説明

透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液及び透明導電パターン膜とその製造方法

【課題】本発明は、透明性と導電性を兼ね備えた微細なパターンを有するITO等の透明導電パターン膜とその製造方法、及びそのITO等の透明導電パターン膜を低コストかつ簡便に製造できる透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を提供する。
【解決手段】 (A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物を(F)溶剤に溶解させた後、熱分解性又は燃焼性を有する(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤からなる感光性樹脂成分を加えた透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用い、この塗布液を基材上に塗布、乾燥し、露光、現像を行って微細なパターンを形成し、350℃以上の温度で焼成して透明導電パターン膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液及び該塗布液を用いた透明導電パターン膜とその製造方法に関するものである。さらに詳しくは、ガラスやセラミックス等の耐熱基材上に、透明性と導電性を兼ね備えた微細な透明導電パターン膜を形成することができる塗布液及び該塗布液を用いて形成された透明導電パターン膜とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、エレクトロルミネッセンス、プラズマディスプレイ等の表示素子透明電極、タッチパネルや太陽電池等の透明電極、熱線反射、電磁波シールド、帯電防止、防曇等の機能性コーティング等に用いられる透明導電膜の形成材料としては、導電性等の観点から、錫ドープ酸化インジウム(以下、「ITO」と表記する場合がある)が広く用いられている。
【0003】
かかるITO透明導電膜の製造方法としては、一般に、真空蒸着法、スパッタリング法、化学蒸着法等の物理的手法が広く採用されており、これらの方法によれば、透明性と導電性に優れた均一なITO透明導電膜を基材上に形成することができるという利点がある。
しかし、これに使用する成膜形成装置は真空容器をベースとするため非常に高価であり、また基材成膜毎に製造装置内の成分ガス圧を精密に制御しなければならないため、製造コストと量産性に問題があった。
【0004】
このため、上記問題を解決する製造方法として、インジウム化合物と錫化合物を溶剤に溶解させた透明導電膜形成用塗布液を用いて基材上に塗布する方法(以下、「塗布法」と表記する場合がある)が提案されている。この方法では、透明導電膜形成用塗布液の基材上への塗布、乾燥、焼成という簡単な製造工程によりITO透明導電膜が形成されるという利点がある。
【0005】
また、上記塗布法に使用される塗布液は、インジウム化合物と錫化合物を含む塗布液として従来から種々の塗布液が開発されており、例えば特許文献1には、ハロゲンイオンまたはカルボキシル基を含む硝酸インジウムとアルキル硝酸錫の混合液が、特許文献2には、アルコキシル基等を含む有機インジウム化合物と有機錫化合物の混合物が、特許文献3には、硝酸インジウムと有機錫化合物の混合物が、特許文献4には、硝酸インジウムと硝酸錫等の混合物が、特許文献5には、ジカルボン酸硝酸インジウム等の有機硝酸インジウムとアルキル硝酸錫等の有機硝酸錫の混合物が、特許文献6には、アセチルアセトンを配位した有機インジウム錯体と錫錯体からなる混合液が、特許文献7にも同様な有機化合物混合物がそれぞれ開示されている。
しかし、これらの特許文献に見られる従来の塗布液の多くはインジウムや錫の硝酸塩、ハロゲン化物からなる有機または無機化合物、あるいは金属アルコキシドなどの有機金属化合物等が用いられていることから、焼成時において窒素酸化物や塩素などの腐食性ガスが発生するため、設備腐食や環境汚染等の問題があった。
また、金属アルコキシドを用いた塗布液では、原料が加水分解し易いため、塗布液の安定性に問題があった。
更に、有機金属化合物を用いた塗布液の多くは、基材に対する濡れ性が悪く、不均一膜を形成するといった問題もあった。
【0006】
このため、これらの問題点を解消すべく、例えば特許文献8には、アセチルアセトンインジウム、アセチルアセトン錫、ヒドロキシプロピルセルロースをアルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールと二塩基酸エステル及び/又は酢酸ベンジルに溶解させた透明導電膜形成用塗布液が開示されている。
この塗布液は、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫の混合溶液にヒドロキシプロピルセルロースを含有させることによって基材に対する濡れ性を改善すると同時に、粘性剤であるヒドロキシプロピルセルロースの含有量によって塗布液の粘度を調整し、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷、ワイヤーバーコート等の各種塗布法の採用を可能にしている。
【0007】
また、例えば特許文献9には、スピンコート用の改良塗布液として、有機インジウム化合物(アセチルアセトンインジウム,オクチル酸インジウム)と、有機錫(アセチルアセトン錫,オクチル酸錫)と、有機溶剤とを含み、その有機溶剤にアルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液、アルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールを溶解したアセチルアセトン溶液をアルコールで希釈した液を用いる透明導電膜形成用塗布液も開示されている。
この塗布液は、低粘度であり、スピンコートの他、スプレーコート、ディップコート、スクリーン印刷等にも使用可能であるとされている。
【0008】
しかし、かかる塗布液を用いて任意の透明導電パターン膜を形成する際にあっては、主として(1)塗布液の塗布を例えばスクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等のパターン印刷で行う方法や、(2)全面に形成された透明導電膜に対しフォトレジストを用いウェットエッチングするフォトリソグラフィー法等が用いられるが、前者(1)の方法は、塗布の段階で任意パターンを形成する方法であり、低コストかつ簡便に透明導電パターン膜が作製できるが、数十ミクロン以下の微細パターンの作製が困難であるという問題があり、また、後者(2)の方法は、基材全面に透明導電膜を形成してからフォトレジストを用いて任意パターンを形成する方法であり、微細でかつシャープな輪郭を有する透明導電パターン膜を作製することができるが、フォトレジスト塗布・露光・現像、エッチング、レジスト除去といった煩雑で手間のかかる工程を要するため、製造コストに問題があった。
【0009】
そこで、特許文献10には、インジウム化合物と、錫化合物と、W、Cr、Moのうち少なくとも1種以上を含む化合物と、感光性樹脂とを含有する塗布液を基材に塗布、乾燥、露光、現像、焼成して透明導電パターン膜を形成する方法が提案されている。しかしながら、インジウム化合物と、錫化合物として硝酸塩等を用いているため、焼成時にNOxなどの腐食性ガスが発生し焼成炉や環境を汚染する問題があり、更には、上記塗布液で得られる塗膜は耐水性が乏しく、一般的なアルカリ水溶液に浸食されるため、有機溶剤現像を行うことが必要で、作業安全性にも問題があった。
また、特許文献11には、インジウムと錫を含む化合物と酢酸等の有機酸から生成したヒドロキシ化合物に有機配位子が配位したキレート錯体に対し、市販のポジ型、ネガ型の感光性樹脂液を配合して透明導電膜形成用感光性塗布液を得ており、この塗布液を基材に塗布、乾燥、露光、現像、焼成して透明導電パターン膜を形成する方法が提案されている。この場合、市販の感光性樹脂液を用いているため、感光性成分は、有機インジウムや錫化合物との配合を前提として最適化されてはおらず、アルカリ水溶液による現像が可能であるものの、現像性やフォトパターニングのプロセスマージンが十分とは言えない問題がある。
【特許文献1】特開昭57−138708号公報
【特許文献2】特開昭61−26679号公報
【特許文献3】特開平4−255768号公報
【特許文献4】特開昭57−36714号公報
【特許文献5】特開昭57−212268号公報
【特許文献6】特公昭63−25448号公報
【特許文献7】特公昭63−19046号公報
【特許文献8】特開平6−203658号公報
【特許文献9】特開平6−325637号公報
【特許文献10】特開平11−278869号公報
【特許文献11】特開2001−143526号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、かかる従来の技術を解決するためになされたものであり、透明性と導電性を兼ね備え、且つ微細なパターン形成することが可能なITO等の透明導電パターン膜、及びそのITO等の透明導電パターン膜を低コストかつ簡便に形成できる透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液及び該塗布液を用いた透明導電パターン膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物を(F)溶剤に溶解させた溶液に対し、更に(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤を含有させた透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を加えることによって、フォトレジスト層を別途設けることなく、乾燥膜に対し、直接、露光・現像によるパターニングを行うことが可能となり、また、この塗布液を基材に塗布、乾燥、露光、現像、焼成して得られるITO透明導電パターン膜は、透明性と導電性が良好であると共に、微細なパターンを形成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、上記の目的を達成するため、本発明が提供する透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、その請求項1に係る発明は、
(A)有機インジウム化合物、(B)ドーパント用有機金属化合物、(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤、(F)溶剤を含有する透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液であって、前記(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の合計含有量が1〜30重量%であり、前記(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーと(D)アルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量が該(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の合計含有量100重量部に対し30〜150重量部であり、且つ、該アルカリ可溶成分が熱分解性又は燃焼性を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の合計含有量が5〜20重量%であることを特徴とするものである。
【0014】
更に、請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(A)有機インジウム化合物/(B)ドーパント用有機金属化合物のモル比=99.5/0.5〜35/65であることを特徴とするものである。
【0015】
更にまた、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(A)有機インジウム化合物が、アセチルアセトンインジウムであることを特徴とするものである。
【0016】
また、請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(B)ドーパント用有機金属化合物が、有機錫化合物、有機チタン化合物、有機亜鉛化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タングステン化合物、有機アルミニウム化合物のいずれか一つ以上であることを特徴とするものである。
【0017】
更に、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記有機錫化合物がアセチルアセトン錫であることを特徴するものである。
【0018】
更にまた、請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーは少なくとも3官能以上のアルカリ可溶性多官能モノマーを含有し、前記アルカリ可溶成分における重量平均官能基数(アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、各アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーはモノマー分子当りの架橋可能な官能基数を用いて計算した値)が2.5以上で、かつアルカリ可溶成分の重量平均酸価が50mg−KOH/g以上であることを特徴とするものである。
【0019】
また、請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(D)アルカリ可溶性樹脂の平均酸価が50mg−KOH/g以上であることを特徴とするものである。
【0020】
更に、請求項9に係る発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、および/または(D)アルカリ可溶性樹脂がアクリル系および/またはメタアクリル系であることを特徴とするものである。
【0021】
更にまた、請求項10に係る発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(E)光重合開始剤が、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンであることを特徴とするものである。
【0022】
また、請求項11に係る発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(F)溶剤が、少なくともアルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールと二塩基酸エステルを含有することを特徴とするものである。
【0023】
更に、請求項12に係る発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、(G)増感剤が更に含有されていることを特徴するものである。
【0024】
更にまた、請求項13に係る発明は、請求項12に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、前記(G)増感剤がチオキサントン系増感剤であることを特徴とするものである。
【0025】
また、請求項14に係る発明は、請求項1〜13のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液において、(H)セルロース系樹脂が更に含有され、その含有量が3重量%以下であることを特徴とするものである。
【0026】
更に、本発明は、請求項1〜14のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用いた透明導電膜パターンの製造方法を提供し、その請求項15に係わる発明は、前記透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を耐熱基材上に塗布、乾燥した後、露光、現像を行って微細パターンを形成し、次いで350℃以上の温度で焼成することを特徴とするものである。
【0027】
また、請求項16に係る発明は、請求項15に記載の透明導電パターン膜の製造方法において、前記現像をアルカリ水溶液で行うことを特徴とするものである。
【0028】
更に、本発明は、請求項17に係る発明として、請求項15又は16に記載の透明導電パターン膜の製造方法で得られた透明導電パターン膜を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液によれば、紫外線等の光照射によってその溶解性が大きく変化する成分として、(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤を含有していることから、別途フォトレジスト層を設けることなく、直接、露光、現像を行うことによって、微細なパターニングをすることが可能であり、しかも、上記塗布液を耐熱基材上に塗布、乾燥、露光、現像、焼成して得られる上記透明導電パターン膜は、透明性と導電性が良好であり、ディスプレイ、タッチパネル、太陽電池等において、透明性と導電性を兼ね備えた微細なパターンを要する透明電極に適用できるので、工業的に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物を(F)溶剤に溶解させた溶液に対し、感光性樹脂成分として、(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤を添加しているが、特に、(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーを配合することで、得られる透明導電パターン膜において、良好なフォトパターニング性と優れた導電性を両立できることを見出してなされている。
上記感光性樹脂成分は、感光性機能に加え、更に、熱分解性又は燃焼性を有し、かつ、前記(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物を含有する(F)溶剤と良く相溶する必要があり、用いる溶剤を含め適切に選択する必要がある。
したがって、本発明に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液をガラス等の基材上に塗布、乾燥して得られる乾燥膜は、既に熱分解性又は燃焼性を有するネガ型の感光性樹脂成分を含有していることとなる。
【0031】
上記ネガ型の感光性樹脂成分を含有する塗布液を用いて得られる乾燥膜は現像液に対して溶解性を有するが、紫外線等の光線を照射すると、照射された部分が硬化して現像液に対して溶解しにくくなる。すなわち、乾燥膜の上に微細なパターンを有するフォトマスクを設置して光照射(露光)を行った後、現像液に浸漬して、光照射されない部分を溶解させること(現像)によって、微細なパターンを形成することが可能となる。このため、従来のエッチング等による透明導電膜のパターン形成する際に用いられるエッチング用フォトレジスト層を別途設ける必要がない。
上記感光性樹脂成分としては、作業環境や環境汚染低減という面からすると、有機溶剤現像タイプよりも、アルカリ水溶液現像タイプが好ましい。
【0032】
ここで、例えば、ポジ型感光性樹脂成分を用いた場合でも、ネガ型とは逆に、紫外線等の光線が照射された部分を溶解させることによって、微細なパターンを形成することが可能である。一般に、ポジ型感光性樹脂は、良好な解像能力およびパターン転写特性を有していることが知られており、例えば、アルカリ現像型のポジ型感光性樹脂成分の代表的なものとして、ナフトキノンジアジド−ノボラック樹脂系が挙げられる。
【0033】
本発明の(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーは、単官能、または多官能のラジカル重合性モノマーであって、例えば分子内にカルボキシル基(−COOH)を有するアクリレート系、又はメタアクリレート系モノマーである。アクリレート系又はメタアクリレート系モノマーは、燃焼性又は熱分解性が優れている点で好ましい。
単官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート(酸価=160〜250mg−KOH/g)、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(酸価=190〜220mg−KOH/g)、アクリル酸ダイマー(酸価=200〜400mg−KOH/g)、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(酸価=200mg−KOH/g)、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸(酸価=191mg−KOH/g)、2−メタクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸(酸価=188mg−KOH/g)、2−アクリロイロキシエチルコハク酸(酸価=260mg−KOH/g、燃焼又は熱分解温度=約460℃、大気中)、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸(酸価=242mg−KOH/g、燃焼又は熱分解温度=約440℃、大気中)、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸(酸価=197mg−KOH/g)等が挙げられる。
中でも、比較的酸価が高く、かつ燃焼又は熱分解温度が低い、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(燃焼又は熱分解温度=約220℃、大気中)、アクリル酸ダイマー(燃焼又は熱分解温度=約210℃、大気中)が好ましい。
多官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、3〜4官能のラジカル重合性モノマー(ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート[PETA]骨格にカルボン酸基を導入したもの(酸価=80〜120mg−KOH/g)、5〜6官能のラジカル重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]骨格にカルボン酸基を導入したもの(酸価=25〜70mg−KOH/g)等が挙げられる。具体的な名称は記載していないが、必要に応じ、2官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーを用いても良い。
【0034】
前記(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーは、少なくとも3官能以上のアルカリ可溶性多官能モノマーを含有し、前記アルカリ可溶成分における重量平均官能基数(アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、各アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーはモノマー分子当りの架橋可能な官能基数を用いて計算した値)が2.5以上で、かつアルカリ可溶成分の重量平均酸価が50mg−KOH/g以上であることを特徴とする。
アルカリ可溶成分における重量平均官能基数が2.5未満だと、露光工程で紫外線等が照射された塗膜部分(パターンとして残る部分)は硬化するものの、架橋密度が低くなるため、現像液に対する不溶性が不十分となり、現像後に残存する膜厚が薄くなる(膜減りが大きくなる)ため、好ましくない。
アルカリ可溶成分の重量平均酸価が50mg−KOH/g未満だと、乾燥塗膜のアルカリ現像液への溶解性が低下するため、露光工程で紫外線等が照射されない塗膜部分(パターンとして残らない部分)が完全に溶解せず、一部残渣を生じる場合があり好ましくない。
【0035】
前記アルカリ可溶性成分に、アルカリ可溶性を有しない通常のラジカル重合性モノマーを加えることも可能である。この場合でも、前述と同様の理由から、アルカリ可溶成分とアルカリ可溶性を有しないラジカル重合性モノマーの混合物において、重量平均官能基数が2.5以上で、かつ重量平均酸価が50mg−KOH/g以上であることを要する。
前記アルカリ可溶性を有しない通常のラジカル重合性モノマーは、少なくとも1つの付加重合可能なエチレン性二重結合を有するモノマーであり、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の単官能の(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0036】
本発明の(D)アルカリ可溶性樹脂は、アルカリ可溶性で、かつ燃焼性又は熱分解性を有すれば特に限定されないが、有機溶剤への溶解性、入手性、コスト等の観点で選ばれるのが好ましい。
前記(D)アルカリ可溶性樹脂は、酸価=50mg−KOH/g以上であることが好ましい。50mg−KOH/g未満だと、前述と同様に、露光工程で紫外線等が照射されない塗膜部分が完全に溶解せず、一部残渣を生じ易くなるため好ましくない。
【0037】
前記(D)アルカリ可溶性樹脂は、例えばカルボシキル基とエチレン性2重結合を有する樹脂であって、例えばカルボン酸変性された(メタ)アクリル系樹脂が好ましいものとして挙げることができ、より具体的には、それぞれカルボン酸変性されたメチル(メタ)アクリレート系、エチル(メタ)アクリレート系、ブチル(メタ)アクリレート系、エチルヘキシル(メタ)アクリレート系、ラウリル(メタ)アクリレート系、イソデシル(メタ)アクリレート系、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート系を挙げることができるが、これらに限るものではない。熱分解性又は燃焼性という観点からすると、熱分解性又は燃焼しやすいメタアクリレート系の方がアクリレート系よりも好ましい。
【0038】
上記以外の(D)アルカリ可溶性樹脂としては、水酸基を有するポリマーに酸無水物を付加させたもの等や、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、ポリ(2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、側鎖にカルボン酸を有する酸性セルロース誘導体等が挙げられる。
【0039】
また、本発明の(D)アルカリ可溶性樹脂は、架橋効率を向上させるために、重合性基を側鎖に有してもよく、例えば、アリル基、(メタ)アクリル基、アリルオキシアルキル基等を側鎖に含有する樹脂、(メタ)クリロイルオキシエチルイソシアネートが付加重合されたカルボン酸変性セルロース系樹脂(特開2000−298336京都エレックス(株))等も有用である。上述の重合性基を含有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、KSレジスト−106(大阪有機化学工業(株)製)、サイクロマーPシリーズ(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0040】
前記(D)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は1000〜200000が好ましく、2000〜100000がより好ましく、5000〜50000が特に好ましい。
該(D)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が1000未満では、透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液で形成される塗膜の強度や、基材との密着力、が低下する可能性があるため好ましくなく、また、該(D)アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量が200000を超えると、露光・現像で得られるパターンの解像度が低下する可能性があるため好ましくないからである。
【0041】
本発明の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液に、更に(H)セルロース系樹脂をその含有量が3重量%以下、好ましくは2重量%以下、更に好ましくは1重量%以下となるように含有させても良い。(H)セルロース系樹脂の添加により、塗布性の改善や膜の均一化(膜厚の均一化)、熱分解時の膜の緻密化促進等の効果が期待できるが、その含有量が3重量%を超えると、(H)セルロース系樹脂が熱分解で生成される導電性酸化物微粒子の緻密化を逆に阻害して膜強度や膜導電性を悪化させるため好ましくない。(H)セルロース系樹脂には、熱分解性の各種セルロース樹脂が適用でき、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース 、ヒドロキシエチルセルロース 、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース 、カルボキシエチルセルロース 、カルボキシエチルメチルセルロース、ニトロセルロース等が挙げられるが、これらに限定されない。最終的に得られる透明導電膜の透明性や導電性の観点からするとヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。ニトロセルロースは、熱分解性は優れているが、塗布膜の焼成工程でNOxの発生があり焼成炉の劣化や排ガス処理に問題を生じる場合があるため、状況に応じて適宜選択する必要がある。
【0042】
本発明で用いる(E)光重合開始剤は、上記ラジカル重合性モノマーを重合させ得るものであれば特に限定されず、公知の光重合開始剤を用いることができるが、大気中や不活性雰囲気中等の各種雰囲気下での特性(開始効率、吸収波長等)、燃焼性又は熱分解性、入手性、コスト等の観点で選ばれるのが好ましい。
上記光重合開始剤としては、例えばベンゾフェノン、N,N,N’,N’−テトラメチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、N,N,N’,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等の芳香族ケトン系、2−エチルチオキサントン、2−プロピルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系、2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンタラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン系、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル系、ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン系、ベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,4−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール二量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体系、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール系、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9’−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体、N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物などが挙げられる。酸素を含む雰囲気下での露光では、酸素による架橋阻害作用が生じて塗布膜表面において架橋(重合)反応が阻害され、パターン形状不良や膜減り(現像時の膜表面溶解による膜厚減少)を生じるため、例えば大気中で露光する場合には、上記阻害作用を受けにくい2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンを用いることが好ましい。
【0043】
(E)光重合開始剤の配合量については、露光を行う雰囲気により左右されるが、感光性樹脂成分としての(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤の合計量100重量部に対して1〜30重量部であることが好ましい。中性雰囲気や不活性雰囲気で露光を行う場合は、酸素による架橋阻害作用がないため少量の配合で良く、例えば、感光性樹脂成分の合計量100重量部に対し1〜10重量部程度でも良いが、大気中等の酸素を含む雰囲気更で露光を行う場合は、感光性樹脂成分の合計量100重量部に対し、5〜30重量部、好ましく10〜20重量部程度まで配合量を多くすることが好ましい。(E)光重合開始剤の配合量は、少ない方が得られる透明導電パターン膜の導電性や膜強度は良好であるが、少なすぎると感度が著しく低下して上述のパターン形状不良や膜減りが生ずる場合があるからである。
【0044】
必要に応じて、上記(E)光重合開始剤と併用することで架橋を促進させる作用を有する(G)増感剤を用いてもよく、上述の酸素による架橋阻害作用を一層低減することができる。例えば、上記光重合開始剤の2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンにおいては、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサントン系化合物が、上記ベンゾフェノンやチオキサントン系等の水素引き抜き型の光重合開始剤においては、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエート等が優れた増感作用を発揮する。
上記(G)増感剤の配合量については、場合によっては配合する必要がないため、特に制限はないが、通常(E)光重合開始剤100重量部に対して10〜50重量部である。(E)光重合開始剤の配合量と同様に、少ない方が得られる透明導電パターン膜の導電性や膜強度は良好であるが、少なすぎると、場合によっては感度が著しく低下してパターン形状不良や膜減り生ずる場合があるからである。
【0045】
本発明の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液には、必要に応じて、各種添加物、例えば、塗布性や成膜性改善のための各種界面活性剤(シリコーン系やフッ素系等)、密着促進剤、保存安定性向上のための微量の重合防止剤、酸化防止剤、ハレーション防止や着色用の各種色素や紫外線吸収剤等を配合することができる。
上記重合防止剤には、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が挙げられる。
【0046】
本発明の(A)有機インジウム化合物には、蟻酸インジウム、酢酸インジウム、アセチルアセトンインジウム、2−エチルヘキサン酸インジウム(=オクチル酸インジウム)等が挙げられるが、中でもアセチルアセトンインジウム [正式名称:トリス(アセチルアセトナト)インジウム、In(C)、分子量=412.15](以下、「AcAcIn」と記す場合がある)は、各種有機溶剤への溶解性が良く、熱分解温度も約240℃程度と低く、他の金属元素をドープして得られる透明導電膜の特性も良好であるため、好適である。
【0047】
本発明に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液中の(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーと(D)アルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量は、前記(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の合計含有量100重量部に対し30〜150重量部であることが必要である。該含有量が30重量部未満であると、基材に対する密着性が低下し現像時に膜の剥離が起り易くなったり、現像工程での塗布膜の溶解性が悪化して膜残渣が生じやすくなりしてパターニング性が損なわれるため好ましくない。一方、該含有量が150重量部より多くなると、多孔質の透明導電パターン膜が形成されることとなり導電性が損なわれ好ましくない。
【0048】
(A)有機インジウム化合物、(B)ドーパント用有機金属化合物は、基材上に透明導電性被膜を形成させるための主たる化合物原料であり、その合計含有量は1〜30重量%の範囲であることが必要であり、5〜20重量%とすることがより好ましい。該合計含有量が1重量%未満であると透明導電膜の膜厚が薄くなり十分な導電性が得られないため好ましくなく、一方該合計含有量が30重量%より多いと、通常の塗布方法では、膜が厚くなりすぎて亀裂(クラック)が発生して導電性が損なわれるため好ましくない。
また(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の含有割合は、(A)有機インジウム化合物/(B)ドーパント用有機金属化合物のモル比=99.5/0.5〜35/65程度が良く、更に好ましくは95/5〜75/25程度が良い。このモル比外であるとキャリア密度、あるいはキャリア移動度が減少して導電性が悪化するので好ましくない。本発明では透明導電膜形成用塗布液を乾燥後、直接、露光・現像によるパターニングを行うため透明導電膜のエッチングが不要であり、そのエッチング特性を考慮する必要がない。したがって、例えば、インジウム−錫酸化物(ITO)系の透明導電膜において、従来エッチング性が良くないとされる錫含有量が高い組成(例えば、有機インジウム化合物/ドーパント用有機金属化合物のモル比=85/15〜35/65)も適用範囲とすることが可能である。
さらに前記ドーパント用有機金属化合物としては、有機錫化合物、有機チタン化合物、有機亜鉛化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タングステン化合物、有機アルミニウム化合物等が挙げられ、これらから選択された少なくとも1種類以上を用いることができる。これらの中では有機錫化合物が好ましく(化合物中の錫の価数は2価、4価にこだわらない)、例えば、アセチルアセトン錫、オクチル酸錫、2−エチルヘキサン酸錫、酢酸錫、蟻酸錫、ブトキシ錫等が挙げられ、これらから選択された少なくとも1種類以上を用いることができるが、特に、アセチルアセトン錫[正式名称:ビスアセチルアセトナートジブチル錫、Sn(C(C)、分子量=431.14](以下、「AcAcSn」と記す場合がある)がより好ましい。
【0049】
(F)溶剤としては、(A)有機インジウム化合物、(B)ドーパント用有機金属化合物、(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤等の溶解性、塗布性、安全性、危険性等を考慮して選ばれることが好ましく、溶解性や塗布性の面からは少なくとも2種類の有機溶剤を含むことが好ましい。
例えば、AcAcInとドーパント用有機金属化合物を良く溶解する溶剤としては、アルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールとニ塩基酸エステルの混合溶液、アルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールと酢酸ベンジルの混合溶液、N−メチル−2−ピロリジノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール等を用いる。アルキルフェノール及びアルケニルフェノールとしては、クレゾール類、パラターシャリーブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、カシューナット穀液(3−ペンタデカデシールフェノール)等が挙げられ、ニ塩基酸エステルとしては、コハク酸エステル、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル等が挙げられる。
【0050】
上述の溶剤に加えて、塗布液の粘度低下や塗布性改善のために塗布液に希釈剤として添加可能な溶剤は、AcAcIn、AcAcSnと良好な相溶性を有すれば良く、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ベンジルアルコール、等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピル、メチルイソブチルケトン、イソホロン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のグリコール誘導体、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、メシチレン、ドデシルベンゼン等のベンゼン誘導体等の中から適宜選択できるが、中でも、上記溶解性、塗布性等を考慮すると、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の組合せが好ましい。
【0051】
本発明の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、前記(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物を(F)溶剤に加熱溶解させた後、感光性樹脂成分として、(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤を加えることによって作製することができる。
前記(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーと(D)アルカリ可溶性樹脂の配合割合は、前述の通り、アルカリ可溶成分[=(C)+(D)]における重量平均官能基数が2.5以上で、かつアルカリ可溶成分の重量平均酸価が50mg−KOH/g以上となるようであれば、任意に設定可能である。ただし、(D)アルカリ可溶性樹脂の配合割合があまりに少ないと、透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液の乾燥塗膜の強度や、基材への密着力、が低下するため、その配合割合は、適用する(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーの種類にもよるが、(C):(D)[重量比]=50:50〜95:5、好ましくは70:30〜90:10程度に設定することが好ましい。
加熱溶解は、加熱温度を60〜200℃として0.5〜12時間攪拌することにより行われる。加熱温度が60℃よりも低いと溶解が進まず、(A)有機インジウム化合物が析出し易くなり特性が低下してしまい、200℃よりも高いと溶剤の蒸発が顕著となり、塗布液組成が変化してしまうので好ましくない。また攪拌時間が0.5時間未満であると溶解が進まず、一方攪拌時間が12時間を超えても消費エネルギーが無駄になるだけで好ましくない。
【0052】
また、本発明の透明導電パターン膜は、前記透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を、耐熱基材上に塗布、乾燥し、露光、現像を行って微細なパターンを形成し、焼成することにより製造する。
より具体的には、アセチルアセトンインジウム等の有機インジウム化合物とドーパント用有機金属化合物を溶剤に溶解させた後、熱分解性又は燃焼性を有する感光性樹脂成分を加えた透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用い、この塗布液を耐熱基材上に塗布、乾燥し、露光、現像を行って微細なパターンを形成し、350℃以上の温度で焼成して透明導電パターン膜を形成する。
本発明に用いる上記耐熱基板は、特に限定されないが、例えば、一般的なソーダライムガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、高歪み点ガラス(旭硝子製PD−200、日本電気硝子製PP−8A、PP−8M、セントラル硝子製CP600V等)、アルミナ等の各種セラミックを用いることができる。
【0053】
塗布方法としては、一般的なものを用いることができ、例えば、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ダイコート、スリットコート、キャップコート、インクジェット塗布といった塗布方法が適用できるが、大型ガラス基板等への均一コーティングにおいてはスリットコートやインクジェット塗布が最も好ましい。
【0054】
尚、上記露光、現像は、塗布液を塗布した基材を乾燥させた後、乾燥膜の上に微細なパターンを有するフォトマスクを設置して紫外線等の光照射を行い、次に現像液で浸漬、又はシャワー等して現像し、紫外線未露光部を溶解除去し、純水で十分に現像液を洗浄(リンス)することにより行われる。上記現像液には、例えば、炭酸ナトリウム、苛性ソーダ、苛性カリ、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液(濃度=0.01〜5質量%)が適用される。上記紫外線を含む露光光源としては、高圧水銀ランプによるg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)が一般的に良く用いられている。
ここで、塗布膜の乾燥は、80〜160℃の温度で5〜60分保持することが好ましい。
【0055】
焼成は、露光、現像した後の基材を、焼成炉に入れ焼成することにより行われる。焼成条件としては、酸素を含む雰囲気中で、基材の耐熱性にもよるが、一般のガラス基材では350〜600℃程度、好ましくは450〜600℃程度に加熱し、15〜60分保持することが好ましい。
ITO透明導電膜パターンの導電性は、焼成温度が高いほどITO粒子の粒成長が促進されるので向上する。焼成雰囲気については大気雰囲気のままでも良いが、大気中焼成の後に窒素および/または水素等の中性雰囲気や還元性雰囲気での焼成を併用することで酸素空孔を膜中に導入しキャリア密度を大幅に増加させて導電性を一層向上させることが可能である。
[実施例]
【0056】
以下、本発明の実施例について具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0057】
アセチルアセトンインジウム[In(C)](分子量=412.15)36.4g、アセチルアセトン錫[(C)Sn(C)](分子量=431.14)3.6g、パラターシャリーブチルフェノール45.0g、二塩基酸エステル(デュポンジャパン(株)製)15.0gを混合し、130℃に加温して180分間攪拌して溶解させ、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫を合計で40重量%含有する液(以下、「A液」と称する)を得た。
【0058】
A液25gに、単官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーであるフタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(酸価=200mg−KOH/g)2.1g、5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]骨格にカルボン酸基を導入したもの、酸価=25mg−KOH/g)6.3g、アルカリ可溶性樹脂であるカルボン酸変性したアクリル樹脂(分子量Mw=10000、酸価=75mg−KOH/g)2.0g、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン1.66g、増感剤である2,4−ジエチルチオキサントン0.33g、青色染料0.05g、シクロヘキサノン52.56g、メチルエチルケトン(MEK)10gを加え、よく攪拌・混合した後、ろ過(ろ過精度:1μm)し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫の合計含有量10重量%、アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーとアルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量10.4重量%含有する実施例1に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を得た。この塗布液の粘度を、液温25℃でB型粘度計を用いて測定したところ、4.9mPa・sであった。上記アルカリ可溶成分の重量平均官能基数は3.53であり(ただし、上記アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、上記5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーの官能基数は5.5として計算)、アルカリ可溶成分の重量平均酸価は70.0mg−KOH/gである。
この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、室温に1ヶ月遮光保管しても有機インジウム等の析出も含めインク外観の変化は認められなかった。この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を、25℃のソーダライムガラス基材(10cm×10cm×2mm- t)上の全面にスピンコーティング(200rpm×1分間)した後、100℃で10分間乾燥した。露光・現像は、乾燥膜上に線幅/線間=20μm/20μm〜200μm/200μm、及び30mm×40mm(ベタ四角形)のパターンのフォトマスクを設置して紫外線を大気中で照射(高圧水銀ランプ、400mJ/cm)した後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)を0.5重量%含有する水溶液に浸漬(25℃、70秒)して露光部分を溶解除去し、更に純水で十分に洗浄した。露光後の現像による膜残存率は90%以上であった。こうして得られたパターン膜付きガラス基材を電気炉に入れて大気中550℃で30分間焼成し、実施例1に係る透明導電パターン膜を得た。
この透明導電パターン膜の膜厚は約140nmであった。尚、膜厚は透過電子顕微鏡による断面観察により求めている。
形成した透明導電パターン膜の表面抵抗率を三菱化学製表面抵抗計(MCP−T350)、可視光線透過率とヘイズ値を村上色彩技術研究所製ヘイズメーターで測定した。表面抵抗率は2.8KΩ/□、透過率は98.6%、ヘイズ値は0.1%であった。また、図1に示すように、線幅/線間=20μm/20μmの微細パターンが得られ、パターン精度も良好であった。
【0059】
尚、上述の透明導電パターン膜の透過率は、透明導電パターン膜だけの(可視光線)透過率であって、以下のようにして求められている。すなわち、
透明導電パターン膜の透過率(%)
=[(透明導電パターン膜付ガラス基材ごと測定した透過率)/(ガラス基材の透過率)]×100
【0060】
膜の比抵抗値は、以下のようにして求められている。すなわち、
膜の比抵抗値(Ω・cm)=表面抵抗率(Ω/□)×膜厚(cm)
【実施例2】
【0061】
実施例1のA液25gに、単官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーであるフタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(酸価=200mg−KOH/g)2.6g、5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]骨格にカルボン酸基を導入したもの、酸価=25mg−KOH/g)5.8g、アルカリ可溶性樹脂であるカルボン酸変性したアクリル樹脂(分子量Mw=10000、酸価=75mg−KOH/g)2.0g、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン1.66g、増感剤である2,4−ジエチルチオキサントン0.33g、青色染料0.05g、シクロヘキサノン52.56g、メチルエチルケトン(MEK)10gを加え、よく攪拌・混合した後、ろ過(ろ過精度:1μm)し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫の合計含有量10重量%、アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーとアルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量10.4重量%含有する実施例2に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を得た。この塗布液の粘度を、液温25℃でB型粘度計を用いて測定したところ、4.9mPa・sであった。上記アルカリ可溶成分の重量平均官能基数は3.32であり(ただし、上記アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、上記5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーの官能基数は5.5として計算)、アルカリ可溶成分の重量平均酸価は78.4mg−KOH/gである。
この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、室温に1ヶ月遮光保管しても有機インジウム等の析出も含めインク外観の変化は認められなかった。この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用いた以外は実施例1と同様に行い、実施例2に係る透明導電パターン膜を得た。
尚、露光後の現像による膜残存率は90%以上であった。この透明導電パターン膜の膜厚は約140nmであった。
形成した透明導電パターン膜の表面抵抗率は2.9KΩ/□、透過率は98.8%、ヘイズ値は0.2%であった。また、線幅/線間=20μm/20μmの微細パターンが得られ、パターン精度も良好であった。
【実施例3】
【0062】
実施例1において、パターン膜付きガラス基材を電気炉に入れて大気中550℃で30分間焼成した後、450℃に冷却したところで、雰囲気を大気から1%H2−99%N2雰囲気に変えて、透明導電パターン膜の還元処理(酸素空孔の導入)を行った以外は実施例1と同様に行い、実施例3に係る透明導電パターン膜を得た。 この透明導電パターン膜の膜厚は約140nmであった。
形成した透明導電パターン膜の表面抵抗率は650Ω/□、透過率は97.2%、ヘイズ値は0.1%であった。また、線幅/線間=20μm/20μmの微細パターンが得られ、パターン精度も良好であった。
【実施例4】
【0063】
アセチルアセトンインジウム[In(C)](分子量=412.15)36.4g、アセチルアセトン錫[(C)Sn(C)](分子量=431.14)3.6g、パラターシャリーブチルフェノール44.85g、二塩基酸エステル(デュポンジャパン(株)製)14.95gを混合し、130℃に加温して90分間攪拌して溶解させた後、ヒドロキシプロピルセルロース0.2gを加えて90分間攪拌して溶解させ、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫を合計で40重量%含有する液(以下、「B液」と称する)を得た。
【0064】
実施例1のA液の代わりに上記B液を用いた以外は、実施例1と同様に行い、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫の合計含有量10重量%、アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーとアルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量10.4重量%含有する実施例4に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を得た。この塗布液の粘度を、液温25℃でB型粘度計を用いて測定したところ、4.7mPa・sであった。上記アルカリ可溶成分の重量平均官能基数は3.53であり(ただし、上記アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、上記5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーの官能基数は5.5として計算)、アルカリ可溶成分の重量平均酸価は70.0mg−KOH/gである。
この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、室温に1ヶ月遮光保管しても有機インジウム等の析出も含めインク外観の変化は認められなかった。この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用い、実施例1と同様に露光・現像、及び焼成を行い、実施例4に係る透明導電パターン膜を得た。尚、露光後の現像による膜残存率は90%以上であった。
この透明導電パターン膜の膜厚は約145nmであった。尚、膜厚は透過電子顕微鏡による断面観察により求めている。
形成した透明導電パターン膜の表面抵抗率を三菱化学製表面抵抗計(MCP−T350)、可視光線透過率とヘイズ値を村上色彩技術研究所製ヘイズメーターで測定した。表面抵抗率は2.8KΩ/□、透過率は98.5%、ヘイズ値は0.1%であった。線幅/線間=20μm/20μmの微細パターンが得られ、パターン精度も良好であった。
【実施例5】
【0065】
実施例1のA液25gに、単官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーであるアクリル酸ダイマー(酸価=370mg−KOH/g)、1.0g、5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]骨格にカルボン酸基を導入したもの、酸価=25mg−KOH/g)4.8g、アルカリ可溶性樹脂であるカルボン酸変性したアクリル樹脂(分子量Mw=10000、酸価=75mg−KOH/g)2.0g、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン1.66g、増感剤である2,4−ジエチルチオキサントン0.33g、青色染料0.05g、シクロヘキサノン52.56g、メチルエチルケトン(MEK)10gを加え、よく攪拌・混合した後、ろ過(ろ過精度:1μm)し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫の合計含有量10重量%、アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーとアルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量7.8重量%含有する実施例5に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を得た。この塗布液の粘度を、液温25℃でB型粘度計を用いて測定したところ、4.5mPa・sであった。上記アルカリ可溶成分の重量平均官能基数は3.51であり(ただし、上記アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、上記5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーの官能基数は5.5として計算)、アルカリ可溶成分の重量平均酸価は82.1mg−KOH/gである。
この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、室温に1ヶ月遮光保管しても有機インジウム等の析出も含めインク外観の変化は認められなかった。この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用い、かつスピンコーティングによる塗布を200rpm×30秒で行った以外は実施例1と同様に行い、実施例5に係る透明導電パターン膜を得た。
尚、露光後の現像による膜残存率は85%以上であった。この透明導電パターン膜の膜厚は約150nmであった。
形成した透明導電パターン膜の表面抵抗率は2.2KΩ/□、透過率は99.4%、ヘイズ値は0.1%であった。また、線幅/線間=20μm/20μmの微細パターンが得られ、パターン精度も良好であった。
【実施例6】
【0066】
実施例1のA液25gに、単官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーであるフタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(酸価=200mg−KOH/g)2.1g、5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]骨格にカルボン酸基を導入したもの、酸価=25mg−KOH/g)6.3g、アルカリ可溶性樹脂であるカルボン酸変性したアクリル樹脂(分子量Mw=10000、酸価=75mg−KOH/g)2.0g、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン0.83g、青色染料0.05g、シクロヘキサノン53.72g、メチルエチルケトン(MEK)10gを加え、よく攪拌・混合した後、ろ過(ろ過精度:1μm)し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫の合計含有量10重量%、アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーとアルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量10.4重量%含有する実施例6に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を得た。
この塗布液の粘度を、液温25℃でB型粘度計を用いて測定したところ、4.8mPa・sであった。上記アルカリ可溶成分の重量平均官能基数は3.53であり(ただし、上記アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、上記5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーの官能基数は5.5として計算)、アルカリ可溶成分の重量平均酸価は70.0mg−KOH/gである。
この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、室温に1ヶ月遮光保管しても有機インジウム等の析出も含めインク外観の変化は認められなかった。この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用い、露光時に紫外線を窒素中で照射(高圧水銀ランプ、400mJ/cm)した以外は、実施例1と同様に行い、実施例6に係る透明導電パターン膜を得た。
尚、露光後の現像による膜残存率は95%以上であった。この透明導電パターン膜の膜厚は約145nmであった。
形成した透明導電パターン膜の表面抵抗率は2.0KΩ/□、透過率は98.9%、ヘイズ値は0.1%であった。また、線幅/線間=20μm/20μmの微細パターンが得られ、パターン精度も良好であった。
【実施例7】
【0067】
実施例4のB液25gに、単官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーであるフタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(酸価=200mg−KOH/g)2.1g、5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]骨格にカルボン酸基を導入したもの、酸価=25mg−KOH/g)6.3g、アルカリ可溶性樹脂であるカルボン酸変性したアクリル樹脂(分子量Mw=10000、酸価=75mg−KOH/g)2.0g、光重合開始剤である2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン0.83g、青色染料0.05g、シクロヘキサノン43.72g、メチルエチルケトン(MEK)20gを加え、よく攪拌・混合した後、ろ過(ろ過精度:1μm)し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫の合計含有量10重量%、アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーとアルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量10.4重量%含有する実施例7に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を得た。
この塗布液の粘度を、液温25℃でB型粘度計を用いて測定したところ、4.7mPa・sであった。上記アルカリ可溶成分の重量平均官能基数は3.53であり(ただし、上記アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、上記5〜6官能のアルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーの官能基数は5.5として計算)、アルカリ可溶成分の重量平均酸価は70.0mg−KOH/gである。
この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、室温に1ヶ月遮光保管しても有機インジウム等の析出も含めインク外観の変化は認められなかった。この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用い、露光時に紫外線を窒素中で照射(高圧水銀ランプ、400mJ/cm)した以外は、実施例1と同様に行い、実施例7に係る透明導電パターン膜を得た。
尚、露光後の現像による膜残存率は95%以上であった。この透明導電パターン膜の膜厚は約150nmであった。
形成した透明導電パターン膜の表面抵抗率は1.8KΩ/□、透過率は99.3%、ヘイズ値は0.1%であった。また、線幅/線間=20μm/20μmの微細パターンが得られ、パターン精度も良好であった。
【0068】
[比較例1]
実施例1のA液25gに、単官能のアルカリ可溶性のないラジカル重合性モノマーである2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(酸価=0[0.5mg−KOH/g以下])2.1g、5〜6官能のアルカリ可溶性のないラジカル重合性モノマー(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート[DPHA]、酸価=約0[0.5mg−KOH/g以下])6.3g、アルカリ可溶性樹脂であるカルボン酸変性したアクリル樹脂(分子量Mw=10000、酸価=75mg−KOH/g)2.0g、光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン1.66g、増感剤である2,4−ジエチルチオキサントン0.33g、青色染料0.05g、シクロヘキサノン52.56g、メチルエチルケトン(MEK)10gを加え、よく攪拌・混合した後、ろ過(ろ過精度:1μm)し、アセチルアセトンインジウムとアセチルアセトン錫の合計含有量10重量%、アルカリ可溶性のないラジカル重合性モノマーとアルカリ可溶性樹脂の合計含有量10.4重量%含有する比較例1に係る透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を得た。この塗布液の粘度を、液温25℃でB型粘度計を用いて測定したところ、4.7mPa・sであった。アルカリ可溶成分の重量平均官能基数は3.53であり(ただし、上記アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、上記5〜6官能のアルカリ可溶性のないラジカル重合性モノマーの官能基数は5.5として計算)、アルカリ可溶成分の重量平均酸価は14.4mg−KOH/gである。
この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、室温に1ヶ月遮光保管しても有機インジウム等の析出も含めインク外観の変化は認められなかった。この透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用いた以外は実施例1と同様に行い、露光・現像を試みたが、未露光部分の現像液への溶解性が悪く、膜残渣が生じたため、透明導電パターン膜を得ることができなかった。
【0069】
以上より、(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の合計含有量100重量部に対し、(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーと(D)アルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分を30〜150重量部含有する透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、透明性や導電性を損なうことなく、微細なパターンの透明導電膜が形成されることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液は、(A)有機インジウム化合物、(B)ドーパント用有機金属化合物と、熱分解性又は燃焼性を有する(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤からなる感光性樹脂成分を含有するので、該塗布膜に対し、直接露光、現像処理を行うことによって透明導電パターン膜を形成することが可能である。また、この塗布液を基材上に塗布、乾燥、露光、現像、焼成して得られる透明導電パターン膜は透明性と導電性が良好であり、ディスプレイ,タッチパネル,太陽電池等の透明電極に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】実施例1に係る透明導電膜パターンの光学顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機インジウム化合物、(B)ドーパント用有機金属化合物、(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、(D)アルカリ可溶性樹脂、(E)光重合開始剤、(F)溶剤を含有する透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液であって、前記(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の合計含有量が1〜30重量%であり、前記(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーと(D)アルカリ可溶性樹脂からなるアルカリ可溶成分の含有量が該(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の合計含有量100重量部に対し30〜150重量部であり、且つ、該アルカリ可溶成分が熱分解性又は燃焼性を有していることを特徴とする透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項2】
前記(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の合計含有量が5〜20重量%であることを特徴とする請求項1に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項3】
前記(A)有機インジウム化合物と(B)ドーパント用有機金属化合物の含有割合が、該(A)有機インジウム化合物/(B)ドーパント用有機金属化合物のモル比=99.5/0.5〜35/65であることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項4】
前記(A)有機インジウム化合物が、アセチルアセトンインジウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項5】
前記(B)ドーパント用有機金属化合物が、有機錫化合物、有機チタン化合物、有機亜鉛化合物、有機ジルコニウム化合物、有機タングステン化合物、有機アルミニウム化合物のいずれか一つ以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項6】
前記有機錫化合物が、アセチルアセトン錫であることを特徴とする請求項5に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項7】
前記(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーは少なくとも3官能以上のアルカリ可溶性多官能モノマーを含有し、前記アルカリ可溶成分における重量平均官能基数(アルカリ可溶性樹脂は架橋しないため官能基数をゼロとし、各アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマーはモノマー分子当りの架橋可能な官能基数を用いて計算した値)が2.5以上で、かつアルカリ可溶成分の重量平均酸価が50mg−KOH/g以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項8】
前記(D)アルカリ可溶性樹脂の平均酸価が50mg−KOH/g以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項9】
前記(C)アルカリ可溶性ラジカル重合性モノマー、および/または(D)アルカリ可溶性樹脂がアクリル系および/またはメタアクリル系であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項10】
前記(E)光重合開始剤が、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項11】
前記(F)溶剤が、少なくともアルキルフェノール及び/又はアルケニルフェノールと二塩基酸エステルを含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項12】
(G)増感剤が更に含有されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項13】
前記(G)増感剤がチオキサントン系増感剤であることを特徴とする請求項12に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項14】
(H)セルロース系樹脂が更に含有され、その含有量が3重量%以下であることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を用いた透明導電膜パターンの製造方法であって、前記透明導電膜形成用ネガ型感光性塗布液を耐熱基材上に塗布、乾燥した後、露光、現像を行って微細パターンを形成し、次いで350℃以上の温度で焼成することを特徴とする透明導電パターン膜の製造方法。
【請求項16】
前記現像をアルカリ水溶液で行うことを特徴とする請求項15に記載の透明導電パターン膜の製造方法。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の透明導電パターン膜の製造方法で得られた透明導電パターン膜。

【図1】
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【公開番号】特開2007−308688(P2007−308688A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102473(P2007−102473)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【出願人】(000221959)東北化工株式会社 (17)
【Fターム(参考)】