説明

透明感熱記録体

【課題】 光源による発色色調の変動が少なく、低記録濃度から高記録濃度における発色色調の変動が少なく、しかも記録部の最高濃度の高い透明感熱記録体を提供することにある。
【解決手段】 透明フィルム上に、少なくとも、ロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層、並びに保護層を有する透明感熱記録体において、ロイコ染料として、3−〔1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリドなどの特定のフタリド系化合物、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオランなどの特定の赤発色性フルオラン系化合物、及び3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオランなどの特定の黒発色性フルオラン系化合物を特定の比率で使用することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロイコ染料と呈色剤との発色反応を利用した透明感熱記録体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロイコ染料と呈色剤との熱による発色反応を利用した感熱記録体は比較的安価であり、また記録機器がコンパクトで且つその保守も比較的容易であるため、ファクシミリや各種計算機等の記録媒体としてのみならずCRT医療診断用やX線画像用のプリンター、CAD用のプロッター等の記録媒体としても使用されている。
【0003】
その中で、CRT医療診断用やX線画像用プリンターの記録媒体として使用されるシャウカステン用の感熱記録体は、高い記録画質と、低記録濃度から高記録濃度においても発色色調の変動が少ないものが要求される。
【0004】
シャウカステン用の感熱記録体として、色味を帯びない黒色画像を得るために、透明支持体上に設けた感熱記録層中に、最長吸収ピーク波長が400〜600nm程度にあるロイコ染料と最長吸収ピーク波長が500〜700nmにあるロイコ染料とを、ポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂のマイクロカプセル中に内包した感熱記録体(特許文献1参照)、或いはかかるロイコ染料と樹脂からなる実質的に液体の有機溶剤を含まない複合粒子を有する感熱記録体(特許文献2参照)が知られているが、低記録濃度から高記録濃度における記録時及び経時的な発色色調の変動のより少ないものが要望されている。
【0005】
また、低記録濃度から高記録濃度における発色色調の変動が少ないシャウカステン用感熱記録体として、特定のアザフタリド系化合物と、特定の赤発色性フルオラン系化合物と、特定の黒発色性フルオラン系化合物とを併用した感熱記録体(特許文献3参照)も知られている。
【0006】
【特許文献1】特開平4−341888号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2001−232940号公報(請求項1、実施例2)
【特許文献3】特開2004−142227号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、光源による発色色調の変動が少なく、低記録濃度から高記録濃度における発色色調(色味)の変動が少なく、しかも記録部の最高濃度の極めて高い透明感熱記録体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、透明フィルム上に、少なくとも、ロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層、並びに保護層を有する透明感熱記録体において、ロイコ染料として、一般式(1)で表されるフタリド系化合物、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物、及び一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物を含有し、且つ一般式(1)で表されるフタリド系化合物に対して、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物が200〜300質量%であり、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物が300〜600質量%であることを特徴する透明感熱記録体である。
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々独立して炭素数1〜6のアルキル基を示す。また、R9は水素原子またはメチル基を示す。〕
【0013】
前記一般式(1)で表されるフタリド系化合物、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物、及び一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物が、これらの化合物とポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂を含み実質的に液体の有機溶剤を含まない複合粒子の形態で感熱記録層に含有されていると、より透明性に優れ、しかも耐湿地肌カブリ性にも優れた透明感熱記録体が得られるため好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の透明感熱記録体は、光源による発色色調の変動が少なく、低記録濃度から高記録濃度における発色色調(色味)の変動が少なく、しかも記録部の最高濃度が極めて高いため、医療診断用の透明感熱記録体としても利用できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、感熱記録層中のロイコ染料として、一般式(1)で表されるフタリド系化合物、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物、及び一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物を用い、且つ一般式(1)で表されるフタリド系化合物に対して、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物を200〜300質量%、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物を300〜600質量%用いるものである。
【0016】
一般式(1)で表されるフタリド系化合物に対して、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物が200質量%より少なくても、また300質量%より多くても、低濃度記録部(光学濃度で0.3〜0.6程度)と高濃度記録部(光学濃度で1.5〜3.5程度)での色調が大きく変化する。また一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物が200質量%より少なくなると記録部の最高濃度を高める効果も著しく低下する。このため、本発明では、一般式(1)で表されるフタリド系化合物に対して、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物を200〜300質量%の割合で使用するが、250〜300質量%の割合で使用するのがより好ましい。
【0017】
一般式(1)で表されるフタリド系化合物に対して、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物が300質量%より少なくても、また600質量%より多くても光源の違いにより色調が大きく変化するため、本発明では、一般式(1)で表されるフタリド系化合物に対して、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物を300〜600質量%の割合で使用するが、400〜600質量%の割合で使用するのがより好ましい。
【0018】
一般式(1)で表されるフタリド系化合物、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物、及び一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物からなる特定ロイコ染料は、それぞれ2種以上用いることもできる。特定のロイコ染料の合計使用比率としては感熱記録層に対して5〜35質量%程度である。また、その効果を阻害しない範囲で他の公知のロイコ染料を併用することも可能であるが、一般式(1)で表されるフタリド系化合物、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物、及び一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物のみでロイコ染料を構成すると、本発明の所望の効果が遺憾なく発揮されるため、より好ましい。
【0019】
一般式(1)で表されるフタリド系化合物の具体例としては、例えば3−〔1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリド、3−〔1,1−ビス(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリド、3−〔1,1−ビス(4−ジブチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリド等が挙げられる。なかでも、3−〔1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリドは光源による色調の差が少なく好ましい。
【0020】
一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物の具体例としては、例えば3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−5,7−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−5,8−ジメチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ジメチルフルオラン、3−ジメチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン等が挙げられる。なかでも、3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオランは光源による色調の差が少なく好ましい。
【0021】
一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物の具体例としては、例えば3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)アミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(2−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(4−トルイジノ)フルオラン、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオラン、3−ジ(n−ペンチル)アミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオラン等が挙げられる。
なかでも、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン及び3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオランから選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオランと3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオランとを併用すると、光源の違いによる色調の差がより少なくなるため、より好ましい。
【0022】
かかる特定のロイコ染料は、平均粒子径0.2〜3.0μm程度の固体分散粒子の形態で用いたり、平均粒子径0.5〜3.0μm程度のマイクロカプセル中に内包させた形態で用いたり、或いは当該ロイコ染料と樹脂を含む平均粒子径0.5〜3.0μm程度の複合粒子の形態で用いることができる。
【0023】
なかでも、かかる特定のロイコ染料を、特定のロイコ染料と樹脂を含む複合粒子の形態で用いるのが好ましく、特に特定のロイコ染料とポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂を含み、実質的に液体の有機溶剤を含まない複合粒子の形態で用いることにより、より透明性に優れ、光源による発色色調の変動が少なく、しかも低濃度記録部(光学濃度で0.3〜0.6程度)と高濃度記録部(光学濃度で1.5〜3.5程度)における色調の差が極めて少なく、かつ耐湿地肌カブリ性にも優れた透明感熱記録体が得られるため、より好ましい。
【0024】
勿論、特定の比率の範囲内で少し異なった比率で特定のロイコ染料を含有する複合粒子を2種以上併用することにより、記録部の色調を微調整することもできる。
【0025】
特定のロイコ染料とポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂を含む複合粒子は、例えば多価イソシアネート化合物と特定のロイコ染料とを溶解した油性溶液をポリビニルアルコール等の親水性保護コロイド溶液中に平均粒子径が0.5〜3μm程度となるように乳化分散後、多価イソシアネート化合物の高分子化反応を促進させることにより得られる。複合粒子に対する全ロイコ染料の含有比率としては、5〜70質量%程度、好ましくは30〜50質量%程度である。
【0026】
複合粒子を形成する際の多価イソシアネート化合物としては、多価イソシアネート化合物のみを用いてもよいし、または多価イソシアネート化合物及びこれと反応するポリオール、ポリアミンとの混合物、或いは多価イソシアネート化合物とポリオールの付加物、ビウレット体、イソシアヌレート体等の多量体を用いることもできる。これら多価イソシアネート化合物に特定のロイコ染料を溶解し、この溶液を、ポリビニルアルコール等の保護コロイド物質を溶解含有している水性媒体中に乳化分散し、更に必要によりポリアミン等の反応性物質を混合後、この乳化分散液を加温することにより、多価イソシアネート化合物を重合させることによって高分子化し、それによってロイコ染料と高分子物質とからなる複合粒子を形成することができる。
【0027】
多価イソシアネート化合物としては、例えばp−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルプロパンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、4,4',4''−トリフェニルメタントリイソシアネート、トルエン−2,4,6−トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物等が挙げられる。
【0028】
またポリオール化合物としては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、プロピレングリコール、1,3−ジヒドロキシブタン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、フェニルエチレングリコール、ペンタエリスリトール、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、4,4'−イソプロピリデンジフェノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2−ヒドロキシアクリレート等が挙げられる。
【0029】
また、ポリアミン化合物としては、例えばエチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,5−ジメチルピペラジン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0030】
勿論、多価イソシアネート化合物、多価イソシアネートとポリオールの付加物及びポリオール化合物等は、前記化合物に限定されるものではなく、また必要に応じて2種以上を併用してもよい。
【0031】
更に、複合粒子中には記録感度を高めるために融点が40〜150℃程度の芳香族有機化合物(増感剤)、耐光性を高めるためのベンゾフェノン系あるいはベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤、及び安定化剤としてヒンダードフェノール、ヒンダードアミン等を含有させることもできる。
【0032】
感熱記録層中に特定のロイコ染料と共に含有される呈色剤としては、例えば4,4'−イソプロピリデンジフェノール、4,4'−シクロヘキシリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4'−アリルオキシジフェニルスルホン、3,3'−ジアリル−4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2'−ビス〔4−(4−ヒドロキシフェニル)フェノキシ〕ジエチルエーテル、4,4'−ビス〔(4−メチル−3−フェノキシカルボニルアミノフェニル)ウレイド〕ジフェニルスルホン、N−p−トルエンスルホニル−N'−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)フェニルウレア、3,3'−ビス(p−トルエンスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジルエステル、N,N'−ジ−m−クロロフェニルチオ尿素、N−p−トリルスルホニル−N'−フェニルウレア、4,4'−ビス(p−トリルスルホニルアミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4−〔2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ〕サリチル酸亜鉛、4−{3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ〕サリチル酸亜鉛、5−〔p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル〕サリチル酸亜鉛等が挙げられる。
【0033】
呈色剤の使用比率としては、感熱記録層の全固形分に対して10〜60質量%程度、好ましくは20〜50質量%程度である。
【0034】
感熱記録層は、一般には水を媒体とし、特定のロイコ染料、平均粒子径が0.1〜3μm程度に粉砕された呈色剤、接着剤、及び必要により各種助剤とを混合攪拌して調製された感熱記録層用塗液を透明フィルム上に乾燥後の塗布量が3〜35g/m2程度、好ましくは10〜30g/m2程度となるように塗布乾燥して形成される。
【0035】
感熱記録層用塗液中の接着剤としては、例えばポリビニルアルコール及びその誘導体、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド−アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド−アクリル酸エステル−メタアクリル酸エステル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、カゼイン、ゼラチン等の水溶性接着剤、並びに酢酸ビニル系ラテックス、ウレタン系ラテックス、アクリル系ラテックス、スチレン−ブタジエン系ラテックス等の疎水性接着剤が挙げられる。
【0036】
また、助剤としては、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステル・ナトリウム塩、脂肪酸金属塩等の界面活性剤類、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、カルナバロウ、パラフィンワックス、エステルワックス等のワックス類、ステアリン酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の滑剤類、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、無定形シリカ、水酸化アルミニウム等の顔料類、ジメチロール尿素、ケテンダイマー、ポリアミド樹脂、ポリアミド−エピクロルヒドリン樹脂、ホウ砂、ホウ酸、炭酸ジルコニウムアンモニウム、エポキシ系化合物等の耐水化剤類、その他消泡剤、蛍光染料、着色染料等が挙げられる。
【0037】
感熱記録層が設けられる透明フィルムは、その厚みとしては20〜200μm程度が好ましい。無着色のフィルムでも青色に着色されたフィルムでもよいが、発色色調の変動がより少ないという観点から、青色に着色されたフィルムを用いるのが好ましい。また、感熱記録層との密着性を高めるのに表面にアンカーコート層を設けたり、コロナ放電処理したりすることもできる。更に、導電剤による導電処理を施してもよい。
【0038】
透明フィルムの具体例としては、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリオレフィン系フィルム、ポリアミド系フィルム等が挙げられる。なかでも、ポリエステル系フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムがシャウカステンへの装着性に優れ好ましい。
【0039】
感熱記録層上には、記録走行性、耐摩擦カブリ性、耐薬品性を高めるために成膜性を有する接着剤を主成分とする保護層を設けることができ、保護層を設けることにより、更に感熱記録体の透明性が高まるという副次効果も得られる。
【0040】
かかる保護層の接着剤としては、例えば感熱記録層に使用する接着剤と同様のものが使用され、更に保護層中には感熱記録層中に含有される界面活性剤類、顔料類、架橋剤類、ワックス類、滑剤類等を使用することもできる。
【0041】
保護層は、一般には水を媒体とし、水性接着剤、必要により顔料類、架橋剤類、ワックス類、滑剤類等を共に混合攪拌して調製された保護層用塗液を乾燥後の塗工量が0.5〜10g/m2程度、好ましくは1〜5g/m2程度となるように感熱記録層上に塗布乾燥して形成される。
【0042】
感熱記録層及び保護層の形成方法については特に限定されず、例えばエアナイフコーティング、バリバーブレードコーティング、ピュアブレードコーティング、ロッドブレードコーティング、ショートドウェルコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、グラビアコーティング等の公知の適当な塗布方法により形成される。
【0043】
なお、本発明の感熱記録体においては、支持体である透明フィルムの他方の面(裏面側)に帯電防止層を設けたり、或いは各層の塗布形成後にスーパーカレンダー掛け等の平滑化処理をしたりする等の各種公知の感熱記録体製造技術を付加することもできる。
【実施例】
【0044】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、特に断わらない限り、「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0045】
〔実施例1〜5、比較例1〜4〕
(1)複合粒子分散液の調製
ロイコ染料A:一般式(1)で表わされるフタリド系化合物である3−〔1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリド。
ロイコ染料B:一般式(2)で表わされる赤発色性フルオラン系化合物である3−ジエチルアミノ−6,8−ジメチルフルオラン。
ロイコ染料C:一般式(3)で表わされる黒発色性フルオラン系化合物である3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(3−トルイジノ)フルオラン。
ロイコ染料D:一般式(3)で表わされる黒発色性フルオラン系化合物である3−ジ(n−ブチル)アミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン。
【0046】
下記表1に示した質量比からなる上記のロイコ染料A、B、C及びDの混合物20部を100℃に加熱したジシクロヘキシルメタン−4,4'−ジイソシアネート25部に溶解し、この溶液を35℃に冷却後、同温度の8%ポリビニルアルコール〔日本合成化学工業製、ゴーセノール(登録商標)GM−14L〕水溶液100部に徐々に添加し、ホモジナイザーを用い、回転数8000rpmの攪拌によって乳化分散した後、この乳化分散液に水60部を加えて均一化した。この乳化分散液を90℃に昇温し、10時間の硬化反応させた後、固形分濃度が25%となるように水を添加し、体積平均粒子径0.6μmの複合粒子分散液を得た。
【0047】
【表1】

【0048】
(2)呈色剤分散液の調製
ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン40部、スルホン変性ポリビニルアルコールの10%水溶液20部、及び水40部からなる組成物をウルトラビスコミルにて平均粒子径が0.3μmとなるまで粉砕して呈色剤分散液を得た。
【0049】
(3)感熱記録層用塗液の調製
複合粒子分散液100部、呈色剤分散液70部、体積平均粒子径が0.5μmのステアリン酸アミドの30%分散液100部、固形分濃度48%のスチレン−ブタジエン系ラテックス(ポリラック752A、三井化学社製)30部、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂の20%水溶液5部、及び水30部からなる組成物を攪拌して感熱記録層用塗液を得た。
【0050】
(4)保護層用塗液の調製
カオリン(商品名:UW−90、EC社製)の50%分散液(体積平均粒子径が1.6μmとなるまで粉砕処理を施したもの)40部、アセトアセチル変性ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセファイマーZ−200、日本合成化学工業社製)の10%水溶液500部、ウレタン系ラテックス(ハイドランAP−30F、固形濃度20%、大日本インキ化学工業社製)100部、パラフィンワックスの20%水分散液(体積平均粒子径0.8μm)50部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの10%水溶液1部及び水50部からなる組成物を攪拌して保護層用塗液を得た。
【0051】
(5)透明感熱記録体の作製
青色に着色された透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:メリネックス912、厚さ175μm、透過測定色彩値:a=−6.4、b=−12.9、ヘイズ値3%、帝人デュポン社製)の片面上に、感熱記録層用塗液をスロットダイコーターにて乾燥後の塗布量が25g/m2となるように塗布乾燥して感熱記録層を設け、その上に保護層用塗液をスロットダイコーターにて乾燥後の塗布量が3.5g/m2となるように塗布乾燥して保護層を設けて、透明感熱記録体を得た。
【0052】
〔実施例6〕
実施例1の透明感熱記録体の作製において、青色に着色された透明なポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに、無着色の透明なポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:HMW−100、厚さ175μm、透過測定色彩値:a=+0.23、b=+2.72、ヘイズ値5%、帝人社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして透明感熱記録体を得た。
【0053】
〔比較例5〕
実施例1の複合粒子分散液の調製において、ロイコ染料Aとして3−〔1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリドの代わりに、3−〔2,2−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)ビニル〕−3−p−ジエチルアミノフェニルフタリドを用いた以外は、実施例1と同様にして透明感熱記録体を得た。
【0054】
〔比較例6〕
実施例1の複合粒子分散液の調製において、ロイコ染料Aとして3−〔1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリドの代わりに、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリドを用いた以外は、実施例1と同様にして透明感熱記録体を得た。
【0055】
〔比較例7〕
実施例1の複合粒子分散液の調製において、ロイコ染料Aとして3−〔1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル〕−6−ジメチルアミノフタリドの代わりに、3,3−ビス[1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ジメチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−4,5,6,7−テトラクロロフタリドを用いた以外は、実施例1と同様にして透明感熱記録体を得た。
【0056】
かくして得られた感熱記録体について以下の評価を行い、その結果を表2に示した。
【0057】
(印加エネルギーの違いによる色調変化の評価)
感熱印字試験装置TH−PMD(大倉電機社製)を用いて、1ライン記録時間:5msec、副走査線密度:8ライン/mm、1ドット当たりの印加エネルギー:1.0mJの条件下に256ラインのベタ印字を施し、低印加エネルギー記録を行った。また、別に、1ライン記録時間:5msec、副走査線密度:8ライン/mm、1ドット当たりの印加エネルギー:2.0mJの条件下に256ラインのベタ印字を施し、高印加エネルギー記録を行った。
各記録部の透過測定色彩値a、bを瞬間マルチ測光システムMCPD(大塚電子社製、条件:2度視野、光源D65)で測定し、低印加エネルギー記録の記録部と高印加エネルギー記録の記録部におけるa値の差(Δa)、およびb値の差(Δb)を求めた。
なお、Δa、Δb共に3.0以下であれば問題のないレベルであり、特に2.0以下が好ましい。
【0058】
(光源の違いによる色調変化の評価)
上記の低印加エネルギー記録で得られた記録部の透過測定色彩値aおよびbの各々を、瞬間マルチ測光システムMCPD(大塚電子社製、条件:2度視野)でD65光源とA光源の2種の光源で測定し、D65光源で測定したa値とA光源で測定したa値の差(Δa)、およびD65光源で測定したb値とA光源で測定したb値の差(Δb)を求め、表2に記載した。
なお、Δa、Δb共に3.0以下であれば問題のないレベルであり、Δa、Δb共に1.0以下であれば申し分ない。
【0059】
(記録濃度の評価)
上記の高印加エネルギー記録で得られた記録部の透過記録濃度を、マクベス濃度計(商品名:TR−927J型、マクベス社製)のビジュアルモードで測定した。
なお、透過記録濃度が3.0以上であれば問題のないレベルである。
【0060】
(耐湿地肌カブリ性の評価)
透明感熱記録体を40℃、90%RHの条件下で24時間処理した後、及び処理前の未記録部の透過濃度をマクベス濃度計(商品名:TR−927J型、ビジュアルモード)にて測定した。
【0061】
(透明性)
直読式ヘイズメーター(スガ試験機製)によりJIS K 7105に従い透明度(ヘイズ値)を測定した。
なお、ヘイズ値が30%以下であれば問題のないレベルである。
【0062】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0063】
表2に示されているように、本発明の透明感熱記録体は、低記録濃度部と高記録濃度部の発色色調の差が少なく、かつ光源の違いによる発色色調の差も少なく、しかも透過記録濃度が極めて高く、医療診断用の透明感熱記録体としても適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明フィルム上に、少なくとも、ロイコ染料と呈色剤を含有する感熱記録層、並びに保護層を有する透明感熱記録体において、ロイコ染料として、一般式(1)で表されるフタリド系化合物、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物、及び一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物を含有し、且つ一般式(1)で表されるフタリド系化合物に対して、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物が200〜300質量%であり、一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物が300〜600質量%であることを特徴とする透明感熱記録体。
【化1】

【化2】

【化3】

〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々独立して炭素数1〜6のアルキル基を示す。また、R9は水素原子またはメチル基を示す。〕
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるフタリド系化合物、一般式(2)で表される赤発色性フルオラン系化合物、及び一般式(3)で表される黒発色性フルオラン系化合物が、これらの化合物とポリウレアまたはポリウレアポリウレタン樹脂を含み実質的に液体の有機溶剤を含まない複合粒子の形態で感熱記録層に含有されている請求項1に記載の透明感熱記録体。

【公開番号】特開2008−137353(P2008−137353A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328389(P2006−328389)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】