説明

透析膜を備えたマイクロプレート

【課題】溶液からのある溶質の取り除き、高分子混合物の分離などを可能にするマイクロプレートを提供する。
【解決手段】マイクロプレートは、第一開口端部と、第二端部と、該第二端部に形成される孔と、そして前記第一端部と前記第二端部との間に延在する側壁とを有する容器を少なくとも一つ有するプレート本体を有して、提供される。そのマイクロプレートは、さらに、前記第二端部に形成された前記孔の少なくとも一部に渡って延在する透析膜を有する。有利に、本発明にとって、マイクロプレートには、溶液(低あるいは高分子量の溶質)からある溶質を取り除くためばかりでなく、高分子混合物の分離をも可能にさせる、透析膜が提供される。したがって、溶液は、それの濃度を変える、脱塩される、および/あるいは構成分子に分けるために、本発明では処理され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロプレートに関し、さらに特に、透析膜を有するマイクロプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロプレートは、この技術分野で知られていて、一般にバイオアッセイのために使われている。マイクロプレートは、シングルウェル、あるいはマルチプルウェルデバイスであり得る。マルチプルウェルプレートは、たくさんの容器を含み得、典型的には24、96、384あるいは1,536個の容器を有している。それら容器は、一般的に茶碗形であり、様々な化学的な流動体および/または生物学的な流動体を収容するために形成されていて、例えば並行した薬剤スクリーニングに関して、並行したバイオアッセイを行うときに役に立つ。マイクロプレートの普通の使用のために、それらプレートの基準となる寸法は、ピック・アンド・プレイス・マシーンで使用するのを容易にするべく作り出されている。
【発明の開示】
【0003】
この文書中に、マイクロプレートは、第一開口端部と、第二端部と、該第二端部に形成される孔と、そして前記第一端部と前記第二端部との間に延在する側壁とを有する容器を少なくとも一つ有するプレート本体を有して、提供される。そのマイクロプレートは、さらに、前記第二端部に形成される前記孔の少なくとも一部に渡って延在する透析膜を有する。有利に、本発明にとって、マイクロプレートには、溶液(低あるいは高分子量の溶質)からある溶質を取り除くためばかりでなく、高分子混合物の分離をも可能にさせる、透析膜が提供される。したがって、溶液は、それの濃度を変える、脱塩される、および/あるいは構成分子に分けるために、本発明では処理されるだろう。
【0004】
当業者によって認識されているように、本発明は、様々な応用例に利用可能であるけれども、それは、例えば、血清タンパク質に対する有望なドラッグ化合物の結合を評価するといった、血清の結合を評価するのに用いられるのが特により適している。
【0005】
前記透析膜は、好ましくは、約10,000ダルトンから約80,000ダルトンの範囲のカットオフ分子量を有し、より好ましくは、約12,000ダルトンから約14,000ダルトンの範囲のカットオフ分子量を有する。
【0006】
本発明のこれらの特徴およびその他の特徴は、後述する詳細な説明および添付図面の検討を通して、より良く理解されるだろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
マイクロプレートは、この文章中に透析膜を有して提供され、参照数字10で概して表される。当業者によって認識されているように、マイクロプレート10は、この技術分野で知られているように、閉じた容器を有するテストマイクロプレート12と共に、マルチウェルインサートとして利用され得る。フィーダートレイ14および蓋16もまた、この技術分野で知られているように、提供される。マイクロプレート10は、また、フィーダートレイ14、あるいは他の器と、直接に一体となって使用されることが可能である。テストマイクロプレート12、フィーダートレイ14、および蓋16は、どれもよく知られた構成であり得る。
【0008】
図を全体的に参照して、マイクロプレート10は、プレート本体18を含み、このプレート本体18はその中に形成されている一つ以上の容器20を有している。各容器20は、第一開口端部22と、第二端部24とを有し、それらを貫いて孔26が形成されている。側壁28は、第一開口端部22と、第二端部24との間に伸びている。側壁28は、概ね管状であるが、様々な断面形状に形成されても良い。孔26が第一開口端部22によって区画形成されている開口部27よりも小さな断面エリアを区画形成するように、側壁28は、第二端部24に向かう方向に細く収束していくように形成されるのが好ましい。
【0009】
プレート本体18は、ピック・アンド・プレイス・マシーンで使用するのを容易にするべく、作り出された基準となる寸法を含む、如何なる一揃いの寸法に形成され得る。例えば、プレート本体18は、Society for Biomolecular Screeningの規格(例えば、規格SBS−1から規格SBS−5)によって定められている寸法に形成されると良い。加えて、容器20は任意の数設けられ得、複数の容器20は如何なる配置(例えば、典型的には24、96、384、あるいは1,536個の容器配列)に提供されて良い。
【0010】
図2から4を参照して、アクセスポート30が容器20の第一開口端部22の各々に隣接して設けられるのが好ましい。図4に最も良く示されているように、アクセスポート30は、プレート本体18の頂部32を貫いて広がっている。頂部32は、第一開口端部22と概ね同じ範囲を占めていて、容器20の境界を定めている。アクセスポート30もまた、それぞれの側壁28の一部を貫いて広がっているのがさらに好ましい。随意的に、フランジ34は、第一開口端部22の各々の、少なくとも一部を囲むと良い。アクセスポート30が設けられていると、フランジ34は、それによって好ましくは不連続にされ、アクセスポート30はフランジ34を通して広がり、開口部27に通じる。
【0011】
透析膜36は、容器20の第二端部24に、形成されている孔26の各々の少なくとも一部に渡って延在している。好ましくは、透析膜36は、約10,000ダルトンから約80,000ダルトンの範囲のカットオフ分子量(molecular weight cut off)を有している。より好ましくは、透析膜36は、約12,000ダルトンから約14,000ダルトンの範囲のカットオフ分子量を有している。透析膜36は、任意の既知の材料から形成され得る。制限しない例として、透析膜36は再生セルロースで形成され得る。
【0012】
透析膜36は、任意の既知の技術を使って、それぞれの第二端部24に関連して支持され得る。制限しない例として、端部キャップ38が設けられ、その各々は、対応する容器20の側壁28の周りに係合して入れ子にする目的で、寸法付けられている管状係合側壁40を有する。係合側壁40は、内側に伸びたリム42を有して末端部をなしていて、そのリム42は、端部キャップ38の一端部に開口部44を区画形成するべく、寸法付けられ且つ形状にされ得る。開口部44は、対応する孔26よりも大きいのが好ましい。透析膜36は、リム42と側壁28との間に配置されていて、リム42の部分は透析膜36の部分と重なり合う。エラストマー系部材46は、透析膜36と側壁28との間に設けられて、介在されているのが好ましい。好ましくは、エラストマー系部材46はO−リングであり、好ましくは、エラストマー系部材46はシリコーンゴムで形成される。
【0013】
図4に示されているように、端部キャップ38が側壁28に対して取り付けられると、透析膜36がそれぞれの第二端部24に関連して支持されるように、透析膜36はリム42と側壁28との間に閉じ込められ、リム42と側壁28とによって支えられる。エラストマー系部材46は、用いられるならば、透析膜36用の正角支持体(conformal backing)を提供する。端部キャップ38は、(粘着性のものを伴うような)接着、(超音波溶接によるような)融合、および/または(締まりばめによるような)機械的固定によることを含む、任意の既知のものを使って、側壁28に取り付けられると良い。
【0014】
マイクロプレート10において使用されている構成部品の全て(例えば、プレート本体18、透析膜36、端部キャップ38、エラストマー系部材46)は、マイクロプレート10のために意図されている、任意の化学的且つ生物学的な試験に適合するのが好ましい。
【0015】
図5を参照して、本発明を用いての典型的な透析手順が、表される。本発明を例証するために、血清タンパク質に対する有望なドラッグ化合物の結合を評価するための透析が議論される。他の用途は、本発明に従って使用に適する。血清の結合を評価するために、関連がある血清タンパク質と、有望なドラッグ化合物とを含む溶液48は、テストマイクロプレート12の閉じた容器50の中へ収容され、緩衝溶液52はマイクロプレート10の容器20の中へ収容される。その後、マイクロプレート10は、テストマイクロプレート12の上に置かれ、マイクロプレート10の容器20は、テストマイクロプレート12の閉じた容器50内に入れ子にされ、透析膜36は溶液48と接触する。そして、透析膜36を通しての透析が、溶液48と緩衝溶液52との間で起こる。溶液48と緩衝溶液52との間のマスバランスを評価するために、プローブ(不図示)が、第一開口端部22を通って、透析膜36の上の緩衝溶液52の中へ挿入され、第二プローブ(不図示)が透析膜36の下の閉じた容器50の中へアクセスポート30を通して挿入され得る。溶液48に起こるドラッグの結合の程度は、評価されることが可能になる。
【0016】
当業者によって理解されているように、透析は、マイクロプレート10の容器20と、テストマイクロプレート12の閉じた容器50との間の一対一対応で起こり得る。かくのごとく、並行した試験は、起こり得る。加えて、透析は、複数の容器20と、共通の器との間で起こり得る。例えば、容器20は、皿、あるいはフィーダートレイ14の中へ案内され、複数の容器20が同じ溶液と通じても良い。通常、マイクロプレート10は、容器20がテストマイクロプレートの閉じた容器50と一対一対応の状態にあるように、プレートインサートとして作用することが想像される。
【0017】
フィーダートレイ14および/または蓋16は、マイクロプレート10の輸送の間、その清浄度を維持するために、使われると良い。また、フィーダートレイ14および/または蓋16は、ピック・アンド・プレイス・マシーン、あるいは他の自動化された装置による操作を容易にするべく、透析処理の間、用いられると良い。
【0018】
様々な変更や変形は、本発明においてなされ得る。付随の請求項に示すように、そのような変更や変形の全ては、本発明の範囲の中にあることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のマイクロプレートを備えて使用可能なアッセンブリの分解斜視図である。
【図2】本発明のマイクロプレートの平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿って切断した断面図である。
【図4】図2の4−4線に沿って切断した部分断面図である。
【図5】テストマイクロプレートの閉じた容器を用いて透析を行っている、本発明のマイクロプレートの容器を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
10 マイクロプレート
12 テストマイクロプレート
14 フィーダートレイ
16 蓋
18 プレート本体
20 容器
22 第一開口端部
24 第二端部
26 孔
28 側壁
30 アクセスポート
32 頂部
34 フランジ
36 透析膜
38 端部キャップ
40 係合側壁
42 リム
44 開口部
46 エラストマー系部材
50 閉じた容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの容器を有するプレート本体であって、その中に形成されている前記容器は第一開口端部と、第二端部と、該第二端部に形成されている孔と、そして前記第一端部と前記第二端部との間に延在する側壁とを有する、プレート本体と、
前記第二端部に形成されている前記孔の少なくとも一部に渡って延在する透析膜と、
を備えることを特徴とするマイクロプレート。
【請求項2】
前記プレート本体は、複数の容器を含んでいることを特徴とする請求項1に記載のマイクロプレート。
【請求項3】
前記透析膜は、約10,000ダルトンから約80,000ダルトンの範囲のカットオフ分子量を有することを特徴とする請求項1に記載のマイクロプレート。
【請求項4】
前記透析膜は、約12,000ダルトンから約14,000ダルトンの範囲のカットオフ分子量を有することを特徴とする請求項3に記載のマイクロプレート。
【請求項5】
前記側壁に取り付けられ、前記透析膜の部分を覆って内側に伸びるリムを有する端部キャップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のマイクロプレート。
【請求項6】
前記透析膜と、前記側壁との間に介在されるエラストマー系部材をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のマイクロプレート。
【請求項7】
前記端部キャップの前記リムは、前記エラストマー系部材と重なり合うことを特徴とする請求項6に記載のマイクロプレート。
【請求項8】
前記プレート本体は、前記容器の境界を少なくとも部分的に定める頂部を含み、
前記第一開口端部は、前記頂部と概ね同じ範囲を占め、
アクセスポートは、前記第一開口端部に隣接する前記頂部を通して広がっていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロプレート。
【請求項9】
前記アクセスポートは、前記側壁の一部を通して広がっていることを特徴とする請求項8に記載のマイクロプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−181567(P2006−181567A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−303155(P2005−303155)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(595117091)ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー (539)
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417−1880, UNITED STATES OF AMERICA
【Fターム(参考)】