説明

透析用固形製剤およびその製造方法

【課題】輸送中の物理的な衝撃で、固形製剤が粉化することによる微粉の発生が抑えられ、かつ各成分の含量均一性に富み、保存安定性に優れた透析用固形製剤を提供する。
【解決手段】流動層造粒装置内で、塩化ナトリウム粒子に精製水を噴霧して造粒することによって、塩化ナトリウム粒子同士が結合した微粉発生の抑制された核粒子を製造する工程を含む透析用固形製剤の製造方法およびその製造方法によって得られる透析用固形製剤、さらには複数の塩化ナトリウム粒子同士を結合してできた核粒子を有し、かつ該核粒子表面を覆う電解質を含有するコーティング層を有する造粒物を含有する固形製剤を含む透析用固形製剤で解決しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液透析等の血液浄化療法に使用する重炭酸含有透析液の成分を含む透析用固形製剤およびその製造方法に関する。さらに詳細には、2剤型透析用固形製剤(重曹を含む製剤、ならびに重曹以外の電解質、酸およびブドウ糖を含む製剤の2つの製剤からなる)または3剤型透析用固形製剤(重曹を含む製剤、重曹以外の電解質および酸を含む製剤、ならびにブドウ糖を含む製剤の3つの製剤からなる)において、重曹以外の電解質、酸およびブドウ糖を含む製剤(2剤型の場合)、あるいは重曹以外の電解質および酸を含む製剤(3剤型の場合)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
腎機能が低下した患者に血液透析を実施する場合、患者の血液は人工腎臓中で浄化される。この人工腎臓の内部においては透析液が灌流し、透析膜を介して、該血液中の老廃物を透析液側に移行させることが一般に行われる。この透析液としては、酢酸透析液が広く使用されてきたが、近年、透析中の不快症状を激減させる重曹を使用するものに代替されてきている。
【0003】
重曹を含む透析液は、通常、電解質成分(例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸ナトリウム)およびpH調整剤(例えば酢酸)を含む製剤(以下、固形製剤Aという)と、重曹を含む製剤(以下、固形製剤Bという)の2種類の透析用製剤から調製される。これらの透析用製剤にはブドウ糖などの糖成分が含まれる場合、または糖成分を含む別の製剤を混合する場合もある。
【0004】
従来、固形製剤Aおよび固形製剤Bは所定濃度に調製された濃厚液の状態で販売され、これらを使用者が水で希釈して使用してきた。しかし、一回の透析で患者一人当たり約300Lの透析液を必要とするため、多数の患者に透析治療を行う場合、多量の濃厚液を使用時まで保管しておくスペースが必要であり、重い濃厚液を運搬し、水で希釈する作業が必要であった。そこで、透析液を調製する使用者の負担を軽減し、かつ、省スペース化を計るため、粉末製剤化した固形製剤Bを使用する場合が多くなってきた。それに伴い、固形製剤Aも粉末化され、固形製剤Aおよび固形製剤Bからなる2剤型透析用固形製剤や、さらにブドウ糖粉末を別剤とした3剤型透析用固形製剤が既に市販されている。さらに、近年固形製剤Aにブドウ糖を添加した2剤型透析用固形製剤も開発されている。
【0005】
固形製剤Aを粉末化した透析用固形製剤としては、撹拌造粒装置中の塩化ナトリウムに塩化カリウム、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムの懸濁液を入れ、撹拌混合し、得られた混合物に酢酸ナトリウムを混合し、60℃以上の温度で混合して得られる固形製剤Aが紹介されている(特許文献1参照)。また流動層造粒装置中で流動している塩化ナトリウム粒子に、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムの水溶液を噴霧し、造粒を行い固形製剤Aを得て、これに液体酸を配合して混合する流動層造粒法も開示されている(特許文献2参照)
【0006】
ブドウ糖を固形製剤Aに含有した2剤型透析用固形製剤としては、重曹以外の電解質、ブドウ糖および液体酸よりなる粉末状の固形製剤Aと、重曹のみ、重曹および酢酸ナトリウム、あるいはこれらにさらにブドウ糖含む組成よりなる粉末状の固形製剤Bとの二つの製剤よりなる透析用固形製剤が開示されている(特許文献3および4参照)。
これらの透析用製剤のうち、固形製剤Aは、重曹以外の電解質およびブドウ糖を撹拌混合機で撹拌混合し、ついで粉砕機で粉砕した後、再び混合し、乾式造粒機で造粒した後、液体酸を配合して混合する乾式法や、塩化ナトリウムおよびブドウ糖を撹拌混合機で予め混合し、これを流動層造粒機内で流動させ、これに塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムの水溶液を噴霧し、造粒して固形製剤Aを得て、これに液体酸を配合して混合する流動層造粒法のいずれかで製造されるものである。
【0007】
しかし、上記した製造方法で得られた透析用剤は、例えば乾式造粒法で得られた造粒物は粒度分布が広く、粉塵が発生しやすく、装置の摩耗による異物混入、あるいは装置の構造が開放型であるときに起こる異物または雑菌の混入などにより造粒物が汚染されやすく、さらに、成分均一性の良好なものが得られにくい。また、攪拌造粒機で得られた造粒物は輸送時において摩耗により被覆層が剥離して粉化するおそれがあり、粉化により生じた微粉は酸性で透析液調製時に飛散して大変劣悪な作業環境を引き起こす原因の一つとなるため、医療現場において大きな問題となっている。
また、塩化ナトリウム粒子に流動層造粒機中で他の電解質成分を噴霧させて造粒する方法は、製造開始時に微粉の塩化ナトリウムが飛散し、製品の回収率が低下したり、製造時の機械上部のバグフィルタに飛散した塩化ナトリウムが詰まり、結果として風量が出ず、生産効率を悪化させるといった問題が生じていた。また、製造開始時に発生する微粉を抑えるために、電解質水溶液のスプレー速度を上げると、乾燥が追いつかず、塩化ナトリウム粒子が過度の水分及び電解質の結合力によって凝集または造粒機缶体内の壁面に付着し、結果としてやはり製品の回収率の低下や、生産効率の悪化が生じたり、均一な顆粒状造粒物が得られない等の問題も生じていた。
【0008】
【特許文献1】特開平6−178802号公報
【特許文献2】特開平2−311418号公報
【特許文献3】特開平3−38527号公報
【特許文献4】特開平2−311419号公報
【特許文献5】特開2001−327597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、輸送中の物理的な衝撃で、固形製剤が粉化することによる微粉の発生が抑えられ、かつ各成分の含量均一性に富み、保存安定性に優れた透析用固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、流動層造粒装置内で、塩化ナトリウム粒子に精製水を噴霧して造粒することによって、塩化ナトリウム粒子同士が結合した微粉発生の抑制された核粒子を製造する工程(工程(1))を含む透析用固形製剤の製造方法によって、輸送中の物理的な衝撃による粉化が抑えられ、かつ各成分の含量均一性に富み、保存安定性に優れた透析用固形製剤を提供できることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)工程(1):流動層造粒装置内で、塩化ナトリウム粒子に精製水を噴霧して造粒することによって、塩化ナトリウム粒子同士が結合した微粉発生の抑制された核粒子を製造する工程
を含む透析用固形製剤の製造方法、
(2)さらに、
工程(2):流動層造粒装置内で、前記核粒子に透析に必要な電解質を含む水溶液を噴霧して造粒する工程
を含む、上記(1)記載の製造方法、
(3)電解質が塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムおよび有機酸塩からなる群から選ばれる一種以上である、上記(2)記載の製造方法、
(4)有機酸塩が、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸マグネシウム、ピルビン酸ナトリウム、ピルビン酸カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の有機酸塩である、上記(3)記載の製造方法、
(5)さらに、
工程(3):工程(2)で得られた造粒物にpH調整剤を混合する工程
を含む、上記(1)記載の製造方法、
(6)pH調整剤が有機酸である、上記(5)記載の製造方法、
(7)有機酸が、酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、アスコルビン酸、オキザロ酢酸、グルコン酸、イソクエン酸、リンゴ酸およびピルビン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の有機酸である、上記(6)記載の製造方法。
(8)工程(3)において、pH調整剤に加えて、さらにブドウ糖を混合する、上記(5)記載の製造方法、
(9)複数の塩化ナトリウム粒子同士を結合してできた核粒子を有し、かつ該核粒子表面を覆う電解質を含有するコーティング層を有する造粒物を含有する固形製剤Aを含む透析用固形製剤、
(10)前記造粒物が、塩化ナトリウム粒子に精製水を噴霧して造粒することによって、塩化ナトリウム粒子同士が結合した微粉発生の抑制された核粒子を製造し、次いで該核粒子に透析に必要な電解質を含有する水溶液を噴霧して造粒することによって、核粒子同士が結合した造粒物を製造することにより得られる、上記(9)記載の透析用固形製剤、
(11)固形製剤A中に含まれる造粒物の平均粒子径が、約100〜1500μmである、上記(9)記載の透析用固形製剤、
(12)コーティング層に有機酸を含有する、上記(9)記載の透析用固形製剤、
(13)さらに、重曹を含む固形製剤Bを含有する、上記(9)記載の透析用固形製剤、および
(14)さらに、ブドウ糖を含有する、上記(9)記載の透析用固形製剤
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による透析用固形製剤は、運送時や保管時、水に溶解させる際の運搬時等の物理的な衝撃による微粉の発生が抑えられるため、医療機関等での透析液調整の作業環境を衛生的に保つことができる。また、本発明の透析用固形製剤は、透析用製剤として必須の含量均一性や保存安定性にも優れた製剤である。
さらに、本発明の製造方法においては、製造時の塩化ナトリウムの微粉の飛散を抑えることができるため、製品の回収率及び製造効率を飛躍的に向上させることができ、製造器具のメンテナンス負担も軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明である透析用固形製剤の製造方法は、流動層造粒装置内で、塩化ナトリウム粒子に精製水を噴霧して造粒することによって、塩化ナトリウム粒子同士が結合した微粉発生の抑制された核粒子を製造する工程(工程(1))を含む製造方法である。
工程(1)では、始めに塩化ナトリウム粒子に精製水を噴霧して、造粒を行うことにより、塩化ナトリウム粒子(原料塩化ナトリウムに含まれる微粉を含む)同士が複数個結合してできた核粒子を製造する。このような核粒子の製造工程によって、原料塩化ナトリウムに含まれる微粉が排除され、製造工程および輸送時における微紛の発生が抑制される。
塩化ナトリウム粒子への精製水の噴霧(スプレー)量と速度は、製造のスケールによって異なるので一概に数字で限定できるものではなはないが、塩化ナトリウムが結合する程度の量であれば良く、塩化ナトリウムが適度な流動を保つ限りに置いて、噴霧速度は、高めることができるし、また、微粉を抑えることが目的であるため、塩化ナトリウムの微粉がバグフィルターに詰まるような噴霧速度はあまりに遅すぎるので、ある程度の噴霧速度は必要である。
原料として用いる塩化ナトリウム粒子の平均粒子径は、通常、約60〜1000μmであり、好ましくは約90〜800μm、さらに好ましくは約100〜500μmである。
【0014】
本発明の製造方法は、さらに、流動層造粒装置内で、前記核粒子に透析に必要な電解質を含む水溶液を噴霧して造粒する工程(工程(2))を含むことが好ましい。
本発明で用いる電解質は、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムおよび有機酸塩からなる群から選ばれた一種以上の電解質であることが好ましい。有機酸塩は、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸二水素ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸マグネシウム、ピルビン酸ナトリウム、ピルビン酸カリウムからなる群から選ばれた一種以上であることが好ましく、特に、酢酸ナトリウムおよび/またはクエン酸ナトリウムを使用することが好ましい。
【0015】
本発明の製造方法においては、さらに、工程(2)で得られた造粒物にpH調整剤を混合する工程(工程(3))を含んでいてもよい。混合は、種々公知の医療用製剤の製造に用いられる混合方法を用いることができる。pH調整剤は、固体または液体のいずれでもよく、液体のpH調整剤を用いる場合は、混合工程において、pH調整剤の一部または全部は、工程(2)で得られた造粒物の表面に付着する。
本発明で用いるpH調整剤は有機酸であることが好ましい。有機酸としては、酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、アスコルビン酸、オキザロ酢酸、グルコン酸、イソクエン酸、リンゴ酸およびピルビン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の有機酸を用いることが好ましく、特に、酢酸および/またはクエン酸を使用することが好ましい。
工程(3)においては、pH調整剤に加えて、さらにブドウ糖を混合してもよい。通常、ブドウ糖の固体粒子を種々公知の混合機内に加えて混合が行われる。
【0016】
本発明の透析用固形製剤の製造方法としては、一般的な流動層造粒法を用いることができ、流動層造粒法、転動流動層造粒法等があげられる。好ましくは、転動流動層造粒法が用いられる。また、流動層造粒装置としては、種々公知の流動層造粒機、転動流動層造粒機等を用いることができ、好ましくは、転動流動層造粒機が用いられる。
【0017】
本発明において、塩化ナトリウム粒子同士が結合してできた核粒子とは、始めに塩化ナトリウム粒子に精製水を噴霧して、造粒を行うことにより、塩化ナトリウム粒子(原料塩化ナトリウムに含まれる微粉を含む)同士が複数個結合してできた粒子である。このような核粒子の製造工程によって、原料塩化ナトリウムに含まれる微粉が排除され、製造工程および輸送時における微紛の発生が抑制される。
【0018】
核粒子表面を覆う電解質を含有するコーティング層とは、核粒子を実質的に覆う電解質成分からなる層であり、該コーティング層に含有する電解質の含量均一性が得られる程度のコーティング層である。
【0019】
さらに上記コーティング層には、有機酸が含まれていてもよい。有機酸としては、酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、アスコルビン酸、オキサロ酢酸、グルコン酸、イソクエン酸、リンゴ酸およびピルビン酸からなる群から選ばれた一種以上の酸が好ましく、特に、酢酸および/またはクエン酸が好ましい。
【0020】
本発明の透析用固形製剤においては、塩化ナトリウム粒子同士が複数個結合してできた核粒子以外に、塩化ナトリウム粒子同士が結合していない単独の状態の(原料のままの)塩化ナトリウム粒子を含むことは、発明の効果を損ねない範囲であれば何ら問題はない。
また、本発明の透析用固形製剤は、塩化ナトリウム粒子同士が結合してできた核粒子を有し、かつ該核粒子表面を覆う電解質を含有するコーティング層とを有する造粒物が、さらに複数個結合した結合造粒物を含んでいてもよい。造粒物同士が複数個結合した結合造粒物の形態としては、まず塩化ナトリウム同士が結合してできた核粒子が単独で表面をコーティング層に覆われ、次いで該コーティング層を介して該粒子同士が結合する形態や、核粒子同士が最初に複数個結合し、その上から該コーティング層が形成される形態、それらの組合せの形態(まず、核粒子同士が結合し、さらにそれらがコーティング層を介して結合する形態など)等があげられる。
また、最後まで単独で存在する塩化ナトリウム粒子や核粒子が存在する可能性もあるが、少量であれば、本発明の目的である微紛の発生が抑制された透析用固形製剤を形成する上で問題はなく、そのような製剤も本発明に含まれる。
【0021】
また、本発明の透析用固形製剤は、上記のようにして得られた造粒物に、必要に応じてさらに有機酸及び/またはブドウ糖を混合した製剤であってもよい。有機酸としては、酢酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、アスコルビン酸、オキザロ酢酸、グルコン酸、イソクエン酸、リンゴ酸およびピルビン酸からなる群から選ばれた一種以上の酸が好ましく、特に、酢酸および/またはクエン酸を使用することが好ましい。
【0022】
本発明の透析用固形製剤のうち固形製剤A中に含まれる造粒物の平均粒子径は、核粒子として用いる粒子の大きさに依存するが、約100〜1500μmに造粒されたものが好ましく、含量均一性の観点から、さらに好ましくは約100〜800μmであり、さらに好ましくは、約180〜800μmの大きさである。
【0023】
本発明の透析用固形製剤は、電解質成分と必要に応じてpH調整剤(例えば酢酸)等を含む固形製剤(固形製剤A)を含んでおり、通常、さらに重曹を含む固形製剤(固形製剤B)の2種類の固形製剤から構成されている。また、透析用固形製剤は、固形製剤Aおよび/又は固形製剤B中にブドウ糖などの糖成分が含まれている場合や、あるいは糖成分を含む別の製剤を含んでいる場合もある。
【0024】
上記透析用固形製剤の好ましい電解質組成は、透析液として使用するのに適切な濃度に希釈した場合に下記の表の範囲になるように、適宜決定できる。
Na 120〜160 mEq/L
0.5〜3.0 mEq/L
Ca 1.5〜4.5 mEq/L
Mg 0〜2.0 mEq/L
Cl 90〜135 mEq/L
HCO 20〜 35 mEq/L
CHCOO 0〜 15 mEq/L
クエン酸イオン 0〜 20 mEq/L
ブドウ糖 0〜2.5 g/L
【0025】
以下に実施例をあげて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下に挙げる実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0026】
転動流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)中で流動している平均粒子径約300μmの塩化ナトリウム(大塚化学製)1969.8重量部に吸気温度80℃、ローター回転数300rpmの条件下で精製水61重量部を約5分間噴霧し造粒させ、続いて、塩化カリウム47.0重量部、塩化カルシウム69.5重量部、塩化マグネシウム32.0重量部及び無水酢酸ナトリウム206.7重量部を、精製水848.6重量部に完全に溶解した水溶液を噴霧し乾燥させ、平均粒子径約500μmを有する顆粒状造粒物を得た。得られた造粒物に酢酸42.0重量部を添加し、V型混合機で約10分間混合し、透析用固形製剤(固形製剤A)を得た。
【実施例2】
【0027】
転動流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)中で流動している平均粒子径約100μmの塩化ナトリウム(大塚化学製)1969.8重量部に吸気温度80℃、ローター回転数300rpmの条件下で精製水を約5分間噴霧し造粒させ、続いて、塩化カリウム47.0重量部、塩化カルシウム69.5重量部、塩化マグネシウム32.0重量部及び無水酢酸ナトリウム206.7重量部を、精製水848.6重量部に完全に溶解した水溶液を噴霧し乾燥させ、平均粒子径約200μmを有する顆粒状造粒物を得た。得られた造粒物に酢酸42.0重量部を添加し、V型混合機で約10分間混合し、透析用固形製剤(固形製剤A)を得た。
【実施例3】
【0028】
実施例1と同様にして、第一の造粒物を得た(いずれも平均粒子径約500μm)。
これとは別に、25w/w%のブドウ糖水溶液1000gを調製した。平均粒子径180μmのブドウ糖粉末(サンエイ糖化製)1000gを転動流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)に入れ、流動させたブドウ糖粉末の粒子に吸気温度60℃、ローター回転数300rpmの条件下で前記ブドウ糖水溶液500gを噴霧し、平均粒子径が450μmのブドウ糖造粒物(第二の造粒物)を得た。第一の造粒物およびブドウ糖造粒物315重量部に酢酸42.0重量部を添加し、V型混合機で約10分間混合し、透析用固形製剤(固形製剤A)を得た。
【実施例4】
【0029】
平均粒子径180μmのブドウ糖粉末(サンエイ糖化製)を篩にかけ、約500μm〜850μmの粒子径のブドウ糖粉末を調製した。このブドウ糖315重量部をもちいた以外は、実施例3と同様に混合を行い、透析用固形製剤(固形製剤A)を得た。
【0030】
(比較例1)
塩化ナトリウム1969.8重量部に、塩化カリウム47.0重量部、塩化カルシウム69.5重量部、塩化マグネシウム32.0重量部及び無水酢酸ナトリウム206.7重量部および酢酸42.0重量部を添加し、V型混合機で約20分間混合し、透析用固形製剤(固形製剤A)を得た。
【0031】
(比較例2)
塩化ナトリウム1969.8重量部に、塩化カリウム47.0重量部、塩化カルシウム69.5重量部、塩化マグネシウム32.0重量部及び無水酢酸ナトリウム206.7重量部を添加し、V型混合機で約10分間混合した混合物を乾式造粒機(ローラーコンパクター、フロイント産業製)により造粒した。得られた造粒物に酢酸42.0重量部を添加し、V型混合機で約10分間混合し、透析用固形製剤(固形製剤A)を得た。
【0032】
(比較例3)
塩化ナトリウム1969.8重量部を、二重缶式攪拌混合機(VG-25、パウレック製)に入れ、攪拌しながら加熱し内容物温度を68℃とした。次に、塩化カリウム47.0重量部、更に塩化カルシウム69.5重量部、塩化マグネシウム32.0重量部を入れて加熱混合した。この内容物に精製水50重量部を入れ、更に、無水酢酸ナトリウム206.7重量部を添加して加熱混合する。約1時間混合後、内容物が完全に乾燥して、さらさらした顆粒状混合物が得られた。この顆粒状混合物に酢酸42.0重量部を添加し、約10分間混合後、透析用固形製剤(固形製剤A)を得た。
【0033】
(比較例4)
転動流動層造粒機(MP-01、パウレック社製)中で流動している平均粒子径約300μmの塩化ナトリウム1969.8重量部に吸気温度80℃、ローター回転数300rpmの条件下で、塩化カリウム47.0重量部、塩化カルシウム69.5重量部、塩化マグネシウム32.0重量部及び無水酢酸ナトリウム206.7重量部を、精製水848.6重量部に完全に溶解した水溶液を噴霧し乾燥させ、平均粒子径約500μmを有する顆粒状造粒物を得た。得られた造粒物に酢酸42.0重量部を添加し、V型混合機で約10分間混合し、透析用固形製剤(固形製剤A)を得た。
【0034】
(試験例1)
実施例1および比較例4の酢酸添加前の顆粒状造粒物の回収率を表1に示した。
表1より、明らかなように、実施例1の回収率は、比較例4と比べて約3%向上し、99%以上という非常に高い回収率を得ることができた。
【0035】
【表1】

【0036】
(試験例2)
上記実施例1〜4、比較例1及び2で得られた各試料から、任意に10gを3回採取し、それぞれを水に溶解させて50mLの水溶液を調製した。該水溶液中の各成分含量を測定し、理論値に対する測定した含量の平均値の割合(%)及びCV(%)(変動係数)を表1に示す。
なお、ナトリウム及びカリウムは炎光光度計で、カルシウム、マグネシウムはイオンクロマトグラフ、酢酸はHPLC-UVで、塩素は硝酸銀滴定法で、ブドウ糖は旋光度計によりそれぞれ測定した。各成分含量の測定値を表2に示す。
表2より、すべての実施例が比較例に比べて、各成分の含量均一性が良好であった。
【0037】
【表2】

(mean±CV%)
【0038】
(試験例3)
実施例1、比較例3の各サンプル300gをとり、V型混合機にて約20分間回転させた後、その濁度を測定した。本試験の濁度測定は、まず、四塩化炭素20mL(液体)に各サンプル20gを添加し、振とう機で5分間、振とうした後、1分間静置してから上清を採取し、直ちに上清の吸光度を波長660nmで紫外可視吸光度測定法により測定し、その測定値とあらかじめ測定しておいた濁度標準液(関東化学社製)の吸光度を用いて、下記式により算出した。
(式)濁度=(A/A)×(1000/20)×0.1
A :サンプルの吸光度
:濁度標準液の吸光度
表3に、測定した濁度を示す。
【0039】
【表3】

【0040】
表3より、比較例では、回転前のサンプルでも約21度の濁度が認められ、回転後には57.38度に変化する。すなわち、元々微粉が多く、さらに微粉の発生も大きい。一方、実施例では、回転前は、0.22度であることからほとんど微粉が含まれておらず、回転後も2.32度でほとんど濁度に変化は認めなかった。すなわち、微粉の発生が著しく抑えられた。
これにより、本発明の透析用固形製剤は、従来の製剤よりも微紛の発生が著しく抑えられた製剤であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の透析用固形製剤は、使用時までは医療機関等において保管され、運搬時や透析治療実施前に水に溶解する際にも微紛が発生することなく、重炭酸含有透析液の成分として医療用に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の塩化ナトリウム粒子同士を結合してできた核粒子を有し、かつ該核粒子表面を覆う電解質を含有するコーティング層を有する造粒物を含有する固形製剤Aを含む透析用固形製剤。
【請求項2】
前記造粒物が、塩化ナトリウム粒子に精製水を噴霧して造粒することによって、塩化ナトリウム粒子同士が結合した微粉発生の抑制された核粒子を製造し、次いで該核粒子に透析に必要な電解質を含有する水溶液を噴霧して造粒することによって、核粒子同士が結合した造粒物を製造することにより得られる、請求項1記載の透析用固形製剤。
【請求項3】
固形製剤A中に含まれる造粒物の平均粒子径が、約100〜1500μmである、請求項1記載の透析用固形製剤。
【請求項4】
コーティング層に有機酸を含有する、請求項1記載の透析用固形製剤。
【請求項5】
さらに、重曹を含む固形製剤Bを含有する、請求項1記載の透析用固形製剤。
【請求項6】
さらに、ブドウ糖を含有する、請求項1記載の透析用固形製剤。

【公開番号】特開2009−1594(P2009−1594A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−208888(P2008−208888)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【分割の表示】特願2004−134287(P2004−134287)の分割
【原出願日】平成16年4月28日(2004.4.28)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】