説明

透明特性を備えるセメント系モルタルから作った複合パネル

本発明は、複数の開口部がその全幅を貫通し、該開口部のそれぞれに、光に対して透明な材料が充填されていることを特徴とするセメント系モルタルから作った複合パネルに関するものである。また、本発明は、このパネルの製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光に対する透明特性を備えるセメント系モルタルから作った複合パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
WO03097954は、セメント系モルタル等の材料における建築用ブロックを記載しており、ここでは、光ファイバーが、該ブロックの一方の側から他方の側への光の透過を可能にするために貫通する。このような方法においては、該ブロックの後部に置かれた物体の輪郭を見ることができ、それ故、該ブロックは、透明であると一般に定義される。
【0003】
上記光ファイバーは、メッシュ又は特定の織物の横糸として置かれており、それ故、その最終用途との関連で変えることのできる寸法を持ったブロックを得るため、枠組み内でセメント系モルタルの鋳造を行う際に、挿入される。次いで、それらブロックをのこぎりで切り取り、プレート又はパネルが得られ、その後、平滑化及び研磨を受ける。それらの作業後にのみ、上述の透明効果を得ることができる。
【0004】
しかしながら、この効果は、上記ブロックへの入射光の強さに影響される。実際、該光の光度との関係で、入射角は、例えば(パネル厚さが約3cmでは)傾斜角が約20°であると既に決定されており、それを超えると、光ファイバーによる光の透過によって決まる透明効果は次第に減少し、このことは、この技術の明らかな制限を形成する。
【0005】
WO03097954に従う技術と関連した、いくぶん複雑な他の問題がある。光ファイバーを置くため、実際には、枠組み内の連続した層に、モルタル層と交互にして、挿入される裏地として、特定の織物を提供することが必要であり;更には、薄板へののこ引き及び研磨の更なる工程をも要し、特に、一辺当たり1メートルを超える正方形プレート等の、相当な寸法の部品が必要である場合には、製造スクラップのかなりの危険性にもつながる。
【0006】
最後に、この技術では1つのタイプの表面仕上げのみが得られ、特定の審美的及び建築的要件に適応させるべき表面の出現が許容されないことについて考える必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO03097954
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、上述の従来技術の問題を解決することにある。具体的には、製造を単純化するために追加の製造工程を避けること、より節約するために材料のスクラップ及び無駄を避けること、入射光の、又は反射により拡散し、直接光に対して光度がより制限された光の、好ましくない角度に対しても所望の透明効果を得ることが、望ましい。
【0009】
それらの目的を達成するため、本発明は、セメント系モルタルから作った複合パネルを提案するものであり、それは、複数の通し開口部がその厚さ全体を貫通し、前記通し開口部には光に対して透明な材料が充填されていることを特徴とする。
【0010】
前記光に対して透明な材料は、プラスチック材料であるのが好ましい。
【0011】
このプラスチック材料は、ポリアクリラート、エポキシ樹脂又はポリカーボナートからできていてもよい。
【0012】
或いは、前記光に対して透明な材料は、ガラスでもよいし、ガラスに基づいたものであってもよい。
【0013】
本発明の実施態様において、前記光に対して透明な材料は、前記開口部に収容されている予備成形要素の形態である。
【0014】
本発明の異なる実施態様において、前記光に対して透明な材料は、前記開口部内で、例えば鋳造によって、形成された要素の形態である。
【0015】
上記開口部の形状は、広範囲の形状に変えることができ、光に対して透明な材料の要素もまた対応するように変えられる:好ましい形状は、予備成形した又は鋳造によって得られた、対応するプレート又はシートを収容することができる矩形断面のプリズムの形状である。
【0016】
本発明の実施態様において、前記開口部は、平行列に沿って介在しながら並んでいる。前記開口部は、長さ、高さ及び深さの寸法によって規定される。前記開口部の高さ(h)は、パネル厚さに一致させる必要があり、前記開口部の長さ(L)は0.5〜100mmの範囲が好ましく、前記開口部の厚さは0.5〜5mmの範囲が好ましい。前記開口部は、互いに該長さ(L)の0.3〜0.5倍に及ぶ距離を離して設定された平行列に沿って配置されるのが好ましい。いずれの場合においても、同一列に配置された2つの連続する開口部間の最小距離は、前記モルタル内に存在する凝集体の最大直径の2倍以上である必要がある。
【0017】
2つの平行な開口部の列間の距離は、5〜10mmの範囲が好ましく、いずれの場合においても、前記凝集体の最大直径の2倍以上である必要がある。
【0018】
例えば、最大凝集体直径が2mmのセメント系モルタルによって形成された、0.5m×1.0mの寸法で且つ厚さが5cmのパネルについては、開口部の長さ(L)を40mmと仮定すると、同一列上に配置された2つの連続する開口部間の距離は15mmであり、一方、2つの連続する平行列間の距離は5mmである。
【0019】
好ましくは、前記光に対して透明な材料が、光反射特性を有する塗料で、例えばその系の凝集力を増大させるためにセラミック系アクリルエマルション又はエポキシエマルション反射塗料で、処理される。
【0020】
光の透過は、光反射特性を有し且つ上記透明な材料とそれが収容されている開口部の間に置かれる、フィルム等の、適切な表面手段によって最適化できる。
【0021】
反射フィルムは、例えば、セラミック系反射塗料からできていてもよい。反射フィルムは、透明な材料の予備成形要素に直接適用でき、又は透明な材料の要素が鋳造によって得られる場合、それは、鋳造前の開口部の壁に適用できる。該フィルムは、吹き付け技術を用いて光に対して透明な材料の予備成形要素上に適用でき、又は開口部を形成するために用いたコア上に光反射フィルムを形成させることによって、開口部の内壁上に適用できる。この場合、該コアの表面は、コアではなく開口部の表面に対する前記光反射フィルムの付着を確保するため、最初に適切な離型剤を用いて処理される必要がある。前記光に対して透明な材料が、より大きな寸法のプレートを切断することによって得られた、プレート又はシート等の、予備成形要素の形態である場合、光の透過を制限しない切断表面の粗さを確保する技術を用いて、その切断を行う必要がある。例えば、レーザー切断は、この目的に適している。
【0022】
また、本発明は、前記パネルの形成方法に関するものである。第一の実施態様において、パネルの製造方法は、
a)枠組み内の規則的な配列に、前記光に対して透明な材料の要素を複数置く工程と;
b)前記枠組みに、前記セメント系モルタルを、前記光に対して透明な材料の複数の要素が完全にそれに埋もれるように見えるまで、前記モルタルと、前記開口部の出入り口を形成するのに適した、前記要素の対向側面を接触させることなく、充填させる工程と;
c)前記開口部の出入り口を形成するのに適した、前記光に対して透明な材料の要素の前記対向側面を解放しつつ、前記モルタルを硬化させ、枠組みから完成したパネルを取り出す工程と
を含む。
【0023】
第二の異なる実施態様において、パネルの製造方法は、
d)枠組み内の規則的な配列に、好ましくは離型剤及び光反射フィルムで覆われた、前記開口部を形成するのに適した、複数のコアを置きつつ、枠組みに、前記セメント系モルタルを、前記複数のコアが前記モルタルに完全に埋もれるように見えるまで、前記開口部の出入り口を形成するのに適した、前記コアの対向側面を前記モルタルと接触させることなく、充填させる工程と;
e)モルタルの硬化の初めから終わりまでの期間中に、前記枠組みから前記コアを取り出し、そのようにして形成された前記開口部を解放させる工程と;
f)コアが反射フィルムで覆われていなかった場合には、前記開口部の内側を、反射塗料によって、例えば吹き付け法を用いて、被覆させる更なる工程と;
g)前記開口部に、液体状態の前記光に対して透明な材料を充填させる工程と;
h)モルタルと光に対して透明な材料を前記パネルが得られるように硬化させ、枠組みから完成したパネルを取り出す工程と;
i)パネルを、それが硬化するまで置いておく工程と
を含む。
【0024】
本発明の特徴及び利点を更に理解するため、図を参照しながら、実施態様の非制限的な実例を以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るパネルの部分透視図を示す。
【図2】図1の線II−IIに従う、拡大した部分断面図を示す。
【図3】図1の線III−IIIに従う、拡大した部分断面図を示す。
【図4】図1のパネルを製造する方法の一の工程の透視図を概略的に示す。
【図5】本発明の変形の図3と一致する断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜4に関して、複数の通し開口部11は、それぞれが光に対して透明な材料を含有し、コンクリート製パネル10の厚さ全体を貫通しており、該パネル10は、図4に関して説明するように、セメント系モルタルによって形成される。
【0027】
上記例において、前記光に対して透明な材料は、PMMA製のプレート12によって形成された複数の要素の形態であり、それは、図4を参照しながら以下に説明される形成方法によって、予備形成され、前記開口部内に収容されている。示された例においては、前記開口部が、平行列16に沿って介在しながら並んでいる。
【0028】
図4に関して、枠組み13は、モルタルの透明なプレート部分への逆流及び付着を防ぐため、その底部14を、モルタル及びPMMAに適合した、不織布等の、圧縮性材料の層を用いて、完全に被覆させることによって準備された。前記圧縮性材料は、対応する表面組織の仕上がりを得るため、織物等の、規定された横糸を備える適切な材料の層を用いて、被覆できる。
【0029】
プレート12の形態としての前記光に対して透明な材料の複数の要素は、平行移動が可能なロッド15によって形成されたフレームを用いて、平行列16に従って、枠組み内の規則的な配列に置かれる。なお、該フレームは、それ故に、適切な位置にプレート12をしっかりと保持するため、型板を用いて間隔をあけて並べられた、プレート12の列16を締め付けることができる。
【0030】
PMMAプレートは、例えば、市販の大きさのプレートからのレーザー切断によって得られる。
【0031】
上記フレームは、枠組みの周辺部分17が、その内部に対応する空の周辺端部を規定するため、プレート12がないままの状態にしておくように配置される。
【0032】
次いで、枠組みに、セメント系モルタルを、光に対して透明な材料の前記複数のプレート12がその中に完全に埋もれるように見えるまで、前記モルタルと、プレート12の対向側面19及び20を接触させることなく、プレートがないままの状態にしておいた周辺端部17に流し込んで充填させる。なお、該対向側面は、それ故に、それらの機能がないままである。これは、枠組みの底部に面するプレートの側面についても、この不織布上の底部にかかる圧力の作用を介して可能である。なお、該作用は、それ故に、この領域におけるプレート間のモルタルの侵入を防ぐため、シールを生じさせる。その対向側面について、注がれたモルタルのレベルは、最大で、このプレートの側面に達するであろう。
【0033】
次いで、上記モルタルは、前記対応する開口部11の出入り口を形成するのに適したプレート12の前記対向側面19及び20を解放しつつ、硬化させるために放置しておき、それ故に、該開口部11は、形成されたパネル中に確認されたままであり、また、完成したパネル10は、枠組みから外される。
【0034】
複合構造を強化するため、他の実施態様においては、パネルの端部に沿って、強化材が置かれたり、又は、金属ラスを、既に置かれたプレートを妨げないことに適したメッシュ開口部で、置くことができる。
【0035】
図5に示される本発明の更なる実施態様において、前記通し開口部は、それらを満たす前記光に対して透明な材料が、パネル10のある寸法全体、例えば高さにわたって連続して伸びる単一の要素12に従って形成されるようなものである。図5における12の寸法(h)は、パネル10の厚さに一致するが、h≦0.2hは、要素12の薄い部分21に一致し、該薄い部分は、パネルの形成中にモルタルを充填するのに適した隙間を確認する。
【0036】
また、この場合、変形の第一の実施態様において、前記光に対して透明な材料は、例えば市販の大きさのプレートのレーザー切断により、予備成形された要素の形態であり、対応する開口部に収容される。変形の第二の実施態様において、前記光に対して透明な材料は、例えば特定のモールド内での鋳造によって、前記開口部内で形成された要素である。
【0037】
図5の変形に従う要素12は、いくつかのプレートが連続する鎖によって形作られており、それらは、枠組みに収容され、その短い方の対向側面は、型板の機能を果たすために櫛形である。また、それらプレートの鎖は、適当な手段の使用により、張力をかけることができる。
【0038】
標準UNI−EN197.1に記載される全てのセメントは、本発明の目的のため、モルタルに使用できる。好ましくは、クラス52.5RにおけるI型セメントを用いることである。
【0039】
セメントの硬化時間は、特に適切なカウンターモールドを介して開口部を予備成形する方法を使用する場合、重要になる。
【0040】
硬化の開始の期間は、例えば、スルホアルミナートバインダーを、少量、セメントに対して10質量%以下の量加えることによって、調整できる。本発明の好適な態様においては、商品名ALIPRE(Italcementi)で販売されるスルホアルミナートバインダーを用いる。
【0041】
石灰質充填剤は、あらゆるタイプのものでもよいが、本発明には、空気分離タイプ、即ち空気分級機を用いて得られたものを使用するのが好ましい。
【0042】
その最大直径は、60〜70μmの範囲であり、好ましくは63μmである。
【0043】
凝集体は、標準UNI EN12620に準拠した、あらゆる性質のものでもよい。その最大直径は、開口部間の最小距離に影響され、1.5〜5mmの範囲とすることができ、好ましくは2mmである。
【実施例】
【0044】
流動性の高い収縮補正タイプであって、以下に示す組成のセメント系モルタルを用い、図を参照しながら上述の方法を実行するか、又は、上述した代わりの形成方法を実行する。
【0045】
【表1】

【0046】
前述の説明及び例から理解できるように、本発明に従って製造したパネルは、最初に提案した目的の全てを達成することができる:具体的には、製造を単純化して追加の製造工程を避けること、材料のスクラップ及び無駄を避けること、入射光の、又は反射により拡散し、直接光に対して光度がより制限された光の、好ましくない角度に対しても所望の透明性効果を得ることができる。この向上した効果は、前述の従来技術のパネルを、本発明のパネルと、同一の入射角の光ビームを用いて比べることによって、明らかである。
【符号の説明】
【0047】
10 パネル
11 開口部
12 プレート
13 枠組み
14 底部
15 ロッド
16 列
17 周辺部分
19 対向側面
20 対向側面
21 薄い部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系モルタルから作った複合パネルであって、複数の通し開口部はその厚さ全体を貫通し、前記通し開口部には光に対して透明な材料が充填されていることを特徴とするパネル。
【請求項2】
前記光に対して透明な材料が、前記開口部内に収容された予備成形プレートの形態であることを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項3】
前記光に対して透明な材料が、前記開口部内で形成されたプレートの形態であることを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項4】
前記光に対して透明な材料は、光反射特性が備わっているか、又は光反射特性を有する塗料で処理されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項5】
前記光に対して透明な材料が、プラスチック材料であることを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項6】
前記光に対して透明な材料が、ポリメチルメタクリラート、エポキシ樹脂、及びポリカーボナートから選択されるプラスチック材料であることを特徴とする請求項5に記載のパネル。
【請求項7】
前記光に対して透明な材料が、ガラスであることを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項8】
前記開口部が、平行列に沿って介在しながら並んでいることを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項9】
高さ、幅及び厚さの3つの寸法によって規定された前記開口部のそれぞれにおいて、その高さ(h)はパネル厚さに一致させ、その長さ(L)は0.5〜100mmの範囲であり、前記開口部の厚さは0.5〜5mmの範囲であり、前記開口部は、互いにその長さ(L)の0.3〜0.5倍に及ぶ距離を離して設定された平行列に沿って配置されていることを特徴とする請求項8に記載のパネル。
【請求項10】
適切な形状をした強化金属ラスを含み、前記光に対して透明な材料を受けるのに適したメッシュ開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のパネル。
【請求項11】
請求項2に記載のパネルの製造方法であって、
a)枠組み内の規則的な配列に、前記光に対して透明な材料の要素を複数置くことと、
b)前記枠組みに、前記セメント系モルタルを、前記光に対して透明な材料の複数の要素が完全にそれに埋もれるように見えるまで、前記開口部の出入り口を形成するのに適した、前記要素の対向側面を前記モルタルと接触させることなく、充填させることと、
c)前記開口部の出入り口を形成するのに適した、前記光に対して透明な材料の要素の前記対向側面を解放しつつ、前記モルタルを硬化させ、枠組みから完成したパネルを取り出すことと
を特徴とする方法。
【請求項12】
請求項3に記載のパネルの製造方法であって、
d)枠組み内の規則的な配列に、前記開口部を形成するのに適した複数のコアを置きつつ、枠組みに、前記セメント系モルタルを、前記複数のコアが完全に前記モルタルに埋もれるように見えるまで、前記開口部の出入り口を形成するのに適した、前記コアの対向側面を前記モルタルと接触させることなく、充填させることと、
e)モルタルの硬化の初めから終わりまでの期間中に、前記枠組みから前記コアを取り出し、そのようにして得られた前記開口部を解放させることと、
f)前記開口部に、液体状態の前記光に対して透明な材料を充填させることと、
g)モルタルと光に対して透明な材料を前記パネルが得られるように硬化させ、枠組みから完成したパネルを取り出すことと
を特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のパネルの製造方法であって、前記枠組みの底部を不織布の層又は同等の封止手段によって完全に被覆することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−511645(P2012−511645A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540099(P2011−540099)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066813
【国際公開番号】WO2010/066831
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(511138205)イタルセメンティ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【Fターム(参考)】