高い溶液によって、金属をエッチングする方法である。ウエットエッチング法には、金属エッチング液を満たした容器内に金属薄膜シート100を浸漬させ、露出した金属薄膜層2を侵食するディップ式、金属エッチング液を霧状にしてふき出させて金属薄膜シート100に散布するスプレー式及び金属薄膜シート100をスピナーとよばれる回転台に取り付け金属エッチング液を滴下するスピン式があるが、いずれの方法を用いて、レジスト層3で保護されていない金属薄膜層2部位を除去してもよい。これらの方式のうちディップ式が最も簡便に行えるのでより好ましい。金属エッチング液としては、弱酸性または弱アルカリ性の水溶液を用い、金属薄膜層2の材質や厚みによって、金属エッチング液の濃度、浸漬温度、浸漬時間を適宜選択するとよい。
【0042】
なお、微細な凹部8の底面に存在する残存レジスト層10を完全に除去するには異方性のあるエッチングが必要となるため、ドライエッチングがより好ましい。また、ドライエッチング法は、ウエットエッチング法のように、後処理工程がないので、簡便に行うこともできる点においても好ましい。
【0043】
図2(c)を参照して、この発明の第3工程では、微細な凹部8の底面に露出した金属薄膜層2をウエットエッチング法によって、金属薄膜シート100から除去する。
【0044】
図2(d)を参照して、上記第1工程から第3工程を経ることによって、レジスト層3と金属薄膜層2とが微細なメッシュ形状を有し、透明性と電波遮蔽性を備えた透明導電性シート110を得ることができる。
【0045】
なお、この発明で使用する金属薄膜シート100の金属薄膜層2の厚みは、0.01〜30μmであることが好ましい。すなわち、金属薄膜層2の厚さが、0.01μm未満であると金属薄膜層2の透明性が低下し、作成される透明導電性シート110の透明性が低下するのに対し、30μmを超えると、この発明の第2工程において、金属薄膜層2がドライエッチングされるのに時間がかかり、透明導電性シート110の生産性が低下するためである。
【0046】
さらに、金属薄膜シート100のレジスト層3の膜厚は、0.1〜10μmであることが好ましい。すなわち、レジスト層3の厚さが0.1μm未満になると耐薬品性が不足するので、この発明の第3工程において、金属薄膜シート100微細な凹部8以外の部分に形成された金属薄膜層2もエッチングされやすくなるといった問題が生じるのに対し、レジスト層3の厚さが10μmを超えると、透明導電性シート110を作成する際の生産性が低下するといった問題が生じるためである。
【0047】
次に、この発明の製造方法で得られた透明導電性シート110の詳細について説明する。なお、透明導電性シート110の構成要素について、金属薄膜シート100の構成要素と同一ものについては、金属薄膜シート100で説明したものと同様であるので、ここでは省略する。
【0048】
図3(a)は、この発明の透明導電性シート110の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のIII-III線における断面図である。図4(a)は、図3(a)のα部分における拡大図である。図4(b)は、図3(a)のα部分の変形例の拡大図である。
【0049】
図3(b)を参照して、この発明の透明導電性シート110における第1の実施の態様は、基本的に基体シート1と、微細なメッシュ形状を有する金属薄膜層2と、金属薄膜層2の微細なメッシュ形状に一致するような形状で金属薄膜層2の上に形成されるレジスト層3とを備え、必要に応じて離型層4と、剥離層5と、図柄層6と、接着層11を備えている。
【0050】
金属薄膜層2とレジスト層3とに形成される微細なメッシュ形状は、微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9とから構成されており、透明導電性シート110の全面にわたって形成されている。
【0051】
図4(a)、図4(b)を参照して、微細なメッシュ形状を構成する微細な凹部8とメッシュ形状の微細な凸部9のうち、微細な凹部8は線形状を有し、メッシュ形状の微細な凸部9は、多角形、円型、またはこれらを組合せた形状を有している。
【0052】
再び、図3(b)を参照して、この微細なメッシュ形状を構成するメッシュ形状の微細な凸部9の線幅Wは、0.01μm〜2μmの範囲にあることが好ましい。さらに、メッシュ形状の微細な凸部9の線幅Wと、メッシュ形状の微細な凸部9の線間距離Lとの関係は、メッシュ形状の微細な凸部9の線幅Wに対するメッシュ形状の微細な凸部9の線間距離Lの割合(以下、線間比率Xという)が、(式1)で表される範囲内にあることが好ましい。
(式1):5 ≦ X(=L/W)≦ 1000
この範囲に線幅Wと線間比率Xとがあれば、透明性が高く、導電性を有する透明導電性シート110を得ることができる。すなわち、メッシュ状パターン線幅Wが2μmを超えたり、メッシュ状パターン線間比率Xが5未満になると、透明導電性シート110の透光性が低下するといった問題が生じるのに対し、メッシュ状パターン線幅Wが0.01μm未満になったりメッシュ状パターン線間比率Xが1000を超えると、金属薄膜シート100の導電性が低下し、電磁波遮蔽性を有しにくくなるといった問題が生じるため、線幅Wと線間比率Xとは上記範囲にあることが好ましい。さらに、茶色い色をした銅薄膜や白銀色をした銀薄膜のように、金属薄膜層2が有色の金属光沢を呈する材質で形成されていても、線幅Wと線間比率Xとが、この範囲にあれば、目視では通常確認できないレベルであるため、事実上無色透明の層であるかのように見えるので同様の効果を有する透明導電性シート110を形成できる。
【0053】
さらに、このように金属薄膜層2とレジスト層3とを構成した結果、従来金属調の導電回路としての役割しか果たさなかった金属薄膜層2が、透明導電膜としての役割を果たすこともでき、外部のプリント基板と接続すれば、透明タッチスイッチや透明アンテナなどの用途に用いることもできる。
【0054】
必要に応じて、接着層11をメッシュ形状の微細な凸部9の上に全面的または部分的に形成してもよい。接着層11は、被加飾面に上記の各層を接着するものである。また接着層11は、接着させたい部分に形成する。すなわち、接着させたい部分が全面的なら、接着層11を全面的に形成する。接着させたい部分が部分的なら、接着層11を部分的に形成する。接着層11としては、被加飾の素材に適した感熱性あるいは感圧性の樹脂を適宜使用する。たとえば、被加飾の材質がアクリル系樹脂の場合はアクリル系樹脂を用いるとよい。また、被加飾の材質がポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン系ブレンド樹脂の場合は、これらの樹脂と親和性のあるアクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などを使用すればよい。さらに、被加飾の材質がポリプロピレン樹脂の場合は、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩素化エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、環化ゴム、クマロンインデン樹脂が使用可能である。接着層11の形成方法としては、グラビアコート法、ロールコート法、コンマコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法がある。
【0055】
図5(a)は、この発明の第2の実施の形態による透明導電性シート110の平面図である。図5(b)は、図5(a)で示した透明導電性シート110のIII-III線における断面図である。この実施の形態による透明導電性シート110の基本的な構成は、先の第1の実施の形態によるものと同様であるので、ここでは、相違点についてのみ説明する。
【0056】
図5(a)を参照して、この発明の第2の実施の形態の透明導電性シート110は、透明導電性シート110を構成する金属薄膜層2とレジスト層3の一部についてのみ、微細な凹部8と、メッシュ形状の微細な凸部9を有している。微細なメッシュ形状が形成されている。その結果、この透明導電性シート110は、外見上金属薄膜層2のベタ意匠とは全く異なる透明導電膜であるため、金属薄膜層2のベタ意匠が形成されていない部分は何もないように見えるにもかかわらず、電気性能的には金属薄膜層2のベタ意匠の部分と変わらない導電性および電磁波遮蔽性という機能をもった透明導電性部付き透明導電膜シート110を形成することができる。
【0057】
最後に、この発明の透明導電性シート110を用いて成形樹脂に装飾を行い、加飾成形品を得るための製造方法について説明する。
【0058】
図6は、この発明の製造方法における概略工程を示した断面図である。図6(a)は、透明導電性シート110を金型内に設置するときの断面図である。図6(b)は、透明導電性シート110を設置した金型内に、樹脂を射出するときの断面図である。図6(c)は、樹脂と透明導電性シート110とが一体化された加飾成形品を金型内から取出すときの断面図である。
【0059】
図6(a)を参照して、この発明における第1工程では、可動型12と固定型13とからなる成形用金型14内に透明導電性シート110を送り込む。その際、枚葉の透明導電性シート110を1枚づつ送り込んでもよいし、長尺の透明導電性シート110の必要部分を間欠的に送り込んでもよい。長尺の透明導電性シート110を使用する場合、位置決め機構を有する送り装置を使用して、透明導電性シート110のパターンと成形用金型14との見当が一致するようにするとよい。また、透明導電性シート110を間欠的に送り込む際に、透明導電性シート110の位置をセンサーで検出した後に透明導電性シート110を可動型12と固定型13とで固定するようにすれば、常に同じ位置で透明導電性シート110を固定することができ、パターンの位置ずれが生じないので便利である。
【0060】
図6(b)を参照して、この発明における第2工程では、成形用金型14を閉じた後、ゲートから溶融樹脂15を成形用金型14内に射出充満させ、被加飾を形成するのと同時にその面に透明導電膜シート110を接着させる。
【0061】
図6(c)を参照して、この発明における第3工程では、被加飾物である加飾成形品を冷却した後、成形用金型14を開いて加飾成形品を取り出す。
【0062】
なお、離型性を有する基体シート1から構成される透明導電性シート110を用いて加飾成形品を作成する場合、上記第3工程において、加飾成形品を金型内から取出すと共に、加飾成形品から基体シート1を剥離するか、若しくは加飾成形品を金型内から取出したのちに、基体シート1を加飾成形品から剥離することにより、転写成形品を得ることができる。
【0063】
また、透明導電性シート110を用い、上記以外の方法を用いて被転写物面に装飾を行う方法について説明する。
【0064】
まず、被転写物面に、透明導電性シート110の接着層11を密着させる。次に、シリコンラバーなどの耐熱ゴム状弾性体を備えたロール転写機、アップダウン転写機などの転写機を用い、温度80〜260℃程度、圧力490〜1960Pa程度の条件に設定した耐熱ゴム状弾性体を介して透明導電性シート110の基体シート1側から熱と圧力とを加える。こうすることにより、接着層11が被転写物表面に接着する。最後に、冷却後に基体シート1を剥がすと、基体シート1と剥離層5との境界面で剥離が起こり、転写が完了する。
【0065】
被転写物としては、樹脂成形品など各種材質からなるものを用いることができる。被転写物は、透明、半透明、不透明のいずれでもよい。また、被転写物は、着色されていても、着色されていなくてもよい。樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、AN樹脂などの汎用樹脂を挙げることができる。また、ポリフェニレンオキシド・ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂などの汎用エンジニアリング樹脂やポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、ポリアリル系耐熱樹脂などのスーパーエンジニアリング樹脂を使用することもできる。さらに、ガラス繊維や無機フィラーなどの補強材を添加した複合樹脂も使用できる。
【実施例1】
【0066】
以下の実施例および比較例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0067】
基体シートとして厚さ38μmのポリエステル樹脂フィルムを用い、基体シート上に、メラミン樹脂系の離型層、アクリル樹脂系の剥離層、ウレタン樹脂系の金属蒸着前アンカー層をグラビア印刷により順次形成した後、真空蒸着法により厚さ0.06μmのアルミニウムからなる金属蒸着層を形成し、金属蒸着層の一部に厚さ0.2μmのビニル系樹脂からなるレジスト層をグラビア印刷により形成し、金属薄膜シートを得た。次いで幅が0.1μmでピッチが0.7μmの正方形の格子パターンが厚さ0.18μmで凹状に形成されたニッケル電鋳からなるナノインプリント金型でもって100℃の加温下で5MPaの圧力で押圧し、水冷して5分間放置し、上記金型を離型したところレジスト層表面に上記格子パターンからなる微細な凸部が形成された。
【0068】
その後、ドライエッチングによって微細な凹部に残った残存レジスト層を除去した。次いで0.2%水酸化カリウム水溶液からなる金属エッチング液に2秒間浸すと、金属薄膜層の上にレジスト層が形成されていない部分のみが除去され、金属薄膜層の一部分が線幅0.1μmでピッチが0.7μmの正方形の格子パターンからなる微細形状に形成された透明導電性シートが得られた。次いで得られた透明導電性シートにアクリル樹脂からなる接着層を透明導電性シートの全面にリバースコート法により形成した。最後に接着層が全面に形成された透明導電性シートを用いて成形同時転写法により無色透明アクリル樹脂成形品の表面に転写して、加飾成形品を得た。
【0069】
得られた加飾成形品は、外見上は無色透明のアクリル成形品と同一であるが、微細形状に形成された金属薄膜部分が充分な電磁波遮蔽性を有するものであった。その結果、得られた加飾成形品は有害な電磁波を遮断して電子部品を妨害電波による誤動作から保護することができた。また加飾成形品の金属薄膜層の一部分を外部電極と接続することで、透明なアンテナとして使用することもできるものであった。
【実施例2】
【0070】
基体シートとして厚さ100μmのアクリル樹脂フィルムを用い、基体シート上にビニル樹脂系の図柄層、ウレタン樹脂系の金属蒸着前アンカー層をグラビア印刷により順次形成した後、無電解メッキ法により厚さ0.1μmの銅からなる金属メッキ層を形成した。そして、金属メッキ層の一部に厚さ0.1μmのアクリル系樹脂からなるレジスト層をグラビア印刷により形成し、次いで幅が0.05μmで一辺が0.4μmの正六角形のハニカムパターンが厚さ0.08μmで凹状に形成されたニッケル電鋳からなるナノインプリント金型でもって120℃の加温下で10MPaの圧力で押圧し、水冷して10分間放置し、上記金型を離型したところレジスト層表面に上記ハニカムパターンからなる凸部が形成された。
【0071】
次いでドライエッチングによって微細な凹部に残った残存レジスト層を除去した後、0.3%塩化鉄水溶液からなる金属エッチング液に2秒間浸すと、金属薄膜層のレジスト層が除去された箇所のみが除去され、金属薄膜層の一部分が一辺が0.4μmの正六角形のハニカムパターンからなる微細形状に形成された透明導電性シートが得られた。次いで得られた透明導電性シートにビニル樹脂からなる接着層を透明導電性シートの全面にグラビア印刷法により形成した。最後に接着層が全面に形成された透明導電性シートを用いて成形同時インサート法により無色透明アクリル樹脂成形品の表面に接着して、加飾成形品を得た。
【0072】
得られた加飾成形品は、外見上は無色透明のアクリル成形品と同一であるが、微細形状に形成された金属薄膜部分が充分な電磁波遮蔽性を有するものであった。その結果、得られた加飾成形品は有害な電磁波を遮断して電子部品を妨害電波による誤動作から保護することができた。また加飾成形品の金属薄膜層の一部分を外部電極と接続することで、静電容量スイッチのパターンとして機能させることもできた。
【0073】
(比較例1、比較例2)実施例1、実施例2の金属薄膜層を従来の酸化スズによるスパッタリング法によって形成する以外は、実施例1または実施例2と同様にして比較例1、比較例2を実施した。また、実施例1の格子パターンまたは実施例2のハニカムパターンの凸部を、従来のフォトリソグラフィーによって形成する以外は、実施例1または実施例2と同様にして比較例1、比較例2を実施した。
【0074】
上記いずれの比較例も、導電性が低く電磁波遮蔽性に欠けるものであった。また、酸化スズ自体の導電抵抗が高いため僅かの厚みのバラツキによって表面抵抗値が変化し、製造ロットや製品の各箇所によって導電性や電磁波遮蔽性にバラツキが生じ、本発明の透明導電性シートが貼付された成形品に比べて電気的特性が劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、携帯電話などの通信機器、電子情報機器、液晶ディスプレイ、太陽電池など、各種成形品において好適に用いることができ、産業上有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】金属薄膜シートの一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の透明導電性シートに係る製造方法の一実施例を示す断面図である。
【図3】本発明の透明導電性シートの一実施例を示す平面図と断面図である。
【図4】本発明の透明導電性シートの一実施例を示す拡大図である。
【図5】本発明の透明導電性シートの一実施例を示す平面図と断面図である。
【図6】加飾成形品の製造方法に係る一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 基体シート
2 金属薄膜層
3 レジスト層
4 離型層
5 剥離層
6 図柄層
7 アンカー層
8 微細な凹部
9 微細な凸部
10 残存レジスト層
11 接着層
12 可動型
13 固定型
14 成形用金型
15 成形樹脂
100 金属薄膜シート
110 透明導電性シート
S スタンパー
W 線幅
L 線間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性シートの製造方法において、基体シートと、基体シートの上に形成される金属薄膜層と、金属薄膜層に接し、金属薄膜層の上に形成されるレジスト層とから少なくともなる金属薄膜シートに、ナノインプリント法を用いて、前記金属薄膜シートのレジスト層に微細な凹部を形成する第1工程と、前記微細な凹部の底面に残存するレジスト層のみをドライエッチングにより除去し、微細な凹部の底面に金属薄膜層を露出させる第2工程と、前記露出した金属薄膜層をウエットエッチングにより除去する第3工程と、を少なくとも備えることにより、前記レジスト層及び前記金属薄膜層を微細なメッシュ状形状に形成することを特徴とする透明導電性シートの製造方法。
【請求項2】
前記金属薄膜層がアルミニウム、ニッケル、金、銅、銀、チタニウム、亜鉛のいずれかからなる請求項1に記載の透明導電性シートの製造方法。
【請求項3】
前記金属薄膜層の厚さが0.01μm〜30μmである請求項1から請求項2にいずれかに記載の透明導電性シートの製造方法。
【請求項4】
前記金属薄膜層における各微細なメッシュ状形状部位のメッシュ状パターンの線幅が0.01μm〜2μmである請求項1から請求項3のいずれかに記載の透明導電性シートの製造方法。
【請求項5】
前記金属薄膜層における各微細なメッシュ状形状部位のメッシュ状パターンの線間距離がメッシュ状パターンの線幅の5倍以上1000倍未満である請求項1から請求項4にいずれかに記載の方法で製造した透明導電性シートの製造方法。
【請求項6】
基体シート上の一部または全面に微細なメッシュ状形状を有する金属薄膜層が形成され、その上に少なくともレジスト層が前記金属薄膜層のメッシュ状形状に一致するような形状で表面に形成されたことを特徴とする透明導電性シート。
【請求項7】
金属薄膜層がアルミニウム、ニッケル、金、銅、銀、チタニウム、亜鉛からなる請求項6に記載の透明導電性シート。
【請求項8】
金属薄膜層における各微細なメッシュ状形状部位のメッシュ状パターンの線幅が0.01μm〜2μmである請求項6から請求項7にいずれかに記載の透明導電性シート。
【請求項9】
金属薄膜層における各微細なメッシュ状形状部位のメッシュ状パターンの線間距離がメッシュ状パターンの線幅の5倍以上1000倍未満である請求項6から請求項8にいずれかに記載の方法で製造した透明導電性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−153698(P2010−153698A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332189(P2008−332189)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】