説明

透明帯電防止性樹脂組成物およびそれを用いた成形品

【課題】
透明性と帯電防止性に優れた樹脂組成物の提供。
【解決手段】
透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)75〜91.5重量%、ポリアミド系親水性ポリマー(B)8〜20重量%、ならびに、イオン性液体(C)0.5〜5重量%を配合して100重量%となる透明帯電防止性樹脂組成物において、成形品(3mm厚み)にした時のヘイズが15.0以下であり、かつ表面抵抗値が1.0×10Ω/□以下であることを特徴とする透明帯電防止性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性ならびに透明性に優れた透明帯電防止性樹脂組成物およびそれを用いた成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品用トレーや、遊戯機(パチンコ機など)の部品は、内部の電子部品の存在確認の点から、外部から視認できる程度の透明性が必要である。
またそれと共に、これらのトレーや部品では集積回路(IC)が存在或いは接触するため、使用時の摩擦によるプラスチック材料の静電気発生を安定的に防止するために、材料の表面抵抗率が1.0×10~1.0×10Ω/□程度必要である。
すなわち、これらの用途に用いられるプラスチック材料には、透明性と帯電防止性が要求されている。
これに対し、まず、透明性樹脂材料に透明性を損なわないレベルで帯電防止効果を付与する試みがされてきた。
例えば界面活性剤等の帯電防止剤を塗布する、または練り込む方法が行われている。しかし、水洗や摩擦等により樹脂表面の帯電防止剤が除去され、持続安定的な帯電防止効果を付与することが困難なこと、界面活性剤の帯電防止効果が小さいため多量に練り込んだ場合は材料の透明性を損なうこと、等の問題があった。
また、持続安定性を持つカーボンブラックや金属材料等の高導電性充填材を配合した高導電性熱可塑性樹脂組成物では、透明性の点で界面活性剤よりも更に困難である。
一方、上記界面活性剤や導電性充填材以外を用いて、透明性樹脂に持続安定的に帯電防止性を付与する方法としては、マトリックス樹脂中に高分子型帯電防止剤である親水性ポリマーを筋状分散することによって永久的な透明帯電防止性を発現するものがある(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、透明性と帯電防止性のバランスにおいて充分ではなかった。
また、高分子型帯電防止剤に金属塩を併用する方法(特許文献3、特許文献4、特許文献5)が知られている。しかしながら、用いられる金属塩が、帯電防止性能の増大には寄与する半面、樹脂組成物の透明性を大きく損なってしまう。更にこれらの金属塩は殆ど全てにおいて、吸湿性が非常に高い、低融点であるなど、工業的な使用上においては大きな欠点を有していた。
【特許文献1】特開平8−120147号公報
【特許文献2】特開2004−51845号公報
【特許文献3】特開昭63−63739号公報
【特許文献4】特開2002−309097号公報
【特許文献5】特開2003−213060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、以上のような従来のような技術的課題を解決するものである。即ち、本発明は従来技術よりも帯電防止性と透明性の両方に優れた透明帯電防止性樹脂組成物をおよびそれを用いた成形品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明は、透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)75〜91.5重量%、ポリアミド系親水性ポリマー(B)8〜20重量%、ならびに、イオン性液体(C)0.5〜5重量%を配合して100重量%となる透明帯電防止性樹脂組成物において、成形品(3mm厚み)にした時のヘイズが15.0以下であり、かつ表面抵抗値が1.0×10Ω/□以下であることを特徴とする透明帯電防止性樹脂組成物である。
第2の発明は、透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)75〜91.5重量%、ポリアミド系親水性ポリマー(B)8〜30重量%、ならびに、イオン性液体(C)0.5〜5重量%を配合して100重量%となる透明帯電防止性樹脂組成物において、成形品(3mm厚み)にした時のヘイズが10.0以下であり、かつ表面抵抗値が1.0×10Ω/□以下であることを特徴とする透明帯電防止性樹脂組成物である。
第3の発明は、イオン性液体(C)が、アニオンがトリフルオロメタンスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、又はビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドイオン性液体であることを特徴とする、第1又は第2の発明に記載の透明帯電防止性樹脂組成物である。
第4の発明は、イオン性液体(C)が、カチオンがピリジニウム骨格を有するイオン性液体であることを特徴とする、第3の発明に記載の透明帯電防止性樹脂組成物である。
第5の発明は、第1〜4の発明いずれか記載の透明帯電防止性樹脂組成物を用いて得られる成形体である。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、従来技術よりも帯電防止性と透明性の両方に優れた透明帯電防止性樹脂組成物をおよびそれを用いた成形品を提供する事ができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の透明帯電防止性樹脂組成物は、透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)、ポリアミド系親水性ポリマー(B)、ならびに、イオン性液体(C)で構成されている。
本発明に用いられる透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)としては、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体(αMS−ACN樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、メタクリル酸メチルーアクリロニトリル−スチレン共重合体(MAS樹脂)、等のゴム非強化透明スチレン系樹脂、または、メタクリル酸メチル変性HIPS(透明HIPS樹脂)、メタクリル酸メチル変性ABS樹脂(透明ABS又はMABS樹脂)、α−メチルスチレン変性ABS樹脂、イミド変性ABS樹脂、スチレン−メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体(MBS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンゴム−スチレン樹脂(AES樹脂)等のゴム強化透明スチレン系樹脂が挙げられ。また、さらには上述のゴム非強化透明スチレン系樹脂とゴム強化透明スチレン系樹脂とからなる任意の混合物も例示される。
透明スチレン系樹脂のうち、透明性の点から、透明ABS樹脂、MBS樹脂、MS樹脂、ならびに透明HIPS樹脂が好ましい。
本発明に用いられるポリアミド系親水性ポリマー(B)とは、具体的にはポリアミドエラストマー(B−1)とポリエーテルジオール化合物(B−2)とのブロックまたはグラフト共重合体が挙げられる。
ポリアミドエラストマー(B−1)の構成成分としては、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペラルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、および12−アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸あるいはカプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタムおよびラウロラクタムなどのラクタムあるいはヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバチン酸塩およびヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩などのジアミン−ジカルボン酸塩が使われる。
ポリアミドエラストマー(B−1)にはアミノカルボン酸の自己重縮合体、ラクタムの開環重合体、ジアミン−ジカルボン酸の重縮合体、およびこれらの混合物が含まれる。ポリアミドエラストマー(B−1)のうち好ましいのは、12−アミノドデカン酸の自己重複合体およびヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩の重縮合体、およびさらに好ましいのはカプロラクタムの開環重合体である。
ポリエーテルジオール化合物(B−2)とは、低分子ジオールもしくは2価フェノールのアルキレンオキシド付加物、あるいはポリアルキレンオキシドである。
本発明に用いられるイオン性液体(C)とは、室温付近で液体である塩類であり、室温付近の広い範囲において液体で、また、室温付近の蒸気圧が極めて低いという特徴を有するアニオンとカチオンからなる塩である。イオン性液体(C)は、ポリアミド系親水性ポリマー(B)と共にイオン導電性帯電防止材として機能する。またイオン性液体(C)は1種もしくは2種以上が用いられる。
イオン性液体(C)のアニオンの具体例としては、クロライド、ブロマイド、アセテート、ハイドロジェンサルフェート、メチルサルフェート、エチルサルフェート、テトラクロロアルミネート、チオシアネート、トリフルオロメタンスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、又はビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミド、ヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート等があり、それらから構成される、又は、それ以外のアニオンから構成されるイオン性液体(C)の具体的な例としては、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムエチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムメタンスルホン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラクロロアルミネート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムチオシアネート、1-メチルイミダゾリウムクロライド、1-メチルイミダゾリウムハイドロジェンサルフェート、1,2,3-トリメチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-3メチルイミダゾリウムヘキサフルオロアンチモネート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ドデシル-3イミダゾリウムアイオダイド、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアンアミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムナイトレート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウムビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムオクチルサルフェート、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトシレート、1-エチル-3メチルイミダゾリウムトシレート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、4-(3-ブチル-1-イミダゾリオ)-1-ブタンスルホン酸トリフレート、4-(3-ブチル-1-イミダゾリオ)-1-ブタンスルフォネート、1-アリール-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフォネート、1-ベンジル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムクロライド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム2-(2-メトキシエトキシ)-エチルサルフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリムヘキサフルオロホスフェート、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホン酸、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、3-メチル-1-プロピルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムテトラフルオロボレート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロマイド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムクロライド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、トリブチルメチルアンモニウムメチルサルフェート、メチル-トリオクチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、テトラブチルアンモニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホン酸、テトラブチルアンモニウムブロマイド、メチルトリオクチルアンモニウムチオサリチレート、テトラブチルアンモニウムベンゾエート、テトラブチルアンモニウムメタンスルフォネート、テトラブチルアンモニウムノナフルオロブタンスルフォネート、テトラブチルアンモニウムヘプタデカフルオロオクタンスルフォネート、テトラヘキシルアンモニウムテトラフルオロボレート、テトラオクチルアンモニウムクロライド、テトラペンチルアンモニウムチオシアネート、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルホスホニウムテトラフルオロボレート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビス(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィネート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムブロマイド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムクロライド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムデカノエート、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムジシアンアミド、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリイソブチルメチルホスホニウムトシレート、3-(トリフェニルホスホニオ)プロパン-1-スルホン酸、3-(トリフェニルホスホニオ)プロパン-1-スルフォネート、テトラブチルホスホニウムp-トルエン」スルフォネート、トリエチルスルフォニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド等が挙げられる。
本発明に用いられるイオン性液体(C)のアニオンとして、帯電防止性の観点で好ましいものは、一般的にイオン性液体のイオン解離を促進する化学構造を有するものである。また透明性の観点で好ましいものは熱安定性に優れマトリックス樹脂中での分散性に優れる構造を有する物である。これらの条件を満たした具体例としてはトリフルオロメタンスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミド等である。
イオン性液体(C)のカチオンとしては、イミダゾリウム、ピリジニウム、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム等があり、そのような、或いは、それ以外の具体的なカチオンの例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム,1-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-デシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-テトラドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-ヘキサドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-オクタドデシル-3-メチルイミダゾリウム、1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-プロピル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1,2-ジメチル-3-プロピルイミダゾリウム、1-ブチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-2,3-ジメチルイミダゾリウム、1-オクチル-2,3-ジメチルイミダゾリウム1,2-ジメチル-3-オクチルイミダゾリウム、1-ブチル-3-エチルイミダゾリウム、1-ヘキシル-3-エチルイミダゾリウム、1-エチル3-オクチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ブチルイミダゾリウム、1-エチル-3-ヘキシルイミダゾリウム、1-オクチル-3-エチルイミダゾリウム、1,2-ジエチル-3,4-ジメチルイミダゾリウム、1-フルオロピリジニウム、1-フルオロ-2,4,6-トリメチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-ブチルピリジニウム、1-ヘキシルピリジニウム、1-プロピル3-メチルピリジニウム、1-ブチル-4-メチルピリジニウム、1-ブチル-3-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウム、1-ヘキシル-3-メチルピリジウム、1-オクチル-4-メチルピリジニウム、1-オクチル-3-メチルピリジニウム、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウム、1-ブチル-3,5-ジメチルピリジニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、トリメチルヘプチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、トリエチル(2-メトキシエチル)アンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルプロピルアンモニウム、ジメチルブチルエチルアンモニウム、ジメチルエチルペンチルアンモニウム、ジメチルエチルヘキシルアンモニウム、ジメチルエチルヘプチルアンモニウム、ジメチルエチルノニルアンモニウム、ジメチルエチルヘプタデシルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、ジメチルブチルプロピルアンモニウム、ジメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジメチルヘキシルプロピルアンモニウム、ジメチルヘプチルプロピルアンモニウム、ジメチルブチルペンチルアンモニウム、ジメチルブチルヘキシルアンモニウム、ジメチルブチルヘプチルアンモニウム、ジメチルヘキシルペンチルアンモニウム、ジエチルヘプチルメチルアンモニウム、ジヘキシルジメチルアンモニウム、ジプロピルブチルヘキシルアンモニウム、ジヘキシルジプロピルアンモニウム、ジエチルメチルプロピルアンモニウム、ジエチルメチル(2-メトキシエチル)アンモニウム、ジプロピルエチルメチルアンモニウム、ジエチルプロピルペンチルアンモニウム、ジエチルメチルペンチルアンモニウム、エチルメチルプロピルペンチルアンモニウム、ジプロピルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルメチルペンチルアンモニウム、ジブチルヘキシルメチルアンモニウム、トリヘキシルテトラデシルホスホニウム、トリイソブチルメチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルスルホニウム等が挙げられる。
本発明に用いられるイオン性液体(C)のカチオンとして、透明性の観点で好ましいものは熱安定性に優れマトリックス樹脂中での分散性に優れる構造を有する物である。そのような効果を示す具体的な例としては、カチオンがイミダゾリウム又はピリジニウム骨格等の窒素系複素環構造を有するものであり、その中でさらに好ましくはピリジニウム骨格を有するものである。
本発明の透明帯電防止性樹脂組成物における各構成成分の含有量については以下のとおりである。
透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)は75〜91.5重量%である。なぜなら、透明スチレン系熱可塑性樹脂の含有量が75重量%を下回ると、スチレン系共重合体が本来有している機械物性や成形加工性等の樹脂本来の性質を発揮することが困難になるためである。また、スチレン系共重合体の含有量が91.5重量%以上になると、帯電防止剤成分の添加量が低くなってしまい、十分な帯電防止能を得ることが困難となってしまうためである。
ポリアミド系親水性ポリマー(B)の含有量は8〜20重量%である。なぜなら、(B)成分が8重量%を下回ると、成形品の帯電防止能を得るために好ましい表面抵抗率、すなわち1.0×10Ω/□よりも小さい値を得ることが困難となってしまうためである。また、帯電防止剤成分が20重量%を超えると、帯電防止能は十分発現されるものの、スチレン系共重合体が本来有している機械物性や成形加工性等の樹脂本来の性質を発揮することが困難になるためである。
イオン性液体(C)の含有量は0.5〜5重量%である。なぜなら、(C)成分が0.5重量%未満では帯電防止性に劣り、5重量%を超えると帯電防止能は十分発現されるものの、成形条件次第では透明性を著しく悪化させてしまう恐れがある。
透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)、ポリアミド系親水性ポリマー(B)およびイオン性液体(C)の混合方法としては、バンバリーミキサー、ロール、押出機等の公知の方法を採用することができる。
さらに本発明における透明帯電防止性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、従来公知の酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、各種フィラー、離型剤、香料、滑剤、難燃剤、発泡剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤、核形成剤等の各種添加剤が配合されていても良い。また、これらの樹脂添加剤を1種のみでもよく、また2種以上併用しても良い。
以下に、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。実施例中、%は重量%を表す。用いられる材料を表1に示した。
【実施例】
【0007】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部および%は、それぞれ重量部および重量%を表す。
<透明性の評価>
実施例、比較例で得られた透明帯電防止性樹脂組成物の成形品の透明性は、ヘイズの値の測定により評価した。なお、成形品は恒温条件化(室温:23℃、湿度:50%)に24時間設置した後、空気をブランク(0)としてビックケミー・ジャパン社製のヘイズ・ガード・プラスにてヘイズの値を測定した。
<帯電防止性の評価>
透明帯電防止性樹脂組成物の成形品の帯電防止性は、表面抵抗値の測定により評価した。なお、成形品は恒温条件化(室温:23℃、湿度:50%)に24時間設置した後、SIMCO社製の表面抵抗測定器(ワークサーフェイステスター ST−3)にて表面抵抗値を測定した。
実施例、比較例で用いた各成分の詳細は以下の通りである。
透明ABS樹脂:電気化学工業社製、デンカABS TE−10S
MS樹脂:電気化学工業社製、デンカTXポリマー TX−600XL
透明HIPS樹脂:PSジャパン社製、PSJ−ポリスチレン SX−300
ポリアミド系親水性ポリマー1(b−1):三洋化成工業社製、ペレスタット6500
ポリアミド系親水性ポリマー2(b−2):竹本油脂社製、エレカットRB−S
ポリアミド系親水性ポリマー3(b−3):チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、イルガスタットP−22
イオン性液体1(c−1): アルドリッチ社製、1−ブチル−3−メチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド
イオン性液体2(c−2):日本カーリット社製、CIL−313(1−ブチル−3−メチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホン酸)
イオン性液体3(c−3):アルドリッチ社製、3−メチル−1−プロピルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド
イオン性液体4(c−4):アルドリッチ社製、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド
イオン性液体5(c−5):アルドリッチ社製、トリヘキシルテトラデシルホスホニウムビストリフルオロメタンスルホン酸イミド
イオン性液体6(c−6):アルドリッチ社製、1−ブチル−4−メチルピリジニウムテトラフルオロボレート
イオン性液体7(c−7): アルドリッチ社製、1−ヘキシル−3−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート
イオン性液体8(c−8):アルドリッチ社製、1−ブチル−4−メチルピリジニウムクロライド
イオン性液体9(c−9):アルドリッチ社製、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート
イオン性液体10(c−10):アルドリッチ社製、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムアセテート
[実施例1]
透明スチレン熱可塑性樹脂(A)として透明ABS樹脂87重量%、ポリアミド系親水性ポリマー(b−1)10重量%、イオン性液体(c−1)3重量%を用い、透明スチレン熱可塑性樹脂とポリアミド系親水性ポリマーをドライブレンドした後、230℃に設定した2軸押出機(日本プラコン社製)にて混練し、直径3mm、長さ3mmの円柱状ペレットに造粒し、透明帯電防止性樹脂組成物を得た。尚イオン性液体(C)は液体添加装置により2軸押出機内に注入した。
上記ペレットから230℃に設定した東芝IS100F型射出成形機にて200mm×400mmの平板状の成形品を作製した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0008】
[実施例2]
(A)/(B)/(C)の添加重量比を87/8/5に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0009】
[実施例3]
(A)/(B)/(C)の添加重量比を79.5/20/0.5に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0010】
[実施例4]
イオン性液体(C)を(c−2)に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0011】
[実施例5]
イオン性液体(C)を(c−3)に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0012】
[実施例6]
イオン性液体(C)を(c−4)に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0013】
[実施例7]
ポリアミド親水性ポリマー(B)を(b−2)に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0014】
[実施例8]
ポリアミド親水性ポリマー(B)を(b−3)に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0015】
[実施例9]
透明スチレン熱可塑性樹脂(A)としてMS樹脂を用いたこと以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0016】
[実施例10]
透明スチレン熱可塑性樹脂(A)として透明HIPS樹脂を用いたこと以外は実施例2と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0017】
[実施例11]
イオン性液体(C)を(c−5)に変更した以外は実施例2と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0018】
[比較例1]
イオン性液体(C)を(c−5)に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0019】
[比較例2]
透明スチレン熱可塑性樹脂(A)としてMS樹脂を用いたこと以外は実施例9と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0020】
[比較例3]
透明スチレン熱可塑性樹脂(A)として透明HIPS樹脂を用いたこと以外は実施例10と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0021】
[比較例5]
透明スチレン熱可塑性樹脂(A)として透明ABS樹脂87重量%、ポリアミド系親水性ポリマー(b−1)10重量%、高融点であるため固体であるイオン性液体(c−8)3重量%を用い、透明スチレン熱可塑性樹脂とポリアミド系親水性ポリマーとイオン性液体をドライブレンドした後、230℃に設定した2軸押出機(日本プラコン社製)にて混練し、直径3mm、長さ3mmの円柱状ペレットに造粒し、透明帯電防止性樹脂組成物を得た。
上記ペレットから230℃に設定した東芝IS100F型射出成形機にて200mm×400mmの平板状の成形品を作製した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0022】
[比較例6]
イオン性液体(C)を(c−9)に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0023】
[比較例7]
イオン性液体(C)を(c−10)に変更した以外は実施例1と同様に透明帯電防止性樹脂組成物を作製し、平板状の成形品を作成した後、成形品の透明性(ヘイズ値)と帯電防止性を評価した。
評価結果を表1に示す。
【0024】
【表1】

















【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)75〜91.5重量%、ポリアミド系親水性ポリマー(B)8〜20重量%、ならびに、イオン性液体(C)0.5〜5重量%を配合して100重量%となる透明帯電防止性樹脂組成物において、成形品(3mm厚み)にした時のヘイズが15.0以下であり、かつ表面抵抗値が1.0×10Ω/□以下であることを特徴とする透明帯電防止性樹脂組成物。
【請求項2】
透明スチレン系熱可塑性樹脂(A)75〜91.5重量%、ポリアミド系親水性ポリマー(B)8〜20重量%、ならびに、イオン性液体(C)0.5〜5重量%を配合して100重量%となる透明帯電防止性樹脂組成物において、成形品(3mm厚み)にした時のヘイズが10.0以下であり、かつ表面抵抗値が1.0×10Ω/□以下であることを特徴とする透明帯電防止性樹脂組成物。
【請求項3】
イオン性液体(C)が、アニオンが、トリフルオロメタンスルホン酸、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミド、又はビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミド、であるイオン性液体であることを特徴とする請求項1又は2記載の透明帯電防止性樹脂組成物。
【請求項4】
イオン性液体(C)が、カチオンがピリジニウム誘導体であるイオン性液体であることを特徴とする請求項3記載の透明帯電防止性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載の透明帯電防止性樹脂組成物を用いて得られる成形体。

【公開番号】特開2009−249407(P2009−249407A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95594(P2008−95594)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000222118)東洋インキ製造株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】