説明

透明構造上のナビゲーションに適合した持ち上がり検出

【課題】透明構造と不透明構造の両方の表面上において、ポインティングデバイスが持ち上げられたことを検出する。
【解決手段】光学マウスなどのポインティングデバイスは、該デバイスが透明な構造上に置かれていても不透明な構造上に置かれていても持ち上がりを検出することが可能な上面持ち上がり検出システムを備える。上面持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが不透明な表面と透明な表面のいずれに置かれている場合であっても、ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の離脱検出を利用して持ち上がりを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ナビゲーション装置に関し、特に、該装置が操作表面から持ち上げられたことを検出するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
光学マウスなどの光学ナビゲーション装置は、一般に、該装置が置かれている表面の画像を連続的に収集し、かつ、記録された画像情報のフレームを連続的に比較することによって当該装置がその表面を横切って移動する速度及び方向を決定する小型のディジタルカメラとして機能する光学ナビゲーションセンサ集積回路(IC)を備える。画像フレームは、1500画像フレーム/秒といった非常に高いレート(速度)で収集され、光学ナビゲーションセンサICの解像度は、ナビゲーション表面に対する装置の極めて小さな動きを検出するのに十分高い。
【0003】
光学マウスのような光学ナビゲーション装置の場合、装置がいつナビゲーション表面から持ち上げられたかを認識する必要がある。このことは重要である。なぜなら、装置をナビゲーション表面から持ち上げるという動作は、ユーザが、ナビゲーション追跡(たとえばコンピュータマウスの場合はマウスによるカーソル操作などに相当)を一時的に停止したいと考えていることを示しているからである。不透明な表面上をナビゲーションするときの持ち上がりの検出は、一般に、ナビゲーションセンサICによって生成される画像情報を処理することによってなされる。
【特許文献1】米国特許第5,644,139号明細書
【特許文献2】米国特許第6,222,174号明細書
【特許文献3】米国特許出願第2004/0189593号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学ナビゲーション装置は、机上を覆っているガラス板のような透明な構造上で使用される場合もある。光学ナビゲーション装置が不透明な構造(以下、不透明構造という)上だけでなく透明な構造(以下、透明構造という)上もナビゲートできるようにするための1つの技術には、ナビゲーション装置の合焦光学系を削除することが含まれる。合焦光学系を用いずに透明構造と不透明構造の両方に対してナビゲーション追跡を行えるように光学ナビゲーション装置を構成することができるが、合焦光学系を除去すると、従来の持ち上がり検出技術は、たとえば、約10mmより小さな実際上の持ち上がり検出のために要求される距離に対して有効に動作しないものとなる。
【0005】
したがって、ナビゲーション表面(机上などの操作面)が、ガラス板のような透明構造上にあっても、机上のような不透明構造上にあっても、ナビゲーション表面上で有効に動作する持ち上がり検出技術が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光学マウスなどのポインティングデバイスは、ポインティングデバイスが透明構造上に置かれている場合でも、不透明構造上に置かれている場合でも、持ち上がり検出を行うことができる上面持ち上がり検出システムを備えている。上面持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが不透明構造上に置かれているか透明構造上に置かれているかに関係なく、持ち上がりを検出するために、ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の離脱検出(または分離検出)を利用する。1実施形態では、上面持ち上がり検出システムは、持ち上がり検出専用であって、ナビゲーション追跡に使用されるイメージセンサアレイとは別個の光検出器を備える。
【0007】
1実施形態では、ポインティングデバイスは、上面持ち上がり検出システム及びナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムの両方を備える。ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムは、ナビゲーションセンサアレイからの画像情報に応答して持ち上がり状態信号を生成し、上面持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが不透明構造上と透明構造上のいずれに置かれている場合でも、ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の検出に応答して持ち上がり状態信号を生成する。1実施形態では、上面持ち上がり検出システムを用いてナビゲーションのために持ち上がり検出を制御し、ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムを用いてナビゲーションシステムのいくつかのコンポーネントを制御する。たとえば、ポインティングデバイスが持ち上げられたことをナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムが示しているときに、光源のパワー(電力)を下げるかまたはオフにすることができる。
【0008】
本発明の他の局面及び利点については、本発明の原理を例示した以下の詳細な説明及び添付の図面から明らかになろう。尚、図面全体を通じて、同じ参照番号は同じ要素を示すために使用されている。
【実施例】
【0009】
光学マウスなどのポインティングデバイスは、ポインティングデバイスが透明構造上または不透明構造上のいずれに置かれていても持ち上がり検出を行うことが可能な上面持ち上がり検出システム(すなわち、上面からの持ち上がりを検出するシステム)を備える。上面持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが不透明構造または透明構造のいずれに置かれている場合であっても、ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の離脱検出を利用して持ち上がりを検出する。
【0010】
図1は、本明細書で全般的に「ポインティングデバイス」と呼ぶ、机上などの不透明構造103の表面102上に置かれた光学ナビゲーション装置100の断面図であり、ポインティングデバイスは、表面102上を移動する。ここでは、ポインティングデバイスは、照明システム104とナビゲーションセンサシステム106の2つの主要なコンポーネントを有するものとして図示されている。照明システムは、一般的に、発光ダイオード(LED)などの光源108及び光学系(不図示)を有しており、これらは、協働して、浅い角度で不透明構造の表面に入射する平行化光110でその表面上のある場所を照明する。表面上の照らされた場所からの光は、ナビゲーションセンサシステムの光学ナビゲーションセンサIC 114によって検出される。1実施形態では、光学ナビゲーションセンサICは、表面上すなわち上面上の照らされた場所から反射した光を検出するように構成された不図示の個別の光検出器からなるアレイ(たとえば、個別の光検出器からなる16×16または32×32のアレイ)を備える。アレイ中の光検出器の各々は、ディジタル値(たとえば、8ビットのディジタル値)として出力される光強度情報を生成する。画像情報はフレームの形態で取得され、画像情報のフレームは、アレイ中の個別の光検出器の各々で同時に取得された1組の値を有する。イメージセンサで取得された画像フレームは、ナビゲーション表面上の特徴を表すデータを含んでいる。画像フレームを取得するレート(速度)は、たとえば、2300フレーム/秒までにわたってプログラム可能である。1実施形態では、光検出器アレイは、800文字/インチ(cpi)の解像度を有する。
【0011】
光学ナビゲーションセンサIC 114は、また、連続する画像フレームを比較してフレーム間の画像の特徴の動きを決定するナビゲーションエンジン(不図示)を備える。具体的には、ナビゲーションエンジンは、連続する画像フレームに存在する共通の特徴の相関をとることによって動きを決定する。画像フレーム間の動きは、動きベクトル、たとえば、X方向及びY方向の動きベクトル(たとえば、ΔX、ΔY)で表される。次に、この動きベクトルを用いて、ナビゲーション表面(たとえば、不透明構造103の上面102)に対する光学ナビゲーションセンサICの動きを決定する。例示的なナビゲーションセンサ移動追跡技術については、「NAVIGATION TECHNIQUE FOR DETECTING MOVEMENT OF NAVIGATION SENSORS RELATIVE TO AN OBJECT」と題する米国特許第5,644,139号、及び、「METHOD OF CORRELATING IMMEDIATELY ACQUIRED AND PREVIOUSLY STORED FEATURE INFORMATION FOR MOTION SENSING」と題する米国特許第 6,222,174号により詳細に記載されており、これらのいずれも参照により本明細書に組み込むものとする。
【0012】
従来の光学ポインティングデバイスでは、光学ナビゲーションセンサIC 114によって収集される画像情報は持ち上がり検出にも使用される。収集した画像情報を使用して持ち上がりを検出する従来のナビゲーションセンサベースの持ち上がり検出技術は、表面特徴解析及びヒストグラム解析を含む。たとえば、表面特徴解析は、検出された表面特徴の数を表面閾値と比較すること、及び、検出された表面特徴の数が特徴閾値を下回るときに持ち上がりを検出することを含む。
【0013】
ポインティングデバイスはまた、机上のような不透明構造の上に置かれたガラス板などの透明構造上でも用いることができる。図2は、図1と同様のポインティングデバイス100の断面図であるが、今度は、ポインティングデバイスは、図1のように不透明構造103上に直接置かれているのではなく、ポインティングデバイスと不透明構造l03の間にある透明構造120の表面122上に置かれている。ガラス板などの透明構造は、机上の保護用カバーとして、あるいは、独立型のテーブルトップとしてしばしば使用される。ポインティングデバイスが透明構造上に置かれているので、光源108からの光110のいくらかは屈折して透明構造中に入り、透明構造の下の不透明構造を照らす。この場合、透明構造内の光は、反射してポインティングデバイスに向かい、不透明構造上の照らされた場所(スポット)は、透明板がない場合(図1)に照らされた場所から横方向及び垂直方向に移動する。不透明構造から反射された光は、ナビゲーション追跡のためにナビゲーションセンサシステム106によって使用される。透明構造の反射特性に起因して、ポインティングデバイスが透明構造上に置かれているときは、光学ナビゲーションセンサICが、実際の持ち上がり検出のために必要な距離内(たとえば、ナビゲーション表面から約10mm以内)で、持ち上がり検出に十分な画像情報を生成するのは困難である。
【0014】
ポインティングデバイス100と不透明構造の間にある透明構造120上にポインティングデバイス100が置かれているときにナビゲーション追跡を可能にするために、種々の技術が開発されてきた。1つの典型的な技術が、「OPTICAL MOUSE ADAPTED FOR USE ON GLASS SURFACES」と題する米国特許出願(米国特許公報第2004/0189593 A1)に記載されている(参照により、この米国特許出願も本明細書に組み込むものとする)。これらの技術は、ポインティングデバイスが、ポインティングデバイスと不透明構造の間にある透明構造上に置かれているときに、ナビゲーション追跡をできるようにするために開発されたが、これらの技術は、持ち上がり検出の問題に対する解決策を提供するものではない。
【0015】
本発明の1実施形態によれば、光学マウスなどのポインティングデバイスは、ポインティングデバイスが透明構造上または不透明構造上のいずれに置かれている場合であっても、持ち上がり検出を提供することが可能な上面持ち上がり検出システムを備える。上面持ち上がり検出システムは、持ち上がりを検出するために、ポインティングデバイスが置かれている表面(すなわち、「上」面)から反射する光線の離脱検出を利用する。図3は、ポインティングデバイスが透明構造上に置かれているときに、実際の持ち上がり検出を実行するよう構成された光学ポインティングデバイスの1実施形態を示す。ポインティングデバイスは、照明システム104、ナビゲーションセンサシステム106、及び上面持ち上がり検出システム144を備える。照明システムは、レーザ光源やLEDなどの少なくとも1つの光源142を備えており、また、持ち上がり検出とナビゲーション追跡の両方のための複数光源を備えることができる。ナビゲーションセンサシステムは、上述のシステムに類似のものであり、上面持ち上がり検出システムは、持ち上がり検出専用の持ち上がり検出器146と、レンズ148及び光ガイド150などの光学系とを備える。光源と上面持ち上がり検出システムは、互いに関連して構成及び位置決めされており、さらに、光源から放射されて上面から反射した光線が、上面持ち上がり検出システムに、より具体的には、ポインティングデバイスが上面に置かれているときにシステムの持ち上がり検出器に入射するように、ポインティングデバイスが置かれている透明構造に関連して構成及び位置決めされている。図3を参照すると、光線154は光源から放射され、光線156は、透明構造の上面から反射されて上面光検出システムに向かう。光源及び上面光検出システムは、また、透明構造を通過して不透明構造103で反射する主要な光線が、上面持ち上がり検出システムに入射しないように構成されている。図3を参照すると、透明構造を通過して不透明構造から反射する主要な光線158は、ポインティングデバイスが上面に置かれているときに、上面持ち上がり検出システムに入射しない。
【0016】
上述したように、図3は、ポインティングデバイス100が透明構造120上に置かれている場合を示している。すなわち、ポインティングデバイスが持ち上げられていない場合である。ポインティングデバイスが透明板上に置かれている場合には、上面持ち上がり検出システムと光源は、透明構造の上面122から反射した光が、上面持ち上がり検出システム144に入射して持ち上がり検出器146によって検出されるように構成される。検出された反射光は、ポインティングデバイスがナビゲーション表面から持ち上げられていないことを示す信号に変換される。
【0017】
図4は、図3のポインティングデバイス100がナビゲーション表面に置かれていない場合、たとえば、ポインティングデバイスが、透明構造120からある持ち上がり距離(リフト距離)Lだけ「持ち上げられている」場合を示す図である。上面持ち上がり検出システム及び光源の構成のために、及び、ポインティングデバイスがナビゲーション表面から持ち上げられているために、光路の範囲は、光線156がもはや上面持ち上がり検出システム144に入射しないほど十分に変化している。光線156はもはや上面持ち上がり検出システムには入射しないので、持ち上がり検出器146からの出力信号が変化して、ポインティングデバイスがナビゲーション表面から持ち上げられたことを示す。光が持ち上がり検出センサシステムに入射しなくなる持ち上がり距離は変更可能である。持ち上がりが検出される距離を変更するために操作可能なパラメータには、上面持ち上がり検出システムと光源との相対的な位置、光学系の大きさ、入射光の角度などがある。
【0018】
図3及び図4の実施形態では、上面持ち上がり検出システム144は、ポインティングデバイス100の持ち上がり状態を示す信号を出力し、他の実施形態では、上面持ち上がり検出システムは、持ち上がり状態を判定するために後で評価される光検出器出力信号(たとえば、電流や電圧など)を出力する。上面持ち上がり検出システムは、上面(すなわち、ポインティングデバイスが置かれている表面)が透明構造の表面でも不透明構造の表面でも同じように動作することに留意されたい。
【0019】
1実施形態では、持ち上がり検出器146は単一の光検出器であり、他の実施形態では、持ち上がり検出器は、図1の光学ナビゲーションセンサIC 114に含まれるセンサアレイなどのセンサアレイである。センサアレイが持ち上がり検出のために使用されるときは、センサアレイによって生成された画像情報が持ち上がりを検出するために使用される。さらに、画像情報の処理は、持ち上がり検出のためにのみ使用され、ナビゲーション追跡には使用されない。たとえば、光学ナビゲーションセンサICは、持ち上がり検出専用であり、光学ナビゲーションセンサICに関連するナビゲーション追跡機能はディスエーブル(無効)にされるか無視される。
【0020】
従来の光学ナビゲーション装置は、しばしば、画像情報を生成するためのナビゲーションセンサアレイを有する光学ナビゲーションセンサICと、画像情報からナビゲーション情報を生成するためのナビゲーションエンジンと、ナビゲーションセンサアレイからの画像情報を利用して持ち上がりを検出するナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムを備える。従来の光学ナビゲーションセンサICは持ち上がりを検出することができるが、ポインティングデバイスは、ポインティングデバイスが不透明構造上でじかに接して使用されるときも、ガラス板などの透明構造上でじかに接して使用されるときも、持ち上がりを有効に検出できなければならない。
【0021】
本発明の1実施形態によれば、ポインティングデバイスは、ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システム及び上面持ち上がり検出システムの両方で構成される。ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムは、ナビゲーションセンサアレイからの画像情報に応答して持ち上がり状態信号を生成し、上面持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の検出に応答して持ち上がり状態信号を生成する。ポインティングデバイスは、2つの持ち上がり状態信号に応答して、ナビゲーションシステムの動作を制御するためのロジック(論理回路)を備えることができる。
【0022】
図5は、上面持ち上がり検出システムの一部が組み込まれた光学ナビゲーションセンサIC 114の1実施形態を示す。光学ナビゲーションセンサICは、ナビゲーションセンサアレイ170、ナビゲーションエンジン172、ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システム174、上面持ち上がり検出プロセッサ176、及び、ステータスロジック178を備える。ナビゲーションセンサアレイは、上述したように、ナビゲーション表面に関連する画像情報を生成する。典型的には画像フレームとして生成される画像情報は、上述したようにナビゲーションエンジンによって使用されて、たとえば、X方向及びY方向における変位といったナビゲーション情報を生成する。
【0023】
ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システム174は、ナビゲーションセンサアレイ170からの画像情報を受信し、これに応答して持ち上がり状態信号を生成する。不透明表面持ち上がり検出システム(すなわち、不透明な表面からの持ち上がりを検出するシステム)は、任意の従来のナビゲーションセンサ技術を使用して持ち上がり状態信号を生成する。いくつかの典型的なナビゲーショセンサ技術には、表面特徴解析及びヒストグラム解析がある(但し、これらには限定されない)。持ち上がりを判定するために使用される特定のナビゲーションセンサ技術は本発明にとって重要ではない。ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが透明構造上で使用されている場合でも、不透明構造上で使用されている場合でも、持ち上がりを判定することができる。ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが透明構造上で使用されているときに持ち上がりを検出することができるが、持ち上がりを検出可能な距離は、光学ナビゲーションに実用的な距離(これは、たとえば、約10mmより小さい)よりも大きい。すなわち、ポインティングデバイスがナビゲーション表面から約10mmを超えて持ち上げられるまで、持ち上がりは実際には検出されない。図5の実施形態では、ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムによって生成される持ち上がり状態信号は、持ち上げられている状態であるか、持ち上げられていない状態であるかを示す2値信号である。
【0024】
上面持ち上がり検出プロセッサ176は、別個の基板182上に製作された外部(ここではチップ外)の持ち上がり検出器(オフチップ持ち上がり検出器)180からの出力信号を処理する。オフチップ持ち上がり検出器からの出力信号は、検出された光の強度(または輝度)の関数である。持ち上がり検出器からの出力信号は、透明プレート持ち上がり検出プロセッサ(すなわち、透明なプレート(または板)からの持ち上がりを検出するプロセッサ)176によって処理されて、持ち上がり状態信号が生成される。図5に示すように、持ち上がり検出器は、いくつかの条件設定(たとえば、増幅)が必要となる場合があり、したがって、信号コンディショナー184を、持ち上がり検出器と透明プレート持ち上がり検出プロセッサとの間に設けることができる。1実施形態では、持ち上がり検出閾値が(たとえば、電流または電圧として)設定され、持ち上がり検出器180の出力信号が持ち上がり検出閾値を下回ったときは、ポインティングデバイスが持ち上げられたと判定され、対応する持ち上がり状態信号が生成されて、ステータスロジックに供給される。図5の実施形態では、透明プレート持ち上がり検出プロセッサ176は、ディジタル持ち上がり状態信号を生成する。たとえば、その出力は、高(ハイ)または低(ロー)を示す2値信号であり、2値出力の一方が持ち上げられている状態を示し、2値出力の他方が持ち上げられていない状態を示す。上面持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが透明構造と不透明構造のいずれの上に置かれている場合でも持ち上がりを検出することができる。
【0025】
上面持ち上がり検出プロセッサ176とナビゲーションセンサ持ち上がり検出システム174の両方からの持ち上がり状態信号は、ステータスロジック178に提供される。ステータスロジックは、受信した2つの信号に応答して、持ち上がり状態の指標(または、持ち上がり状態であることを示す信号)をナビゲーションエンジンに出力する。1実施形態では、ステータスロジックはORロジックであり、この場合、出力された持ち上がり状態信号は、入力された2つの持ち上がり状態信号のいずれかが持ち上げられている状態を示すときに、持ち上げられている状態を示す。1実施形態では、上面持ち上がり検出システムを使用して、ナビゲーションのための持ち上がり検出を制御し(たとえば、持ち上げられている状態を反映するために、いつ、X及びY方向の移動をゼロとして識別すべきかを制御し)、ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムを使用して、ナビゲーションシステムのいくつかのコンポーネントを制御するために持ち上がりを検出する。1実施形態では、ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムを使用して、ユーザが、以後のナビゲートをやめようとして(たとえば、これ以上マウスの操作をしないことを意図して)、ポインティングデバイスがナビゲーション表面から大きな距離持ち上げられたか否かを判定し、これによって、所定の安全動作及び/または節電動作を行うことが可能である。たとえば、ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムが、ポインティングデバイスが持ち上げられたことを示すと、光源のパワーを下げるかまたはオフにすることができる。
【0026】
図5の実施形態では、持ち上がり検出器180は、光学ナビゲーションセンサIC 114の外部(たとえば、「オフチップ」すなわちチップ外)に配置されている。図6は、持ち上がり検出器180が組み込まれた光学ナビゲーションセンサIC 114の1実施形態を示す。図6に示す光学ナビゲーションセンサICは、持ち上がり検出器がナビゲーションセンサアレイ170及びナビゲーションエンジンと同じ基板上に製作される点を除いて、図5に示す光学ナビゲーションセンサICに類似している。光学ナビゲーションセンサICに持ち上がり検出器を含めることによって、ポインティングデバイスに組み込まれる個別のデバイスの数が少なくなる。さらに、持ち上がり検出器を光学ナビゲーションセンサICに組み込むことによって、信号コンディショナーを不要とすることができる。
【0027】
上面持ち上がり検出システム140を有するポインティングデバイス100のいくつかの例示的な実施形態を図示し説明したが、他の実施形態も可能である。1実施形態では、光源142は、たとえば、図1及び図2を参照して説明したように、ナビゲーション追跡用のナビゲーション表面を照らすなどの他の機能を果たすことができる。
【0028】
本発明の特定の実施形態について説明し図示したが、本発明は、本明細書及び図面において説明し図示した部分または部品の特定の構成や配列には限定されない。本発明は特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0029】
以下に、本発明の種々の構成要件の組み合わせからなる例示的な実施態様を示す。
1.ポインティングデバイスが置かれている表面を照明する光線を生成するための照明システムと、
ナビゲーション追跡に使用するための、照明されたナビゲーション表面に関連する画像情報を生成するように構成されたナビゲーションセンサアレイと、
前記ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の一部を検出し、この検出に応答して、持ち上がり状態信号を生成するように構成された上面持ち上がり検出システム
を備える、ポインティングデバイス。
2.前記上面持ち上がり検出システムは、前記ポインティングデバイスが前記表面から持ち上げられているときよりも、前記ポインティングデバイスが前記表面に置かれているときに、より多くの反射光線を検出するように構成され、かつ、位置決めされた光検出器を備える、上項1のポインティングデバイス。
3.前記上面持ち上がり検出システムは、持ち上がり検出専用の光検出器を備える、上項1のポインティングデバイス。
4.前記画像情報に応答して持ち上がり状態信号を生成するように構成されたナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムをさらに備える、上項3のポインティングデバイス。
5.前記光検出器及び前記ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムが、同じ集積回路(IC)に製作される、上項4のポインティングデバイス。
6.前記上面持ち上がり検出システムと前記ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムからの持ち上がり状態信号を受信し、これら2つの持ち上がり状態信号に応答して、前記ポインティングデバイスの持ち上がり状態の指標を出力するように構成されたステータスロジックをさらに備える、上項4のポインティングデバイス。
7.前記ポインティングデバイスの持ち上がり状態の指標を受信し、かつ、前記画像情報及び前記持ち上がり状態の指標に応答して、ナビゲーション情報を出力するように構成されたナビゲーションエンジンをさらに備える、上項6のポインティングデバイス。
8.前記上面持ち上がり検出システムは、持ち上がり検出専用のセンサアレイを備える、上項1のポインティングデバイス。
9.前記センサアレイは画像情報を生成するように構成され、前記センサアレイから生成された前記画像情報は持ち上がりを検出するために処理される、上項8のポインティングデバイス。
10.前記ポインティングデバイスが透明構造上に置かれているか、不透明構造上に置かれているかに関係なく、前記上面持ち上がり検出システムが、持ち上がり検出のために使用される、上項1のポインティングデバイス。
11.ポインティングデバイスであって、
ポインティングデバイスが置かれている表面を照明する光ビームを生成するための照明システムと、
ナビゲーション追跡に使用するための、照明されたナビゲーション表面に関連する画像情報を生成するように構成されたナビゲーションセンサアレイと、
前記画像情報に応答して、第1の持ち上がり状態信号を生成するように構成されたナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムと、
前記ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の一部を検出し、この検出に応答して、第2の持ち上がり状態信号を生成するように構成された上面持ち上がり検出システム
を備える、ポインティングデバイス。
12.前記上面持ち上がり検出システムは、前記ポインティングデバイスが前記表面から持ち上げられているときよりも、前記ポインティングデバイスが前記表面に置かれているときに、より多くの反射光線を検出するように構成され、かつ、位置決めされた光検出器を備える、上項11のポインティングデバイス。
13.前記上面持ち上がり検出システムは、持ち上がり検出専用の光検出器を備える、上項11のポインティングデバイス。
14.前記上面持ち上がり検出システムは、持ち上がり検出専用のセンサアレイを備える、上項11のポインティングデバイス。
15.前記センサアレイは画像情報を生成するように構成され、前記センサアレイから生成された前記画像情報は持ち上がりを検出するために処理される、上項14のポインティングデバイス。
16.前記第1の持ち上がり状態信号を使用して前記照明システムを制御する、上項11のポインティングデバイス。
17.前記ポインティングデバイスが透明構造上に置かれているか、不透明構造上に置かれているかに関係なく、前記上面持ち上がり検出システムが、持ち上がり検出のために使用される、上項11のポインティングデバイス。
18.光学ナビゲーション用の集積回路(IC)であって、
ナビゲーション追跡に使用するための、照明されたナビゲーション表面に関連する画像情報を生成するように構成された、ポインティングデバイス内の光学ナビゲーションセンサアレイと、
前記画像情報に応答して、第1の持ち上がり状態信号を生成するように構成されたナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムと、
前記ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の一部の検出に応答して、第2の持ち上がり状態信号を生成するように構成された上面持ち上がり検出プロセッサと、
前記画像情報、及び、前記第1の持ち上がり状態信号と第2の持ち上がり状態信号との一方に応答して、ナビゲーション情報を出力するように構成されたナビゲーションエンジン
を備える、集積回路。
19.前記ICに配置されて、ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光を検出するための持ち上がり検出器をさらに備える、上項17の集積回路。
20.前記持ち上がり検出器が持ち上がり検出専用である、上項18の集積回路。
【0030】
本発明による光学マウスなどのポインティングデバイスは、該デバイスが透明な構造上に置かれていても不透明な構造上に置かれていても持ち上がりを検出することが可能な上面持ち上がり検出システムを備える。上面持ち上がり検出システムは、ポインティングデバイスが不透明な表面と透明な表面のいずれに置かれている場合であっても、ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の離脱検出(または分離検出)を利用して持ち上がりを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本明細書では一般的に「ポインティングデバイス」と呼ぶ、不透明な表面上に置かれた光学ナビゲーション装置の断面図であり、当該装置は、不透明な表面上を移動する。
【図2】図1のポインティングデバイスの断面図であるが、ポインティングデバイスは、不透明な表面上に直接置かれた図1の場合と異なり、ポインティングデバイスと不透明な表面との間にある透明構造上に置かれている。
【図3】上面持ち上がり検出システムを備え、ガラス板などの透明構造上に置かれたポインティングデバイスの1実施形態を示す。
【図4】図3のポインティングデバイスが透明構造から持ち上げられている場合を示す図である。
【図5】上面持ち上がり検出システムが組み込まれた光学ナビゲーションセンサICの1実施形態を示す。
【図6】上面持ち上がり検出システムが組み込まれた光学ナビゲーションセンサICの別の実施形態を示す。
【符号の説明】
【0032】
104 照明システム
106 ナビゲーションセンサシステム
142 光源
144 上面持ち上がり検出システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポインティングデバイスが置かれている表面を照明する光線を生成するための照明システム(104)と、
ナビゲーション追跡に使用するための、照明されたナビゲーション表面に関連する画像情報を生成するように構成されたナビゲーションセンサアレイ(170)と、
前記ポインティングデバイスが置かれている表面から反射する光線の一部を検出し、この検出に応答して、持ち上がり状態信号を生成するように構成された上面持ち上がり検出システム(144)
を備える、ポインティングデバイス。
【請求項2】
前記上面持ち上がり検出システムは、前記ポインティングデバイスが前記表面から持ち上げられているときよりも、前記ポインティングデバイスが前記表面に置かれているときに、より多くの反射光線を検出するように構成され、かつ、位置決めされた光検出器(146)を備える、請求項1のポインティングデバイス。
【請求項3】
前記上面持ち上がり検出システム(144)は、持ち上がり検出専用の光検出器(146)を備える、請求項1のポインティングデバイス。
【請求項4】
前記画像情報に応答して持ち上がり状態信号を生成するように構成されたナビゲーションセンサ持ち上がり検出システム(174)をさらに備える、請求項3のポインティングデバイス。
【請求項5】
前記光検出器(146)及び前記ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システム(174)が、同じ集積回路(114)に製作される、請求項4のポインティングデバイス。
【請求項6】
前記上面持ち上がり検出システムと前記ナビゲーションセンサ持ち上がり検出システムからの持ち上がり状態信号を受信し、これら2つの持ち上がり状態信号に応答して、前記ポインティングデバイスの持ち上がり状態の指標を出力するように構成されたステータスロジック(178)をさらに備える、請求項4のポインティングデバイス。
【請求項7】
前記ポインティングデバイスの持ち上がり状態の指標を受信し、かつ、前記画像情報及び前記持ち上がり状態の指標に応答して、ナビゲーション情報を出力するように構成されたナビゲーションエンジン(172)をさらに備える、請求項6のポインティングデバイス。
【請求項8】
前記上面持ち上がり検出システム(144)は、持ち上がり検出専用のセンサアレイ(146)を備える、請求項1のポインティングデバイス。
【請求項9】
前記センサアレイ(146)は画像情報を生成するように構成され、前記センサアレイから生成された前記画像情報は持ち上がりを検出するために処理される、請求項8のポインティングデバイス。
【請求項10】
前記ポインティングデバイスが透明構造(120)上に置かれているか、不透明構造(103)上に置かれているかに関係なく、前記上面持ち上がり検出システム(144)が、持ち上がり検出のために使用される、請求項1のポインティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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