説明

透視用テーブル付CT装置

【課題】実装基板などの板状の被検体の透視撮影や、多数の小さな電子部品等を一度で行う透視撮影を簡便に行うことができるCT装置を提供する。
【解決手段】水平な載置面4aを有する透視用テーブル4と、透視用テーブル4をX,Y,Z方向に移動させるテーブル駆動機構6,7と、透視用テーブル4に固定され、CT撮影用被検体10を保持し、Y方向に平行なCT回転軸に対しCT回転させるCT用回転機構5と、透視撮影時およびCT撮影時に所望する撮影視野になるようテーブル駆動機構6,7を制御した後、CT用回転機構5を制御してCT回転を行わせる機構制御手段8と、透視撮影時は透視用被検体9の透過像を取込み表示し、CT撮影時はCT回転中にX線検出器が出力した複数のCT撮影用被検体10の透過像を取込み再構成処理してCT撮影用被検体10の断面像を作成し表示するデータ処理手段8とを有するCT装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の断面像を撮影するコンピュータ断層撮影装置(以下CT(Computed Tomography)装置と記載する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
回転のみを行う所謂RR(Rotate Rotate)方式(第三世代方式)のCT装置は、放射線源から発生する放射線(X線)を被検体に向けて照射し、被検体を放射線の光軸の方向に対し交差する回転軸で放射線に対して相対的に回転させ、一回転中の所定回転位置ごとに被検体から透過してくる放射線を1次元あるいは2次元の複数検出チャンネルを有する放射線検出器で検出し、この検出器出力から被検体の断面像ないし3次元データを得る(断層撮影する)ものである。
【0003】
図9に従来例として、特許文献1に記載されているCT装置の構成を示す(図9(a)は平面図、図9(b)は正面図)。X線管101と、ここから発生するコーン状のX線ビーム102を2次元の分解能で検出するX線検出器103が対向して配置され、このX線ビーム102に入るようにテーブル104上に載置された被検体105の透過像(透過データ)を得るようになっている。
【0004】
テーブル104はXY機構106上に配置され、XY機構106は回転・昇降機構107上に配置されている。被検体105の断面像を撮影する場合は、テーブル104を回転軸RAに対し回転・昇降機構107により1回転させながら多数の方向について透過像を得る(スキャンと言う)。この多数の透過像を制御処理部108で処理して被検体105の断面像(1枚ないし多数枚)を得る。
【0005】
ここで、XY機構106は、回転軸RAに対しテーブル104を回転軸RAと直交する面内で移動させ、被検体105の着目部が回転軸RA上になるように位置調整するために用いられる。
【0006】
さらに、回転軸RAおよび検出器103はシフト機構109によりX線管101に近づけあるいは遠ざけることができ、目的に応じて撮影倍率(=FDD/FCD)を変更できるようになっている。
【0007】
図9に示す断面像視野(あるいはスキャン領域と称する)110は1回転の間に常に測定されるX線ビーム102に包含される領域と定義される。断面像視野110は回転軸RAを軸とする略円筒状の領域であり、無理なく断面像を再構成できる領域である。
【0008】
図9に示す従来のCT装置は、CT撮影(断面像撮影)に用いるほか、透過像の観察を行う透視撮影にも使用することが可能である。透視撮影の場合は、テーブル104に載置した被検体105の透過像を撮影し、撮影した透過像を制御処理部108の表示部に表示する。XY機構106と回転昇降機構107とシフト機構109を用いて、被検体105の所望する位置を所望する撮影倍率で撮影して透過像を表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−310943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した、従来のCT装置は、工業製品の故障解析や品質管理用の検査装置として用いられているが、その主な検査対象は、電子部品や電子部品が実装された実装基板である。検査は、短時間で検査できる透視撮影と詳細な検査ができるCT撮影を使い分けて行われる。まず、透視撮影で概略検査を行い、そのうちで詳細が知りたい部品や部分をCT撮影する、という検査方法がよく用いられる。
【0011】
従来のCT装置で、実装基板を透視撮影する場合は、基板をテーブル104の上に立てて固定するため、基板の種類ごとに治具を用意する必要がある。また、IC等の電子部品の多数を一度に透視撮影する場合、板状の治具の上に小さな電子部品を多数固定する必要があり、簡便さに欠けるという問題がある。
【0012】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、その目的は、実装基板などの板状の被検体の透視撮影や、多数の小さな電子部品等を一度で行う透視撮影を簡便に行うことができるCT装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、水平な載置面を有する透視用テーブルと、前記透視用テーブルに載置された透視用被検体にX線ビームを照射するX線源と、前記透視用被検体を透過した前記X線ビームを検出し透過像として出力する2次元のX線検出器と、前記透視用テーブルを水平面内で互いに直交するX方向とY方向及び垂直なZ方向に移動させるテーブル駆動機構と、前記透視用テーブルに固定され、CT撮影用被検体を保持し、前記Y方向に平行なCT回転軸に対しCT回転させるCT用回転手段と、透視撮影時は前記透視用被検体の所望する部分が前記透過像の視野に入るよう前記テーブル駆動機構を制御し、CT撮影時は前記CT撮影用被検体の所望する部分が前記透過像の視野に入るよう前記テーブル駆動機構を制御した後、前記CT用回転手段を制御して前記CT回転を行わせる機構制御手段と、透視撮影時は前記透視用被検体の透過像を取込み表示し、CT撮影時は前記CT回転中に前記X線検出器が出力した複数の前記CT撮影用被検体の透過像を取込み再構成処理して前記CT撮影用被検体の断面像を作成し表示するデータ処理手段とを有することを要旨とする。
【0014】
この構成により、透視用テーブルを用いることで、実装基板などの板状の被検体の透視撮影や、多数の小さな電子部品等を一度で行う透視撮影において、治具などを用いず、また、しっかりした固定をすることなく単純に載置するだけで簡便に透視撮影することができる。
【0015】
また、透視撮影時に視野合わせ操作および撮影倍率合わせ操作に用いるテーブル駆動機構(XYZ)が、そのままCT撮影時にCT回転軸の投影位置のオフセット設定(X)、スキャン領域合わせ操作(Y)、および撮影倍率合わせ操作(Z)に用いることができ、別に専用の機構を持つ必要がない。
【0016】
前記目的を達成するため、請求項2記載の発明は、請求項1に記載のCT装置において、前記透視用テーブルは、前記水平な載置面を有するプレートと前記プレートの周囲に固定された枠体より成り、前記CT用回転手段は前記枠体に固定されることを要旨とする。
【0017】
この構成により、CT用回転手段を透視用テーブルの枠体に固定したので、CT用回転手段をしっかり固定できると共に、透視用テーブルの載置面上に突出する部分を少なくでき、透視用被検体を載置するスペースを広くできる。
【0018】
前記目的を達成するため、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のCT装置において、前記CT用回転手段は、少なくとも1つの保持手段から1つを選択して取り付けることができ、前記選択した保持手段を介して前記CT撮影用被検体を保持することを要旨とする。
【0019】
この構成により、CT用回転手段は着脱できる保持手段を介してCT撮影用被検体を保持するので、保持手段を外した状態で、手元で容易にCT撮影用被検体を保持する作業ができる。さらに、透視撮影時に保持手段を外した状態にでき、透視用被検体を載置するスペースを広くできる。
【0020】
前記目的を達成するため、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、前記透視用テーブル上に配置され、前記載置面に平行に少なくとも1つのフィルタ板を1つのフィルタ回転軸の回りに独立して回転可能に保持するフィルタ切換手段を有し、前記CT撮影用被検体を透過する前記X線ビームを遮るように任意枚数の前記フィルタ板を回転して挿入できることを要旨とする。
【0021】
この構成により、使わないフィルタ板は重ねて退避しておき、使う任意枚数のフィルタ板を180°未満の回転をして挿入することで、従来の、重ねることなく複数フィルタを円板に固定しこれを回転させる機構、よりはるかに少ないスペースで多段階のフィルタ切換えができる。このため、透視用被検体を載置するスペースを広くでき、また、機構的な干渉を避けてより自由な位置設定が可能になる。
【0022】
前記目的を達成するため、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のCT装置において、前記データ処理手段は、前記CT用回転手段により平面状の間隙を有する間隙治具をCT回転させた基準CT回転位置での前記間隙治具の透過像上で前記間隙の投影である第一スライス基準線を求め、さらに前記基準CT回転位置から180°異なるCT回転位置での前記間隙治具の透過像上で前記間隙の投影である第二スライス基準線を求め、前記第一スライス基準線と前記第二スライス基準線を平均して透過像上のスライス基準線を求めて前記再構成処理に用いることを要旨とする。
【0023】
この構成により、間隙治具がCT回転軸に対し垂直から若干ずれていても、CT回転位置0°と180°の透過像を用いてこのずれを補正して、正確にスライス基準線を求めて、再構成処理に用いることができる。
【0024】
前記目的を達成するため、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のCT装置において、前記データ処理手段は、前記CT撮影時に取込んだ複数の前記CT撮影用被検体の透過像から、前記CT回転軸の透過像上の投影位置を求めて、この求めた投影位置を用いて前記CT撮影用被検体の断面像を作成することを要旨とする。
【0025】
この構成により、CT撮影時に取込んだ複数のCT撮影用被検体の透過像自身からCT回転軸の透過像上の投影位置を求めて、これを用いて当該のCT撮影したCT撮影用被検体の再構成処理を行うことができる。従って、CT撮影位置を変更するときCT回転軸の透過像上の投影位置がずれても、特別な治具で較正することなくCT撮影ができる。
【0026】
前記目的を達成するため、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のCT装置において、前記X線源と前記X線検出器のどちらか一方あるいは両方を傾動させることで前記透視用被検体を透過する前記X線ビームの透過方向を垂直ないし傾斜した方向に変化させる傾動機構を有することを要旨とする。
【0027】
この構成により、透視撮影時に、垂直方向から傾斜した傾斜透視をすることができる。
【0028】
前記目的を達成するため、請求項8記載の発明は、請求項7に記載のCT装置において、前記透視用テーブルを垂直な回転軸に対して回転するテーブル回転手段を有することを要旨とする。
【0029】
この構成により、透視撮影時に、透視用被検体に対する傾斜透視の傾斜方位を変更することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、実装基板などの板状の被検体の透視撮影や、多数の小さな電子部品等を一度で行う透視撮影を簡便に行うことができるCT装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)。
【図2】第一の実施形態に係るCT装置の一部の詳細構成を示した模式図(正面図)。
【図3】第一の実施形態の変形例3に係る2種の保持具を示す模式図(正面図)。
【図4】第一の実施形態の変形例4に係るフィルタ切換え機構を示す模式図((a)は平面図、(b)は正面図)。
【図5】第一の実施形態の変形例5に係る間隙治具を示す模式図。
【図6】第一の実施形態の変形例5に係る間隙治具15の透過像とスライス基準線を示す図。
【図7】第一の実施形態の変形例8に係る傾斜透視機能を説明する概念図(正面図)。
【図8】第一の実施形態の変形例9に係る傾斜方位変更機能を説明する概念図(正面図)。
【図9】従来のCT装置の構成を示した模式図((a)は平面図、(b)は正面図)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下図面を参照して、本発明実施形態を説明する。
【0033】
(本発明の第一の実施の形態の構成)
以下、本発明の第一の実施形態の構成について図1、図2を参照して説明する。図1は本発明の第一の実施形態に係るCT装置の構成を示した模式図(正面図)である。
【0034】
CT装置は、X線管1(X線源)と、X線管1から放射されたX線ビーム2を検出するX線検出器3と、このX線管1とX線検出器3の間に配置された透視用テーブル4と、透視用テーブル4上に配置されたCT用回転機構5(CT用回転手段)と、透視用テーブル4を3軸方向に移動させるXY機構(テーブル駆動機構)6およびZ機構(テーブル駆動機構)7と、CT用回転機構5、XY機構6およびZ機構7を制御し、また、X線検出器3の出力を取込んで処理する制御処理部(機構制御手段およびデータ処理手段)8より成る。
【0035】
X線管1はX線焦点Fより垂直方向を中心にX線を放射し、X線検出器3はX線管1の上方に検出面3aをX線管1にむけて配置され、放射されて透視用テーブル4及び被検体(9または10)を透過したX線の一部である角錐状のX線ビーム2を2次元の分解能で検出し、透過像(透過データ)として出力する。(X線はX線ビーム2の外側にも放射される)
【0036】
X線管1は発生するX線ビーム2の焦点Fが1μm程度のマイクロフォーカスX線管を用い、X線検出器3にはX線II(Image Intensifier)とテレビカメラを組み合わせたもの、あるいはX線検出素子を2次元マトリックスで並べたX線フラットパネルディテクタ(FPD)を用いている。X線検出器3は透過像をデジタルデータとして出力するものである。
【0037】
透視用テーブル4は透視用被検体9を載置する水平な載置面4aを有し、さらに、透視用テーブル4にはCT撮影用被検体10を保持して水平なCT回転軸HA(Y方向)に対し回転(CT回転)させるCT用回転機構5が固定されている。
【0038】
XY機構6は透視用テーブル4を水平方向で互いに直交するX方向とY方向に移動させ、Z機構7は透視用テーブル4を垂直なZ方向に移動させる。この移動により、被検体(9または10)の所望する部分が所望する撮影倍率で透過像の視野(X線ビーム2に相当)に入るようにすることができる。ここで、撮影倍率は図1を参照して、透視撮影の場合FDD/FOD、CT撮影の場合FDD/FCDである。(FDD:焦点検出面間距離、FOD:焦点被検体間距離、FCD:焦点CT回転軸間距離)
【0039】
なお、各機構部(CT用回転機構5、XY機構6、Z機構7)には図示してないエンコーダが取付けられており、透視用テーブル4のXY機構6とZ機構7による移動位置X,Y,Z(FOD,FCD)とCT用回転機構5による回転角度ωが読み取られ、それぞれ制御処理部8に送られる。
【0040】
また、X線ビーム2は、被検体9,10と透視用テーブル4とのみ交差して、他のX線吸収の強い機構構成要素とは交差しないようになされている。また、構成要素としてX線管1、X線検出器3、Z機構7等を支持するフレーム、X線を遮蔽する遮蔽箱等があるが図示省略している。
【0041】
図2は第一の実施形態に係るCT装置の一部の詳細構成を示した模式図(正面図)である。
【0042】
図2を参照して、透視用テーブル4は水平な載置面4aを有するプレート4bとこのプレート4bの周囲に固定された補強用の枠体4cより成り、CT用回転機構5はこの枠体4cにネジ止め等で固定される。プレート4bはX線が透過しやすいカーボンやプラスチック等の材料で密度や厚みが均質に作られる。
【0043】
CT用回転機構5は減速ギヤ付のモータ5aと、モータ5aの回転軸部材に差し込んで1本のネジで固定できる保持具(保持手段)5bより成り、保持具5bは洗濯鋏のようにバネで付勢される可動片でCT撮影用被検体10を挟んでCT回転軸HA付近に固定する。モータ5aはCT撮影用被検体10を保持具5bごとCT回転軸HAに対しCT回転させる。なお、CT用回転機構5は、保持具5bを外すと、載置面4a上に突出する部分が少なくなるよう配置される。
【0044】
図1に戻り、制御処理部8は通常のコンピュータで、CPU、メモリ、ディスク、表示部8a、入力部(キーボードやマウス等)8b、機構制御ボード、インターフェース、等より成っている。
【0045】
制御処理部8は、機構制御ボードにより、各機構部(CT用回転機構5、XY機構6、Z機構7)の動作位置の信号(エンコーダパルス等)を受けて各機構部5,6,7を制御して被検体の位置合わせやスキャン(CT撮影走査)等を行わせる他、透過画像の撮影指令信号等をX線検出器3に送る。
【0046】
制御処理部8は、透視撮影時、X線検出器3からの透過像を取込み、表示部8aにリアルタイム表示し、また、記憶や処理をし、記憶した透過像の表示等を行う。また、制御処理部8は、透視撮影時、操作者がリアルタイム表示の透過像を観察しながら行う入力に従って、透視用被検体9の所望する部分が所望する撮影倍率で透過像の視野に入るようXY機構6、Z機構7を制御する。
【0047】
制御処理部8は、CT撮影時、まず、操作者が透視撮影を行ってリアルタイム表示の透過像を観察しながら行う入力に従って、CT撮影用被検体10の所望する部分が所望する撮影倍率で透過像の視野に入るようXY機構6、Z機構7を制御した後、CT撮影開始の指令に従ってCT用回転機構5を制御してCT回転を行わせる。さらに、CT回転(スキャン)中にX線検出器3が出力した複数の透過像を取込み、再構成処理してCT撮影用被検体10の断面像を作成し表示する。
【0048】
また、制御処理部8は、X線管1を制御するX線制御部(不図示)に指令を出し、管電圧、管電流を指定すると共に、X線の放射、停止の指示を行なう。管電圧、管電流は被検体に合わせて変えることができる。
【0049】
図1に示すように、制御処理部8はソフトウエアを読み込んでCPUが機能する機能ブロックとして、機構部6,7により被検体9,10の位置決めを制御する位置決め制御部8c、CT撮影を制御するスキャン制御部8d、と断面像を再構成処理する再構成部8e、等を備えている。
【0050】
(第一の実施の形態の作用)
図1、図2を参照して作用を説明する。
【0051】
透視撮影を行う場合、操作者は実装基板等の透視用被検体9を透視用テーブル4の載置面4aに載置し、X線放射開始の指令を制御処理部8に入力する。制御処理部8はX線を照射開始させるとともに、X線検出器3から透過像を取込み表示部8aにリアルタイム表示する。
【0052】
操作者がリアルタイム表示の透過像を観察しながら透視用被検体9の所望する部分が所望する撮影倍率で透過像の視野に入るよう移動指令を制御処理部8に入力すると、制御処理部8はこの入力に応じてXY機構6、Z機構7を制御する。
【0053】
所望する部分が視野に入ると、操作者は表示器8aに表示される透過像を観察し、必要に応じ積算枚数を指定して画像を記憶させる。制御処理部8は、画像の積算と記憶を行い、また、操作者の指令に従って画像処理や記憶した画像の再表示などを行う。
【0054】
透視用被検体9としてIC等の電子部品の多数を一度に透視撮影する場合、電子部品を透視用テーブル4の載置面4aに直接載置するか、あるいは、X線をよく透過する材料で作られたトレイに並べ、このトレイを透視用テーブル4に載置して、上述したように透視撮影する。
【0055】
CT撮影を行う場合、操作者はまず、CT用回転機構5から保持具5bを取り外し、CT撮影用被検体10を挟んで保持させ、CT撮影用被検体10を挟んだ保持具5bをCT用回転機構5に取り付ける。
【0056】
次に、X線放射開始の指令を制御処理部8に入力すると、制御処理部8はX線を照射開始させるとともに、X線検出器3から透過像を取込み表示部8aにリアルタイム表示する。
【0057】
透視撮影時と同様に、操作者がリアルタイム表示の透過像を観察しながらCT撮影用被検体10の所望する部分が所望する撮影倍率で透過像の視野に入るよう移動指令を制御処理部8に入力すると、制御処理部8はこの入力に応じてXY機構6、Z機構7を制御する。
【0058】
このとき、X移動で透過像上のCT回転軸HAの投影位置を中央に合わせたり(通常スキャン用)、画面端にオフセットしたり(オフセットスキャン用)でき、Y移動でCT回転軸方向のスキャン領域合わせができ、Z移動で撮影倍率合わせができる。
【0059】
所望する部分が視野に入ると、操作者はCT撮影開始の指令を制御処理部8に入力する。制御処理部8は、CT撮影開始の指令に従ってCT用回転機構5を制御してCT回転を行わせ、CT回転(スキャン)中に所定の角度回転する毎にX線検出器3が出力した複数の透過像を取込み、再構成処理してCT撮影用被検体10の断面像を1枚ないし複数枚作成し表示する。
【0060】
ここで、CT回転は通常スキャンの場合360°以上、ハーフスキャンの場合180°+ファン角(X線ビーム2の広がり角度)以上で360°未満の回転を行う。再構成処理は、公知の方法、たとえば、フィルタ補正逆投影法(FBP(Filtered Back Projection)法)で再構成する。また、CT回転軸HAの投影位置を画面端に設定した場合、公知のオフセットスキャン用のFBP法再構成を行う。
【0061】
制御処理部8は、取込んだ複数の透過像と再構成処理した断面像を記憶し、操作者の指令に従って再構成処理のリトライや断面像の画像処理や、画像処理後の画像の記憶や、記憶した画像の再表示などを行う。
【0062】
以上で、透視撮影時やCT撮影時に記憶した画像は、プリンタに転送してハードコピーにしたり、ネットワークを通じて他所へ転送することができる。
【0063】
(第一の実施の形態の効果)
第一の実施形態によれば、透視用テーブル4を用いることで、実装基板などの板状の被検体の透視撮影や、多数の小さな電子部品等を一度で行う透視撮影において、治具などを用いず、また、しっかりした固定をすることなく単純に載置するだけで簡便に透視撮影することができる。
【0064】
また、第一の実施形態によれば、透視撮影時に視野合わせ操作(XY)および撮影倍率合わせ操作(Z)に用いるテーブル駆動機構が、そのままCT撮影時にCT回転軸の投影位置のオフセット設定(X)、スキャン領域合わせ操作(Y)、および撮影倍率合わせ操作(Z)に用いることができ、別に専用の機構を持つ必要がない。
【0065】
また、第一の実施形態によれば、CT用回転機構5を透視用テーブル4の枠体4cに固定したので、CT用回転機構5をしっかり固定できると共に、透視用テーブル4の載置面4a上に突出する部分を少なくでき、透視用被検体9を載置するスペースを広くできる効果がある。
【0066】
また、第一の実施形態によれば、CT用回転機構5は着脱できる保持具5bを介してCT撮影用被検体10を保持するので、保持具5bを外した状態で、手元で容易にCT撮影用被検体10を保持する作業ができる。さらに、透視撮影時に保持具5bを外した状態にでき、透視用被検体9を載置するスペースを広くできる効果がある。
【0067】
また、第一の実施形態によれば、保持具5bのバネで付勢される可動片でCT撮影用被検体10を挟んでCT回転軸HA付近に簡便に固定することができる。
【0068】
(第一の実施の形態の変形)
その他、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形や機能追加して実施することが可能である。以下の変形例は種々組み合わせて適用することもできる。
【0069】
(変形例1)
第一の実施形態で、CT用回転機構5は透視用テーブル4に固定されているが、XY機構6あるいはZ機構7に対し、X,Y,Z方向に移動されるように固定されていれば実質同じである。
【0070】
(変形例2)
第一の実施形態で、CT用回転機構5を透視用テーブル4上で載置面4aから遠い方向に回避する機構を設けることができる。また、CT用回転機構5を透視用テーブル4から着脱可能にしてもよい。これにより、透視撮影時に、CT用回転機構5を回避ないし取外すことで、透視用被検体9を載置するスペースを広くでき、また、機構的な干渉を避けてより自由な位置設定が可能になる。
【0071】
また、透視用テーブル4をXY機構6から着脱可能にし、かつ複数の透視用テーブル4を用意し、CT撮影時、及び通常の透視撮影時はCT用回転機構5の付いた透視用テーブル4を装着し、透過撮影で大きな被検体9を載置する場合や、機構的な干渉を避けてより自由な位置設定をしたい場合は、CT用回転機構5の付いて無い透視用テーブル4を装着するようにしてもよい。この着脱方式は、後述するフィルタ切換機構11やコリメータ等を透視用テーブル4に取付けた場合に、CT用回転機構5とフィルタ切換機構11やコリメータ等を個々に着脱するより、容易に透視用テーブル4全体を着脱できる。
【0072】
(変形例3)
第一の実施形態で、CT用回転機構5は着脱できる保持具5bを有しているが、複数の保持具を用意しておき任意の1つを取付けるようにしてもよい。これによれば、1つの被検体を検査中に次の被検体を保持させる作業を行うことができる。
【0073】
また、被検体に応じ複数種の保持具から1つを選択して用いることができる。
【0074】
図3は第一の実施形態の変形例3に係る2種の保持具を示す模式図(正面図)である。保持具5b’はCT回転軸HAに平行な保持面を持ち、この保持面に両面粘着テープでCT撮影用被検体10を貼りつける。あるいは保持面に被検体を載せた状態で片面粘着テープを巻きつけて固定する。
【0075】
保持具5b’’はCT回転軸HAに垂直な保持面を持ち、この保持面に両面粘着テープでCT撮影用被検体10を貼りつける。あるいは保持面に被検体を載せた状態で片面粘着テープを巻きつけて固定する。
【0076】
(変形例4)
第一の実施形態で、CT撮影時、X線ビーム2にX線フィルタを挿入して切換えるフィルタ切換機構(フィルタ切換手段)11を追加できる。
【0077】
図4は第一の実施形態の変形例4に係るフィルタ切換え機構を示す模式図((a)は平面図、(b)は正面図)である。
【0078】
フィルタ切換機構11は、透視用テーブル4上に配置され、載置面4aに平行に複数のフィルタ板12を載置面4aに垂直な1つのフィルタ回転軸13の回りに独立して回転可能に保持するもので、CT撮影用被検体10を透過するX線ビーム2に対し、遮るように任意枚数のフィルタ板12を手動により回転して挿入または退避できる構成である。
【0079】
フィルタ板12としては、例えば、銅製の厚さ0.5mmの板を4枚用い、それぞれを独立してフィルタ回転軸13の回りに回転させ、ストッパ14aに突き当てた位置(挿入位置)とストッパ14bに突き当てた位置(退避位置)とを切換える。このフィルタ切換機構11によって、操作者は任意枚数のフィルタ板12を回転して挿入することで、X線ビーム2に対するフィルタ厚みを0mmから2mmまで0.5mmステップで5段階切換えることができる。
【0080】
従来のフィルタ切換機構の場合、フィルタ回転軸から同じ距離に0.5mmステップで厚み0mmから2mmまでの5種のフィルタ板を固定した円板を回転することでフィルタ切換えを行っている。これに対し、変形例4のフィルタ切換機構11によれば、使わないフィルタ板は重ねて退避しておき、使う任意枚数のフィルタ板12を180°未満の回転をして挿入することで、従来の、重ねることなく複数フィルタを円板に固定しこれを回転させる機構、よりはるかに少ないスペースで多段階のフィルタ切換えができる。このため、透視用被検体9を載置するスペースを広くでき、また、機構的な干渉を避けてより自由な位置設定が可能になる。
【0081】
なお、変形例4では、銅製の厚さ0.5mmのフィルタ板12を4枚用いたが、材質、厚さ、枚数はこれには限られない。また、全部が同じ厚さでなくても良く、例えば、基準厚さの2のべき乗倍の厚さの組み合せでもよい。この場合、例えば、0.5mm、1mm、2mmの3枚としてもよい。この3枚の組み合わせにより、0mmから0.5mmステップで3.5mmまで8段階切換えでき、少ない枚数で切換え段階数を大きくできる。
【0082】
また、図4では、フィルタ切換機構11は枠体4cに固定されているが、プレート4bに固定してもよい。さらに、フィルタ板12は手動でなくモータ等で回転させて切換えることもできる。
【0083】
(変形例5)
第一の実施形態で、CT撮影に先立って、間隙治具を用いてスライス基準線の較正を行なうことができる。スライス基準線とは透過画像上の線で、CT回転軸HAと直交しX線焦点Fを通る平面がX線検出器3の検出面3aと交差する線に対応する透過画像上の線と定義される。再構成処理はこのスライス基準線を基準として行われる。なお、スライス基準線と平行な線をスライス線と定義する。
【0084】
図5は第一の実施形態の変形例5に係る間隙治具を示す模式図である。間隙治具15は、保持具5b同様、CT用回転機構5のモータ5aの回転軸部材に差し込んで1本のネジで固定できる。間隙治具15はX線を透過しやすい平面状の間隙15aを有し、この間隙15aはCT用回転機構5に取付けたとき、CT回転軸HAに垂直になるように形成されている。
【0085】
スライス基準線の較正について図6を参照して説明する。
【0086】
図6は変形例5に係る間隙治具15の透過像とスライス基準線を示す図である。まず、間隙治具15をモータ5aの回転軸部材に差し込み固定して透視撮影すると、図6(a)に示す透過像が得られる。間隙15aが成す平面からX線焦点Fがずれていると図6(a)のように間隙15aの透過像は明瞭でない。そこで、XY機構6によりCT回転軸(Y)方向に間隙治具15を移動させ間隙15aの平面がX線焦点Fを通過するようにすると図6(b)のように間隙15aの投影が明瞭に現れ、この間隙の投影である直線をスライス基準線16として求める。透過像の横座標をn、縦座標をmとしたとき、スライス基準線は、式
m=a・n+b ………(1)
として得られる。
【0087】
以上は較正の原理であるが、実際は、間隙治具15をモータ5aの回転軸部材に差し込む時、差し込み部分に遊びがあるため、通常、間隙15aはCT回転軸HAに対し垂直から若干ずれるので、このずれを補正するように較正を行なう。ずれを補正した較正は、まず、基準のCT回転位置で上述したように第一のスライス基準線、
m=a1・n+b1 ………(2)
を求める。次に、基準のCT回転位置から180°異なるCT回転位置で同様に第二のスライス基準線、
m=a2・n+b2 ………(3)
を求め、第一のスライス基準線と第二のスライス基準線を平均して再構成処理に用いるスライス基準線を求める。平均は、例えば式(2)、式(3)の係数を、式、
a=(a1+a2)/2 ………(4)
b=(b1+b2)/2 ………(5)
で平均し、この平均した係数を用いて式(1)で表されるスライス基準線を採用し再構成処理に用いる。
【0088】
以上の垂直からのずれを補正したスライス線の補正は、制御処理手段8から見ると以下のように表現できる。
【0089】
制御処理部8は、CT用回転機構5により平面状の間隙15aを有する間隙治具15をCT回転させた基準CT回転位置での間隙治具15の透過像上で間隙15aの投影である第一スライス基準線を求め、さらに基準CT回転位置から180°異なるCT回転位置での間隙治具15の透過像上で間隙15aの投影である第二スライス基準線を求め、第一スライス基準線と第二スライス基準線を平均して透過像上のスライス基準線を求めて再構成処理に用いる。
【0090】
この較正によれば、間隙治具がCT回転軸に対し垂直から若干ずれていても、CT回転位置0°と180°の透過像を用いてこのずれを補正して、正確にスライス基準線を求めて、再構成処理に用いることができる。
【0091】
なお、間隙治具15としては、保持具5bに間隙を形成することで保持具5bを間隙治具15の代用にすることができる。また、間隙治具15をモータ5aの回転軸部材に固定的に取り付け、この間隙治具15を外さずに保持具5bが取付けられるようにしてもよい。
【0092】
(変形例6)
第一の実施形態で、CT撮影時に取込んだ複数のCT撮影用被検体10の透過像から、CT回転軸HAの透過像上の投影位置(回転軸投影位置)を求めることができる。これを回転中心較正と言う。CT撮影用被検体10の断面像は求めた回転軸投影位置を基準として行われる。すなわち、ここではCT撮影時に取込んだ被検体の透過像自身から回転中心を求め、これを用いて当該のCT撮影した被検体の再構成処理を行う。
【0093】
被検体自身の透過像から回転中心較正する方法は、例えば、以下の3つの方法のどれかを用いることができる。
【0094】
<第一の回転中心較正>
透過像のスライス基準線上あるいはそれと平行するスライス線上の投影データを360°分平均した投影データの対称中心を求める回転中心較正を行なう。
【0095】
この回転中心較正は特許第3607285号公報にあるように、「撮影断層面(スライス基準線)に沿った検出器の検出チャネルnと(CT)回転角φとで得られる投影データを、各検出チャンネルnごとに回転角φの360°分を平均して得られる平均投影データの対称中心を求めて回転の中心に対応する中心チャンネルncとする」回転中心較正である。
【0096】
この回転中心較正を用い、スライス基準線上で回転軸投影点を求め、この点を通りスライス基準線に垂直な線がCT回転軸HAの投影位置として求められる。あるいは、スライス基準線に平行な複数のスライス線上でそれぞれ回転軸投影点を求め、これらの点を結んだ直線がCT回転軸HAの投影位置として求められる。<>終了
【0097】
<第二の回転中心較正>
透過像のスライス基準線上あるはそれと平行するスライス線上の投影データが作るサイノグラム上で相関をとって投影データの対称中心を求める回転中心較正を行なう。
【0098】
この回転中心較正は特許第3616928号公報にあるように、「前記被検体の複数の(回転位置でのスライス基準線上の)透過データが作るサイノグラム上で、複数点での透過データと、仮想回転中心を設定することで決まる当該複数点とそれぞれ逆向きX線経路をなす複数点での透過データとの相関をとり、前記仮想回転中心を変更して最も良い前記相関を与える前記仮想回転中心を回転中心位置として求める」回転中心較正である。
【0099】
この回転中心較正を用い、スライス基準線上で回転軸投影点を求め、この点を通りスライス基準線に垂直な線がCT回転軸HAの投影位置として求められる。あるいは、スライス基準線に平行な複数のスライス線上でそれぞれ回転軸投影点を求め、これらの点を結んだ直線がCT回転軸HAの投影位置として求められる。<>終了
【0100】
<第三の回転中心較正>
CT撮影で取込んだ複数の透過像をそれぞれ対数変換して360°分加算した加算透過像の対称中心軸を求める中心較正を行なう。
【0101】
この回転中心較正は特開2005−233760号公報にあるように、「円形トモシンセシス装置において、トモシンセシスの1回転の走査中に得られる複数の透過画像それぞれを減衰指数に相当する投影像に変換し、この複数の投影像を加算した加算投影像がトモシンセシスの回転軸に対し対称であることを利用して、投影像上の回転軸を算出する」回転中心較正である。この回転中心較正は円形トモシンセシス装置(円形ラミノグラフ)だけでなくRR方式のCT装置に対してもそのまま適用できる。この回転中心較正を用い、スライス基準面を知ることなくCT回転軸HAの投影位置を求めることができる。
【0102】
この回転中心較正では、制御処理手段8は、CT撮影時に取込んだ複数のCT撮影用被検体10の透過像をそれぞれ対数変換して減衰指数に相当する像に変換してから加算して加算透過像(平均透過像)を作り、例えば、この加算透過像上で仮想直線を設定しこの仮想直線に対する対称性を評価し、仮想直線を傾斜、移動させたときの最も対象性のよい仮想直線をCT回転軸の透過像上の投影位置として求めて、この求めた投影位置を用いてCT撮影用被検体10の断面像を作成する。
【0103】
この回転中心較正によれば、スライス基準面を知ることなくCT回転軸HAの投影位置を求めることができる。さらに、求めた回転軸投影位置から逆に、これと直交するスライス線の方向を求めることができる。そして画面中央のスライス線をスライス基準線として設定できるので、間隙治具15を用いたスライス基準線の較正(変形例5)が不用となる。<>終了
【0104】
以上で第一ないし第三の回転中心較正を組合わせた回転中心較正も可能である。例えば、まず、第三の回転中心較正で、スライス基準線を求め、次にこのスライス基準線上のデータを用い第一の回転中心較正で、スライス基準線上の回転軸投影点(初期)を求め、さらに第三の回転中心較正で、この回転軸投影点(初期)を中心に仮想回転中心を変化させて相関をとることで、速い処理速度で正確な回転軸投影位置(最終)を求めることができる。また、スライス基準線の較正を行なうことなく回転中心較正が可能となる。
【0105】
(変形例7)
第一の実施形態で、透視用テーブル4に対し、X線管1を下方に、X線検出器3を上方に設置しているが、逆にしても同様な効果をあげることができる。
【0106】
この場合、X線管1は上方から下方に向けて透視用テーブル4上の被検体9,10にX線を放射し、X線検出器3はX線管1に検出面を向けて透視用テーブル4の下方に配置され、被検体9,10を透過したX線を検出する。
【0107】
(変形例8)
第一の実施形態に対し、傾斜透視機能を追加できる。図7は第一の実施形態の変形例8に係る傾斜透視機能を説明する概念図(正面図)である。
【0108】
傾斜透視するCT装置は、第一の実施形態に対し、X線管1とX線検出器3のどちらか一方あるいは両方を傾動させることで透視用被検体9を透過するX線ビーム2の透過方向を垂直ないし傾斜した方向に変化させる傾動機構を追加する。図7(a)はX線検出器3を傾動する場合で、図7(b)はX線管1とX線検出器3を傾動する場合、図7(c)はX線管1を傾動する場合を示す。
【0109】
この傾動は円弧状の旋回でも直線的な移動と首振り運動の合成であっても良い。また、傾動の方位はX方向でもY方向でもよい。
【0110】
また、傾動機能を追加する場合、制御処理部8に対し、傾動した時の視野ずれを計算し、視野および撮影倍率を維持するように透視用テーブルをXYZ移動させる傾動追従機能を持たせることができる。
【0111】
(変形例9)
第一の実施形態に傾斜透視機能を追加したCT装置(変形例8)に対し、さらに傾斜方位変更機能を追加できる。
【0112】
図8は第一の実施形態の変形例9に係る傾斜方位変更機能を説明する概念図(正面図)である。
【0113】
傾斜方位変更をするCT装置は、透視用テーブル4を垂直な透視用回転軸VAに対して回転するテーブル回転手段17を追加する。テーブル回転手段17は、図8(a)のように透視用テーブル4とXY機構6を一緒に回転させてもよいし、図8(b)のようにXY機構6上で透視用テーブル4のみを回転させてもよい。この回転により透視用被検体9を傾斜透視する時、傾斜方位を変更できる。
【0114】
ここで、傾斜方位変更機能を追加する場合、制御処理部8に対し、透視用テーブル4を回転した時の視野ずれを計算し、視野および撮影倍率を維持するように透視用テーブルをXYZ移動させる回転追従機能を持たせることができる。
【0115】
(変形例10)
第一の実施形態に傾斜透視機能と傾斜方位変更機能を追加したCT装置(変形例9)に対し、さらに円形ラミノグラフのラミノ撮影機能を追加できる。
【0116】
ラミノ撮影においては、垂直から傾斜した透視の状態で、被検体を垂直な透視用回転軸VAの回りに回転させながら、この回転の複数の位置でX線検出器3が検出した透視用被検体9の透過像を取込み、この複数の透過像を演算処理して透視用被検体9の断面像を1枚ないし複数枚作成する。
【符号の説明】
【0117】
1…X線管、
2…X線ビーム、
3…X線検出器、3a…検出面、
4…透視用テーブル、4a…載置面、4b…プレート、4c…枠体、
5…CT用回転機構、5a…モータ、5b…保持具、
6…XY機構、
7…Z機構、
8…制御処理部、8a…表示部、8b…入力部、8c…位置決め制御部、8d…スキャン制御部、8e…再構成部、
9…透視用被検体、
10…CT撮影用被検体、
11…フィルタ切換機構、
12…フィルタ板、
13…フィルタ回転軸、
14a,14b…ストッパ、
15…間隙治具、15a…間隙、
16…スライス基準線、
17…テーブル回転手段、
101…X線管、102…X線ビーム、103…X線検出器、104…テーブル、105…被検体、106…XY機構、107…回転・昇降機構、108…制御処理部、109…シフト機構、110…断面像視野

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な載置面を有する透視用テーブルと、
前記透視用テーブルに載置された透視用被検体にX線ビームを照射するX線源と、
前記透視用被検体を透過した前記X線ビームを検出し透過像として出力する2次元のX線検出器と、
前記透視用テーブルを水平面内で互いに直交するX方向とY方向及び垂直なZ方向に移動させるテーブル駆動機構と、
前記透視用テーブルに固定され、CT撮影用被検体を保持し、前記Y方向に平行なCT回転軸に対しCT回転させるCT用回転手段と、
透視撮影時は前記透視用被検体の所望する部分が前記透過像の視野に入るよう前記テーブル駆動機構を制御し、CT撮影時は前記CT撮影用被検体の所望する部分が前記透過像の視野に入るよう前記テーブル駆動機構を制御した後、前記CT用回転手段を制御して前記CT回転を行わせる機構制御手段と、
透視撮影時は前記透視用被検体の透過像を取込み表示し、CT撮影時は前記CT回転中に前記X線検出器が出力した複数の前記CT撮影用被検体の透過像を取込み再構成処理して前記CT撮影用被検体の断面像を作成し表示するデータ処理手段と、
を有することを特徴とするCT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のCT装置において、
前記透視用テーブルは、前記水平な載置面を有するプレートと前記プレートの周囲に固定された枠体より成り、
前記CT用回転手段は前記枠体に固定されることを特徴とするCT装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のCT装置において、
前記CT用回転手段は、少なくとも1つの保持手段から1つを選択して取り付けることができ、前記選択した保持手段を介して前記CT撮影用被検体を保持することを特徴とするCT装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記透視用テーブル上に配置され、前記載置面に平行に少なくとも1つのフィルタ板を1つのフィルタ回転軸の回りに独立して回転可能に保持するフィルタ切換手段を有し、前記CT撮影用被検体を透過する前記X線ビームを遮るように任意枚数の前記フィルタ板を回転して挿入できることを特徴とするCT装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記データ処理手段は、前記CT用回転手段により平面状の間隙を有する間隙治具をCT回転させた基準CT回転位置での前記間隙治具の透過像上で前記間隙の投影である第一スライス基準線を求め、さらに前記基準CT回転位置から180°異なるCT回転位置での前記間隙治具の透過像上で前記間隙の投影である第二スライス基準線を求め、前記第一スライス基準線と前記第二スライス基準線を平均して透過像上のスライス基準線を求めて前記再構成処理に用いることを特徴とするCT装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記データ処理手段は、前記CT撮影時に取込んだ複数の前記CT撮影用被検体の透過像から、前記CT回転軸の透過像上の投影位置を求めて、この求めた投影位置を用いて前記CT撮影用被検体の断面像を作成することを特徴とするCT装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のCT装置において、
前記X線源と前記X線検出器のどちらか一方あるいは両方を傾動させることで前記透視用被検体を透過する前記X線ビームの透過方向を垂直ないし傾斜した方向に変化させる傾動機構を有することを特徴とするCT装置。
【請求項8】
請求項7に記載のCT装置において、
前記透視用テーブルを垂直な回転軸に対して回転するテーブル回転手段を有することを特徴とするCT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−64662(P2011−64662A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236648(P2009−236648)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(391017540)東芝ITコントロールシステム株式会社 (107)
【Fターム(参考)】