説明

透明電極の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法

【課題】材料使用効率が高く、金属細線の損傷を防ぎ、また、ある面積に区切って被覆することが容易で、かつ、面積内の厚みムラの少ない透明電極の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供する。
【解決手段】透明基材100上に金属細線をパターン状に形成してなる第一導電層104と、第一導電層104上及び透明基材100上を連続的に被覆する導電性ポリマーを含有する第二導電層105と、を有する透明電極10の製造方法において、インクジェットヘッド2から第二導電層105を形成する導電性ポリマーを含有した液体材料を射出することによって、第二導電層105を形成し、その後乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明電極の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型TV等の需要の高まりに伴い、液晶・プラズマ・有機エレクトロルミネッセンス・フィールドエミッション等、各種方式のディスプレイ技術が開発されている。これら表示方式の異なるいずれのディスプレイにおいても、透明電極は必須の構成技術となっている。また、テレビ以外でも、タッチパネルや携帯電話、電子ペーパー、各種太陽電池、各種エレクトロルミネッセンス調光素子においても、透明電極は欠くことのできない技術要素となっている。
従来透明電極は、ガラスや透明なプラスチックフィルム等の透明基材上に、インジウム−スズの複合酸化物(ITO)膜を真空蒸着法やスパッタリング法で製膜したITO透明電極が主に使用されてきた。
しかし、ITOに用いられるインジウムはレアメタルであり、かつ価格の高騰により、脱インジウムが望まれている。さらに、真空蒸着法やスパッタリングといったいわゆる真空蒸着法は、タクトタイムが長く材料使用効率が非常に悪いといった問題があり、ITO透明電極は高コストであるという大きな問題が存在する。
また、一方では、ディスプレイの大画面化、生産性向上に伴い、透明性を維持しながら低抵抗化が可能となる技術が所望されている。近年、このような高透明性かつ低抵抗値が要求される製品にも対応できるよう、パターン状に形成された金属細線に導電性ポリマー等の透明導電膜を積層し、電流の面均一性と高い導電性を併せ持つ透明導電フィルムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような構成で大面積化は可能になったとしても、結局ITO電極同様の真空蒸着法やスパッタリングという手法を用いると高コストであるという問題は解消されない。
【0003】
そこで、真空成膜法に代わる透明導電膜の積層方法としていわゆる印刷方法の適用が開発されている(例えば、特許文献2参照)。ただし、このようにスクリーン印刷などの手法を用いると、パターン状に形成された金属細線の導電エリアを一様に被覆することができるが、スクリーンメッシュが形成された金属細線に接触し、金属細線を削る、剥がすなどのダメージを与えてしまう可能性が高い。金属細線がダメージを受けると、抵抗値が上昇してしまうなどの問題を引き起こす。
また、透明導電膜を形成する方法として、バーコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、エクストルージョンコーターなどを使用した各種塗布方法を適用することができる(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−302508号公報
【特許文献2】特開2010−73415号公報
【特許文献3】特開2010−47671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記各種塗布方法の中で、バーコーター、ロッドコーターなどは上記スクリーン印刷同様に基材に接触してしまうため、金属細線にダメージを与えてしまう可能性が高い。
一方、エアドクターコーターなどはこのような基材への接触といった問題はないが、材料使用効率が低下してしまうという問題と、一定面積に形成されている金属細線の導電エリアを基準としたある面積(金属細線導電エリア+α)に区切って透明導電膜を被覆することが困難である。さらに、エクストルージョンコーターでは材料使用効率は高いものの、ある面積に区切って被覆させたい場合に、面積内の透明導電膜の厚み分布が発生しやすく、その制御の技術的課題が大きいという問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、材料使用効率が高く、金属細線の損傷を防ぎ、また、ある面積に区切って被覆することが容易で、かつ、面積内の厚みムラの少ない透明電極の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様によれば、透明基材上に金属細線をパターン状に形成してなる第一導電層と、前記第一導電層上及び前記透明基材上を連続的に被覆する導電性ポリマーを含有する第二導電層と、を有する透明電極の製造方法において、
インクジェットヘッドから前記第二導電層を形成する前記導電性ポリマーを含有した液体材料を射出することによって、前記第二導電層を形成し、その後乾燥させることを特徴とする透明電極の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インクジェットヘッドから第二導電層を形成する導電性ポリマーを含有した液体材料を射出することによって、第二導電層を形成し、その後乾燥させて透明電極を製造する。このようにインクジェットヘッドを使用した塗布方法は、前計量塗布方式に分類され、透明基材上の必要なエリアに必要な量だけ液体材料を供給するため、液体材料の無駄が無く、第二導電層を形成する液体材料の使用効率を上げることができる。
また、インクジェットヘッドを使用した塗布方法は、対象となる透明基材との距離を1mm程度に取ることが可能で、完全に非接触とすることができるので、第一導電層の損傷を防止することができる。
さらに、透明基材上の必要なエリアに液滴の形で計量された液体材料を正確に配置できることから、第二導電層の厚みムラがなく明瞭な形で、ある面積に区切って形成することができる。
以上のことから、コスト削減を図ることができ、透明電極の抵抗値上昇を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】透明電極の概略構成を示す断面図である。
【図2】インクジェットヘッドを用いた塗布装置を使用して、透明基材に第二導電層をある面積で区切って塗布する方法の一例を示す概略模式図である。
【図3】一部破断面を有するインクジェットヘッドの一例を示す概略斜視図である。
【図4】有機エレクトロルミネッセンス素子の概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[透明電極]
図1は、本発明の透明電極の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、透明電極10は、透明基材100上にパターン状に形成された金属細線からなる第一導電層104と、第一導電層104上及び透明基材100上を連続的に被覆する導電性ポリマーを有する第二導電層105と、を有する。
【0010】
(透明基材)
本発明における透明基材としては、ガラス基材が挙げられる。ガラス基材には特に限定は無く、特に無アルカリガラスが好ましく用いられる。その他、ロールトゥロールでの生産適性、有機エレクトロルミネッセンス素子用の透明電極に供した際の素子のフレキシビリティ等の観点からは、厚さが10〜200μmの薄膜ガラスを用いることが好ましい。さらに、厚さが50〜120μmが破損のしにくさ、ロール搬送の容易さの観点から望ましい。具体的には特開2010−132532号公報のガラスフィルムとしているような薄膜ガラスを用いることができる。
【0011】
(第1導電層)
本発明における第1導電層は、透明基材上に金属細線をパターン状に形成したものである。これにより金属細線からなる光不透過の導電部と透光性窓部を併せ持つフィルム基材となり、透明性、導電性に優れた電極基材が作製できる。金属細線は、導電性に優れていれば特に制限はなく、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等の金属の他に合金でもよい。特に、後述のようにパターンの形成のしやすさの観点から金属細線の形状は、金属微粒子または金属ナノワイヤであることが好ましく、金属細線は導電性の観点から銀であることが好ましい。
パターン形状には特に制限はないが、例えば、ストライプ状(平行線状)、平行線を直交させた格子状、ハニカム状、あるいはランダムな網目状であってもよく、特にストライプ状、格子状、ハニカム状が好ましい。
パターンの線幅は10〜200μmが好ましい。細線の線幅が10μm未満では、所望の導電性が得られず、また200μmを超えると透明性が低下するためである。さらに好ましくは10〜100μmの範囲である。
ストライプ状、格子状のパターンにおいて細線の間隔は、0.5〜4mmが好ましい。またハニカム状のパターンにおいては、一辺の長さが0.5〜4mmが好ましい。
細線の高さは、0.1〜10μmが好ましい。細線の高さが0.1μm未満では、所望の導電性が得られず、また10μmを超えると有機電子デバイスの形成において、電流リークや機能層の膜厚し分布不良の要因となるためである。
【0012】
第1導電層の細線パターンは、金属粒子の分散液を用い、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷、インクジェット法等の印刷法により形成できる。各印刷の方式は、一般的に電極パターン形成に使われる手法が本発明に関しても適用可能である。具体的な例として、グラビア印刷法については特開2009−295980号公報、特開2009−259826号公報、特開2009−96189号公報、特開2009−90662号公報に記載の方法等が、フレキソ印刷法については特開2004−268319号公報、特開2003−168560号公報に記載の方法等が、スクリーン印刷法については特開2010−34161号公報、特開2010−10245号公報、特開2009−302345号公報に記載の方法等が例として挙げられる。
その他の方法としては、例えば、基材全面に金属層を形成し、公知のフォトリソ法によって形成できる。具体的には、基材上に全面に、印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の1あるいは2以上の物理的または化学的形成手法を用いて導電体層を形成する、あるいは、金属箔を接着剤で基材に積層した後、公知のフォトリソ法を用いて、エッチングすることにより、所望のストライプ状あるいはメッシュ状に加工できる。
別な方法としては、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する方法や、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷、あるいは、インクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、さらに別な方法としては、銀塩写真技術を応用した方法も利用できる。銀塩写真技術を応用した方法については、例えば、特開2009−140750号公報の段落0076〜0112、及び実施例を参考にして実施することができる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法については、例えば、特開2007−281290号公報を参考にして実施できる。
【0013】
ランダムな網目構造としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載のような、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成する方法を利用できる。
第一導電層の細線部の表面比抵抗は、100Ω/□以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257、等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
【0014】
《金属ナノ粒子》
前記金属の細線パターンは金属粒子のペーストを印刷することにより設けることが好ましい。印刷後、導電性を高めるために、加熱し焼成する。前記金属粒子は、高い導電性が得られることから、金属ナノ粒子が好ましい。
前記金属ナノ粒子とは、粒子径が原子スケールからnmサイズの微粒子状の金属のことをいう。金属ナノ粒子の平均粒径としては3〜300nmが好ましく、5〜100nmであることがより好ましい。本発明において金属ナノ粒子に用いられる金属としては、導電性の観点から銀または銅が好ましく、銀または銅単独でもよいし、それぞれの組み合わせでもよく、銀と銅の合金、銀または銅が一方の金属でめっきされていてもよい。中でも特に銀のナノ粒子が好ましい。中でも、平均粒径30nm以下の銀ナノ粒子が好ましい。
また、基材上に形成された第一導電層は、加熱焼成処理を施すことが好ましい。これにより、金属微粒子同士の融着が進み、第1導電層の高導電化するため、特に好ましい。加熱焼成の温度は100〜900℃の範囲が好ましく特に150から600℃の範囲が更に好ましい。加熱焼成の時間は、温度によって好ましい範囲が異なるが、1〜60分が好ましい。
【0015】
(第2導電層)
第2導電層は、パターン形成された第1導電層を被覆するように、導電性ポリマーからなる分散液を塗布、乾燥して膜形成する。本発明において、第2導電層の塗布はインクジェット法の塗布法を用いる。
第2導電層は、導電性ポリマーと下記一般式(I)で表される構造単位を有する水溶性バインダーを含有する。一般式(I)で表される構造単位を有する水溶性バインダーは、導電性ポリマーの導電性増強効果を有しており、これにより、高い導電性、高い透明性を同時に満たすことができる。
【化1】

【0016】
このような積層構造を有する導電層を形成することで、金属細線、あるいは導電性ポリマー層単独では得ることのできない高い導電性を、電極面内において均一に得ることができる。
第2導電層の導電性ポリマーと水溶性バインダーとの比率は、導電性ポリマーを100質量部とした時、水溶性バインダーが30質量部から900質量部であることが好ましく、電流リーク防止、水溶性バインダーの導電性増強効果、透明性の観点から、水溶性バインダーが100質量部以上であることがより好ましい。
第2導電層の乾燥膜厚は30nmから2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の点から、200nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
第2導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基材や導電層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。また、熱処理を行う事で、水溶性バインダーの架橋反応を促進、完了させることができる。これにより電極の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上し、さらに素子性能が向上する。特に、有機EL素子においては、駆動電圧の低減、寿命の向上といった効果が得られる。上記乾燥の工程と、熱処理の工程は、同一工程であってもよく、別途行う工程であっても構わない。別途行う工程である場合には、乾燥と熱処理が連続した処理であってもよく、両処理間に時間的な休止があっても構わない。
【0017】
乾燥工程、熱処理工程の条件に制限は無いが、乾燥は水分の蒸発が迅速に行える条件として、例えば、80℃以上の温度をかけることができ、上限は導電層が損傷を与えない温度として300℃程度までは可能な領域と考えられる。時間は10秒から10分程度の範囲が好ましい。さらに、熱処理は、150℃以上300℃以下の温度で行う事が好ましい。150℃未満では、反応促進効果が小さく、300℃を超える場合、素材への熱的ダメージが増えるためか、効果が小さくなる。熱処理時間は、1分以上行うことが好ましい。処理時間の上限は特にないが、生産性の観点から24時間以下であることが好ましい。ただし熱処理温度が200℃を超える範囲では、30分以内に抑えることが好ましい。熱処理は、導電層を塗布、乾燥した後、オンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよい。オフラインで行う場合、さらに減圧下で行うことが、水分の乾燥促進にもつながり、好ましい。
【0018】
本発明において、酸触媒を用いて水酸基含有非導電性ポリマーの架橋反応を促進、完了させることができる。酸触媒としては、塩酸、硫酸や硫酸アンモニウムを用いることができる。また導電性ポリマーにドーパントとして用いるポリアニオンにおいて、スルホ基含有ポリアニオンを使用することで、ドーパントと触媒を兼用することができる。また、酸触媒の使用と合わせて、前述の熱処理を行う事ができ、処理時間の短縮にもつながり、好ましい。
【0019】
《バインダー樹脂》
本発明おいてバインダー樹脂は、下記一般式(I)で表される構造単位を含有する構造を有する水溶性バインダーである。本発明で言うところの水溶性バインダーは、25℃の水100gに0.001g程度溶解するバインダー樹脂であってもよい。
水への溶解性の程度は、ヘイズメーター、濁度計で測定することができる。また本発明に係る水溶性バインダー樹脂は、一般式(I)で表される構造単位と一般式(II)で表される構造単位を共に含有する構造を有するものが更に望ましい。
【化2】

【化3】

【0020】
上記一般式(I)で表されるヒドロキシ基を有する構造単位において、Rは水素原子、メチル基を表す。また、Qは−C(=O)O−、−C(=O)NRa−を表し、Raは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は置換基で置換されていても良い。
これら置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等で置換されても良い。これらのうち好ましくは、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基である。
上記アルキル基は分岐を有していてもよく、炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜8であることが更に好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が含まれる。
【0021】
上記シクロアルキル基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が含まれる。
上記アルコキシ基は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が含まれ、好ましくはエトキシ基である。
上記アルキルチオ基の炭素数は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が含まれる。
上記アリールチオ基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールチオ基の例にはフェニルチオ基及びナフチルチオ基等が含まれる。
上記シクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜8である。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロポキシ基、シクロブチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基が含まれる。
上記アリール基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリール基の例にはフェニル基及びナフチル基が含まれる。上記アリールオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例にはフェノキシ基及びナフトキシ基が含まれる。
上記へテロシクロアルキル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましく、3〜5であることが更に好ましい。へテロシクロアルキル基の例にはピペリジノ基、ジオキサニル基及び2−モルホリニル基が含まれる。
上記へテロアリール基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜10であることが更に好ましい。へテロアリール基の例にはチエニル基、ピリジル基が含まれる。
上記アシル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アシル基の例にはホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
上記アルキルカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルカルボンアミド基の例にはアセトアミド基等が含まれる。
上記アリールカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アリールカルボンアミド基の例にはベンズアミド基等が含まれる。
上記アルキルスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。スルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド基等が含まれる上記アリールスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アリールスルホンアミド基の例には、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミドが基含まれる。
上記アラルキル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アラルキル基の例にはベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が含まれる。
上記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニル基が含まれる。
上記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニル基が含まれる。
上記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8〜20であることが好ましく、8〜12であることが更に好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例にはベンジルオキシカルボニル基が含まれる。
上記アシルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アシルオキシ基の例にはアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。
上記アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルケニル基の例に、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が含まれる。
上記アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルキニル基の例にはエチニル基が含まれる。
上記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルスルホニル基の例に、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が含まれる。
上記アリールスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールスルホニル基の例に、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基が含まれる。
上記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1〜20あることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例に、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基が含まれる。
上記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシスルホニル基の例に、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基が含まれる。
上記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例に、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基が含まれる。
上記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例に、フェニルスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基が含まれる。置換基は同一でも異なっていても良く、これら置換基が更に置換されても良い。
【0022】
上記一般式(I)で表されるヒドロキシ基を有する構造単位において、Aは置換或いは無置換アルキレン基−(CH2CHRbO)x−CH2CHRb−を表す。アルキレン基は、例えば炭素原子数1〜5が好ましく、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。これらのアルキレン基は前述した置換基で置換されていても良い。また、Rbは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は前述の置換基で置換されていても良い。更に、xは平均繰り返しユニット数を表し、1〜100が好ましく、より好ましくは1〜10である。繰り返しユニット数は分布を有しており、表記は平均値を示し、小数点以下1桁で表記しても良い。
【0023】
上記一般式(II)で表されるヒドロキシ基を有しない構造単位において、R、Q、Ra、A、Rb、xは一般式(I)で定義した内容と同義である。
上記一般式(II)で表されるヒドロキシ基を有しない構造単位において、yは0、1を表す。また、Zはアルコキシ基、−O−C(=O)−Rc、−O−SO2−Rd、−O−SiRe3を表し、アルコキシ基は、例えば炭素原子数1〜12が好ましく、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基で、更に好ましくはメトキシ基である。これらのアルコキシ基は前述した置換基で置換されても良い。Rc、Rd、Reはアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基を表し、アルキル基は、例えば炭素原子数1〜12が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基で、更に好ましくはメチル基である。これらのアルキル基は前述した置換基で置換されても良い。パーフルオロアルキル基は、例えば炭素原子数1〜8が好ましく、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基で、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。アリール基は、例えばフェニル基、トルイル基が好ましく、より好ましくはトルイル基である。更に、これらのアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基は前述した置換基で置換されても良い。
【0024】
以下に一般式(I)、一般式(II)で表される構造単位の代表的具体例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【化4】

【化5】

【0025】
本発明のバインダー樹脂は一般式(I)で表される構造単位と一般式(II)で表される構造単位以外に構造単位を含有していても良い。
本発明に係るバインダー樹脂において、一般式(I)で表されるヒドロキシ基を有する構造単位のモル比は、10〜90%が好ましく、より好ましくは50〜80%である。
本発明のバインダー樹脂は汎用的な重合触媒を用いたラジカル重合により得ることができる。重合様式としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられ、好ましくは溶液重合である。重合温度は、使用する開始剤によって異なるが、一般に−10〜250℃、好ましくは0〜200℃、より好ましくは10〜100℃で実施される。
本発明のバインダー樹脂の分子量は3,000〜2,000,000の範囲が好ましく、より好ましくは4,000〜500,000、更に好ましくは5000〜100000の範囲内である。
本発明のバインダー樹脂の数平均分子量、分子量分布の測定は、一般的に知られているゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行なうことができる。使用する溶媒は、バインダー樹脂が溶解すれば特に限りはなく、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、CH2Cl2が好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが40℃が好ましい。
【0026】
《導電性ポリマー》
本発明では、第二導電層は導電性ポリマーを含有する。
導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを有してなる導電性ポリマーである。こうした導電性ポリマーは、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを、適切な酸化剤と酸化触媒と後述のポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
【0027】
本発明に用いるπ共役系導電性高分子としては、特に限定されず、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類、の鎖状導電性ポリマーを利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましい。ポリエチレンジオキシチオフェンが最も好ましい。
【0028】
π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
【0029】
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられるポリ陰イオンは、置換もしくは未置換のポリアルキレン、置換もしくは未置換のポリアルケニレン、置換もしくは未置換のポリイミド、置換もしくは未置換のポリアミド、置換もしくは未置換のポリエステル及びこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなるものである。
このポリ陰イオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる可溶化高分子である。
また、ポリ陰イオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させる。
ポリ陰イオンのアニオン基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点からは、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基がより好ましい。
ポリ陰イオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。これらの単独重合体であってもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、化合物内にさらにF(フッ素原子)を有するポリ陰イオンであってもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(旭硝子社製)等を挙げることができる。
これらのうち、スルホン酸を有する化合物であると、導電性ポリマー含有層を塗布、乾燥することによって形成した後に、マイクロ波を照射する前に100〜120℃で5分以上の加熱乾燥処理を施してもよい。これにより架橋反応が促進するため、塗布膜の洗浄耐性や溶媒耐性が著しく向上することから、好ましい。
さらに、これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。これらのポリ陰イオンは、ヒドロキシ基含有非導電性ポリマーとの相溶性が高く、また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできる。
【0031】
ポリ陰イオンの重合度は、モノマー単位が10〜100000個の範囲であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000個の範囲がより好ましい。
ポリ陰イオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有しないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/または重合触媒の存在下で、酸化重合またはラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/または重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーにアニオン基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーを重合する際に使用するものと同様である。
得られたポリマーがポリ陰イオン塩である場合には、ポリ陰イオン酸に変質させることが好ましい。アニオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外ろ過法が好ましい。
【0032】
導電性ポリマーに含まれるπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンの比率、「π共役系導電性高分子」:「ポリ陰イオン」は質量比で1:1〜20が好ましい。導電性、分散性の観点からより好ましくは1:2〜10の範囲である。
π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性ポリマーを得る際に使用される酸化剤は、例えばJ.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、いずれかの酸化剤である。実際的な理由のために、安価でかつ取扱い易い酸化剤、例えば鉄(III)塩、例えばFeCl3、Fe(ClO4)3、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、または過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)またはアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム及び銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン例えば鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン及びバナジウムイオンの存在下における空気及び酸素も使用することができる。過硫酸塩並びに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の使用が腐食性でないために大きな応用上の利点を有する。
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸;炭素数1〜20のアルキルスルホン酸、例えばメタンまたはドデカンスルホン酸;脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸、例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、随時炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸、例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩が挙げられる。
【0033】
こうした導電性ポリマーは、市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からCleviosシリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECONシリーズとして市販されている。本発明において、こうした剤も好ましく用いることができる。
第2ドーパントとして有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。前記酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。前記ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。前記カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。前記エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、等が挙げられる。前記スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよいが、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが
【0034】
(添加剤)
添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。さらに、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。
【0035】
[インクジェット塗布法]
本発明では、第二導電層をインクジェット法によって形成する。以下、インクジェット法について説明する。
図2はインクジェットヘッドを用いた塗布装置を使用して、第一導電層が形成された透明基材上に第二導電層をある面積で区切って塗布する方法の一例を示す概略模式図である。
図中、透明基材100は不図示の巻き出し及び巻き取り装置により連続的に走行されており、インクジェットヘッド2により第二導電層を形成する導電性ポリマーを含有した液体が、液滴として射出され第二導電層105が形成されて不図示の乾燥ゾーンを通過して不図示の巻き取り装置により巻き取られる。
インクジェットヘッド2としては特に限定はなく、例えば発熱素子を有し、この発熱素子からの熱エネルギーにより塗布液の膜沸騰による急激な体積変化によりノズルから射出液体を吐出させるサーマルタイプのヘッドでもよいし、インク圧力室に圧電素子を備えた振動板を有しており、この振動板によるインク圧力室の圧力変化で射出液体を吐出させる剪断モード型(ピエゾ型)のヘッドであってもよい。
【0036】
インクジェットヘッド2には射出液体を供給する機構などが接続されている。射出液体の供給はタンク8Aにより行われる。インクジェットヘッド2内の射出液体圧力を常に一定に保つようにこの例ではタンク液面を一定にする。そのためにタンク8Aからオーバーフローさせてタンク8Bに射出液体を自然流下で戻している。タンク8Bからタンク8Aへの射出液体の供給はポンプ11により行われており、射出条件に合わせて安定的にタンク8Aの液面が一定となるように運転条件が設定されている。
なお、ポンプ11からタンク8Aへ射出液体を戻す際にはフィルター12を通してから行われている。このように、射出液体はインクジェットヘッド2へ供給される前に絶対濾過精度又は準絶対濾過精度が0.05〜50μmの濾材を少なくとも1回は通過させることが好ましい。
【0037】
また、インクジェットヘッド2の洗浄作業や液体充填作業などを実施するためにタンク6より射出液体が、タンク7より洗浄溶媒がポンプ9によりインクジェットヘッド2へ強制的に供給可能となっている。インクジェットヘッド2に対してこうしたタンクポンプ類は複数に分けても良いし、配管の分岐を使用しても良い、またそれらの組み合わせでもかまわない。図2では配管分岐13を使用している。さらにインクジェットヘッド2内のエアーを十分に除去するためにタンク6よりポンプ9にてインクジェット2へ射出液体を強制的に送液しながら下記に記すエアー抜き配管から射出液体を抜き出して廃液タンク4に送ることもある。
さらに、インクジェットヘッド2内の射出液体温度を一定に保持するためにタンク8Aとインクジェットヘッド2の間に熱交換器を設けてもよいし、インクジェットヘッド2内に熱交換器のような射出液体温度一定機構を設けても構わない。
【0038】
塗布手順については以下に示す。
まず、インクジェットヘッド2に射出液体を充填する際の手順であるが、インクジェットヘッド2の待機位置にてポンプ9によりタンク6から強制的に射出液体をインクジェットヘッド2へ通液する。この際に排出された射出液体は図示しないキャッチパンなどにより受けられる。この操作により、インクジェットヘッド2に射出液体を充填し、ヘッド内部の空気抜きを実施した後にノズル表面(射出面)の清掃を実施する。
次に、あらかじめ決められた流量にてタンク8Aへタンク8Bから射出液体を送り込みオーバーフローにより循環を開始する。ポンプ9とインクジェットヘッド2の間のバルブは閉めておきポンプ8とインクジェットヘッド2間のバルブを開けることでインクジェットヘッド2から射出させることが可能になる。基材を所定の速度で搬送させ、射出準備の完了したインクジェットヘッド2を透明基材100の所定の距離まで近づけ所定の射出条件で射出液体の射出を開始する。オーバーフローさせてタンク8Aの液面を一定に保持しているため射出量は安定となる。
【0039】
インクジェットヘッド2の種類は任意であるが本発明では一滴の液滴量が数10ピコリットルで、射出周波数は数百〜数万Hzで安定に射出できる条件を選ぶと良い。また、速度は任意で早ければ生産性向上につながる。速度に対して目的のウェット膜厚になるように周波数を調整して射出する。
【0040】
ここで、インクジェットヘッド2の一例を図3に示す。図3は一部破断面を有するインクジェットヘッドの一例を示す概略斜視図である。本図は剪断モード型(ピエゾ型)インクジェットヘッドの場合を示している。インクジェットヘッド2には圧電性基盤を駆動させるための制御部5(図2参照)がコネクタ(不図示)を介して接続されている。この制御部5により、射出液体の射出時の圧電性基盤の動作強度や周波数の選択等が行われる。
ヘッド2は、上層圧電性基盤201b1と下層圧電性基盤201b2とを接合して形成された圧電性基盤201bと、天板201cと、ノズル板201dとを有している。
圧電性基盤201bには、研削加工を施すことによりノズル板201d側が開口し、反対側が閉塞している互いに平行な所定の長さを有する複数のノズル201b3と、ノズル201b3の閉塞した側につながる平坦な面201b4と、ノズル(インク圧力室)201b3の両側に側壁201b5とを有している。
複数のノズルは交互に塗布液圧力室用のノズルと空気圧力室用のノズルとして使用する場合もある。
本図は塗布液圧力室用として使用した場合を示している。201c2は圧電性基盤201bの上面を覆う第1天板を示し、201c1は第1天板の上面を覆う第2天板を示す。
201eは塗布液の塗布液供給管を示す。塗布液供給管201eより供給された塗布液はノズル吐出口201d1より吐出する様になっている。201c3は塗布液供給管201eから供給された塗布液の貯留部を示し、各ノズル201b3に連通した各塗布液供給口201c4より各塗布液圧力室用のノズル201b3に供給される様になっている。各ノズル201b3は第1天板201c2とノズル板201dとにより覆われることで複数の密閉されたチャネル(塗布液圧力室)が形成される様になっている。201d1は各側壁の剪断変形に伴い、塗布液圧力室の圧力変化で塗布液を液滴の状態で吐出させるノズル吐出口を示す。ノズル吐出口の間隔は、0.02〜0.3mmが好ましい。201fは塗布液のエアー抜きなどに使用される配管を示す。201fは塗布液射出時にはバルブ等により密閉される構造となっている。
【0041】
第1天板及び第2天板の材料は特に限定されず、例えば有機材料からなってもよいが、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイド、石英、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等が挙げられる。
ノズル板201dを構成する基材としては、金属や樹脂が使用される。例えばステンレス、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等が好ましく採用出来る。特に好ましくはポリイミド樹脂で、Dupont社製:カプトンや宇部興産(株)製:ユーピレックス等が寸法安定性、耐インク性、耐熱性等に優れているので好ましい。
【0042】
本発明で製造される透明電極は、高い導電性と透明性を併せ持ち、液晶表示素子、有機発光素子、無機電界発光素子、電子ペーパー、有機太陽電池、無機太陽電池等の各種オプトエレクトロニクスデバイスや、電磁波シールド、タッチパネル等の分野において好適に用いることができる。その中でも、透明電極表面の平滑性が厳しく求められる有機エレクトロルミネッセンス素子や有機薄膜太陽電池素子の透明電極として特に好ましく用いることができる。
次に、上記透明電極を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子について説明する。
[有機エレクトロルミネッセンス素子]
図4は、有機エレクトロルミネッセンス素子の概略構成を示す断面図である。
図4において、有機エレクトロルミネッセンス素子1は、透明基材100上に対向する第一電極101と第二電極102を有し、第一電極101と第二電極102の間に少なくとも1層の有機機能層103を有する。また、有機エレクトロルミネッセンス素子1の表示領域を覆うようにして封止部材109が配置され、封止部材109と電極(第一電極101、第二電極102)とが接着剤層109aを介して封止されている。
【0043】
(第一電極)
第一電極101は、有機エレクトロルミネッセンス素子1において陽極となる。また、本発明において、第一電極101は、上述した金属ナノ粒子からなる第一導電層104と、導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーとからなる第二導電層105とを含む。導電性ポリマーと水酸基含有非導電性ポリマーからなる第二導電層105は、金属ナノ粒子からなる第一導電層104の隙間にも充填されている。
第一導電層104、第二導電層105の詳細は、上述したとおりであるのでその説明を省略する。
【0044】
有機機能層103としては、有機発光層、有機光電変換層、液晶ポリマー層など特に限定無く挙げることができるが、本発明は、機能層が薄膜でかつ電流駆動系の素子である有機発光層、有機光電変換層である場合において、特に有効である。
【0045】
(有機発光層)
有機発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機発光層に加えて、陽極バッファー層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、陰極バッファー層などの有機発光層と併用して発光を制御する層を有しても良い。
構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)(第一電極)/発光層/電子輸送層/(第二電極)
(ii)(第一電極)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/(第二電極)
(iii)(第一電極101)/正孔輸送層106/発光層103/正孔ブロック層107/電子輸送層108/(第二電極102)
(iv)(第一電極)/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極)
(v)(第一電極)/陽極バッファー層/正孔輸送層/発光層/正孔ブロック層/電子輸送層/陰極バッファー層/(第二電極)
【0046】
ここで、有機発光層は、発光極大波長が各々430〜480nm、510〜550nm、600〜640nmの範囲にある単色発光層であってもよく、また、これらの少なくとも3層の有機発光層を積層して白色発光層としたものであってもよく、さらに有機発光層間には非発光性の中間層を有していてもよい。本発明の有機EL素子としては、白色発光層であることが好ましい。
【0047】
また、本発明において有機発光層に使用できる発光材料またはドーピング材料としては、アントラセン、ナフタレン、ピレン、テトラセン、コロネン、ペリレン、フタロペリレン、ナフタロペリレン、ジフェニルブタジエン、テトラフェニルブタジエン、クマリン、カルバゾール、アザカルバゾール、オキサジアゾール、ビスベンゾキサゾリン、ビススチリル、シクロペンタジエン、キノリン金属錯体、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、トリス(5−フェニル−8−キノリナート)アルミニウム錯体、アミノキノリン金属錯体、ベンゾキノリン金属錯体、トリ−(p−ターフェニル−4−イル)アミン、1−アリール−2,5−ジ(2−チエニル)ピロール誘導体、ピラン、キナクリドン、ルブレン、ジスチルベンゼン誘導体、ジスチルアリーレン誘導体、及び各種蛍光色素及び希土類金属錯体、燐光発光材料等があるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの化合物のうちから選択される発光材料を90〜99.5質量部、ドーピング材料を0.5〜10質量部含むようにすることも好ましい。
有機発光層は上記の材料等を用いて公知の方法によって作製されるものであり、蒸着、塗布、転写などの方法が挙げられる。この有機発光層の厚みは0.5〜500nmが好ましく、特に、0.5〜200nmが好ましい。
【0048】
(第二電極)
第二電極は、有機エレクトロルミネッセンス素子においては陰極となる。第二電極は、導電材単独層であっても良いが、導電性を有する材料に加えて、これらを保持する樹脂を併用してもよい。第二電極の導電材としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。
【0049】
(封止部材)
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されておればよく、凹板
状でも平板状でもよい。また透明性、電気絶縁性は特に問わない。
本発明においては、素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィル
ムを好ましく使用することができる。
【0050】
接着剤層を形成する接着剤として具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
【0051】
また、有機機能層を挟み透明基材と対向する側の電極の外側に該電極と有機機能層を被覆し、透明基材と接する形で無機物、有機物の層を形成し封止膜とすることも好適にできる。
この場合、当該封止膜を形成する材料としては、水分や酸素等、素子の劣化をもたらす
ものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、
窒化珪素等を用いることができる。
【実施例】
【0052】
以下に本発明を実施例により、更に具体的に説明するが、本発明の構成はこれら実施態様に制限されるものではない。
(1)水溶性バインダー樹脂の合成
<合成例1(P−1の合成)>
200ml三ツ口フラスコにTHF100mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。I−1:2−ヒドロキシエチルアクリレート(1.74g、15mmol、分子量:116.05)、II−6:ブレンマーPME−200(9.7g、35mmol、分子量:276.16)、AIBN(0.8g、5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、3000mlのMEK(メチルエチルケトン)中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、100mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量33700、分子量分布2.4の水溶性バインダー樹脂P−1を10.3g(収率90%)得た。なお、分子量はGPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。
《GPC測定条件》
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414(Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
【0053】
<合成例2(P−2の合成)>
モノマーとしてI−5:ブレンマーAE−90(7.20g、45mmol、分子量:160.07)、II−4:メトキシエトキシエチルアクリレート(0.87g、5mmol、分子量:174.09)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量29200、分子量分布2.6、の水溶性バインダー樹脂P−2を7.10g(収率88%)得た。
【0054】
<合成例3(P−3の合成)>
モノマーとしてI−8:ブレンマーAE−200(7.10g、25mmol、分子量:284.16)、II−21:N−メチルアクリルアミド(2.13g、25mmol、分子量:85.05)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量31700、分子量分布2.1、の水溶性バインダー樹脂P−3を7.75g(収率84%)得た。
【0055】
<合成例4(P−4の合成)>
モノマーとしてI−12:ブレンマーPP−500(3.04g、5mmol、分子量:608.41)、II−7:ブレンマーPME−400(22.3g、45mmol、分子量:276.16)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量33200、分子量分布2.7、の水溶性バインダー樹脂P−4を22.0g(収率87%)得た。
【0056】
<合成例5(P−5の合成)>
モノマーとしてI−13:ブレンマーGLM(2.19g、15mmol、分子量:146.06)、II−12:ブレンマーAE−400(16.9g、35mmol、分子量:482.27)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量23100、分子量分布2.7、の水溶性バインダー樹脂P−5を17.4g(収率91%)得た。
【0057】
<合成例6(P−6の合成)>
500ml三ツ口フラスコにTHF200mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。2−ヒドロキシエチルアクリレート(10.0g、86mmol、分子量:116.05)、AIBN(1.41g、8.5mmol、分子量:164.11)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、5000mlのMEK中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。MEKをデカンテーション後、200mlのMEKで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量35700、分子量分布2.3の水溶性バインダー樹脂Zを9.0g(収率90%)得た。
水溶性バインダー樹脂Z3.0g、脱水テトラヒドロフラン30mlを100mlフラスコへ投入し、完溶させたのちアイスバスにより内温を10℃以下にした。トリフルオロメタンスルホニルクロリド(0.65g、3.9mmol、分子量:167.93)を脱水テトラヒドロフラン10mlに溶解した溶液を別途調製し、水溶性バインダー樹脂Z溶液中へ30分かけて滴下した。内温は10℃以下を維持した。滴下終了後1時間撹拌後、溶液をろ紙でろ過し、得られた溶液をロータリーエバポレーターにより、溶液を10mlまで濃縮した。この溶液を300mlのエチルアルコール中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した後、ジイソプロピルエーテルを150ml添加し、更に1時間撹拌した。溶液をデカンテーション後、100mlのジイソプロピルエーテルで3回洗浄後、THFでポリマーを溶解し、50mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量30700、分子量分布2.1の水溶性バインダー樹脂P−6を3.18g(収率87%)得た。
【0058】
<合成例7(P−7の合成)>
トリフルオロメタンスルホニルクロリドの代わりにp−トルエンスルホニルクロリド(0.30g、1.9mmol、分子量:154.02)を用いた以外は合成例6と同様な方法により、数平均分子量32200、分子量分布2.0、の水溶性バインダー樹脂P−7を2.97g(収率90%)得た。
【0059】
<合成例8(P−8の合成)>
モノマーとしてI−15:N−メチロールアクリルアミド(0.25g、2.5mmol、分子量:101.05)、II−6:ブレンマーPME-200(13.1g、47.5mmol、分子量:276.16)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量35900、分子量分布2.7、の水溶性バインダー樹脂P−8を11.7g (収率88%)得た。
【0060】
<合成例9(P−9の合成)>
モノマーとしてI−19:ヒドロキシエチルアクリルアミド(0.58g、5mmol、分子量:115.06)、II−24:アクリロイルモルホリン(6.35g、45mmol、分子量:141.08)を用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量35900、分子量分布2.7、の水溶性バインダー樹脂P−9を6.03g (収率87%)得た。
【0061】
<合成例10(P−10の合成)>
モノマーとしてI−1のみ5.06gを用いた以外は合成例1と同様な方法により、数平均分子量37000、分子量分布2.7、のバインダー樹脂P−10を4.50g (収率89%)得た。
【0062】
(2)透明電極の作成
(2−1)透明電極サンプル1〜5の作成
<第一導電層の形成>
厚さ70μmのガラス基材上に、銀ナノ粒子インキ1(TEC−PR−020;InkTec社製)を用いて、格子状の第一導電層パターンで印刷を行った。線幅は50μm、線間隔1mmとした。また、パターンを印刷するエリアの面積は18mm2とした。印刷機はRK Print Coat Instruments Ltd製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いた。印刷後のガラス基材を、電気炉を用いて250℃で2分間の焼成を行い、ガラス基材上に第一導電層を形成した。
第一導電層のパターンを高輝度非接触3次元表面形状粗さ計WYKO NT9100で測定したところ、パターンの高さは0.7μm、パターン細線上の中心線に沿って測定した平均粗さRaは0.01μmであった。
【0063】
<第二導電層の形成>
上記で得られた第一導電層パターニング済みガラス基材上に、下記組成の第二導電層塗布液をウェット膜厚10μmになるように、下記のインクジェット、スクリーン印刷、バーコーター、エアドクターコーター、エクストルージョンコーターの各種方法でそれぞれ塗布した。塗布膜面のエリアは、第一導電層を覆う位置で20mm2とした。塗布後のガラス基材は、循環式恒温槽を用いて90℃、1分間の乾燥を経た後、電気炉を用いて230℃で2分間の焼成を行い、第二導電層を形成し、透明電極サンプル1〜5を得た。
【0064】
<第二導電層塗布液組成>
導電性ポリマー分散液(Clevios TH510;H.C.Starck社製、固形分1.7wt%) 17.6g
水溶性バインダー水溶液(合成例10のもの;固形分20wt%に調整) 3.5g
ジメチルスルホキシド 1.0g
【0065】
[塗布方法]
<インクジェット>本発明例
上記で得られた第一導電層パターニング済みガラス基材上に、下記組成の第二導電層塗布液をウェット膜厚10μmになるように、一滴の射出量が50plヘッドを使用し、塗布速度5m/minでウェット膜厚が10μmになるように射出周波数を調整して作成した。
【0066】
<スクリーン印刷>比較例
上記で得られた第一導電層パターニング済みガラス基材上に、下記組成の第二導電層塗布液を吐出量が10μmのスクリーン版を用いて、スキージ速度5m/minで作成した。
【0067】
<バーコーター>比較例
上記で得られた第一導電層パターニング済みガラス基材上に、下記組成の第二導電層塗布液を、バーを通した後のウェット膜厚が10μmになるようにワイヤー径0.1mmのワイヤーバーで作成した。
【0068】
<エアドクターコーター>比較例
上記で得られた第一導電層パターニング済みガラス基材上に、下記組成の第二導電層塗布液を、ファウンテンコーターで約20μm厚の一次膜を作成し、その後エアドクターコーターの圧を調整しながら実測でウェット膜厚10μmになるようにエアーでかきとり、作成した。
【0069】
<エクストルージョンコーター>比較例
上記で得られた第一導電層パターニング済みガラス基材上に、下記組成の第二導電層塗布液を、エクストルージョンコーターで塗布速度10m/minで流量2cc/minで送液し、ウェット膜厚10μmになるように作成。
【0070】
(2−2)透明電極サンプル6〜45の作成
上記透明電極サンプル1〜5の第一導電層の形成において、第一導電層の種類を下記に示すように変えて、かつ、第二導電層塗布液を上記と同様の各種方法(インクジェット、スクリーン印刷、バーコーター、エアドクターコーター、エクストルージョンコーター)でそれぞれ塗布し、透明電極サンプル6〜45を作成した。
透明電極サンプル6〜10:基材を厚さ70μmのガラスとし、第一導電層パターンは格子・線幅10μm・線間隔0.5mmとした。
透明電極サンプル1〜15:基材を厚さ70μmのガラスとし、第一導電層パターンは格子・線幅100μm・線間隔4mmとした。
透明電極サンプル16〜20:基材を厚さ70μmのガラスとし、第一導電層パターンはストライプ・線幅50μm・線間隔1mmとした。
透明電極サンプル21〜25:基材を厚さ70μmのガラスとし、第一導電層パターンはストライプ・線幅10μm・線間隔0.5mmとした。
透明電極サンプル26〜30:基材を厚さ70μmのガラスとし、第一導電層パターンはストライプ・線幅100μm・線間隔4mmとした。
透明電極サンプル31〜35:基材を厚さ70μmのガラスとし、第一導電層パターンはハニカム・線幅50μm・一辺の長さ1mmとした。
透明電極サンプル36〜40:基材を厚さ70μmのガラスとし、第一導電層パターンはハニカム・線幅10μm・一辺の長さ0.5mmとした。
透明電極サンプル41〜45:基材を厚さ70μmのガラスとし、第一導電層パターンはハニカム・線幅100μm・一辺の長さ4mmとした。
【0071】
(3)有機エレクトロルミネッセンス素子の作成
作製した透明電極サンプル1〜45において、パターン辺長20mmの正方形タイル状透明パターン一個が中央に配置される様に30mm角に切り出し、第一電極(陽極)に用いて、以下の手順でそれぞれ有機EL素子を作製した。
切り出した透明電極サンプル1〜45を市販の真空蒸着装置内にセットし、真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を各々素子作製に最適の量を充填した。蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。次いで、以下の手順で各発光層を設けた。
まず、真空度1×10-4Paまで減圧した後、下記α−NPDの入った前記蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、30nmの正孔輸送層を設けた。
下記Ir−1が13質量%、下記Ir−14が3.7質量%の濃度になるように、Ir−1、Ir−14及び下記化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が622nm、厚さ10nmの緑赤色燐光発光層を形成した。
次いで、下記E−66が10質量%になるように、E−66及び化合物1−7を蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、発光極大波長が471nm、厚さ15nmの青色燐光発光層を形成した。
その後、下記M−1を膜厚5nmに蒸着して正孔ブロック層を形成し、更にCsFを膜厚比で10%になるようにM−1と共蒸着し、厚さ45nmの電子輸送層を形成した。
各層形成に用いた化合物を下記に示す。
【0072】
【化6】

【0073】
形成した電子輸送層の上に、透明電極を陽極として陽極外部取り出し端子および15mm×15mmの陰極形成用材料としてAlを5×10-4Paの真空下にてマスク蒸着し、厚さ100nmの陽極を形成した。
さらに、陰極及び陽極の外部取り出し端子が形成できるように、端部を除き陽極の周囲に接着剤を塗り、ポリエチレンテレフタレートを基材としAl23を厚さ300nmで蒸着した可撓性封止部材を貼合した後、熱処理で接着剤を硬化させ封止膜を形成し、発光エリア15mm×15mmの有機エレクトロルミネッセンス素子を作製した。
【0074】
(4)評価
作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子(透明電極サンプル1〜45)について、下記の評価を行いその結果を表1〜9に示した。
(4−1)第二導電層塗布液の使用効率
第二導電層の各塗布方法に対して、使用した液量のうち何%が塗膜として形成されたかで以下の評価を行った。
◎:≧90%
○:80〜90% (ただし、80は含まない)
△:70〜80% (ただし、70は含まない)
×:≦70%
【0075】
(4−2)電極評価
(表面比抵抗)
第二導電層のパターニング終了後、透明電極の表面比抵抗を測定した。
各透明電極の表面比抵抗を、ダイアインスツルメンツ製抵抗率計ロレスタGPを用いて透明電極の表面比抵抗を四端子法で測定した。
この測定結果を以下示すように分類した。
◎:<3Ω/□
○:3〜5Ω/□ (ただし、5は含まない)
△:5〜10Ω/□ (ただし、10は含まない)
×:≧10Ω/□
【0076】
(4−3)有機エレクトロルミネッセンス素子の測定及び評価
下記方法で、作製した各有機エレクトロルミネッセンス素子の発光輝度ムラおよびリークについて測定し評価した。
(輝度ムラ)
輝度ムラは、KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、各有機EL素子に直流電圧を印加して輝度が1000cd/m2になるよう発光させ、発光状態を下記基準で目視評価した。
◎:完全に均一発光しており、申し分ない
○:殆ど均一発光しており、問題ない
△:部分的に若干発光ムラが見られるが、許容できる
×:全面に渡って発光ムラが見られ、許容できない
××:発光しない
【0077】
(リーク)
KEITHLEY製ソースメジャーユニット2400型を用いて、各有機EL素子に直流電圧4Vを印加した際の電流I(p)と透明電極側を陰極に接続して逆方向に直流電圧4Vを印加した際の電流I(n)を測定し、I(p)/I(n)を算出した。
◎:[I(p)/I(n)]≧104
○:103≦[I(p)/I(n)]<104
△:10≦[I(p)/I(n)]<103
×:[I(p)/I(n)]<10
【0078】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【0079】
表1〜9の結果より、インクジェット法により第二導電層を形成した場合(透明電極サンプル1,6,11,16,21,26,31,36,41)、第二導電層の材料使用効率が高く、透明電極の表面比抵抗値も小さく、また、有機エレクトロルミネッセンス素子とした場合の発光輝度ムラを無くし、電流リークも防止することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 有機エレクトロルミネッセンス素子
2 インクジェットヘッド
10 透明電極
100 透明基材
104 第一導電層
105 第二導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に金属細線をパターン状に形成してなる第一導電層と、前記第一導電層上及び前記透明基材上を連続的に被覆する導電性ポリマーを含有する第二導電層と、を有する透明電極の製造方法において、
インクジェットヘッドから前記第二導電層を形成する前記導電性ポリマーを含有した液体材料を射出することによって、前記第二導電層を形成し、その後乾燥させることを特徴とする透明電極の製造方法。
【請求項2】
前記第二導電層は、前記第一導電層が形成された面を少なくとも全面被覆するように、前記第一導電層上及び前記透明基材上を連続的に被覆することを特徴とする請求項1に記載の透明電極の製造方法。
【請求項3】
前記透明基材が、厚さ50〜120μmの薄膜ガラスであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明電極の製造方法。
【請求項4】
前記第一導電層は、線幅が10〜100μm、間隔が0.5〜4mmの平行線状のパターンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明電極の製造方法。
【請求項5】
前記第一導電層は、線幅が10〜100μm、間隔が0.5〜4mmの平行線を直交させた格子状のパターンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明電極の製造方法。
【請求項6】
前記第一導電層は、線幅が10〜100μm、一辺の長さが0.5〜4mmのハニカム状のパターンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明電極の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の透明電極の製造方法によって製造された透明電極を使用したことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−128957(P2012−128957A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276727(P2010−276727)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代高効率・高品質照明の基盤技術開発/有機EL照明の高効率・高品質化に係る基盤技術開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】