説明

通信ケーブル保持体およびそれを備えた通信機器の収容筐体

【課題】光受信機などの通信機器の筐体内で、光ファイバにおける余長部分の収容を効率的に行えるようにすることを課題とする。
【解決手段】光ファイバ保持体20は、光受信機1の筐体10に対し着脱自在に装着され、光ファイバの余長部分を巻き付け保持可能な外周部21と、光ファイバを導入可能な内部空間Sと、内部空間Sに導入された通信ケーブルを、外周部21へ導出可能な連通部26とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器の収容筐体内に引き込まれた通信ケーブルの余長部分を、該筐体内で効率的に納めるのに用いられる通信ケーブル保持体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、通信ケーブルとして光ファイバを使った家庭向けのデータ通信サービスであるFTTH(Fiber To The Home)が一般家庭に普及しつつある。このFTTHにおいては、屋外に敷設された光ファイバが、一般家屋等の屋内または屋外の壁面に設置された光受信機と呼ばれる通信機器に接続される。そして、光ファイバから光受信機を介して伝送された通信データが、家庭内のパソコンやTV等の各機器に伝送される。
【0003】
図15は、カバー部を開いた状態における従来の光受信機の斜視図である。光受信機100は、この筐体101内に、光電変換ユニット102と、図示しない光ファイバを整理・収容するための光ファイバトレイ103とを積層状に収容して構成されている。このうち、光電変換ユニット102は、光ファイバからの光信号を電気信号に変換する変換部であり、図示しないコネクタを介して光ファイバと接続される。また、光電変換ユニット102には、変換された電気信号を出力する図示しない接続端子が設けられており、この接続端子を介して電気信号をTV等の各機器に伝送する。
【0004】
また、光ファイバトレイ103には、光ファイバを、その最小曲げ半径を保障しつつ、巻き取ると共にその余長部分を収容するための収容路104が、その上部に平面的な広がりをもって形成されている。この収容路104は、外壁105と内壁106とによって区画されており、その内部に、余長部分の光ファイバを、周回的に巻き付けて、これを保持しておくことができる。この収容路104の内壁106には、外壁105に向けて突出するファイバ押さえ107が設けられており、このファイバ押さえ107によって、収容路104に巻き入れた光ファイバが当該収容路104から飛び出ることが防止されている(例えば、特許文献1および特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−354884号公報
【特許文献2】特開2004−354885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の光受信機筐体内における、光ファイバの収容構造においては、以下のような問題がある。すなわち、この種の通信機器における光ファイバの収容においては、様々な長さのケーブル余長部分を、前述のような平面的構成の収容路104に、その最小曲げ半径を保障しつつ納めるようにするために、作業者には複雑な巻き方が要求され、その結果、作業性の悪いものとなっていた。また、収容路104が光ファイバの最小曲げ半径を保障する必要性から、光ファイバトレイ103は、必要以上にその平面的サイズを小さくすることはできない。従って、装置筐体を小型化するためには、図15の例のように、光電変換ユニット102などの通信機器と、光ファイバトレイ103とを上下に積層状に配置する必要があり、筐体内に収容する通信機器が増えれば、装置筐体の厚みが増す。これは、光受信機の筐体設計および設置における自由度を奪う。
【0007】
一方で、近年、光ファイバの芯線およびそのコード外径の細径化に伴って、伝送損失の増加や信頼性低下をほとんど発生させないで、その最小曲げ半径をより小さくできる光ファイバ(最小曲げ半径15mmなど)が開発されている。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、曲げ半径のより小さい最新の光ファイバにおける余長部分を、光受信機などの通信機器の筐体内で効率的に巻き取ることができる通信ケーブル保持体およびこの通信ケーブル保持体を備えた通信機器の収容筐体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の通信ケーブル保持体は、中空又は中実の棒状体として構成され、当該棒状体の外周部に通信ケーブルの余長部分を巻き付け保持可能としたことを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の通信ケーブル保持体は、請求項1に記載の通信ケーブル保持体において、前記通信ケーブルを導入可能な内部空間と、前記内部空間に導入された通信ケーブルを、前記外周部へ導出可能な連通部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の通信ケーブル保持体は、請求項1又は2に記載の通信ケーブル保持体において、一対の通信ケーブルを相互に接続するための接続具を固定する接続具固定手段を備えたこと、を特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の通信ケーブル保持体は、請求項3に記載の通信ケーブル保持体において、前記外周部は、前記接続具固定手段に固定された前記接続具に接続される一対の通信ケーブルのうち、一方の通信ケーブルを巻き付け保持可能な第1の巻き付け保持部と、他方の通信ケーブルを巻き付け保持可能な第2の巻き付け保持部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の通信ケーブル保持体は、請求項1から4のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体において、前記外周部は、通信ケーブルの巻き付け軸線方向に沿って延びるケーブル押さえ手段を備え、当該ケーブル押さえ手段と前記外周部との間で、通信ケーブルの余長部分を保持するようにしたこと、を特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の通信ケーブル保持体は、請求項2から5のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体において、前記内部空間に対して通信ケーブルを導入又は導出可能な第2の連通部であって、当該第2の連通部に通される通信ケーブルを挟み込み保持可能としたこと、を特徴とする。
【0015】
また、請求項7に記載の通信ケーブル保持体は、請求項2から6のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体において、前記内部空間に対して所定の通信機器のための電源ケーブルを導入可能な第3の連通部であって、当該第3の連通部に通される電源ケーブルを挟み込み保持可能としたこと、を特徴とする。
【0016】
また、請求項8に記載の通信ケーブル保持体は、請求項2から7のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体において、通信ケーブルの余長部分を巻き付け保持しない第2の外周部を備え、当該第2の外周部の一部を前記外周部から分離して開閉自在とすることにより、前記内部空間の一部を開放自在としたこと、を特徴とする。
【0017】
また、請求項9に記載の通信ケーブル保持体は、請求項4から8のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体において、前記通信ケーブル保持体が筒状をなし、当該筒状の長手方向に沿って、前記第1の巻き付け保持部、前記接続具固定手段、前記第2の巻き付け保持部を、順次配置したこと、を特徴とする。
【0018】
また、請求項10に記載の通信機器の収容筐体は、請求項1から9のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体を、その内部に着脱自在に備えたことを特徴とする。
【0019】
また、請求項11に記載の通信機器の収容筐体は、請求項6又は7及び10に記載の通信機器の収容筐体において、前記通信ケーブル保持体の前記第2の連通部又は前記第3の連通部を、筐体外へ露出させる開口部を備えたこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に記載の本発明によれば、この通信ケーブル保持体を用いて、曲げ半径のより小さい最新の光ファイバのような通信ケーブルにおける余長部分を、光受信機などの通信機器の筐体内で効率的に巻き取ることができるようになる。この場合において、作業者による通信ケーブル保持体に対する通信ケーブルの巻き付け作業は、その余長部分の長さに関わらず、同じように行えるので、極めて作業性が良好である。また、この通信ケーブル保持体を通信機器の収容筐体内で用いることによって、通信ケーブルの余剰部分を収容するための専有面積を小さくできると共に、ここに収容する通信機器の配置および設計の自由度を格段に高めることができる。
【0021】
請求項2に記載の本発明によれば、内部空間に通信ケーブルを導入できるので、通信ケーブルの配線経路を多様化することができ、外周部に巻き付けた通信ケーブルに対して接続された戻りの通信ケーブルを内部空間を介して外部に引き出す等することができる。
【0022】
また、請求項3に記載の本発明によれば、接続具に接続される一対の通信ケーブルのそれぞれを、効率的にこの通信ケーブル保持体に巻き付け保持することができるようになり、通信ケーブルの余長部分をコンパクトに納めることができる。
【0023】
また、請求項4に記載の本発明によれば、接続具に接続される一対の通信ケーブルのそれぞれの巻き付け保持部を備えているため、それらのメンテナンス性が一層高まる。
【0024】
また、請求項5に記載の本発明によれば、このケーブル押さえ手段によって、外周部に巻き付けた通信ケーブルが安定的にここに保持され、従って、この通信ケーブル保持体を設置した通信機器筐体のメンテナンス性が改善される。
【0025】
また、請求項6に記載の本発明によれば、この第2の連通部によって、ここに通される通信ケーブルを挟み込み保持できるので、通信ケーブルの余長部分の巻き付け作業時や通信ケーブルの引き回し作業時における作業性がやり易くなる。
【0026】
また、請求項7に記載の本発明によれば、この第3の連通部によって、通信ケーブル保持体を設置する通信機器筐体内に、所定の通信機器を設置する場合、その電源ケーブルをここを介して導入でき、従って、通信機器筐体側に別途ケーブル用の通路を確保する必要が無くなり、筐体の設計および機器配置の自由度が高まる。
【0027】
また、請求項8に記載の本発明によれば、内部空間の一部を開放自在とする第2の外周部を備えたことによって、外周部に通信ケーブルの余長部分を巻き付けた後でも、作業者は前記内部空間にアクセスすることができ、通信ケーブルの引き回し作業が容易になる。
【0028】
また、請求項9に記載の本発明によれば、一対の通信ケーブルの余長部分をその接続部分において、効率的に巻き付け保持することができるようになり、作業性および装置への収容性が極めて改善する。
【0029】
また、請求項10に記載の本発明によれば、通信機器の収容筐体の内部において、通信ケーブルの余長部分を効率的に収容できると共に、その収容のための作業性が極めて良好になる。
【0030】
また、請求項11に記載の本発明によれば、この開口部によって、通信ケーブル保持体に保持された通信ケーブルの一端はここから直接的に筐体外へ引き出せるようになり、この部分におけるケーブルの引き回しが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る光ファイバ保持体およびそれを備えた通信機器の収容筐体の実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念を説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、各実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0032】
〔I〕実施の形態に共通の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。本発明は、概略的に、通信機器の筐体の内部に引き込まれた通信ケーブルの余長部分を、当該筐体の内部に収容するための構造に関する。ここで、通信機器には、通信ケーブルを収容する必要が生じ得る全ての機器が該当し、具体的には、上述した光受信機や、屋内における光ファイバの終端装置(ONU:Optical Network Unit)が該当する。また、通信ケーブルの具体的構造や名称は任意であり、上述した光ファイバの他、同軸ケーブルを含む通信ケーブルが該当する。以下の実施の形態においては、光受信機に光ファイバを収容する場合について説明する。
【0033】
この収容構造の特徴の一つは、通信機器としての光受信機の収容筐体内に、通信ケーブル保持体を備えたことにある。通信ケーブル保持体は、全体として筒状をなし、その軸線方向に沿って光ファイバを巻き付けて保持できる。通信ケーブル保持体は、光受信機の収容筐体に対し着脱自在に取り付けられ、光ファイバの巻き付け作業時には筐体から取り外すことができる。
【0034】
〔II〕実施の形態の具体的内容
以下に添付の図面を参照して、本実施の形態の具体的内容について詳細に説明する。
【0035】
(光受信機の基本構成)
最初に、光受信機の基本構成を説明する。図1は本実施の形態に係る光受信機のカバー部を開いた状態における斜視図、図2は図1の光受信機のカバー部を取り外した状態における正面図、図3は図1の光受信機の底面図、図4は図1の光受信機において光ファイバ保持体を取り外した状態における斜視図、図5は光受信機における信号の伝送経路を概念的に示す信号系統図である。
【0036】
光受信機1は、FTTHにおいて、一般家屋等の屋内または屋外の壁面に設置され、屋外に敷設された光ファイバ伝送される通信データや映像データを、家庭内のパソコンやTV等の各機器に中継伝送するものであり、その筐体10の内部に、光電変換ユニット30などの通信機器を備えている。ここでは、まず、この光受信機1の機能を示すため、光受信機1における信号の伝送経路について説明する。図5に示すように、概略的には、映像信号および通信信号を伝送するための2芯ケーブル13によって光ファイバOF1およびOF2が、光受信機1に引き込まれ、映像信号用の光ファイバOF1はメカニカルスプライスMS1を、通信信号用の光ファイバOF2は、メカニカルスプライスMS2を介して、それぞれ、他の光ファイバOF3およびOF4に接続される。
【0037】
映像信号を受ける光ファイバOF3は、光電変換ユニット30に接続され、この光電変換ユニット30において映像信号が光信号から電気信号に変換される。この電気信号としての映像信号は、光電変換ユニット30の接続端子31を介して図示しない同軸ケーブルに伝送され、宅内通信機器および映像モニタリング機器に接続される。光電変換ユニット30に対する電源供給は、光受信機1の外部から筐体10内へ電源ケーブル32を引き込むことによって実現される。一方、通信信号伝送用の光ファイバOF4は、光受信機1の筐体10から引き出されて、所定の宅内通信機器に接続される。
【0038】
次に、このような信号伝送を達成するための光受信機1の構成の概要について説明する。光受信機1は、図1〜4に示すように、筐体10の内部に、通信ケーブル保持体としての光ファイバ保持体20、および、光電変換ユニット30を着脱自在に収めて構成されている。このうち、筐体10は、光受信機1の構造体であり、光ファイバ保持体20および光電変換ユニット30を外部から保護する保護手段である。この筐体10は、前面を開放した略箱形状のベース部11と、このベース部11をその開放面側から略覆うカバー部12とを備えて構成されており、カバー部12はベース部11に対して回動自在に軸支されている。ベース部11の底面には、図3および図4で示されるように、光ファイバ保持体20の円筒状の下端を嵌め入れるための開口11a、および光電変換ユニット30の接続端子31を筐体外へ引き出すための一対の開口11bが形成されている。後述するように、開口11aから筐体外へ露出された光ファイバ保持体20の端部を介して、光ファイバおよび電源ケーブル32を光受信機1の筐体10内に引き込むことができ、あるいは、筐体10の内部から外部に光ファイバを引き出すことができる。また、開口11bから引き出された光電変換ユニット30の接続端子31には、同軸ケーブルが接続される。
【0039】
また、図1〜4において、光電変換ユニット30は、光信号を電気信号に変換する光電変換手段である。この光電変換ユニット30は、略直方体状に形成されており、その上部に設けた接続端子33に光コネクタを介して光ファイバを接続でき、その内部に設けた図示しない光電変換回路によって光信号を電気信号に変換でき、その下部に設けた一対の接続端子31を介して、同軸ケーブルに電気信号を出力可能である。
【0040】
また、光ファイバ保持体20は、光受信機1内で光ファイバを整理および収容するための手段であり、筐体10の内部に着脱自在に収容されている。具体的には、図4で示されるように、筐体10のベース部11は、光ファイバ保持体20の収容位置の上部に、係止爪11cを備えており、先の開口11aとで、光ファイバ保持体20の固定手段として機能される。すなわち、図1に示すように、光ファイバ保持体20の下端を開口11aに嵌め入れた状態で、光ファイバ保持体20をベース部11に対して押し付けることによって、その上部が係止爪11cに弾発的に係合するようになっている。光ファイバ保持体20の取り外しは、係止爪11cを爪で上方に押し倒すことによってこの係合を解除し行う。なお、光ファイバ保持体20の収容位置の略中央には、一対の突起11d、11dが形成されており、これが後述する光ファイバ保持体20の係合凹部23d、23dと係合し、これによって光ファイバ保持体20の位置決めがなされる。
【0041】
光ファイバ保持体20は、図1および図2で示されるように、概略円筒形状を有しており、その外周部に光ファイバの余長部分を巻き付けて保持できるようになっている。この外周部の半径は、ここに巻き付けられる光ファイバの最小曲げ半径以上に形成される。光ファイバ保持体20は、また、その外周面にメカニカルスプライスMS1およびMS2を固定できるようになっている。
【0042】
(光ファイバ保持体20の構成)
次に、光ファイバ保持体20の具体的な構成について説明する。図6は光ファイバ保持体20を上方から見た斜視図、図7は光ファイバ保持体20を下方から見た斜視図、図8は光ファイバ保持体20を示す図であり、(a)は上面図、(b)は右側面図、(c)は底面図である。これら図に示すように、光ファイバ保持体20は、全体として、所定の長さを有する円筒形状を有しており、その外周部21上に、その軸線方向に沿って、第1の巻き付け保持部22、スプライス固定部23、第2の巻き付け保持部24が、順次配置および形成されている。
【0043】
第1の巻き付け保持部22の両側には、一対のファイバ押さえ片25、25が備えられている。このファイバ押さえ片25、25は、その一端を光ファイバ保持体の外周部21に固定し、第1の巻き付け保持部22の面に対して所定の隙間を確保しつつ、保持体の軸線に沿って、延びるように配置されている。従って、第1の巻き付け保持部22に、光ファイバの余長部分を巻き付ける場合、ファイバ押さえ片25の開放端側において巻き付けを行い、巻き付けた余長部分を順次、ファイバ押さえ片25の固定端側に送ることによって、第1の巻き付け保持部22とファイバ押さえ片25との隙間で、光ファイバの余長部分を保持するようにする。ファイバ押さえ片25によるこの隙間は、比較的緩い力で、この間に光ファイバが挟み込まれた状態になることが好ましく、従って、光ファイバの芯線の被覆径相応であることが好ましいが、第1の巻き付け保持部22から容易に光ファイバが抜け落ちない程度であれば、光ファイバとの間にある程度のクリアランスがあっても良い。
【0044】
また、第1の巻き付け保持部22には、丁度、ファイバ押さえ片25、25の下側の位置に、連通孔26、26が形成されている。連通孔26、26は、後述する光ファイバ保持体20の内部空間に外部から引き入れられた光ファイバを、光ファイバ保持体20の外周部21に引き出すためのものであり、この連通孔26から引き出された光ファイバの余長部分は、直ちに第1の巻き付け保持部22に巻き付けることができる。
【0045】
スプライス固定部23は、一対の光ファイバを接続するためのメカニカルスプライスを固定するための領域であり、図6に示すように、外周部21の上面側に形成された一対の係止爪23aによって1つ目のメカニカルスプライスを、また、図7に示すように、下面側に形成された一対の係止爪23bによって2つ目のメカニカルスプライスを、それぞれ着脱自在に固定できるようにする。ここに固定されるメカニカルスプライスの一端には、第1の巻き付け保持部22に巻き付けられた光ファイバの一端が装着され、また、他端には、第2の巻き付け保持部24に巻き付けられる光ファイバの一端が装着され、ここでこれら一対の光ファイバが、機械的および光学的に連結される。
【0046】
各一対の係止爪23aおよび23bの対向距離は、ここに固定されるメカニカルスプライスのサイズに合わせて略形成されており、メカニカルスプライスを係止爪の上部傾斜面に上方より押し付けることによって、それらが両側に開いてメカニカルスプライス受け入れた後に、弾発的にこれに係合して、しっかりとメカニカルスプライスを固定する。メカニカルスプライスの取り外しは、爪で前記係止爪23a、23bを押し開いて、その間のメカニカルスプライスを取り出す。なお、図7に示すように、下面側のメカニカルスプライスが収まる領域には、そのサイズに合わせた凹部23cが形成されており、メカニカルスプライスを固定した状態で、その上半部はこの凹部23c内に収まるようになっている。こうすることによって、光ファイバ保持体20の下面側からのメカニカルスプライスの突出量が小さくなり、結果、光受信機の筐体10に対する光ファイバ保持体20の設置面における無駄な隙間をより小さくできるようになる。
【0047】
第2の巻き付け保持部24には、第1の巻き付け保持部22と同様に、その両側に、一対のファイバ押さえ片27、27が備えられている。このファイバ押さえ片27、27は、その一端を光ファイバ保持体の外周部21に固定し、第2の巻き付け保持部24の面に対して所定の隙間を確保しつつ、保持体の軸線に沿って、延びるように配置されており、その機能は、ファイバ押さえ片25、25と同じである。
【0048】
光ファイバ保持体20は、また、その下端側に、円筒状に立ち上げられた嵌合部28を備えている。嵌合部28の外径は丁度、光受信機の筐体10に形成した開口11a(図4を参照)に嵌り込むサイズに形成されており、前述のように光ファイバ保持体20を光受信機1に収容したときに、この嵌合部28と開口11aの係合と、係止爪11cによる係合によって、光ファイバ保持体20は筐体内においてしっかりと固定されることとなる。
【0049】
後に、より詳細に説明するが、光ファイバ保持体20は、その長手方向に抜ける内部空間を備えており、図8(c)に示されるように、その底壁20aには、3つの連通孔35、36、37が形成されている。中央の連通孔35には、光受信機1の外部からの光ファイバの2芯ケーブルが通され、これを光受信機1内に導く。また、連通孔36には、光受信機1の内部からの光ファイバの2芯ケーブルが通され、これを光受信機1外に導く。また、連通孔37には、光受信機1の外部からの電源ケーブルが通され、これを光受信機1内に導く。後述するが、この底壁20aは分割構造とされ、図のような閉じた状態で、これらの連通孔に通された各ケーブルをここで挟み込み保持する。
【0050】
次に、図9〜図11に沿って、光ファイバ保持体20の開放構造について説明する。図9は光ファイバ保持体20の内部空間を開放した状態における斜視図、図10は図9の状態から分離開閉部のみを閉じた状態の斜視図、図11は光ファイバ保持体20の内部空間を開放した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。これら各図に示されるように、光ファイバ保持体20は、その開放構造に関して、その円筒の長手方向に沿って上下に分離される下半部20bと上半部20cを、それらの一側に設けられたヒンジ部20dで、開閉自在に連結して構成されている。上半部20bと下半部20cの下端側には底壁20aが形成され、一方、上端側は開放されている。この上半部20bと下半部20cを閉じた状態で、その内部に内部空間Sが形成される。
【0051】
上半部20bは更に、その下端側が、下半部20cに対して独立して開閉される分離開閉部20eとして構成されている。分離開閉部20eには、前記底壁20aが備えられ、また、下半部20cの段部20gに対して弾発的に係合される係止爪20fが形成されている。図10で特によく示されるように、分離開閉部20eは、上半部20bを下半部20cに対して開いている状態でも、これを独立して閉じることができ、また、上半部20bが閉じられている状態でも、これを独立して開いて、底壁20a近傍における内部空間Sだけを開放することができる。底壁20aに形成された連通孔35〜37に対して各ケーブルは、この分離開閉部20eを開いた状態で通され、その引き込み量が決定された状態で、この分離開閉部20eを閉じることによって、ここに挟み込み保持されることとなる。また、分離開閉部20eにはその上部に連通孔20hを備える。連通孔20hは後述するように、光ファイバ保持体20の外側から光ファイバをその内部空間S、延いては連通孔36に導くためのものである。なお、本実施の形態においては、上半部20bと下半部20cとの突き合わせ部分には、係止爪20fのような係止手段が設けられていないが、ここには光ファイバの余長部分が巻き付けられることとなり、その力で相互に閉じた状態が維持されるので、必ずしも必要ではない。もっとも、同様に係止手段を設けてもよい。
【0052】
(光ファイバの収容手順)
次に、光受信機1内に導入される光ファイバの余長部分を、光ファイバ保持体20を用いて収容する手順について説明する。この説明のために、図1、図4、図5、図9および図12〜図14を参照する。初期状態において、図4に示されるように、光受信機1の筐体10内には、光電変換ユニット30が設置されている。ここに、図5で示された、筐体10の開口11aから光ファイバの2芯ケーブル13および光電変換ユニット30の電源ケーブル32を筐体内へ引き込む。
【0053】
図9に移って、光ファイバ保持体20の上半部20bを下半部20cに対して開いて、この引き込んだ2芯ケーブル13および電源ケーブル32を、その連通孔35、37にそれぞれ通し、その引き込み量を確定した上で、図12に示すように、分離開閉部20eのみを閉じる。この状態で、各ケーブルはここに挟まれて位置決めされた状態となる。そして、電源ケーブル32は、内部空間Sを真直ぐに抜けてその上端から引き出される。一方、2芯ケーブル13は、この位置でその被覆が剥がされて内部の光ファイバOF1およびOF2が露出され、この状態で連通孔26を通して、外部へ引き出される。
【0054】
光ファイバOF1、OF2および電源ケーブル32を内部空間Sから外部へ引き出した状態で、上半部20bを閉じる。連通孔26から光ファイバ保持体20の外部へ引き出した光ファイバOF1およびOF2の余長部分を、図13に示すように、第1の巻き付け保持部22に巻き付けていく。このとき、第1の巻き付け保持部22に対する巻き付けを、ファイバ押さえ片25の開放端位置で行い、順次、その固定端側にスライドしていくことによって、効率的に作業が行われる。
【0055】
次いで、各光ファイバOF1およびOF2の先端を、メカニカルスプライスMS1およびMS2に固定し、一方で、光ファイバOF3およびOF4の先端を、同じくメカニカルスプライスMS1およびMS2に固定し、接続工具を用いて、これら光ファイバ同士の機械的および光学的な接続を行う。このようにして光ファイバを接続した状態のメカニカルスプライスMS1を、図13に示すように、そのスプライス固定部23の係止爪23aに固定し、また、メカニカルスプライスMS2を、同様に、光ファイバ保持体裏側の係止爪23b(図7を参照)に固定する。この状態で、光ファイバOF3およびOF4を、今度は、第2の巻き付け保持部24に巻き付けていく。このとき、第2の巻き付け保持部24に対する巻き付けを、ファイバ押さえ片27の開放端位置で行い、順次、その固定端側にスライドしていくことによって、効率的に作業が行われる。第2の巻き付け保持部24に巻き付けられた光ファイバのうち、一方の光ファイバOF4は、光ファイバ保持体20の下方側から、光受信機の筐体10外へ引き出されるが、この作業は、図13において示されるように、分離開閉部20eを開いて行う。すなわち、係止爪20fを解除して分離開閉部20eを一旦開き、光ファイバOF4を光ファイバ保持体20の内部空間Sに引き入れて、これを被覆するケーブル14の部位を連通孔36に通し、再度、分離開閉部20eを閉じることによって、固定する。図14は、その状態を示しており、光ファイバOF4が連通孔20hからその内部空間に引き入れられ、更には連通孔36から外に引き出されている様子が分かる。
【0056】
このようにして各光ファイバOF1〜OF4の余長部分を、光ファイバ保持体20へ巻き付け保持する作業が完了する。この状態で光ファイバ保持体20は、図1に示すように、光受信機の筐体10内へ固定される。すなわち、光ファイバ保持体20の下端を開口11aに嵌め入れた状態で、光ファイバ保持体20をベース部11に対して押し付けることによって、その上部が係止爪11cに弾発的に係合する。そして、光ファイバ保持体20の上部から引き出された電源ケーブル32を光電変換ユニット30の電源端子に接続し、また、光ファイバOF3を光電変換ユニット30の接続端子33に光コネクタを介して接続し、これによって、光受信機1内部の配線作業が完了する。
【0057】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0058】
(本発明の適用分野について)
本発明の適用対象は、上述したような光受信機には限られず、光ファイバ収納箱や光コンバータ、その他、光ファイバOF1〜OF4の如き通信ケーブルを固定可能な機器であれば、どのような機器に対しても同様に適用可能である。本発明はまた、光受信機の筐体内にWDM(波長分割多重:Wavelength Division Multiplexing)フィルタを備えて、導入した単一の光ファイバから信号を複数の光ファイバに分離する機能を備えた光受信機においても適用可能であり、この場合、光ファイバ保持体はこのWDMフィルタを固定する手段を更に備えてもよい。
【0059】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。例えば、従来技術において本発明による構造よりも、光ファイバの巻き付けに係る作業効率の良いものがある場合においても、筐体内における光ファイバの収容効率がその従来技術よりも優れている場合には、本発明の課題が達成されていると言える。
【0060】
(光ファイバ保持体20について)
光ファイバ保持体20の具体的な形状は、図示の例に限定されない。実施の形態においては、光ファイバ保持体20を円筒形状としたが、多角筒形状としてもよく、また、そのほぼ全域が空洞的に形成されなくとも、その一部、例えば、下端における底壁20aの近傍のみに内部空間が形成されるようにしてもよい。また、ファイバ押さえ片25、27の形状、配置、個数、並びにスプライス固定部23の形状、配置、個数についても、ここに示したものに限定されず、光受信機全体の設計や実装される内部通信機器の態様によって、適宜決定しうるものである。また、内部空間に光ファイバを導入する必要がない場合には、中実の棒状体として光ファイバ保持体20を形成し、その外周部に光ファイバを巻き付けるようにしてもよい。また、光ファイバ保持体20の一端を必ずしも光受信機1の外部に引き出す必要はなく、光受信機1の内部に完全に収容するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明は、各種の光ファイバを収容する必要がある装置に適用でき、光ファイバの収容の作業性や確実性を向上させることに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態に係る光受信機のカバー部を開いた状態における斜視図である。
【図2】図1の光受信機のカバー部を取り外した状態における正面図である。
【図3】図1の光受信機の底面図である。
【図4】図1の光受信機において光ファイバ保持体を取り外した状態における斜視図である。
【図5】光受信機における信号の伝送経路を概念的に示す信号系統図である。
【図6】光ファイバ保持体20を上方から見た斜視図である。
【図7】光ファイバ保持体20を下方から見た斜視図である。
【図8】光ファイバ保持体20を示す図であり、(a)は上面図、(b)は右側面図、(c)は底面図である。
【図9】光ファイバ保持体20の内部空間を開放した状態における斜視図である。
【図10】図9の状態から分離開閉部のみを閉じた状態の斜視図である。
【図11】光ファイバ保持体20の内部空間を開放した状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は底面図である。
【図12】光ファイバの巻き付け作業を説明するための、光ファイバ保持体20の斜視図である。
【図13】光ファイバの巻き付け作業を説明するための、光ファイバ保持体20の斜視図である。
【図14】光ファイバの巻き付け作業を説明するための、光ファイバ保持体20の斜視図である。
【図15】カバー部を開いた状態における従来の光受信機の斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 光受信機
10 筐体
11 ベース部
11a、11b 開口
11c 係止爪
11d 突起
12 カバー部
13 2芯ケーブル
14 ケーブル
20 光ファイバ保持体
20a 底壁
20b 上半部
20c 下半部
20d ヒンジ部
20e 分離開閉部
20f 係止爪
20g 段部
20h 連通孔
21 外周部
22 第1の巻き付け保持部
23 スプライス固定部
23 係合凹部
23a、23b 係止爪
23c 凹部
24 第2の巻き付け保持部
25、27 ファイバ押さえ片
26 連通孔
28 嵌合部
30 光電変換ユニット
31 接続端子
32 電源ケーブル
33 接続端子
35〜37 連通孔
OF1〜OF4 光ファイバ
MS1、MS2 メカニカルスプライス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空又は中実の棒状体として構成され、当該棒状体の外周部に通信ケーブルの余長部分を巻き付け保持可能としたこと、
を特徴とする通信ケーブル保持体。
【請求項2】
前記通信ケーブルを導入可能な内部空間と、
前記内部空間に導入された通信ケーブルを、前記外周部へ導出可能な連通部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の通信ケーブル保持体。
【請求項3】
一対の通信ケーブルを相互に接続するための接続具を固定する接続具固定手段を備えたこと、
を特徴とする請求項1又は2に記載の通信ケーブル保持体。
【請求項4】
前記外周部は、
前記接続具固定手段に固定された前記接続具に接続される一対の通信ケーブルのうち、一方の通信ケーブルを巻き付け保持可能な第1の巻き付け保持部と、他方の通信ケーブルを巻き付け保持可能な第2の巻き付け保持部と、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の通信ケーブル保持体。
【請求項5】
前記外周部は、通信ケーブルの巻き付け軸線方向に沿って延びるケーブル押さえ手段を備え、当該ケーブル押さえ手段と前記外周部との間で、通信ケーブルの余長部分を保持するようにしたこと、
を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体。
【請求項6】
前記内部空間に対して通信ケーブルを導入又は導出可能な第2の連通部であって、当該第2の連通部に通される通信ケーブルを挟み込み保持可能としたこと、
を特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体。
【請求項7】
前記内部空間に対して所定の通信機器のための電源ケーブルを導入可能な第3の連通部であって、当該第3の連通部に通される電源ケーブルを挟み込み保持可能としたこと、
を特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体。
【請求項8】
通信ケーブルの余長部分を巻き付け保持しない第2の外周部を備え、当該第2の外周部の一部を前記外周部から分離して開閉自在とすることにより、前記内部空間の一部を開放自在としたこと、
を特徴とする請求項2から7のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体。
【請求項9】
前記通信ケーブル保持体が筒状をなし、当該筒状の長手方向に沿って、前記第1の巻き付け保持部、前記接続具固定手段、前記第2の巻き付け保持部を、順次配置したこと、
を特徴とする請求項4から8のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の通信ケーブル保持体を、その内部に着脱自在に備えたことを特徴とする通信機器の収容筐体。
【請求項11】
前記通信ケーブル保持体の前記第2の連通部又は前記第3の連通部を、筐体外へ露出させる開口部を備えたこと、
を特徴とする請求項6又は7及び10に記載の通信機器の収容筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−268388(P2008−268388A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108810(P2007−108810)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】