説明

透明感熱記録体

【課題】 光源による発色色調の変動が少なく、低記録濃度から高記録濃度における発色色調(色味)の変動が少なく、しかも地肌カブリ性に優れ、記録部の最高濃度の極めて高い透明感熱記録体を提供することにある。
【解決手段】 透明支持体の少なくとも片面上に、ロイコ染料、呈色剤を含有する感熱記録層を有する透明感熱記録体において、ロイコ染料として少なくとも、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオランなどの赤発色性フルオラン化合物、3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリドなどの青緑発色性フタリド化合物及び3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオランなどの黒発色性フルオラン化合物を用い、かつ赤発色性フルオラン化合物に対して青緑発色性フタリド化合物を25〜100質量%用い、黒発色性フルオラン化合物が50〜200質量%を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した透明感熱記録体に関するものである
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料と呈色剤との熱による発色反応を利用した感熱記録体は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトでかつその保守も比較的容易であるため、ファクシミリや各種計算機などの記録媒体としてのみならずCRT医療診断、X線画像用プリンター、CAD用のプロッターなどの記録媒体としても使用されている。
【0003】
その中で、CRT医療診断用、X線画像用プリンターの記録媒体として使用されるシャウカステン用の感熱記録体は、高記録画質と低濃度から高濃度において発色色調の変動が少ないものが要求される。
【0004】
シャウカステン用の感熱記録体として、透明支持体上設けた感熱記録層中に、色味を帯びない黒色画像を得るために最長吸収ピーク波長が400〜600nm程度にあるロイコ染料と最長吸収ピーク波長が500〜700nmにあるロイコ染料と、ポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂とのマイクロカプセルを有する感熱記録体(特許文献1参照)、あるいはかかるロイコ染料と樹脂からなる実質的に液体の有機溶剤を含まない複合粒子を有する感熱記録体(特許文献2参照)は知られているが、低記録濃度から高記録濃度における記録時および経時的な発色色調の変動のより少ないものが要望されている。
【0005】
なお、最長吸収ピーク波長が400〜600nm程度にある黒発色性のフルオラン系ロイコ染料と最長吸収ピーク波長が500〜700nmにあるアザフタリド系ロイコ染料を併用した感熱記録体(特許文献3参照)は公知であるが、記録部の色調に青味があり問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開平04−341888号公報(請求項1)
【0007】
【特許文献2】特開2001−232940号公報(請求項1、実施例2)
【0008】
【特許文献3】特開平5−169827号公報(請求項1、実施例1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、光源による発色色調の変動が少なく、低記録濃度から高記録濃度における発色色調(色味)の変動が少なく、しかも地肌カブリ性に優れ、記録部の最高濃度の極めて高い透明感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
透明支持体の少なくとも片面上に、ロイコ染料、呈色剤および水性接着剤を含有する感熱記録層、並びに保護層を有する透明感熱記録体において、少なくともロイコ染料として、一般式(1)で表される赤発色性フルオラン系化合物、一般式(2)で表される青緑発色性フタリド系化合物および一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物を用い、かつ一般式(1)で表される赤発色性フルオラン系化合物に対して一般式(2)で表されるフタリド系化合物を25〜100質量%用い、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物が50〜200質量%を用いるものである。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
【化3】

本発明はさらに下記一般式(4)で表されるアザフタリドを上記一般式(1)、(2)、(3)で表される染料と併用するのが好ましい。
【0014】
【化4】

一般式(1)、一般式(2)におけるR1〜R4、および一般式(3)におけるR7およびR8は炭素数1乃至6のアルキル基を示す。一般式(2)においてR5およびR6は炭素数1乃至8のアルキル基またはフェニル基を示し、一般式(3)においてR9は水素原子またはメチル基を示す。一般式(4)において、R10〜R13は炭素数1乃至6のアルキル基を示し、R14は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。
【発明の効果】
【0015】
本発明の感熱記録体は、光源による発色色調の変動が少なく、低記録濃度から高記録濃度における発色色調(色味)の変動が少なく、しかも地肌カブリ性に優れ、記録部の最高濃度の極めて高い透明感熱記録体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
透明支持体を有する感熱記録層中のロイコ染料として、一般式(1)で表される赤発色性フルオラン系化合物、一般式(2)で表される青緑発色性のフタリド系化合物および一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物を用い、かつ一般式(1)で表される赤発色性フルオラン系化合物に対して一般式(2)で表されるフタリド系化合物を25〜100質量%、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物を50〜200質量%用いるものである。
【0017】
一般式(1)で表される赤発色性フルオラン系化合物に対して、一般式(2)で表される青緑発色性フタリド系化合物が25質量%より少なくても、100質量%より多くても、シャウカステン用に支持体として透明フイルムを用いた場合、低濃度記録部(光学濃度で0.3〜0.6程度)と高濃度記録部(光学濃度で1.5〜3.5程度)での色調が大きく変化する恐れがあり、30〜80質量%程度がより好ましい。また、25質量%より少なくなると記録部の最高濃度を高める効果が著しく低下する。
また一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物が50質量%より少なくても、200質量%より多くても光源の違いにより色調が大きく変化する恐れがあり、70〜150質量%程度がより好ましい。
【0018】
一般式(1)で表される赤発色性フルオラン系化合物、一般式(2)で表される青緑発色性フタリド系化合物および一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物からなる特定ロイコ染料は、それぞれ二種以上用いることもできる。特定のロイコ染料の合計使用比率としては感熱記録層に対して5〜35質量%程度である。
また、その効果を阻害しない範囲で他の公知のロイコ染料を併用することも可能である。
一般式(4)で表されるアザフタリドを上記一般式(1)、(2)、(3)で表される染料と併用することで、低濃度記録部と高濃度記録部での色調の変化がより少なく好ましい。
【0019】
一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物として、一般式(3)中のRが、メチル基の黒発色性フルオラン系化合物を用いると、光源の違いによる色調の差が少なく、好ましい。
【0020】
一般式(1)で表される赤発色性フルオラン系化合物の具体例としては、例えば3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−5,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ジメチルフルオラン、3−ジメチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン等が挙げられる。なかでも、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオランが好ましい。
【0021】
一般式(2)で表される青緑発色性フタリド系化合物の具体例としては、例えば3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−〔2,2−ビス(1−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−〔2,2−ビス(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−フェニルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド。なかでも、3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリドが好ましい。
【0022】
一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物の具体例としては、例えば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−トルイジノ)−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−トルイジノ)−フルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン等が挙げられる。なかでも、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオランが好ましい。
【0023】
一般式(4)で表される緑発色性アザフタリドの具体例としては、例えば3,3’−ビス(4−ジメチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−メトキシフェニル)−4−アザフタリド、3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−n−ブトキシフェニル)−4−アザフタリド等があげられる。なかでも、3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリドが好ましい。
【0024】
かかる特定のロイコ染料は、平均粒径0.2〜3.0μm程度の特定のロイコ染料のみからなる固体粒子の形状で用いたり、平均粒径0.5〜3.0μm程度のマイクロカプセル中に内包させて用いたり、あるいは樹脂と平均粒径0.5〜3.0μm程度の複合粒子を形成させて用いることができる。
【0025】
なかでも、特定のロイコ染料を樹脂と複合粒子を形成させて用いるのが好ましく、特に特定のロイコ染料をポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂により、実質的に有機溶剤を含まない複合粒子を形成させたものを用いることにより、透明性に優れ、しかも低濃度記録部(光学濃度で0.3〜0.6程度)と高濃度記録部(光学濃度で1.5〜3.5程度)における色調の差が極めて少ない効果が得られる。
【0026】
もちろん、異なった比率で特定のロイコ染料を含有する複合粒子を二種以上併用することにより、記録部の色調を微調整することもできる。
【0027】
特定のロイコ染料およびポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂とからなる複合粒子は、例えば多価イソシアネート化合物と特定のロイコ染料とを溶解した油性溶液をポリビニルアルコール等の親水性保護コロイド溶液中に平均粒子径が0.5〜3μm程度となるように乳化分散後、多価イソシアネート化合物の高分子化反応を促進させることにより得られるものであり実質的に有機溶剤を含まないない複合粒子である。複合粒子に対する全ロイコ染料の含有比率としては、5〜70質量%程度、好ましくは30〜50質量%程度である。
【0028】
多価イソシアネート化合物とは水と反応することによりポリウレア、またはポリウレアポリウレタンを形成する化合物であり。多価イソシアネート化合物のみであってもよいし、または多価イソシアネート化合物及びこれと反応するポリオール、ポリアミンとの混合物、或いは多価イソシアネート化合物とポリオールの付加物、或いはビウレット体、イソシアヌレート体等の多量体であってもよい。これら多価イソシアネート化合物に特定のロイコ染料を溶解し、この溶液を、ポリビニルアルコール等の保護コロイド物質を溶解含有している水性媒体中に乳化分散し、さらに必要によりポリアミン等の反応性物質を混合後、この乳化分散液を加温することにより、高分子形成性原料を重合させることによって高分子化し、それによってロイコ染料と高分子物質とからなる複合粒子を形成することができる。
【0029】
多価イソシアネート化合物としては、例えばp−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物等が挙げられる。
【0030】
またポリオール化合物としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、プロピレングリコール、1,3−ジヒドロキシブタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、フェニルエチレングリコール、ペンタエリスリトール、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0031】
また、ポリアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチルピペラジン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン等が挙げられる。
【0032】
もちろん、多価イソシアネート化合物、多価イソシアネートとポリオールの付加物及びポリオール化合物などは、前記化合物に限定されるものではなく、また必要に応じて二種以上を併用してもよい。
【0033】
更に、複合粒子中には記録感度を高めるために融点が40〜150℃程度の芳香族有機化合物(増感剤)、耐光性を高めるための紫外線吸収剤、および安定化剤としてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等を含有させることもできる。
【0034】
感熱記録層中に特定のロイコ染料と共に含有される呈色剤としては、例えば4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、3,3’−ジアリル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2’−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、N−p−トリルスルホニル−N−フェニルウレア、4,4‘−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、N−p−トルエンスルホニル−N’−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、3,3’−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4‘−アリルオキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、2−[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−6−[(2−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノール、2,6−ビス[(4−ヒドロキシフェニル)メチル]−4−(sec−ブチル)フェノール、N,N’−ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブチルオキシカルボニルフェニルウレア、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−{3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛などが挙げられる。これらの呈色剤のうち本願特定のロイコ染料との併用により、特に低濃度記録部と高濃度記録部での色調の変化がより少なく好ましい呈色剤としては、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4‘−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブチルオキシカルボニルフェニルウレアがあげられる。
【0035】
呈色剤の使用比率としては、感熱記録層の全固形分に対してそれぞれ10〜60質量%程度、好ましくは20〜50質量%程度である。
【0036】
感熱記録層は、一般には水を媒体とし、複合粒子、平均粒子径が0.1〜3μm程度の粉砕された呈色剤、接着剤、および助剤とを混合攪拌して調製された感熱記録層用塗液を透明フイルム上に乾燥後の塗布量が3〜35g/m程度、好ましくは10〜30g/mとなるように塗布乾燥して形成される。
【0037】
感熱記録層用塗液中の接着剤としては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン等の水溶性接着剤、並びに酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックス、アクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス等の疎水性接着剤が挙げられる。
【0038】
また、助剤としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステル・ナトリウム塩、脂肪酸金属塩等の界面活性剤類、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤類、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム等の顔料類、ジメチロール尿素、ケテンダイマー、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ホウ砂、ホウ酸、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系化合物等の耐水化剤類、その他消泡剤、蛍光染料、着色染料等が挙げられる。
【0039】
感熱記録層が設けられる透明フイルムは、その厚みとしては20〜200μm程度であり、着色されていてもよい。また、感熱記録層との密着性を高めるのに表面にアンカーコート層を設けたり、コロナ放電処理したりすることもできる。さらに、導電剤による導電処理を施してもよい。
【0040】
透明フイルムの具体例としては、ポリカーボネート系フイルム、ポリエステル系フイルム、ポリスチレン系フイルム、ポリオレフィン系フイルム、ポリアミド系フイルム等が挙げられる。なかでも、ポリエステル系フイルムであるポリエチレンテレフタレートフイルムがシャウカステンへの装着性に優れ好ましい。
【0041】
感熱記録層上には、記録走行性、耐摩擦カブリ性、耐薬品性を高めるために成膜性を有する接着剤を主成分とする保護層を設けることにより、更に感熱記録体の透明性が高められる効果が得られる。
【0042】
かかる保護層中の樹脂としては、例えば感熱記録層中の接着剤が使用され、更に、保護層中には感熱記録層中に含有される界面活性剤類、顔料類、架橋剤類、ワックス類、滑剤類等を使用することもできる。
【0043】
保護層は、一般には水を媒体とし、水性接着剤、必要により顔料類、架橋剤類、ワックス類、滑剤類等と共に混合攪拌して調製された保護層用塗液を乾燥後の塗工量が0.5〜10g/m程度、好ましくは1〜5g/mとなるように感熱記録層上に塗布乾燥して形成される。
【0044】
感熱記録層および保護層の形成方法については特に限定されず、例えばエアーナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアーブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング等の公知の適当な塗布方法により形成される。
【0045】
なお、本発明の感熱記録体においては、支持体である透明フイルムの他方の面(裏面側)帯電防止層を設けたり、或いは各層の塗布形成後にスーパーカレンダー掛け等の平滑化処理をしたりする等の各種公知の感熱記録製造技術を付加することもできる。
【実施例】
【0046】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を示す。
【0047】
〔実施例1〜6、比較例1〜5〕
(1)複合粒子分散液の調製
(ロイコ染料A) 一般式(1)で表わされる赤発色性化合物である3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン
(ロイコ染料B) 一般式(2)で表わされる青緑発色性フタリド系化合物である3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド
(ロイコ染料C) 一般式(3)で表わされる黒発色性化合物である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン
(ロイコ染料D) 一般式(3)で表わされる黒発色性化合物である3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン
(ロイコ染料E) 一般式(4)で表わされる緑発色性化合物である3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド
【0048】
下記表1に示された質量比からなる上記のロイコ染料A、B、C、DおよびEの組成物20部を100℃に加熱したジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート25部に溶解し、この溶液を35℃に冷却後、同温度の8%ポリビニルアルコール(日本合成化学工業製、商標:ゴーセノールGM−14L)水溶液100部に徐々に添加し、ホモジナイザーを用い、回転数8000rpm の攪拌によって乳化分散した後、この乳化分散液に水60部を加えて均一化した。この乳化分散液を90℃に昇温し、10時間の硬化反応させ後、固形分濃度が25%となるように水を添加し、体積平均粒子径0.6μmの複合粒子分散液を得た。
【0049】
【表1】

【0050】
(2)呈色剤分散液の調製
4,4‘−シクロヘキシリデンジフェノール40部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液20部、および水40部からなる組成物をウルトラビスコミルにて平均粒子径が0.3μmとなるまで粉砕して呈色剤分散液を得た。
【0051】
(3)感熱記録層用塗液の調製
複合粒子分散液100部、呈色剤分散液70部、体積平均粒径が0.5μmのステアリン酸アミドの30%分散液100部、固形分濃度48%のスチレン−ブタジエン系ラテックス(ポリラック752A、三井化学社製)30部、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂の20%水溶液5部および水30部からなる組成物を攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0052】
(4)保護層用塗液の調製
カオリン(商品名:UW−90、EC社製)の50%分散液(体積平均粒径0.6μm)40部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、日本合成化学工業社製)の10%水溶液500部、ウレタン系ラテックス(ハイドランAP−30F、固形濃度20%、大日本インキ化学工業社製)100部、パラフィンワックスの20%水分散液(体積平均粒径0.8μm)50部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの10%水溶液1部および水50部からなる組成物を攪拌して保護層用塗液を得た。
【0053】
(5)透明感熱記録体の作製
青色透明なポリエチレンテレフタレートフイルム(商品名:メリネックス912、厚さ175μm、透過測定色彩値a*−6.4、b*−12.9、ヘイズ値3%、帝人デュポン社製)の片面上に、感熱記録層用塗液をスロットダイコーターにて乾燥後の塗布量が25g/mとなるように塗布乾燥して感熱記録層を設け、その上に保護層用塗液をグラビアコーターを用いて乾燥後の塗布量が3.5g/mとなるように塗布乾燥して保護層を設け、実施例1〜6および比較例1〜5の透明感熱記録体を得た。
【0054】
〔実施例7〕
実施例1の感熱記録層用塗液の調製において、複合粒子分散液80部の代わりに下記のロイコ染料分散液25部を用いた以外は、実施例1と同様に透明感熱記録体を得た。
【0055】
(1)ロイコ染料の分散液の調製
3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド5部、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン5部、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオラン5部、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン5部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液15部、および水15部からなる組成物をウルトラビスコミルを用いて平均粒子径が0.6μmとなるまで粉砕した。
【0056】
〔実施例8〕
実施例1の感熱記録体の作製において、青色透明なポリエチレンテレフタレートフイルムの代わりに無色透明なポリエチレンテレフタレートフイルム(商品名:HMW−100、厚さ175μm、透過測定色彩値a*0.23、b*+2.72、ヘイズ値5%、帝人社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして透明感熱記録体を得た。
【0057】
かくして得られた感熱記録体について以下の評価を行い、その結果を表2に示す。
【0058】
(印加エネルギーの違いによる色調変化の評価)
感熱印字試験装置TH−PMD(大倉電機製)を用いて、1ライン記録時間:5msec、副走査線密度:8ライン/mm、ドット当たり印加エネルギー:1.0mJの条件下に256ラインのベタ印字を施し、低印加エネルギー記録を行った。また、別に、1ライン記録時間:5msec、副走査線密度:8ライン/mm、ドット当たり印加エネルギー:2.0mJの条件下に256ラインのベタ印字を施し、高印加エネルギー記録を行った。各記録部の色彩値a*、b*を瞬間マルチ測光システムMCPD(大塚電子社製)(条件2度視野、光源D65)で測定し、各記録部a*の差Δa*、各記録部b*の差Δb*を求めた。なお、Δa*、Δb*共に3.0以下であれば問題のないレベルであり、特に1.0以下が好ましい。
【0059】
(光源の違いによる色調変化の評価)
上記低印加エネルギー記録部の色彩値a*、b*を瞬間マルチ測光システムMCPD(大塚電子社製:条件2度視野)でD65光源とA光源2種の光源の色彩値をa*、b*を測定し、その差Δa*、Δb*を表2に記載した。なお、Δa*、Δb*共に3.0以下であれば問題のないレベルであり、Δa*、Δb*共に2.0以下であれば申し分ない。
【0060】
(記録濃度の評価)
上記高印加エネルギー記録部の濃度をマクベス濃度計(商品名:TR−927J型マクベス社製)のビジュアルモードで透過濃度を測定した。
【0061】
(地肌カブリ性の評価)
感熱記録体を40℃、90%RHの条件下で24時間処理した後、および処理前の未記録部をマクベス濃度計(ビジュアルモード)にて測定した。
【0062】
(透明性)
直読ヘイズメーター(スガ試験機製)によりJIS K 7105に従い透明度(ヘイズ度)を測定した。
【0063】
(シャウカステン適性)
印加エネルギーの違いによる色調変化の評価における記録後の感熱記録体をシャウカステンにて観察した。
○:記録部が鮮明に観察できる。
×:記録部が不鮮明である
なお、ヘイズ度が40%以下で、高印加エネルギーでの記録濃度が2.0〜3.0であればシャウカステン適性に問題はない。
【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
透明支持体の少なくとも片面上に、ロイコ染料、呈色剤および水性接着剤を含有する感熱記録層を有する透明感熱記録体において、ロイコ染料として特定の赤発色性フルオラン合物、特定の青緑発色性フタリド系化合物、特定の黒発色性フルオラン化合物を用い、かつ赤発色性フルオラン化合物に対して青緑発色性フタリド化合物を25〜100質量%用い、黒発色性フルオラン化合物が50〜200質量%を用いることにより、光源による発色色調の変動が少なく、低記録濃度から高記録濃度における発色色調(色味)の変動が少なく、しかも地肌カブリ性に優れ、記録部の最高濃度の極めて高い透明感熱記録体が得られ、医療用透明感熱記録体などにも適用できる。














【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体の少なくとも片面上に、ロイコ染料、呈色剤および水性接着剤を含有する感熱記録層を有する透明感熱記録体において、ロイコ染料が少なくとも、一般式(1)で表される赤発色性フルオラン化合物、一般式(2)で表される青緑発色性フタリド化合物および一般式(3)で表される黒発色性フルオラン化合物であり、かつ一般式(1)で表される赤発色性フルオラン化合物に対して一般式(2)で表される青緑発色性フタリド化合物が25〜100質量%であり、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン化合物が50〜200質量%であることを特徴とする透明感熱記録体。
【化1】

【化2】

【化3】

一般式(1)、一般式(2)におけるR1〜R4、および一般式(3)におけるR7およびR8は炭素数1乃至6のアルキル基を示す。一般式(2)においてR5およびR6は炭素数1乃至8のアルキル基またはフェニル基を示し、一般式(3)においてR9は水素原子またはメチル基を示す。
【請求項2】
ロイコ染料が上記一般式(1)、(2)、(3)で表される化合物以外に下記一般式(4)で表されるアザフタリド化合物を含有し、かつ一般式(1)で表されるフルオラン化合物に対して一般式(4)で表される青緑発色性アザフタリド化合物が25〜100質量%である請求項1記載の透明感熱記録体。
【化4】

一般式(4)において、R10〜R13は炭素数1乃至6のアルキル基を示し、R14は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物が3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオランである請求項1または2記載の透明感熱記録体。
【請求項4】
一般式(2)で表される化合物が3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリドである請求項1〜3のいずれか1項に記載の透明感熱記録体。
【請求項5】
一般式(3)で表される化合物が3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)−フルオランである請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明感熱記録体。
【請求項6】
一般式(4)で表される化合物が3,3’−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリドである請求項2記載の透明感熱記録体。
【請求項7】
一般式(1)で表される赤発色性フルオラン化合物、一般式(2)で表される青緑発色性フタリド化合物、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン化合物および一般式(4)で表される緑発色性アザフタリド化合物が、実質的に有機溶剤を含まないないポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂との複合粒子を形成している請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明感熱記録体。
【請求項8】
呈色剤が、4,4’−シクロヘキシリデンジフェノール、4,4‘−ビス(N−p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、N−p−トリルスルホニル−N’−フェニルウレア、N−p−トリルスルホニル−N’−p−ブチルオキシカルボニルフェニルウレアである請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明感熱記録体。



















【公開番号】特開2006−281723(P2006−281723A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−108325(P2005−108325)
【出願日】平成17年4月5日(2005.4.5)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】