説明

通信システム及び通信方法

【課題】路側通信機が自己のダウンリンクエリアを簡易に推定することができる通信システム及び通信方法を提供する。
【解決手段】車載通信機3に受信させるためのダウンリンク信号を、路側通信機2から目標とするダウンリンクエリアに送信し、各車載通信機3は、路側通信機2からダウンリンク信号に含まれる所定の情報(例えば時刻情報)を受けたときは0に設定した中継数を位置情報と共にアップリンク信号に含めて送信し、また、他の車載通信機3から所定の情報を受けたときはインクリメントした中継数を位置情報と共にアップリンク信号に含めて送信する。路側通信機2は、受信した複数のアップリンク信号から取得した位置及び中継数の分布に基づいてダウンリンクエリアを推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport System)の一部を成す、路側通信機及び車載通信機による通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通安全の促進や交通事故の防止を目的として、道路に設置されたインフラ装置からの情報を受信し、この情報を活用することで車両の安全性を向上させる高度道路交通システムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
かかる高度道路交通システムの一部を成す通信システムは、インフラ側の無線通信装置である複数の路側通信機と、各車両に搭載される無線通信装置である複数の車載通信機とによって構成される。
【0003】
この場合、各通信主体間で行う通信の組み合わせには、路側通信機同士が行う路路間通信と、路側通信機と車載通信機とが行う路車(又は車路)間通信と、車載通信機同士が行う車車間通信とが含まれる。このように複数種類の通信が行われる通信システムでは、路側通信機と車載通信機とで送信タイミングを分けることにより互いの信号がぶつかることを防止している。
【0004】
また、路側通信機同士では互いに同じタイミングで送信するため、空間的に分離すべく、路側通信機から送信したダウンリンク信号を車載通信機に受信させることが可能なエリアすなわちダウンリンクエリアが、なるべく大きく重ならないように工夫されている。なお、これらの通信に用いられる周波数帯は、地上デジタル放送や携帯電話の周波数帯と隣接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2806801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような通信システムにおいては、路側通信機同士でダウンリンクエリアが大きく重ならないようにしていても、現実には、電波伝搬環境の変化によって、いつの間にかエリアが拡がって相互干渉を起こし、これによって車載通信機による受信に支障が出る場合があり得る。また、本来、ダウンリンクエリアが広いほど、隣接の地上デジタル放送や携帯電話への予干渉が増大する。一方、逆に、いつの間にかダウンリンクエリアが狭くなるようなことがあれば、予定していた通信ができなくなることになる。
【0007】
従って、路側通信機のダウンリンクエリアを監視あるいは測定する必要があるが、人為的な作業としてこれを定期的に行うことは面倒であり、自動的に行われることが好ましい。しかしながら、そのための画期的な方策は未だ提案されていない。
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、路側通信機が自己のダウンリンクエリアを簡易に推定することができる通信システム及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、ダウンリンク信号を送信可能な路側通信機と、送信されたダウンリンク信号に基づいて用意した路側情報及び自己の位置情報を含む送信情報を送信可能な複数の車載通信機とによって構成される通信システムであって、各車載通信機は、前記路側情報を中継して他の車載通信機に送信する機能と、当該路側情報を他の車載通信機を中継して受信したときは中継数に関する情報を前記送信情報に含め、前記路側通信機から直接に前記路側情報を受信したときは初期値に設定した中継数を前記送信情報に含める機能とを有し、前記路側通信機は、受信した複数の送信情報から取得した位置及び中継数の分布に基づいてダウンリンクエリアを推定することを特徴とする。
【0009】
上記のような通信システムでは、例えば、中継数が初期値であれば、その車載通信機の位置がダウンリンクエリア内にあり、また、中継数が初期値と異なる値であれば、その車載通信機の位置がダウンリンクエリア外にある、という一つのエリア推定基準を持つことができる。
【0010】
(2)また、上記通信システムにおいて、路側通信機からダウンリンク信号を受信できない場合は、他の車載通信機から受信した路側情報のうち、中継数が最も小さい路側情報を送信情報に含めるとともに、他の車載通信機から受信した路側情報に対応する中継数に定値を加算した中継数を中継数情報として送信情報に含めるようにしてもよい。
この場合、例えば、中継数が初期値であれば、その車載通信機の位置がダウンリンクエリア内にあり、また、中継数が初期値より大きい値であれば、その車載通信機の位置がダウンリンクエリア外にある、という一つのエリア推定基準を持つことができる。なお、例えば、中継数が(初期値+1)以下であればダウンリンクエリア内、また、中継数が(初期値+2)以上であればダウンリンクエリア外、というエリア推定基準を持つことも可能である。
【0011】
また、定値加算の「定値」が負の値であれば実質的には定値減算になるので、その場合には、中継数が初期値であれば、その車載通信機の位置がダウンリンクエリア内にあり、また、中継数が初期値より小さい値であれば、その車載通信機の位置がダウンリンクエリア外にある、というエリア推定基準を持つこともできる。
【0012】
(3)また、上記(1)の通信システムにおいて、推定したダウンリンクエリアを目標となる所定のエリアに近づけるべく路側通信機の送信電力を調整するようにしてもよい。
この場合、ダウンリンクエリアの変化が生じても、送信電力の調整によって常に所定のエリアに近づけて維持することができる。
【0013】
(4)また、上記(3)の通信システムにおいて、目標とするダウンリンクエリア及び推定するダウンリンクエリアは共に、車載通信機の位置と当該位置からの受信電力とのマップとして表されるものであり、路側通信機は、送信電力の調整量を、2つのダウンリンクエリアの同一位置における受信電力の差に基づいて決定するようにしてもよい。
この場合、同一位置における受信電力の差を、送信電力の調整量の目安として把握することができる。また、ダウンリンクエリア内の車載通信機の数(車両数)が少なくても、送信電力の調整量の目安を把握することができる。
【0014】
(5)また、上記(1)〜(4)のいずれかの通信システムにおいて、路側通信機は、ダウンリンクエリアを推定するにあたって、車載通信機から送信される速度情報を参酌するようにしてもよい。
この場合、速度に配慮してアップリンク信号に基づく位置情報の信頼性に軽重をもたせることができる。
【0015】
(6)また、上記(1)〜(5)のいずれかの通信システムにおいて、路側通信機は、ダウンリンクエリアを推定するにあたって、同一の車載通信機から位置情報を受け取る時間差を参酌するようにしてもよい。
この場合、車両の移動と車載通信機の送信タイミングに配慮してアップリンク信号に基づく位置情報の信頼性に軽重をもたせることができる。
【0016】
(7)また、上記(1)〜(6)のいずれかの通信システムにおいて、路側通信機はGPS受信機を備え、ダウンリンクエリアを推定するにあたって、GPS衛星の捕捉数を参酌するようにしてもよい。
GPS衛星の捕捉数が多い方がGPS受信機で検出する位置の精度が高くなる。また、路側通信機から見たGPS衛星の数は、ダウンリンクエリア内の車載通信機から見たGPS衛星の数と同じである。従って、GPS衛星の捕捉数に配慮してアップリンク信号に基づく位置情報の信頼性に軽重をもたせることができる。
【0017】
(8)一方、本発明は、ダウンリンク信号を送信可能な路側通信機と、送信されたダウンリンク信号に基づいて用意した路側情報及び自己の位置情報を含む送信情報を送信可能な複数の車載通信機との間での通信方法であって、各車載通信機は、前記路側情報を中継して他の車載通信機に送信する他、当該路側情報を他の車載通信機を中継して受信したときは中継数に関する情報を前記送信情報に含め、前記路側通信機から直接に前記路側情報を受信したときは初期値に設定した中継数を前記送信情報に含め、一方、前記路側通信機は、受信した複数の送信情報から取得した位置及び中継数の分布に基づいてダウンリンクエリアを推定することを特徴とする。
【0018】
上記のような通信方法では、例えば、中継数が初期値であれば、その車載通信機の位置がダウンリンクエリア内にあり、また、中継数が初期値と異なる値であれば、その車載通信機の位置がダウンリンクエリア外にある、という一つのエリア推定基準を持つことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の通信システム/通信方法によれば、路側通信機は、複数の車載通信機の位置及び中継数の分布に基づいて、自己のダウンリンクエリアを簡易に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る路側通信機を含む高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示す高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
【図3】路側通信機と車載通信機の内部構成を示すブロック図である。
【図4】車載通信機が送信するデータフォーマットの一例を示す図である。
【図5】路側通信機からのダウンリンクと、車載通信機からのアップリンクとを示す図である。
【図6】(a)は、路側通信機と、車載通信機を搭載した車両との位置関係を示し、(b)は、路側通信機の全ダウンリンクエリアのうち、路上の一方向へ拡がるダウンリンクエリアに着目した形状イメージを平面的に表した図である。
【図7】図6の状態からダウンリンクエリアが変化した状態を示す図である。
【図8】(a)は、路側通信機と、車載通信機を搭載した車両との位置関係を示し、(b)は、路側通信機の全ダウンリンクエリアのうち、路上の一方向へ拡がるダウンリンクエリアに着目した形状イメージを平面的に表した図である。
【図9】図8の状態からダウンリンクエリアが変化した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔システムの全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る路側通信機を含む高度道路交通システム(ITS)の全体構成を示す概略斜視図である。なお、本実施形態では、道路構造の一例として、南北方向と東西方向の複数の道路が互いに交差した碁盤目構造を想定している。
図1に示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、交通信号機1、路側通信機2、車載通信機3(図2及び図3参照)、中央装置4、車載通信機3を搭載した車両5、及び、車両感知器や監視カメラ等よりなる路側センサ6を含む。
【0022】
交通信号機1と路側通信機2は、複数の交差点Ji(図例では、i=1〜12)のそれぞれに設置されており、電話回線等の通信回線7を介してルータ8に接続されている。このルータ8は交通管制センター内の中央装置4に接続されている。
中央装置4は、自身が管轄するエリアに含まれる各交差点Jiの交通信号機1及び路側通信機2とLAN(Local Area Network)を構成している。従って、中央装置4は、各交通信号機1及び各路側通信機2との間で双方向通信が可能である。なお、中央装置4は、交通管制センターではなく道路上に設置してもよい。
【0023】
路側センサ6は、各交差点Jiに流入する車両台数をカウントする等の目的で、管轄エリア内の道路の各所に設置されている。この路側センサ6は、直下を通行する車両5を超音波感知する車両感知器、或いは、道路の交通状況を時系列に撮影する監視カメラ等よりなり、感知情報S4や画像データS5は通信回線7を介して中央装置4に送信される。
なお、図1及び図2では、図示を簡略化するために、各交差点Jiに信号灯器が1つだけ描写されているが、実際の各交差点Jiには、互いに交差する道路の上り下り用として少なくとも4つの信号灯器が設置されている。
【0024】
〔中央装置〕
中央装置4は、ワークステーション(WS)やパーソナルコンピュータ(PC)等よりなる制御部を有しており、この制御部は、路側通信機2、路側センサ6からの各種の交通情報の収集・処理(演算)・記録、信号制御及び情報提供を統括的に行う。
具体的には、中央装置4の制御部は、自身のネットワークに属する交差点Ciの交通信号機1に対して、同一道路上の交通信号機1群を調整する系統制御や、この系統制御を道路網に拡張した広域制御(面制御)を行うことができる。
【0025】
また、中央装置4は、通信回線7を介してLAN側と接続された通信インタフェースである通信部を有しており、この通信部は、信号灯器の灯色切り替えタイミングに関する信号制御指令S1や、渋滞情報等を含む交通情報S2を所定時間ごとに交通信号機1及び路側通信機2に送信している(図1参照)。
信号制御指令S1は、前記系統制御や広域制御を行う場合の信号制御パラメータの演算周期(例えば、1.0〜2.5分)ごとに送信され、交通情報S2は、例えば5分ごとに送信される。
【0026】
また、中央装置4の通信部は、各交差点Jiに対応する路側通信機2から、その通信機2が車載通信機3から受信した車両5の現在位置等を含む車両情報S3、車両通過時に生じるパルス信号よりなる車両感知器(図示せず)の感知情報S4、及び、監視カメラが撮影した道路のデジタル情報よりなる画像データS5等を受信しており、中央装置4の制御部は、これらの各種情報に基づいて前記系統制御や広域制御を実行する。
【0027】
〔無線通信の方式等〕
図2は、上記高度道路交通システムの管轄エリアの一部を示す道路平面図である。
図2では、互いに交差する2つの道路の各々が上りと下りで片側1車線のものとして例示されているが、道路構造はこれに限られるものではない。
図2にも示すように、本実施形態の高度道路交通システムは、車載通信機3との間で無線通信が可能な複数の路側通信機2と、キャリアセンス方式で他の通信機2,3と無線通信を行う移動無線送受信機の一種である車載通信機3と備えている。
【0028】
複数の路側通信機2は、それぞれ路側の交差点Jiごとに設置されていて、図1及び図2の例では交通信号機1の支柱に取り付けられている。一方、車載通信機3は、道路を走行する各車両5にそれぞれ搭載されている。
各路側通信機2は、その周囲に広がるダウンリンクエリア(路側通信機2の送信信号が十分に届く範囲)をそれぞれ有し、自身のダウンリンクエリアを走行する車両5の車載通信機3に、ダウンリンク信号を受信させることができる。
【0029】
本例の高度道路交通システムでは、路側通信機2同士(路路間通信)については無線通信が用いられ、また、路側通信機2と車載通信機3との間(「路」から「車」への路車間通信と「車」から「路」への車路間通信との双方を含む。)と車載通信機3同士(車車間通信)についても、無線通信が用いられている。
なお、前記した通り、交通管制センターに設けられた中央装置4は、各路側通信機2と有線での双方向通信が可能となっているが、これらの間も無線通信であってもよい。
【0030】
各路側通信機2は、自装置が無線送信するためのタイムスロットをTDMA方式で割り当てており、このタイムスロット以外の時間帯には無線送信を行わない。従って、路側通信機2用のタイムスロット以外の時間帯は、車載通信機3のためのCSMA方式による送信時間として開放されている。
また、路側通信機2は、自身の送信タイミングを制御するために他の路側通信機2との時刻同期機能を有している。この路側通信機2の時刻同期は、例えば、自身の時計をGPS時刻に合わせるGPS同期や、自身の時計を他の路側通信機2からの送信信号に合わせるエア同期等によって行われる。
【0031】
〔路側通信機〕
図3は、路側通信機2と車載通信機3の内部構成を示すブロック図である。
路側通信機2は、無線通信のためのアンテナ20が接続された無線通信部(送受信部)21と、中央装置4と双方向通信する有線通信部22と、それらの通信制御を行うCPU等よりなる制御部23と、制御部23に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部24とを備えている。記憶部24は、制御部23が実行する通信制御のためのプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。
【0032】
路側通信機2の有線通信部22には、前記中央装置4の他に、GPS受信機25が接続されている。このGPS受信機25は、GPSアンテナ26により、複数のGPS衛星(図示せず。)からGPS信号を受信する。なお、GPS受信機25は、路側通信機2内に設けられるものであってもよい。
【0033】
制御部23は、有線通信部22が受信した中央装置4からの交通情報S2等を、記憶部24に一時的に記憶させ、無線通信部21を介して自己のダウンリンクエリアにブロードキャスト送信する。また、制御部23は、無線通信部21が受信した車両情報S3を、記憶部24に一時的に記憶させ、有線通信部22を介して中央装置4に転送する。
【0034】
また、制御部23は、記憶部24に記憶されたタイムスロットの割当情報S6を、無線通信部21を介して自己のダウンリンクエリアにブロードキャスト送信する。この割当情報S6は、路側通信機2の送信時間を車載通信機3に通知するためのものである。ダウンリンクエリアを走行する車両5の車載通信機3は、路側通信機2が送信を行わない時間帯に、キャリアセンス方式による無線送信を行う。
【0035】
〔車載通信機〕
一方、車載通信機3は、無線通信のためのアンテナ30に接続された通信部(送受信部)31と、この通信部31に対する通信制御を行うCPU等よりなる制御部32と、この制御部32に接続されたROMやRAM等の記憶装置よりなる記憶部33とを備えている。記憶部33は、制御部32が実行する通信制御のためのプログラムや、各通信機2,3の通信機ID等を記憶している。また、通信部31には、GPS受信機34及び速度センサ36が接続されている。GPS受信機34は、GPSアンテナ35により、複数のGPS衛星(図示せず。)からGPS信号を受信する。なお、GPS受信機34は、車載通信機3内に設けられるものであってもよい。
【0036】
車載通信機3の制御部32は、車車間通信のためのキャリアセンス方式による無線通信を通信部31に行わせるものであり、路側通信機2との間の時分割多重方式での通信制御機能は有していない。
従って、車載通信機3の通信部31は、所定の搬送波周波数の受信レベルを常時感知しており、その値がある閾値以上である場合は無線送信を行わず、当該閾値未満になった場合にのみ無線送信を行うようになっている。
【0037】
なお、車載通信機3の制御部32は、車両5(車載通信機3)の現時点の位置、方向、速度、車種等を含む車両情報S3を、通信部31を介して外部にブロードキャストで無線送信させている。
また、車載通信機3の制御部32は、他の車両5から直接受信した車両情報S3や、路側通信機2から受信した他の車両5の車両情報S3に含まれる、位置、速度及び方向に基づいて、右直衝突や出合い頭衝突等を回避するための安全運転支援制御を行うことができる。
【0038】
また、車載通信機3は、路側通信機2から受けた情報として例えば時計を合わせるための時刻情報を、転送情報として、アップリンク信号に含める。また、この情報の中継数という情報を、アップリンク信号に含める。中継数とは、転送情報が届くまでに既に車載通信機3を経由した数であり、路側通信機2から直接受信した場合には、中継数が0に設定される。従って、車載通信機3は、路側通信機2から受けた時刻情報については中継数0としてアップリンク信号を送信し、他の車載通信機3から受けた時刻情報には中継数をインクリメント(+1の定値加算)してアップリンク信号を送信する。
【0039】
図4は、車載通信機3が送信するデータフォーマットの一例を示す図である。
図4に示すように、車載通信機3の送信信号には、プリアンブル、ヘッダ、データ、CRC(Cyclic Redundancy Check)が含まれている。
このうち、データには、車両5の位置、方向(進行方向)、速度、転送情報、中継数、その他が含まれる。車両5の位置や方向の情報は、GPS受信機34により、取得することができる。また、速度は、車両5の速度センサ36に基づいた情報である。なお、車両5の位置情報は、光ビーコン(図示せず。)から取得することもできる。
【0040】
〔通信システムとしての第1実施形態〕
次に、上記高度道路交通システムの一部を成す本発明の第1実施形態に係る通信システム(通信方法)について説明する。
【0041】
《ダウンリンクエリア推定の考え方》
図5は、路側通信機2からのダウンリンクと、車載通信機3からのアップリンクとを示す図である。路側通信機2から送信したダウンリンク信号を車載通信機3に受信させることが可能なエリアすなわちダウンリンクエリアは、例えば、図示の点線で示す領域である。ダウンリンク信号には前述の時刻情報が含まれている。ダウンリンクエリア内にある車両51,52の各車載通信機3は、ブロードキャストでアップリンク信号を送信しており、この中に、路側通信機2から受信した時刻情報と、それに関する中継数と、車載通信機3の位置情報とが含まれている。ここで、車両51,52の各車載通信機3は、路側通信機2から直接、時刻情報を受け取っているので、中継数は0である。
【0042】
一方、車両53は、ダウンリンクエリア外にあって路側通信機2のダウンリンク信号を直接受信することはできないが、例えば車両52からブロードキャストで送信されるアップリンク信号に基づいて、時刻情報を取得する。但し、この場合、車両52の車載通信機3は中継数をインクリメントし、中継数は1となる。車両53の車載通信機3は、アップリンク信号にこの中継数1を含めてアップリンクを行う。このアップリンク信号が路側通信機2に届いた場合、車両53の位置は、アップリンク信号を路側通信機2に受信させることが可能なエリアすなわち、アップリンクエリアにある、ということになる。この場合には、ダウンリンクエリアと、アップリンクエリアとは互いに一致していないことになる。
【0043】
さらに遠方にある車両54は、ダウンリンクエリア外にあって路側通信機2のダウンリンク信号を直接受信することはできないが、例えば車両52の車載通信機3からブロードキャストで送信されるアップリンク信号を車両53の車載通信機3が受信し、さらに、車両53の車載通信機3からブロードキャストで送信されるアップリンク信号を車両54の車載通信機3が受信することにより、時刻情報を取得する。この場合、車両52,53の2つの車載通信機3でそれぞれインクリメントされるので、中継数は2となる。車両54の車載通信機3は、アップリンク信号にこの中継数2を含めてアップリンクを行う。もし、このアップリンク信号が路側通信機2に届いた場合には、車両54の位置もまたアップリンクエリア内にあることになるが、届かなければ、アップリンクエリア外ということになる。
【0044】
このようにして、路側通信機2は、車載通信機3から上がってくるアップリンク信号に含まれる位置及び中継数の分布情報に基づいて、中継数0という情報をアップリンクして来る車載通信機3の位置のうちの最も遠い位置が、自己のダウンリンクエリアの最遠端であると推定することができる。
【0045】
また、中継数が1以上である情報が届いている場合には、その情報をアップリンクして来る車載通信機3は、自己のダウンリンクエリアには無いと、認識することができる。従って、中継数が1以上である情報をアップリンクして来る車載通信機3のうちの最も近い位置と、中継数が0である情報をアップリンクして来る車載通信機3のうち最も遠い位置との中間位置をダウンリンクの最遠端と推定することも可能である。
【0046】
なお、中継数0は初期値の典型例であるが、0以外の値を初期値にすることも可能であり、従って、初期値は0でなければならないというものではない。また、インクリメント(+1の定値加算)は典型例であるが、デクリメント(−1の定値加算すなわち定値減算)でもよい。さらに、加減算の単位は絶対値1に必ずしも限られるものではない。
また、上記の例では、中継数0はダウンリンクエリア内で、中継数1以上はダウンリンクエリア外としたが、閾値設定は必ずしもこれに限定されない。例えば若干のばらつきを考慮して、中継数0及び1がダウンリンクエリア内で、中継数2以上はダウンリンクエリア外とすることも可能である。
【0047】
中継数を用いることの利点は、第1に、位置や受信電力の情報に加えて中継数を用いることで、ダウンリンクエリア推定の精度が向上することである。また、第2に、車載通信機3の送信電力が不明であっても、中継数により、ダウンリンクエリア推定が可能であるという点である。
【0048】
なお、中継数に関する上記の説明は、実は、他の車載通信機3から受け取った時刻情報が、既に受け取った情報と同一であれば再度の中継送信はしない、という前提条件で、簡略に説明したものである。しかしながら、そのような前提条件が無い場合には、次々と中継が繰り返され、自己(車載通信機)が送信した時刻情報が自己に戻ってきて、再びこれを送信するという事態になる。従って、中継数がどんどん加算されていく。このような事態を防止するためには、中継数に閾値を設ければよい。
【0049】
上記の時刻情報のような、中継の対象となる情報を路側情報とすると、例えば、路側通信機2からダウンリンク信号を受信できない場合は、他の車載通信機3から受信した路側情報のうち、中継数が最も小さい路側情報を、当該車載通信機3の送信情報に含めるとともに、他の車載通信機3から受信した路側情報に対応する中継数に定値を加算した中継数を中継数情報として送信情報に含める。
一方、他の車載通信機3から受信した路側情報に対応する中継数が所定の閾値を超える場合は、当該路側情報は送信情報に含めない。
このようにすれば、閾値を超えてなお路側情報を車載通信機3が中継送信し続けるという事態を防止することができる。
【0050】
中継数に関する以上の説明をまとめると、まず、通信システムは、ダウンリンク信号を送信可能な路側通信機2と、送信されたダウンリンク信号に基づいて用意した路側情報及び自己の位置情報を含む送信情報を送信可能な複数の車載通信機3とによって構成される。各車載通信機3は、路側情報を中継して他の車載通信機3に送信する機能を有している。また、各車載通信機3は、路側情報を他の車載通信機3を中継して受信したときは中継数に関する情報を送信情報に含め、路側通信機2から直接に路側情報を受信したときは初期値に設定した中継数を送信情報に含める機能を有する。そして、路側通信機2は、受信した複数の送信情報から取得した位置及び中継数の分布に基づいてダウンリンクエリアを推定する、というものである。
【0051】
《送信電力の調整》
次に、上記の考え方に基づくダウリンクエリア推定と、送信電力の調整について、具体的に説明する。
図6の(a)は、路側通信機2と、車載通信機3を搭載した車両51,52,54との位置関係を示し、(b)は、路側通信機2の全ダウンリンクエリアのうち、路上の一方向へ拡がるダウンリンクエリアに着目した形状イメージを平面的に表した図である。基準エリアとしてのダウンリンクエリアAは、規格により、例えば、路側通信機2から200mを最遠端とする大きさである。
【0052】
路側通信機2の受信感度は、キャリアセンスレベルの設定等により、規格で定められた受信感度(若しくは車載通信機3と同じ受信感度)に設定される。具体的には例えば−80dBmまでの信号受信が可能な感度である。このような設定により、路側通信機2は、受信感度未満のレベルの信号は受信できなくなる。なお、このような受信感度設定は、受信回路のハードウェア調整で行ってもよいし、現実にはもっと低いレベルも受信できるがソフトウェアによって−80dBmより低い信号は捨てる、という処理を行うようにしてもよい。
【0053】
図6の例では、路側通信機2から200m離れた位置にある車両54の車載通信機3の受信電力は、−80dBmである。従って、200mより近い距離にある車両51,52の車載通信機3から送信されるアップリンク信号は、−80dBmよりも高い受信電力(−70dBm,−75dBm)となる。なお、本例における受信電力は、以下に述べる電力調整用としては、参照しない。
【0054】
また、路側通信機2から送信する時刻情報についての中継数0という情報が、位置情報と共にアップリンク信号として受信できるようにする。これにより、(b)に示すように、ダウンリンクエリアAは200mとなる。
【0055】
上記のように設定した後、路側通信機2は、中継数0の情報が届く最遠端の位置を監視する。但し、この監視は、常時頻繁に行う必要性は乏しく、例えば、数日〜数ヶ月に一度程度の頻度で行ってもよい。なお、監視を行う際は、情報量が少なすぎるとダウンリンクエリア推定の精度が悪くなる可能性があるので、中継数及び位置の情報をなるべく多く収集することが好ましい。
【0056】
ダウンリンクエリアは、最初に設定したエリアAから変化しないことは保証し得ず、現実にはエリアの伸縮変化が生じる。例えば、電波の伝搬環境は、道路周辺の建造物の変化や、道路交通上のインフラの設置あるいは撤去、街路樹の落葉等、種々の条件で変化する。また、まれには、路側通信機2の送信能力が低下することもあり得る。
【0057】
例えば図7の(a)において、路側通信機2にアップリンク信号が届く最も遠い位置は最初の設定通り、車両54の200mであるが、中継数が3に変化している。また、中継数0の情報をアップリンクして来る最も遠い位置は、車両53の車載通信機3(170m)である。また、距離50m,100mにある車両51,52の車載通信機3からは中継数0の情報が届いている。この場合、路側通信機2(制御部23)は、ダウンリンクエリアがA’(〜170m)であると推定する。この場合、目標設定した基準エリアAよりエリアが小さくなっているので、路側通信機2は、制御部23から無線通信部21(図3)に対して送信電力を増大させる指示を出力し、ダウンリンクエリアA’の最遠端(170m)を、目標設定したダウンリンクエリアAの最遠端(200m)と一致させる方向へ送信電力を調整する指示を行う。これにより、ダウンリンクエリアを、目標設定したエリアAに戻すことができる。
【0058】
なお、送信電力の調整量は、一度の調整で「一致」させることをねらって推定した量だけ送信電力を一気に増大させてもよいが、その場合には、推定した調整量が大きすぎると一時的にエリアがAより広くなって、路側通信機2同士の干渉や、隣接システム(地上デジタル放送・携帯電話)への予干渉を引き起こす恐れがあるので、必ずしも好ましくない。従って、一度の調整で一致させるための量よりも少ない一定量(例えば0.5dBm)で、少しずつエリアを元のAに近づけていく方が無難である。また、まず一定量調整したらエリアがどの程度変化するかを記憶して、次の調整量を演算するようにしてもよい。なお、目標設定したダウンリンクエリアAと、現在のダウンリンクエリアA’との差が所定値より小さい場合は調整しないというような選択も当然に可能である。
【0059】
なお、図7とは逆に、目標設定したダウンリンクエリアAよりも現在のダウンリンクエリアA’が拡がったと推定される場合には、送信電力を低減させることにより同様に、元のエリアAに戻すことができる。
【0060】
以上、詳述したように、上記の通信システム(又は通信方法)によれば、中継数が0であることにより、その車載通信機3の位置がダウンリンクエリア内にあることがわかり、また、中継数が0以外の値であることにより、その車載通信機3の位置がダウンリンクエリア外にあることがわかる。従って、路側通信機2は、複数の車載通信機3の位置及び中継数の分布に基づいて、自己のダウンリンクエリアを簡易に推定することができる。また、ダウンリンクエリアの変化が生じても、適宜、路側通信機2の送信電力を調整することによって常に所定のエリアAに近づけて維持することができる。
【0061】
なお、上記の通信システム(又は通信方法)によれば、中継数という情報を使用することによって、ダウンリンク信号が直接届いたのかどうかを正確に把握することができる。これにより、路側通信機2は、車載通信機3の送信能力に惑わされることなくダウンリンクエリアを推定することができる。例えば、車載通信機3の送信電力が可変である場合には、他の車載通信機を経て受信した時刻情報を、送信電力が大きい状態の車載通信機3が遠くからアップリンクすることにより、路側通信機2は、実際には届いていないエリアにも関わらず、ダウンリンク信号が直接届いたかのように誤解する可能性があるが、中継数の情報を使用することにより、そのような誤解を防止することができる。
【0062】
また、路側通信機2の送信能力が急激に低下する異常事態には、中継数0の情報をアップリンクする車載通信機3が激減することになるので、異常を発見することができる。すなわち、中継数の情報を監視することによって、路側通信機2の異常を発見することができる。
【0063】
〔通信システムとしての第2実施形態〕
《ダウンリンクエリア推定の考え方》
ダウンリンクエリア推定の考え方は、第1実施形態と同様であるが、第2実施形態ではさらに、路側通信機2における受信電力を考慮する。
【0064】
《送信電力の調整》
図8の(a)は、路側通信機2と、車載通信機3を搭載した車両51〜54との位置関係を示し、(b)は、路側通信機2の全ダウンリンクエリアのうち、路上の一方向へ拡がるダウンリンクエリアに着目した形状イメージを平面的に表した図である。
【0065】
このダウンリンクエリアAは、路側通信機2から200m離れた位置にある車両54の車載通信機3からの受信強度が例えば−80dBmであると設定するものである。この点は、第1実施形態(図6,図7)と同様であるが、第1実施形態と異なるのは、エリアAを、単に最遠端までの拡がりを示すだけでなく、車載通信機3の位置と当該位置での受信電力とのマップとして表す点である。なお、例えば規格で定められた最低受信感度が−85dBmであれば、フェージングでの損失等を考慮した方がよい。フェージングマージン等を5dBとすれば、目標とする受信電力は−80dBmとするのがよい。
【0066】
すなわち、路側通信機2の制御部23(図3)は、ダウンリンクエリアAの輪郭線上のみならず、エリア内で、車両51〜53の各車載通信機3から送信される信号に基づく位置とその受信電力とを記憶する。すなわち、車両51,52,53の各車載通信機3の位置はそれぞれ50m,100m,170mであり、受信電力は−67dBm,−72dBm,−77dBmである。これにより、図8の(b)に示す4本の等電力線を含む受信電力のマップを記憶することができる。なお、これは一例であり、さらに細かく等電力線を記憶してもよい。
【0067】
また、路側通信機2から送信する時刻情報について、これを、最も遠い位置にある車両54の車載通信機3(それ以外の車載通信機3も同様。)が受信できるように、路側通信機2の送信電力を設定する。これにより、全ての車載通信機3から中継数0の情報が届いている。すなわち、(b)に示すように、ダウンリンクエリアAは200mである。
このように設定した後、路側通信機2は、第1実施形態と同様に、中継数0の情報が届く最遠端の位置を監視する。また、受信できる範囲内で、位置と、受信電力とのマップを監視する。
【0068】
例えば図9の(a)においては、路側通信機2にアップリンク信号が届く最も遠い位置が170mとなり、その位置情報と共に送られて来た中継数は5である。また、中継数0の情報をアップリンクして来る最も遠い位置は、車両52の車載通信機3である。また、距離50mにある車両51の車載通信機3からは中継数0の情報が届いている。この場合、路側通信機2(制御部23)は、ダウンリンクエリアがA’(〜100m)であると推定する。この場合、目標設定したダウンリンクエリアAよりエリアが小さくなっているので、路側通信機2は、制御部23から無線通信部21(図3)に対して送信電力を増大させる指示を出力し、例えば、図9の(b)における100mでの−75dBmを、図8の(b)における100mでの−72dBmになるように、3dB分の送信電力を調整する指示を行う。これにより、ダウンリンクエリアを、目標設定したエリアAに戻すことができる。
【0069】
上記第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、路側通信機2は、複数の車載通信機3の位置及び中継数の分布に基づいて、自己のダウンリンクエリアを簡易に推定することができる。また、ダウンリンクエリアの変化が生じても、送信電力の調整によって常に所定のエリアに近づけて維持することができる。
さらに、ダウンリンクエリアの最遠端がどこか、という情報が正確に入手できなくても、入手できた情報の範囲で、ダウンリンクエリアを推定し、同じ位置での受信電力が等しくなるように送信電力の調整量の目安を把握することができる。また、ダウンリンクエリア内の車載通信機3の数(車両数)が少なくても、送信電力の調整量の目安を把握することができる。
なお、電力差の比較は、エリア内のどこを対象としてもよいし、エリア全体の電力差の平均値でもよい。但し、なるべくは、比較できるうちの最遠端での電力差を比較することが好ましい。
【0070】
なお、図9とは逆に、目標設定したダウンリンクエリアAよりも現在のダウンリンクエリアA’が拡がったと推定される場合には、送信電力を低減させることにより同様に、元のダウンリンクエリアAに戻すことができる。
【0071】
なお、路側通信機2と車載通信機3とで、空中線電力に違いがある場合には、補正の必要がある。例えば、車載通信機3の送信電力が15dBmで、路側通信機2の送信電力が20dBmであれば、アップリンク受信電力は、ダウンリンク受信電力と比較して5dB小さいレベルで受信される。従って、ダウンリンクの電力マップを作成する際は、同位置の車載通信機3からのアップリンク受信電力に5dBを加算する補正を行う。また、過去に送信電力の補正を行っていれば、ダウンリンクの電力マップを作成する際は、同位置の車載通信機3からのアップリンク受信電力に過去の送信電力調整量を加算する補正を行う。
【0072】
〔その他〕
なお、上記各実施形態のダウンリンクエリア推定は車載通信機3の位置に基づいている。従って、アップリンク信号に基づく位置情報が高精度であることが重要である。しかし、一般に、車両の速度が速いほどGPS受信機34(図3)による位置検出の誤差が大きくなる傾向があるので、その点を考慮する必要がある。例えば、車載通信機3から送信されてくる情報(車両情報S3)に含まれる速度が所定値以上であれば、位置情報は採用しない、という処理をしてもよい。
【0073】
また、車両のGPS受信機34(図3)が位置を検出してから送信するまでには若干のタイムラグがある。これは、車載通信機3の送信に割り当てられる時間が限定されていることと、キャリアセンスにより送信できるタイミングを伺っていることによるものである。タイムラグがあると、位置情報と、それを実際に送信した位置が異なる。実際に送信した位置により、路側通信機2に届く受信電力が異なるので、位置情報と、受信電力とが正確に対応しなくなる。従って、第2実施形態のように位置情報と受信電力との「紐づけ」をする場合には、速度が速いほど、情報の信頼性が低い、ということになるので、速度が所定値以上であれば、位置情報と受信電力とが対応していない、と判定する処理をすることが無難である。
【0074】
また、車載通信機3は、上記の理由により、送信を行う時間の間隔が変動するものである。ダウンリンクエリア内の車両数が非常に多く、各車載送信機3の送信待ち時間が相対的に長い場合は、上記の紐付けの精度が悪くなる可能性が高い。従って、路側通信機2は、同一の車載通信機3から情報を受け取る時間差が長いほど位置の精度が悪いと判定することが賢明である。
【0075】
また、路側通信機2は、GPS受信機25を備えているので、ダウンリンクエリアを推定するにあたって、GPS衛星の捕捉数を参酌するようにしてもよい。GPSによる測位精度は衛星の配置により大きく左右され、一般に、GPS衛星の捕捉数が多い方がGPS受信機21,34で検出する位置の精度が高くなる。また、路側通信機2のGPS受信機25から見たGPS衛星の数は、200m程度しか離れていないダウンリンクエリア内の車載通信機3のGPS受信機34から見たGPS衛星の数と基本的に同じである。従って、路側通信機2側で、GPS衛星の捕捉数に配慮してアップリンク信号に基づく位置情報の信頼性に軽重をもたせるようにしてもよい。
【0076】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0077】
2 路側通信機
3 車載通信機
25 GPS受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンリンク信号を送信可能な路側通信機と、送信されたダウンリンク信号に基づいて用意した路側情報及び自己の位置情報を含む送信情報を送信可能な複数の車載通信機とによって構成される通信システムであって、
各車載通信機は、前記路側情報を中継して他の車載通信機に送信する機能と、当該路側情報を他の車載通信機を中継して受信したときは中継数に関する情報を前記送信情報に含め、前記路側通信機から直接に前記路側情報を受信したときは初期値に設定した中継数を前記送信情報に含める機能とを有し、
前記路側通信機は、受信した複数の送信情報から取得した位置及び中継数の分布に基づいてダウンリンクエリアを推定する
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記路側通信機からダウンリンク信号を受信できない場合は、他の車載通信機から受信した路側情報のうち、前記中継数が最も小さい路側情報を前記送信情報に含めるとともに、他の車載通信機から受信した前記路側情報に対応する中継数に定値を加算した中継数を中継数情報として前記送信情報に含める請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
推定したダウンリンクエリアを目標となる所定のエリアに近づけるべく前記路側通信機の送信電力を調整する請求項1記載の通信システム。
【請求項4】
目標とするダウンリンクエリア及び推定するダウンリンクエリアは共に、前記車載通信機の位置と当該位置からの受信電力とのマップとして表されるものであり、
前記路側通信機は、前記送信電力の調整量を、2つのダウンリンクエリアの同一位置における受信電力の差に基づいて決定する請求項3記載の通信システム。
【請求項5】
前記路側通信機は、ダウンリンクエリアを推定するにあたって、前記車載通信機から送信される速度情報を参酌する請求項1〜4のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記路側通信機は、ダウンリンクエリアを推定するにあたって、同一の車載通信機から前記位置情報を受け取る時間差を参酌する請求項1〜5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記路側通信機はGPS受信機を備え、ダウンリンクエリアを推定するにあたって、GPS衛星の捕捉数を参酌する請求項1〜6のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項8】
路側通信機と複数の車載通信機との間での通信方法であって、
前記車載通信機に受信させるためのダウンリンク信号を、前記路側通信機から目標とするダウンリンクエリアに送信し、
各車載通信機は、前記路側通信機から前記ダウンリンク信号に含まれる所定の情報を受けたときは初期値に設定した中継数を位置情報と共にアップリンク信号に含めて送信し、また、他の車載通信機から前記所定の情報を受けたときは定値加算した中継数を位置情報と共にアップリンク信号に含めて送信し、
前記路側通信機は、受信した複数のアップリンク信号から取得した位置及び中継数の分布に基づいてダウンリンクエリアを推定する
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate