説明

透水性構造体並びにそれを用いた汚垂れ受け構造及び洗面台構造

【課題】水滴等が飛び散って放置されても、透水させる事によって、表面に水滴を残留させないようにした新規な水まわりの透水性構造体並びにそれを用いた汚垂れ受け構造及び洗面台構造を提供する。
【解決手段】石英ガラス骨材含有透水性セラミック板と、該透水性セラミック板の下方に設けられた多孔補強板と、該多孔補強板の下方に設けられた水受けプレート部材と、を含み、前記透水性セラミック板及び多孔補強板を水が透過し、該水受けプレート部材によって水受けがされるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透水性セラミックを用いた透水性構造体に関し、特に、不特定多数の人が利用するパブリックスペースの便所や洗面台などに使用できる透水性構造体並びにそれを用いた汚垂れ受け構造及び洗面台構造に関する。
【背景技術】
【0002】
公共的な便所の場合、小便器足元の床に尿が飛び散り、尿石成分等で便器の周囲が変色している。濡れて変色している部分を避けて用を足す為、更に足元周囲が汚れるといった悪循環が繰り返されている。特に入り口に近い小便器がよく利用され汚れやすくなっている。
【0003】
そこで、従来、公共的な便所の小便器足元には、主に磁器質タイルや汚垂れ石と呼ばれる石が敷設されている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。これは、小便器からの小便の飛び跳ねを受ける汚垂れ受けのためであり、フロア材とは別に敷設されている。
【0004】
このような磁器質タイルには吸水性は殆どなく、また、汚垂れ石としては例えば黒御影石などの天然石が一般的であるが、同様に吸水性は殆どなく、汚れがつきにくくかつ掃除がしやすい様にその表面は研磨加工されている。研磨加工した天然石の場合、吸水性は少なく、拭き取るか洗浄されるまでの間、飛び散った尿は放置された状態となる。一方、メンテナンスを軽減する等の事情で、便所の床全面に吸水性の高い石材が採用されたが、約1年で改修された事例がある。排水構造の問題あるいは酸性洗剤使用による変色が主な原因とされている。
【0005】
このような非吸水性材料を用いると、汚垂れ受け材表面に汚水が溜まり、掃除しない限り汚水が残存していることになる。特に、駅、公園や施設といった不特定多数の人が利用するパブリックスペースの便所は利用する人が多いため、このような問題は特に顕著となる。また、最も一般的な天然石素材の汚垂れ石では、素材の色を変更することは難しく、色が単調となり華やかさに欠けるという問題もあった。
【0006】
一方、パブリックスペースの洗面台のカウンター天板には人造大理石などが一般的に使用されているが、上記と同様に吸水性はないのが現状である。こういった洗面台のカウンター天板も、手洗い時の水跳ねにより、洗面ボウル周辺がいつも濡れた状態になる。特に女性の場合は化粧等で洗面台を使用する時間が長く、荷物が置けない状況で無理な姿勢を維持しながら使わなければならない。こちらも水が浸透しない人造大理石等が主な材質である為、拭き取らない限り常に濡れた状態で放置されているという問題があった。
【0007】
また、特許文献3のように、水切板付き流し台なども提案されてはいるが、天板そのものを水切板で構成するというものであり、その構造上、既存の洗面台には適用できず、また水切板を取り外しての清掃などもできないという問題があった。
【特許文献1】特開平8−266449
【特許文献2】特開2004−150248
【特許文献3】特開平5−76427
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑みなされたもので、水滴等が飛び散って放置されても、透水させる事によって、表面に水滴を残留させないようにした新規な水まわりの透水性構造体並びにそれを用いた汚垂れ受け構造及び洗面台構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る水まわりの透水性構造体は、石英ガラス骨材含有透水性セラミック板と、該透水性セラミック板の下方に設けられた多孔補強板と、該多孔補強板の下方に設けられた水受けプレート部材と、を含み、前記透水性セラミック板及び多孔補強板を水が透過し、該水受けプレート部材によって水受けがされるようにしたことを特徴とする。
【0010】
前記透水性セラミック板としては、石英ガラス骨材100重量部に対して焼結バインダー剤を40〜70重量部の混合割合で含み、前記石英ガラス骨材の最大粒径が2mm以下、曲げ強度が4MPa以上(JASS7 M−101に準拠)、及び透水係数が0.01cm/sec以上であるのが好ましい。曲げ強度の上限値については特別の限定はないが、10MPa以下で充分である。また、透水係数の上限値についても特別の限定はないが、0.1cm/sec以下で充分である。
【0011】
一般的に透水性セラミックを得るための焼結バインダーとしては、セメント類や粘土類、微粉ガラスなど数多くの物質が用いられるが、本発明者らは鋭意研究の結果、もっとも単純でかつ所望の物性を得られる組み合わせを発見したものである。前記焼結バインダー剤としては、微粉ガラス、微粉珪石、消石灰、及びペタライトからなる群からなる材料の二種以上であることが好ましい。本発明の透水性セラミックは顔料によって着色された構成とすることもできる。
【0012】
前記透水性セラミック板の製造方法は、石英ガラス骨材100重量部に対して焼結バインダー剤を40〜70重量部の混合割合で混合し、さらに成型助剤を添加した後、この混合物をプレス成型して所要の板状の成型体とし、この成型体を800〜1200℃の温度範囲内で焼成する。前記焼結バインダー剤の混合時に顔料を併せて添加混合し、さらに成型助剤を添加した後、この着色混合物をプレス成型して所要の形状の着色成型体とし、この着色成型体を焼成することによって着色した透水性セラミックを製造することができる。前記透水性セラミック板を顔料で着色する場合、無着色の基盤層(厚みの2/3〜3/4)と着色表面層(厚みの1/3〜1/4)の2層構造とすることもできる。この2層構造の製造方法は、基盤層を成型した後、着色表面層を基盤層の上に成型するが、両層ともに配合は同じとし、着色表面層に顔料を付加するようにすればよい。
【0013】
前記透水性セラミック板は、骨材に石英ガラスを使用しているため、石英ガラスのもつ耐酸性、耐アルカリ性をそのまま維持でき、薬品などを使用しても退色や磨耗がないという利点がある。
【0014】
更に、石英ガラスを骨材として使用することにより、白色度を高く維持できるため着色も容易に行えるという利点がある。着色は混合時に所望の顔料を適量混ぜることにより、容易に発色が可能であり、意匠性にも優れた透水性セラミック板を提供可能である。
【0015】
石英ガラス骨材は、石英ガラス製造メーカーから排出される廃材を有効利用することができる。石英ガラスには天然石英ガラスと合成石英ガラスとがあるが、本発明にはどちらを使用しても全く問題ない。
【0016】
石英ガラス骨材は、骨材となる石英ガラスを粉砕機にて粉砕し、最大粒径が2mm以下となるよう分級する。粉砕機にて粉砕された石英ガラスは最大径を2mm以下となるように調整すると粒径が100ミクロン〜2mmの間にその95重量パーセントが入るようになる。更に1mm〜2mmの粒径のものは40〜60重量パーセントの中に入るようになる。
【0017】
一般的に、透水性セラミックの場合、透水性を確保するためには骨材の最大粒径を大きくする必要があり、最大粒径を大きくすると焼結バインダー剤との焼結度が弱まり、強度が低下するという、相反する特性があった。本発明者らは、この相反を克服すべく鋭意研究の結果、特殊な焼結バインダー剤を混合することにより、これら双方の特性を維持できることを発見した。
【0018】
一般的に透水性セラミックを得るための焼結バインダーとしては、セメント類や粘土類、微粉ガラスなど数多くの物質が用いられるが、本発明者らは鋭意研究の結果、もっとも単純でかつ所望の物性を得られる組み合わせを発見したものである。本発明に用いられる石英ガラス骨材含有透水性セラミック板に使われる焼結バインダー剤としては、ぺタライト、微粉ガラス、微粉珪石、及び消石灰からなる群からなる材料の二種以上を用いればよいが、特にこれらの焼結バインダー剤の材料を適切に調合することにより、石英ガラス骨材との最適な焼結状態を生み出す焼結バインダー剤が得られることが分かった。透水性を確保し、かつ強度も確保できる焼結バインダー剤の配合比は、焼結バインダー全体を100重量部としたとき、微粉ガラス30〜50重量部、微粉珪石10〜15重量部、消石灰10〜15重量部及びぺタライト20〜50重量部が最適な焼結状態を発現する。成型助剤は焼結前に成型を行う際にその成型体の形状を維持するために使用される。材料としては、メチルセルロースの他、カルボキシメチルセルロース、澱粉、水ガラスなどがあるが、この成型助剤としてはメチルセルロースを用いればよい。この成型助剤は石英ガラス骨材100重量部に対して5〜15重量部程度添加して使用される。
【0019】
前記した最大粒径が2mm以下に粉砕された石英ガラス骨材100重量部に対して、微粉ガラス、微粉珪石、消石灰、及びペタライトからなる焼結バインダー剤40〜70重量部を混合し、成型助剤としてメチルセルロースを添加した後、所要の形状にプレス成型し、800〜1200℃で焼成することにより、曲げ強度が4MPa以上(JASS7 M−101に準拠)、透水係数が0.01cm/sec以上の透水性セラミック板を得ることができる。すなわち、本発明に用いられる石英ガラス骨材含有透水性セラミック板は、骨材として石英ガラスを使用し、焼結バインダー剤として、微粉ガラス、微粉珪石、消石灰、及びペタライトの適切な配合物を用い、これらを石英ガラス骨材100重量部に対して焼結バインダー剤40〜70重量部の範囲で混合し、成型助剤としてメチルセルロースを添加した後、プレス成型して所要の形状にし、800〜1200℃で焼成したものである。
【0020】
更に、本発明者らは、意匠性を高めるために着色についても鋭意研究を行った。着色のし易さは生地材の白色度に大きく依存する。白色度が90を超えるようになると着色も容易になることが一般的に知られている。白色度が高い場合、混合時に酸化物系の市販顔料を適量添加して混合することで、非常に自由度の高い発色性を実現するに至った。これら、着色を施した石英ガラス骨材含有透水性セラミック板も、着色を施さないものと全く同一の曲げ強度、透水係数を保持しており、公共施設などの意匠性が必要とされる場所への応用も期待できるものである。
【0021】
一般の透水性セラミックはその骨材が、廃ガラスや陶磁器、瓦クズ、溶融スラグ、あるいは火成岩であり、これらを出発原料とすると、白色度90以上を得ることは容易ではなく、自由度の高い着色は不可能であったが、石英ガラスを骨材に使用することにより、石英ガラスの無色透明性から白色度を90以上にすることができ自由度の高い着色性をもった石英ガラス骨材含有透水性セラミック板を供給することが可能となったものである。
【0022】
前記透水性セラミック板の板厚としては、厚さ10mm〜25mmのものが好適に使用でき、厚さ15〜20mmのものが最も好適に使用できる。
【0023】
前記多孔補強板としては、多孔質の補強板であれば特別の限定はないが、例えば、複数の孔が開穿された厚肉パンチングメタルが好適に用いられる。厚肉パンチングメタルの材質としては、例えば鉄、アルミ又はステンレスのものが好ましい。また、厚肉パンチングメタルの板厚としては、3mm〜10mmのものが好適に用いられる。厚肉パンチングメタルの孔の開孔率については、例えば、丸形孔の厚肉パンチングメタルの場合には、直径が10mm〜50mmのものがピッチ10mm〜50mm間隔で配列されてなるものを適用することができる。また、孔の形状については特別の限定はなく、例えば、丸形、楕円形、四角や菱形など、いずれの形状のものでもよい。
【0024】
前記水受けプレート部材としては、前記透水性セラミック板及び多孔補強板を透過した水の水受けが可能な水受けプレート部材であれば特別の限定はないが、鉄板、アルミ板又はステンレス板などを用いた水受けプレートが好適に使用できる。さらに、洗面台の天板を刳り貫いたものを水受けプレートとして利用することも可能である。また、前記水受けプレート部材は、排水のために水平面から5〜30度の勾配をつけるようにするのがなお好ましい。
【0025】
また、好ましくは、前記多孔補強板の下面と前記水受けプレート部材の上面とが接触しないように離間せしめられているのが好ましい。前記多孔補強板の下面と前記水受けプレート部材の上面を離間させるにあたっては、例えば、前記多孔補強板下面の長手方向両端部にアルミ製角パイプを取付け、前記水受けプレート部材上面の長手方向両端部に該アルミ製角パイプに対応するように、硬質ゴム等製の帯状部材を取付けることで、前記厚肉パンチングメタルの下面と前記水受けプレート部材の上面とが離間するように構成することが可能である。また、前記帯状部材の大きさや形状などによって、前記水受けプレート部材の水平方向又は前後方向の勾配を適宜調整することが可能である。
【0026】
また、前記多孔補強板の両端部の所定位置に曲げ加工を施して断面コ字状とし、前記水受けプレート部材上面に横架させることで、前記多孔補強板の下面と前記水受けプレート部材の上面とが離間するように構成することもできる。
【0027】
また、前記水受けプレート部材の両端部の所定位置に曲げ加工を施して断面コ字状とし、前記多孔補強板を横架させることで、前記多孔補強板の下面と前記水受けプレート部材の上面とが離間するように構成することも可能である。
【0028】
また、前記透水性構造体は、便所の汚垂れ受け又は洗面台の天板に用いられるのが好適である。ここで、本明細書でいう汚垂れ受けとは、便所の小便器から飛び跳ねる汚水、すなわち汚垂れを受けるものを意味する。従来は一般的には汚垂れ石が便所の汚垂れ受けとして使用されている。
【0029】
前記透水性構造体は、従来の汚垂れ石の代わりに、便所における小便器からの汚垂れを受けるための汚垂れ受けとして好適に使用することができるものである。また、前記透水性構造体を、洗面台の天板に適用すれば、表面に水滴等が残留しないので好適である。
【0030】
本発明に係る便所の汚垂れ受け構造は、前記透水性構造体を用いた便所の小便器の下方に設けられる便所の汚垂れ受け構造であり、小便器の下方のフロアにフロア凹部を設け、該フロア凹部に前記透水性構造体を取付け、該小便器からの汚垂れを前記透水性構造体で受けるようにしたことを特徴とする。
【0031】
本発明に係る洗面台構造は、前記透水性構造体を用いた洗面台構造であり、洗面ボウル用開口部及び該洗面ボウル用開口部の側方に位置する透水性構造体用開口部を有する天板と、該洗面ボウル用開口部に取付けられた洗面ボウルと、該洗面ボウルの上方に設けられた蛇口と、該透水性構造体用開口部に着脱自在に取付けられた前記透水性構造体と、を含むことを特徴とする。
【0032】
前記透水性構造体の前記透水性セラミック板としては、上記したように石英ガラスを骨材とすることで優れた透水性・耐候性・意匠性を有する透水性セラミック板が得られる。この透水性セラミックは、石英ガラス骨材に顔料を混ぜて焼成することで適宜着色することができ、着色した方が意匠性を向上させるという利点がある。
【0033】
前記石英ガラスは、廃棄物となったものを骨材として再利用するのが好ましい。
【0034】
石英ガラスは金属不純物が極めて少ない高純度の材料であるため、無地で焼成した場合の白色度が高く、色付けすると発色性が非常に良いという利点がある。さらに、化学的安定性の高い石英ガラス骨材を主原料とする事で、酸性洗剤による変色を極力防止して、メンテナンスの軽減にも繋がるという利点がある。
【0035】
さらにまた、石英ガラスの熱膨張率はあらゆる工業材料、特に一般のガラス等と比較して極めて小さいため、一般のセラミックス製品と比べて、高温焼成による収縮・歪み等が殆ど無く、大型板の製造が可能であるという利点がある。大型板を用いる事で悪臭の原因となるタイル間の目地を少なくすることも可能となる。
【0036】
また、前記石英ガラス骨材の最大粒径を1mm以下(例えば、骨材となる石英ガラスを粉砕機にて粉砕し、最大粒径が1mm以下となるように分級したものが95重量パーセント含まれるもの)と1mm〜2mm以下(例えば、骨材となる石英ガラスを粉砕機にて粉砕し、最大粒径が1mm〜2mmとなるように分級したものが95重量パーセント含まれるもの)に分級して、これら最大粒径の違う石英ガラス骨材をそれぞれの用途、例えば便所の汚垂れ受け構造又は洗面台構造に適した配合比率で混合するようにしてもよい。
【0037】
石英ガラス骨材を最大粒径1mm以下と1mm〜2mm以下のものに粉砕・分級して、それぞれを用途に適した比率で配合した場合には、前記透水性セラミックの物性が安定化するという利点がある。単に最大粒径2mm以下の石英ガラス骨材を無作為に配合した場合はその都度、粒度分布にバラツキが生じて前記透水性セラミックの物性が不安定な状態になる。
【0038】
分級した石英ガラス骨材のうち、最大粒径1mm以下の細粒骨材と最大粒径1mm〜2mm以下の粗粒骨材の配合比が、例えば配合比7:3のように最大粒径1mm以下の細粒骨材が多い配合は曲げ強度並びに平滑性に優れ、洗面台の天板に適していることから、本発明に係る洗面台構造に好適に用いられる。
【0039】
一方、最大粒径1mm以下の細粒骨材と最大粒径1mm〜2mm以下の粗粒骨材の配合比が、例えば配合比2:8のように最大粒径1mm〜2mm以下の粗粒骨材が多い配合は透水性並びに防滑性に優れることから、便所の汚垂れ受け構造に好適に用いられる。
【0040】
石英ガラスはあらゆるガラスの中で最も化学的安定性の高い材料とされており、水、塩溶液および酸に対して非常に安定している。公共的な便所の場合、ホースで便所全体に水をまき、汚れている所は酸性洗剤等で洗う方法が一般的であるが、石英ガラスはその何れに対しても優れた耐候性を有する。また、一般的に、廃棄物を再利用してタイル等を製造する場合、色付けすると廃棄物自体の色が発色性を阻害して、顔料本来の色が出難いという問題があったが、石英ガラスを骨材としたセラミックの場合は白色度が高く、着色したときの発色性がよいという利点がある。
【発明の効果】
【0041】
水滴等が飛び散って放置されても、透水させる事によって、表面に水滴を残留させないようにした新規な水まわりの透水性構造体並びにそれを用いた汚垂れ受け構造及び洗面台構造を提供するという著大な効果を奏する。
【0042】
また、前記透水性構造体に用いられる透水性セラミック板は高純度で耐候性・意匠性に優れた石英ガラスを骨材としているため、水滴等が飛び散っても表面に残留する事なく透水するという効果を有する。
【0043】
さらに、汚垂れ受け構造の石英ガラス骨材含有透水性セラミック板及び洗面台構造に用いた透水性構造体は、着脱自在な構造であるため、自由に取り外して清掃することが出来る。また、多孔補強板と水受けプレート部材と間に空間を設けた事により、カビの原因となる湿気を防ぎ、適度な洗浄を行うことで耐汚染性に優れるという効果も有する。
【0044】
さらにまた、定期的にトイレの洗浄剤などを使用することにより、衛生面でさらに強化されるので、防汚・防臭・美観性を保持できるという効果もある。
【0045】
廃棄された石英ガラスを骨材として再利用できるので、環境問題の一助になるという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に本発明の実施の形態を図に基づいて説明するが、これら実施の形態は例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0047】
図1は本発明に係る水まわりの透水性構造体の一つの実施の形態を示す概略分解斜視図、図2は本発明に係る便所の汚垂れ受け構造の一つの実施の形態を示す平面図、図3は図2のIII-III線部分横断面図、図4は図2の側面図、図5は図3の要部拡大図、図6は本発明に係る水まわりの透水性構造体の別の実施の形態を示す概略分解斜視図、図7は本発明に係る洗面台構造の一つの実施の形態を示す平面図、図8は図7のVIII-VIII線部分横断面図、図9は図7の側面図、図10は図9の要部拡大図である。
【0048】
図1において、符号10Aは本発明に係る水まわりの透水性構造体の一つの実施の形態を示す。透水性構造体10Aは、石英ガラス骨材含有透水性セラミック板12A(図示例では厚み20mmのものを2分割とした)と、該透水性セラミック板12Aの下方に設けられた多孔補強板14Aと、該多孔補強板14Aの下方に設けられた断面コ字状の水受けプレート部材18A(図示例ではステンレス板)と、を含み、前記透水性セラミック板12A及び多孔補強板14Aを水が透過し、該水受けプレート部材18Aによって水受けがされるように構成されている。図示例では多孔補強板14Aとして複数の孔16Aが開穿された厚肉パンチングメタル(厚み5.0mm)を用いた。複数の孔16Aとしては、孔16Aの直径が15.7mmのものを20.0mmピッチで開穿したものを用いた。
【0049】
図示例では、透水性セラミック板12Aの石英ガラス骨材の最大粒径1mm以下の細粒骨材と最大粒径1mm〜2mm以下の粗粒骨材の配合比は、配合比2:8であり、最大粒径1mm〜2mm以下の粗粒骨材が多い配合とした。
【0050】
前記透水性セラミック板12Aは、石英ガラス骨材100重量部に対して焼結バインダー剤を40〜70重量部の混合割合で混合し、さらに成型助剤を添加した後、この混合物をプレス成型して所要の形状の成型体とし、この成型体を800〜1200℃の温度範囲内で焼成して製造したものである。前記焼結バインダー剤の混合時に市販の顔料を併せて混合添加し、さらに成型助剤を添加した後、この着色混合物をプレス成型して所要の形状の着色成型体とし、この着色成型体を焼成することによって着色した。
【0051】
また、前記多孔補強板14A下面の長手方向両端部には、アルミ製角パイプ20a,20bが取付けられており、前記水受けプレート部材18A上面の長手方向両端部には該アルミ製角パイプ20a,20bに対応するように硬質ゴム製帯状部材22a,22bが取付けられており、多孔補強板14Aの下面と前記水受けプレート部材18Aの上面とが接触しないように離間せしめられている。これにより多孔補強板14Aの下面と前記水受けプレート部材18Aの上面との間に空間ができ、透水性セラミック板12A及び多孔補強板14Aを透過した汚水は、水受けプレート部材18Aへと落ちて前方に設けられた排水溝40から排水される。また、多孔補強板14Aの下面と前記水受けプレート部材18Aの上面との間に空間を設けることは湿気対策にもなるという利点がある。さらには、金属製の水受けプレート部材18Aの側壁が目地の役目をするので、従来のように目地に染み込んだ汚水が悪臭の原因となるという問題も解消される利点がある。
【0052】
次に、図2〜図5に、本発明に係る便所の汚垂れ受け構造の一つの実施の形態を示す。
【0053】
図2〜図5において、符号30は本発明に係る便所の汚垂れ受け構造の一つの実施の形態を示す。汚垂れ受け構造30は、前記透水性構造体10Aを用いた便所の小便器の下方に設けられる便所の汚垂れ受け構造であり、小便器32の下方のフロアFにフロア凹部38を設け、該フロア凹部38に前記透水性構造体10Aを取付け、該小便器32からの汚垂れを前記透水性構造体10Aで受けるように構成されている。
【0054】
尚、図示例では、前記フロア凹部38に取付けられた前記透水性構造体10Aは、断面コ字状に形成された水受けプレート部材18Aが該フロア凹部38に固定されるとともに、帯状部材22a,22bも該水受けプレート部材18Aに固定されている。前記多孔補強板14Aは着脱自在に水受けプレート部材18A上に横架されており、石英ガラス骨材含有透水性セラミック板12Aは多孔補強板14A上に着脱自在に載置されている。
【0055】
34はコンクリートであり、該コンクリート34の上面には床材36が設けられている。フロアFはコンクリート34と床材36とからなる。図2によく示される如く、前記透水性構造体10Aは、小便器32から飛び跳ねる汚垂れを受けるためのものであるので、小便器32の下方に設けられている。なお、小便器32の下方とは、即ち小便器32の下方周辺を含む。
【0056】
図2及び図3に示されるように、前記透水性構造体10Aは、コンクリート34及び床材36からなるフロアFにフロア凹部38を設け、床材36と前記透水性セラミック板12Aとが面一となるように、該フロア凹部38に嵌入されている。また、図5によく示される如く、水受けプレート部材18Aには勾配(図示例では15度)が設けられており、汚水などが排水されやすいようになっている。透水性セラミック板12A及び多孔補強板14Aを透過した汚水は、水受けプレート部材18Aへと落ちて排水溝40から排水される。また、水受けプレート部材18A及び帯状部材22a,22bは固定されているが、多孔補強板14A及び石英ガラス骨材含有透水性セラミック板12Aは着脱自在に設けられているので、自由に取り外して清掃することが出来る。
【0057】
次に、図6〜図10に、本発明に係る水まわりの透水性構造体の別の実施の形態を示す。なお、図6〜図10において、図1〜図5における部材と同一又は類似部材は、同一の符号を用いて説明する。
【0058】
図6において、符号は10Bは本発明に係る水まわりの透水性構造体の別の実施の形態を示す。透水性構造体10Bは、石英ガラス骨材含有透水性セラミック板12B(厚み15mm)と、該透水性セラミック板12Bの下方に設けられた多孔補強板14Bと、該多孔補強板14Bの下方に設けられた水受けプレート部材18B(図示例では人造大理石製天板を刳り貫いたもの)と、を含み、前記透水性セラミック板12B及び多孔補強板14Bを水が透過し、該水受けプレート部材18Bによって水受けがされるように構成されている。図示例では多孔補強板14Bとして複数の孔16Bが開穿された厚肉パンチングメタル(厚み3.0mm)を用いた。複数の孔16Bとしては、孔16Bの直径が12.4mmのものをピッチ20.0mm間隔で開穿したものを用いた。
【0059】
図示例では、透水性セラミック板12Bの石英ガラス骨材の最大粒径1mm以下の細粒骨材と最大粒径1mm〜2mm以下の粗粒骨材の配合比は、配合比7:3であり、最大粒径1mm以下の細粒骨材が多い配合とした。
【0060】
前記透水性セラミック板12Bは、前記透水性セラミック板12Aと同様にして、石英ガラス骨材100重量部に対して焼結バインダー剤を40〜70重量部の混合割合で混合し、さらに成型助剤を添加した後、この混合物をプレス成型して所要の形状の成型体とし、この成型体を800〜1200℃の温度範囲内で焼成して製造したものである。前記焼結バインダー剤の混合時に市販の顔料を併せて混合添加し、さらに成型助剤を添加した後、この着色混合物をプレス成型して所要の形状の着色成型体とし、この着色成型体を焼成することによって着色した。
【0061】
また、前記多孔補強板14Bの両端部の所定位置に曲げ加工を施して断面コ字状とし、硬質ゴム製の帯状部材42a,42bが前記多孔補強板14Bの両端部に仮留めされている。そして、図示例では勾配をつけるために互いに異なる高さの硬質ゴム製の帯状部材42a,42bを使用しており、帯状部材42bの方が高いものを使用している。したがって、前記水受けプレート部材18B上面に横架させることで、前記多孔補強板14Bの下面と前記水受けプレート部材18Bの上面とが離間し、かつ排水パイプ44が接続されている長手方向端部の方が低くなるように勾配がつけられている。
【0062】
水受けプレート部材18Bの後端部には排水パイプ44が接続されており、排水パイプ44に向かって水受けプレート部材18Bには勾配(図示例では10度)がつけられている。すなわち、図示例では、水受けプレート部材18Bの後端部が前端部に比べて低くなるように、かつ排水パイプ44が接続されている長手方向端部の方が低くなるように勾配がつけられている。尚、水受けプレート部材18Bの後端部側面に仕切板を設けて、漏水を防止する方法も考えられる。このようにして、透水性セラミック板12B及び多孔補強板14Bを透過した汚水は、水受けプレート部材18Bへと落ちて排水パイプ44から排水される。
【0063】
次に、図7〜図10に、本発明に係る洗面台構造の一つの実施の形態を示す。
【0064】
図7〜図10において、符号50は本発明に係る洗面台構造の一つの実施の形態を示す。洗面台構造50は、前記透水性構造体10Bを天板に取付けた洗面台構造であり、洗面ボウル用開口部52及び該洗面ボウル用開口部52の側方に位置する透水性構造体用開口部54を有する天板56と、該洗面ボウル用開口部52に取付けられた洗面ボウル58と、該洗面ボウル58の上方に設けられた蛇口60と、該透水性構造体用開口部54に取付けられた透水性構造体10Bと、を含むように構成されている。
【0065】
56は天板であり、図示例では、天板56は天板基材63(図示例では木材)と天板基材63の表面に貼付された表面仕上げ材64(図示例ではポリウレタン)とからなる。天板の材質としては、人造大理石が最も一般的であるが、木材の他、大理石などの天然石を使用したものなど、いずれの天板も使用できる。また、図示例では、既存の洗面台の天板を刳り貫いて水受けプレート部材18Bとした。
【0066】
図7〜図10に示されるように、前記透水性構造体10Bは、表面仕上げ材64が貼付された天板56に透水性構造体用開口部54を開口し、表面仕上げ材64と前記透水性セラミック板12Bとが面一となるように、該透水性構造体用開口部54に嵌入されている。図示例では、水受けプレート部材18Bとして、天板56を刳り貫いたものを再利用しているため、省資源化にもつながるという利点がある。また、前記透水性構造体10Bは透水性構造体用開口部54に着脱自在に取付けられているので、自由に取り外して清掃することが出来る。
【0067】
このようにして、前記透水性セラミック板12B及び多孔補強板14Bを透過した汚水は、水受けプレート部材18Bへと落ちて排水パイプ44通って、洗面ボウル58に接続された主配水管66から排水される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る水まわりの透水性構造体の一つの実施の形態を示す概略分解斜視図である。
【図2】本発明に係る便所の汚垂れ受け構造の一つの実施の形態を示す平面図である。
【図3】図2のIII-III線部分横断面図である。
【図4】図2の側面図である。
【図5】図3の要部拡大図である。
【図6】本発明に係る水まわりの透水性構造体の別の実施の形態を示す概略分解斜視図である。
【図7】本発明に係る洗面台構造の一つの実施の形態を示す平面図である。
【図8】図7のVIII-VIII線部分横断面図である。
【図9】図7の側面図である。
【図10】図9の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0069】
10A,10B:透水性構造体、12A,12B:石英ガラス骨材含有透水性セラミック板、14A,14B:多孔補強板、16A,16B:孔、18A,18B:水受けプレート部材、20a,20b:アルミ製角パイプ、22a,22b,42a,42b:帯状部材、30:便所の汚垂れ受け構造、32:小便器、34:コンクリート、36:床材、38:フロア凹部、40:排水溝、44:排水パイプ、50:洗面台構造、52:洗面ボウル用開口部、54:透水性構造体用開口部、56:天板、58:洗面ボウル、60:蛇口、63:天板基材、64:表面仕上げ材、66:主配水管、F:フロア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス骨材含有透水性セラミック板と、
該透水性セラミック板の下方に設けられた多孔補強板と、
該多孔補強板の下方に設けられた水受けプレート部材と、
を含み、
前記透水性セラミック板及び多孔補強板を水が透過し、該水受けプレート部材によって水受けがされるようにしたことを特徴とする水まわりの透水性構造体。
【請求項2】
前記透水性構造体が、便所の汚垂れ受け又は洗面台の天板に用いられることを特徴とする請求項1記載の透水性構造体。
【請求項3】
請求項1記載の透水性構造体を用いた便所の小便器の下方に設けられる便所の汚垂れ受け構造であり、小便器の下方のフロアにフロア凹部を設け、該フロア凹部に前記透水性構造体を取付け、該小便器からの汚垂れを前記透水性構造体で受けるようにしたことを特徴とする便所の汚垂れ受け構造。
【請求項4】
請求項1記載の透水性構造体を用いた洗面台構造であり、
洗面ボウル用開口部及び該洗面ボウル用開口部の側方に位置する透水性構造体用開口部を有する天板と、
該洗面ボウル用開口部に取付けられた洗面ボウルと、
該洗面ボウルの上方に設けられた蛇口と、
該透水性構造体用開口部に着脱自在に取付けられた前記透水性構造体と、
を含むことを特徴とする洗面台構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−148475(P2009−148475A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330302(P2007−330302)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(507395762)有限会社ウェーブアルファ研究所 (2)
【出願人】(000190138)信越石英株式会社 (183)
【Fターム(参考)】