説明

透明電極素子、情報入力装置、および電子機器

【課題】透明導電膜で構成された電極領域の視認性を極限まで低下させることが可能な透明電極素子を提供する。
【解決手段】基材11と、透明導電膜13を用いて基材11上に形成された電極領域15と、基材11上における電極領域15に隣接して設けられた絶縁領域17とを有する透明電極素子1-1であり、特に絶縁領域17は、透明導電膜13を用いて構成された幅100μm以上のパターンを含む複数のランダムな島パターン17aが、互いに離間して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、透明電極素子、情報入力装置、および電子機器に関し、特にはパターニングされた電極領域を有する透明電極素子と、この透明電極素子を用いた情報入力装置、およびこの透明電極素子を表示パネルに設けた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルの表示面側に配置される情報入力装置(いわゆるタッチパネル)は、透明基板上にX方向に延びる電極パターンと、Y方向に延びる電極パターンとをそれぞれ絶縁状態で配列させた構成である。これらの電極パターンは、インジウムスズ酸化物(ITO)のような金属酸化物からなる透明導電膜、または金属ナノワイヤーを集積させた透明導電膜を用いて構成されている。
【0003】
このような構成の情報入力装置において、透明導電膜を用いて構成された電極パターンの抵抗値を低く抑えようとした場合、ある程度の膜厚が必要とされる。このため、情報入力装置を外側から見た場合に電極パターンが視認され易くなり、この情報入力装置が配置された表示パネルにおいての表示画像の視認性が低下する要因となる。
【0004】
そこで、電極パターン間にフローティング状態のダミー電極を設けることにより、電極パターンと電極パターン間とのコントラストを抑えて電極パターンの存在を目立たなくする構成が提案されている(例えば下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−129708号公報
【特許文献2】特開2010−2958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したダミー電極を設けた構成の情報入力装置であっても、電極パターンとダミー電極との間には、電極パターンに沿って連続して透明導電膜が除去された領域が形成されるため、電極パターンを見えなくすることはできなかった。
【0007】
そこで本技術は、透明導電膜で構成された電極領域の視認性を極限まで低下させることが可能な透明電極素子、および情報入力装置を提供することを目的とする。また本技術は、表示パネルの表示面側に透明導電膜からなる電極領域をパターン形成した構成において、高精彩な表示を行うことが可能とした電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本技術の透明電極素子は、基材と、透明導電膜を用いて基材上に形成された電極領域と、基材上における電極領域に隣接して設けられた絶縁領域とを備えている。特に絶縁領域は、透明導電膜を用いて構成された複数のランダムな島パターンが互いに離間して配置された領域であって、複数の島パターンとして幅100μm以上のパターンを含むことを特徴としている。
【0009】
また本技術は、このような構成の透明電極素子を用いた情報入力装置と、このような構成の透明電極素子を表示パネルの表示面側に配置した電子機器でもある。
【0010】
このような構成の透明電極素子では、透明導電膜を用いて構成された電極領域に隣接する絶縁領域に、複数の島パターンとして透明導電膜を配置した。これにより、電極領域と絶縁領域との透明導電膜による被覆率差が抑えられ、コントラストが小さくなる。特に、絶縁領域を構成する島パターンとして、目視によって視認され易い幅100μm以上のパターンをも含ませた構成とすることで、絶縁領域に配置される島パターンの幅の範囲をより大きい方向にシフトさせることを可能とした。これにより、以降の実施形態で説明するように、絶縁領域においての透明導電膜による被覆率をより高くすることが可能となり、電極領域と絶縁領域とのコントラストがより小さくなる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本技術によれば、透明導電膜を用いて構成された電極領域を有する透明電極素子および情報入力装置において、電極領域と絶縁領域とのコントラストを小さく抑え、電極領域の視認性を極限まで低下させることが可能になる。また表示パネルの表示面側に透明導電膜からなる電極領域をパターン形成した電子機器において、電極領域が表示パネルにおいての表示特性に影響を及ぼすことが防止され、高精彩な表示を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態の透明電極素子の概略構成を説明する平面図である。
【図2】第1実施形態の透明電極素子の構成を説明するための要部を拡大した平面図および断面図である。
【図3】第2実施形態の透明電極素子の構成を説明するための要部を拡大した平面図および断面図である。
【図4】第3実施形態の透明電極素子の構成を説明するための要部を拡大した平面図および断面図である。
【図5】第4実施形態の透明電極素子の構成を説明するための要部を拡大した平面図および断面図である。
【図6】ランダムパターン生成のアルゴリズムを説明する略線図(その1)である。
【図7】ランダムパターン生成のアルゴリズムを説明するフローチャート(その1)である。
【図8】ランダムパターン生成のアルゴリズムを説明する略線図(その2)である。
【図9】ランダムパターン生成のアルゴリズムを説明するフローチャート(その2)である。
【図10】ランダムパターン生成のアルゴリズムを説明する略線図(その3)である。
【図11】ランダムパターンの生成方法のイメージを示す模式図である。
【図12】生成パターンに基づいて作成したランダムパターンのレイアウト図である。
【図13】ランダムパターンの生成における乱数値の重み付けの説明図である。
【図14】生成パターンに基づいて第3実施形態における絶縁領域の溝パターンを作成する手順を示す平面図である。
【図15】溝パターンの幅の変更を示す平面図である。
【図16】本技術の透明電極素子の第1の製造方法に用いられる原盤の構成を示す図である。
【図17】原盤を用いた本技術の透明電極素子の第1の製造方法を説明するための断面工程図である。
【図18】本技術の透明電極素子の第2の製造方法を説明するための断面工程図である。
【図19】本技術の透明電極素子の変形例1〜4を示す断面図である。
【図20】本技術の透明電極素子を用いた情報入力装置の構成の一例を示す構成図である。
【図21】本技術の透明電極素子を用いた情報入力装置の構成の一例を示す要部拡大平面図である。
【図22】情報入力装置を備えた表示装置(電子機器)の構成を説明する斜視図である。
【図23】表示部を備えたテレビ(電子機器)を示す斜視図である。
【図24】表示部を備えたデジタルカメラ(電子機器)を示す斜視図である。
【図25】表示部を備えたノート型パーソナルコンピュータ(電子機器)を示す斜視図である。
【図26】表示部を備えたビデオカメラ(電子機器)を示す斜視図である。
【図27】表示部を備えた携帯端末装置(電子機器)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術の実施の形態を、図面に基づいて次の順に説明する。
1.第1実施形態(電極領域および絶縁領域に同様のランダムパターンを設けた透明電極素子)
2.第2実施形態(電極領域および絶縁領域に異なるランダムパターンを設けた透明電極素子)
3.第3実施形態(絶縁領域にランダムパターンとして溝パターンを設けた透明電極素子)
4.第4実施形態(絶縁領域のみにランダムパターンを設けた透明電極素子)
5.透明電極素子に設けるランダムパターンの作成方法
6.透明電極素子の第1の製造方法(原盤を用いる方法)
7.透明電極素子の第2の製造方法(パターンエッチングを適用する方法)
8.透明電極素子の変形例1〜4
9.第5実施形態(透明電極素子を用いた情報入力装置)
10.第6実施形態(情報入力装置を用いた表示装置)
11.第7実施形態(電子機器への適用例)
尚、各実施形態において共通の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
≪1.第1実施形態≫
(電極領域および絶縁領域に同様のランダムパターンを設けた透明電極素子)
図1は第1実施形態の透明電極素子の構成を説明する平面図である。図2Aは図1における拡大部Aの拡大平面図であり、図2Bは、図2Aの拡大平面図におけるA−A部分の断面図である。これらの図に示す透明電極素子1-1は、例えば表示パネルにおける表示面側に好適に配置される透明電極素子であって、以下のように構成される。
【0015】
すなわち透明電極素子1-1は、基材11と、この基材11上に設けられた透明導電膜13とを備えている。さらにこの透明電極素子1-1は、透明導電膜13を用いて構成された複数の電極領域15と、これらの電極領域15に隣接して配置された絶縁領域17とを有している。そして特に、絶縁領域17にも透明導電膜13が配置されており、絶縁領域17における透明導電膜13の配置状態が特徴的である。次に各部材および領域の詳細を説明する。
【0016】
<基材11>
基材11は、例えば透明材料で構成されたものであって、例えば、公知のガラスまたは公知のプラスチックを用いることができる。公知のガラスとしては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、硬質ガラス、石英ガラス、液晶化ガラスなどが挙げられる。公知のプラスチックとしては、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエステル(TPEE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、アラミド、ポリエチレン(PE)、ポリアクリレート、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン(PP)、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、環状オレフィンポリマー(COP)、ノルボルネン系熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0017】
ガラスを用いた基材11の厚みは、20μm〜10mmであることが好ましいが、この範囲に特に限定されるものではない。プラスチックを用いた基材11の厚さは、20μm〜500μmであることが好ましいが、この範囲に特に限定されるものではない。
【0018】
<透明導電膜13>
透明導電膜13の材料としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、ガリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系などの金属酸化物が用いられる。この他にも、銅、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、錫、コバルト、ロジウム、イリジウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、マンガン、モリブデン、タングステン、ニオブ、タンタル、チタン、ビスマス、アンチモン、鉛などの金属、またはこれらの合金などが挙げられる。
【0019】
透明導電膜13の材料としては、この他にもカーボンナノチューブをバインダー材料に分散させた複合材料、または金属ナノワイヤーやこれに有色化合物を吸着させたことで表面での光の乱反射を防止した材料を用いても良い。さらに置換または無置換のポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、およびこれらから選ばれる1種または2種からなる(共)重合体の導電性ポリマーを使用してもよい。これら2種以上を複合して使用しても良い。
【0020】
<電極領域15>
電極領域15は、基材11上に透明導電膜13を用いて構成された領域であり、基材11上には複数の電極領域15が絶縁性を保って並列に配置されている。各電極領域15は、例えば図示したような複数の菱形状(ダイヤモンド形状)を直線状に連結した形状、または矩形形状、さらにはこの透明電極素子1-1が配置される表示パネルの表示面の形状や駆動回路などに応じて適宜選択された形状であって良い。
【0021】
これらの電極領域15は、透明導電膜13に対して複数の孔パターン15aを設けた領域として構成されている。これらの孔パターン15aは、ランダムに設けられていて良い。つまり電極領域15は、設定された外形形状内に、ランダムパターンとしてランダムな大きさの孔パターン15aがランダムに配列されていて良い。ここでは例えば、様々な径を有する円形の孔パターン15aが、それぞれ独立に離間して透明導電膜13に配置されており、これによって各電極領域15の導電性が確保されているのである。尚、このような電極領域15では、孔パターン15aの底部において透明導電膜13が完全に除去されていることが好ましいが、一部が薄膜状に残留していても良い。
【0022】
また各電極領域15においては、複数の孔パターン15aに対して設定される径(直径または半径)の範囲と、孔パターン15a同士の最隣接距離(最小間隔)とによって、透明導電膜13による被覆率が調整されていることとする。この被覆率は、電極領域15に必要とされる導電性が得られる程度に、透明導電膜13の材質および膜厚ごとに設定される。尚、孔パターン15aの径の範囲による被覆率の調整は、以降のランダムパターンの作成方法の項目において説明する。
【0023】
ここで、各電極領域15に設ける孔パターン15aは、個々のサイズが100μm以上であると目視によって視認され易くなる。しかしながらここでは、電極領域15の最小領域幅よりも小さい範囲であれば、電極領域15に設定される透明導電膜13での被覆率に合わせて、孔パターン15aの径の範囲が設定されていて良い。このため、電極領域15は、直径100μm以上の孔パターン15aを含んでいても良い。
【0024】
<絶縁領域17>
絶縁領域17は、各電極領域15に隣接して配置された領域であり、各電極領域15間を埋め込むと共に、電極領域15間を絶縁する状態で設けられている。この絶縁領域17は、透明導電膜13を用いて構成された複数の島パターン17aをランダムに設けた領域として構成されている。つまり絶縁領域17は透明導電膜13を用いて構成されており、ランダムパターンとしてランダムな大きさの島パターン17aがランダムに配列されているのである。ここでは例えば、透明導電膜13で構成された様々な径を有する円形の島パターン17aが、それぞれ独立に離間して配置されており、これによって絶縁領域17の絶縁性が確保されているのである。尚、島パターン17a間では、透明導電膜13が完全に除去されていることが好ましいが、絶縁領域17が絶縁部として機能する範囲であれば、島パターン17a間に透明導電膜13の一部が薄膜状に残留していても良い。
【0025】
このような絶縁領域17においては、各島パターン17aに対して設定される径(直径または半径)の範囲と、島パターン17a同士の最隣接距離(最小間隔)とによって、透明導電膜13による被覆率が調整されていることとする。この被覆率は、電極領域15においての透明導電膜13による被覆率と同程度となるように設定されていることとする。
【0026】
ここで、同程度の被覆率とは、電極領域15および絶縁領域17の外形形状が、パターンとして視認できない程度であって、例えば被覆率の差(ばらつき)が30%以下である。ただし、この透明電極素子1-1を複数枚積層して用いる場合であれば、各積層部分において透明導電膜13の被覆率を加算し、加算値の基材11の面内における差(ばらつき)が30%以下となるようにする。一例として、2枚の透明電極素子1-1を積層して用いる場合、1枚の透明電極素子1-1における電極領域15と絶縁領域17との被覆率の差(ばらつき)は、30×(1/2)%=15%以下である。
【0027】
また、絶縁領域17に設ける島パターン17aは、個々のサイズが100μm以上であると目視によって視認され易くなる。しかしながらここでは、絶縁領域17の最小領域幅よりも小さい範囲であれば、電極領域15と同程度に設定される透明導電膜13による被覆率に合わせて、島パターン17aの径の範囲が設定されていて良い。このため、絶縁領域17には、透明導電膜13による被覆率を上げるために、直径100μm以上の島パターン17aを設けるところが特徴的である。
【0028】
絶縁領域17においての100μm以上を含む島パターン17aの径の範囲は、絶縁領域17に対して設定される透明導電膜13による被覆率に対応して調整され、被覆率を上げたい場合であれば、島パターン17aの径の範囲を広げれば良い。また後に説明するように、径の範囲は、径が大きくなる方向に広げることで、効果的に被覆率を上げることができる。
【0029】
以上のような絶縁領域17における島パターン17aは、電極領域15の孔パターン15aと共に、同時に生成させたランダムパターンに基づく同様のものであって良い。
【0030】
また以上のような絶縁領域17において、電極領域15との境界L付近には、例えば円形パターンが境界Lで分断された島パターン17a’が設けられている。一方、電極領域15において、絶縁領域17との境界L付近には、円形パターンが境界Lで分断された孔パターン15a’が設けられている。これにより、電極領域15と絶縁領域17との境界L部分には、島パターン17a’と孔パターン15a’とで構成された複数の円形パターンがランダムに配置された状態となっている。
【0031】
尚、以上のような構成において、電極領域15に配置される孔パターン15aの形状、および絶縁領域17に配置される島パターン17aの形状は、円形に限定されることはない。孔パターン15aおよび島パターン17aの形状としては、例えば、円形状、楕円形状、円形状の一部を切り取った形状、楕円形状の一部を切り取った形状、多角形状、角を取った多角形状および不定形状からなる群より選ばれる1種または2種以上を組み合わせて用いるようにしてもよい。このような場合、各電極領域15には、最も大きい部分で幅100μm以上の孔パターン15aが設けられ、絶縁領域17には、最も大きい部分で幅100μm以上の島パターン17aが設けられるようにする。
【0032】
また電極領域15と絶縁領域17との境界L付近の構成も、上述したような1つの連続するパターン(円形パターン)を境界Lで分断した構成に限定されることはない。例えば境界L上をまたいで、円形の孔パターン15aや島パターン17aが配置されていても良い。この場合、電極領域15における境界L付近には、絶縁領域17側に開放された孔パターンが設けられる。一方、絶縁領域17における境界L付近には、電極領域15側にまではみ出した島パターンが設けられる。
【0033】
<第1実施形態の効果>
以上説明した構成の透明電極素子1-1では、電極領域15を構成する透明導電膜13に対して複数の孔パターン15aを設けたことにより、電極領域15においての透明導電膜13による被覆率が抑えられている。一方、電極領域15に隣接する絶縁領域17には、透明導電膜13で構成された島パターン17aが配置されている。これにより、電極領域15と絶縁領域17とにおいての透明導電膜13による被覆率差が小さく抑えられ、これらの領域15,17間のコントラストが低下して電極領域15のパターン(外形形状)の非視認性を向上させることが可能である。
【0034】
また電極領域15の透明導電膜13にはランダムに孔パターン15aが設けられ、かつ絶縁領域17にはランダムな島パターン17aとして透明導電膜13が配置されている。このため、絶縁領域17と電極領域15との境界Lにも、透明導電膜13がランダムに配置されるため、電極領域15の輪郭が目立たない構成となっている。
【0035】
そして特に、絶縁領域17に直径100μm以上の島パターン17aを設けた。ここで一般的に、孔パターンや島パターンなどは、100μmを超える大きさになると、目視によって視認され易くなる。しかしながら、本第1実施形態では、絶縁領域17を構成する島パターン17aとして、直径100μm以上のパターンをも含ませた。これにより、ランダムな島パターン17aに対して設定される幅(直径)の範囲を大きい方向にシフトさせることができ、絶縁領域17においての透明導電膜13の被覆率を向上させることができる。また、島パターン17aがミクロンオーダー以下の周期構造によって形成されている場合のモアレの発生を抑える効果もある。
【0036】
ここで下記表1には、密に生成した円形のランダムパターンを縮小することで互いに離間した円形のパターンを作成した場合においての、パターン直径、パターン間の最隣接距離、パターン充填率を示す。
【0037】
【表1】

【0038】
この表1の、No.5〜No.11を比較すると、パターン間の最隣接距離が同じであれば、パターン直径が大きい範囲の方がパターン充填率が高いことがわかる。さらに、No.5とNo.6との比較において、No.6はパターン直径が70〜110μmと大きく、パターン直径の範囲幅は40μmと小さいが、パターン充填率は大きくなっている。これは、No.8とNo.9との比較においても同じである。
【0039】
これを絶縁領域17に置き換えると、島パターン17aの直径の範囲幅を大きくするよりも、直径の範囲を大きい方向にシフトさせることで、島パターン17a間の最隣接距離をプロセス上可能な値としつつ、透明導電膜13での被覆率を上げられるのである。
【0040】
以上の結果、本第1実施形態によれば、絶縁領域17においての透明導電膜13の被覆率を向上させて電極領域15とのコントラストを効果的に小さくすることができ、透明電極素子1-1における電極領域15の非視認性の向上を図ることが可能である。尚、直径100μm以上の島パターン17aは視認され易くなるものの、島パターン17aは絶縁領域17にランダムに配置されるため、電極領域15の外形形状が視認されるよりも目障りとはならない。
【0041】
≪2.第2実施形態≫
(電極領域および絶縁領域に異なるランダムパターンを設けた透明電極素子)
図3は第2実施形態の透明電極素子の構成を説明するための拡大図である。図3Aは、図1における拡大部Aに対応する拡大平面図であり、図3Bは、図3Aの拡大平面図におけるA−A部分の断面図である。これらの図に示す透明電極素子1-2が、図2を用いて説明した第1実施形態の透明電極素子と異なるところは、電極領域15の孔パターン15aと、絶縁領域17の島パターン17aとが、異なるランダムパターンで構成されているところにある。他の構成は第1実施形態と同様である。
【0042】
すなわち、電極領域15に設けた孔パターン15aと、絶縁領域17に設けた島パターン17aとは、例えば個別に生成させたランダムパターンに基づくものであって、異なる生成条件によって個別に生成させたランダムパターンに基づいている。この場合、図3に示したように、電極領域15と絶縁領域17との境界L付近には、円形パターンを境界Lで分断した孔パターン15a’および島パターン17a’が、境界Lに沿ってそれぞれランダムに設けられた状態となる。
【0043】
また、電極領域15に設けた孔パターン15aと、絶縁領域17に設けた島パターン17aとは、同一のアルゴリズムで一度に生成させた円形のランダムパターンを、異なる縮小率で縮小するか、異なる形状に変形させて縮小したパターンであっても良い。この場合、電極領域15と絶縁領域17との境界L付近には、異なる大きさまたは形状の孔パターン15a’および島パターン17a’とで構成された複数のパターンがランダムに配置された状態となる。
【0044】
以上のような異なるランダムパターンの作成については、以降のランダムパターンの作成方法の項目において説明する。
【0045】
また電極領域15は、透明導電膜13の被覆率が部分的に異なる値に調整されていても良い。例えば、電極領域15において導電方向に垂直な方向の幅が一定でない場合、シート抵抗の部分的な上昇を抑えるために、幅が狭い部分において透明導電膜13の被覆率が高くなるように、孔パターン15aの配置状態が調整されていても良い。
【0046】
以上のような電極領域15および絶縁領域17は、それぞれの外形形状がパターンとして視認できない程度に、透明導電膜13による被覆率の差が抑えられていることは、第1実施形態と同様である。すなわち、電極領域15および絶縁領域17における透明導電膜13による被覆率の差は30%以下であり、透明電極素子1-2を複数枚積層して用いる場合であれば、さらに積層枚数で割った値以下である。
【0047】
また、第1実施形態と同様に、電極領域15には、直径100μm以上の孔パターン15aが含まれていても良い。一方、絶縁領域17には、透明導電膜13による被覆率を上げるために、直径100μm以上の島パターン17aを設ける。
【0048】
尚、第1実施形態と同様に、電極領域15に配置される孔パターン15aおよび絶縁領域17に配置される島パターン17aの形状は円形に限定されることはなく、絶縁領域17に対して最も大きい部分で幅100μm以上の島パターン17aが設けられていれば良い。また、電極領域15に配置される孔パターン15aおよび絶縁領域17に配置される島パターン17aの形状は、それぞれ異なる形状であっても良い。
【0049】
<第2実施形態の効果>
以上説明した透明電極素子1-2は、第1実施形態と同様に、電極領域15を構成する透明導電膜13に複数の孔パターン15aがランダムに配置され、絶縁領域17には透明導電膜13で構成された複数の島パターン17aがランダムに配置されている。また、絶縁領域17には、直径100μm以上の島パターン17aが含まれている。このため、第1実施形態の効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0050】
これに加えて本第2実施形態の透明電極素子1-2では、電極領域15の孔パターン15aと、絶縁領域17の島パターン17aとが、異なるランダムパターンで構成されている。このため、電極領域15においての透明導電膜13による被覆率を50%を超える値に設定した場合であっても、絶縁領域17においての島パターン17a(すなわち透明導電膜13)による被覆率を電極領域15と同程度にすることが可能である。この結果、電極領域15の抵抗値の低減と非視認性の向上とを両立させることが可能である。
【0051】
また特に、電極領域15の孔パターン15aと、絶縁領域17の島パターン17aとは、異なる生成条件によって生成させた個別のランダムパターンに基づくものとすることができる。この場合、電極領域15と絶縁領域17との境界L付近には、円形パターンを境界Lで分断した孔パターン15a’と島パターン17a’とが、境界Lに沿ってそれぞれランダムに設けられた状態となる。このため、第1実施形態と比較して、電極領域15の輪郭をさらに目立たない構成とすることが可能である。
【0052】
≪3.第3実施形態≫
(絶縁領域にランダムパターンとして溝パターンを設けた透明電極素子)
図4は第3実施形態の透明電極素子の構成を説明するための拡大図である。図4Aは、図1における拡大部Aに対応する拡大平面図であり、図4Bは、図4Aの拡大平面図におけるA−A部分の断面図である。これらの図に示す透明電極素子1-3が、図2を用いて説明した第1実施形態の透明電極素子と異なるところは、絶縁領域17-3に配置されるランダムパターンの構成にあり、他の構成は同様である。
【0053】
すなわち絶縁領域17-3は、第1実施形態と同様に、電極領域15に隣接して配置された領域であり、各電極領域15間を埋め込むと共に各電極領域15間を絶縁する状態で設けられている。この絶縁領域17-3に特徴的なところは、絶縁領域17-3に設けられた透明導電膜13が、ランダムな方向に延設された溝パターン17bによって独立した島状に分割されたランダムメッシュパターンを構成しているところにある。
【0054】
つまり絶縁領域17-3は、透明導電膜13を用いて構成されており、ランダムな方向に延設された溝パターン17bによって透明導電膜13を分割してなる島パターン17a-3が、ランダムパターンとして配置されているのである。これらの島パターン17a-3(すなわちランダムパターン)は、ランダムな方向に延設された溝パターン17bによって、ランダムな多角形に分割されたものとなる。尚、延設方向がランダムな溝パターン17b自体も、ランダムパターンとなる。
【0055】
ここで、絶縁領域17-3に設けられた各溝パターン17bは、絶縁領域17-3においてランダムな方向に延設されたものであり、延設方向に対して垂直をなす幅(線幅と称する)が同一の線幅であることとする。この絶縁領域17-3においては、各溝パターン17bの線幅によって、透明導電膜13による被覆率が調整されている。この被覆率は、電極領域15においての透明導電膜13による被覆率と同程度となるように設定されていることとする。ここで同程度とは、電極領域15および絶縁領域17-3のピッチごとに、これらの領域15,17-3の外形形状がパターンとして視認できない程度とする。尚、溝パターン17bの線幅による被覆率の調整は、以降のランダムパターンの作成方法の項目において説明する。
【0056】
電極領域15における絶縁領域17-3との境界L付近には、円形パターンを境界Lで分断した孔パターン15a’が、境界Lに沿ってランダムに設けられる。一方、絶縁領域17-3における電極領域15との境界L付近には、溝パターン17bによって透明導電膜13を分割してなる島パターン17a-3がランダムに設けられる。
【0057】
また電極領域15は、透明導電膜13の被覆率が部分的に異なる値に調整されていても良い。例えば、電極領域15において導電方向に垂直な方向の幅が一定でない場合、シート抵抗の部分的な上昇を抑えるために、幅が狭い部分において透明導電膜13の被覆率が高くなるように、孔パターン15aの配置状態が調整されていても良い。これは第2実施形態と同様である。
【0058】
以上のような電極領域15および絶縁領域17-3は、それぞれの外形形状がパターンとして視認できない程度に、透明導電膜13による被覆率の差が抑えられていることは、第1実施形態と同様である。すなわち、電極領域15および絶縁領域17-3における透明導電膜13による被覆率の差は30%以下であり、透明電極素子1-3を複数枚積層して用いる場合であれば、さらに積層枚数で割った値以下である。
【0059】
また、第1実施形態と同様に、電極領域15には、直径100μm以上の孔パターン15aが含まれていても良い。一方、絶縁領域17-3には、透明導電膜13による被覆率を上げるために、最も大きい部分で幅100μm以上の島パターン17a-3を設ける。
【0060】
<第3実施形態の効果>
以上説明した構成の透明電極素子1-3であっても、第1実施形態と同様に、電極領域15を構成する透明導電膜13に孔パターン15aがランダムに設けられ、絶縁領域17-3には透明導電膜13で構成された島パターン17a-3がランダムに配置される。また、絶縁領域17-3には、最も大きい部分で幅100μm以上の島パターン17a-3が設けられている。このため、第1実施形態の効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0061】
これに加えて本第3実施形態の透明電極素子1-3では、絶縁領域17-3の透明導電膜13は、ランダムな方向に延設された溝パターン17bによって分割されている。このため、絶縁領域17-3における透明導電膜13の被覆率は、溝パターン17bの幅によって広い範囲で調整可能である。したがって、導電性を向上させるために電極領域15における透明導電膜13の被覆率を高く設定した場合であっても、これと同程度に透明導電膜13による被覆率が高い絶縁領域17-3を容易に構成することが可能である。この結果、電極領域15の抵抗値の低減と非視認性の向上とを両立させることが可能である。
【0062】
尚、第3実施形態の変形例として、電極領域15に対して、上述した溝パターン17bを反転させた透明導電膜13で構成された帯状パターンを設けても良い。この場合、電極領域15には、この帯状パターンによって分離された部分に孔パターンが設けられ、これらの帯状パターンがランダムな方向に延設された状態となる。またこのような延設方向がランダムな帯状パターン、および帯状パターンで分離された孔パターンも、ランダムパターンとなる。
【0063】
≪4.第4実施形態≫
(絶縁領域のみにランダムパターンを設けた透明電極素子)
図5は第4実施形態の透明電極素子の構成を説明するための拡大図である。図5Aは、図1における拡大部Aに対応する拡大平面図であり、図5Bは、図5Aの拡大平面図におけるA−A部分の断面図である。これらの図に示す透明電極素子1-4が、図2を用いて説明した第1実施形態の透明電極素子と異なるところは、電極領域15-4がベタ膜状の透明導電膜13で構成されているところにあり、他の構成は同様である。
【0064】
すなわち、電極領域15-4は、この領域内に透明導電膜13がベタ膜状で配置され、透明導電膜13による被覆率が100%である。
【0065】
一方、絶縁領域17は第1の実施形態と同様であって、直径100μm以上の島パターン17aを含む複数のランダムな大きさの島パターン17aがランダムに配列されている。また、絶縁領域17における電極領域15-4との境界L付近には、円形パターンを境界Lで分断した島パターン17a’が、境界Lに沿ってランダムに設けられている。
【0066】
以上のような電極領域15-4および絶縁領域17は、それぞれの外形形状がパターンとして視認できない程度に、透明導電膜13による被覆率の差が抑えられていることは、第1実施形態と同様である。すなわち、電極領域15-4および絶縁領域17における透明導電膜13による被覆率の差(ばらつき)は30%以下であり、透明電極素子1-4を複数枚積層して用いる場合であれば、さらに積層枚数で割った値以下である。
【0067】
ここで本第4実施形態においては、透明導電膜13がベタ膜状で設けられた電極領域15-4に対して、絶縁領域17の構成は第1実施形態と同様であるため、絶縁領域17における透明導電膜13の被覆率の設定範囲は、第1実施形態よりも高くなる。したがって、絶縁領域17に配置する島パターン17aの直径の範囲は、直径100μm以上を含んで第1実施形態よりも大きく設定される。
【0068】
<第4実施形態の効果>
以上説明した構成の透明電極素子1-4では、電極領域15-4には透明導電膜13がベタ膜で設けられているものの、絶縁領域17には第1実施形態と同様に直径100μm以上を含む複数の島パターン17aが設けられている。したがって、電極領域15-4における透明導電膜13の被覆率を下げる効果は期待できないものの、絶縁領域17における透明導電膜13の被覆率を向上させることにより、電極領域15のパターンの視認性を低下させることができる。また、第1実施形態と同様に、絶縁領域17と電極領域15-4との境界Lにも、透明導電膜13がランダムに配置されることにより、電極領域15-4の輪郭を目立たなくする効果も期待できる。また、電極領域15-4のシート抵抗を抑えて導電性を確保する効果を最も高く得ることが可能である。
【0069】
尚、第4実施形態の変形例として、絶縁領域17の構成を、第3実施形態と同様の溝パターンを配置した構成としても良い。この場合であっても第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
≪5.透明電極素子に設けるランダムパターンの作成方法≫
次に上述した第1〜第4実施形態の透明電極素子におけるランダムパターンの作成方法を説明する。尚、ここで説明するランダムパターンの作成方法は、あくまでも一例であり、本技術の透明電極素子が、ここで説明する作成方法を適用して得られたものに限定されることはない。
【0071】
[ランダムパターンの生成]
先ず、円の半径を設定範囲内でランダムに変化させて配置する際、隣接した円が常に接するように円の中心座標を計算し配置することで、配置のランダム性と高密度充填とを両立したランダムパターンを生成する。この場合、以下のような(1)、(2)のアルゴリズムにより、少ない計算量で高密度、かつ一様にランダム配置されたランダムパターンが得られる。
【0072】
(1)X軸上に「半径をある範囲でランダム」とした円を接するように並べる。
以下に、必要なパラメータを示す。
Xmax:円を生成する領域のX座標最大値
Yw:X軸上に円を配置する時に、円の中心が取り得るY座標の最大値の設定
Rmin:生成する円の最小半径
Rmax:生成する円の最大半径
Rnd:0.0〜1.0の範囲で得られる乱数値
Pn:X座標値xn、Y座標値yn、半径rnで定義される円
【0073】
ここでRmaxは、ここで生成させたランダムパターンに基づいて作成する、孔パターンおよび島パターンなどのランダムパターンが、直径(最大幅)100μm以上のものを含むように設定される。このため、孔パターン間および島パターン間の最隣接距離(最小間隔)=dとした場合、Rmax≧100μm×(1/2)+d×(1/2)の値に設定される。尚、最隣接距離(最小間隔)=dは、例えば孔パターンおよび島パターンなどのランダムパターンを形成する際のプロセス制御性によって決定される。
【0074】
図6には、上記(1)のアルゴリズムを説明する略線図を示す。この図に示すように、Y座標値をX軸上である0.0から概ねRminの値の範囲でランダムに決定し、また半径をRminからRmaxの範囲でランダムに決定した円を、既存の円に接するように並べることを繰り返し、X軸上にランダムに1列の円を並べる。
【0075】
以下、図7に示したフローチャートを用いて(1)のアルゴリズムについて説明する。
まず、ステップS1において、上述した(1)で必要なパラメータを設定する。次に、ステップS2において、円P0(x0,y0,r0)を以下のように設定する。
x0=0.0
y0=0.0
r0=Rmin+(Rmax−Rmin)×Rnd
【0076】
その後、ステップS2’において、n=1に設定する。
【0077】
次に、ステップS3において、円Pn(xn,yn,rn)を以下の式により決定する。
rn=Rmin+(Rmax−Rmin)×Rnd
yn=Yw×Rnd
xn=xn-1+(rn−rn-1)×cos(asin(yn−yn-1)/(rn−rn-1))
円Pnの半径も乱数値Rndを係数とすることでランダムに設定される。また中心のy座標値ynも、Ywの範囲内でランダムに設定される。
【0078】
次に、ステップS4において、Xn>Xmaxであるか否かを判別する。ステップS4にてXn>Xmaxであると判別された場合には、処理は終了する。つまり既にX座標最大値までの円の配置が終了していたと判断されるためである。ステップS4にてXn>Xmaxでないと判別された場合には、処理はステップS5に進む。ステップS5において、円Pn(xn,yn,rn)を記憶する。次に、ステップS6において、nの値をインクリメントし、ステップS3に処理を移行する。つまり次の円n(xn,yn,rn)を決定する。
【0079】
(2)「ランダムな半径の円」を決定し、既存の2つの円に接し、他の円に重ならないよう下から順に積上げる。
以下に、必要なパラメータを示す。
Ymax:円を生成する領域のY座標最大値
Rmin:生成する円の最小半径
Rmax:生成する円の最大半径
Rfill:充填率を上げるため、補助的に円を設定する場合の最小半径
Rnd:0.0〜1.0の範囲で得られる乱数値
Pn:X座標値xn、Y座標値yn、半径rnで定義される円
【0080】
ここでRmaxは、前述と同様であり、ここで生成させたランダムパターンに基づいて作成する、孔パターンおよび島パターンなどのランダムパターンが、直径(最大幅)100μm以上のものを含むように設定される。
【0081】
図8には、上記(2)のアルゴリズムを説明する略線図を示す。この図に示すように、(1)で決定したX軸上に1列に並んだ円(破線で図示)を元に、RminからRmaxの範囲でランダムな半径の円を決定し、Y座標が小さい方から他の円に接するように円を配置し重ねて行く。また、Rminより小さいRfillを設定し、決定した円では埋まらない隙間ができた場合にのみ、隙間を埋めることで充填率を向上させる。Rminより小さい円を用いない場合は、Rfill=Rminと設定する。
【0082】
以下、図9に示したフローチャートを用いて(2)のアルゴリズムについて説明する。
まず、ステップS11において、上述した(2)で必要なパラメータを設定する。
次に、ステップS12において、(1)で生成した円P0から円PnのうちY座標値yiが最小な円Piを求める。次に、ステップS13において、yi<Ymaxである否かを判別する。ステップS13にてyi<Ymaxではない(No)と判別された場合には、処理は終了となる。Y座標最大値まで円の積み重ねが終了したと判定されるためである。ステップS13において、yi<Ymaxである(Yes)と判別された場合には、ステップS14において追加する円Pkの半径rkをrk=Rmin+(Rmax−Rmin)×Rndとする。乱数値Rndを係数として用いることで半径rkがランダムに設定される。次に、ステップS15において、円Pi近傍で円Piを除きY座標値yiが最小な円Pjを求める。
【0083】
次に、ステップS16において、最小な円Piが存在するか否かを判別する。ステップS16にて最小な円Piが存在しないと判別した場合には、ステップS17において、以降Piは無効とする。ステップS16にて最小な円Piが存在すると判別した場合には、ステップS18において、円Piと円Pjとに接する半径rkの円Pkが存在するかを求める。
【0084】
図10には、ステップS18において、接する2つの円に、任意の半径の円が接するように配置するときの座標の求め方を示す。即ち図示する式で、円Piの座標(xi,yi)と半径ri、及び円Pjの座標(xj,yj)と半径rj、及び追加する円Pkの半径rkを用いてcosθiを求め、さらにθiを用いて、図示する式で追加する円Pkの座標(xk,yk)を算出する。
【0085】
次に、ステップS19において、円Piと円Pjとに接する半径rkの円Pkが存在するか否かを判別する。ステップS19において円Pkが存在しないと判別した場合には、ステップS20において、以降円Pi、円Pjの組み合わせは除外する。ステップS19において円Pkが存在すると判別した場合には、ステップS21において、円P0から円Pnに円Pkと重なる円が存在するか否かを判別する。ステップS21にて重なる円が存在しないと判別した場合には、ステップS24において、円Pk(xk,yk,rk)を記憶する。次に、ステップS25においてnの値をインクリメントし、ステップS26においてPn=Pkとし、さらにステップS27においてkの値をインクリメントしてステップS12に処理を移行する。
【0086】
ステップS21にて重なる円が存在すると判別した場合には、ステップS22にて円Pkの半径rkをRfill以上の範囲で小さくすれば重なりを回避できるか否かを判別する。ステップS22にて重なりを回避できないと判別した場合には、ステップS20において、以降円Pi、円Pjの組み合わせは除外する。ステップS22にて重なりを回避できると判別した場合には、ステップS23において半径rkを重なりを回避できる最大の値にする。次に、ステップS24において、円Pk(xk,yk,rk)を記憶する。次に、ステップS25において、nの値をインクリメントし、ステップS26においてPn=Pkとし、さらにステップS27においてkの値をインクリメントしてステップS12に処理を移行する。
【0087】
図11Aは、ランダムパターンの生成方法のイメージを示す模式図である。図11Bは、円の面積比率を80%としたランダムパターン生成の例を示す図である。図11Aに示すように、円の半径を設定した範囲(Rmin〜Rmax)内でランダムに変化させて積み上げることで、規則性を廃した密度の高いランダムパターンを生成することができる。
【0088】
以上のようにしてランダムパターンを生成した後には、この生成したランダムパターンに基づいて、以下の(1)〜(3)の例示される様に、電極領域の孔パターンおよび絶縁領域の島パターンをランダムパターンとして作成する。
【0089】
[ランダムパターンの作成]
(1)電極領域および絶縁領域に同様のランダムパターンを設ける例
ここでは、図2を用いて説明した第1実施形態の透明電極素子1-1の孔パターン15aおよび島パターン17aの作成方法について説明する。
【0090】
この場合、上述のようにしてランダムパターンを生成した後、生成したランダムパターン(生成パターン)の円半径を縮小することにより、図12Aに示すように孤立したランダムパターンを作成する。また図12Bに示すように、生成パターンの円内に、例えば角を取った正方形パターンのような任意の図形を描くことにより孤立したランダムパターンを作成しても良い。尚、生成パターンの円内に描く図形は、円、楕円、多角形、角を取った多角形、不定形などが挙げられる。
【0091】
次に、以上のようにして作成した孤立したランダムパターンを、電極領域15と絶縁領域17との境界Lで反転させる。これにより、電極領域15の孔パターン15aと絶縁領域17の島パターン17aとが、同様のランダムパターンとして作成される。
【0092】
(2)電極領域および絶縁領域に異なるランダムパターンを設ける例
ここでは、図3を用いて説明した第2実施形態の透明電極素子1-2の孔パターン15aおよび島パターン17aの作成方法を説明する。
【0093】
電極領域15における孔パターン15aおよび絶縁領域17における島パターン17aとを、互いに異なるランダムパターンとする場合であっても、基本的には上述と同様にランダムパターンを生成する。この場合、条件を変更して個別にランダムパターンを生成する下記a),b)の手法と、同時に生成したランダムパターンを個別に縮小する下記c)、d)の手法とが例示される。
【0094】
a)上述した[ランダムパターンの生成]において、電極領域と絶縁領域とで生成条件を変更して個別に2種類の異なるランダムパターンを生成する。ここで変更する生成条件は、[ランダムパターンの生成]で説明したパラメータのうちのRmin、Rmax、Rfill等である。これにより、電極領域と絶縁領域とで円の半径範囲が異なるランダムパターンが生成される。その後、このように個別に生成したランダムパターンの円半径を縮小し、電極領域と絶縁領域とに、円の半径範囲が異なる孤立したランダムパターンを作成する。
【0095】
b)上述した[ランダムパターンの生成]において、電極領域と絶縁領域とでRnd(0.0〜1.0の範囲で得られる乱数値)に対する重み付を変更し、個別に2種類の異なるランダムパターンを生成する。これにより、電極領域と絶縁領域とで、円の半径の頻度が異なるランダムパターンが生成される。このように個別に生成したランダムパターンの円半径を縮小し、電極領域と絶縁領域とに、円の半径の頻度が異なる孤立したランダムパターンを作成する。
【0096】
ここで上述のb)で示した乱数値Rndの重み付けについて説明する。
図11Bのように生成されるランダムパターンの円半径は、
円半径=最小半径Rmin+(最大半径Rmax−最小半径Rmin)×乱数値Rndである。
そして乱数値Rndは0.0〜1.0の範囲で得られる乱数値である。
この乱数値を、計算結果が0〜1の範囲になるような計算式に代入することにより生成されるランダムパターンの円半径の分布に重み付けが可能となる。
【0097】
例えば、乱数値[Rnd]とすることで、小さい円半径のランダムパターンの分布を増やすことができる。
また乱数値[Rnd]1/3とすることで、大きい円半径のランダムパターンの分布を増やすことができ、パターンの充填率を増加できる。
【0098】
図13Aに、y=x1/3、y=xとして重み付け後の乱数値を示している。
図13Bには、作成した円形状のランダムパターンの直径の頻度分布を示す。線NWは重み付けを行わなかった場合、線AWはy=x1/3の重み付けを行った場合での頻度分布を、直径1μmピッチで示している。
尚、この頻度分布は、以下の条件で生成して縮小した円形状のランダムパターンについてのものである。
・半径範囲:Rmin=35〜Rmax=56μm
・半径縮小値:10μm
【0099】
図13Bより、乱数値Rndの重み付けにより、大きな直径のパターンの発生頻度を増やすことにより、パターン充填率を上げることが可能であることがわかる。
逆に、小さな直径のパターンの発生頻度を増やすことにより、パターン充填率を下げることも可能である。尚、任意直径の頻度を増やしすぎるとランダム性が低下し、モアレや回折光が発生しやすくなる。直径1μmピッチの頻度分布にて、任意直径の頻度は35%以下であることが好ましい。
【0100】
c)同時に生成したランダムパターンの円半径の縮小率を、電極領域と絶縁領域とで異なる値にする。これにより、電極領域と絶縁領域とに、半径範囲が異なる孤立したランダムパターンを作成する。
【0101】
d)同時に生成したランダムパターンの円内に描く図形を電極領域と絶縁領域とで異なる形状とし、生成したランダムパターンを異なる形状に変形させて縮小する。例えば一方は円、他方は正方形などとする。これにより電極領域と絶縁領域とに、形状が異なる孤立したランダムパターンを作成する。
【0102】
尚、以上のa)〜d)は組み合わせても良いことは当然である。
【0103】
(3)絶縁領域にランダムパターンとして溝パターンを設けた透明電極素子の作成
ここでは図4を用いて説明した第3実施形態の透明電極素子1-3における絶縁領域17-3の作成について説明する。尚、電極領域15の作成は、前述の第1実施形態と同様である。
【0104】
先ず、上述のようにしてランダムパターンを生成する。次に、図14Aに示すように、生成したランダムパターンにおいて、外周が接する円の中心同士を結ぶ直線を発生させる。これにより、図14Bに示すように、ランダムな方向に延設された線分によって構成された多角形のランダムパターンが生成される。
【0105】
多角形のランダムパターンの生成の他の例としては、先に生成した円形のランダムパターンに対して、各円の中心座標をそのまま利用して各円の中心を通る直線を引く際、各直線の回転角度を0度〜180度の範囲でランダムに決定する方法であっても良い。これにより、ランダムな傾きの線を形成し、これらの線によって構成された多角形のランダムパターンが生成される。
【0106】
次に、図14Cに示すように、多角形のランダムパターンを構成する線分を所定の線幅に太らせ、これらの太らせた線分を図4Aに示した絶縁領域17-3における溝パターン17bとすることで、絶縁領域17-3のランダムパターンを得る。
【0107】
図15に示すように、溝パターン17bは、様々な線幅Wに変化させることができる。溝パターン17bの線幅Wを変化させることにより、溝パターン17bで分割された透明導電膜13による絶縁領域17-3の被覆率が、広い範囲で調整可能である。下記表2には、ランダムパターンとして生成させる円の半径rの範囲(Rmin〜Rmax)、および溝パターン17bの線幅W毎に、透明導電膜13による絶縁領域17-3の被覆率[%]を算出した結果を示す。
【0108】
【表2】

【0109】
上記表2に示すように、溝パターン17bによって透明導電膜13を分割してなる絶縁領域17-3では、透明導電膜13による被覆率を28.5%〜74.9%の広い範囲で調整することが可能であることがわかる。
【0110】
これに対して、例えば図2Aに示した電極領域15の孔パターン15aと同様のランダムパターンを、絶縁領域17の島パターン17aとした場合、この絶縁領域17においての透明導電膜13の被覆率は、次の計算により上限70%程度が限界値として導かれる。
【0111】
すなわち、ある領域に円を配列する場合、円の充填率の最大値は、円を千鳥配列した状態が理論的な最大値90.7%となる。ここで、円の半径を50μmとした時、各円を独立して配置するために円と円との間に8μmの間隔を設けるとすると、各円の半径は(50−8/2)=46μmに縮小される。この状態での円の面積率は(46×46)/(50×50)=0.846となり、円の充填率は(90.7%)×(0.846)=76.7%となる。
【0112】
ここで、各円の半径をランダムにした場合、円と円との隙間がさらに広がり、実際の充填率は、千鳥配列での充填率(90.7%)と格子配列での充填率(78.5%)との間の値になる。この値は、ランダムに生成させた円の最大半径と最小半径との比(分布)によって変わるが、おおよそ最大80%程度となる。
【0113】
そこで、初期にランダムパターンとして生成する円の半径rの範囲をRmin=50μm〜Rmax=100μmとし、円と円との間に8μmの間隔を設けることとする。この場合の円の充填率は、80%×(46×46)/(50×50)=67.71%〜80%×(96×96)/(100×100)=73.73%の間となる。ランダムに生成させた円の分布を、少し大きい円にシフトさせても充填率70%程度が限界値として導かれるのである。このようにして算出された充填率70%程度の限界値は、溝パターン17bによって透明導電膜13を分割してなる絶縁領域17において算出した被覆率74.9%よりも低いことがわかる。
【0114】
≪6.透明電極素子の第1の製造方法≫
(原盤を用いる方法)
次に、第1実施形態〜第4実施形態で説明した透明電極素子の第1の製造方法として、原盤を用いる製造方法を説明する。
【0115】
[原盤]
図16Aは、第1の製造方法で用いられる原盤の形状の一例を示す斜視図である。図16Bは、図16Aに示した電極領域形成部15rおよび絶縁領域形成部17rの一部(拡大部B)を拡大して示す平面図である。これらの図に示す原盤21は、例えば、転写面としての円柱面(側壁面)を有するロール原盤であり、その円柱面には電極領域形成部15rおよび絶縁領域形成部17rが交互に敷き詰められている。
【0116】
電極領域形成部15rには、凹形状の複数の孔部15raが離間して形成されている。これらの孔部15raは、透明電極素子の電極領域における孔パターンを印刷により形成するための部分である。また電極領域形成部15rにおける各孔部15ra間の凸部分は、電極領域に配置される透明導電膜を印刷によって形成するための部分である。尚、この原盤21が、図5を用いて説明した透明電極素子1-4の製造に用いる原盤である場合、電極領域形成部15rには孔部15raを配置せず、電極領域形成部15rは同一高さの印刷面とすれば良い。
【0117】
絶縁領域形成部17rには、凸形状の島部17raが離間して形成されている。これらの島部17raは、透明電極素子の絶縁領域における島パターンを印刷により形成するための部分である。この島部17raは、電極領域形成部15rの凸部分と同一高さを有する部分である。また絶縁領域形成部17rにおける各島部17ra間の凹部分は、絶縁領域において島パターンを分離するための部分である。尚、この原盤21が、図4を用いて説明した透明電極素子1-3の製造に用いる原盤である場合、絶縁領域形成部17rおける各島部17ra間の凹部分は、溝パターンを形成するための部分となる。
【0118】
[透明電極素子の製造手順]
図17は、上述した原盤21を用いた透明電極素子の第1の製造方法を説明するための断面工程図である。次にこれらの図に基づいて第1の製造方法の手順を説明する。
【0119】
先ず図17Aに示すように、原盤21の転写面に導電性インクを塗布し、塗布した導電性インク13’を基材11の表面に印刷する。印刷法としては、例えば、スクリーン印刷、水なし平板印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、反転オフセット印刷などを用いることができる。次に、図17Bに示すように、必要に応じて、基材11の表面に印刷された導電性インク13’を加熱することにより、導電性インクを乾燥および/または焼成して透明導電膜13とする。これにより、目的とする第1実施形態〜第4実施形態の何れかの透明電極素子を得ることができる。
【0120】
≪7.透明電極素子の第2の製造方法≫
(パターンエッチングを適用する方法)
次に、第1実施形態〜第4実施形態で説明した透明電極素子の第2の製造方法として、パターンエッチングを適用する方法を説明する。
【0121】
先ず、図18Aに示すように、電極領域15と絶縁領域17とが設定された基材11の表面上に透明導電膜13を成膜する。
【0122】
透明導電膜13が金属酸化物を用いたものであれば、化学的気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)や、物理的気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)の中から、適宜選択された方法によって透明導電膜13を成膜する。CVD法としては、熱CVD、プラズマCVD、光CVDなどが適用される。PVD法としては、真空蒸着、プラズマ援用蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどが適用される。透明導電膜13を成膜する際には、必要に応じて基材11を加熱しても良い。
【0123】
透明導電膜13の成膜後には、必要に応じて透明導電膜13に対してアニール処理を施す。これにより、透明導電膜13が、例えばアモルファスと多結晶との混合状態、または多結晶状態となり、透明導電膜13の導電性が向上する。
【0124】
これに対して、透明導電膜13が金属ナノワイヤーを用いたものであれば、塗布法を適用して金属ナノワイヤーを分散液に分散させた透明導電膜13を成膜する。
【0125】
次いで、図18Bに示すように、透明導電膜13の表面上に、リソグラフィー法を適用してレジストパターンPRを形成する。ここでは、上述した方法によって作成したランダムパターンが形成されたフォトマスクを用いたパターン露光を行う。
【0126】
ここで形成するレジストパターンPRは、電極領域15に対応する部分に独立した複数の孔パターン15PRaを有する。孔パターン15PRaは、電極領域15の透明導電膜13に形成する孔パターンに対応して形成される。尚、ここで形成する透明電極素子が、図5を用いて説明した透明電極素子1-4である場合、電極領域のレジストパターンPRには孔パターンPRaは配置されない。
【0127】
またこのレジストパターンPRは、絶縁領域17に対応する部分に独立した複数の島パターン17PRaを有する。島パターン17PRaは、絶縁領域17の透明導電膜13を用いて構成される島パターンに対応して形成される。尚、ここで形成する透明電極素子が、図4を用いて説明した透明電極素子1-3である場合、絶縁領域のレジストパターンPRには、ランダムな方向に延設された溝パターンが形成される。
【0128】
以上のレジストパターンPRを構成するレジスト材料は、例えば有機系レジスト、および無機系レジストのいずれを用いてもよい。有機系レジストとしては、例えばノボラック系レジストや化学増幅型レジストを用いることができる。また、無機系レジストとしては、例えば、1種または2種以上の遷移金属からなる金属化合物を用いることができる。
【0129】
次に、図18Cに示すように、レジストパターンPRをマスクにして透明導電膜13をパターンエッチングする。これにより、電極領域15の透明導電膜13に孔パターン15aを形成し、絶縁領域17の透明導電膜13に島パターン17aを形成する。透明導電膜13のパターンエッチングは、例えば、ドライエッチングおよびウエットエッチングの何れも用いることができるが、設備が簡易である点からすると、ウエットエッチングを用いることが好ましい。尚、レジストパターンPRが、電極領域15に対応する部分に孔パターンを有していない場合、電極領域15の透明導電膜13に孔パターン15aが形成されることはない。
【0130】
以上の後には、図18Dに示すように、アッシングなどにより透明導電膜13上に形成されたレジストパターンPRを剥離し、目的とするランダムパターンを有する第1実施形態〜第4実施形態の何れかの透明電極素子を得る。
【0131】
≪8.透明電極素子の変形例1〜4≫
図19には、本技術の透明電極素子の変形例1〜4の断面図を示す。以下、これらの図に基づいて、透明電極素子の各変形例を説明する。尚、図19A〜19Dにおいては、第1実施形態の透明電極素子1-1に対して各変形例を適用した構成を図示しているが、各変形例は他の実施形態の透明電極素子に対して同様に適用することが可能である。
【0132】
[変形例1]
図19Aには透明電極素子の変形例1として、基材11の両面に透明導電膜13を設けた透明電極素子1aの構成を示す。基材11の両面には、電極領域15と絶縁領域17とが設定された透明導電膜13が設けられている。ここでは、例えば基材11の第1面上においては、x方向に電極領域15が配列され、これらの電極領域15間を埋め込む状態で絶縁領域17が配置されている。一方、基材11の第2面上においては、y方向に電極領域15が配列され、これらの電極領域15を埋め込む状態で絶縁領域17が配置されている。
【0133】
このように基材11を挟んでx−y方向に直交させて電極領域15を配列した透明電極素子1aは、以降に説明するように情報入力装置として用いることができる。このような透明電極素子1aは、2枚の透明電極素子が1枚の基材11を共有する状態で積層された構成である。したがって、透明電極素子を積層した各部分において透明導電膜13の被覆率を加算し、加算値の機材11の面内における差(ばらつき)が30%以下となっていることが重要である。具体的には、電極領域15と電極領域15との積層部、電極領域15と絶縁領域17との積層部、および絶縁領域17と絶縁領域17との積層部で、透明導電膜13での被覆率を積層方向で加算した値の差が30%以下である。
【0134】
尚、この変形例1に対して、図5を用いて説明した第2実施形態を適用する場合、基材11の少なくとも一方の面上の電極領域15に透明導電膜13をベタ膜で配置すれば良い。
【0135】
[変形例2]
図19Bには透明電極素子の変形例2として、透明導電膜13を覆うハードコート層23を設けた透明電極素子1bの構成を示す。ハードコート層23は、基材11にプラスチック基材を用いる場合、製造工程においての基材11の傷付き防止、耐薬品性付与、オリゴマーなどの低分子量物の析出を抑制するためのものであり、また透明導電膜13を保護するためのものである。
【0136】
このようなハードコート層23を構成する材料としては、光または電子線などにより硬化する電離放射線硬化型樹脂、または熱により硬化する熱硬化型樹脂を用いることが好ましく、紫外線により硬化する感光性樹脂が最も好ましい。このような感光性樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、メラミンアクリレートなどのアクリレート系樹脂を用いることができる。例えば、ウレタンアクリレート樹脂は、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、あるいはプレポリマーを反応させ、得られた生成物に、水酸基を有するアクリレートまたはメタクリレート系のモノマーを反応させることによって得られる。ハードコート層23の厚みは、1μm〜20μmであることが好ましいが、この範囲に特に限定されるものではない。
【0137】
ハードコート層23は、ハードコート塗料を基材11上に塗工することにより形成される。塗工方法は、特に限定されるものではなく公知の塗工方法を用いることができる。公知の塗工方法としては、例えば、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイレクトグラビアコート法、ダイコート法、ディップ法、スプレーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、コンマコート法、ナイフコート法、スピンコート法などが挙げられる。ハードコート塗料は、例えば、二官能以上のモノマーおよび/またはオリゴマーなどの樹脂原料、光重合開始剤、および溶剤を含有する。基材11上に塗工されたハードコート塗料を乾燥させることにより、溶剤を揮発させる。その後、例えば電離放射線照射または加熱により、基材11上にて乾燥されたハードコート塗料を硬化させてハードコート層23とする。
【0138】
尚、以上のようなハードコート層23は、基材11において、透明導電膜13が設けられていない面上に設けても良い。
【0139】
[変形例3]
図19Cには透明電極素子の変形例3として、基材11と透明導電膜13との間に下地層25を設けた透明電極素子1cの構成を示す。下地層25は、例えば光学調整機能や密着性補助機能を有する。
【0140】
光学調整機能を有する下地層25は、透明導電膜13に形成した孔パターン15aや溝パターン17bの非視認性をアシストするため層である。このような光学調整機能を有する下地層25は、例えば屈折率が異なる2層以上の積層体から構成され、透明導電膜13側を低屈折率層とする。より具体的には、たとえば、従来公知の光学調整層を用いることができる。このような光学調整層としては、例えば、特開2008−98169号公報、特開2010−15861号公報、特開2010−23282号公報、特開2010−27294号公報に記載されているものを用いることができる。
【0141】
密着性補助機能を有する下地層25は、基材11と透明導電膜13との間の密着性を確保するための層である。このような密着性補助機能を有する下地層25は、例えば、ポリアクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、および金属元素の塩化物や過酸化物やアルコキシドなどの加水分解・脱水縮合生成物などを用いることができる。
【0142】
尚、基材11と透明導電膜13との間の密着性の確保を目的とした場合、下地層25を設けることなく、基材11における透明導電膜13の形成面に密着性を補助するための処理を施しても良い。このような処理としては、グロー放電またはコロナ放電を照射する放電処理、酸またはアルカリを用いた化学薬品処理が例示される。また透明導電膜13を設けた後、カレンダー処理により密着を向上させるようにしても良い。
【0143】
[変形例4]
図19Dには透明電極素子の変形例4として、基材11において透明導電膜13が設けられた面と反対側の面に、シールド層27を設けた透明電極素子1dの構成を示す。シールド層27は、透明導電膜13で構成された電極領域15においての電磁波などに起因するノイズを低減するための層である。
【0144】
このシールド層27を構成する材料としては、透明導電膜13と同様の材料を用いることができる。シールド層27の形成方法としても、透明導電膜13と同様の方法を用いることができる。ただし、シールド層27はパターニングせず基材11の表面全体に形成された状態で使用される。
【0145】
≪9.第5実施形態≫
(透明電極素子を用いた情報入力装置)
図20には、透明電極素子を用いた情報入力装置の要部構成図を示す。また図21には、図20に示した情報入力装置における透明電極素子の積層状態を説明するための平面図である。
【0146】
これらの図に示す情報入力装置3は、例えば表示パネルの表示面上に配置される静電容量方式のタッチパネルであり、2枚の透明電極素子1x,1yを用いて構成されている。これらの透明電極素子1x、1yのそれぞれは、図2〜5を用いて説明した第1〜第4実施形態の透明電極素子の何れかであるか、またはこれらの変形例2〜4の透明電極素子の何れかであることとする。
【0147】
透明電極素子1xには、各実施形態で説明した何れかの電極領域が、電極領域15x1,15x2,…として設けられている。一方、透明電極素子1yには、各実施形態で説明した何れかの電極領域が、電極領域15y1,15y2,…として設けられている。
【0148】
以上のような各透明電極素子1xと透明電極素子1yとは、電極領域15x1,15x2,…と電極領域15y1,15y2,…とを、x−y方向に直交させた状態で配置され、接着性の絶縁性膜31を介して貼り合わせられている。図示したように、電極領域15x1,15x2,…および電極領域15y1,15y2,…のそれぞれが、菱形状を直線状に連結した形状であれば、菱形状の連結部分で電極領域15x1,15x2,…および電極領域15y1,15y2,…を直交させる。
【0149】
尚、このような2枚の透明電極素子1x、1yを貼り合せた構成に換えて、上述の変形例1で説明したように基材11の両面に透明導電膜13を配置した構成の透明電極素子1aを用いても良い。
【0150】
このような構成において、透明電極素子1xと透明電極素子1yとを積層した各部分で、透明導電膜13の被覆率を加算した値の差(ばらつき)が30%以下となっていることが重要である。すなわち、図21を参照し、透明電極素子1xと透明電極素子1yとを積層した各部は、次の3つの部分に分けられる。電極領域15x1,15x2,…と電極領域15y1,15y2,…との各積層部AR1、絶縁領域17同士の積層部AR2、電極領域15x1,15x2,…または電極領域15y1,15y2,…と絶縁領域17との積層部AR3。これらの各積層部AR1、AR2,AR3のそれぞれにおいて透明導電膜13での被覆率を加算し、加算値の差が30%以下に抑えられているのである。
【0151】
以上のような被覆率の加算値の差は、電極領域15x1,15x2,…および電極領域15y1,15y2,…のそれぞれが、部分的に透明導電膜による被覆率が異なる場合であっても同様である。例えば電極領域15x1,15x2,…および電極領域15y1,15y2,…のそれぞれが、導電方向に垂直な方向の幅が一定でなく、幅が大きい部分よりも幅が狭い部分においての透明導電膜13での被覆率が高くなるように調整されている場合等も同様である。
【0152】
またここでの図示は省略するが、この情報入力装置3には、透明電極素子1x,1yの各電極領域15x1,15x2,…、15y1,15y2,…に対して、個別に測定電圧を印加するための複数の端子が配線されていることとする。
【0153】
さらにこの情報入力装置3において情報の入力面側となる透明電極素子1x上には、必要に応じて接着層33を介して光学層35を設けても良い。これらの接着層33および光学層35は、透明材料で構成される。また光学層35に換えて、酸化シリコン(SiO)膜のようなセラミックコート(オーバーコート)層を設けても良い。
【0154】
以上のような情報入力装置3は、透明電極素子1xに配列して設けられた電極領域15x,15x2,…と、透明電極素子1yに配列して設けられた電極領域15y1,15y2,…とに対して、交互に測定電圧を印加する。この状態で、基材11の表面に指またはタッチペンが触れると、情報入力装置3内に存在する各部の容量が変化し、各電極領域15x1,15x2,…、15y1,15y2,…の測定電圧の変化となって現れる。この変化は、指またはタッチペンが触れた位置からの距離によって異なり、指またはタッチペンが触れた位置で最も大きくなる。このため、測定電圧の変化が最大となる、電極領域15xn,15ynでアドレスされた位置が、指またはタッチペンが触れた位置として検出される。
【0155】
<第5実施形態の効果>
以上説明した第5実施形態の情報入力装置3では、第1実施形態〜第4実施形態さらには変形例で説明した透明電極素子1x,1yを用いている。これにより、各電極領域15x1,15x2,…、15y1,15y2,…の視認性を極限まで低下させることが可能になる。これにより、次に説明するように、この情報入力装置3を表示パネルの表示面上に配置した場合に、情報入力装置3における電極領域15x1,15x2,…、15y1,15y2,…のパターンが、表示パネルにおいての表示特性に影響を及ぼすことを防止できる。
【0156】
尚、本第5実施形態においては、2枚の透明電極素子1x,1yを用いた情報入力装置3の構成を説明した。しかしながら、本技術の情報入力装置がこのような構成に限定されることはなく、透明電極素子を備えた構成の情報入力装置に広く適用可能である。
【0157】
情報入力装置は、例えば1枚の基材11の同一面上にそれぞれ絶縁された状態で電極領域15x1,15x2,…、15y1,15y2,…を設けた透明電極素子を用いた構成であっても良い。この場合、電極領域15x1,15x2,…、または電極領域15y1,15y2,…の一方を、両者の交差部分において中継電極を介して電気的に接続する構成を採用することが好ましい。このような中継電極を用いた電極領域15x1,15x2,…、15y1,15y2,…の構成としては、例えば、特開2009−53893号公報などに開示されている従来公知の構成を採用することができる。
【0158】
さらに情報入力装置は、抵抗膜方式のタッチパネルであっても良く、例えば特開2009−211978号公報などに開示されている従来公知の構成を採用することができる。このような構成であっても、第5実施形態の情報入力装置3と同様の効果を得ることができる。
【0159】
≪10.第6実施形態≫
(情報入力装置を用いた表示装置)
図22には、本技術の電子機器の一例として情報入力装置を備えた表示装置の斜視図を示す。この図に示す表示装置4は、表示パネル43における表示面上に、例えば第5実施形態で説明した構成の情報入力装置3を配置したものである。
【0160】
表示パネル43は、特に限定されるものではないが、例示するならば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(Plasma Display Panel:PDP)、エレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)ディスプレイ、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(Surface-conduction Electron-emitter Display:SED)などの各種の平面型の表示装置が挙げられる。この他にも、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイであっても良い。
【0161】
この表示パネル43には、例えばフレキシブルプリント基板45が接続されており、表示画像の信号が入力される構成となっている。
【0162】
このような表示パネル43における画像の表示面上に、表示面を覆う状態で情報入力装置3が重ねて配置されている。この情報入力装置3には、フレキシブルプリント基板37が接続されており、ここから情報入力装置3の各電極領域15x1,15x2,…、15y1,15y2,…に、上述した測定電圧が印加される。
【0163】
これにより、ユーザは、表示パネル43で表示された表示画像の一部に、情報入力装置3を介して指やタッチペンを接触させることにより、接触部分の位置情報を情報入力装置3に入力することができる。
【0164】
<第6実施形態の効果>
以上説明した第6実施形態の表示装置4では、第5実施形態で説明した構成の情報入力装置3を表示パネル43の表示面上に配置している。このため、表示パネル43での表示が、情報入力装置3を構成する電極領域15x1,15x2,…、15y1,15y2,…の視認性に影響を及ぼされることはない。したがって、情報入力装置3を有しつつも、表示パネル43においての高精彩な表示を確保することが可能になる。
【0165】
≪11.第7実施形態≫
(電子機器への適用例)
図23〜図27には、図22を用いて説明した第6実施形態の情報入力装置を備えた表示装置を、表示部に適用した電子機器の一例を示す。以下に、本技術の電子機器の適用例について説明する。
【0166】
図23は、本技術が適用されるテレビを示す斜視図である。本適用例に係るテレビ100は、フロントパネル102やフィルターガラス103等から構成される表示部101を含み、その表示部101として先に説明した表示装置を適用する。
【0167】
図24は、本技術が適用されるデジタルカメラを示す図であり、図24Aは表側から見た斜視図、図24Bは裏側から見た斜視図である。本適用例に係るデジタルカメラ110は、フラッシュ用の発光部111、表示部112、メニュースイッチ113、シャッターボタン114等を含み、その表示部112として先に説明した表示装置を適用する。
【0168】
図25は、本技術が適用されるノート型パーソナルコンピュータを示す斜視図である。本適用例に係るノート型パーソナルコンピュータ120は、本体121に、文字等を入力するとき操作されるキーボード122、画像を表示する表示部123等を含み、その表示部123として先に説明した表示装置を適用する。
【0169】
図26は、本技術が適用されるビデオカメラを示す斜視図である。本適用例に係るビデオカメラ130は、本体部131、前方を向いた側面に被写体撮影用のレンズ132、撮影時のスタート/ストップスイッチ133、表示部134等を含み、その表示部134として先に説明した表示装置を適用する。
【0170】
図27は、本技術が適用される携帯端末装置を示す斜視図である。本適用例に係る携帯端末装置140は、前面パネルの中央に設けた表示部141、その周囲に設けたセンサー142、スピーカー143、操作スイッチ144等を含み、その表示部141として先に説明した表示装置を適用する。
【0171】
<第7実施形態の効果>
以上説明した第7実施形態の各電子機器では、第6実施形態で説明した表示装置を表示部に用いているため、表示パネルの全面に情報入力装置を有しつつも高精彩な表示を行うことが可能になる。
【実施例】
【0172】
以下の実施例1〜8のようにして、電極領域と絶縁領域とを有する透明電極素子を2枚作製し、作製した2枚の透明電極素子を2枚重ねた積層体を作製した。作製した各透明電極素子およびこれらの積層体について、電極領域の非視認性、モアレ・干渉光、およびギラツキを評価した。各実施例のパラメータと評価結果は、それぞれ表3、表4にまとめて示した。
【0173】
尚、電極領域の非視認性、モアレ・干渉光、およびギラツキの評価は次のように行った。まず、対角3.5インチの液晶ディスプレイ上に、粘着シートを介して透明電極素子またはこれらの積層体における透明導電膜の形成の面が画面と対向するように貼り合わせた。次に、透明電極素子またはこれらの積層体における基材側に、粘着シートを介してARフィルムを貼り合わせた。その後、液晶ディスプレイを黒表示または緑色表示し、表示面を目視により観察して、非視認性、ギラツキ、ならびにモアレおよび干渉光を評価した。各項目の評価基準は次のようである。
【0174】
[非視認性]
◎:どの角度から見ても電極領域の外形形状を全く視認できない
○:パターンが非常に視認しにくいが、角度によっては視認可能
×:視認可能
【0175】
[モアレおよび干渉光]
◎:あらゆる角度から観察してモアレおよび干渉光が感じられない
○:正面から観察してモアレおよび干渉光がないが、斜めから観察してモアレおよび干渉
光が少し感じられる
×:正面から観察してモアレおよび干渉光が感じられる
【0176】
[ギラツキ]
◎:あらゆる角度から観察してギラツキが感じられない
○:正面から観察してギラツキがないが、斜めから観察してギラツキが少し感じられる
×:正面から観察してギラツキが感じられる
【0177】
≪実施例1〜4≫
厚み125μmのPETフィルムを基材とし、この基材上にスパッタリング法によってITOからなる透明導電膜を形成して透明導電性フィルムを得た。この透明導電性フィルムのシート抵抗は150Ω/□であった。
【0178】
次に、ITOからなる透明導電膜上にレジスト層を形成し、ランダムパターンの形成されたCrフォトマスクを用いてレジスト層を露光した。この際、Crフォトマスクのランダムパターンとしては、円形状のランダムパターンを採用した。
【0179】
また、各実施例においては、孔パターンと島パターンとは、パターン直径の範囲が100μm以上を含むランダムパターンであって、パターン直径および最隣接距離をそれぞれ調整することで透明導電膜による被覆率を調整した。ただし、実施例4における電極領域には、孔パターンを設けず、透明導電膜をべた膜状で設けた。尚、電極領域の外形形状は矩形形状とした。
【0180】
次に、レジスト層を現像してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして、ITO層をウエットエッチングした後、レジスト層をアッシング処理により除去した。
【0181】
以上により、下記表3に示すパラメータで、孔パターンおよび島パターンがランダムに形成された電極領域および絶縁領域を有する2枚の透明電極素子を作製した。作製した2枚の透明電極素子を、それぞれの電極領域を交差させるようにして重ねた積層体を作製した。さらに下記表3には、電極領域の非視認性、モアレ・干渉光、およびギラツキの評価結果を合わせて示した。
【0182】
【表3】

【0183】
表3に示す評価結果から、透明電極素子および積層体の両方について、目視によって視認され易いパターン直径100μm以上のパターンを含んでいても、透明導電膜による被覆率差を30%以下に抑えることにより、良好な非視認性を得られることが確認された。また、モアレ・干渉光、およびギラツキについても、問題の発生がないことが確認された。
【0184】
≪実施例5〜8≫
厚み125μmのPETフィルムを基材とし、この基材上に塗布法によって銀ナノワイヤー層からなる透明導電膜を形成して透明導電性フィルムを得た。この透明導電性フィルムのシート抵抗は100Ω/□であった。その後は実施例1〜4と同様の手順を行った。
【0185】
これにより、下記表4に示すパラメータで、孔パターンおよび島パターンがランダムに形成された電極領域および絶縁領域を有する2枚の透明電極素子を作製した。作製した2枚の透明電極素子を、それぞれの電極領域を交差させるようにして重ねた積層体を作製した。さらに下記表4には、電極領域の非視認性、モアレ・干渉光、およびギラツキの評価結果を合わせて示した。
【0186】
【表4】

【0187】
表4に示す結果から、透明導電膜として銀ナノワイヤー層を用いた場合であっても、実施例1〜4と同様の効果が確認された。すなわち、透明電極素子および積層体の両方について、目視によって視認され易いパターン直径100μm以上のパターンを含んでいても、透明導電膜による被覆率差を30%以下に抑えることにより、良好な非視認性を得られることが確認された。また、モアレ・干渉光、およびギラツキについても、問題の発生がないことが確認された。
【0188】
さらに加えて実施例5〜7では、電極領域に孔パターンを設けたことにより、銀ナノワイヤー層からなる透明導電膜の被覆率が抑えられている。このため、銀ナノワイヤー表面での外光の乱反射による反射L値の値が小さくなっていた。またこの結果として、透明電極素子を表示パネルの表示面上に配置した構成において、電極領域をべた膜状とした実施例8との比較において、電極領域に孔パターンを設けた実施例5〜7の透明電極素子を使用した場合では、表示画面の黒表示が沈む効果が確認された。これにより、透明電極素子を用いたタッチパネルを表示面上に設けた表示装置において、表示特性が向上する効果も見られた。
【0189】
さらに追加の実施例として、実施例5〜8で得たランダムパターンを有する銀ナノワイヤー層(透明導電膜)を、有色化合物を溶解した溶液に浸漬し、銀ナノワイヤー表面に有色化合物を吸着させる処理を行った。この処理により、実施例5〜8の銀ナノワイヤー層(透明導電膜)で構成された電極領域と絶縁領域ともに、反射L値がより小さくなることが確認された。その結果、金属ナノワイヤーに有色化合物を吸着させた透明導電膜を用い、これにランダムパターンを形成した透明電極素子をタッチパネルとして用いることにより、表示面上にタッチパネルを設けながらも表示パネルにおいての表示特性を維持可能であることが確認された。
【0190】
尚、本技術は以下のような構成も取ることができる。
【0191】
(1)
基材と、
透明導電膜を用いて前記基材上に形成された電極領域と、
前記基材上における前記電極領域に隣接して設けられた領域であって、透明導電膜を用いて構成された幅100μm以上のパターンを含む複数のランダムな島パターンが互いに離間して配置された絶縁領域とを有する
透明電極素子。
【0192】
(2)
前記複数の島パターンの幅は、前記絶縁領域の最小領域幅よりも小さい
(1)記載の透明電極素子。
【0193】
(3)
前記電極領域は、前記透明導電膜に複数の孔パターンが互いに離間して設けられている
(1)または(2)記載の透明電極素子。
【0194】
(4)
前記電極領域の孔パターンと前記絶縁領域の島パターンとは、異なるランダムパターンである
(3)記載の透明電極素子。
【0195】
(5)
前記電極領域の孔パターンと前記絶縁領域の島パターンとは、条件を変更して個別に生成させたランダムパターンに基づいている
(3)または(4)記載の透明電極素子。
【0196】
(6)
前記電極領域の孔パターンと前記絶縁領域の島パターンとは、同時に生成したランダムパターンを個別に縮小したパターンである
(3)または(4)記載の透明電極素子。
【0197】
(7)
前記絶縁領域には、前記透明導電膜を分割する溝パターンがランダムな方向に延設して配置され、当該溝パターン間に前記島パターンが設けられている
(1)〜(6)の何れかに記載の透明電極素子。
【0198】
(8)
前記電極領域には、前記透明導電膜によって構成された複数の帯状パターンがランダムな方向に延設して配置され、当該帯状パターン間に前記孔パターンが設けられている
(3)記載の透明電極素子。
【0199】
(9)
前記基材は、透明材料で構成されている
(1)〜(8)の何れかに記載の透明電極素子。
【0200】
(10)
基材と、
透明導電膜を用いて前記基材上に形成された電極領域と、
前記基材上における前記電極領域に隣接して設けられた領域であって、透明導電膜を用いて構成された幅100μm以上のパターンを含む複数のランダムな島パターンが互いに離間して配置された絶縁領域とを有する
情報入力装置。
【0201】
(11)
前記基材は、透明材料で構成され、
前記電極領域と前記絶縁領域とは、前記基材の両面側に設けられ、
前記基材の両面側に設けられた前記電極領域は、当該基材を介して交差して配置されている
(10)記載の情報入力装置。
【0202】
(12)
前記基材に対する前記透明導電膜の被覆率を当該基板の両面で加算した値の領域毎の差が、30%以下である
(11)記載の情報入力装置。
【0203】
(13)
表示パネルと、
前記表示パネルの表示面側に透明導電膜を用いて形成された電極領域と、
前記表示パネルの表示面側における前記電極領域に隣接して設けられた領域であって、透明導電膜を用いて構成された幅100μm以上のパターンを含む複数のランダムな島パターンが互いに離間して配置された絶縁領域とを有する
電子機器。
【符号の説明】
【0204】
1,1-1,1-2,1-3,1-4,1a,1b,1c,1d,1x,1y:透明電極素子、
3:情報入力装置、
4:表示装置(電子機器)、
11:基材、
13:透明導電膜、
15,15-4,15x1,15x2,…,15y1,15y2,…:電極領域、
15a:孔パターン、
15a’:孔パターン(境界L付近)
17,17-3:絶縁領域、
17a,17a-3:島パターン、
17a’:島パターン(境界L付近)
17b:溝パターン、
43:表示パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
透明導電膜を用いて前記基材上に形成された電極領域と、
前記基材上における前記電極領域に隣接して設けられた領域であって、透明導電膜を用いて構成された幅100μm以上のパターンを含む複数のランダムな島パターンが互いに離間して配置された絶縁領域とを有する
透明電極素子。
【請求項2】
前記複数の島パターンの幅は、前記絶縁領域の最小領域幅よりも小さい
請求項1記載の透明電極素子。
【請求項3】
前記電極領域は、前記透明導電膜に複数の孔パターンが互いに離間して設けられている
請求項1記載の透明電極素子。
【請求項4】
前記電極領域の孔パターンと前記絶縁領域の島パターンとは、異なるランダムパターンである
請求項3記載の透明電極素子。
【請求項5】
前記電極領域の孔パターンと前記絶縁領域の島パターンとは、条件を変更して個別に生成させたランダムパターンに基づいている
請求項4記載の透明電極素子。
【請求項6】
前記電極領域の孔パターンと前記絶縁領域の島パターンとは、同時に生成したランダムパターンを個別に縮小したパターンである
請求項4記載の透明電極素子。
【請求項7】
前記絶縁領域には、前記透明導電膜を分割する溝パターンがランダムな方向に延設して配置され、当該溝パターン間に前記島パターンが設けられている
請求項1記載の透明電極素子。
【請求項8】
前記電極領域には、前記透明導電膜によって構成された複数の帯状パターンがランダムな方向に延設して配置され、当該帯状パターン間に前記孔パターンが設けられている
請求項3記載の透明電極素子。
【請求項9】
前記基材は、透明材料で構成されている
請求項1記載の透明電極素子。
【請求項10】
基材と、
透明導電膜を用いて前記基材上に形成された電極領域と、
前記基材上における前記電極領域に隣接して設けられた領域であって、透明導電膜を用いて構成された幅100μm以上のパターンを含む複数のランダムな島パターンが互いに離間して配置された絶縁領域とを有する
情報入力装置。
【請求項11】
前記基材は、透明材料で構成され、
前記電極領域と前記絶縁領域とは、前記基材の両面側に設けられ、
前記基材の両面側に設けられた前記電極領域は、当該基材を介して交差して配置されている
請求項10記載の情報入力装置。
【請求項12】
前記基材に対する前記透明導電膜の被覆率を当該基材の両面で加算した値の領域毎の差が、30%以下である
請求項11記載の情報入力装置。
【請求項13】
表示パネルと、
前記表示パネルの表示面側に透明導電膜を用いて形成された電極領域と、
前記表示パネルの表示面側における前記電極領域に隣接して設けられた領域であって、透明導電膜を用いて構成された幅100μm以上のパターンを含む複数のランダムな島パターンが互いに離間して配置された絶縁領域とを有する
電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図4】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−12016(P2013−12016A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143978(P2011−143978)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000108410)デクセリアルズ株式会社 (595)
【Fターム(参考)】