説明

透明性フィルム

【課題】 光学用フィルムなどとして好適に使用することができる透明性、耐熱性、靱性、表面性に優れた透明性フィルムを提供する。
【解決手段】 特定の構造を有する数平均分子量が1×10以上5×10以下であるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体50〜99重量%、及び、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にスチレン・アクリロニトリル共重合体をグラフト化してなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム50〜1重量%からなる透明性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びスチレン・アクリロニトリル共重合体によりグラフト化してなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムよりなる透明性フィルムに関するものであり、特に透明性、耐熱性、靱性、表面性に優れたフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
透明性フィルムは、包装、表面保護、表示、積層ベース等の目的により、種々の用途に用いられてきた。そして近年、エレクトロニクス分野では透明材料として主流を占めていたガラス、アクリル板などの硬質板から、透明プラスチックフィルムへの代替が進行している。その理由として、これらエレクトロニクス分野においては、透明材料に求められる特性が、単なる高光線透過率だけではなく、透明材料を用いる部品、機器の軽量化、小型化、低コスト化、デザインの自由度、高性能化などの要求に合せ、高度化していることが挙げられる。透明性フィルムとしては、メタクリル樹脂(以下、PMMAと略記する。)、ポリエステル(以下、PETと略記する。)、ポリカーボネート(以下、PCと略記する。)、ポリエーテルサルフォン(以下、PESと略記する。)、ポリアリレート(以下、PARと略記する。)、ノルボルネン系樹脂などを原料としたフィルムがよく知られる。
【0003】
一方、マレイミド・オレフィン共重合体からなるフィルムは、透明性、耐熱性が優れるといった特徴を有していることが開示されている(例えば特許文献1参照。)。
【0004】
また、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなるフィルムが提案されており、耐熱性に優れ、非常に複屈折が小さいため、光学用途に適した特徴を有していることが開示されている(例えば特許文献2参照。)。
【0005】
更に、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びエラストマーからなる樹脂組成物が、透明性、耐熱性、靱性に優れるといった特徴を有していることが開示されている(例えば特許文献3参照。)。
【0006】
また、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂などのスチレン系耐衝撃性樹脂の存在下でスクシンイミド樹脂組成物を製造する方法が開示されている(例えば特許文献4参照。)。
【0007】
さらに、マレイミド・オレフィン共重合体系樹脂及びスチレン・アクリロニトリル共重合体系樹脂からなる樹脂組成物よりなるフィルムが提案されている(例えば特許文献5、6参照。)。
【0008】
【特許文献1】特開平09−328523号公報
【特許文献2】特開2000−080240号公報
【特許文献3】特許第3214003号公報
【特許文献4】特開2002−3528号公報
【特許文献5】特開2002−212312号公報
【特許文献6】WO01/037007号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、PMMAフィルムは優れた光学特性、表面硬度を有するが、耐熱性、靱性が乏しい問題があり、PETフィルムは延伸により優れた機械特性、耐熱性、耐薬品性を発現させることができるが、分子配向により複屈折が非常に大きくなり、低複屈折性が求められる光学用途には使用できない。また、PCフィルム、PESフィルム、PARフィルムは靱性、耐熱性に優れるが、耐候性、表面硬度が劣り、複屈折が大きいため、低複屈折性が求められる光学用途には向かない。ノルボルネン系樹脂フィルムは耐熱性が高く、複屈折は小さいが、接着性に乏しい問題がある。
【0010】
そして、特許文献1に提案されているマレイミド・オレフィン共重合体からなるフィルムは透明性が高く、耐熱性が優れるなどの特徴を有するが、靱性が乏しいため、成形時あるいは成形後のハンドリング性などに課題が残った。
【0011】
また、特許文献2に記載されているN−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びアクリロニトリル・スチレン共重合体からなるフィルムは透明性が高く、耐熱性が優れ、非常に複屈折が小さいなどの特徴を有するが、靱性が乏しいため、成形時あるいは成形後のハンドリング性などに課題が残った。
【0012】
更に、特許文献3は、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体とエラストマーからなる樹脂組成物に関するものであり、特許文献4は、スクシンイミド樹脂組成物の製造方法に関するものであり、透明性フィルムに関する検討・提案は一切なされていない。また、特許文献5、6に関しても、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びグラフト変性共重合体ゴムからなる透明性フィルムについて何ら具体的に提案はなされていない。
【0013】
このように、従来の透明性フィルムは、それぞれ長所と短所を有するのが実情であり、近年の高度化、複雑化した要求を必ずしも満足させるべきものとは言い難いため、さらなる高機能性フィルムの出現が望まれていた。
【0014】
そこで、本発明は、透明性、耐熱性、靱性、表面性に優れた透明性フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題に関し、鋭意検討した結果、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及び特定の分子構造を有するグラフト変性共重合体ゴムからなるフィルムが高い透明性を有し、耐熱性、靱性、表面性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
即ち、本発明は、下記一般式(I)で示される単位40〜60モル%と下記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×10以上5×10以下であるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体50〜99重量%、及び、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にスチレン・アクリロニトリル共重合体をグラフト化してなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム50〜1重量%からなることを特徴とする透明性フィルムに関するものである。
【0017】
【化1】

(ここで、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。)
【0018】
【化2】

(ここで、R2、R3は各々独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明の透明性フィルムを構成するN−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、上記一般式(I)で示される単位40〜60モル%及び上記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなる共重合体であり、数平均分子量1×10以上5×10以下を有するN−置換マレイミド・オレフィン共重合体である。
【0020】
一般式(I)で示される単位のR1は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機基であり、これら以外の有機基を有する単位である場合、得られるフィルムの耐熱性が劣るものとなる。
【0021】
炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、1,2−ジメチルプロピル基等を挙げることができ、炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等を挙げることができ、特に耐熱性、靱性のバランスに優れる透明性フィルムとなることから一般式(I)で示される単位のR1はメチル基、シクロヘキシル基であることが好ましい。
【0022】
また、一般式(II)で示される単位のR2及びR3は、各々独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基であり、炭素数が6を超える場合、得られる透明性フィルムの耐熱性が劣るものとなる。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、その中でも、特に耐熱性、靱性のバランスに優れる透明性フィルムとなることからメチル基であることが好ましい。
【0023】
そして、このようなN−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、例えば一般式(I)で示される単位を誘導するマレイミド類と一般式(II)で示される単位を誘導するオレフィン類とのラジカル共重合反応により得ることができる。
【0024】
その際、一般式(I)で示される単位を誘導するマレイミド類としては、例えばN−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド等が例示され、特に耐熱性、靱性のバランスに優れる透明性フィルムが得られることからN−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドであることが好ましい。
【0025】
一般式(II)で示される単位を誘導するオレフィン類としては、例えばイソブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン等のオレフィン類が例示でき、このうち特に耐熱性、靱性のバランスに優れる透明性フィルムとなることからイソブテンが好ましい。
【0026】
また、本発明に用いられるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体を構成する一般式(I)で示される単位は40〜60モル%の範囲であり、特に耐熱性、靱性のバランスに優れる透明性フィルムとなることから45〜55モル%であることが好ましい。ここで、一般式(I)で示される単位が60モル%を越える場合、得られるフィルムは脆くなる。一方、40モル%未満の場合、フィルムの耐熱性が低下する。
【0027】
本発明に用いられるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、数平均分子量が1×10以上5×10以下であり、特に靱性に優れ、厚み精度、表面平滑性の高い透明性フィルムとなることから1×10以上5×10以下が好ましい。数平均分子量が5×10を超える場合、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体の溶融粘度が高くなりすぎるため、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体の流動性が乏しくなり、透明性フィルムの厚み精度、表面平滑性が劣るものとなる。一方、数平均分子量が1×10未満の場合、透明性フィルムの靱性が乏しくなる。ここで、本発明における数平均分子量とは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)により求めた標準ポリスチレン換算値のことである。
【0028】
本発明に用いられるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、特に耐熱性、靱性のバランスに優れた透明性フィルムとなることから、N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・イソブテン共重合体より選ばれる少なくとも1種以上のN−置換マレイミド・オレフィン共重合体であることが好ましい。
【0029】
更に、本発明に用いられるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、必要に応じ本発明の目的を損なわない範囲で他のモノマー成分より誘導される単位を含有するものであってもよく、そのような他のモノマー成分としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸又はそのエステル類;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸又はそのエステル類;酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピオビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;無水マレイン酸;アクリロニトリル等の化合物が挙げられ、その含有率としては5モル%以下であることが好ましい。
【0030】
本発明に用いられるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、一般式(I)で示される単位を誘導する化合物及び一般式(II)で示される単位を誘導する化合物を公知の方法により重合することで得ることができる。このような重合方法として、例えば塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法のいずれの方法によっても得ることができ、その中でも特に透明性、色調に優れるフィルムが得られることから沈殿重合法により得られるものであることが好ましい。
【0031】
重合反応の際に用いる重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤等が挙げられる。
【0032】
溶液重合法、沈殿重合法において用いられる溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコールなどのアルコール系溶媒;シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、酢酸イソプロピル、芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒などが挙げられる。
【0033】
その際の重合温度は、重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定することができるが、一般的には40〜150℃の範囲で行うことが好ましい。
【0034】
また、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体は、別法として無水マレイン酸・オレフィン共重合体をアミン化合物を用いて、後イミド化することによっても得ることができる。
【0035】
このような後イミド化反応は、例えば無水マレイン酸・オレフィン共重合体をメタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール溶媒;ベンゼン、トルエンなどの芳香族系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのエステル系溶媒;芳香族系溶媒とアルコール系溶媒の混合溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミドなどの溶媒に溶解あるいは分散させ、アミン化合物と50〜250℃の温度で反応させることによりアミド化反応とイミド化反応を連続的に行う方法、アミン化合物と反応させてアミド体を得た後、該アミド体を加熱して脱水閉環させ、イミド化を行う方法等により製造することができる。
【0036】
アミン化合物としては、例えばメチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロヘキシルアミン、アダマンチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、i−プロピルアミン、i−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチルアミン、1,2−ジメチルプロピルアミンなどが挙げられ、その中でも特に耐熱性、靱性のバランスに優れる透明性フィルムとなることから、一般式(I)で示される単位を誘導するアミン化合物としてメチルアミン、シクロヘキシルアミンが好ましい。
【0037】
本発明の透明性フィルムを構成するグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムは、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にスチレン・アクリロニトリル共重合体をグラフト重合してなるグラフト変性共重合体ゴムである。該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子に該スチレン・アクリロニトリル共重合体をグラフト重合することにより、該グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムと該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体の相溶性が向上し、その結果、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体中における該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子の分散性が良好なものとなり、透明性、靱性に優れたフィルムとなるものである。なお、共重合体ゴム粒子が1,3−ブタジエン・スチレン共重合体以外の共重合体ゴム粒子である場合、得られるフィルムは脆いものとなる。
【0038】
ここで、該グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムを構成する1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子は、透明性フィルムとした際の耐熱性、靱性がより優れたものとなることから、部分的に架橋されたものであることが好ましい。さらに、該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子は、多官能性ビニルモノマー、すなわちエチレン性不飽和結合を複数個有するモノマーを共重合させたものであっても良く、一般的に、多官能性ビニルモノマーを用いた場合、ゴム粒子の架橋、あるいはグラフト反応が容易となり、透明性フィルムの靱性が優れたものとなる。
【0039】
また、透明性と靱性に特に優れたフィルムとなることから該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子の平均粒子径は0.01〜1μmの範囲にあることが好ましく、特に0.05〜0.8μmの範囲にあることが好ましい。さらに、特に透明性に優れるフィルムとなることからN−置換マレイミド・オレフィン共重合体の屈折率に対し、屈折率差が絶対値として0.02以下の1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子であることが好ましく、特に0.01以下の1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子であることが好ましい。
【0040】
該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子における1,3−ブタジエン単量体残基単位とスチレン単量体残基単位の割合は任意である。その中でも、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体の屈折率に対し、屈折率差のより小さい1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子となり、特に高い透明性、靱性を有するフィルムとなることから、1,3−ブタジエン単量体残基単位/スチレン単量体残基単位=95/5〜70/30(重量%)であることが好ましい。
【0041】
該グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムは、一般的なグラフト共重合体の製造方法として知られている方法により製造することが可能である。例えば上記した1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子、スチレン単量体、アクリロニトリル単量体、ラジカル重合開始剤、溶媒等を仕込み、乳化重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法などにより製造する方法が挙げられ、該重合方法の中でも特にグラフト共重合体の製造が容易となることから乳化重合法が好ましい。また、その際に得られるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムは、本発明の目的を実施できる限りにおいては、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子に枝として結合しないスチレン・アクリロニトリル共重合体を含むものであってもよい。
【0042】
該グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムにおける1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子、スチレン・アクリロニトリル共重合体の割合は、特に透明性、耐熱性、靱性、表面平滑性のバランスに優れたフィルムとなることから、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子20〜95重量%、スチレン・アクリロニトリル共重合体5〜80重量%であることが好ましい。
【0043】
また、スチレン・アクリロニトリル共重合体におけるスチレン単量体残基単位とアクリロニトリル単量体残基単位の割合は任意であり、その中でも、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体とスチレン・アクリロニトリル共重合体の相溶性が優れ、特に高い透明性、靱性を有するフィルムとなることから、スチレン単量体残基単位/アクリロニトリル単量体残基単位=60/40〜85/15(重量%)であることが好ましい。
【0044】
本発明の透明性フィルムは、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体50〜99重量%及び該グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム50〜1重量%からなるものであり、特に耐熱性、靱性のバランスに優れ、且つ厚み精度、表面平滑性の高いフィルムとなることから該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体60〜99重量%及び該グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム40〜1重量%からなるフィルムであることが好ましい。ここで、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体が50重量%未満である場合、フィルムの耐熱性、流動性が著しく乏しくなり、厚み精度、表面平滑性の劣るフィルムとなる場合がある。一方、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体が99重量%を超える場合、フィルムの靱性が乏しくなる。さらに、本発明の透明性フィルムは、特に生産性にも優れたものとなることから、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムの合計量100重量部に対し、スチレン・アクリロニトリル共重合体1〜60重量部を配合してなるものであってもよい。
【0045】
本発明の透明性フィルムは、特に透明性、靱性、表面平滑性に優れたフィルムとなることから、さらに、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体100重量部に対し、可塑剤1〜30重量部を含んでなるフィルムであることが好ましく、該可塑剤としては、例えばポリエステル系可塑剤、エポキシ系可塑剤、リン酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤等が挙げられる。
【0046】
ポリエステル系可塑剤としては、一般的にポリエステル系可塑剤として知られているもので良く、例えば脂肪族多塩基酸及び/又は芳香族多塩基酸とポリオールとを縮重合したものが挙げられ、さらに末端キャッピング剤で末端エステル化されたものであっても良い。
【0047】
脂肪族多塩基酸としては、炭素数2〜20の脂肪族多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく、例えばシュウ酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジ酸、テトラデカンジ酸、ヘキサデカンジ酸、オクタデカンジ酸等の脂肪族二塩基酸、そのエステルなどを挙げることができ、その他の脂肪族多塩基酸としては、エタントリカルボン酸、プロパントリカルボン酸等の脂肪族三塩基酸;ブタンテトラカルボン酸等の脂肪族四塩基酸、等が挙げられ、これら脂肪族多塩基酸のエステル形成性誘導体としては、これら脂肪族多塩基酸の低級アルキルエステル、酸ハライド、酸無水物等を挙げることができる。これらの脂肪族多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体は、一種のみ用いてもよく、また二種以上併用してもよい。
【0048】
芳香族多塩基酸としては、炭素数8〜20の芳香族多塩基酸又はそのエステル形成性誘導体が好ましく、例えばフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族二塩基酸またはこれらのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、その他にトリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族多塩基酸またはこれらのエステル形成性誘導体を用いることもできる。これらは1種のみ用いてもよく、また2種以上併用してもよい。
【0049】
ポリオールとしては、炭素数2〜20の脂肪族アルコール類が好ましく、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール等の脂肪族二価アルコールなどを挙げることができ、その他にグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール等の脂肪族多価アルコール等を併用することもできる。これらは1種のみ用いてもよく、また2種以上併用してもよい。
【0050】
末端キャッピング剤としては、炭素数2〜20の一塩基酸又はそのエステル形成性誘導体、炭素数1〜18の一価アルコールが好ましく、炭素数2〜20の一塩基酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、トルイル酸、イソノナン酸、安息香酸、ドデカン酸、ジメチル安息香酸等の一塩基酸又はそのエステル形成性誘導体などを挙げることができ、これらの一塩基酸またはエステル形成性誘導体は、一種のみ用いてもよく、二種以上併用してもよい。また、炭素数1〜18の一価アルコールとしては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、n−ドデカノール、テトラデカノール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコールなどを挙げることができ、これらの一価アルコールは、一種のみ用いてもよく二種以上併用してもよい。
【0051】
エポキシ系可塑剤として、例えばエポキシ化大豆油、オクチルエポキシステアレートなどを挙げることができる。
【0052】
リン酸系可塑剤としては、例えばトリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリオレイルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどを挙げることができる。
【0053】
トリメリット酸系可塑剤としては、例えばトリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、トリイソデシルトリメリレートなどを挙げることができる。
【0054】
ピロメリット酸系可塑剤としては、例えば2−エチキシルピロメリレートなどが挙げられる。
【0055】
本発明の透明性フィルムとする際には、一旦樹脂組成物としてもよく、該樹脂組成物は、該N−置換マレイミド・オレフィン共重合体、該グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム、及び、場合によっては該スチレン・アクリロニトリル共重合体、該可塑剤を一般的な混合・混練を行うことにより製造することができ、その際の混合・混練の装置としては、例えば単軸押出機、二軸押出機、ブラベンダー、ロール、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を挙げることができる。また、溶媒中にそれぞれの成分を溶解あるいは分散させて混合する方法であってもよい。さらに少なくともそれぞれの一成分が存在する中、他成分の原材料から他成分を変性・重合等の方法により製造する方法であってもよい。
【0056】
本発明の透明性フィルムは、製造時や成形加工時の熱履歴に起因する着色や分解、架橋等を抑制するため、フェノール系、リン系、イオウ系、その他の酸化防止剤を必要に応じて含有しても良い。また、これら酸化防止剤はそれぞれ単独で用いてもよく、それぞれを併用して用いても良い。
【0057】
また、本発明の透明性フィルムを光学用フィルムとして用いる際には、可視光線、紫外線、赤外線などの光の照射を受けることが予想され、特に高温状況下での光の照射による熱着色や光劣化を抑制する目的にて、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、近赤外線吸収剤などを必要に応じて配合していても良い。
【0058】
更に、本発明の透明性フィルムは、上述の成分以外に、顔料、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、無機フィラー、染料、オイルなどを必要に応じて配合していても良い。
【0059】
本発明の透明性フィルムの製造方法としては、如何なる方法を用いても良く、例えば溶液キャスティング法(溶液流延法)、溶融押出法、カレンダー法、圧縮成形法などの公知公用の方法が挙げられる。溶液キャスティング法に用いられる溶媒類としては、例えばクロロホルム、塩化メチレンなどの塩素系溶媒;トルエン、キシレン、これらの混合溶媒などの芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルフォキシド、ジオキサン、メチルエチルケトン、テトラハイドロフラン、シクロヘキサノン、アセトン、酢酸エチル、酢酸メチル、シエチルエーテル、アセトニトリルなどを用いることができ、成形装置としては、例えばドラム式キャスティングマシン、バンド式キャスティングマシン、スピンコーターなどが使用できる。溶融押出法としては、例えばTダイ法、インフレーション法が挙げられる。
【0060】
また、得られた透明性フィルムは延伸法により透明性延伸フィルムとしてもよく、採用できるニ軸延伸法としては、例えばテンター法、チューブ法等、一軸延伸法としては、例えば水槽延伸法、輻射延伸法、熱風加熱法、熱板過熱法、ロール加熱法などが挙げられる。
【0061】
本発明の透明性フィルムの厚みは10〜500μmであることが好ましく、特に機械特性、ハンドリング性のバランスなどに優れることから、20〜200μmであることが好ましい。また、本発明の透明性フィルムは、特に透明性に優れたものとなることから、JIS K7136に準拠したヘイズが2%以下であることが好ましい。
【0062】
本発明の透明性フィルムは、ガスバリヤー性、耐傷つき性、耐薬品性等の機能を付与する目的にて、薄膜が塗工されたものであってもよい。すなわち、各種の熱可塑性樹脂;アミノ基、イミノ基、エポキシ基、シリル基などを有する熱硬化性樹脂;アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基などを有する放射線硬化型樹脂;これら樹脂の混合物に重合禁止剤、ワックス類、分散剤、顔料、溶剤、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、無機フィラー等を加え、グラビアロールコーティング法、マイヤーバーコーティング法、リバースロールコーティング法、ディップコーティング法、エアーナイフコーティング法、カレンダーコーティング法、スキーズコーティング法、キスコーティング法、ファンテンコーティング法、スプレーコーティング法、スピンコーティング法等の方法により塗工することができる。さらに、塗工後、必要に応じて放射線照射による硬化、または加熱による熱硬化を行わせて硬化薄膜層とすることができる。また、印刷を行う際にはグラビア方式、オフセット方式、フレキソ方式、シルクスクリーン方式などの方法を用いることができる。また、ガスシール性等を付与する目的から、アルミニウム、ケイ素、マグネシウム、亜鉛等を主成分とする金属酸化物層を有してもよく、該金属酸化物層は真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などにより形成することが好ましい。
【0063】
また、他のフィルムと積層化させることも可能である。積層化させる方法としては、公知公用のいかなる方法を用いてもよく、例えば、ヒートシール法、インパルスシール法、超音波接合法、高周波接合法などの熱接合方法;押出ラミネート法、ホットメルトラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、無溶剤接着ラミネート法、サーマルラミネート法、共押出法等のラミネート加工方法などが挙げられる。積層化させるフィルムとしては、例えば、ポリエステル樹脂フィルム、ポリビニルアルコール樹脂フィルム、セルロース樹脂フィルム、ポリフッ化ビニル樹脂フィルム、ポリ塩化ビニリデン樹脂フィルム、ポリアクリロニトリル樹脂フィルム、ナイロン樹脂フィルム、ポリエチレン樹脂フィルム、ポリプロピレン樹脂フィルム、アセテート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリアクリレート樹脂フィルム等が挙げられる。
【0064】
本発明の透明性フィルムは、透明性、耐熱性、靱性などに優れることから、LCD、有機EL、PDP、タッチパネル、電子ペーパー等のフラットパネルディスプレイや複写機、プリンター、ファクシミリ、光ファイル等の情報機器に使用される光学用フィルムとして好適に使用することができる。該光学用フィルムとして例えば、位相差フィルム、偏光膜保護フィルム、リフレクターフィルム、セパレーターフィルム、光拡散フィルム、透明電極フィルム基板、ディスプレイの表面保護フィルム、アンチグレアフィルム、アンチリフレクションフィルム、電磁波遮蔽フィルム、紫外線吸収フィルム、遠赤外線吸収フィルム、近赤外線吸収フィルムなどを挙げることができる。
【0065】
また、本発明の透明性フィルムは上記光学用フィルム以外の用途においても好適に使用することができ、例えば下記の用途を挙げることができる。
記録分野:静電記録基板、OHP、第2原図、スライドフィルム、マイクロフィルム、X線フィルム
光・磁気メモリー分野:サーモ・プラスチック・レコーディング、強誘電体メモリー、磁気テープ、IDカード、バーコード
帯電防止分野分野:メータ類の窓、テレビのブラウン管、クリーンルーム窓、半導体包装材料、フォトマスク用防塵フィルム
電磁波遮蔽分野:計測器、医療機器、放射線検出器、IC部品、CRT
光電変換素子分野:太陽電池の窓、光増幅器、光センサー
熱線反射分野:窓(建築、自動車等)、白熱電球、調理オーブンの窓、炉の覗き窓、選択透過膜
面状発熱体分野:デフロスタ、航空機、自動車、冷凍庫、保育器、ゴーグル、医療機器、液晶表示装置
電子部品・回路材料分野:コンデンサ、抵抗体、薄膜複合回路、リードレスLSIチップキャリアの実装、ドライフィルムレジスト
電極分野:ペーパーバッテリー用電極
光透過フィルター分野:紫外線カットフィルター、紫外線透過フィルター、紫外線透過可視光吸収フィルター、色分解フィルター、色温度変換フィルター、ニュートラルデンシティフィルター、コントラストフィルター、波長校正フィルター、干渉フィルター、赤外線透過フィルター、赤外線カットフィルター、熱線吸収フィルター、熱線反射フィルター
ガス選択透過性膜分野:酸素/窒素分離膜、二酸化炭素分離膜、水素分離膜
電気絶縁分野:絶縁粘着テープ、モーターのスロットライナ、変圧機の相間絶縁、リード線の絶縁、高電圧ケーブルの絶縁被覆
高分子センサ分野:光センサ、赤外線センサ、音波センサ、圧力センサ
表面保護分野:CRT、家具、システムキッチン、自動車内外装、塗装保護フィルム
摺動材分野:ホッパー・シュートの内張り、ベルトコンベアのすべり材、ガイドレールのすべり材、複写機の紙送りローラー、コンピュータ−マウス
多孔質フィルム分野:透湿防水材、精密濾過膜用のフィルター材
その他分野:通電熱転写、プリンターリボン、電線ケーブルシールド、漏水防止フィルム、電池用セパレートフィルム
【発明の効果】
【0066】
本発明により得られるフィルムは、透明性、耐熱性、靱性、表面性に優れることから、光学用フィルムなどとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0067】
以下に本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0068】
実施例に示された諸物性は以下の方法により測定した。
【0069】
〜数平均分子量〜
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)(東ソー株式会社製、商品名HLC−802A)を用い測定したN−置換マレイミド・オレフィン共重合体の溶出曲線により、標準ポリスチレン換算値として求めた。
【0070】
〜ガラス転移温度〜
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)製、商品名DSC2000)を用い、10℃/分の昇温速度にて測定した。
【0071】
〜屈折率〜
ASTM D542に準拠し、測定温度25℃、測定波長589nmの条件で測定した。
【0072】
〜ゴム粒子の平均粒子径〜
レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、商品名LA500)を用いて測定した。
【0073】
〜グラフト変性共重合体ゴムの組成〜
グラフト変性共重合体ゴムをアセトンにより可溶分と不溶分に抽出分別し、可溶分のH−NMR測定によりスチレン・アクリロニトリル共重合体のスチレン単量体残基単位、アクリロニトリル単量体残基単位の割合を求め、更に不溶分の元素分析を行うことにより組成を求めた。
【0074】
〜溶融粘度〜
高化式フローテスター(島津製作所製、商品名CFT−500)を用い、測定温度270℃、荷重150Kg、ノズル径1mmφ、ノズル長さ10mmの条件にて測定した。
【0075】
〜ヘイズ〜
JIS K7136に準拠して測定した。
【0076】
〜引張破断伸び〜
ASTM D882に準拠し、フィルム成形時の引取り方向の引張破断伸びを測定した。
【0077】
〜フィルム表面荒れ〜
フィルム表面の荒れの有無を目視により観察した。
【0078】
合成例1(N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体の合成)
ステンレス製オートクレーブに無水マレイン酸・イソブテン共重合体(株式会社クラレ製、商品名イソバン6)100重量部及び溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと記す。)500重量部を充填し、室温で攪拌して無水マレイン酸・イソブテン共重合体をNMPに溶解させた。次いで、メチルアミン40重量部を室温で導入した後、80℃に昇温して1時間攪拌することにより無水マレイン酸単位のアミド化反応を行った。引き続き、205℃に昇温し、1時間攪拌することによりイミド化反応を行った後、室温まで冷却し、イソプロパノールを用いて再沈殿処理して共重合体を得た。
【0079】
元素分析、赤外吸収スペクトル測定及び13C−NMR測定から、生成した共重合体はN−メチルマレイミド残基/イソブテン残基=0.50/0.50(モル比)のN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体(以下、Aと記すこともある。)であることを確認した。また、数平均分子量は60000であり、屈折率は1.5276であった。
【0080】
合成例2(1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子の合成)
ステンレス製オートクレーブに、脱イオン水180重量部、高級脂肪酸セッケン3.5重量部、水酸化ナトリウム0.08重量部を充填し、窒素置換後、65℃に昇温した。次いで1,3−ブタジエン単量体80重量部、スチレン単量体20重量部及びt−ドデシルメルカプタン0.2重量部からなる単量体混合物の内、30重量%を該オートクレーブ内に添加した後、過硫酸カリウム0.15重量部を添加し、1時間攪拌することにより重合反応を行った。その後、単量体混合物の残りの70重量%を連続的に添加し、添加終了後、75℃に昇温しさらに1時間攪拌することにより重合反応を行い、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子のラテックス(以下、B−1と記すこともある。)を得た。
【0081】
得られた1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子は、平均粒子径0.1μmであり、屈折率は1.5287であった。
【0082】
合成例3(1,3−ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合体ゴム粒子の合成)
ステンレス製オートクレーブに、脱イオン水200重量部、高級脂肪酸セッケン3.5重量部、炭酸水素ナトリウム1重量部を充填し、窒素置換後、65℃に昇温した。次いで1,3−ブタジエン単量体80重量部、アクリル酸ブチル単量体20重量部からなる単量体混合物の内、20重量%を該オートクレーブ内に添加した後、過硫酸カリウム0.15重量部を添加し、1時間攪拌することにより重合反応を行った。その後、単量体混合物の残りの80重量%を連続的に添加し、添加終了後、75℃に昇温しさらに1時間攪拌することにより重合反応を行い、1,3−ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合体ゴム粒子のラテックス(以下、B−2と記すこともある。)を得た。
【0083】
得られた1,3−ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合体ゴム粒子は、平均粒子径0.1μmであり、屈折率は1.5046であった。
【0084】
合成例4(アクリル酸ブチル重合体ゴム粒子の合成)
ステンレス製オートクレーブに、脱イオン水200重量部、高級脂肪酸セッケン3.5重量部、炭酸水素ナトリウム1重量部を充填し、窒素置換後、65℃に昇温した。次いで、アクリル酸ブチル単量体100重量部、マレイン酸ジアリル0.6重量部からなる単量体混合物の内、10重量%を該オートクレーブ内に添加した後、過硫酸カリウム0.15重量部を添加し、1時間攪拌することにより重合反応を行った。その後、単量体混合物の残りの90重量%を連続的に添加し、添加終了後、75℃に昇温しさらに1時間攪拌することにより重合反応を行い、アクリル酸ブチル重合体ゴム粒子のラテックス(以下、B−3と記すこともある。)を得た。
【0085】
得られたアクリル酸ブチル重合体ゴム粒子は、平均粒子径0.1μmであり、屈折率は1.4896であった。
【0086】
合成例5(グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムの合成)
ステンレス製オートクレーブに、合成例2により得られた1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子のラテックス100重量部に対し、アクリロニトリル単量体15重量部、スチレン単量体35重量部、脱イオン水(ラテックス中の水分を含む)300重量部、不均化ロジン酸カリウム1.5重量部、デキストロース1重量部、ピロリン酸ナトリウム0.5重量部、硫酸第一鉄0.01重量部、t−ドデシルメルカプタン0.3重量部を充填し、窒素置換後、60℃に昇温した。次いで、開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を該オートクレーブ内に添加し、重合による発熱が生じた。該発熱が終了した後、さらにアクリロニトリル単量体15重量部、スチレン単量体35重量部、t−ドデシルメルカプタン0.85重量部を連続的に添加し、添加終了後、開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.05重量部を該オートクレーブ内に添加し、30分間攪拌することにより重合反応を完結させた。次いで、重合反応液を硫酸マグネシウム水溶液中に添加・凝固させ、該凝固物を水洗、乾燥することによりグラフト変性共重合体ゴム(以下、C−1と記す。)を得た。
【0087】
得られたC−1は、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子51重量%、該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にグラフト化したアクリロニトリル・スチレン共重合体26重量%、アクリロニトリル・スチレン共重合体23重量%からなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムであることを確認した。
【0088】
また、該C−1をアセトンによるソックスレー抽出を施すことにより、グラフト化していないアクリロニトリル・スチレン共重合体を抽出除去したグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム(以下、C−1’と記す。)を調製した。
【0089】
合成例6(グラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムの合成)
アクリロニトリル単量体、スチレン単量体、脱イオン水、不均化ロジン酸カリウム、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム、硫酸第一鉄、t−ドデシルメルカプタン、クメンハイドロパーオキサイドの配合割合を表1に示した量とした以外は、合成例5と同様の方法により、グラフト変性共重合体ゴム(以下、C−2,3,4,5と記す。)を得た。
【0090】
得られたC−2は、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子50重量%、該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にグラフト化したアクリロニトリル・スチレン共重合体38重量%、アクリロニトリル・スチレン共重合体12重量%からなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム;C−3は、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子50重量%、該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にグラフト化したアクリロニトリル・スチレン共重合体26重量%、アクリロニトリル・スチレン共重合体24重量%からなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム;C−4は、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子51重量%、該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にグラフト化したアクリロニトリル・スチレン共重合体38重量%、アクリロニトリル・スチレン共重合体11重量%からなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム;C−5は、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子66重量%、該1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にグラフト化したアクリロニトリル・スチレン共重合体26重量%、アクリロニトリル・スチレン共重合体8重量%からなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム、であることを確認した。
【0091】
また、該C−3をアセトンによるソックスレー抽出を施すことにより、グラフト化していないアクリロニトリル・スチレン共重合体を抽出除去したグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム(以下、C−3’と記す。)を調製した。
【0092】
合成例7(グラフト変性1,3−ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合体ゴムの合成)
ステンレス製オートクレーブに、合成例3により得られた1,3−ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合体ゴム粒子のラテックス100重量部に対し、アクリロニトリル単量体15重量部、スチレン単量体35重量部、脱イオン水(ラテックス中の水分を含む)300重量部、不均化ロジン酸カリウム2.5重量部、デキストロース2重量部、ピロリン酸ナトリウム1重量部、硫酸第一鉄0.01重量部、t−ドデシルメルカプタン0.3重量部を充填し、窒素置換後、60℃に昇温した。次いで、開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を該オートクレーブ内に添加し、重合による発熱が生じた。該発熱が終了した後、さらにアクリロニトリル単量体15重量部、スチレン単量体35重量部、t−ドデシルメルカプタン0.85重量部を連続的に添加し、添加終了後、開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.35重量部を該オートクレーブ内に添加し、30分間攪拌することにより重合反応を完結させた。次いで、重合反応液を硫酸マグネシウム水溶液中に添加・凝固させ、該凝固物を水洗、乾燥することによりグラフト変性共重合体ゴム(以下、C−6と記す。)を得た。
【0093】
得られたC−6は、1,3−ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合体ゴム粒子50重量%、該1,3−ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合体ゴム粒子にグラフト化したアクリロニトリル・スチレン共重合体28重量%、アクリロニトリル・スチレン共重合体22重量%からなるグラフト変性1,3−ブタジエン・アクリル酸ブチル共重合体ゴムであることを確認した。
【0094】
また、該C−6をアセトンによるソックスレー抽出を施すことにより、グラフト化していないアクリロニトリル・スチレン共重合体を抽出除去したグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム(以下、C−6’と記す。)を調製した。
【0095】
合成例8(グラフト変性アクリル酸ブチル重合体ゴムの合成例)
ステンレス製オートクレーブに、合成例4により得られたアクリル酸ブチル重合体ゴム粒子のラテックス100重量部に対し、アクリロニトリル単量体15重量部、スチレン単量体35重量部、脱イオン水(ラテックス中の水分を含む)300重量部、不均化ロジン酸カリウム2.5重量部、デキストロース2重量部、ピロリン酸ナトリウム1重量部、硫酸第一鉄0.01重量部、t−ドデシルメルカプタン0.3重量部を充填し、窒素置換後、60℃に昇温した。次いで、開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.1重量部を該オートクレーブ内に添加し、重合による発熱が生じた。該発熱が終了した後、さらにアクリロニトリル単量体15重量部、スチレン単量体35重量部、t−ドデシルメルカプタン0.85重量部を連続的に添加し、添加終了後、開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.35重量部を該オートクレーブ内に添加し、30分間攪拌することにより重合反応を完結させた。次いで、重合反応液を硫酸マグネシウム水溶液中に添加・凝固させ、該凝固物を水洗、乾燥することによりグラフト変性重合体ゴム(以下、C−7と記す。)を得た。
【0096】
得られたC−7は、アクリル酸ブチル重合体ゴム粒子50重量%、該アクリル酸ブチル重合体ゴム粒子にグラフト化したアクリロニトリル・スチレン共重合体15重量%、アクリロニトリル・スチレン共重合体35重量%からなるグラフト変性アクリル酸ブチル重合体ゴムであることを確認した。
【0097】
また、該C−7をアセトンによるソックスレー抽出を施すことにより、グラフト化していないアクリロニトリル・スチレン共重合体を抽出除去したグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム(以下、C−7’と記す。)を調製した。
【0098】
実施例1
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体80重量%及び合成例5により得られたC−1を20重量%の割合で配合し、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して押出し、透明性樹脂組成物を得た。得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は154℃、溶融粘度は487Pa・sであった。
【0099】
次いで、得られた樹脂組成物をTダイスを設置した2軸押出機に供し、Tダイスの温度270〜285℃、冷却ロールの温度110〜140℃の条件で押出して厚み100μmの透明性フィルムを得た。本透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表3に示す。
得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0100】
実施例2
合成例5により得られたC−1の代わりに合成例6により得られたC−2とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0101】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は154℃、溶融粘度は783Pa・sであり、得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0102】
実施例3
合成例5により得られたC−1の代わりに合成例6により得られたC−3とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0103】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は154℃、溶融粘度は439Pa・sであり、得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0104】
実施例4
合成例5により得られたC−1の代わりに合成例6により得られたC−4とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0105】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は154℃、溶融粘度は711Pa・sであり、得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0106】
実施例5
N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体80重量%の代わりに90重量%、合成例5により得られたC−1を20重量%の代わりに合成例6により得られたC−5を10重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0107】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は156℃、溶融粘度は413Pa・sであり、得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0108】
実施例6
N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体80重量%の代わりに70重量%、合成例5により得られたC−1を20重量%の代わりに30重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0109】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は150℃、溶融粘度は615Pa・sであり、得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0110】
実施例7
合成例5により得られたC−1の代わりにC−1’とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0111】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は156℃、溶融粘度は938Pa・sでり、得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0112】
実施例8
合成例5により得られたC−1の代わりに合成例6により得られたC−3’とした以外は、実施例1と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0113】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は156℃、溶融粘度は923Pa・sであり、得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0114】
比較例1
合成例5により得られたC−1の代わりに合成例7により得られたC−6とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0115】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度は154℃、溶融粘度は502Pa・sであり、得られたフィルムは透明性、表面性に劣るものであった。
【0116】
比較例2
合成例5により得られたC−1の代わりに合成例8により得られたC−7とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0117】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度は154℃、溶融粘度は428Pa・sであり、得られたフィルムは透明性、靱性、表面性に劣るものであった。
【0118】
比較例3
N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体を単独で、実施例1と同様の方法により評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0119】
ガラス転移温度は159℃、溶融粘度は322Pa・sであり、得られたフィルムは靱性に劣るものであった。
【0120】
比較例4
N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体80重量%の代わりに40重量%、合成例5により得られたC−1を20重量%の代わりに60重量%とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0121】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度は130℃、溶融粘度は1868Pa・sであり、得られたフィルムは透明性、耐熱性、表面性に劣るものであった。
【0122】
比較例5
合成例5により得られたC−1の代わりにアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂(ダイセルポリマー株式会社製、商品名セビアン−V、T180)とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0123】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度は138℃、溶融粘度は298Pa・sであり、得られたフィルムは耐熱性、透明性、靱性に劣るものであった。
【0124】
比較例6
合成例5により得られたC−1の代わりに合成例7により得られたC−6’とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0125】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度は155℃、溶融粘度は710Pa・sであり、得られたフィルムは透明性、表面性に劣るものであった。
【0126】
比較例7
合成例5により得られたC−1の代わりに合成例8により得られたC−7’とした以外は、実施例1と同様の方法により樹脂組成物、フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表4に示す。
【0127】
得られた樹脂組成物のガラス転移温度は157℃、溶融粘度は639Pa・sであり、得られたフィルムは透明性、靱性、表面性に劣るものであった。
【0128】
実施例9
合成例1により得られたN−メチルマレイミド・イソブテン共重合体75重量%、合成例5により得られたC−1を20重量%及びポリエステル系可塑剤(株式会社クラレ製、商品名クラレポリオールP−530)5重量%を配合し、30mmφ2軸押出機(株式会社日本製鋼所製、商品名TEX30)に供して押出し、透明性樹脂組成物を得た。得られた透明性樹脂組成物はガラス転移温度147℃、溶融粘度241Pa・sであった。
【0129】
得られた樹脂組成物をTダイスを設置した2軸押出機に供し、Tダイスの温度260〜270℃、冷却ロールの温度120〜130℃の条件で押出して厚み100μmの透明性フィルムを得た。透明性フィルムを用いて物性を測定した結果を表5に示す。得られた透明性フィルムは透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0130】
実施例10
N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体75重量%の代わりに80重量%とし、合成例5により得られたC−1を20重量%の代わりに合成例6により得られたC−2を15重量%とした以外は、実施例9と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0131】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は149℃、溶融粘度は225Pa・sであり、得られた透明性フィルムは、透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0132】
実施例11
N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体75重量%の代わりに72.5重量%とし、合成例5により得られたC−1を20重量%の代わりに合成例6により得られたC−3を20重量%とし、ポリエステル系可塑剤5重量%を7.5重量とした以外は、実施例9と同様の方法により透明性樹脂組成物、透明性フィルムを得、その評価を行った。評価結果を表5に示す。
【0133】
得られた透明性樹脂組成物のガラス転移温度は143℃、溶融粘度は186Pa・sであり、得られた透明性フィルムは、透明性、靱性、耐熱性、表面性に優れるものであった。
【0134】
【表1】

【0135】
【表2】

【0136】
【表3】

【0137】
【表4】

【0138】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される単位40〜60モル%と下記一般式(II)で示される単位60〜40モル%からなり、数平均分子量が1×10以上5×10以下であるN−置換マレイミド・オレフィン共重合体50〜99重量%、及び、1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子にスチレン・アクリロニトリル共重合体をグラフト化してなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム50〜1重量%からなることを特徴とする透明性フィルム。
【化1】

(ここで、R1は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基から選ばれる少なくとも1種以上の有機基を示す。)
【化2】

(ここで、R2、R3は各々独立して水素又は炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【請求項2】
平均粒子径0.01〜1μmを有する1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子よりなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1に記載の透明性フィルム。
【請求項3】
N−置換マレイミド・オレフィン共重合体の屈折率に対し、屈折率差が絶対値として0.02以下の1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴム粒子よりなるグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明性フィルム。
【請求項4】
N−置換マレイミド・オレフィン共重合体及びグラフト変性1,3−ブタジエン・スチレン共重合体ゴムの合計量100重量部に対し、さらにスチレン・アクリロニトリル共重合体1〜60重量部を配合してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明性フィルム。
【請求項5】
さらに、N−置換マレイミド・オレフィン共重合体100重量部に対し、可塑剤1〜30重量部を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明性フィルム。
【請求項6】
厚さが20〜200μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明性フィルム。
【請求項7】
JIS K7136に準拠し測定したヘイズが2%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の透明性フィルム。

【公開番号】特開2006−70134(P2006−70134A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254113(P2004−254113)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】