説明

通信システム、基地局装置、移動局装置、パワーヘッドルーム報告方法および集積回路

【課題】基地局装置と移動局装置とが複数の在圏セルと同時に接続して通信を行う通信システムにおいて、移動局装置が複数の上りリンク送信タイミングの調整が必要な場合に、効率的にパワーヘッドルームを報告可能とする通信システム、基地局装置、移動局装置、パワーヘッドルーム報告方法および集積回路を提供することを目的とする。
【解決手段】接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムであって、基地局装置は、前記移動局装置に設定した送信タイミングが非調整の在圏セルを活性化し、移動局装置は、活性化された在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局装置が複数の上りリンク送信タイミングの調整が必要な場合において、効率的にパワーヘッドルームの報告を行なう通信システム、基地局装置、移動局装置、パワーヘッドルーム報告方法および集積回路に関する。
【背景技術】
【0002】
標準化プロジェクトである3GPP(3rd Generation Partnership Project)において、OFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)通信方式やリソースブロックと呼ばれる所定の周波数・時間単位の柔軟なスケジューリングの採用によって、高速な通信を実現させたEvolved Universal Terrestrial Radio Access(以降EUTRAと称する)の標準化が行なわれた。
【0003】
また、3GPPでは、より高速なデータ伝送を実現し、EUTRAの上位互換性を持つAdvanced EUTRAの議論を行っている。Advanced EUTRAにおける技術として、キャリア・アグリゲーション(Carrier Aggregation)が提案されている。キャリア・アグリゲーションとは、複数の異なる周波数(コンポーネントキャリア(Component Carrier)とも称する)を集約して使用することで伝送レートを向上させる技術である。また、キャリア・アグリゲーションを用いて基地局装置と通信中の移動局装置が、周波数毎またはコンポーネントキャリア毎に複数の上りリンク送信タイミング(Timing Advance)を持つことが提案されている(非特許文献1)。
【0004】
EUTRAでは、移動局装置の上りリンク送信タイミングを調整するために、ランダムアクセス手順が用意されている。ランダムアクセス手順は、移動局装置が自律的にランダムアクセス手順の必要性を判断して開始する方法のほかに、基地局装置が、特定の移動局装置にランダムアクセス手順を開始させるために物理下りリンク制御チャネルにランダムアクセス手順の開始を示す情報を設定して送信するという方法がある。
【0005】
また、3GPPにおいて、基地局装置に対して移動局装置の送信電力の余力を通知するパワーヘッドルーム(PHR:Power Head Room)が用いられる。PHRは、あるコンポーネントキャリアにおける移動局装置の最大送信電力から物理上りリンク共用チャネル、または物理上りリンク共用チャネルと物理上りリンク制御チャネルに必要な送信電力を引いた残りの電力を表し、PHRが大きいほど該移動局装置の上りリンクの送信に余裕があることを示す。基地局装置は、報告されたPHRを参考に該移動局装置に対して伝送レートの高い変調方式や多くのリソースを割り当てるなどの適切なスケジューリングを実行することができる。非特許文献2には、従来におけるPHRの計算方法が記載されている。
【0006】
また、基地局装置は、1つの下りリンクのコンポーネントキャリアと1つの上りリンクのコンポーネントキャリアを組み合わせて1つのセルを構成する。なお、基地局装置は、1つの下りリンクコンポーネントキャリアのみでも1つのセルを構成できる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R2−101567、NTT DOCOMO、3GPP TSG−RAN WG2#69、22−26 February 2010、San Francisco,USA
【非特許文献2】TS36.213、Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical layer procedures V10.0.1;http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html−info/36213.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、新規に追加されたコンポーネントキャリアのセルは、データの送受信や物理下りリンク制御チャネルの監視を行わない不活性化の状態(詳細は後述)である。更に、非特許文献1で提案されているように複数の上りリンク送信タイミングを持ち、それぞれの上りリンク送信タイミングを上りリンクコンポーネントキャリア毎(または上りリンクコンポーネントキャリアグループや上りリンク周波数毎)に調整するような場合、コンポーネントキャリアが活性化されたタイミングでは、上りリンクの送信タイミングが調整されていないことにより送信ができないコンポーネントキャリアが存在する。これは、送信ができないコンポーネントキャリアのPHRを移動局装置から報告されても、基地局装置が当該コンポーネントキャリアを用いたスケジューリングができないことを意味する。
【0009】
そのため、移動局装置が複数の上りリンク送信タイミングを持つコンポーネントキャリアが設定された場合において、基地局装置がスケジューリングできないコンポーネントキャリアのPHRを報告してしまうという問題に関し、その具体的な解決方法は非特許文献1および非特許文献2には何ら示されていない。
【0010】
上記の課題を鑑みて、本発明の目的は、移動局装置が複数の上りリンク送信タイミングの調整が必要な場合において、効率的にパワーヘッドルームを報告可能とする通信システム、基地局装置、移動局装置、パワーヘッドルーム報告方法および集積回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本願の通信システムは、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムであって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記基地局装置は、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化し、前記移動局装置は、前記第3の在圏セルを活性化後、前記基地局装置からの送信タイミング調整情報に基づき活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0012】
(2)また、本願の通信システムにおいて、前記送信タイミング調整情報はContention based Random Access手順に用いて前記基地局装置から通知されることを特徴とする。
【0013】
(3)また、本願の通信システムにおいて、前記送信タイミング調整情報はNon-contention based Random Access手順を用いて前記基地局装置から通知されることを特徴とする。
【0014】
(4)また、本願の通信システムにおいて、前記移動局装置は、第1の在圏セルと、活性化されている第2の在圏セルと、活性化されており、かつ上りリンクの送信タイミングが調整されている第3の在圏セルを含めて前記パワーヘッドルームを報告することを特徴とする。
【0015】
(5)また、本願の通信システムは、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムであって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記基地局装置は、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化し、前記移動局装置は、前記第3の在圏セルが活性化された場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順が成功したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0016】
(6)また、本願の通信システムにおいて、前記ランダムアクセス手順はContention based Random Access手順であり、前記移動局装置は、コンテンションレゾリューションを正しく受信したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0017】
(7)また、本願の通信システムにおいて、前記ランダムアクセス手順はNon-contention based Random Access手順であり、前記移動局装置は、ランダムアクセスレスポンスを正しく受信したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0018】
(8)また、本願の通信システムにおいて、前記移動局装置は、第1の在圏セルと、活性化されている第2の在圏セルと、活性化されており、かつランダムアクセス手順が成功した第3の在圏セルを含めて前記パワーヘッドルームを報告することを特徴とする。
【0019】
(9)また、本願の移動局装置は、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置であって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記基地局装置が前記第3の在圏セルを活性化した場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順を用いて取得した送信タイミング調整情報に基づいて活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0020】
(10)また、本願の移動局装置は、第1の在圏セルと、活性化されている第2の在圏セルと、活性化されており、かつ上りリンクの送信タイミングが調整されている第3の在圏セルを含めて前記パワーヘッドルームを報告することを特徴とする。
【0021】
(11)また、本願の移動局装置は、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置であって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記基地局装置が前記第3の在圏セルを活性化した場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順が成功したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0022】
(12)また、本願の移動局装置は、前記ランダムアクセス手順がContention based Random Access手順である場合、コンテンションレゾリューションを正しく受信したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0023】
(13)また、本願の移動局装置は、前記ランダムアクセス手順がNon-contention based Random Access手順である場合、ランダムアクセスレスポンスを正しく受信したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0024】
(14)また、本願の移動局装置は、第1の在圏セルと、活性化されている第2の在圏セルと、活性化されており、かつランダムアクセス手順が成功した第3の在圏セルを含めて前記パワーヘッドルームを報告することを特徴とする。
【0025】
(15)また、本願の基地局装置は、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける基地局装置であって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化することによってランダムアクセス手順の開始を要求するとともに、前記移動局装置に対して、前記ランダムアクセス手順を用いて通知した送信タイミング調整情報に基づいて活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整した後に前記パワーヘッドルームを報告させることを特徴とする。
【0026】
(16)また、本願の基地局装置は、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける基地局装置であって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化することによってランダムアクセス手順の開始を要求するとともに、前記移動局装置に対して、前記ランダムアクセス手順が成功した後に前記パワーヘッドルームを報告させることを特徴とする。
【0027】
(17)また、本願のパワーヘッドルーム報告方法は、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置のパワーヘッドルーム報告方法であって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記基地局装置は、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化し、前記移動局装置は、前記第3の在圏セルを活性化後、前記基地局装置からの送信タイミング調整情報に基づき活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0028】
(18)また、本願のパワーヘッドルーム報告方法は、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置のパワーヘッドルーム報告方法であって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記基地局装置は、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化し、前記移動局装置は、前記第3の在圏セルが活性化された場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順が成功したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0029】
(19)また、本願の集積回路は、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置に搭載される集積回路であって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記基地局装置が前記第3の在圏セルを活性化した場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順を用いて取得した送信タイミング調整情報に基づいて活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0030】
(20)また、本願の集積回路は、接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置に搭載される集積回路であって、前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、前記基地局装置が前記第3の在圏セルを活性化した場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順が成功したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする。
【0031】
本明細書では、移動局装置と基地局装置が複数の周波数を同時に用いて接続される場合における通信システム、基地局装置、移動局装置、パワーヘッドルーム報告方法および集積回路の改良という点において本発明を開示するが、本発明が適用可能な通信方式は、EUTRAまたはAdvanced EUTRAのようにEUTRAと上位互換性のある通信方式に限定されるものではない。例えば、本発明はUMTS(Universal Mobile Telecommunications System)にも適用することができる。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、複数の周波数を用いて基地局装置と接続可能な移動局装置が複数の上りリンク送信タイミングの調整が必要な場合において、効率的にパワーヘッドルームを報告可能とする通信システム、基地局装置、移動局装置、パワーヘッドルーム報告方法および集積回路を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における移動局装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明における基地局装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態におけるPHRの送信可能タイミングについて説明するための図である。
【図4】本発明の第1の実施形態におけるPHRを送信するまでの手順について説明するためのシーケンスチャート図である。
【図5】本発明の第1の実施形態におけるPHRを送信するまでの手順について説明するためのフローチャート図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るPHRの送信可能タイミングについて説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるPHRを送信するまでの手順について説明するためのシーケンスチャート図である。
【図8】本発明の第2の実施形態におけるPHRを送信するまでの手順について説明するための別のシーケンスチャート図である。
【図9】Contention based Random Access手順について説明するためのシーケンスチャート図である。
【図10】Non-contention based Random Access手順について説明するためのシーケンスチャート図である。
【図11】本発明の実施形態に係る通信ネットワーク構成の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施形態に係る移動局装置に対するコンポーネントキャリアの設定の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の実施形態を説明する前に、本発明に関わるキャリア・アグリゲーション、物理チャネル、ランダムアクセス手順、パワーヘッドルーム報告について簡単に説明する。
【0035】
[キャリア・アグリゲーション]
キャリア・アグリゲーションとは、複数の異なる周波数(コンポーネントキャリア、または周波数帯域)を集約(アグリゲーション)して一つの周波数(周波数帯域)のように扱う技術である。例えば、キャリア・アグリゲーションによって周波数帯域幅が20MHzのコンポーネントキャリアを5つ集約した場合、移動局装置はこれらを一つの100MHzの周波数帯域幅とみなしてアクセスすることが可能となる。なお、集約するコンポーネントキャリアは連続した周波数であっても、全てまたは一部が不連続となる周波数であってもよい。例えば、使用可能な周波数が800MHz帯、2.4GHz帯、3.4GHz帯である場合、あるコンポーネントキャリアが800MHz帯、別のコンポーネントキャリアが2GHz帯、さらに別のコンポーネントキャリアが3.4GHz帯で送信されていてもよい。
【0036】
また、同一周波数帯、例えば2.4GHz帯内の連続または不連続の複数のコンポーネントキャリアを集約することも可能である。各コンポーネントキャリアの周波数帯域幅は20MHzより狭い周波数帯域幅であっても良く、各々周波数帯域幅が異なっていても良い。基地局装置は、滞留しているデータバッファ量や移動局装置の受信品質、セル内の負荷やQoSなどの種々の要因に基づいて、移動局装置に割り当てる上りリンクまたは下りリンクのコンポーネントキャリアの数を増減することができる。なお、基地局装置が割り当てる上りリンクコンポーネントキャリアの数は、下りリンクコンポーネントキャリアの数と同じか少ないことが望ましい。
【0037】
[物理チャネル]
EUTRAおよびAdvanced EUTRAで使用される主な物理チャネル(または物理シグナル)について説明を行なう。チャネルとは信号の送信に用いられる媒体を意味し、物理チャネルとは信号の送信に用いられる物理的な媒体を意味する。物理チャネルは、EUTRA、およびAdvanced EUTRAにおいて、今後追加、または、その構造が変更される可能性もあるが、変更された場合でも本発明の各実施形態の説明には影響しない。
【0038】
EUTRAおよびAdvanced EUTRAでは、物理チャネルのスケジューリングについて無線フレームを用いて管理している。1無線フレームは10msであり、1無線フレームは10サブフレームで構成される。さらに、1サブフレームは2スロットで構成される(すなわち、1スロットは0.5msである)。また、物理チャネルが配置されるスケジューリングの最小単位としてリソースブロックを用いて管理している。リソースブロックとは、周波数軸を複数サブキャリア(例えば12サブキャリア)の集合で構成される一定の周波数領域と、一定の送信時間間隔(1スロット)で構成される領域で定義される。
【0039】
同期シグナル(Synchronization Signals)は、3種類のプライマリ同期シグナルと、周波数領域で互い違いに配置される31種類の符号から構成されるセカンダリ同期シグナルとで構成され、プライマリ同期シグナルとセカンダリ同期シグナルの信号の組み合わせによって、基地局装置を識別する504通りのセル識別子(セルID:Physical Cell Identity; PCI)と、無線同期のためのフレームタイミングが示される。移動局装置は、セルサーチによって受信した同期シグナルのセルIDを特定する。
【0040】
物理報知情報チャネル(PBCH; Physical Broadcast Channel)は、セル内の移動局装置で共通に用いられる制御パラメータ(報知情報(システム情報);System information)を通知する目的で送信される。物理報知情報チャネルで通知されない報知情報は、物理下りリンク制御チャネルで無線リソースが通知され、物理下りリンク共用チャネルによってレイヤ3メッセージ(システムインフォメーション)で送信される。報知情報として、セル個別の識別子を示すセルグローバル識別子(CGI; Cell Global Identifier)、ページングによる待ち受けエリアを管理するトラッキングエリア識別子(TAI; Tracking Area Identifier)、ランダムアクセス制御情報などが通知される。
【0041】
下りリンクリファレンスシグナルは、セル毎に所定の電力で送信されるパイロットシグナルである。また、下りリンクリファレンスシグナルは、所定の規則に基づき周波数・時間位置で周期的に繰り返される既知の信号である。移動局装置は、下りリンクリファレンスシグナルを受信することでセル毎の受信品質を測定する。また、移動局装置は、下りリンクリファレンスシグナルと同時に送信される物理下りリンク制御チャネル、または物理下りリンク共用チャネルの復調のための参照用の信号としても下りリンクリファレンスシグナルを使用する。下りリンクリファレンスシグナルに使用される系列は、セル毎に識別可能な系列が用いられる。なお、下りリンクリファレンスシグナルはセル固有RS(Cell-specific reference signals)と記載される場合もあるが、その用途と意味は同じである。
【0042】
物理下りリンク制御チャネル(PDCCH; Physical Downlink Control Channel)は、各サブフレームの先頭からいくつかのOFDMシンボルで送信され、移動局装置に対して基地局装置のスケジューリングに従った無線リソース割り当て情報や、送信電力の増減の調整量を指示する目的で使用される。移動局装置は、下りリンクデータや下りリンク制御データであるレイヤ3メッセージ(ページング、ハンドオーバーコマンドなど)を送受信する前に自局宛の物理下りリンク制御チャネルを監視(モニタ)し、自局宛の物理下りリンク制御チャネルを受信することで、送信時には上りリンクグラント、受信時には下りリンクグラント(下りリンクアサインメント)と呼ばれる無線リソース割り当て情報を物理下りリンク制御チャネルから取得する必要がある。
【0043】
物理上りリンク制御チャネル(PUCCH; Physical Uplink Control Channel)は、物理下りリンク共用チャネルで送信されたデータの受信確認応答(ACK/NACK:Acknowledgement/Negative Acknowledgement)や下りリンクの伝搬路情報(CQI:Channel Quality Indicator)、上りリンクの無線リソース要求であるスケジューリングリクエスト(SR:Scheduling Request)を行なうために使用される。
【0044】
物理下りリンク共用チャネル(PDSCH; Physical Downlink Shared Channel)は、下りリンクデータの他、下りリンク制御データであるレイヤ3メッセージとしてページングや物理報知情報チャネルに含まれない報知情報を移動局装置に通知するためにも使用される。物理下りリンク共用チャネルの無線リソース割り当て情報は、物理下りリンク制御チャネルで示される。
【0045】
物理上りリンク共用チャネル(PUSCH; Physical Uplink Shared Channel)は、主に上りリンクデータと上りリンク制御データを送信し、下りリンクの受信品質やACK/NACKなどの制御データを含めることも可能である。また、下りリンクと同様に物理上りリンク共用チャネルの無線リソース割り当て情報は、物理下りリンク制御チャネルで示される。
【0046】
上りリンクリファレンスシグナル(上りリンク参照信号:Uplink Reference Signal、上りリンクパイロット信号、上りリンクパイロットチャネルとも呼称する)は、基地局装置が、物理上りリンク制御チャネルPUCCHおよび/または物理上りリンク共用チャネルPUSCHを復調するために使用する復調参照信号(DRS:Demodulation Reference Signal)と、基地局装置が、主に、上りリンクのチャネル状態を推定するために使用するサウンディング参照信号(SRS:Sounding Reference Signal)が含まれる。
【0047】
物理ランダムアクセスチャネル(PRACH; Physical Random Access Channel)は、プリアンブル系列を通知するために使用されるチャネルであり、ガードタイムを有する。プリアンブル系列は、64種類のシーケンスを用意して6ビットの情報を表現するように構成されている。物理ランダムアクセスチャネルは、移動局装置の基地局装置へのアクセス手段として用いられる。移動局装置は、物理上りリンク制御チャネル未設定時の無線リソース要求や、上りリンク送信タイミングを基地局装置の受信タイミングウィンドウに合わせるために必要な送信タイミング調整情報(タイミングアドバンス(TA:Timing Advance)とも呼ばれる)を基地局装置に要求するために物理ランダムアクセスチャネルを用いる。具体的には、移動局装置は、基地局装置より設定された物理ランダムアクセスチャネル用の無線リソースを用いてプリアンブル系列を送信する。送信タイミング調整情報を受信した移動局装置は、送信タイミング調整情報の有効時間を計時する送信タイミングタイマー(TA timer)を設定し、有効時間中は送信タイミング調整状態、有効期間外は、送信タイミング非調整状態(送信タイミング未調整状態)として状態を管理する。なお、それ以外の物理チャネルは、本発明の各実施形態に関わらないため詳細な説明は省略する。
【0048】
[ランダムアクセス手順]
ランダムアクセスに関する一連の手順のことをランダムアクセス手順と称す。ランダムアクセス手順には、Contention based Random Access(競合ベースランダムアクセス)手順とNon-contention based Random Access(非競合ベースランダムアクセス)手順の2つの手順がある。
【0049】
Contention based Random Access手順は、異なる移動局装置が送信したプリアンブル系列が衝突(contention)する可能性のあるランダムアクセス手順であり、移動局装置が基地局装置と接続(通信)していない状態からの初期アクセスのためや、移動局装置が基地局装置と接続している状態からの上りリンクの送信リソースを要求するスケジューリングリクエストのためなどに使用される。プリアンブル系列が衝突するということは、複数の移動局装置が同じプリアンブル系列を用いて物理ランダムアクセスチャネルを同一の周波数・時間リソースを用いて送信することを意味する。なお、プリアンブル系列の衝突は、ランダムアクセスの衝突とも称される。
【0050】
Non-contention based Random Access手順は、異なる移動局装置が送信したプリアンブル系列に衝突が発生しないランダムアクセス手順であり、移動局装置が基地局装置と接続している状態であり、かつ上りリンクの同期が外れている状態で、基地局装置の指示により開始される。Non-contention based Random Access手順は、RRC(Radio Resource Control:Layer3)層のメッセージおよび物理下りリンク制御チャネルPDCCHの制御データにより開始が指示される。
【0051】
Non-contention based Random Access手順で使用するプリアンブル系列(個別プリアンブル(dedicated preamble))は、基地局装置より個別に移動局装置に通知される。Contention based Random Access手順で使用されるプリアンブル系列は、個別プリアンブルとして使用されないプリアンブル系列から移動局装置がランダムアクセス時にランダムに一つ選択して使用する。あるセルで移動局装置が使用可能なプリアンブル系列のうち、Contention based Random Access手順とNon-contention based Random Access手順でそれぞれ使用されるプリアンブル系列の数は基地局装置から通知される。
【0052】
図9を用いて、Contention based Random Access手順を簡単に説明する。まず、移動局装置1は、下りリンクの無線伝搬路状態(パスロス)やメッセージ3(ステップS3で送信されるメッセージ)のサイズに基づいて選択したプリアンブル系列(ランダムアクセスプリアンブル)を基地局装置2に送信する(ステップS1)。ランダムアクセスプリアンブルを受信した基地局装置2は、ランダムアクセスプリアンブルから移動局装置1と基地局装置2との間の送信タイミングのずれ量を算出し、ランダムアクセスプリアンブルに対する応答(ランダムアクセスレスポンス)に送信タイミングのずれを調整するための送信タイミング調整情報を含めて移動局装置1に送信する(ステップS2)。
【0053】
移動局装置1は、ランダムアクセスレスポンスの中身を確認し、送信したランダムアクセスプリアンブルに対応するプリアンブル番号がランダムアクセスレスポンスに含まれている場合、送信タイミング調整情報から上りリンク送信タイミングを調整する。移動局装置1は、送信タイミングを調整した場合に、調整した送信タイミングが有効である送信タイミングタイマー(TA timer)をスタートする。また、移動局装置1は、ランダムアクセスレスポンスに含まれているスケジューリング情報を元に上位レイヤのメッセージ(上位レイヤメッセージ、RRCメッセージ)を基地局装置2に送信する(ステップS3)。基地局装置2は、ステップS3の上位レイヤメッセージを受信できた移動局装置1に衝突確認メッセージ(コンテンションレゾリューション、Contention resolution)を送信し(ステップS4)、手順を完了する。
【0054】
図10を用いて、Non-contention based Random Access手順を簡単に説明する。まず、基地局装置2は、個別プリアンブルの番号と使用する物理ランダムアクセスチャネルの番号(ランダムアクセスチャネル番号)を移動局装置1に通知(ランダムアクセスプリアンブル割り当て)する(ステップS11)。ランダムアクセスチャネル番号とは、基地局装置2が移動局装置1に通知する番号の個別プリアンブルが送信されてもよい物理ランダムアクセスチャネルを示す番号である。例えば、あるランダムアクセスチャネル番号は全ての物理ランダムアクセスチャネルで個別プリアンブルが送信されてもよいことを示し、あるランダムアクセスチャネル番号は時間方向で2個毎の物理ランダムアクセスチャネルで個別プリアンブルが送信されてもよいことを示す。移動局装置1は、指定されたプリアンブルの番号に対応するプリアンブル系列(個別プリアンブル)を、ランダムアクセスチャネル番号により示され、個別プリアンブルの送信が許可される物理ランダムアクセスチャネルで送信する(ステップS12)。個別プリアンブルを受信した基地局装置2は、個別プリアンブルから移動局装置1と基地局装置2との間の送信タイミングのずれ量を算出し、個別プリアンブルに対する応答(ランダムアクセスレスポンス)に送信タイミングのずれを調整するための送信タイミング調整情報を含めて移動局装置1に送信し(ステップS13)、手順を完了する。
【0055】
ただし、基地局装置2から通知されたプリアンブル番号の値が0の場合は、移動局装置1はNon-contention based Random Access手順ではなくContention based Random Access手順を行なう。この場合、移動局装置1は図9のステップS1〜ステップS4の手順に従って手順を完了する。
【0056】
[パワーヘッドルーム報告]
パワーヘッドルームは、周波数(コンポーネントキャリア、セル)毎に移動局装置で計算され、基地局装置に対して通知される。また、移動局装置において、パワーヘッドルームはRRC層から設定されたパラメータに基づいて物理層(レイヤ1)で計算され、MAC層で管理される。また、物理層は、計算した各コンポーネントキャリアのパワーヘッドルームの値をMAC層に対して通知する。
【0057】
移動局装置のMAC層は、以下のいずれかのトリガ条件が満たされた場合に、パワーヘッドルームの報告タイミングであると判断し、データの制御ヘッダー部分に含まれるMAC制御要素を用いてPHRを基地局装置に送信する。トリガ条件は、(1)PHR報告禁止タイマー(Prohibit PHR timer)が停止しているときであって、サービングセルのパスロス値が前回PHRを報告したときよりも所定の値以上劣化したとき、(2)PHR周期タイマー(Periodic PHR timer)が満了したとき、(3)PHRの設定が変更されたとき、(4)セカンダリセルを活性化したとき、である。
【0058】
Advanced ETURAでは、PHRとして2種類の報告形式が規定されている。1つ目の報告形式(タイプ1)は、移動局装置があるサブフレームにおいて物理上りリンク共用チャネルPUSCHのみを送信可能な場合に適用される報告形式である。タイプ1のPHRは、PUSCHを送信しているサブフレームとPUSCHを送信していないサブフレームとで異なるPHRの計算方法を使用し、その詳細な計算方法は3GPP TS36.213の記載に従う。
【0059】
2つ目の報告形式(タイプ2)は、移動局装置があるサブフレームにおいて物理上りリンク制御チャネルPUCCHと物理上りリンク共用チャネルPUSCHを同時に送信可能な場合に適用される報告形式である。タイプ2のPHRは、PUCCHとPUSCHを同時に送信しているサブフレーム、PUSCHのみを送信しているサブフレーム、PUCCHのみを送信しているサブフレームとでそれぞれ異なるPHRの計算方法を使用し、その詳細な計算方法は3GPP TS36.213の記載に従う。
【0060】
基地局装置は、移動局装置から通知された移動局装置能力(UE Capability)に基づいて、タイプ1とタイプ2のPHRの報告形式のどちらを用いるかについて、レイヤ3メッセージを用いて移動局装置毎に設定する。
【0061】
[本発明の通信ネットワーク構成の例]
図11は、本発明の実施形態に係る通信ネットワーク構成の一例を示す図である。移動局装置1は、キャリア・アグリゲーションによって複数の周波数(コンポーネントキャリア、Band1〜Band3)を同時に用いて基地局装置2と無線接続することが可能な場合、通信ネットワーク構成としては、ある一つの基地局装置2が複数の周波数毎に送信装置11〜13(および図示しない受信装置21〜23)を備えており、各周波数の制御を一つの基地局装置2で行なう構成が制御の簡略化の観点から好適である。基地局装置2の構成は図10に限定されない。ただし、複数の周波数が連続する周波数であるなどの理由で、基地局装置2が一つの送信装置で複数の周波数の送信を行なう構成であっても構わない。さらには、周波数毎に送受信のタイミングが異なるような構成であっても良い。送信装置と受信装置の数や送受信可能な周波数が異なっていてもよい。基地局装置2の送信装置によって制御される各周波数の通信可能範囲はセルとしてみなされる。このとき、各周波数がカバーするエリア(セル)はそれぞれ異なる広さ、異なる形状であっても良い。
【0062】
ただし、後述する記載において、基地局装置2が構成するコンポーネントキャリアの周波数でカバーされるエリアのことをそれぞれセルと称して説明するが、これは実際に運用される通信システムにおけるセルの定義とは異なる可能性があることに注意する。例えば、ある通信システムでは、キャリア・アグリゲーションによって用いられるコンポーネントキャリアの一部のことを、セルではなく単なる追加の無線リソースと定義するかもしれない。また、従来のセルとは異なる拡張セルとして定義するかもしれない。本発明でコンポーネントキャリアをセルと称することで、実際に運用される通信システムにおけるセルの定義と異なる場合が発生したとしても、本発明の主旨には影響しない。なお、キャリア・アグリゲーションは、複数のコンポーネントキャリアを用いた複数のセルによる通信であり、セル・アグリゲーションとも称される。なお、移動局装置1は、周波数毎にリレー局装置(またはリピーター)を介して基地局装置2と無線接続されても良い。すなわち、本発明の基地局装置2は、リレー局装置に置き換えることが出来る。
【0063】
なお、3GPPが規定する第3世代の基地局装置2はノードB(NodeB)と称され、EUTRAおよびAdvanced EUTRAにおける基地局装置はイーノードB(eNodeB)と称される。なお、3GPPが規定する第3世代の移動局装置1はユーイー(UE:User Equipment)と称される。基地局装置2は移動局装置1が通信可能なエリアであるセルを管理し、セルは移動局装置1と通信可能なエリアの大きさに応じてマクロセルやフェムトセルやピコセル、ナノセルとも称される。また、移動局装置1がある基地局装置2と通信可能であるとき、その基地局装置2のセルのうち、移動局装置1との通信に使用しているセルは在圏セル(Serving cell)であり、その他のセルは周辺セル(Neighboring cell)と称される。つまり、キャリア・アグリゲーションを用いて移動局装置1と基地局装置2が複数のセルを用いて通信している場合、在圏セルは複数存在することになる。
【0064】
[コンポーネントキャリアの構成の設定例]
図12は、本発明の実施形態に係る移動局装置1がキャリア・アグリゲーションを行なう場合に、基地局装置2が移動局装置1に対して設定する下りリンクコンポーネントキャリアと、上りリンクコンポーネントキャリアの対応関係の一例を示した図である。図12では、2個の下りリンクコンポーネントキャリア(下りリンクコンポーネントキャリアDL_CC1、下りリンクコンポーネントキャリアDL_CC2)と2個の上りリンクコンポーネントキャリア(上りリンクコンポーネントキャリアUL_CC1、上りリンクコンポーネントキャリアUL_CC2)の対応関係について示すが、本発明が2個のコンポーネントキャリアの場合に限定されるということではない。図12中の下りリンクコンポーネントキャリアDL_CC1と上りリンクコンポーネントキャリアUL_CC1、および下りリンクコンポーネントキャリアDL_CC2と上りリンクコンポーネントキャリアDL_CC2がセル固有接続(Cell Specific Linkage)している。
【0065】
セル固有接続とは、例えば、移動局装置1がキャリア・アグリゲーションしていない場合に、基地局装置2にアクセス可能な上りリンクと下りリンクの周波数の対応関係(連携関係)であり、典型的には報知情報の一部(SIB2:System Information Block Type2)でその対応関係が示される。セル固有接続は、SIB2 linkageとも称される。セルにおける上りリンクと下りリンクの周波数の対応関係は、報知情報に周波数情報として明示的に指示されるか、または明示的に指示されない場合に運用周波数毎に一意に決められる上りリンクと下りリンクの規定の周波数差の情報を用いるなどして暗黙的に指示される。これらの方法に限らず、セル毎に上りリンクと下りリンクの周波数の対応関係を示すことが可能であれば、これ以外の方法を用いて指示されても良い。
【0066】
これに対し、基地局装置2は、下りリンクコンポーネントキャリアと上りリンクコンポーネントキャリアの対応関係を、セル固有接続とは別に移動局装置1毎に個別に設定(個別接続;UE Specific Linkage)することも可能である。このとき、個別接続の設定はRRCメッセージ(レイヤ3メッセージ)で示される。基地局装置2は、物理ランダムアクセスチャネルの送信に必要な設定(コンフィギュレーション)を上りリンクコンポーネントキャリア毎、または上りリンク周波数毎に複数割り当てることも可能である。
【0067】
無線リソース要求用上りリンク制御チャネル設定の行われる上りリンクコンポーネントキャリアと、当該上りリンクコンポーネントキャリアとセル固有接続される下りリンクコンポーネントキャリアから構成されるセルは、プライマリセル(PCell:Primary cell)と称される。また、プライマリセル以外のコンポーネントキャリアから構成されるセルは、セカンダリセル(SCell:Secondary cell)と称される。プライマリセルは活性化/不活性化の制御の対象外であるが(つまり必ず活性化しているとみなされる)、セカンダリセルは活性化/不活性化という状態を持ち、これらの状態の変更は、基地局装置2から明示的に指定されるほか、コンポーネントキャリア毎に移動局装置1に設定されるタイマーに基づいて状態が変更される。プライマリセルとセカンダリセルとを合わせてサービングセル(在圏セル)とも称する。
【0068】
ここで、コンポーネントキャリアの活性化または不活性化(すなわちセカンダリセルの活性化または不活性化)は、レイヤ2の構成タスクで解釈可能なL2(レイヤ2)メッセージによって制御されるように構成される。すなわち、物理層(レイヤ1)でデコードされた後にレイヤ2で認識される制御コマンドによって活性化または不活性化が制御される。なお、EUTRAならびにAdvanced EUTRAにおけるL2メッセージは、MAC層で解釈される制御コマンド(MAC制御要素:MAC Control Element)によって通知される。
【0069】
移動局装置1は、不活性化されたコンポーネントキャリア(セカンダリセル)のスケジューリングに用いる上りリンクグラント、および下りリンクグラント(下りリンクアサインメント)のモニタを停止してよい。すなわち、物理下りリンク制御チャネルのモニタを停止してよい。また、移動局装置1は、不活性化されたコンポーネントキャリア(セカンダリセル)の上りリンクに関して、サウンディングリファレンスシグナル(SRS:Sounding reference signal)と呼ばれる上りリンクパイロットチャネルの送信を停止してもよい。また、移動局装置1は、不活性化されたコンポーネントキャリア(セカンダリセル)の上りリンクに関して、物理上りリンク制御チャネルの送信を停止しても良い。また、移動局装置1は、不活性化されたコンポーネントキャリア(セカンダリセル)の下りリンクに関して、活性化した状態よりも低いサンプリングレートで測定を実施してもよい。
【0070】
以上の事項を考慮しつつ、以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明の説明において、本発明に関連した公知の機能や構成についての具体的な説明が、本発明の要旨を不明瞭にすると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0071】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について以下に説明する。本実施形態は、移動局装置1のキャリア・アグリゲーション時におけるパワーヘッドルーム報告方法に関し、特に、移動局装置1が複数の上りリンク送信タイミングを管理している場合のパワーヘッドルーム報告方法について示す。
【0072】
図1は、本発明の第1の実施形態による移動局装置1の一例を示すブロック図である。本移動局装置1は、受信部101、復調部102、復号部103、測定処理部104、制御部105、ランダムアクセス制御部106、符号部107、変調部108、送信部109、タイミング管理部110、上位レイヤ111、PHR計算部112から構成される。上位レイヤ111は、無線リソース制御を執り行うRRC(Radio Resource Control)を含む。また、ランダムアクセス制御部106は、データリンク層を管理するMAC(Medium Access Control)層の一部として機能する。
【0073】
受信に先立ち、上位レイヤ111より制御部105へ移動局装置制御情報が入力され、受信に関する制御情報が受信制御情報として、受信部101、復調部102、復号部103へ適切に入力される。移動局装置制御情報は、受信制御情報と送信制御情報によって構成される移動局装置1の無線通信制御に必要な情報であり、基地局装置2やシステムパラメータにより設定され、上位レイヤ111が必要に応じて制御部105へ入力する。また、受信制御情報は、受信周波数帯域の情報の他に、各チャネルに関する受信タイミング、多重方法、無線リソース配置情報などの情報が含まれている。
【0074】
受信信号は、受信部101において受信される。受信部101は、受信制御情報で指定された周波数帯域で信号を受信する。受信された信号は、復調部102へと入力される。復調部102は、受信信号の復調を行い、復号部103へと信号を入力して下りリンクデータと下りリンク制御データとを正しく復号し、復号された各データを上位レイヤ111へと入力する。測定処理部104は、セル(コンポーネントキャリア)毎の下りリンクリファレンスシグナルの受信品質(SIR、SINR、RSRP、RSRQ、RSSI、パスロスなど)の測定や、物理下りリンク制御チャネルまたは物理下りリンク共用チャネルの受信誤り率の測定結果に基づいて下りリンク測定情報を生成し、下りリンク測定情報を上位レイヤ111へと出力する。下りリンク測定情報は、上位レイヤ111において、無線リンク再確立を伴う無線リンク障害(Radio link failure)の検出、および上りリンク送信の停止を伴う無線リンク監視(Radio link monitoring)の実施のために用いられる。
【0075】
同様に、測定処理部104の下りリンク測定情報はPHR計算部112へ出力される。PHR計算部112は、上位レイヤ111よりPHRの報告に必要なパラメータを含むPHR制御情報が設定される。PHR制御情報は、PHRの報告に関する複数のタイマー(PHR報告禁止タイマー、PHR周期タイマー)、PHRの報告形式(タイプ1またはタイプ2)、トリガ条件に用いるパスロスの変化の差分値、およびPHRの計算に関するオフセット値や係数を少なくとも含む。
【0076】
PHR計算部112は、設定済みのPHR制御情報と、下りリンク測定情報と、上りリンクの送信状態とに基づき、活性化しているコンポーネントキャリア(セカンダリセル)毎にパワーヘッドルームの値を計算する。また、PHR計算部112は、入力された下りリンク測定情報とPHR制御情報に含まれる複数のタイマーの状態に基づいて、PHRのトリガ条件が満たされたかどうかをサブフレーム毎に判断する。そして、PHR計算部112は、PHRのトリガ条件のいずれかが満たされたと判断したときに、トリガ時のサブフレームにおける上りリンクの物理チャネルの送信状態と、設定された報告形式と、下りリンク測定情報とに基づいて計算したPHRの値を上位レイヤ111へと出力する。
【0077】
また、送信に先立ち、上位レイヤ111より制御部105へ移動局装置制御情報が入力され、送信に関する制御情報が送信制御情報として、ランダムアクセス制御部106、符号部107、変調部108、送信部109へ適切に入力される。送信制御情報は、送信信号の上りリンクスケジューリング情報として、符号化情報、変調情報、送信周波数帯域の情報、各チャネルに関する送信タイミング、多重方法、無線リソース配置情報などの情報が含まれている。ランダムアクセス制御情報は上位レイヤ111からランダムアクセス制御部106に入力される。ランダムアクセス制御情報には、プリアンブル情報や物理ランダムアクセスチャネル送信用の無線リソース情報などが含まれる。上位レイヤ111は、必要に応じてタイミング管理部110へ上りリンク送信タイミングの調整に用いる送信タイミング調整情報と送信タイミングタイマーを設定する。タイミング管理部110は、設定された情報に基づき上りリンク送信タイミングの状態(送信タイミング調整状態または送信タイミング非調整状態)を管理する。
【0078】
符号部107には、上位レイヤ111より上りリンクデータと上りリンク制御データが入力されるほか、ランダムアクセス制御部106から、物理ランダムアクセスチャネルの送信に関するランダムアクセスデータ情報が入力される。符号部107は、ランダムアクセスデータ情報に基づき物理ランダムアクセスチャネルで送信されるプリアンブル系列を生成する。また、符号部107は送信制御情報に従い、各データを適切に符号化し、変調部108に出力する。
【0079】
変調部108は、符号部107からの出力を変調する。送信部109は、変調部108の出力を周波数領域にマッピングすると共に、周波数領域の信号を時間領域の信号へ変換し、既定の周波数の搬送波にのせて電力増幅を行う。さらに、タイミング管理部110より入力された送信タイミング調整情報に従って上りリンク送信タイミングを調整して送信する。上りリンク制御データが配置される物理上りリンク共用チャネルは、典型的にはレイヤ3メッセージ(無線リソース制御メッセージ;RRCメッセージ)を構成する。図1において、その他の移動局装置1の構成要素は本実施の形態に関係ないため省略してある。
【0080】
図2は、本発明の第1の実施形態による基地局装置2の一例を示すブロック図である。本基地局装置は、受信部201、復調部202、復号部203、制御部204、符号部205、変調部206、送信部207、上位レイヤ208、ネットワーク信号送受信部209から構成される。
【0081】
上位レイヤ208は、下りリンクデータと下りリンク制御データを符号部205へ入力する。符号部205は、入力されたデータを符号化し、変調部206へ入力する。変調部206は、符号化した信号の変調を行なう。また、変調部206から出力される信号は送信部207に入力される。送信部207は、入力された信号を周波数領域にマッピングした後、周波数領域の信号を時間領域の信号へ変換し、既定の周波数の搬送波にのせて電力増幅を行い送信する。下りリンク制御データが配置される物理下りリンク共用チャネルは、典型的にはレイヤ3メッセージ(RRCメッセージ)を構成する。
【0082】
また、受信部201は、移動局装置1から受信した信号をベースバンドのデジタル信号に変換する。デジタル信号は、復調部202へ入力されて復調される。復調部202で復調された信号は続いて復号部203へ入力されて復号され、正しく復号された上りリンク制御データや上りリンクデータを上位レイヤ208へと出力する。これら各ブロックの制御に必要な基地局装置制御情報は、受信制御情報と送信制御情報によって構成される基地局装置2の無線通信制御に必要な情報であり、上位のネットワーク装置(MMEやゲートウェイ装置)やシステムパラメータにより設定され、上位レイヤ208が必要に応じて制御部204へ入力する。制御部204は、送信に関連する基地局装置制御情報を、送信制御情報として符号部205、変調部206、送信部207の各ブロックに、受信に関連する基地局装置制御情報を、受信制御情報として受信部201、復調部202、復号部203の各ブロックに適切に入力する。基地局装置2のRRCは、上位レイヤ208の一部として存在する。
【0083】
一方、ネットワーク信号送受信部209は、基地局装置2間あるいは上位のネットワーク装置と基地局装置2との間の制御メッセージの送信または受信を行なう。図2において、その他の基地局装置2の構成要素は本実施の形態に関係ないため省略してある。
【0084】
また、本移動局装置1と本基地局装置2が配置される通信システムのネットワーク構成は、図11に示したものと同様のものを適用できる。
【0085】
図3を用いて、複数の送信タイミングを管理する移動局装置1がPHRを報告可能となるタイミングについて説明する。図3の横軸は時間の経緯を示す。移動局装置1は、基地局装置2から少なくとも一つ以上の不活性化されたセカンダリセルが設定されている状態から開始される。このような状態は、典型的には新規にセカンダリセルが追加された後、またはハンドオーバー実施後の状態とみなすことができる。更に、当該セカンダリセルは、プライマリセルと異なる上りリンク送信タイミングを必要とする。
【0086】
時刻T01は、移動局装置1が不活性化のセカンダリセルに対して活性化コマンドを受信したことを示す。活性化コマンドは、従来通りMAC制御要素で通知されても良いし、RRCメッセージや物理下りリンク制御チャネルで通知されても良い。
【0087】
このとき、移動局装置1は、活性化したセカンダリセルの下りリンクの測定処理や必要であれば上りリンクにおける上りリンクリファレンスシグナルの送信などのセカンダリセルの活性化に伴う必要な設定を適用するための処理時間が必要である。移動局装置1は、この処理時間に用いる遅延時間n1(例えば8サブフレーム)が経過した時刻T02において、実際にセカンダリセルが活性化したとみなす。また、時刻T02は、当該セカンダリセルに対するランダムアクセス手順が開始可能となるタイミングと一致している。
【0088】
移動局装置1は、時刻T02以降のいずれかのタイミングでセカンダリセルにおけるランダムアクセス手順を開始し、物理ランダムアクセスチャネルを基地局装置2へ送信する。典型的には、時刻T02以降で当該移動局装置1が利用可能なランダムアクセスリソースが存在する直近のサブフレームでランダムアクセス手順が開始される。そして、基地局装置2から、時刻T03においてランダムアクセスレスポンスを受信する。ランダムアクセス手順は、当該セカンダリセルで実施される。
【0089】
時刻T02から時刻T03の間に、移動局装置1がセカンダリセルでランダムアクセス手順を開始するタイミングとして、例えば、(1)セカンダリセルが活性化されたタイミングと同じとき、(2)セカンダリセルの活性化後にMAC制御要素でランダムアクセスの開始が指示されたとき、(3)セカンダリセルの活性化後に物理下りリンク制御チャネルPDCCHでランダムアクセスの開始が指示されたとき、などが考えられるが、本実施形態では上述したタイミングのいずれかを用いて良い。
【0090】
そして、時刻T03において、移動局装置1がランダムアクセスレスポンスを受信することで当該セカンダリセルセルの上りリンク送信タイミング(セカンダリセル上りリンク送信タイミング)を取得する。移動局装置1は、当該セカンダリセルの上りリンクの送信タイミングを調整するための処理時間として遅延時間n2が必要である。移動局装置1は、この遅延時間n2(例えば4サブフレーム)が経過した時刻T04以降に当該セカンダリセルのパワーヘッドルーム報告が可能(PHR送信可能)であると判断する。
【0091】
そして、移動局装置1は、PHRのトリガ条件が満たされた場合と同様の手順を開始し、プライマリセルと送信タイミング調整状態および活性化しているセカンダリセルのPHRをMAC制御要素に含めて基地局装置2へ送信する。
【0092】
すなわち、本実施形態の移動局装置1は、従来のEUTRAのPHRのトリガ条件に代えて、PHRのトリガ条件として、(1)PHR報告禁止タイマー(Prohibit PHR timer)が停止しているときであって、プライマリセルまたは送信タイミング調整状態および活性化しているセカンダリセルのパスロス値が前回PHRを報告したときよりも所定の値以上劣化したとき、(2)PHR周期タイマー(Periodic PHR timer)が満了したとき、(3)PHRの設定が変更されたとき、(4)セカンダリセルを活性化して送信タイミング調整状態となったとき、を使用する。移動局装置1は、上述したPHRのトリガ条件のいずれかが満たされた場合に、プライマリセルと送信タイミング調整状態の活性化しているセカンダリセルのPHRを基地局装置2へ送信する。
【0093】
図4は、本実施形態に係る移動局装置1と基地局装置2とのセカンダリセルの活性化に伴うパワーヘッドルーム報告に関するシグナリングのやり取りを示したシーケンスチャート図である。移動局装置1は、基地局装置2から少なくとも一つ以上の不活性化されたセカンダリセルが設定されている状態から開始される。更に、当該セカンダリセルは、プライマリセルと異なる上りリンク送信タイミングが設定されている。
【0094】
ここで、ステップS101において、送信タイミング非調整状態のセカンダリセルに対する活性化コマンドが基地局装置2より通知される。活性化コマンドは、従来通りMAC制御要素で通知されても良いし、RRCメッセージや物理下りリンク制御チャネルで通知されても良い。
【0095】
移動局装置1は、活性化したセカンダリセルに対してランダムアクセス手順を開始するか否かのランダムアクセストリガの判定を行う(ステップS102)。移動局装置1がセカンダリセルでランダムアクセス手順を開始するタイミングとして、例えば、(1)セカンダリセルが活性化されたタイミングと同じ、(2)セカンダリセルの活性化後にMAC制御要素でランダムアクセス手順の開始が指示されたとき、(3)セカンダリセルの活性化後に物理下りリンク制御チャネルPDCCHでランダムアクセス手順の開始が指示されたとき、(4)セカンダリセルの活性化後にレイヤ3メッセージ(RRCメッセージ)でランダムアクセス手順の開始が指示されたとき、などが考えられるが、本実施形態では上述したタイミングのいずれかを用いて良い。
【0096】
移動局装置1は、ステップS103にてランダムアクセス手順を送信タイミング非調整状態のセカンダリセルに対して開始し、基地局装置2に対して物理ランダムアクセスチャネルを送信する。物理ランダムアクセスチャネルを受信した基地局装置2は、ステップS104にてランダムアクセスレスポンスを当該移動局装置1に対して送信する。ステップS103およびステップS104の詳細は、図9または図10と同じで良い。
【0097】
そして、移動局装置1は、セカンダリセル上りリンク送信タイミング取得(ステップS105)を行い、ステップS104のランダムアクセスレスポンスより上りリンクの送信タイミング調整情報を取得する。上りリンク送信タイミングは、送信タイミング調整情報を取得してから所定の時間後(例えば4サブフレーム後)に調整される。移動局装置1は、新たに活性化された当該セカンダリセルの上りリンクの状態が送信タイミング調整状態となった場合に、PHRのトリガ条件が満たされたと判定し、物理層から通知されたPHRをMAC制御情報に設定してパワーヘッドルーム報告を行う(ステップS106)。
【0098】
図5は、本実施形態に係る移動局装置1のセカンダリセルの活性化に伴うパワーヘッドルーム報告に関するフローチャート図である。本フローチャート図は、移動局装置1に対して送信タイミング非調整状態のセカンダリセルが少なくとも一つ設定されており、当該セカンダリセルに対する活性化コマンドを受信したときに開始される。
【0099】
まず、移動局装置1は、セカンダリセルに対してランダムアクセス手順がトリガされたか否かを監視する(ステップS201)。移動局装置1がセカンダリセルでランダムアクセス手順を開始するタイミングとして、例えば、(1)セカンダリセルが活性化されたタイミングと同じ、(2)セカンダリセルの活性化後にMAC制御要素でランダムアクセスの開始が指示されたとき、(3)セカンダリセルの活性化後に物理下りリンク制御チャネルPDCCHでランダムアクセスの開始が指示されたとき、(4)セカンダリセルの活性化後にレイヤ3メッセージ(RRCメッセージ)でランダムアクセスの開始が指示されたとき、などが考えられるが、本実施形態では上述したタイミングのいずれかを用いて良い。
【0100】
移動局装置1は、セカンダリセルのランダムアクセス手順が開始された場合はステップ202へと進み、それ以外はステップS201へと戻り、トリガされるのを引き続き監視する。
【0101】
移動局装置1は、ステップ202で、ランダムアクセス手順を開始する。そして、ランダムアクセス手順の実施と並行してパワーヘッドルームが報告可能となるタイミングを監視し、パワーヘッドルームが報告可能であるか否かの判定を毎サブフレーム行う(ステップS203)。移動局装置1は、上述したようにランダムアクセス手順によって活性化されたセカンダリセルの上りリンクの状態が送信タイミング調整状態となった時に、パワーヘッドルームが報告可能であると判定する。換言すれば、移動局装置1は、活性化されたセカンダリセルの送信タイミング調整情報を受信してから所定の時間が経過した後にパワーヘッドルームが報告可能であると判定する。
【0102】
そして、移動局装置1は、物理層から通知されたプライマリセルのPHR、および活性化かつ送信タイミング調整状態のセカンダリセルのPHRをMAC制御情報に含めてパワーヘッドルーム報告を行う(ステップS204)。
【0103】
なお、図3から図5に適用されるランダムアクセス手順は、Contention based Random Access(競合ベースランダムアクセス)手順とNon-contention based Random Access(非競合ベースランダムアクセス)手順のどちらであっても良い。すなわち、どちらのランダムアクセス手順を開始した場合であっても、移動局装置1が新たに活性化されたセカンダリセルの送信タイミング調整情報をランダムアクセスレスポンスで基地局装置2から通知され、活性化されたセカンダリセルの上りリンク送信タイミングを送信タイミング調整情報に基づいて調整した後にPHRを送信するという点は同じである。
【0104】
なお、移動局装置1は、活性化されたセカンダリセルがプライマリセルと同じ上りリンク送信タイミングであった場合や、活性化されたセカンダリセルが上りリンク送信タイミングが調整済み(送信タイミング調整状態)の場合、あるいは活性化されたセカンダリセルに上りリンクが設定されていない場合は、従来のPHR報告のトリガ条件を適用する。
【0105】
さらに、PHRの報告形式は、タイプ1とタイプ2のどちらであっても良く、そのいずれであっても本発明の趣旨には影響しない。
【0106】
このように、第1の実施形態によれば、基地局装置2は、移動局装置1に上りリンク送信タイミングが非調整の上りリンク周波数(上りリンクコンポーネントキャリア)を持つセル(セカンダリセル)が設定されている場合に、当該セカンダリセルを活性化させることで、移動局装置1に当該セカンダリセルの上りリンク送信タイミングを調整させた後に関連するセルのパワーヘッドルームを報告させる。また、移動局装置1は、上りリンク送信タイミングが非調整のセカンダリセルが活性化されたときに、ランダムアクセス手順を開始し、当該セカンダリセルの上りリンク送信タイミングを調整した後にパワーヘッドルームを基地局装置2へと送信する。
【0107】
以上のように、第1の実施形態のように構成することによって、移動局装置1が基地局装置2に対してスケジューリングできないコンポーネントキャリア(すなわち、不活性化されたセカンダリセル)のPHRを報告してしまうという従来のEUTRAの問題を解決することができる。
【0108】
本実施形態の移動局装置1は、ランダムアクセス手順を開始して送信タイミングが調整された後にパワーヘッドルームを報告する。移動局装置1は、パワーヘッドルームの報告に用いられるL2メッセージを拡張することなく再利用することができる。このように、移動局装置1は、ランダムアクセス手順によって送信タイミング調整状態となった後で活性化しているセル(コンポーネントキャリア)のパワーヘッドルームを報告するため、無駄なシグナリングを削減することが可能となる。
【0109】
また、本実施形態の基地局装置2は、移動局装置1が報告したパワーヘッドルームがスケジューリング可能なコンポーネントキャリアであることを知っているため、パワーヘッドルーム報告に基づいてセカンダリセルの変調方式やリソース割り当てを効率的に行うことができる。このように、基地局装置2は報告されたパワーヘッドルームに基づいて適切なスケジューリングを行うことが可能となる。
【0110】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について以下に説明する。本実施形態は、ランダムアクセス手順が成功してからパワーヘッドルームを報告するパワーヘッドルーム報告方法について説明する。本実施形態に用いる移動局装置1と基地局装置2の構成は、それぞれ図1と図2と同じ構成で良いため説明を省略する。
【0111】
また、本移動局装置1と本基地局装置2が配置される通信システムのネットワーク構成は、図11に示したものと同様のものを適用できる。
【0112】
図6を用いて、複数の送信タイミングを管理する移動局装置1がPHRを報告可能となるタイミングについて説明する。図6の横軸は時間の経緯を示す。移動局装置1は、基地局装置2から少なくとも一つ以上の不活性化されたセカンダリセルが設定されている状態から開始される。このような状態は、典型的には新規にセカンダリセルが追加された後、またはハンドオーバー実施後の状態とみなすことができる。更に、当該セカンダリセルは、プライマリセルと異なる上りリンク送信タイミングを必要とする。
【0113】
図6における時刻T01から時刻T04までの一連の処理は、図3と同じであるため、同じ符号を配置してその詳細を略し、主に時刻T04以降の動作の説明を行う。
【0114】
移動局装置1は、セカンダリセルの上りリンクの送信タイミングを調整するための処理時間として遅延時間n2(例えば4サブフレーム)が経過した時刻T04以降、必要であれば、実行中のランダムアクセス手順を継続する。そして、ランダムアクセス手順が成功した時刻T05以降に当該セカンダリセルのパワーヘッドルーム報告が可能(PHR送信可能)であると判断する。
【0115】
そして、移動局装置1は、PHRのトリガ条件が満たされた場合と同様の手順を開始し、プライマリセルと送信タイミング調整状態および活性化しているセカンダリセルのPHRをMAC制御要素に含めて基地局装置2へ送信する。
【0116】
すなわち、本実施形態の移動局装置1は、従来のEUTRAのPHRのトリガ条件に代えて、PHRのトリガ条件として、(1)PHR報告禁止タイマー(Prohibit PHR timer)が停止しているときであって、プライマリセルまたは送信タイミング調整状態および活性化しているセカンダリセルのパスロス値が前回PHRを報告したときよりも所定の値以上劣化したとき、(2)PHR周期タイマー(Periodic PHR timer)が満了したとき、(3)PHRの設定が変更されたとき、(4)セカンダリセルのランダムアクセス手順が成功したとき、を使用する。移動局装置1は、上述したPHRのトリガ条件のいずれかが満たされた場合に、プライマリセルと送信タイミング調整状態の活性化しているセカンダリセルのPHRを基地局装置2へ送信する。
【0117】
図7および図8は、本実施形態に係る移動局装置1と基地局装置2とのセカンダリセルの活性化に伴うパワーヘッドルーム報告に関するシグナリングのやり取りを示したシーケンスチャート図である。図7はContention based Random Access手順を行った場合の例を示し、図8はNon-contention based Random Access手順を行った場合の例を示す。
【0118】
図7において、移動局装置1は、基地局装置2から少なくとも一つ以上の不活性化されたセカンダリセルが設定されている状態から開始される。更に、当該セカンダリセルは、プライマリセルと異なる上りリンク送信タイミングが設定されている。ここで、ステップS301において、送信タイミング非調整状態のセカンダリセルに対する活性化コマンドが基地局装置2より通知される。活性化コマンドは、従来通りMAC制御要素で通知されても良いし、RRCメッセージや物理下りリンク制御チャネルで通知されても良い。
【0119】
移動局装置1は、活性化したセカンダリセルに対してランダムアクセス手順を開始するか否かのランダムアクセストリガの判定を行う(ステップS302)。移動局装置1がセカンダリセルでランダムアクセス手順を開始するタイミングは、図4におけるステップS102で説明したものと同様で良いため、その詳細を省略する。ただし、基地局装置2は移動局装置1に対して個別プリアンブルを通知せず、移動局装置1はランダムアクセス手順としてContention based Random Access手順を開始する。
【0120】
移動局装置1は、ステップS303にてContention based Random Access手順を送信タイミング非調整状態のセカンダリセルに対して開始し、基地局装置2に対して物理ランダムアクセスチャネルを送信する。物理ランダムアクセスチャネルを受信した基地局装置2は、ステップS304にてランダムアクセスレスポンスを当該移動局装置1に対して送信する。ステップS303およびステップS304の詳細は、図9と同じで良い。
【0121】
そして、移動局装置1は、セカンダリセル上りリンク送信タイミング取得(ステップS305)を行い、ステップS304のランダムアクセスレスポンスより上りリンクの送信タイミング調整情報を取得する。上りリンク送信タイミングは、送信タイミング調整情報を取得してから所定の時間後(例えば4サブフレーム後)に調整される。移動局装置1は、新たに活性化された当該セカンダリセルの上りリンクの状態が送信タイミング調整状態とみなし、上位レイヤメッセージを基地局装置2へ送信する(ステップS306)。そして、基地局装置2は、移動局装置1に衝突確認メッセージ(コンテンションレゾリューション、Contention resolution)を送信する(ステップS307)。ステップS306およびステップS307の詳細は、図9と同じで良い。
【0122】
移動局装置1は、ステップS307で受信したコンテンションレゾリューションを解析し、ステップS306で送信した上位レイヤメッセージに対する応答であるかを確認する。そして、当該上位レイヤメッセージに対する応答であることを確認した場合、Contention based Random Access手順が成功したと判断する(ステップS308)。移動局装置1は、Contention based Random Access手順が成功した場合、PHRのトリガ条件が満たされたと判定し、物理層から通知されたPHRをMAC制御情報に設定してパワーヘッドルーム報告を行う(ステップS309)。
【0123】
一方、図8において、移動局装置1は、基地局装置2から少なくとも一つ以上の不活性化されたセカンダリセルが設定されている状態から開始される。更に、当該セカンダリセルは、プライマリセルと異なる上りリンク送信タイミングを必要とする。ここで、ステップS401において、送信タイミング非調整状態のセカンダリセルに対する活性化コマンドが基地局装置2より通知される。活性化コマンドは、従来通りMAC制御要素で通知されても良いし、RRCメッセージや物理下りリンク制御チャネルで通知されても良い。
【0124】
移動局装置1は、活性化したセカンダリセルに対してランダムアクセス手順を開始するか否かのランダムアクセストリガの判定を行う(ステップS402)。移動局装置1がセカンダリセルでランダムアクセス手順を開始するタイミングは、図4におけるステップS102で説明したものと同様で良いため、その詳細を省略する。ただし、基地局装置2は移動局装置1に対して個別プリアンブルを通知し、移動局装置1はランダムアクセス手順としてNon-contention based Random Access手順を開始する。基地局装置2が移動局装置1に対して個別プリアンブルを通知する方法は、PDCCHに含めて通知したり、MAC制御要素で通知したり、RRCメッセージで通知したりする方法のいずれかまたは複数を用いることができる。
【0125】
移動局装置1は、ステップS403にてNon-contention based Random Access手順を送信タイミング非調整状態のセカンダリセルに対して開始し、基地局装置2に対して物理ランダムアクセスチャネルを送信する。物理ランダムアクセスチャネルを受信した基地局装置2は、ステップS404にてランダムアクセスレスポンスを当該移動局装置1に対して送信する。ステップS403およびステップS404の詳細は、図10と同じで良い。
【0126】
そして、移動局装置1は、セカンダリセル上りリンク送信タイミング取得(ステップS405)を行い、ステップS404のランダムアクセスレスポンスより上りリンクの送信タイミング調整情報を取得する。上りリンク送信タイミングは、送信タイミング調整情報を取得してから所定の時間後(例えば4サブフレーム後)に調整される。移動局装置1は、新たに活性化された当該セカンダリセルの上りリンクの状態を送信タイミング調整状態とみなす。
【0127】
移動局装置1は、ステップ405の処理と並行して、ステップS404でランダムアクセスレスポンスを受信したことでNon-contention based Random Access手順が成功したと判断する(ステップS406)。移動局装置1は、Non-contention based Random Access手順が成功した場合、PHRのトリガ条件が満たされたと判定し、物理層から通知されたPHRをMAC制御情報に設定してパワーヘッドルーム報告を行う(ステップS407)。
【0128】
本実施形態に係る移動局装置1のセカンダリセルの活性化に伴うパワーヘッドルーム報告に関するフローチャート図は、図5と同じフローチャートを用いて説明することができる。ただし、図5のステップS203において、移動局装置1はパワーヘッドルームが報告可能であるか否かの判定に、活性化されたセカンダリセルで実行したランダムアクセス手順が成功した時に、パワーヘッドルームが報告可能であると判定する。換言すれば、移動局装置1は、Contention based Random Access手順であれば自局宛のコンテンションレゾリューションを受信したとき、Non-contention based Random Access手順であればランダムアクセスレスポンスの受信に成功したときに当該ランダムアクセスを実施したセカンダリセルのパワーヘッドルームが報告可能であると判定する。
【0129】
なお、移動局装置1は、活性化されたセカンダリセルがプライマリセルと同じ上りリンク送信タイミングであった場合や、活性化されたセカンダリセルが上りリンク送信タイミングが調整済み(送信タイミング調整状態)の場合、あるいは活性化されたセカンダリセルに上りリンクが設定されていない場合は、従来のPHR報告のトリガ条件を適用する。
【0130】
さらに、PHRの報告形式は、タイプ1とタイプ2のどちらであっても良く、そのいずれであっても本発明の趣旨には影響しない。
【0131】
このように、第2の実施形態によれば、基地局装置2は、移動局装置1に上りリンク送信タイミングが非調整の上りリンク周波数(上りリンクコンポーネントキャリア)を持つセル(セカンダリセル)が設定されている場合に、当該セカンダリセルを活性化させることで、移動局装置1に当該セカンダリセルにおけるランダムアクセス手順が成功した後に関連するセルのパワーヘッドルームを報告させる。また、移動局装置1は、上りリンク送信タイミングが非調整のセカンダリセルが活性化されたときに、ランダムアクセス手順を開始し、当該ランダムアクセス手順が成功した後にパワーヘッドルームを基地局装置2へと送信する。
【0132】
以上のように、第2の実施形態のように構成することによって、移動局装置1が基地局装置2に対してスケジューリングできないコンポーネントキャリア(すなわち、不活性化されたセカンダリセル)のPHRを報告してしまうという従来のEUTRAの問題を解決することができる。
【0133】
特に、第2の実施形態ではランダムアクセス手順が成功したことを確認してからパワーヘッドルームが報告されるため、送信タイミングの調整後にランダムアクセス手順が失敗した場合(特に、Contention based Random Access手順で発生する可能性がある)を考慮した効率的なパワーヘッドルームの報告を行うことが可能となる。換言すれば、移動局装置1は、セカンダリセルが基地局装置2でスケジューリング可能となってからパワーヘッドルームを報告するため、無駄なシグナリングを削減することが可能となる。
【0134】
本実施形態の移動局装置1は、ランダムアクセス手順が成功した後にパワーヘッドルームを報告する。移動局装置1は、パワーヘッドルームの報告に用いられるL2メッセージを拡張することなく再利用することができる。このように、移動局装置1は、ランダムアクセス手順が成功した後で活性化しているセル(コンポーネントキャリア)のパワーヘッドルームを報告するため、無駄なシグナリングを削減することが可能となる。
【0135】
また、本実施形態の基地局装置2は、移動局装置1が報告したパワーヘッドルームがスケジューリング可能なコンポーネントキャリアであることを知っているため、パワーヘッドルーム報告に基づいてセカンダリセルの変調方式やリソース割り当てを効率的に行うことができる。このように、基地局装置2は報告されたパワーヘッドルームに基づいて適切なスケジューリングを行うことが可能となる。
【0136】
なお、以上説明した実施形態は単なる例示に過ぎず、様々な変形例、置換例を用いて実現することができる。例えば、本上りリンク送信方式は、FDD(周波数分割復信)方式とTDD(時分割復信)方式のどちらの通信システムに対しても適用可能である。また、各実施形態において、下りリンクコンポーネントキャリアの測定値としてパスロスを用いた例について説明したが、それ以外の測定値(SIR、SINR、RSRP、RSRQ、RSSI、BLER)を代わり用いても良いし、これらの測定値の複数を組み合わせて使用することも可能である。
【0137】
また、説明の便宜上、実施形態の移動局装置1および基地局装置2を機能的なブロック図を用いて説明したが、移動局装置1および基地局装置2の各部の機能またはこれらの機能の一部を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより移動局装置1や基地局装置2の制御を行なっても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0138】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、半導体媒体(例えば、RAM、不揮発性メモリカード等)、光記録媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD、BD等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるディスクユニット等の記憶装置のことをいう。さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0139】
また、上記各実施形態に用いた移動局装置1および基地局装置2の各機能ブロック、または諸特徴は、典型的にはIC(集積回路)であるLSIを含む回路内で構成されてもよい。その場合、LSIの集積密度はどのような密度で実現されていても良い。各機能ブロックおよび諸特徴は個別にチップ化してもよいし、一部または全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
【0140】
以上、この発明の実施形態について特定の具体例に基づいて詳述してきたが、本発明の趣旨ならびに特許請求の範囲は、これら特定の具体例に限定されないことは明らかである。すなわち、本明細書の記載は例示説明を目的としたものであり、本発明に対して何ら制限を加えるものではない。
【符号の説明】
【0141】
1…移動局装置
2…基地局装置
11〜13…送信装置
101、201…受信部
102、202…復調部
103、203…復号部
104…測定処理部
105、204…制御部
106…ランダムアクセス制御部
107、205…符号部
108、206…変調部
109、207…送信部
110…タイミング管理部
111、208…上位レイヤ
112…PHR計算部
209…ネットワーク信号送受信部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムであって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記基地局装置は、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化し、
前記移動局装置は、前記第3の在圏セルを活性化後、前記基地局装置からの送信タイミング調整情報に基づき活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記送信タイミング調整情報はContention based Random Access手順に用いて前記基地局装置から通知されることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記送信タイミング調整情報はNon-contention based Random Access手順を用いて前記基地局装置から通知されることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記移動局装置は、第1の在圏セルと、活性化されている第2の在圏セルと、活性化されており、かつ上りリンクの送信タイミングが調整されている第3の在圏セルを含めて前記パワーヘッドルームを報告することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムであって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記基地局装置は、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化し、
前記移動局装置は、前記第3の在圏セルが活性化された場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順が成功したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする通信システム。
【請求項6】
前記ランダムアクセス手順はContention based Random Access手順であり、前記移動局装置は、コンテンションレゾリューションを正しく受信したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記ランダムアクセス手順はNon-contention based Random Access手順であり、前記移動局装置は、ランダムアクセスレスポンスを正しく受信したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする請求項5に記載の通信システム。
【請求項8】
前記移動局装置は、第1の在圏セルと、活性化されている第2の在圏セルと、活性化されており、かつランダムアクセス手順が成功した第3の在圏セルを含めて前記パワーヘッドルームを報告することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項9】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置であって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記基地局装置が前記第3の在圏セルを活性化した場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順を用いて取得した送信タイミング調整情報に基づいて活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする移動局装置。
【請求項10】
第1の在圏セルと、活性化されている第2の在圏セルと、活性化されており、かつ上りリンクの送信タイミングが調整されている第3の在圏セルを含めて前記パワーヘッドルームを報告することを特徴とする請求項9に記載の移動局装置。
【請求項11】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置であって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記基地局装置が前記第3の在圏セルを活性化した場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順が成功したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする移動局装置。
【請求項12】
前記ランダムアクセス手順がContention based Random Access手順である場合、コンテンションレゾリューションを正しく受信したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする請求項11に記載の移動局装置。
【請求項13】
前記ランダムアクセス手順がNon-contention based Random Access手順である場合、ランダムアクセスレスポンスを正しく受信したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする請求項11に記載の移動局装置。
【請求項14】
第1の在圏セルと、活性化されている第2の在圏セルと、活性化されており、かつランダムアクセス手順が成功した第3の在圏セルを含めて前記パワーヘッドルームを報告することを特徴とする請求項11に記載の移動局装置。
【請求項15】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける基地局装置であって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化することによってランダムアクセス手順の開始を要求するとともに、前記移動局装置に対して、前記ランダムアクセス手順を用いて通知した送信タイミング調整情報に基づいて活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整した後に前記パワーヘッドルームを報告させることを特徴とする基地局装置。
【請求項16】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける基地局装置であって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化することによってランダムアクセス手順の開始を要求するとともに、前記移動局装置に対して、前記ランダムアクセス手順が成功した後に前記パワーヘッドルームを報告させることを特徴とする基地局装置。
【請求項17】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置のパワーヘッドルーム報告方法であって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記基地局装置は、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化し、
前記移動局装置は、前記第3の在圏セルを活性化後、前記基地局装置からの送信タイミング調整情報に基づき活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とするパワーヘッドルーム報告方法。
【請求項18】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置のパワーヘッドルーム報告方法であって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記基地局装置は、前記移動局装置に設定した前記第3の在圏セルを活性化し、
前記移動局装置は、前記第3の在圏セルが活性化された場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順が成功したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とするパワーヘッドルーム報告方法。
【請求項19】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置に搭載される集積回路であって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記基地局装置が前記第3の在圏セルを活性化した場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順を用いて取得した送信タイミング調整情報に基づいて活性化した前記第3の在圏セルの上りリンクの送信タイミングを調整したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする集積回路。
【請求項20】
接続している複数の在圏セルの送信電力の余力を示すパワーヘッドルームを移動局装置から基地局装置に対して報告する通信システムにおける移動局装置に搭載される集積回路であって、
前記複数の在圏セルは、常に活性化している第1の在圏セルと、前記第1の在圏セルと同じ送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第2の在圏セルと、前記第1の在圏セルと異なる送信タイミングを持つ活性化または不活性化される第3の在圏セルとで構成されており、
前記基地局装置が前記第3の在圏セルを活性化した場合にランダムアクセス手順を開始し、前記ランダムアクセス手順が成功したときにパワーヘッドルームのトリガ条件が満たされたと判断することを特徴とする集積回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−169913(P2012−169913A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29823(P2011−29823)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】