通信システムおよび子局端末
【課題】列車無線システムにおいて、列車乗務員が用いる移動局は、できるだけ高データレートでデータの送受信を行い、鉄道保守員等が携帯する移動局は電池駆動であり、長時間駆動という観点からデータレートを低くし、消費電力を減らしたいという両者の要求を満たす通信システムを提供する。
【解決手段】指令局と列車に搭載された移動局間のデータ通信時は、送受信スロット内の全データを用い、指令局と鉄道保守員が携帯する移動局間のデータ通信時は、送受信スロット内の一部データを用いることで、指令局と列車に搭載された移動局間のデータ通信は高データレートで行いつつ、指令局と鉄道保守員が携帯する移動局間のデータ通信は低データレートで行うことが可能となる。
【解決手段】指令局と列車に搭載された移動局間のデータ通信時は、送受信スロット内の全データを用い、指令局と鉄道保守員が携帯する移動局間のデータ通信時は、送受信スロット内の一部データを用いることで、指令局と列車に搭載された移動局間のデータ通信は高データレートで行いつつ、指令局と鉄道保守員が携帯する移動局間のデータ通信は低データレートで行うことが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局と子局端末との間で音声データ、画像データ等の各種データの通信を行う通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
親局と子局端末との間で通信を行う通信システムとしては、電話回線や光ファイバ等の有線を介して通信を行う有線通信システムや無線電波を介して通信を行う無線通信システムがある。また、時間軸上で一定時間に分割してデータを格納して多重通信を行う時分割多重方式や周波数軸上で一定周波数に分割してデータを格納して多重通信を行う周波数多重方式があるが、いずれも親局、子局端末間でデータ通信を行う点では同じである。ここで、従来の時分割多重方式の無線通信システムの一例として、電車等の列車に代表される移動体に搭載された移動局と地上中央局等の基地局との通信を実現する列車無線システムが知られている。この種の列車無線システムにおいては、TDMAスロットを構成するタイムスロットの一部を用いて地上中央局と列車に搭載された移動局間で通信を行い、前記タイムスロットの残りを用いて前記地上中央局と線路保守員が携帯する移動局間で通信を行い、前記線路保守員が携帯する移動局にスロットを選択するスロット選択機能を設ける構成としている。このシステムでは、線路保守員が携帯する移動局より地上中央局と列車に搭載された移動局間の通信に用いるタイムスロットを選択することで、線路保守員は地上中央局と列車に搭載された移動局間の通話内容を聴取することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、従来の列車無線システムでは、線路保守員が携帯する移動局に設けられたスロット選択機能により、地上中央局と列車に搭載された移動局間の通話内容を受信することが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−112408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の列車無線システムは、以上のように構成されているので、線路保守員は列車乗務員に対する緊急通報等を聞いて、迅速に安全対策等を取ることが可能であるが、このとき、単位時間あたりに地上中央局から送信されるデータ量、すなわちデータレートは一定であり、列車乗務員、線路保守員ともに同じデータから復号される音声を聞いていた。ここで、基地局と移動局間のデータ伝送時のデータレートが高いほど、消費電力が高い。その一方で、鉄道保守員等が携帯する移動局(以下、携帯型移動局)は電池駆動であり、長時間駆動という観点からデータレートを低くし、消費電力を減らしたいという要求がある。一つの基地局と一つの移動局での通信、いわゆる一対一の通信の場合、双方のデータレートを変更する処理を経ることで、移動局に応じた適切なデータレートを設定することが可能である。ところが、一つの基地局から複数の移動局への同報のような通信、いわゆる一対多の通信の場合、基地局、移動局を含めたすべての局のデータレートを同じにする必要があることから、例えば、列車内に備えられた移動局(以下、列車搭載型移動局)と基地局との通信のデータレートが高い場合、携帯型移動局でも高データレートで基地局と通信をせざるを得ず、長時間駆動が不可能という問題があった。
【0006】
ここで、一対多通信の例を図18に示す。図18において、100は指令局、200は基地局、300は列車内に備えられた列車搭載型移動局、400は鉄道保守員が携帯する携帯型移動局、500は指令局100と基地局200を接続し、指令局100から基地局200へ指令信号を伝送する下り回線、600は指令局100と基地局200を接続し、列車搭載型移動局300または携帯型移動局400からの応答信号を伝送する上り回線である。図18において、基地局200を経由して指令局100から列車搭載型移動局300および携帯型移動局400への同報を行う場合、列車搭載型移動局300は、架線等より電源が供給されることから、できるだけ高データレートでデータの送受信を行うことが望ましい。一方、携帯型移動局400は、電池駆動により電源が供給されることから、できるだけ低データレートでデータの送受信を行うことで、データ送受信時の消費電力を低く抑え、長時間通話が可能となるようにすることが望まれる。列車搭載型移動局300と携帯型移動局400の、互いに相反する要求を満たすには、高データレート用、低データレート用の二つの回線を別回線として用意する必要があるが、この場合、同一通話内容を送信することになり、無線周波数の利用効率が悪いという問題があった。この問題は、無線周波数を有線回線に置き換えることで、無線通信システムに限らず、有線通信システム等の親局と子局端末との間でデータ通信を行う通信システム一般に共通する問題である。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、親局から子局端末へ送信するデータレートは高いデータレートの状態を保ちつつ、子局端末の状況に応じて、受信するデータ量を選択・受信することで、高データレートでのデータ通信が可能な第1の子局端末、低データレートでのデータ通信が可能な第2の子局端末および親局で構成される通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信システムは、送信信号を主要データと付加データとに変調して送信する親局と、前記親局が送信する主要データと付加データとを受信し、該主要データと付加データとから前記親局の送信信号を復調する第1の子局端末または、前記親局が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記親局の送信信号を復調する第2の子局端末の間で通信を行う通信システムにおいて、前記第1の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データと付加データとに変調して送信し、前記第2の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データのみに変調して送信し、前記親局は前記第1の子局端末が送信する主要データと付加データとを受信し、該主要データと付加データとから前記第1の子局端末の送信信号を復調する一方、前記第2の子局端末が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記第2の子局端末の送信信号を復調するよう構成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データと付加データとに変調して送信し、該主要データと付加データとから前記親局の送信信号を復調し、第2の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データのみに変調して送信し、前記親局が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記親局の送信信号を復調するよう構成したので、別回線を必要とせずに高データレートおよび低データレートでのデータ通信が可能な子局端末、親局で構成される通信システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1〜図17に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムを示す図であり、図2は、図1の移動体通信システムにおける指令局1の回路ブロック図、図3は、基地局2a〜2nの回路ブロック図、図4は、列車搭載型移動局3の回路ブロック図、図5は、携帯型移動局4の回路ブロック図である。図6は、指令局1、基地局2a〜2n、列車搭載型移動局3および携帯型移動局4間の通信手順を示すシーケンス図である。図7、図8は、それぞれ符号化部12−1(34−2)、47−2での処理の一部を示す図、図9、図10は、符号化部12−1(34−2)、47−2での処理内容をフローチャートの形にしたものであり、図11、図12は、それぞれ復号化部34−1(または12−2)、47−1(または12−2)での処理の一部を示す図、図13、図14、図15は、復号化部34−1、47−1、12−2での処理内容をフローチャートの形にしたものである。図16は、SW部43、46の処理を示す図である。また、図17は、標本化による折り返し歪除去フィルタの一例を示す図である。以下では、本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムとその構成要素の説明をし、その後動作について説明する。
【0011】
図1において、1は交換的な機能、基地局を制御する機能、基地局をひとまとめにしたゾーンを制御する機能を有する指令局、2a,2b,・・・,2nは列車の走行路に沿って設置された基地局、3は列車に搭載され、基地局2aを経由して指令局1との通信を行う列車搭載型移動局、4は鉄道保守員等が携帯し、基地局2aを経由して指令局1との通信を行う携帯型移動局である。また、5は指令局1と複数の基地局2a〜2n間を接続し、指令局1の指令員から基地局2a〜2nへ指令信号を伝送する下り回線、6は指令局1と複数の基地局2a〜2n間を接続し、基地局2a〜2nから指令局1への列車搭載型移動局3または携帯型移動局4からの応答信号を伝送する上り回線である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一部分を示す。
【0012】
図2において、11はマイク、12は信号処理部であり、アナログの指令信号をディジタルの指令信号に変換する符号化部12−1と、ディジタルの応答信号をアナログの応答信号に変換する復号化部12−2を備える。13はデータ多重部であり、指令信号を下り回線5に伝送する際に必要なフレームフォーマットの生成を行うフレーム生成部13−1と、応答信号を復号する際に必要なフレーム同期を行うフレーム同期部13−2を備えている。14は下り回線5と上り回線6に接続されたネットワークインタフェース、15はスピーカである。
【0013】
図3において、21は下り回線5と上り回線6に接続されたネットワークインタフェース、22はデータ多重部であり、無線回線で送信する際に必要なフレーム同期を行うフレーム同期部22−1と、応答信号を上り回線6に伝送する際に必要なフレームフォーマットを生成するフレーム生成部22−2を備えている。23は無線通信部であり、指令信号の変調を行う変調部23−1と、応答信号の復調を行う復調部23−2を備えている。24はアンテナ25を送信と受信で共用するための共用部である。
【0014】
図4において、31はアンテナ、32はアンテナ31を送信と受信で共用するための共用部、33は無線通信部であり、指令信号の復調を行う復調部33−1と、応答信号の変調を行う変調部33−2を備えている。34は信号処理部であり、ディジタルの指令信号をアナログの指令信号に変換する復号化部34−1と、アナログの応答信号をディジタルの応答信号に変換する符号化部34−2を備えている。35はスピーカ、36はマイクである。
【0015】
図5において、41はアンテナ、42はアンテナ41を送信と受信で共用するための共用部、43はメモリ部45に格納された情報に基づいて、アンテナ41で受信した指令信号を復調部44−1に入力するかどうかを切り替えるSW部(スイッチ部)、44は無線通信部であり、指令信号の復調を行う復調部44−1と、応答信号の変調を行う変調部44−2を備えている。46はメモリ部45に格納された情報に基づいて、ディジタルの応答信号を変調部44−2に入力するかどうかを切り替えるSW部(スイッチ部)、47は信号処理部であり、ディジタルの指令信号をアナログの指令信号に変換する復号化部47−1と、アナログの応答信号をディジタルの応答信号に変換する符号化部47−2を備えている。48はスピーカ、49はマイクである。
【0016】
次に、図6を参照しながら動作について説明する。図6のステップステップST1において、指令局1の指令員による指令信号が下り回線5を介して基地局2a〜2nに伝送される。図2の指令局1において、マイク11から指令員により入力されたアナログの指令信号は、信号処理部12の符号化部12−1によりディジタルの指令信号に変換される。ここで、この変換および変換後のディジタル信号の並び替えの具体的内容について図7、図9を参照しながら説明する。
【0017】
図7は、マイク11から指令員により入力されたアナログ信号(音声電圧波形)がディジタル信号に変換され、その後間引きに基づいてディジタル信号が並び替えられる様子の一例を示す図である。図7(a)は、マイク11から指令員により入力されたアナログ信号、図7(b)は、標本化処理(アナログ信号からディジタル信号への変換)および間引きに基づく並び替えの様子を示す。また、図9は図7で示した符号化部12−1の処理内容をフローチャートの形で示したものである。
【0018】
図7において、7−1はマイク11から指令員により入力された音声電圧波形(アナログ信号)であり、8、9はともに音声電圧波形7−1を一定間隔(標本化周期:Ts)で標本化した後のディジタル信号であり、図7の例では、1つの黒丸サンプルデータ8に対して3つの白丸サンプルデータとなるように、すなわち、黒丸サンプルデータ8と白丸サンプルデータ9が1:3の割合となるように図には表示されている。図7において、アナログの指令信号である音声電圧波形7−1が標本化され、ディジタルの指令信号に変換され、変数iの初期化がされる(図9のS1、S2)。そして、矢印(実線、点線)に示すように、間引きデータ(黒丸サンプルデータ8)は区間aに格納され、間引きデータ以外のデータ(白丸サンプルデータ9)は、区間bに格納される。これは、図9のS3において、変数iがaより小さいならば、間引きデータを区間aに格納後、変調し(図9のS4)、変数iがa以上であれば、間引きデータ以外のデータを区間bに格納後、変調(図9のS5)することに相当する。その後、変数iをインクリメントし(図9のS6)、変数iがn(=a+b)になるまで、上記処理は繰り返し実行される(図9のS7)。なお変調の際、フレーム内データ(nサンプル)が、データ多重部13のフレーム生成部13−1に入力される。
【0019】
フレーム生成部13−1では、符号化部12−1で得られたディジタルの指令信号に識別符号が付与されるとともに、下り回線5にディジタルの指令信号を伝送する際に必要なフレームフォーマットが生成される。フレーム生成部13−1により生成された指令信号は、ネットワークインタフェース14を介して下り回線5に出力され基地局2a〜2nに伝送される。
【0020】
図6のステップST2において、基地局2aは、無線回線を介して指令局1から伝送されたディジタルの指令信号を列車搭載型移動局3および携帯型移動局4に送信する。このとき、図3の基地局2において、下り回線5から入力された指令信号は、ネットワークインタフェース21を介してデータ多重部22のデータ同期部22−1に入力され、無線回線で送信する際に必要なフレーム同期が行われる。フレーム同期部22−1により得られた指令信号は、無線通信部23の変調部23−1に入力され、搬送波(搬送周波数はf1とする)にのせて無線通信に適した電気信号、すなわち、変調信号に変換される。その後、共用部24を介して、アンテナ25から周波数f1の電波として列車搭載型移動局3および携帯型移動局4に輻射される。
【0021】
そして、図4の列車搭載型移動局3および図5の携帯型移動局4において、基地局2aより送信された指令信号を受信する。以下では、各移動局の動作について説明する。
【0022】
図4の列車搭載型移動局3において、アンテナ31が周波数f1の電波を受信すると、受信された変調信号は、共用部32を介して無線通信部33の復調部33−1に入力され、基地局2の変調部23−1の処理の逆の処理、すなわち、搬送波を含んだ変調信号からディジタルの指令信号が取り出される。復調部33−1により復調されたディジタルの指令信号は、信号処理部34の復号化部34−1に入力され、指令局1の符号化部12−1での処理の逆の処理、すなわち、ディジタルの指令信号が並び替えられ、ディジタルの指令信号からアナログの指令信号へ変換される。ここで、この変換および変換前のディジタル信号の並び替えの具体的内容について図11、図13を参照しながら説明する。
【0023】
図11は、復調部34−1により復調されたディジタル信号に対して、信号が並び替えられ、その後アナログ信号(音声電圧波形)に変換される様子の一例を示す図である。図11(a)は、ディジタル信号の並び替えおよびディジタル信号からアナログ信号への変換、図11(b)は、変換後のアナログ信号(音声電圧波形)である。また、図13は図11で示した復号化部34−1の処理内容をフローチャートの形で示したものである。
【0024】
図11において、復号化部34−1に入力されたディジタル信号は、矢印(実線、点線)に示すように、指令局1の構成要素である符号化部12−1での並び替え処理(図13のS9とS10、図7(b)参照)および標本化処理の逆の処理(図13のS11)がなされることで、アナログ信号に変換される。その後、変換後のアナログの指令信号がスピーカ35に供給される。このようにして、列車搭載型移動局3を使用する列車乗務員は指令局1の指令員からの指令内容を聴取することができる。
【0025】
続いて、図5の携帯型移動局4において、アンテナ41が周波数f1の電波を受信すると、受信された変調信号は、共用部42を介してスイッチ部(以下、SW部)43に入力される。SW部43では、メモリ部45の内容に従い、変調信号を無線通信部44の復調部44−1に入力するかどうかの切替を行う。本実施の形態1の例では、メモリ部45の内容の一例として、信号処理部12、34および47で間引きをする際の間引き率について示したが、移動局によってデータレートを変更する際のレート率を示す情報では他の情報でも構わない。変調信号を復調部44−1に入力するときはスイッチをON(接続)し、入力しないときはスイッチをOFF(切断)する。ここで、SW部43の処理の具体的内容について図16を参照しながら説明する。
【0026】
図16は、SW部43、46の処理を示す図であり、図16において、区間aではスイッチON(接続)、区間bではスイッチOFF(切断)であることを示す。なお、SW部43、46のスイッチ動作として、本実施の形態1の例では、メモリ部45にa、bの比(本実施の形態1の場合、1:3)を予め格納しておき、メモリ部45の内容に従ってなされる場合について説明したが、同等の機能を有する方法であれば他の方法でも構わない。
【0027】
SW部43において、スイッチONの区間に復調部44−1に入力された変調信号は、基地局2の変調部23−1の処理の逆の処理、すなわち、搬送波を含んだ変調信号からディジタルの指令信号が取り出される。なお、スイッチOFFの区間では、復調部44−1に変調信号は入力されないことから、復調部44−1の回路をOFFする。
【0028】
復調部44−1により復調されたディジタルの指令信号は、信号処理部47の復号化部47−1に入力され、ディジタルの指令信号からアナログの指令信号に変換される。ここで、この変換および変換前のディジタル信号の並び替えと0データ付与の具体的内容について図12、図14を参照しながら説明する。
【0029】
図12(a)は、復調部44−1により復調されたディジタル信号に対して、メモリ部45の内容に従って、データの並び替えおよび0データの付与が行われる様子を示し、図12(b)は、図12(a)に示すディジタル信号からアナログ信号へ変換され、標本化による折り返し歪除去のためのローパスフィルタ(低域通過フィルタ)処理された後のアナログ信号(音声電圧波形)が得られる様子を示す。なお、7−2は、図7、図11に示した7−1とは異なる。また、図14は図12で示した復号化部47−1の処理内容をフローチャートの形で示したものである。
【0030】
図12において、復調部44−1により復調されたディジタル信号のうち、1つの黒丸サンプルデータに対して、3つの0データ、すなわち、黒丸サンプルデータ8と0データ(灰色)が1:3の割合となるように0データを付加し(図14のS12)、標本化処理の逆の処理を行うことで、アナログ信号に変換される。その後、図17に示すようなローパスフィルタ(カットオフ周波数>標本化周波数の1/2)を通す(図14のS13)ことにより、標本化処理による折り返し歪が除去されたアナログ信号が得られる。復号化部47−1により得られたアナログの指令信号がスピーカ48に供給される。このようにして、携帯型移動局4を使用する鉄道保守員は指令局1の指令員からの指令内容を聴取することができる。
【0031】
図6のステップST3において、列車搭載型移動局3を使用する列車乗務員が指令局1からの指令内容に対して応答した場合、列車搭載型移動局3は列車乗務員による応答信号を、指令信号の周波数f1とは異なる周波数f2で、基地局2aに対して電波として輻射する。このとき、図4の列車搭載型移動局3において、マイク36から列車乗務員により入力されたアナログの応答信号は、信号処理部34の符号化部34−2によりディジタルの応答信号に変換される。ここで、この変換の具体的内容は図7、フローチャートは図9と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0032】
符号化部34−2で得られたディジタルの応答信号は、無線通信部33の変調部33−2において、搬送波(搬送周波数はf2)にのせて無線通信に適した電気信号、すなわち、変調信号に変換される。その後、共用部32を介して、アンテナ31から周波数f2の電波として基地局2aに輻射される。
【0033】
そして、図6のステップST3で、列車搭載型移動局3が搭載され、走行している列車の付近に存在し、送受信エリアにある例えば基地局2aが列車搭載型移動局3からの応答信号を受信すると、図6のステップST4において、基地局2aは受信したディジタルの応答信号を上り回線6により指令局1に伝送する。
【0034】
このとき、図3の基地局2において、アンテナ25が周波数f2の電波を受信すると、受信された変調信号は、共用部24を介して無線通信部23の復調部23−2に入力され、列車搭載型移動局3の変調部33−2の処理の逆の処理、すなわち、搬送波を含んだ変調信号からディジタルの応答信号が取り出される。復調部23−2により復調されたディジタルの応答信号は、データ多重部22のフレーム生成部22−2に入力され、識別符号が付与されるとともに、上り回線6にディジタルの応答信号を伝送する際に必要なフレームフォーマットが生成される。フレーム生成部22−2により生成された応答信号は、ネットワークインタフェース21を介して上り回線6に出力され指令局1に伝送される。
【0035】
そして、図6のステップST4で、指令局1が基地局2aからの応答信号を受信すると、図2の指令局1において、上り回線6から入力された応答信号は、ネットワークインタフェース14を介してデータ多重部13のデータ同期部13−2に入力され、復号する際に必要なフレーム同期が行われる。フレーム同期部13−2により得られた応答信号は、信号処理部12の復号化部12−2に入力され、列車搭載型移動局3の符号化部34−2での処理の逆の処理、すなわち、ディジタルの応答信号が並び替えられ、ディジタルの応答信号からアナログの応答信号へ変換される。ここで、この変換の具体的内容は図9と同様であるが、処理内容は復号化部34−1とは異なることから、以下では、復号化部12−2の処理内容について図15を参照しながら説明する。
【0036】
図15は、復号化部12−2の処理内容を示すフローチャートであり、図13、図14と異なる点は、基地局2a〜2nより受信する応答信号が列車搭載型移動局3からの応答信号か、それとも携帯型移動局4からの応答信号かによって、復号化処理の内容が異なることである。図6のST4では、列車搭載型移動局3からの応答信号を基地局2a経由で受信することから、列車搭載型移動局3の構成要素である復号化部34−1の処理(図13参照)、すなわち、図15のS14において、Noに相当する処理を行う。また、図6のST6では、携帯型移動局4からの応答信号を基地局2a経由で受信することから、携帯型移動局4の構成要素である復号化部47−1の処理(図14参照)、すなわち、図15のS14において、Yesに相当する処理を行う。
【0037】
復号化部12−2で得られたアナログの応答信号はスピーカ15に供給される。この結果、列車搭載型移動局3を使用する列車乗務員と指令局1の指令員とが通話することができる。
【0038】
また、図6のステップST5において、携帯型移動局4を使用する鉄道保守員が指令局1からの指令内容に対して応答した場合、携帯型移動局4は鉄道保守員による応答信号を、指令信号の周波数f1とは異なる周波数f2で、基地局2aに対して電波として輻射する。このとき、図5の携帯型移動局4において、マイク49から鉄道保守員により入力されたアナログの応答信号は、信号処理部47の符号化部47−2によりディジタルの応答信号に変換される。ここで、この変換および変換後のディジタル信号の間引きの具体的内容について図8、図10を参照しながら説明する。
【0039】
図8は、マイク49から鉄道保守員により入力されたアナログ信号(音声電圧波形)がディジタル信号に変換され、その後間引きされる様子の一例を示す図である。図8(a)は、マイク49から鉄道保守員により入力されたアナログ信号、図8(b)は、標本化処理および間引き後のディジタル信号の様子を示す。また、図10は、図8で示した符号化部47−2の処理内容をフローチャートの形で示したものである。
【0040】
図8において、アナログの応答信号である音声電圧波形7−1が標本化され、ディジタルの応答信号に変換され、変数iの初期化がされる(図11のS1、S2)。その後、間引き処理により、矢印(実線)に示すように、図8(b)に表示された間引きデータ(黒丸サンプルデータ8)のみが区間aに格納される。残りの区間bには例えば振幅0の0データが格納されている。これは、図11のS3において、変数iがaより小さいならば、間引きデータを区間aに格納後、変調し(図11のS4)、変数iがa以上であれば、変調(送信)回路をオフ(図11のS8)することに相当する。その後、区間a、区間bに格納されたデータはSW部46に入力される。SW部46では、SW部43と同様、メモリ部45の内容に従い、ディジタルの応答信号を無線通信部44の変調部44−2に入力するかどうかの切替を行う。本実施の形態1の例では、メモリ部45の内容の一例として、信号処理部12、34および47で間引きをする際の間引き率について示したが、移動局によってデータレートを変更する際のレート率を示す情報では他の情報でも構わない。ディジタルの応答信号を変調部44−2に入力するときはスイッチをON(接続)し、入力しないときはスイッチをOFF(切断)する。ここで、SW部46の処理の具体的内容は図16と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0041】
SW部46において、スイッチONの区間に変調部44−2に入力されたディジタルの応答信号は、搬送波(搬送周波数はf2)にのせて無線通信に適した電気信号、すなわち、変調信号に変換される。その後、共用部42を介して、アンテナ41から周波数f2の電波として基地局2aに輻射される。なお、スイッチOFFの区間では、変調部44−2にディジタルの応答信号は入力されないことから、変調部44−2の回路をOFFする。
【0042】
そして、図6のステップST5で、携帯型移動局4を所有する鉄道保守員の付近に存在し、送受信エリアにある例えば基地局2aが携帯型移動局4からの応答信号を受信すると、図6のステップST6において、基地局2aは受信したディジタルの応答信号を上り回線6により指令局1に伝送する。
【0043】
このとき、図3の基地局2において、アンテナ25が周波数f2の電波を受信すると、受信された変調信号は、共用部24を介して無線通信部23の復調部23−2に入力され、列車搭載型移動局3の変調部33−2の処理の逆の処理、すなわち、搬送波を含んだ変調信号からディジタルの応答信号が取り出される。復調部23−2により復調されたディジタルの応答信号は、データ多重部22のフレーム生成部22−2に入力され、識別符号が付与されるとともに、上り回線6にディジタルの応答信号を伝送する際に必要なフレームフォーマットが生成される。フレーム生成部22−2により生成された応答信号は、ネットワークインタフェース21を介して上り回線6に出力され指令局1に伝送される。
【0044】
そして、図6のステップST6で、指令局1が基地局2aからの応答信号を受信すると、図2の指令局1において、上り回線6から入力された応答信号は、ネットワークインタフェース14を介してデータ多重部13のデータ同期部13−2に入力され、復号する際に必要なフレーム同期が行われる。フレーム同期部13−2により得られた応答信号は、信号処理部12の復号化部12−2に入力され、携帯型移動局4の符号化部47−2での処理の逆の処理、すなわち、データの並び替え、0データの付与およびローパスフィルタ処理が行われ、ディジタルの応答信号からアナログの応答信号へ変換される。ここで、この変換の具体的内容は図12と同様であるが、復号化部12−2の処理内容は図15に示すフローチャートと同様である(図15のS14において、Yesに相当する)ことから、詳細説明は省略する。
【0045】
復号化部12−2で得られたアナログの応答信号はスピーカ15に供給される。この結果、携帯型移動局4を使用する鉄道保守員と指令局1の指令員とが通話することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態1によれば、指令局1、列車搭載型移動局3間のデータ送受信時はフレーム内の全区間のデータ(主要データと付加データ)を用い、指令局1、携帯型移動局4間のデータ送受信時はフレーム内の一部区間のデータ(主要データ)を用いる構成とすることにより、指令局1、列車搭載型移動局3間では高データレートでのデータ通信を行うことが可能であり、指令局1、携帯型移動局4間では低データレートでのデータ通信を行うことが可能となる。
【0047】
また、指令局1、携帯型移動局4間のデータ送受信において、データ送受信を行なわない区間では、無線通信回路をオフする構成とすることにより、指令局1、携帯型移動局4間のデータ通信時の消費電力が抑えられ、長時間駆動可能な携帯型移動局4を提供することが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態1の例では、列車無線システムにおける指令局1、列車搭載型移動局3間または指令局1、携帯型移動局4間の通話について示したが、同様の機能を有する指令局、基地局および複数の移動局で構成される無線通信システムであれば、同様の効果を得ることが可能である。
【0049】
また、本実施の形態1の例では、TDMAスロットを構成するタイムスロットを用いて無線通信を行う場合について示したが、TDMA以外のFDMA等の他の通信方式を用いた無線通信においても、同様の効果を得ることが可能である。
【0050】
また、本実施の形態1の例では、指令局1、列車搭載型移動局3間または指令局1、携帯型移動局4間の無線通信システムについて示したが、無線電波周波数を有線回線に置き換えることで、光ファイバ等の有線通信システムにおいても、同様の効果を得ることが可能である。
【0051】
さらに、本実施の形態1の例では、指令局1、列車搭載型移動局3間または指令局1、携帯型移動局4間で送受信するデータとして、音声通話用のPCMデータを用い、所定の割合で間引きを行うことでレート変換する場合について説明したが、CELP方式に代表される、合成による分析(AbS:Analysis by Synthesis)法等で用いる音声符号化データまたは画像通信に用いる画像符号化データを用い、符号化データの全データを送受信する場合と一部データを送受信する場合でレート変換するような構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムを示す図である。
【図2】図1の移動体通信システムにおける指令局1の回路ブロック図である。
【図3】図1の移動体通信システムにおける基地局2の回路ブロック図である。
【図4】図1の移動体通信システムにおける列車搭載型移動局3の回路ブロック図である。
【図5】図1の移動体通信システムにおける携帯型移動局4の回路ブロック図である。
【図6】図1の移動体通信システムにおける指令局1、基地局2、列車搭載型移動局3および携帯型移動局間4の通信手順を示すシーケンス図である。
【図7】アナログ信号(音声電圧波形)からディジタル信号への変換およびディジタル信号の並び替えの一例を示す図である。
【図8】アナログ信号(音声電圧波形)からディジタル信号への変換および間引きに基づくディジタル信号の並び替えの一例を示す図である。
【図9】符号化部34−2、12−1の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図10】符号化部47−2の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図11】ディジタル信号の並び替えおよびディジタル信号からアナログ信号(音声電圧波形)への変換の一例を示す図である。
【図12】ディジタル信号からアナログ信号(音声電圧波形)への変換の一例を示す図である。
【図13】復号化部34−1の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図14】復号化部47−1の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図15】復号化部12−2の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図16】図5に示した携帯型移動局4のSW部43の処理の内容を示す図である。
【図17】図10に示すディジタル信号からアナログ信号への変換において、標本化処理による折り返し歪を除去するためのローパスフィルタの一例を示す図である。
【図18】一対多通信の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1:指令局、2,2a,2b,・・・,2n:基地局、3:列車搭載型移動局、4:携帯型移動局、5:下り回線、6:上り回線、7−1、7−2:音声電圧波形(アナログ信号)、8:黒丸サンプルデータ(ディジタル信号)、9:白丸サンプルデータ(ディジタル信号)、11:マイク、12:信号処理部、12−1:符号化部、12−2:復号化部、13:データ多重部、13−1:フレーム生成部、13−2:フレーム同期部、14:ネットワークインタフェース、15:スピーカ、21:ネットワークインタフェース、22:データ多重部、22−1:フレーム同期部、22−2:フレーム生成部、23:無線通信部、23−1:変調部、23−2:復調部、24:共用部、25:アンテナ、31:アンテナ、32:共用部、33:無線通信部、33−1:復調部、33−2:変調部、34:信号処理部、34−1:復号化部、34−2:符号化部、35:スピーカ、36:マイク、41:アンテナ、42:共用部、43、46:SW部、44:無線通信部、44−1:復調部、44−2:変調部、45:メモリ部、47:信号処理部、47−1:復号化部、47−2:符号化部、48:スピーカ、49:マイク、100:指令局、200:基地局、300:列車搭載型移動局、400:携帯型移動局、500:下り回線、600:上り回線、
【技術分野】
【0001】
本発明は、親局と子局端末との間で音声データ、画像データ等の各種データの通信を行う通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
親局と子局端末との間で通信を行う通信システムとしては、電話回線や光ファイバ等の有線を介して通信を行う有線通信システムや無線電波を介して通信を行う無線通信システムがある。また、時間軸上で一定時間に分割してデータを格納して多重通信を行う時分割多重方式や周波数軸上で一定周波数に分割してデータを格納して多重通信を行う周波数多重方式があるが、いずれも親局、子局端末間でデータ通信を行う点では同じである。ここで、従来の時分割多重方式の無線通信システムの一例として、電車等の列車に代表される移動体に搭載された移動局と地上中央局等の基地局との通信を実現する列車無線システムが知られている。この種の列車無線システムにおいては、TDMAスロットを構成するタイムスロットの一部を用いて地上中央局と列車に搭載された移動局間で通信を行い、前記タイムスロットの残りを用いて前記地上中央局と線路保守員が携帯する移動局間で通信を行い、前記線路保守員が携帯する移動局にスロットを選択するスロット選択機能を設ける構成としている。このシステムでは、線路保守員が携帯する移動局より地上中央局と列車に搭載された移動局間の通信に用いるタイムスロットを選択することで、線路保守員は地上中央局と列車に搭載された移動局間の通話内容を聴取することが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、従来の列車無線システムでは、線路保守員が携帯する移動局に設けられたスロット選択機能により、地上中央局と列車に搭載された移動局間の通話内容を受信することが可能となっている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−112408号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の列車無線システムは、以上のように構成されているので、線路保守員は列車乗務員に対する緊急通報等を聞いて、迅速に安全対策等を取ることが可能であるが、このとき、単位時間あたりに地上中央局から送信されるデータ量、すなわちデータレートは一定であり、列車乗務員、線路保守員ともに同じデータから復号される音声を聞いていた。ここで、基地局と移動局間のデータ伝送時のデータレートが高いほど、消費電力が高い。その一方で、鉄道保守員等が携帯する移動局(以下、携帯型移動局)は電池駆動であり、長時間駆動という観点からデータレートを低くし、消費電力を減らしたいという要求がある。一つの基地局と一つの移動局での通信、いわゆる一対一の通信の場合、双方のデータレートを変更する処理を経ることで、移動局に応じた適切なデータレートを設定することが可能である。ところが、一つの基地局から複数の移動局への同報のような通信、いわゆる一対多の通信の場合、基地局、移動局を含めたすべての局のデータレートを同じにする必要があることから、例えば、列車内に備えられた移動局(以下、列車搭載型移動局)と基地局との通信のデータレートが高い場合、携帯型移動局でも高データレートで基地局と通信をせざるを得ず、長時間駆動が不可能という問題があった。
【0006】
ここで、一対多通信の例を図18に示す。図18において、100は指令局、200は基地局、300は列車内に備えられた列車搭載型移動局、400は鉄道保守員が携帯する携帯型移動局、500は指令局100と基地局200を接続し、指令局100から基地局200へ指令信号を伝送する下り回線、600は指令局100と基地局200を接続し、列車搭載型移動局300または携帯型移動局400からの応答信号を伝送する上り回線である。図18において、基地局200を経由して指令局100から列車搭載型移動局300および携帯型移動局400への同報を行う場合、列車搭載型移動局300は、架線等より電源が供給されることから、できるだけ高データレートでデータの送受信を行うことが望ましい。一方、携帯型移動局400は、電池駆動により電源が供給されることから、できるだけ低データレートでデータの送受信を行うことで、データ送受信時の消費電力を低く抑え、長時間通話が可能となるようにすることが望まれる。列車搭載型移動局300と携帯型移動局400の、互いに相反する要求を満たすには、高データレート用、低データレート用の二つの回線を別回線として用意する必要があるが、この場合、同一通話内容を送信することになり、無線周波数の利用効率が悪いという問題があった。この問題は、無線周波数を有線回線に置き換えることで、無線通信システムに限らず、有線通信システム等の親局と子局端末との間でデータ通信を行う通信システム一般に共通する問題である。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、親局から子局端末へ送信するデータレートは高いデータレートの状態を保ちつつ、子局端末の状況に応じて、受信するデータ量を選択・受信することで、高データレートでのデータ通信が可能な第1の子局端末、低データレートでのデータ通信が可能な第2の子局端末および親局で構成される通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信システムは、送信信号を主要データと付加データとに変調して送信する親局と、前記親局が送信する主要データと付加データとを受信し、該主要データと付加データとから前記親局の送信信号を復調する第1の子局端末または、前記親局が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記親局の送信信号を復調する第2の子局端末の間で通信を行う通信システムにおいて、前記第1の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データと付加データとに変調して送信し、前記第2の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データのみに変調して送信し、前記親局は前記第1の子局端末が送信する主要データと付加データとを受信し、該主要データと付加データとから前記第1の子局端末の送信信号を復調する一方、前記第2の子局端末が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記第2の子局端末の送信信号を復調するよう構成されたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データと付加データとに変調して送信し、該主要データと付加データとから前記親局の送信信号を復調し、第2の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データのみに変調して送信し、前記親局が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記親局の送信信号を復調するよう構成したので、別回線を必要とせずに高データレートおよび低データレートでのデータ通信が可能な子局端末、親局で構成される通信システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1〜図17に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムを示す図であり、図2は、図1の移動体通信システムにおける指令局1の回路ブロック図、図3は、基地局2a〜2nの回路ブロック図、図4は、列車搭載型移動局3の回路ブロック図、図5は、携帯型移動局4の回路ブロック図である。図6は、指令局1、基地局2a〜2n、列車搭載型移動局3および携帯型移動局4間の通信手順を示すシーケンス図である。図7、図8は、それぞれ符号化部12−1(34−2)、47−2での処理の一部を示す図、図9、図10は、符号化部12−1(34−2)、47−2での処理内容をフローチャートの形にしたものであり、図11、図12は、それぞれ復号化部34−1(または12−2)、47−1(または12−2)での処理の一部を示す図、図13、図14、図15は、復号化部34−1、47−1、12−2での処理内容をフローチャートの形にしたものである。図16は、SW部43、46の処理を示す図である。また、図17は、標本化による折り返し歪除去フィルタの一例を示す図である。以下では、本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムとその構成要素の説明をし、その後動作について説明する。
【0011】
図1において、1は交換的な機能、基地局を制御する機能、基地局をひとまとめにしたゾーンを制御する機能を有する指令局、2a,2b,・・・,2nは列車の走行路に沿って設置された基地局、3は列車に搭載され、基地局2aを経由して指令局1との通信を行う列車搭載型移動局、4は鉄道保守員等が携帯し、基地局2aを経由して指令局1との通信を行う携帯型移動局である。また、5は指令局1と複数の基地局2a〜2n間を接続し、指令局1の指令員から基地局2a〜2nへ指令信号を伝送する下り回線、6は指令局1と複数の基地局2a〜2n間を接続し、基地局2a〜2nから指令局1への列車搭載型移動局3または携帯型移動局4からの応答信号を伝送する上り回線である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一部分を示す。
【0012】
図2において、11はマイク、12は信号処理部であり、アナログの指令信号をディジタルの指令信号に変換する符号化部12−1と、ディジタルの応答信号をアナログの応答信号に変換する復号化部12−2を備える。13はデータ多重部であり、指令信号を下り回線5に伝送する際に必要なフレームフォーマットの生成を行うフレーム生成部13−1と、応答信号を復号する際に必要なフレーム同期を行うフレーム同期部13−2を備えている。14は下り回線5と上り回線6に接続されたネットワークインタフェース、15はスピーカである。
【0013】
図3において、21は下り回線5と上り回線6に接続されたネットワークインタフェース、22はデータ多重部であり、無線回線で送信する際に必要なフレーム同期を行うフレーム同期部22−1と、応答信号を上り回線6に伝送する際に必要なフレームフォーマットを生成するフレーム生成部22−2を備えている。23は無線通信部であり、指令信号の変調を行う変調部23−1と、応答信号の復調を行う復調部23−2を備えている。24はアンテナ25を送信と受信で共用するための共用部である。
【0014】
図4において、31はアンテナ、32はアンテナ31を送信と受信で共用するための共用部、33は無線通信部であり、指令信号の復調を行う復調部33−1と、応答信号の変調を行う変調部33−2を備えている。34は信号処理部であり、ディジタルの指令信号をアナログの指令信号に変換する復号化部34−1と、アナログの応答信号をディジタルの応答信号に変換する符号化部34−2を備えている。35はスピーカ、36はマイクである。
【0015】
図5において、41はアンテナ、42はアンテナ41を送信と受信で共用するための共用部、43はメモリ部45に格納された情報に基づいて、アンテナ41で受信した指令信号を復調部44−1に入力するかどうかを切り替えるSW部(スイッチ部)、44は無線通信部であり、指令信号の復調を行う復調部44−1と、応答信号の変調を行う変調部44−2を備えている。46はメモリ部45に格納された情報に基づいて、ディジタルの応答信号を変調部44−2に入力するかどうかを切り替えるSW部(スイッチ部)、47は信号処理部であり、ディジタルの指令信号をアナログの指令信号に変換する復号化部47−1と、アナログの応答信号をディジタルの応答信号に変換する符号化部47−2を備えている。48はスピーカ、49はマイクである。
【0016】
次に、図6を参照しながら動作について説明する。図6のステップステップST1において、指令局1の指令員による指令信号が下り回線5を介して基地局2a〜2nに伝送される。図2の指令局1において、マイク11から指令員により入力されたアナログの指令信号は、信号処理部12の符号化部12−1によりディジタルの指令信号に変換される。ここで、この変換および変換後のディジタル信号の並び替えの具体的内容について図7、図9を参照しながら説明する。
【0017】
図7は、マイク11から指令員により入力されたアナログ信号(音声電圧波形)がディジタル信号に変換され、その後間引きに基づいてディジタル信号が並び替えられる様子の一例を示す図である。図7(a)は、マイク11から指令員により入力されたアナログ信号、図7(b)は、標本化処理(アナログ信号からディジタル信号への変換)および間引きに基づく並び替えの様子を示す。また、図9は図7で示した符号化部12−1の処理内容をフローチャートの形で示したものである。
【0018】
図7において、7−1はマイク11から指令員により入力された音声電圧波形(アナログ信号)であり、8、9はともに音声電圧波形7−1を一定間隔(標本化周期:Ts)で標本化した後のディジタル信号であり、図7の例では、1つの黒丸サンプルデータ8に対して3つの白丸サンプルデータとなるように、すなわち、黒丸サンプルデータ8と白丸サンプルデータ9が1:3の割合となるように図には表示されている。図7において、アナログの指令信号である音声電圧波形7−1が標本化され、ディジタルの指令信号に変換され、変数iの初期化がされる(図9のS1、S2)。そして、矢印(実線、点線)に示すように、間引きデータ(黒丸サンプルデータ8)は区間aに格納され、間引きデータ以外のデータ(白丸サンプルデータ9)は、区間bに格納される。これは、図9のS3において、変数iがaより小さいならば、間引きデータを区間aに格納後、変調し(図9のS4)、変数iがa以上であれば、間引きデータ以外のデータを区間bに格納後、変調(図9のS5)することに相当する。その後、変数iをインクリメントし(図9のS6)、変数iがn(=a+b)になるまで、上記処理は繰り返し実行される(図9のS7)。なお変調の際、フレーム内データ(nサンプル)が、データ多重部13のフレーム生成部13−1に入力される。
【0019】
フレーム生成部13−1では、符号化部12−1で得られたディジタルの指令信号に識別符号が付与されるとともに、下り回線5にディジタルの指令信号を伝送する際に必要なフレームフォーマットが生成される。フレーム生成部13−1により生成された指令信号は、ネットワークインタフェース14を介して下り回線5に出力され基地局2a〜2nに伝送される。
【0020】
図6のステップST2において、基地局2aは、無線回線を介して指令局1から伝送されたディジタルの指令信号を列車搭載型移動局3および携帯型移動局4に送信する。このとき、図3の基地局2において、下り回線5から入力された指令信号は、ネットワークインタフェース21を介してデータ多重部22のデータ同期部22−1に入力され、無線回線で送信する際に必要なフレーム同期が行われる。フレーム同期部22−1により得られた指令信号は、無線通信部23の変調部23−1に入力され、搬送波(搬送周波数はf1とする)にのせて無線通信に適した電気信号、すなわち、変調信号に変換される。その後、共用部24を介して、アンテナ25から周波数f1の電波として列車搭載型移動局3および携帯型移動局4に輻射される。
【0021】
そして、図4の列車搭載型移動局3および図5の携帯型移動局4において、基地局2aより送信された指令信号を受信する。以下では、各移動局の動作について説明する。
【0022】
図4の列車搭載型移動局3において、アンテナ31が周波数f1の電波を受信すると、受信された変調信号は、共用部32を介して無線通信部33の復調部33−1に入力され、基地局2の変調部23−1の処理の逆の処理、すなわち、搬送波を含んだ変調信号からディジタルの指令信号が取り出される。復調部33−1により復調されたディジタルの指令信号は、信号処理部34の復号化部34−1に入力され、指令局1の符号化部12−1での処理の逆の処理、すなわち、ディジタルの指令信号が並び替えられ、ディジタルの指令信号からアナログの指令信号へ変換される。ここで、この変換および変換前のディジタル信号の並び替えの具体的内容について図11、図13を参照しながら説明する。
【0023】
図11は、復調部34−1により復調されたディジタル信号に対して、信号が並び替えられ、その後アナログ信号(音声電圧波形)に変換される様子の一例を示す図である。図11(a)は、ディジタル信号の並び替えおよびディジタル信号からアナログ信号への変換、図11(b)は、変換後のアナログ信号(音声電圧波形)である。また、図13は図11で示した復号化部34−1の処理内容をフローチャートの形で示したものである。
【0024】
図11において、復号化部34−1に入力されたディジタル信号は、矢印(実線、点線)に示すように、指令局1の構成要素である符号化部12−1での並び替え処理(図13のS9とS10、図7(b)参照)および標本化処理の逆の処理(図13のS11)がなされることで、アナログ信号に変換される。その後、変換後のアナログの指令信号がスピーカ35に供給される。このようにして、列車搭載型移動局3を使用する列車乗務員は指令局1の指令員からの指令内容を聴取することができる。
【0025】
続いて、図5の携帯型移動局4において、アンテナ41が周波数f1の電波を受信すると、受信された変調信号は、共用部42を介してスイッチ部(以下、SW部)43に入力される。SW部43では、メモリ部45の内容に従い、変調信号を無線通信部44の復調部44−1に入力するかどうかの切替を行う。本実施の形態1の例では、メモリ部45の内容の一例として、信号処理部12、34および47で間引きをする際の間引き率について示したが、移動局によってデータレートを変更する際のレート率を示す情報では他の情報でも構わない。変調信号を復調部44−1に入力するときはスイッチをON(接続)し、入力しないときはスイッチをOFF(切断)する。ここで、SW部43の処理の具体的内容について図16を参照しながら説明する。
【0026】
図16は、SW部43、46の処理を示す図であり、図16において、区間aではスイッチON(接続)、区間bではスイッチOFF(切断)であることを示す。なお、SW部43、46のスイッチ動作として、本実施の形態1の例では、メモリ部45にa、bの比(本実施の形態1の場合、1:3)を予め格納しておき、メモリ部45の内容に従ってなされる場合について説明したが、同等の機能を有する方法であれば他の方法でも構わない。
【0027】
SW部43において、スイッチONの区間に復調部44−1に入力された変調信号は、基地局2の変調部23−1の処理の逆の処理、すなわち、搬送波を含んだ変調信号からディジタルの指令信号が取り出される。なお、スイッチOFFの区間では、復調部44−1に変調信号は入力されないことから、復調部44−1の回路をOFFする。
【0028】
復調部44−1により復調されたディジタルの指令信号は、信号処理部47の復号化部47−1に入力され、ディジタルの指令信号からアナログの指令信号に変換される。ここで、この変換および変換前のディジタル信号の並び替えと0データ付与の具体的内容について図12、図14を参照しながら説明する。
【0029】
図12(a)は、復調部44−1により復調されたディジタル信号に対して、メモリ部45の内容に従って、データの並び替えおよび0データの付与が行われる様子を示し、図12(b)は、図12(a)に示すディジタル信号からアナログ信号へ変換され、標本化による折り返し歪除去のためのローパスフィルタ(低域通過フィルタ)処理された後のアナログ信号(音声電圧波形)が得られる様子を示す。なお、7−2は、図7、図11に示した7−1とは異なる。また、図14は図12で示した復号化部47−1の処理内容をフローチャートの形で示したものである。
【0030】
図12において、復調部44−1により復調されたディジタル信号のうち、1つの黒丸サンプルデータに対して、3つの0データ、すなわち、黒丸サンプルデータ8と0データ(灰色)が1:3の割合となるように0データを付加し(図14のS12)、標本化処理の逆の処理を行うことで、アナログ信号に変換される。その後、図17に示すようなローパスフィルタ(カットオフ周波数>標本化周波数の1/2)を通す(図14のS13)ことにより、標本化処理による折り返し歪が除去されたアナログ信号が得られる。復号化部47−1により得られたアナログの指令信号がスピーカ48に供給される。このようにして、携帯型移動局4を使用する鉄道保守員は指令局1の指令員からの指令内容を聴取することができる。
【0031】
図6のステップST3において、列車搭載型移動局3を使用する列車乗務員が指令局1からの指令内容に対して応答した場合、列車搭載型移動局3は列車乗務員による応答信号を、指令信号の周波数f1とは異なる周波数f2で、基地局2aに対して電波として輻射する。このとき、図4の列車搭載型移動局3において、マイク36から列車乗務員により入力されたアナログの応答信号は、信号処理部34の符号化部34−2によりディジタルの応答信号に変換される。ここで、この変換の具体的内容は図7、フローチャートは図9と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0032】
符号化部34−2で得られたディジタルの応答信号は、無線通信部33の変調部33−2において、搬送波(搬送周波数はf2)にのせて無線通信に適した電気信号、すなわち、変調信号に変換される。その後、共用部32を介して、アンテナ31から周波数f2の電波として基地局2aに輻射される。
【0033】
そして、図6のステップST3で、列車搭載型移動局3が搭載され、走行している列車の付近に存在し、送受信エリアにある例えば基地局2aが列車搭載型移動局3からの応答信号を受信すると、図6のステップST4において、基地局2aは受信したディジタルの応答信号を上り回線6により指令局1に伝送する。
【0034】
このとき、図3の基地局2において、アンテナ25が周波数f2の電波を受信すると、受信された変調信号は、共用部24を介して無線通信部23の復調部23−2に入力され、列車搭載型移動局3の変調部33−2の処理の逆の処理、すなわち、搬送波を含んだ変調信号からディジタルの応答信号が取り出される。復調部23−2により復調されたディジタルの応答信号は、データ多重部22のフレーム生成部22−2に入力され、識別符号が付与されるとともに、上り回線6にディジタルの応答信号を伝送する際に必要なフレームフォーマットが生成される。フレーム生成部22−2により生成された応答信号は、ネットワークインタフェース21を介して上り回線6に出力され指令局1に伝送される。
【0035】
そして、図6のステップST4で、指令局1が基地局2aからの応答信号を受信すると、図2の指令局1において、上り回線6から入力された応答信号は、ネットワークインタフェース14を介してデータ多重部13のデータ同期部13−2に入力され、復号する際に必要なフレーム同期が行われる。フレーム同期部13−2により得られた応答信号は、信号処理部12の復号化部12−2に入力され、列車搭載型移動局3の符号化部34−2での処理の逆の処理、すなわち、ディジタルの応答信号が並び替えられ、ディジタルの応答信号からアナログの応答信号へ変換される。ここで、この変換の具体的内容は図9と同様であるが、処理内容は復号化部34−1とは異なることから、以下では、復号化部12−2の処理内容について図15を参照しながら説明する。
【0036】
図15は、復号化部12−2の処理内容を示すフローチャートであり、図13、図14と異なる点は、基地局2a〜2nより受信する応答信号が列車搭載型移動局3からの応答信号か、それとも携帯型移動局4からの応答信号かによって、復号化処理の内容が異なることである。図6のST4では、列車搭載型移動局3からの応答信号を基地局2a経由で受信することから、列車搭載型移動局3の構成要素である復号化部34−1の処理(図13参照)、すなわち、図15のS14において、Noに相当する処理を行う。また、図6のST6では、携帯型移動局4からの応答信号を基地局2a経由で受信することから、携帯型移動局4の構成要素である復号化部47−1の処理(図14参照)、すなわち、図15のS14において、Yesに相当する処理を行う。
【0037】
復号化部12−2で得られたアナログの応答信号はスピーカ15に供給される。この結果、列車搭載型移動局3を使用する列車乗務員と指令局1の指令員とが通話することができる。
【0038】
また、図6のステップST5において、携帯型移動局4を使用する鉄道保守員が指令局1からの指令内容に対して応答した場合、携帯型移動局4は鉄道保守員による応答信号を、指令信号の周波数f1とは異なる周波数f2で、基地局2aに対して電波として輻射する。このとき、図5の携帯型移動局4において、マイク49から鉄道保守員により入力されたアナログの応答信号は、信号処理部47の符号化部47−2によりディジタルの応答信号に変換される。ここで、この変換および変換後のディジタル信号の間引きの具体的内容について図8、図10を参照しながら説明する。
【0039】
図8は、マイク49から鉄道保守員により入力されたアナログ信号(音声電圧波形)がディジタル信号に変換され、その後間引きされる様子の一例を示す図である。図8(a)は、マイク49から鉄道保守員により入力されたアナログ信号、図8(b)は、標本化処理および間引き後のディジタル信号の様子を示す。また、図10は、図8で示した符号化部47−2の処理内容をフローチャートの形で示したものである。
【0040】
図8において、アナログの応答信号である音声電圧波形7−1が標本化され、ディジタルの応答信号に変換され、変数iの初期化がされる(図11のS1、S2)。その後、間引き処理により、矢印(実線)に示すように、図8(b)に表示された間引きデータ(黒丸サンプルデータ8)のみが区間aに格納される。残りの区間bには例えば振幅0の0データが格納されている。これは、図11のS3において、変数iがaより小さいならば、間引きデータを区間aに格納後、変調し(図11のS4)、変数iがa以上であれば、変調(送信)回路をオフ(図11のS8)することに相当する。その後、区間a、区間bに格納されたデータはSW部46に入力される。SW部46では、SW部43と同様、メモリ部45の内容に従い、ディジタルの応答信号を無線通信部44の変調部44−2に入力するかどうかの切替を行う。本実施の形態1の例では、メモリ部45の内容の一例として、信号処理部12、34および47で間引きをする際の間引き率について示したが、移動局によってデータレートを変更する際のレート率を示す情報では他の情報でも構わない。ディジタルの応答信号を変調部44−2に入力するときはスイッチをON(接続)し、入力しないときはスイッチをOFF(切断)する。ここで、SW部46の処理の具体的内容は図16と同様であるので、詳細説明は省略する。
【0041】
SW部46において、スイッチONの区間に変調部44−2に入力されたディジタルの応答信号は、搬送波(搬送周波数はf2)にのせて無線通信に適した電気信号、すなわち、変調信号に変換される。その後、共用部42を介して、アンテナ41から周波数f2の電波として基地局2aに輻射される。なお、スイッチOFFの区間では、変調部44−2にディジタルの応答信号は入力されないことから、変調部44−2の回路をOFFする。
【0042】
そして、図6のステップST5で、携帯型移動局4を所有する鉄道保守員の付近に存在し、送受信エリアにある例えば基地局2aが携帯型移動局4からの応答信号を受信すると、図6のステップST6において、基地局2aは受信したディジタルの応答信号を上り回線6により指令局1に伝送する。
【0043】
このとき、図3の基地局2において、アンテナ25が周波数f2の電波を受信すると、受信された変調信号は、共用部24を介して無線通信部23の復調部23−2に入力され、列車搭載型移動局3の変調部33−2の処理の逆の処理、すなわち、搬送波を含んだ変調信号からディジタルの応答信号が取り出される。復調部23−2により復調されたディジタルの応答信号は、データ多重部22のフレーム生成部22−2に入力され、識別符号が付与されるとともに、上り回線6にディジタルの応答信号を伝送する際に必要なフレームフォーマットが生成される。フレーム生成部22−2により生成された応答信号は、ネットワークインタフェース21を介して上り回線6に出力され指令局1に伝送される。
【0044】
そして、図6のステップST6で、指令局1が基地局2aからの応答信号を受信すると、図2の指令局1において、上り回線6から入力された応答信号は、ネットワークインタフェース14を介してデータ多重部13のデータ同期部13−2に入力され、復号する際に必要なフレーム同期が行われる。フレーム同期部13−2により得られた応答信号は、信号処理部12の復号化部12−2に入力され、携帯型移動局4の符号化部47−2での処理の逆の処理、すなわち、データの並び替え、0データの付与およびローパスフィルタ処理が行われ、ディジタルの応答信号からアナログの応答信号へ変換される。ここで、この変換の具体的内容は図12と同様であるが、復号化部12−2の処理内容は図15に示すフローチャートと同様である(図15のS14において、Yesに相当する)ことから、詳細説明は省略する。
【0045】
復号化部12−2で得られたアナログの応答信号はスピーカ15に供給される。この結果、携帯型移動局4を使用する鉄道保守員と指令局1の指令員とが通話することができる。
【0046】
以上のように、本実施の形態1によれば、指令局1、列車搭載型移動局3間のデータ送受信時はフレーム内の全区間のデータ(主要データと付加データ)を用い、指令局1、携帯型移動局4間のデータ送受信時はフレーム内の一部区間のデータ(主要データ)を用いる構成とすることにより、指令局1、列車搭載型移動局3間では高データレートでのデータ通信を行うことが可能であり、指令局1、携帯型移動局4間では低データレートでのデータ通信を行うことが可能となる。
【0047】
また、指令局1、携帯型移動局4間のデータ送受信において、データ送受信を行なわない区間では、無線通信回路をオフする構成とすることにより、指令局1、携帯型移動局4間のデータ通信時の消費電力が抑えられ、長時間駆動可能な携帯型移動局4を提供することが可能となる。
【0048】
なお、本実施の形態1の例では、列車無線システムにおける指令局1、列車搭載型移動局3間または指令局1、携帯型移動局4間の通話について示したが、同様の機能を有する指令局、基地局および複数の移動局で構成される無線通信システムであれば、同様の効果を得ることが可能である。
【0049】
また、本実施の形態1の例では、TDMAスロットを構成するタイムスロットを用いて無線通信を行う場合について示したが、TDMA以外のFDMA等の他の通信方式を用いた無線通信においても、同様の効果を得ることが可能である。
【0050】
また、本実施の形態1の例では、指令局1、列車搭載型移動局3間または指令局1、携帯型移動局4間の無線通信システムについて示したが、無線電波周波数を有線回線に置き換えることで、光ファイバ等の有線通信システムにおいても、同様の効果を得ることが可能である。
【0051】
さらに、本実施の形態1の例では、指令局1、列車搭載型移動局3間または指令局1、携帯型移動局4間で送受信するデータとして、音声通話用のPCMデータを用い、所定の割合で間引きを行うことでレート変換する場合について説明したが、CELP方式に代表される、合成による分析(AbS:Analysis by Synthesis)法等で用いる音声符号化データまたは画像通信に用いる画像符号化データを用い、符号化データの全データを送受信する場合と一部データを送受信する場合でレート変換するような構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施の形態1に係る移動体通信システムを示す図である。
【図2】図1の移動体通信システムにおける指令局1の回路ブロック図である。
【図3】図1の移動体通信システムにおける基地局2の回路ブロック図である。
【図4】図1の移動体通信システムにおける列車搭載型移動局3の回路ブロック図である。
【図5】図1の移動体通信システムにおける携帯型移動局4の回路ブロック図である。
【図6】図1の移動体通信システムにおける指令局1、基地局2、列車搭載型移動局3および携帯型移動局間4の通信手順を示すシーケンス図である。
【図7】アナログ信号(音声電圧波形)からディジタル信号への変換およびディジタル信号の並び替えの一例を示す図である。
【図8】アナログ信号(音声電圧波形)からディジタル信号への変換および間引きに基づくディジタル信号の並び替えの一例を示す図である。
【図9】符号化部34−2、12−1の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図10】符号化部47−2の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図11】ディジタル信号の並び替えおよびディジタル信号からアナログ信号(音声電圧波形)への変換の一例を示す図である。
【図12】ディジタル信号からアナログ信号(音声電圧波形)への変換の一例を示す図である。
【図13】復号化部34−1の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図14】復号化部47−1の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図15】復号化部12−2の処理内容を示すフローチャートの一例である。
【図16】図5に示した携帯型移動局4のSW部43の処理の内容を示す図である。
【図17】図10に示すディジタル信号からアナログ信号への変換において、標本化処理による折り返し歪を除去するためのローパスフィルタの一例を示す図である。
【図18】一対多通信の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
1:指令局、2,2a,2b,・・・,2n:基地局、3:列車搭載型移動局、4:携帯型移動局、5:下り回線、6:上り回線、7−1、7−2:音声電圧波形(アナログ信号)、8:黒丸サンプルデータ(ディジタル信号)、9:白丸サンプルデータ(ディジタル信号)、11:マイク、12:信号処理部、12−1:符号化部、12−2:復号化部、13:データ多重部、13−1:フレーム生成部、13−2:フレーム同期部、14:ネットワークインタフェース、15:スピーカ、21:ネットワークインタフェース、22:データ多重部、22−1:フレーム同期部、22−2:フレーム生成部、23:無線通信部、23−1:変調部、23−2:復調部、24:共用部、25:アンテナ、31:アンテナ、32:共用部、33:無線通信部、33−1:復調部、33−2:変調部、34:信号処理部、34−1:復号化部、34−2:符号化部、35:スピーカ、36:マイク、41:アンテナ、42:共用部、43、46:SW部、44:無線通信部、44−1:復調部、44−2:変調部、45:メモリ部、47:信号処理部、47−1:復号化部、47−2:符号化部、48:スピーカ、49:マイク、100:指令局、200:基地局、300:列車搭載型移動局、400:携帯型移動局、500:下り回線、600:上り回線、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を主要データと付加データとに変調して送信する親局、
前記親局が送信する主要データと付加データとを受信し、該主要データと付加データとから前記親局の送信信号を復調する第1の子局端末および、
前記親局が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記親局の送信信号を復調する第2の子局端末を有し、
前記第1の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データと付加データとに変調して送信し、
前記第2の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データのみに変調して送信し、
前記親局は前記第1の子局端末が送信する主要データと付加データとを受信し、該主要データと付加データとから前記第1の子局端末の送信信号を復調する一方、前記第2の子局端末が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記第2の子局端末の送信信号を復調することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
送信信号を主要データと付加データとに変調して送信する親局と通信する子局端末であって、
前記親局の送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記親局の送信信号を復調することを特徴とする子局端末。
【請求項3】
列車無線通信システムに適用される通信システムであって、
親局は音声信号等の各種データ信号を送受信する基地局であり、
第1の子局端末は列車に搭載される移動体無線端末であり、
第2の子局端末は携帯型無線端末であることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
第2の子局端末は主要データの送受信時のみに送受信回路の電源をオンすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項1】
送信信号を主要データと付加データとに変調して送信する親局、
前記親局が送信する主要データと付加データとを受信し、該主要データと付加データとから前記親局の送信信号を復調する第1の子局端末および、
前記親局が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記親局の送信信号を復調する第2の子局端末を有し、
前記第1の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データと付加データとに変調して送信し、
前記第2の子局端末は前記親局に送信する送信信号を主要データのみに変調して送信し、
前記親局は前記第1の子局端末が送信する主要データと付加データとを受信し、該主要データと付加データとから前記第1の子局端末の送信信号を復調する一方、前記第2の子局端末が送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記第2の子局端末の送信信号を復調することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
送信信号を主要データと付加データとに変調して送信する親局と通信する子局端末であって、
前記親局の送信する主要データを受信し、該主要データのみから前記親局の送信信号を復調することを特徴とする子局端末。
【請求項3】
列車無線通信システムに適用される通信システムであって、
親局は音声信号等の各種データ信号を送受信する基地局であり、
第1の子局端末は列車に搭載される移動体無線端末であり、
第2の子局端末は携帯型無線端末であることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
第2の子局端末は主要データの送受信時のみに送受信回路の電源をオンすることを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−296424(P2009−296424A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−149182(P2008−149182)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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