説明

通信システム

【課題】ユーザが質問器に対して認証のための処理をさせたいときに処理をさせることができ、かつ、リーダの消費電力を抑制する事ができる通信システムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るICタグ通信システムは、応答器は、ユーザからの指示により起動信号を質問器に対して送信し、質問器は、応答器からの起動信号を受信したら、所定周期で質問信号の送信を開始し、質問信号を受信した応答器は応答信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグシステムに関し、特にリーダ側の消費電力量を抑える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグシステムは、データを含むICおよびアンテナからなるタグと、タグのデータを読み書きするリーダとで構成される。
ICタグシステムが用いられるケースとして、例えば、入室管理がある。具体的には、タグはリーダから繰り返し送信されている質問信号を捉えると、認証用のデータを含む応答信号をリーダに送り返し、リーダは受け取ったデータに基づいた認証のための処理を行って入口の扉の開錠等を行う。
【0003】
ICタグシステムでは、上述した入室管理のように、管理したい場所にリーダを1つずつ設置する必要があり、通常、ユーザがいつでも認証を受けて出入りできるように、リーダは常に質問信号を繰り返し送信している。
しかし、あまりユーザは来ないが入室を管理したい場所もあり、そのような場所に設置されたリーダは、何時来るか分からないユーザのために質問信号を送信し続けることになり、送信のための電力が無駄になっている。
【0004】
そこで、質問信号の送信を抑止することで消費電力を低減させる技術が開発されている。
この技術は、リーダは繰り返し質問信号を送信するが、応答信号を受信してから一定時間の間、次の応答信号を受信しなかった場合には、質問信号の送信を所定時間停止する。質問信号の送信を所定時間停止した後、質問信号の送信を再開するものである(特許文献1参照)。
【0005】
確かに、この技術を用いれば、応答信号を一定期間受信しなかった場合は、質問信号の送信を所定時間停止するので、停止している所定時間分の質問信号の送信に係るリーダの消費電力を少なくすることができる。
【特許文献1】特開2003−347965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、この技術は、リーダの消費電力を少なくすることは出来るものの、質問信号の送信を停止している間に、ユーザが認証を受けるためにICタグをリーダに読ませようとやって来たときには認証をすることができずに、ユーザはリーダの質問信号の送信が再開されるまで待たなければならないという不都合が生じ得る。
そこで、本発明は、ユーザがリーダに認証のため処理をさせたいときにユーザは認証のための動作をすることができ、かつ、リーダの消費電力を抑制する事ができる通信システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する為に、本発明の通信システムは、質問器と応答器とから成り、質問器は応答器と無線通信を行う通信システムであって、前記応答器は、自器に対するユーザの所定の操作を検出したときに、起動信号を前記質問器に送信する起動送信手段と、前記質問器から、質問信号を受信する質問受信手段と、前記質問受信手段で質問信号を受信したら、当該質問信号に対して応答信号を送信する応答送信手段とを備え、前記質問器は、前記起動信号を受信する起動受信手段と、質問信号を、周期的に送信する質問送信手段と、前記起動受信手段が起動信号を受信したら、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させる制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る通信システムは、上述の構成を備えることにより、応答器からユーザの指示により質問器に対して起動信号を送信することができるので、質問器は起動信号を受信してから質問信号の送信を開始することができるようになる。
すなわち、起動信号を受信するまでは質問信号を送信しないので、送信に要する消費電力を抑制することが可能となるとともに、ユーザは、所持する応答器と質問器とを通信させたい時に先立って、起動信号を質問器に送信して質問信号の送信を開始させておくことができるようになる。
【0009】
また、前記制御手段は、前記起動受信手段が起動信号を受信し、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させてから、前記応答手段で応答信号を受信したら、質問信号の周期的な送信を終了させることとしてもよい。
これにより、質問信号に対する応答信号を受信したら、自動的に、信号の送信を停止することができるので、省電力効果を高めることが可能となる。
【0010】
また、質問器は、応答信号を受信するまで質問信号を送信するので、何らかの理由で、応答器の所持者が質問信号の到達範囲に入るまで時間がかかったとしても、応答器は質問信号を受信することができる。
また、前記起動信号は、当該起動信号を送信した応答器を識別する識別情報を含み、前記応答信号は、当該応答信号を送信した応答器を識別する識別情報を含み、前記制御手段は、前記起動受信手段が起動信号を受信し、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させてから、前記応答手段で当該起動信号に含まれる識別情報と同じ識別情報を含む応答信号を受信したら、質問信号の周期的な送信を終了させることとしてもよい。
【0011】
これにより、質問器は、起動信号を送信した応答器からの応答信号を受信するまで質問信号を送信するので、起動信号を送信して認証等されたいという意思を示した応答器の所持者が、何らかの理由で、質問信号の到達範囲に入るまで時間がかかったり、他の応答器が先に認証等を受けたとしても、意思を表示した応答器は質問信号を受信して確実に認証等されることができるようになる。
【0012】
また、前記制御手段は、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させてから、質問信号を所定時間周期的に送信したら、質問信号の周期的な送信を終了させることとしてもよい。
また、前記制御手段は、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させてから、質問信号を所定回数送信したら、質問信号の周期的な送信を終了させることとしてもよい。
【0013】
これにより、質問信号を、所定時間又は所定回数送信したら、自動的に、質問信号の送信を停止することができるので、省電力効果を高めることが可能となる。
また、前記制御手段は、前記質問送信手段を省電力状態から通常電力状態としてから質問信号の周期的な送信を開始させ、質問信号の周期的な送信を終了させたら省電力状態とすることとしてもよい。
【0014】
これにより、質問信号を送信するとき以外は、省電力モードとして不要な回路への通電を止めるので、省電力効果を高めることが可能となる。
また、前記応答器の前記起動送信手段が起動信号を送信する周波数帯と前記応答送信手段が応答信号を送信する周波数帯は同じであり、当該起動送信手段と当該応答送信手段とは同一の信号送信回路を使用することとしてもよい。
【0015】
これにより、応答信号の送信に用いていた回路を、起動信号を送信する回路にも利用できるので、新しい回路を設けることなく、本システムの構築が可能となる。
また、前記質問器は、更に、前記応答送信手段で送信された応答信号を受信する応答受信手段を備え、前記質問器の前記起動受信手段と前記応答受信手段とは、同一の信号受信回路を使用することとしてもよい。
【0016】
これにより、応答信号の受信に用いていた回路を、起動信号を受信する回路にも利用できるので、新しい回路を設けることなく、本システムの構築が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<実施形態>
<概要>
本発明は、リーダが常時繰り返し送信している質問信号は、タグを認証するときのみでよいことに着目し、タグの所持者が近づいて来る可能性のあるとき以外は質問信号を送信しないことでリーダの省エネを図ろうとするものである。
【0018】
リーダがタグの所持者が近づいてくることを知る方法として、本発明では、近づいてくるタグの所持者自身がリーダに知らせる方法を取る。
本実施形態の通信システムを説明する前に、図1を用いて、本システムの使用例を簡単に説明する。
本実施形態では、リーダを質問器、タグを応答器というものとする。
【0019】
尚、図1は模式図であって、質問器や信号送信範囲等は実際のサイズを正確に表していない。
図1は、質問器が建物の正面などの壁に設置されている場合を、上から見た図である。ここでは、質問器1000の周りの破線は、質問器1000が送信する質問信号の到達範囲を示し、応答器2001の周りの一点鎖線は、応答器2001の位置で応答器が送信する起動信号の到達範囲を示す。
【0020】
応答器の所持者(図では、「応答器」で示す。)が、右下から質問器1000に向かって歩いてくる場合を想定する。白抜き矢印で、歩行ルートを表す。本図では、応答器2001と応答器2002とは、同じ応答器であるが、位置を示すために応答器2001、応答器2002と記載するものとする。
質問器1000は、起動信号を受信するまで質問信号を送信していないものとする。
【0021】
応答器の所持者は、質問器1000に向かいながら、応答器2001の位置で応答器の所定のボタンを押下し、起動信号を送信する。起動信号を受信した質問器は、質問信号の送信を開始する。
応答器の所持者は、そのまま歩行を続け、応答器2002の位置、すなわち、質問器1000から送信される質問信号を受信できる位置まで来ると、応答器2002は、質問器1000からの質問信号を受信し自動で応答信号を送信する。
【0022】
応答信号を受信した質問器1000は、認証のための処理を行う。
このように、応答器の所持者は、目的とする質問器に近づきつつ、応答器の所定のボタンを押下して起動信号を送信し、質問器に質問信号の送信を開始させ、質問器の近くによると認証のための動作を行う。
すなわち、必要の無いときは質問信号を送信しないことで質問器の消費電力を抑制することに加えて、所持者は、目的の質問器に近づいて質問器の前で立ち止まり、質問器のボタン等を押下して質問信号の送信を開始させるよりも、立ち止まらずに質問器に対して認証のための動作をすることができ、使い勝手も向上する。
【0023】
本発明の場合、起動信号の到達距離が質問信号の到達距離よりも長い場合には、質問器に近づいた時に、確実に質問信号を送信させておけるので、より使い勝手が良いものとなる。
以下、本実施形態の通信システムを説明する。
本通信システムは、ドア付近に設置されている質問器が、所持者が所持する応答器の認証のための処理を行い、認証ができればドアを開け、所持者は通過できるものとする。
【0024】
また、本実施形態では、起動信号を受信して質問信号の送信を開始した質問器は、起動信号を送信した応答器からの応答信号を受信したら質問信号の送信を停止するものとする。
<構成>
本通信システムを構成する、質問器1000と応答器2000とについて説明する。
【0025】
図2は、本発明にかかる質問器1000と応答器2000の機能ブロック図である。本システムは、通常、複数の質問器と複数の応答器とで構成される場合が多いが、それぞれ同様の構成を有する。
尚、質問器1000は、壁などに設置され電力は外部電源から供給されているものとし、応答器2000は内蔵する電池を電源とするものとする。
【0026】
まず、質問器1000は、制御部1100、質問信号送信部1200、応答信号受信部1300、起動信号受信部1400、LF信号送信部1800、LFアンテナ1810、RF信号受信部1900及びRFアンテナ1910で構成される。
制御部1100は、図示しないCPU、メモリ等を備え、応答器2000の認証のために必要な一般的な制御処理を行う他、以下に説明する本発明に特有の処理、例えば、応答器2000からの起動信号を受信し、質問信号の送信を質問信号送信部1200に依頼する等の処理を行う。
【0027】
次に、質問信号送信部1200は、質問信号を生成し、LF信号送信部1800に送信を依頼する機能を有する。
LF信号送信部1800は、質問信号送信部1200から渡された質問信号を、誘電磁界の信号成分に重畳し、増幅して、LFアンテナ1810から送信する機能を有する。
また、応答信号受信部1300は、RF信号受信部1900から応答信号を受け取ると、制御部1100に、その旨と応答信号から取り出した情報を渡す機能を有する。
【0028】
起動信号受信部1400は、RF信号受信部1900から起動信号を受け取ると、制御部1100に質問信号の送信を開始するよう依頼する機能を有する。この際、起動信号から取り出した情報を渡す機能を有する。
RF信号受信部1900は、RFアンテナ1910を介して応答信号を受信し、受信した応答信号を解析し、応答信号受信部1300又は起動信号受信部1400に渡す機能を有する。
【0029】
これらの質問信号、応答信号及び起動信号の構成については、<データ>の項で図3を用いて説明する。
次に、応答器2000は、制御部2100、質問信号受信部2200、応答信号送信部2300、起動信号送信部2400、起動指示検出部2500、LF信号受信部2800、LFアンテナ2810、RF信号送信部2900及びRFアンテナ2910で構成される。
【0030】
制御部2100は、図示しないCPU、メモリ、電池等を備え、他の機能部に指示を出して、質問信号を受信したら応答信号を返す等の処理の制御を行う。
質問信号受信部2200は、LF信号受信部2800から受信した質問信号を受け取り、受け取った質問信号を解析して必要な情報を制御部2100に渡す機能を有する。
起動信号送信部2400は、制御部2100から起動信号の送信依頼を受け取ったら、起動信号の送信をRF信号送信部2900に依頼する機能を有する。
【0031】
起動指示検出部2500は、特定のボタンを含み、当該ボタンが押下されたことを検出し、制御部2100にその旨を通知する機能を有する。この特定のボタンは、起動信号を送信する機能が割り当てられているボタンであり、所持者は、このボタンを押下して起動信号の到達範囲内にある質問器に質問信号の送信を開始させる。以下、このボタンを、「起動ボタン」というものとする。
【0032】
LF信号受信部2800は、LFアンテナ2810を介して質問信号を受信し、受信した質問信号を質問信号受信部2200に渡す機能を有する。
また、応答信号送信部2300は、応答信号を生成し、RF信号送信部2900に送信を依頼する機能を有する。
RF信号送信部2900は、応答信号送信部2300から渡された応答信号を、RFアンテナ2910を介して送信する機能を有する。
【0033】
ここで、質問器1000の制御部1100等の各部による各処理の全部または一部は、CPU(図示していない。)が各種プログラムを実行することにより実現されるものであり、応答器2000の各部による各処理の全部または一部も、CPU(図示していない。)が各種プログラムを実行することにより実現される。
<データ>
以下、本実施形態の通信システムが用いる主なデータについて、図3を用いて説明する。
【0034】
図3は、質問信号と応答信号と起動信号のデータ構成及び内容例を示す図である。図3(a)は、質問器1000が送信する質問信号10のデータ構成及び内容例であり、図3(b)は、応答器2000が送信する応答信号20のデータ構成及び内容例であり、図3(c)は、応答器2000が送信する起動信号30のデータ構成及び内容例である。
まず、図3(a)の質問信号10は、PR(PReamble)11、UW(Unique Word)12、質問器ID13及びCRC14で構成される。
【0035】
PR11は、質問信号10のデータの始まりを示すビット列(同期符号)であり、UW12は、いわゆるフレーム同期信号である。また、CRC14は、質問信号10を受信した応答器2000が、受信した質問信号10に誤りが発生しているか否かを検出するためのデータである。
また、質問器ID13は、質問信号10を送信した質問器1000の識別子であり、質問器が内部の作業メモリに予め記憶しているものとする。
【0036】
次に、図3(b)の応答信号20は、PR21、UW22、質問器ID23、応答器ID24及びCRC25で構成される。
PR21は、応答信号20のデータの始まりを示すビット列(同期符号)であり、UW22は、いわゆるフレーム同期信号である。また、CRC25は、応答信号20を受信した質問器1000が、受信した応答信号20に誤りが発生しているか否かを検出するためのデータである。
【0037】
質問器ID23は、質問器1000の識別子を表し、この応答信号20がどの質問器1000から送信された質問信号10に応じたものかを示すものである。すなわち、この応答信号20は、質問器ID23で示される質問器から送信された質問信号に対して送信された応答信号であることになる。
応答器ID24は、応答信号20を送信した応答器2000の識別子であり、応答器が内部の作業メモリに予め記憶しているものとする。
【0038】
次に、図3(c)の起動信号30は、PR31、UW32、起動指示33、応答器ID34及びCRC35で構成される。
PR31は、起動信号30のデータの始まりを示すビット列(同期符号)であり、UW32は、いわゆるフレーム同期信号であり、CRC35は、起動信号30を受信した質問器1000が、受信した起動信号30に誤りが発生しているか否かを検出するためのデータである。
【0039】
起動指示33は、質問信号の送信を開始する指示を示す命令コードである。
応答器ID34は、起動信号30を送信した応答器2000の識別子であり、応答器が内部の作業メモリに予め記憶しているものとする。
本実施形態では、PR11、PR21、それぞれ質問信号10、応答信号20を区別するためにも用い、PR31は、起動信号30などのコマンドの信号を区別するものとする。
【0040】
<動作>
以下、上述した通信システムの、質問器1000と応答器2000の動作について説明する。
図4は、応答器2000の起動信号及び応答信号送信処理と、質問器1000の質問信号送信処理とを示すフローチャートである。本図では、点線は起動信号等の信号の送信を表すものとする。
【0041】
まず、応答器2000の所持者が、質問器1000に数メートルの距離まで近づいたら、応答器2000の起動ボタンを押下する。数メートルの距離とは、起動信号の到達範囲であり、質問器の設置場所等を勘案して決めておく。
起動ボタンの押下を検知した起動指示検出部2500は、その旨を制御部2100に通知する(ステップS10)。
【0042】
起動ボタンが押下された旨の通知を受けた制御部2100は、起動信号送信部2400に起動信号の送信を依頼する。
依頼を受けた起動信号送信部2400は、応答器ID34として自器のIDを設定した起動信号30を生成し、生成した起動信号30(図3(c)参照)をRF信号送信部2900に渡して送信を依頼する。起動信号送信部2400は、生成した起動信号30を内部の作業メモリに記憶し、次回の依頼からは記憶している起動信号30をRF信号送信部2900に渡すものとする。
【0043】
送信依頼を受けたRF信号送信部2900は、RFアンテナ2910を介して起動信号30を送信する(ステップS11)。
質問器1000では、RF信号受信部1900がRFアンテナ1910を介して信号を受信し、受信した信号を解析し、信号の最初がPR31であり、起動指示33がある場合には起動信号30であると判断し、PR21である場合には応答信号であると判断する。尚、応答信号である場合であっても、質問器ID23として自器のIDが設定された応答信号20以外の応答信号は破棄する。
【0044】
この時点では、まだ質問信号を送信していないので、質問器ID23として自器のIDが設定された応答信号20を受信することはありえず、受信した信号が起動信号30であると判断した場合にのみ、起動信号受信部1400に受信した起動信号30を渡す(ステップS20)。
起動信号30を渡された起動信号受信部1400は、制御部1100に質問信号10の送信を開始するよう依頼する(ステップS21)。この際、受信した起動信号30から応答器ID34を取り出して制御部1100に渡す。
【0045】
質問信号10の送信開始の依頼を受けた制御部1100は、質問信号送信部1200に質問信号10の送信を依頼し、受け取った応答器ID34を内部の作業メモリに記憶する(ステップS40)。尚、質問信号の周期的な送信を終了(ステップS27)する前に、再度起動信号を受信した場合は、新たな応答器IDを作業メモリに記憶されている応答器IDに上書きする。
【0046】
質問信号10の送信依頼を受けた質問信号送信部1200は、質問器ID13として自器のIDを設定した質問信号10を生成し、生成した質問信号10(図3(a)参照)をLF信号送信部1800に渡して送信を依頼する。質問信号送信部1200は、生成した質問信号10を内部の作業メモリに記憶し、次回の依頼からは記憶している質問信号10をLF信号送信部1800に渡すものとする。
【0047】
送信依頼を受けたLF信号送信部1800は、受け取った質問信号10をLFアンテナ1810を介して送信する(ステップS24)。
質問信号送信部1200に、質問信号を送信するよう依頼した制御部1100は、依頼してから所定期間、例えば、300msの間に応答信号受信部1300から応答信号20(図3(b)参照)を受け取らなかった場合は(ステップS25:NO)、質問信号送信部1200に、質問信号を送信するよう依頼する(ステップS24)。
【0048】
質問信号を送信するよう質問信号送信部1200に依頼した制御部1100は、依頼してから所定期間の間に応答信号受信部1300から応答信号を受け取った場合は(ステップS25:YES)、応答器2000の認証処理を行う(ステップS26)。具体的には、例えば、受信した応答信号20の応答器ID24が、自器が記憶する応答器IDの一覧に載っている場合は、認証できたこととして開錠するなどである。
【0049】
尚、応答信号受信部1300は、RFアンテナ1910を介して応答信号20を受信したRF信号受信部1900から、受信した応答信号20を渡され、渡された応答信号20を制御部1100に渡す。
認証処理を行った制御部1100は、受信した応答信号20の応答器ID24と、内部の作業メモリに記憶している応答器ID34とを比較し、同じである場合(ステップS41:YES)は、質問信号10の送信を終了する(ステップS27)。異なる場合(ステップS41:NO)は、再び質問信号送信部1200に質問信号の送信を依頼し、質問信号の周期的な送信(ステップS24〜ステップS26)を行う。
【0050】
一方、応答器2000では、起動信号の送信を起動信号送信部2400に依頼した制御部2100は、質問信号の受信を待つ。
応答器2000のLF信号受信部2800は、LFアンテナ2810を介して質問器1000が送信した質問信号10を受信し、受信した質問信号10を質問信号受信部2200に渡す(ステップS12)。
【0051】
質問信号受信部2200は、受け取った質問信号10の質問器ID13を制御部2100に渡す。
質問器ID13を受け取った制御部2100は、応答信号送信部2300に応答信号の送信を依頼する。この依頼の際、質問信号受信部2200から受け取った質問器ID13を渡す。
【0052】
依頼を受けた応答信号送信部2300は、応答信号20を生成し、生成した応答信号20をRF信号送信部2900に渡して、送信を依頼する。応答信号送信部2300は、受け取った質問器ID13を、応答信号20の質問器ID23として設定し、自器のIDを応答器ID24として設定して応答信号20を生成する。
依頼を受けたRF信号送信部2900は、受け取った応答信号20をRFアンテナ2910を介して送信する(ステップS13)。
【0053】
<変形例1>
<概要>
実施形態では、質問信号の送信を終了する条件を、起動信号を送信した応答器から応答信号を受信したこととしているが、本変形例では、この条件が、質問信号を所定時間送信することである点が異なる。
【0054】
質問器1000及び応答器2000の構成は、図2を用いて説明した実施形態の質問器1000等と同様である。また、使用するデータは、図3を用いて説明した実施形態のデータと同様であるが、起動信号30の応答器ID34は無くても良い。この応答器ID34は、起動信号を送信した応答器を識別するものであるため、本変形例では使用しないからである。
【0055】
以下、動作について図5を用いて説明する。
<動作>
以下、変形例1の、質問器1000と応答器2000の動作について説明する。
図5は、図4と同様に、応答器2000の起動信号及び応答信号送信処理と、質問器1000の質問信号送信処理とを示すフローチャートであり、点線は起動信号等の信号の送信を表す。
【0056】
本図と図4とのフローチャートにおいて、ステップ番号が同じものは同様の処理であるものとする。また、応答器2000の処理は図4と同様であるので、以下、質問器1000の処理のみを、図4と異なる点を中心に簡単に説明する。
まず、質問器1000の(ステップS20)RF信号受信部1900がRFアンテナ1910を介して信号を受信し、受信した信号を解析し、起動信号30であると判断した場合は、起動信号受信部1400に受信した起動信号30を渡す(ステップS20)。
【0057】
起動信号30を渡された起動信号受信部1400は、制御部1100に質問信号10の送信を開始するよう依頼する(ステップS21)。この際、内部の作業メモリに予め記憶している送信期間、例えば、「3分」を渡す。
依頼を受けた制御部1100は、内部のタイマーで、受け取った送信期間である「3分」を指定時間として計測を開始する(ステップS22)。
【0058】
尚、起動信号を指定時間の経過前に受信した場合は、新たに計測を開始することになる。
計測を開始したところであるので、指定時間は経過しておらず(ステップS23:NO)、制御部1100は、質問信号送信部1200に質問信号10の送信を依頼する。
依頼を受けた質問信号送信部1200は、質問器ID13として自器のIDを設定した質問信号10を生成し、生成した質問信号10(図3(a)参照)をLF信号送信部1800に渡して送信を依頼する。
【0059】
依頼を受けたLF信号送信部1800は、受け取った質問信号10をLFアンテナ1810を介して送信する(ステップS24)。
質問信号送信部1200に、質問信号を送信するよう依頼した制御部1100は、依頼してから所定期間、例えば、300msの間に応答信号受信部1300から応答信号20(図3(b)参照)を受け取らなかった場合は(ステップS25:NO)、質問信号送信部1200に、質問信号を送信するよう依頼する(ステップS24)。
【0060】
質問信号を送信するよう質問信号送信部1200に依頼した制御部1100は、依頼してから所定期間の間に応答信号受信部1300から応答信号を受け取った場合は(ステップS25:YES)、応答器2000の認証処理を行う(ステップS26)。
応答信号を受け取らなかった場合は(ステップS25:NO)、制御部1100は、再び質問信号送信部1400に質問信号の送信を依頼し、質問信号の周期的な送信(ステップS23〜ステップS26)を行い、所定時間が経過したら(ステップS23:YES)、質問信号10送信を終了する(ステップS27)。
【0061】
<変形例2>
<概要>
変形例1では、質問信号の送信を終了する条件を、質問信号を所定時間送信することとしているが、本変形例では、この条件が、質問信号を所定回数送信したことである点が異なる。起動信号を送信した応答器から応答信号を受信したこと等である。
【0062】
質問器1000及び応答器2000の構成、使用するデータは変形例1と同様である。以下、動作について図6を用いて説明する。
<動作>
以下、変形例2の、質問器1000と応答器2000の動作について説明する。
図6は、図5と同様に、応答器2000の起動信号及び応答信号送信処理と、質問器1000の質問信号送信処理とを示すフローチャートであり、点線は起動信号等の信号の送信を表す。
【0063】
本図と図5とのフローチャートにおいて、ステップ番号が同じものは同様の処理であるものとし、以下、異なる点のみを説明する。
本図と図5の異なる点は、ステップS30において、制御部1100が、所定時間を計るためのタイマーをリセットする代わりに、所定回数をカウントするためのカウンタをリセットする点と、ステップ31において、指定時間の経過を判定する代わりに所定回数送信したかを判定する点である。
【0064】
<補足>
以上、本発明に係る通信システムについて実施形態に基づいて説明したが、このシステムを部分的に変形することもでき、本発明は上述の実施形態に限られないことは勿論である。即ち、
(1)実施形態では、質問器は、起動信号を送信した応答器から応答信号を受信したことを条件に質問信号の送信を停止することとしているが、変形例と組み合わせた条件で停止することとしても良い。
【0065】
例えば、起動信号を受信して質問信号の送信を開始した後、起動信号を送信した応答器からの応答信号を受信せずに、所定時間が経過した場合は、質問信号の送信を停止するなどである。
また、実施形態では、起動信号を送信した応答器からの応答信号を受信したことを条件としているが、いづれかの応答器からの応答信号を受信したことを条件としても良い。
【0066】
この場合は、起動信号を送信した応答器の所持者が何らかの理由で質問器から離れて応答信号を送信しなかったとしても、質問信号に対する応答信号を受信したら、自動的に、信号の送信を停止することができるので、省電力効果を高めることが可能となる。
(2)実施形態では、起動信号を受信した全ての質問器が質問信号の送信を開始することとしているが、特定の質問器のみに質問信号の送信を開始させることとしても良い。
【0067】
この場合は、例えば、応答器内部に、起動させたい質問器IDを予め記憶させておき、記憶している質問器IDを起動信号に含ませて送信する。起動信号を受信した質問器は、起動信号に含まれている質問器IDと自器のIDとが同じである場合にのみ、質問信号の送信を開始する。
特定の質問器のみを起動することで、起動信号を送信した応答器に質問信号を送信する必要の無い質問器は、質問信号を送信しないので、通信システム内の質問器全体としての消費電力を抑制することが可能となる。
(3)実施形態では、応答器2000は、通常電力モードであることとしているが、起動ボタンの押下が検出されるまでは、省電力モードとして起動ボタンの押下を検知するのに必要な回路以外の回路への通電を止めておいてもよい。その場合、起動ボタンの押下が検出されてから質問信号の受信に必要な回路等へ通電する。
【0068】
また、質問器1000において、起動指示を受けるまでは、質問信号の送信や応答信号の受信に必要な回路に通電しない等の省電力状態としておいて、送受信が終了したら省電力状態に戻すこととしても良い。
(4)実施形態では、起動信号30には起動指示33のみが含まれていることとしているが、質問信号の送信終了の条件、例えば、所定周期で質問信号を繰り返し送信する期間や回数などを含むこととしてもよい。
【0069】
この場合、例えば、起動信号受信部1400が、起動信号から送信時間等を取り出し、制御部1100に指示することになる。
(5)本実施形態では、質問信号10、応答信号20、起動信号30の区別は、PR11等で行うこととしているが、各信号のデータ内に識別情報を含ませるなどにより、受信した信号が、どの信号であるかを区別することとしても良い。
(6)本実施形態では、応答器の起動ボタンを押下することで起動信号を送信することとしているが、他の方法で起動信号を送信することとしても良い。
【0070】
例えば、液晶等の表示画面が備えられている応答器である場合は、その画面にメニューを表示させて起動信号送信する項目を選択するとか、加速度センサーが備えられている場合は、応答器を振ることで起動信号を送信させるとかである。
(7)通信システムに含まれる質問器、応答器においては、図2等の各構成要素の全部又は一部を、1チップ又は複数チップの集積回路で実現してもよい。
(8)実施形態で示した通信システムの各機能を実現させる為の各制御処理(図4参照)をCPUに実行させる為のプログラムを、記録媒体に記録し又は各種通信路等を介して、流通させ頒布することもできる。このような記録媒体には、ICカード、光ディスク、フレキシブルディスク、ROM、フラッシュメモリ等がある。流通、頒布されたプログラムは、機器におけるCPUで読み取り可能なメモリ等に格納されることにより利用に供され、そのCPUがそのプログラムを実行することにより実施形態で示した各機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本通信システムの使用例を示す図である。
【図2】本発明にかかる質問器1000と応答器2000の機能ブロック図である。
【図3】図3(a)は、質問器1000が送信する質問信号10のデータ構成及び内容例であり、図3(b)は、応答器2000が送信する応答信号20のデータ構成及び内容例であり、図3(c)は、応答器2000が送信する起動信号30のデータ構成及び内容例である。
【図4】質問器1000の質問信号送信処理と応答器2000の起動信号及び応答信号送信処理を示すフローチャートである。
【図5】変形例1の、質問器1000の質問信号送信処理と応答器2000の起動信号及び応答信号送信処理を示すフローチャートである。
【図6】変形例2の、質問器1000の質問信号送信処理と応答器2000の起動信号及び応答信号送信処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
10 質問信号
20 応答信号
30 起動信号
1000 質問器
1100 2100 制御部
1200 質問信号送信部
1300 応答信号受信部
1400 起動信号受信部
1800 LF信号送信部
1810 2810 LFアンテナ
1900 RF信号受信部
1910 2910 RFアンテナ
2000 応答器
2200 質問信号受信部
2300 応答信号送信部
2400 起動信号送信部
2500 起動指示検出部
2800 LF信号受信部
2900 RF信号送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質問器と応答器とから成り、質問器は応答器と無線通信を行う通信システムであって、
前記応答器は、
自器に対するユーザの所定の操作を検出したときに、起動信号を前記質問器に送信する起動送信手段と、
前記質問器から、質問信号を受信する質問受信手段と、
前記質問受信手段で質問信号を受信したら、当該質問信号に対して応答信号を送信する応答送信手段とを備え、
前記質問器は、
前記起動信号を受信する起動受信手段と、
質問信号を、周期的に送信する質問送信手段と、
前記起動受信手段が起動信号を受信したら、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させる制御手段とを備える
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記起動受信手段が起動信号を受信し、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させてから、前記応答手段で応答信号を受信したら、質問信号の周期的な送信を終了させる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記起動信号は、当該起動信号を送信した応答器を識別する識別情報を含み、
前記応答信号は、当該応答信号を送信した応答器を識別する識別情報を含み、
前記制御手段は、前記起動受信手段が起動信号を受信し、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させてから、前記応答手段で当該起動信号に含まれる識別情報と同じ識別情報を含む応答信号を受信したら、質問信号の周期的な送信を終了させる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御手段は、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させてから、質問信号を所定時間周期的に送信したら、質問信号の周期的な送信を終了させる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記質問送信手段に質問信号の周期的な送信を開始させてから、質問信号を所定回数送信したら、質問信号の周期的な送信を終了させる
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記質問送信手段を省電力状態から通常電力状態としてから質問信号の周期的な送信を開始させ、質問信号の周期的な送信を終了させたら省電力状態とする
ことを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の通信システム。
【請求項7】
前記応答器の前記起動送信手段が起動信号を送信する周波数帯と前記応答送信手段が応答信号を送信する周波数帯は同じであり、当該起動送信手段と当該応答送信手段とは同一の信号送信回路を使用する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記質問器は、更に、前記応答送信手段で送信された応答信号を受信する応答受信手段を備え、
前記質問器の前記起動受信手段と前記応答受信手段とは、同一の信号受信回路を使用する
ことを特徴とする請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
質問器と応答器とから成り、質問器は応答器と無線通信を行う通信システムで用いられる通信方法あって、
前記応答器は、
自器に対するユーザの所定の操作を検出したときに、起動信号を前記質問器に送信する起動送信ステップと、
前記質問器から、質問信号を受信する質問受信ステップと、
前記質問受信ステップで質問信号を受信したら、当該質問信号に対して応答信号を送信する応答送信ステップとを備え、
前記質問器は、
前記起動信号を受信する起動受信ステップと、
質問信号を、周期的に送信する質問送信ステップと、
前記起動受信ステップで起動信号を受信したら、前記質問送信ステップで質問信号の周期的な送信を開始させる制御ステップとを備える
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−123035(P2010−123035A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297843(P2008−297843)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】