説明

透明被膜付基材および透明被膜形成用塗料

【課題】透明被膜の白化が抑制され、透明性、ヘーズ、反射防止性能、強度、耐擦傷性等に優れた透明被膜を形成できる塗布液を提供する。
【解決手段】基材と、該基材上に形成された、シリカ系中空微粒子とマトリックス成分とからなる透明被膜とを含む透明被膜付基材であって、平均粒子径(Dn)の2倍以上の粒子径を有する異形シリカ系中空微粒子のシリカ系中空微粒子中の個数割合が1%以下にある透明被膜付基材。前記シリカ系中空微粒子の平均粒子径が50〜120nmの範囲にあり、粒子径変動係数(CV値)が1〜50%の範囲にあり、屈折率が1.10〜1.30の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形のシリカ系中空微粒子が少ないために透明被膜の白化が抑制され、透明性、ヘーズ、反射防止性能、強度、耐擦傷性等に優れた透明被膜付基材と該透明被膜形成用塗料とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の反射を防止するため、その表面に反射防止膜を形成することが知られており、たとえば、コート法、蒸着法、CVD法等によって、フッ素樹脂、フッ化マグネシウムのような低屈折率の物質の被膜をガラスやプラスチックの基材表面に形成したり、シリカ微粒子等の低屈折率微粒子を含む塗布液を基材表面に塗布して、反射防止被膜を形成する方法が知られている(たとえば、特開平7-133105号公報など参照)。このとき、反射防止性能を高めるために反射防止被膜の下層に高屈折率の微粒子等を含む高屈折率膜を形成することも知られている。
【0003】
本願出願人は特開2001−23611号公報(特許文献1)において、内部に空洞を有するシリカ系微粒子の製造方法および得られるシリカ系微粒子は屈折率が低く、このシリカ系微粒子を用いて形成された透明被膜は屈折率が低く反射防止性能に優れていることを開示している。
【0004】
さらに、特開2002−79616号公報(特許文献2)において、このような透明被膜を表示装置の全面に形成して用いると反射防止性能に優れ表示性能が向上することを開示している。
【0005】
しかしながら、従来のシリカ系微粒子は、粒子径が小さいと殻の割合が高く、内部の空洞の割合が低いために屈折率が充分低いとはいえず、他方、粒子径が大きいと屈折率は低いものの得られる透明被膜の強度、耐擦傷性が低下する欠点があった。
【0006】
さらに、本願出願人は特開2009−66965号公報(特許文献3)において、平均粒子径(Dn)が20〜80nmの範囲にあり、粒子径変動係数(CV値)が50%以下の低屈折率シリカ系中空微粒子を用いると、得られる透明被膜の屈折率が低く、且つ膜の表面が平滑で耐擦傷性が向上するとともに強度が向上することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−23611号公報
【特許文献2】特開2002−79616号公報
【特許文献3】特開2009−66965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、低屈折率シリカ系中空微粒子を用いた透明被膜において、白化現象が起きる問題があった。また、さらに、反射防止性能を更に向上させることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記問題点について鋭意検討した結果、透明被膜表面に突起が形成された場合に白化が起きていることを見出した。その白化の原因の突起が、中空シリカ系微粒子に含まれる異形微粒子(例えば、シリカ系微粒子が2個以上連結した粒子)によるものであることを見出し、さらに、このような異形シリカ系微粒子は、製造の際に、低濃度でシリカ系中空微粒子前駆体粒子を調製することによって大幅に低減することを見出して本発明を完成するに至った。
【0010】
[1]基材と、
該基材上に形成された、シリカ系中空微粒子とマトリックス成分とからなる透明被膜とを含む透明被膜付基材であって、平均粒子径(Dn)の2倍以上の粒子径を有する異形シリカ系中空微粒子のシリカ系中空微粒子中の個数割合が1%以下にある透明被膜付基材。
[2]前記シリカ系中空微粒子の平均粒子径が50〜120nmの範囲にあり、粒子径変動係数(CV値)が1〜50%の範囲にあり、屈折率が1.10〜1.30の範囲にある[1]の透明被膜付基材。
[3]前記透明被膜中のシリカ系中空微粒子の含有量が40〜90質量%の範囲にある[1]または[2]の透明被膜付基材。
[4]前記透明被膜の屈折率が1.15〜1.40の範囲にある[1]〜[3]の透明被膜付基材。
[5]シリカ系中空微粒子とマトリックス形成成分と極性溶媒とからなる透明被膜形成用塗布液であって、
前記シリカ系中空微粒子は、平均粒子径(Dn)の2倍以上の粒子径を有する異形シリカ系中空微粒子の個数割合が1%以下にあり、かつ平均粒子径(Dn)が50〜120nmの範囲にあり、粒子径変動係数(CV値)が1〜50%の範囲にあり、屈折率が1.10〜1.30の範囲にある透明被膜形成用塗布液。
[6]塗料中のシリカ系中空微粒子の濃度が固形分として0.4〜54質量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の濃度が固形分とし0.1〜36質量%の範囲にあり、全固形分濃度が1〜60質量%の範囲にある[5]の透明被膜形成用塗料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、平均粒子径が所定の範囲にあり、均一な粒子径分布を有する屈折率の低いシリカ系中空微粒子を含み、該シリカ系中空微粒子と大きさ、形状がかけ離れたシリカ系中空微粒子を含まないために白化が抑制された反射防止性能、強度、耐擦傷性等に優れた透明被膜付基材および該透明被膜形成用塗料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の透明被膜付基材の概念を模式的に示す該略図である。
【図2】従来の中空粒子を使った透明被膜付基材の概念を模式的に示す該略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、先ず、本発明に係る透明被膜付基材について具体的に説明する。
透明被膜付基材
本発明に係る透明被膜付基材は、基材および基材上に形成された透明被膜とからなる。
【0014】
基材
基材としては、従来公知の基材を用いることができ、ガラスの他、トリアセチルセルロースフィルム(TAC)、ジアセチルセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム等のセルロース系基材、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系基材、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、環状ポリオレフィンフィルム等のポリオレフィン系基材、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド系基材、ポリアクリル系フィルム、ポリウレタン系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテウフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、アクリロニトリルフィルム等の基材が挙げられる。
また、このような基材上に、ハードコート膜等他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。
【0015】
透明被膜
透明被膜は、シリカ系中空微粒子とマトリックス成分とからなり、透明被膜の膜厚が80〜120nmの範囲にあることを特徴としている。
【0016】
シリカ系中空微粒子
本発明に用いるシリカ系中空微粒子は、シリカを主成分として内部に空洞を有する粒子である。かかるシリカ系中空微粒子は、シリカ以外に、アルミナ、マグネシアなどの酸化物や、アルカリ金属の酸化物・水酸化物を含んでいてもよい。ただし、透明被膜の用途という点では、実質的にシリカからなることが好ましい。
【0017】
平均粒子径(Dn)が50〜120nm、さらには70〜80nmの範囲にあることが好ましい。
シリカ系中空微粒子の平均粒子径が小さすぎると、シリカ系中空微粒子の粒子径の割に殻が厚く、粒子内部の空洞の割合が小さいために屈折率が高く、屈折率が充分に低い透明被膜が得られない場合がある。
【0018】
シリカ系中空微粒子の平均粒子径が大きすぎると、シリカ系中空微粒子の屈折率は低いものの、粒子径が大きいために透明被膜の強度が不充分となる場合があり、加えて透明被膜の膜厚より大きいために透明被膜表面の平滑性が低下し耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0019】
さらに、シリカ系中空微粒子の平均粒子径(Dn)が前記範囲にあれば、透明被膜中でシリカ系中空微粒子が概ね2層構造を採るとともに、膜厚が80〜120nmの透明被膜を形成することができ、白化が抑制されるとともに反射防止性能、強度、耐擦傷性等に優れた透明被膜付基材が得られる。
【0020】
中空微粒子の殻の厚さは粒子の大きさによるものの、3〜20nm、好ましくは5〜15nmの範囲にあることが好ましい。
従来、このようなシリカ系中空微粒子には、粒子が2個以上つながった異形粒子も含まれていたが、このような異形粒子の存在には着目されていなかった。シリカ系中空微粒子はそれ自体の屈折率が低いため、透明被膜の透明性も高いものと考えられていたが、透明被膜の白化したり、また、耐擦傷性が不充分となる場合があった。
【0021】
このような問題を鑑み、その原因を本発明者らが検討した結果、シリカ系中空微粒子に極少量含まれる異形粒子が影響をおよぼしていることを突き止めた。そして、異形シリカ系中空微粒子の個数割合が多くなると、異形シリカ系中空微粒子が、透明被膜表面に突起を形成したり、異形シリカ系中空微粒子上の通常のシリカ系中空微粒子積層して突起を形成し、透明被膜の白化の原因となったり、また、耐擦傷性が不充分となる原因となっていることを見出した。
【0022】
このため、本発明では、シリカ系中空微粒子中の異形シリカ系中空微粒子の個数割合が1%以下とし、さらには0.5%以下であることが好ましい。
なお、異形シリカ系中空微粒子とは、平均粒子径(Dn)の2倍以上の粒子径であり、かつ球状シリカ系中空微粒子または球状シリカ系中空微粒子が2個以上結合したシリカ系中空微粒子を意味している。
【0023】
本発明で使用されるシリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)が1〜50%、さらには2〜30%の範囲にあることが好ましい。
シリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)が小さい粒子は得ることが困難である。
シリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)が大きすぎると、シリカ系中空微粒子の粒子径の差が大きく密に充填できないために透明被膜の強度が低下したり、屈折率が充分に低い透明被膜が得られない場合がある。
【0024】
本発明に用いるシリカ系中空微粒子の平均粒子径(Dn)は、電子顕微鏡写真を撮影し、任意の1000個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として得られる。
また、本発明に用いるシリカ系中空微粒子の粒子径変動係数(CV値)は下記式によって計算される。
CV(%)=〔粒子径標準偏差(σ)/平均粒子径(Dn)〕×100
【0025】
【数1】

i:個々の粒子の粒子径、n=1000
本発明で使用されるシリカ系中空微粒子は内部が中空のため、単なるシリカ粒子に比べて屈折率が低く、通常、屈折率は1.10〜1.30、さらには1.10〜1.25の範囲にあることが好ましい。
【0026】
シリカ系中空微粒子の屈折率が前記範囲の下限未満のものは得ることが困難であり、上限を超えると得られる透明被膜の屈折率が高く、本発明の目的とする反射防止性能が不充分となることがある。
【0027】
また、本発明に用いるシリカ系中空微粒子の屈折率は下記の方法によって測定する。
(1)シリカ系中空微粒子の分散液をエバポレーターに採り、分散媒を蒸発させる。
(2)これを120℃で乾燥し、粉末とする。
(3)屈折率が既知の標準屈折液を2、3滴ガラス板上に滴下し、これに上記粉末を混合する。
(4)上記(3)の操作を種々の標準屈折液で行い、混合液が透明になったときの標準屈折液の屈折率をシリカ系中空微粒子の屈折率とする。
【0028】
シリカ系中空微粒子の製法
本発明に用いるシリカ系中空微粒子としては、前記した異形シリカ系中空微粒子の数割合が1%以下で、平均粒子径、屈折率および粒子径変動係数が前記した範囲にあれば特に制限はないが、特開2001−23611号公報、特開2004−203683号公報、特開2006−21938号公報等に開示したシリカ系微粒子の製造方法に準拠して製造することができる。
【0029】
具体的には、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物微粒子を核とし、必要に応じてシリカ被覆層(1)を形成した後、シリカ以外の無機酸化物を除去し、さらに必要に応じてシリカ被覆層(2)を形成し、必要に応じて高温で水熱処理することによって得ることができるが、シリカ以外の無機酸化物を除去する前の段階の粒子を調製する工程での濃度、即ち、シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物微粒子を調製する工程、必要に応じてシリカ被覆層(1)を形成する工程での濃度を低濃度にすることによって異形シリカ系中空微粒子の少ないシリカ系中空微粒子を得ることができる。
【0030】
この濃度は、シリカとシリカ以外の無機酸化物を固形分として0.1〜0.9質量%、さらには0.2〜0.6質量%の範囲であることが好ましい。
この濃度を低くしすぎると、異形シリカ系中空微粒子は無くなるか減少するものの、収率が低下し、生産効率が低下することがある。
この濃度を高くすると、異形シリカ系中空微粒子が増加し、透明被膜表面に突起を形成し、白化の原因となるとともに、耐擦傷性が不充分になる場合がある。
【0031】
本発明で使用される異形粒子が個数割合が少ないシリカ系中空微粒子の製造方法は、例えば、前記したシリカ系中空微粒子の製造方法の主要工程において、
(1)シリカとシリカ以外の無機酸化物とからなる複合酸化物微粒子を核とする場合、粒径の揃った核を使用し、具体的には、核のCV値が100%以下、好ましくは50%以下の核粒子を用いる。この時の核粒子の調製は種粒子を用いたいわゆるシード法を採用することが好ましく、種粒子の粒子成長を可能な範囲でゆっくり行うことが好ましい。
(2)核粒子の粒子成長を行う場合、シリカ源、アルミナ源の添加を可能な範囲でゆっくり行うことが好ましい。この時の粒子成長速度は、核粒子の粒子径によっても異なるが、概ね0.1〜10nm/時間、さらには0.2〜5nm/時間、特に0.2〜3nm/時間の範囲にあることが好ましい。
(3)シリカ被覆層を形成する際、シリカ源の添加を可能な範囲でゆっくり行うことが好ましい。この時のシリカ被覆速度は、核粒子の粒子径によっても異なるが、概ね0.1〜10nm/時間、さらには0.2〜5nm/時間、特に0.2〜3nm/時間の範囲にあることが好ましい。
(4)上記各工程において、粒子成長後、シリカ被覆層形成後、熟成を行うことが好ましい。この時の熟成は、固形分濃度が1〜30質量%、温度が30〜100℃、時間が1〜12時間の範囲で行うことが好ましい。
(5)上記各工程において、超音波を照射するなどして凝集を防止したり、高分散化することが好ましい。
(6)分散が困難な凝集粒子、粗大粒子が存在する場合は、カプセルフィルター、遠心分離等でこれを除去することが好ましい。
【0032】
本発明に用いるシリカ系中空微粒子は下記式(1)で表される有機珪素化合物、これらの加水分解物で表面処理されていることが好ましい。
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、シラノール基、ハロゲン、水素、n:0〜3の整数)
【0033】
このような式(1)で表される有機珪素化合物としてはテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、等が挙げられる。
【0034】
このような有機珪素化合物で表面処理されていると、マトリックス中に均一に分散するとともに密に充填することができ、膜の強度、耐擦傷性に優れた透明被膜を得ることができる。
【0035】
シリカ系中空微粒子の表面処理は微粒子のアルコール分散液に前記有機珪素化合物を所定量加え、これに水を加え、必要に応じて加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて有機珪素化合物を加水分解する。
【0036】
このときのシリカ系中空微粒子と有機珪素化合物との量比(有機珪素化合物の固形分(Rn-SiX(4-n)/2)としての重量/シリカ系中空微粒子の重量)はシリカ系中空微粒子の平均粒子径によっても異なるが0.005〜0.3さらには0.01〜0.2の範囲にあることが好ましい。
【0037】
前記重量比が少ないと、後述するマトリックス形成成分との親和性が低く、塗料中での分散性、安定性が不充分となり、塗料中で微粒子が凝集することがあり、緻密な透明被膜が得られないことがあり、基材との密着性、膜の強度、耐擦傷性等が不充分となることがある。
【0038】
前記重量比が多すぎても、塗料中での分散性がさらに向上することもなく、シリカ系中空微粒子の屈折率が高くなり、所望の低屈折率の透明被膜が得られないことがあり、反射防止性能が不充分となることがある。
【0039】
マトリックス成分
マトリックス成分としては、シリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス成分、有機樹脂系マトリックス成分等が用いられる。
【0040】
シリコーン系マトリックス成分としては前記式(1)と同様の有機珪素化合物の加水分解重縮合物が好適に用いられる。
また、有機樹脂系マトリックス成分としては、塗料用樹脂として公知の熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、電子線硬化樹脂等が挙げられる。
【0041】
このような樹脂として、たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂の場合、紫外線硬化型のものであっても、電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。
【0042】
本発明の透明被膜付基材の概念を図1に模式的に示す。図1に示すように異形シリカ系中空微粒子が無く、平均粒子径、屈折率および粒子径変動係数が前記した範囲にあるシリカ系中空微粒子を用いると、基材と透明被膜との密着性が高く、透明被膜の上部表面は凹凸が小さく平滑になり、このため透明被膜は、白化が抑制され、強度、耐擦傷性に優れ、低屈折率で反射防止性能に優れている。
【0043】
これに対し、従来の透明被膜付基材の概念は、図2に模式的に示される。図2に示すように異形シリカ系中空微粒子が存在していると、透明被膜の上部表面は凹凸が形成され、これにより、透明被膜が、白化したり、この凸部によって、強度や耐擦傷性が低下することがある。
【0044】
透明被膜のシリカ系中空微粒子の含有量は40〜90質量%、さらには50〜90質量%の範囲にあることが好ましい。なお残りの成分はマトリックス成分となる。透明被膜中のシリカ系中空微粒子の含有量が少ないと場合は屈折率の充分に低い透明被膜が得られないことがあり、透明被膜中のシリカ系中空微粒子の含有量が90質量%を越えると、後述するマトリックス成分の含有量が少な過ぎるために透明被膜の強度、耐擦傷性が不充分となることがある。
【0045】
透明被膜の膜厚は80〜120nm、さらには90〜110nmの範囲にあることが好ましい。
透明被膜が薄すぎると、膜の強度、耐擦傷性が不充分となる場合がある。また、膜が薄すぎて十分な反射防止性能が得られないことがある。透明被膜が厚すぎても、シリカ系中空微粒子の含有量が多い場合に透明被膜にクラックが入りやすくなるために膜の強度が不充分となる場合がある。
【0046】
また、透明被膜の屈折率は1.15〜1.40、さらには1.20〜1.35の範囲にあることが好ましい。透明被膜の屈折率が前記範囲よりも低いものは、被膜組成の点で得ることが困難であり、また屈折率が大きくすると、基材の屈折率あるいは必要に応じて形成される透明被膜の下層に形成される他の膜の屈折率によっても異なるが反射防止性能が不充分となることがある。
本発明の透明被膜の屈折率はエリプソメーター(ULVAC社製、EMS−1)により測定する。
【0047】
このような透明被膜付基材の形成方法としては従来公知の方法を採用することができる。
具体的には、後述する本発明に係る透明被膜形成用塗料をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
【0048】
透明被膜形成用塗料
本発明に係る透明被膜形成用塗料は、前記した平均粒子径(Dn)が50〜120nmの範囲にあり、粒子径変動係数(CV値)が1〜50%の範囲にあり、屈折率が1.10〜1.30の範囲にあり、平均粒子径(Dn)の2倍以上の異形シリカ系中空微粒子のシリカ系中空微粒子中の個数割合が1%以下であるシリカ系中空微粒子とマトリックス形成成分と極性溶媒とからなることを特徴としている。
【0049】
シリカ系中空微粒子
本発明に用いるシリカ系中空微粒子としては前記したと同様の異形シリカ系中空微粒子が少なく、所定の平均粒子径、屈折率、粒子径変動係数(CV値)を有するシリカ系中空微粒子が用いられる。
【0050】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、前記したシリコーン系(ゾルゲル系)マトリックス形成成分、有機樹脂系マトリックス形成成分等が用いられる。
【0051】
極性溶媒
本発明に用いる極性溶媒としてはマトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともにシリカ系中空微粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の溶媒を用いることができる。
【0052】
具体的には、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、トルエン、シクロヘキサノン、イソホロン等が挙げられる。
【0053】
なかでも、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)等のアルコール類は表面処理したシリカ系中空微粒子を均一に分散することができ、カルボニル基を有する溶媒は表面処理したシリカ系中空微粒子を均一に分散することができるとともに塗料の安定性がよく、均一性、基材との密着性、強度等に優れた透明被膜を再現性よく形成することができるので好適に用いることができる。
【0054】
透明被膜形成用塗料中のシリカ系中空微粒子の濃度は固形分として0.5〜54質量%、さらには0.6〜54質量%の範囲にあることが好ましい。透明被膜形成用塗料中のシリカ系中空微粒子少ないと、透明被膜中のシリカ系中空微粒子の含有量が少なく屈折率の充分に低い透明被膜が得られないことがある。シリカ系中空微粒子が多すぎても、反対にマトリックス形成成分の含有量が少なくなるために透明被膜の強度が不充分となることがある。
【0055】
透明被膜形成用塗料中のマトリックス形成成分の濃度は固形分とし0.1〜30質量%さらには0.1〜24質量%の範囲にあることが好ましい。
マトリックス形成成分の濃度が低い場合は、得られる透明被膜中のマトリックス成分が少なく、耐擦傷性、基材との密着性等が不充分となる場合がある。マトリックス形成成分の濃度が多すぎると、得られる透明被膜中のシリカ系中空微粒子の含有量が少なくなり、屈折率が不充分となり、反射防止性能が不充分となる場合がある。
【0056】
透明被膜形成用塗料の全固形分濃度は1〜60質量%、さらには3〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
全固形分濃度が低すぎると、透明被膜の膜厚が薄すぎてしまい、耐擦傷性が不充分になる場合があり、また充分な反射防止性能が得られない場合がある。一方。全固形分濃度が多すぎると、塗料の粘度が高くなり、塗料の安定性が低下したり、塗工性が低下し、また、薄い膜を形成することが困難となり、さらに得られる透明被膜の均一性、基材との密着性、強度等が不充分となることがある。
【0057】
本発明に係る透明被膜形成用塗料を用いて透明被膜を形成する方法として従来公知の方法を採用することができる。
具体的には、透明被膜形成用塗料をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法、バーコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、紫外線照射、加熱処理等常法によって硬化させることによって透明被膜を形成することができるが、本発明ではロールコート法、スリットコーター印刷法、グラビア印刷法、マイクログラビア印刷法が推奨される。
【0058】
なお、マトリックス形成成分を重合や縮合などの反応を行うための触媒がふくまれていてもよい。その他、公知の透明被膜に用いられる成分が含まれていてもよい。
【0059】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0060】
[実施例1]
シリカ系中空微粒子(P-1)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2 濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液17,000gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液17,000gを25時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.5質量%であった。また、平均粒子径は50nmであった。
【0061】
ついで、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液54,000gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液18,000gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(1)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.6質量%であった。
【0062】
分散液を限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(1) 分散液を得た。このとき、平均粒子径は78nm、CV値=14.0%であった。
【0063】
この複合酸化物微粒子(1)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-1-1)の水分散液を得た。
【0064】
つぎに、シリカ系微粒子(P-1-1)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-1-2)の水分散液を得た。
【0065】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-1)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.2質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-1)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(P-1)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。
【0066】
反射防止用透明被膜形成用塗料(1)の製造
シリカ系中空微粒子(P-1)のアルコール分散液をエタノールで固形分濃度5質量%に希釈した分散液60gと、アクリル樹脂(ヒタロイド1007、日立化成(株)製)2.5gおよびイソプロパノールとn−ブタノールの1/1(重量比)混合溶媒37.5gとを充分に混合して透明被膜形成用塗料(1)を調製した。
【0067】
ハードコート膜形成用塗布液(1)の調製
シリカゾル分散液(日揮触媒化成(株)製;カタロイド SI−30;平均粒子径12nm、SiO2濃度40.5質量%、分散媒:イソプロパノ−ル、粒子屈折率1.46)100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン1.88g(信越シリコ−ン株製:KBM−503、SiO2成分81.2%)を混合し超純水を3.1g添加し50℃で20時間攪拌して表面処理した12nmのシリカゾル分散液を得た(固形分濃度40.5質量%)。
【0068】
その後、ロータリーエバポレーターでプロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGME)に溶剤置換した(固形分40.5%)。
ついで、固形分濃度40.5質量%のシリカゾル(1-8)のプロピレングリコールモノプロピルエーテル分散液51.85gと、ジヘキサエリスリトールトリアセテート(共栄社化学(株)製:DPE−6A)18.90g、と1.6−ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製;ライトアクリレートSR−238F)2.10gとシリコーン系レベリング剤(楠本化成(株)製;ディスパロン1610)0.01gと光重合開始剤(チバジャパン(株))製:イルガキュア184、PGMEで固形分濃度10%に溶解)12.60gとPGME14.54gとを充分に混合して固形分濃度42.0質量%のハードコート膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0069】
反射防止用透明被膜付基材(1)の製造
ハードコート膜形成用塗布液(1)を、TACフィルム(パナック(株)製:FT−PB80UL−M、厚さ:80μm、屈折率:1.51)にバーコーター法(#14)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させてハードコート膜を形成した。ハードコート膜の膜厚は6μmであった。
【0070】
ついで、反射防止用透明被膜形成用塗布液(1)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(1)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。この反射防止用透明被膜付基材(1)の全光線透過率、ヘイズ、波長550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦り傷性を表に示す。
【0071】
全光線透過率およびヘイズは、ヘーズメーター(スガ試験機(株)製)により、反射率は分光光度計(日本分光社、Ubest-55)により夫々測定した。また、被膜の屈折率は、エリプソメーター(ULVAC社製、EMS−1)により測定した。なお、未塗布のPETフィルムは全光線透過率が90. 7%、ヘイズが2. 0%、波長550nmの光線の反射率が7. 0%であった。
【0072】
鉛筆硬度
鉛筆硬度は、JIS K 5400に準じて、鉛筆硬度試験器で測定した。即ち、透明被膜表面に対して45度の角度に鉛筆をセットし、所定の加重を負荷して一定速度で引っ張り、傷の有無を観察した。
【0073】
密着性
透明被膜付基材(A-1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロファンテープを接着し、次いで、セロファンテープを剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の3段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表に示す。
残存升目の数90個以上 :◎
残存升目の数85〜89個:○
残存升目の数84個以下 :△
【0074】
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表に示した。
【0075】
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条の傷が僅かに認められる :○
筋条の傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0076】
白化の評価
塗膜表面を斜め(約30°)から目視し、評価を以下の4段階で評価した。
【0077】
評価基準:
白化が認められない :◎
若干の白化がある :○
一部白化している :△
全面的に白化している:×
【0078】
[実施例2]
反射防止用透明被膜形成用塗料(2)の製造
実施例1と同様にして調製したシリカ系中空微粒子(P-1)のアルコール分散液をエタノールで固形分濃度5質量%に希釈した分散液50gと、アクリル樹脂(ヒタロイド1007、日立化成(株)製)3gおよびイソプロパノールとn−ブタノールの1/1(重量比)混合溶媒47gとを充分に混合して透明被膜形成用塗料(2)を調製した。
【0079】
反射防止用透明被膜付基材(2)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(2)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(2)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は95nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(2)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0080】
[実施例3]
反射防止用透明被膜形成用塗料(3)の製造
実施例1と同様にして調製したシリカ系中空微粒子(P-1)のアルコール分散液をエタノールで固形分濃度5質量%に希釈した分散液72gと、アクリル樹脂(ヒタロイド1007、日立化成(株)製)1.9gおよびイソプロパノールとn−ブタノールの1/1(重量比)混合溶媒26.1gとを充分に混合して透明被膜形成用塗料(3)を調製した。
【0081】
反射防止用透明被膜付基材(3)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(3)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(3)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は110nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(3)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0082】
[実施例4]
シリカ系中空微粒子(P-2)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度0.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液25,500gとAl23としての濃度0.17質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液25,000gを50時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.3質量%であった。また、平均粒子径は49nmであった。
【0083】
ついで、SiO2として濃度0.5質量%の珪酸ナトリウム水溶液81,000gとAl23としての濃度0.17質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液26,500gを50時間で添加して複合酸化物微粒子(2)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.4質量%であった。
【0084】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(2) 分散液を得た。このとき、平均粒子径は76nm、CV値=11.0%であった。
【0085】
この複合酸化物微粒子(2)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-2-1)の水分散液を得た。
【0086】
つぎに、シリカ系微粒子(P-2-1)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-2-2)の水分散液を得た。
【0087】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-2)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-2)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-2)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(P-2)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。
【0088】
反射防止用透明被膜形成用塗料(4)の製造
実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-2)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(4)を調製した。
【0089】
反射防止用透明被膜付基材(4)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(4)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(4)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(4)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0090】
[実施例5]
シリカ系中空微粒子(P-3)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度1.2質量%の珪酸ナトリウム水溶液10,500gとAl23としての濃度0.4質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液10,500gを25時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.8質量%であった。また、平均粒子径は51nmであった。
【0091】
ついで、SiO2として濃度1.2質量%の珪酸ナトリウム水溶液33,560gとAl23としての濃度0.4質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液11,190gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(3)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.9質量%であった。
【0092】
分散液を、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(3) 分散液を得た。このとき、平均粒子径は78nm、CV値=28.0%であった。
【0093】
この複合酸化物微粒子(3)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3-1)の水分散液を得た。
【0094】
つぎに、シリカ系微粒子(P-3-1)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3-2)の水分散液を得た。
【0095】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-3)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-3)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(P-3)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。
【0096】
反射防止用透明被膜形成用塗料(5)の製造
実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-3)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(5)を調製した。
【0097】
反射防止用透明被膜付基材(5)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(5)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(5)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(5)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0098】
[実施例6]
シリカ系中空微粒子(P-4)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液45,200gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液45,200gを25時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.5質量%であった。また、平均粒子径は70nmであった。
【0099】
ついで、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液138,600gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液46,200gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(4)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.6質量%であった。
【0100】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(4) 分散液を得た。このとき、平均粒子径は95nm、CV値=11.5%であった。
【0101】
この複合酸化物微粒子(4)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-4-1)の水分散液を得た。
【0102】
つぎに、シリカ系微粒子(P-4-1)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-4-2)の水分散液を得た。
【0103】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-4)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-4)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-4)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(P-4)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。
【0104】
反射防止用透明被膜形成用塗料(6)の製造
実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-4)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(6)を調製した。
【0105】
反射防止用透明被膜付基材(6)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(6)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(6)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(6)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0106】
[実施例7]
シリカ系中空微粒子(P-5)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液13,000gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液13,000gを25時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.5質量%であった。また、平均粒子径は42nmであった。
【0107】
ついで、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液40,000gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液13,000gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(5)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.6質量%であった。
【0108】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(5)分散液を得た。このとき、平均粒子径は61nm、CV値=16%であった。
【0109】
この複合酸化物微粒子(5)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-5-1)の水分散液を得た。
【0110】
つぎに、シリカ系微粒子(P-5-1)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-5-2)の水分散液を得た。
【0111】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-5)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-5)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-5)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(P-5)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。
【0112】
反射防止用透明被膜形成用塗料(7)の製造
実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-5)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(7)を調製した。
【0113】
反射防止用透明被膜付基材(7)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(7)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(7)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(7)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0114】
[比較例1]
シリカ系中空微粒子(RP-1)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2 濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度3.0質量%の珪酸ナトリウム水溶液4,200gとAl23としての濃度1.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液4,200gを25時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は1.9質量%であった。また、平均粒子径は53nmであった。
【0115】
ついで、SiO2として濃度3.0質量%の珪酸ナトリウム水溶液13,400gとAl23としての濃度1.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液4,500gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(R1)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は2.3質量%であった。
【0116】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(R1) 分散液を得た。このとき、平均粒子径は77nm、CV値=56%であった。
【0117】
この複合酸化物微粒子(R1)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-1-1)の水分散液を得た。
【0118】
つぎに、シリカ系微粒子(RP-1-1) 分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-1-2)の水分散液を得た。
【0119】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-1)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-1)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(RP-1)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(RP-1)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。
【0120】
反射防止用透明被膜形成用塗料(R1)の製造
実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(RP-1)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(R1)を調製した。
【0121】
反射防止用透明被膜付基材(R1)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(R1)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(R1)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(R1)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0122】
[比較例2]
シリカ系中空微粒子(RP-2)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度3.0質量%の珪酸ナトリウム水溶液11,300gとAl23としての濃度1.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液11,300gを25時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は1.9質量%であった。また、平均粒子径は78nmであった。
【0123】
ついで、SiO2として濃度3.0質量%の珪酸ナトリウム水溶液34,650gとAl23としての濃度1.0質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液11,550gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(4)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は2.3質量%であった。
【0124】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(4) 分散液を得た。このとき、平均粒子径は97nm、CV値=52%であった。
【0125】
この複合酸化物微粒子(4)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-4-1)の水分散液を得た。
【0126】
つぎに、シリカ系微粒子(P-4-1)分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-4-2)の水分散液を得た。
【0127】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-4)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(P-4)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(P-4)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(RP-2)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。
【0128】
反射防止用透明被膜形成用塗料(R2)の製造
実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(RP-2)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(R2)を調製した。
【0129】
反射防止用透明被膜付基材(R2)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(R2)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(R2)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は110nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(R2)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
[比較例3]
【0130】
シリカ系中空微粒子(RP-3)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液5,200gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液5,200gを25時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.5質量%であった。また、平均粒子径は23nmであった。
【0131】
ついで、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液11,300gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液3,800gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(R3)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.6質量%であった。
【0132】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(R3) 分散液を得た。このとき、平均粒子径は34nm、CV値=13%であった。
【0133】
この複合酸化物微粒子(R3)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-3-1)の水分散液を得た。
【0134】
つぎに、シリカ系微粒子(RP-3-1) 分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-3-2)の水分散液を得た。
【0135】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-3)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-3)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(RP-3)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(RP-3)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表に示す。
【0136】
反射防止用透明被膜形成用塗料(R3)の製造
実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(RP-3)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(R3)を調製した。
【0137】
反射防止用透明被膜付基材(R3)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(R3)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(R3)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は100nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(R3)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0138】
[比較例4]
シリカ系中空微粒子(RP-4)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:SI−550、平均粒子径5nm、CV値17%、SiO2濃度20質量%)10gに純水390gを加えて98℃に加温し、この温度を保持しながら、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液102,200gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液102,200gを25時間で添加して、SiO2・Al23一次粒子分散液を得た。このときの反応液のpHは11.8、固形分濃度は0.5質量%であった。また、平均粒子径は115nmであった。
【0139】
ついで、SiO2として濃度0.75質量%の珪酸ナトリウム水溶液535,700gとAl23としての濃度0.25質量%のアルミン酸ナトリウム水溶液178,560gを25時間で添加して複合酸化物微粒子(R4)(二次粒子)の分散液を得た。このとき、反応液のpHは11.6、固形分濃度は0.6質量%であった。
【0140】
ついで、限外濾過膜で洗浄して固形分濃度13質量%にした後、目開き1μmのカプセルフィルターで濾過し複合酸化物微粒子(R4) 分散液を得た。このとき、平均粒子径は152nm、CV値=9%であった。
【0141】
この複合酸化物微粒子(R4)の分散液500gに純水1,125gを加え、さらに濃塩酸(濃度35.5質量%)を滴下してpH1.0とし、脱アルミニウム処理を行った。次いで、pH3の塩酸水溶液10Lと純水5Lを加えながら限外濾過膜で溶解したアルミニウム塩を分離・洗浄して固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-4-1)の水分散液を得た。
【0142】
つぎに、シリカ系微粒子(RP-3-1) 分散液にアンモニア水を添加して分散液のpHを10.5に調整し、ついで200℃にて11時間熟成した後、常温に冷却し、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)400gを用いて3時間イオン交換し、ついで、陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSA20A)200gを用いて3時間イオン交換し、さらに陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:ダイヤイオンSK1B)200gを用い、80℃で3時間イオン交換して洗浄を行い、固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-4-2)の水分散液を得た。
【0143】
ついで限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-4)のアルコール分散液を調製した。
固形分濃度20質量%のシリカ系微粒子(RP-3)のアルコール分散液100gにメタクリルシランカップリング剤(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)(信越化学(株)製:KBM-503、SiO2成分81.9質量%)3gを添加し、50℃で加熱処理を行い、再び限外濾過膜を用いて溶媒をエタノールに置換した固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(RP-3)のアルコール分散液を調製した。
このシリカ系中空微粒子(RP-4)の平均粒子径、CV値、屈折率および異形シリカ系中空微粒子の割合を表1に示す。
【0144】
反射防止用透明被膜形成用塗料(R4)の製造
実施例1において、固形分濃度20質量%のシリカ系中空微粒子(RP-4)のアルコール分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗料(R4)を調製した。
【0145】
反射防止用透明被膜付基材(R4)の製造
実施例1と同様にしてハードコート膜を形成した後、反射防止用透明被膜形成用塗布液(R3)をバーコーター法(バー#4)で塗布し、80℃で120秒間乾燥した後、N2雰囲気下で600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させて反射防止用透明被膜付基材(R3)を作製した。このときの反射防止用透明被膜の膜厚は160nmであった。
この反射防止用透明被膜付基材(R4)の全光線透過率、ヘイズ、550nmの光線の反射率、被膜の屈折率、密着性および鉛筆硬度、耐擦傷性を表に示す。
【0146】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
該基材上に形成された、シリカ系中空微粒子とマトリックス成分とからなる透明被膜とを含む透明被膜付基材であって、平均粒子径(Dn)の2倍以上の粒子径を有する異形シリカ系中空微粒子のシリカ系中空微粒子中の個数割合が1%以下にあることを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項2】
前記シリカ系中空微粒子の平均粒子径が50〜120nmの範囲にあり、粒子径変動係数(CV値)が1〜50%の範囲にあり、屈折率が1.10〜1.30の範囲にあることを特徴とすると請求項1に記載の透明被膜付基材。
【請求項3】
前記透明被膜中のシリカ系中空微粒子の含有量が40〜90質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1または2に記載の透明被膜付基材。
【請求項4】
前記透明被膜の屈折率が1.15〜1.40の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項5】
シリカ系中空微粒子とマトリックス形成成分と極性溶媒とからなる透明被膜形成用塗布液であって、
前記シリカ系中空微粒子は、平均粒子径(Dn)の2倍以上の粒子径を有する異形シリカ系中空微粒子の個数割合が1%以下にあり、かつ平均粒子径(Dn)が50〜120nmの範囲にあり、粒子径変動係数(CV値)が1〜50%の範囲にあり、屈折率が1.10〜1.30の範囲にあることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
【請求項6】
塗料中のシリカ系中空微粒子の濃度が固形分として0.4〜54質量%の範囲にあり、マトリックス形成成分の濃度が固形分とし0.1〜36質量%の範囲にあり、全固形分濃度が1〜60質量%の範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の透明被膜形成用塗料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−30489(P2012−30489A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172143(P2010−172143)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】