説明

通信システム

【課題】複数の中継機を介して装置間をデータ伝送する場合、互いの信号干渉を防止するため、同時には1区間の中継機2台のみ間で伝送するだけで、通信線上で通信が行われていない時間が増加し、通信の実効速度が低下していた。
【解決手段】中継機40と通信線30の接続部に、通信線の上流側通信路と下流側通信路にそれぞれ接続された2つの入出力接点61,62と、中継機の信号入出力回路に接続され、2つ
の入出力接点に交互に接続される動作を行うスイッチ部63を有した通信路切替装置60を設け、通信路切替装置のスイッチ部を全中継機で同期させて切替え、所定の中継機nに接続されたスイッチ部が上流側通信路の入出力接点に接続されるときは、中継機nの下流側にある隣接中継機n+1に接続されたスイッチ部は下流側通信路の入出力接点に接続されるようにして、1つ飛ばしの中継区間は同一期間に同時通信できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、有線の通信線により装置間を複数の中継機を介して接続してデータ伝送するようにした通信システム、特に時分割中継の伝送による通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の時分割中継伝送による通信システムは、単一配線の通信線(一例として2本の心線からなるツイストペア線)に複数の中継機を接続し、上流側の親機(あるいは下流側の子機)から隣接する中継機を介して順に子機(あるいは親機)へデータ伝送を行なうようにしている。
中継機は、信号到達範囲を超えた位置に伝送対象の装置がある場合、または信号は到達するが強度が十分でないため速度が得られない場合に、信号増幅の手段として用いられる。
この場合、全部の中継機を同時に動作させるのではなく、上流側(あるいは下流側)の中継機から順に時分割で動作させることで行なわれる。
【0003】
即ち、1つの中継区間を構成する2台の中継機の信号が到達する範囲では、同時には1区間の中継機2台のみが中継機として動作して隣接中継機に伝送を行い、その中継機が次の時間にさらに隣接の中継機に伝送する、という動作を行うことで、互いの信号干渉を防止しつつ遠方へ信号を伝送する。
このような従来の時分割中継伝送の方法を図9、図10に基づいて説明する。
【0004】
図9は通信システムの概略構成図を示し、図9(a)(b)(c)は時間的に1周期づつずれている状態を示したもので、構成は同じものである。図9において、親機10のモデムと子機20のモデムとは有線の通信線30で直列に接続され、親機10と子機20との間の通信線30には複数の中継機40a〜40cのモデム(図示では3台)が端子台50a〜50cを介して接続されている。
【0005】
このような通信システムにおいて、時分割中継伝送した場合の親機10と子機20間の中継機40の動作を時間t軸にしたがって説明したものが図10である。
この図10に示すように、周期1(図9(a))では、親機10と中継機40aの間の中継区間1のみが通信可能で、中継機40aと中継機40bの間、中継機40bと中継機40cの間、中継機40cと子機20の間の中継区間2〜4は通信不可である。次に、周期2(図9(b))では、中継機40aと中継機40bの間の中継区間2のみが通信可能で、親機10と中継機40aの間、中継機40bと中継機40cの間、中継機40cと子機20の間の中継区間1、3〜4は通信不可である。次に、周期3(図9(c))では、中継機40bと中継機40cの間の中継区間3のみが通信可能で、親機10と中継機40aの間、中継機40aと中継機40bの間、中継機40cと子機20の間の中継区間1、2、4は通信不可である。
【0006】
このように従来の時分割中継伝送による通信システムは、1台のモデムからの通信信号が通信線30の全配線に到達するため、通信信号を送信できるのは同時に1台のモデムのみであり、したがって中継区間1〜4で動作可能な区間は同時に1区間のみである。
このため、中継機数の増加に従い、通信線上で通信が行われていない時間が増加し、通信の実効速度が低下するという問題があった。
【0007】
互いに空間的に干渉を与えるゾーン間では、同時に信号を伝送しないようにした通信シ
ステムとして、サービスエリアをm個のゾーンに分割し、移動局および基地局が存在する各ゾーン間で同一周波数の信号を伝送できる移動通信システムにおいて、1つのゾーンおよび複数のゾーンにおいて異なるタイムスロットの時分割で信号を伝送するようにしたものが知られている(特許文献1参照)。
【0008】
また、各無線ノードが互いにパケットの中継を行なって、始点ノードから終点ノードに信号を伝送する無線マルチホップネットワークにおいて、無線ノード間の電波干渉を防ぎ、スループットを中継段数によらず一定に保つために、始点ノードは周波数リユース間隔(同一の周波数が利用できる距離)と対応した送信周期で間欠的にパケットを送信し、中継ノードのそれぞれにおいてはパケットを受信して、周波数リユース間隔と対応した送信待機時間後に該パケットを次の中継ノードへ中継伝送するようにしたものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−117375号公報
【特許文献2】特開2005−143046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1は、移動体無線における複数基地局−通過列車間の通信に関するものであり、
また特許文献2は、無線マルチホップネットワークに関するものであって、いずれも無線による通信システムである。
このように無線においては、少なくとも隣接区間には干渉が発生する通信システムのため、干渉を防ぐ方法として種々なものが提案されている。
【0011】
しかしながら、有線においては通信線から信号が漏れる場合か、信号が輻輳して送信されて信号が重なる場合に干渉が起こることが多く、したがって信号の干渉についてはあまり対策が採られていないことが実体である。
したがって図9、図10で説明したように、同時には1区間の中継機2台のみが中継機として動作して隣接中継機に伝送を行うことで互いの信号干渉を防止しつつ遠方へ信号を伝送するようにしている。その場合、中継機数の増加に従い、通信線上で通信が行われていない時間が増加し、通信の実効速度が低下するという問題があった。
【0012】
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、通信線を物理的または電気的に中継区間単位で独立させることにより、通信効率(速度)を向上させることが可能な通信システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の通信システムは、親機と子機との間を複数の中継機を介して通信線で接続してデータを送受信するようにした通信システムにおいて、中継機と通信線の接続個所に、通信線の上流側通信路と下流側通信路にそれぞれ接続される2つの入出力接続点と、中継機の送受信切替部に接続され、2つの入出力接続点に交互に接続される動作を行うスイッチ部を有した通信路切替部を設け、通信路切替部のスイッチ部の切り替わりタイミングは全中継機で同期させ、所定の中継機nに接続されたスイッチ部が上流側通信路の入出力接続点に接続されるときは、中継機nの下流側にある隣接中継機n+1に接続されたスイッチ部は下流側通信路の入出力接続点に接続されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、全中継機に接続された通信路切替部のスイッチ部が同期して通信線の上流側通信路と下流側通信路に切り替わる動作を行うことで、中継機の送信信号到範囲が上流もしくは下流の隣接中継機に限定され、干渉を起こすことなく1つ飛ばしの中継区間は同一期間に同時通信できるため、複数の中継区間があっても信号統轄範囲では1区間でしか通信できなかった従来の時分割中継伝送に比べ、通信効率(速度)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施の形態1の通信システムの概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1における通信システムの通信線と中継機の接続部および中継機における機能構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1において、通信路切替部を同期させるための起動時における動作説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1の通信システムの時間に沿った動作説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2の通信システムの概略構成図とそれに使用されるローパスフィルタの構成図である。
【図6】この発明の実施の形態2で使用されるフィルタの周波数特性を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態3で使用されるフェライトコアの構成図である。
【図8】この発明の実施の形態4の通信システムの概略構成図である。
【図9】従来の通信システムの概略構成図である。
【図10】従来の通信システムの時間に沿った動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1における通信システムを図1〜図4に基づいて説明する。図1は通信システムの概略構成図、図2は通信線と中継機の接続部および中継機における機能構成図、図3は通信路切替部を同期させるための起動時における動作説明図、図4は通信システムの時間に沿った動作説明である。
【0017】
図1(a)(b)は時間的に1周期づつずれている状態を示したもので、構成は同じものである。図1において、親機10のモデムと子機20のモデムとは物理的に独立した複数の有線の通信線30a〜30d(総称する場合は添字を省略)で直列に接続され、親機10と子機20との間の通信線30には複数の中継機40a〜40cのモデム(図示では3台、総称する場合は添字を省略)が端子台50a〜50cを介して接続されている。また、各中継機40a〜40cと各通信線30a〜30dの接続部には通信路切替部60a〜60cが設けられている。ここで親機10が配置された方向を上流、子機20が配置された方向を下流とする。
【0018】
各通信路切替部60a〜60c(総称する場合は添字を省略)には、2つの入出力接続点61、62と、中継機40a〜40cの信号入出力部である送受信切替部(後述する)に接続され、2つの入出力接続点61、62に交互に接続される動作を行うスイッチ部63が設けられている。入出力接続点61は中継機40に対して通信線30の上流側通信路に接続され、入出力接続点62は中継機40に対して通信線30の下流側通信路にそれぞれ接続される。
なお、通信路切替部60a〜60cは、図1では3端子スイッチとして論理的な機能で表しているが、実際はトランジスタあるいはFETと抵抗などの素子で基板に構成された、スイッチ機能を持つ電子回路で構成されている。
【0019】
各通信路切替部60a〜60cのスイッチ部63の切り替わりタイミングは、全中継機
40で同期させ、所定の中継機40nに接続されたスイッチ部63が上流側通信路の入出力接続点61に接続されるときは、中継機40nの下流側にある隣接中継機60n+1に接続されたスイッチ部63は下流側通信路の入出力接続点62に接続される。また、逆に所定の中継機40nに接続されたスイッチ部63が下流側通信路の入出力接続点62に接続されるときは、中継機nの下流側にある隣接中継機n+1に接続されたスイッチ部63は上流側通信路の入出力接続点61に接続される。
こうして、各通信路切替部60a〜60cにより、通信線30は中継機40が2台で構成される中継区間単位で物理的に独立させるようにしている。
【0020】
上記構成において、親機10から送信される画像データまたは文字データなどの情報はパケット伝送されて下流側にある隣の中継機40aに送られ、中継機40aで信号増幅される。中継機40aで信号増幅されたデータは、次の周期で下流側にある隣の中継機40bに送られ、中継機40bで信号増幅される。こうして最終的に親機10から送信された画像データまたは文字データは子機20に送られ、子機20において、画像データまたは文字データを表示するなどして見ることができる。逆に子機20からのデータも同様に親機10へ送信することができる。
【0021】
この場合、通信路切替部60a〜60cのスイッチ部63は、隣接する中継機40に接続された通信路切替部60のスイッチ部63おいて、一方は入出力接続点61、他方は入出力接続点62というように異なる接点に切り替え接続するようになっているから、1つ飛ばしの中継区間は同一期間に同時通信できる。
したがって親機10から隣接中継機40に送信されたデータ情報は、1つ飛ばしの中継区間において各中継機40は下流側の隣接中継機40に信号の干渉を起こすことなく同時にデータ送信でき、通信効率(速度)を向上させることができる。
【0022】
次に、通信線30と中継機40の接続個所および中継機における詳細な機能構成を図2に基づいて説明する。
図2において、通信線30と中継機40との間は、端子台50と通信路結合部70a、70bと通信路切替部60が接続されている。通信路結合部70aは、端子台50に接続された通信線と通信路切替部60の入出力接続点61に接続された上流側通信路とを接続するもので、ノイズの遮断および絶縁などの目的でトランスとコンデンサなどの回路で構成される。同様に、通信路結合部70bは、端子台50に接続された通信線と通信路切替部60の入出力接続点62に接続された下流側通信路とを接続するもので、ノイズの遮断および絶縁などの目的でトランスとコンデンサなどの回路で構成される。通信路切替部60は図1で説明したように2つの入出力接続点61、62とスイッチ部63で構成されている。
なお、通信路結合部70a、70bと通信路切替部60は、図2では中継機40の外部に構成するように記載しているが、通信路結合部70a、70bと通信路切替部60は、中継機40の内部に取り込むように構成してもよい。
【0023】
中継機40は、通信路切替部60のスイッチ部63に接続される送受信切替部41と、受信部42と、送信部43と、同期・キャリア検出及びタイミング生成部44と、データ保持・制御部45から構成されている。
送受信切替部41は、受信部42で受信する受信信号と送信部43から送信する送信信号とを切り替える機能を有している。
受信部42は、送受信切替部41で受信した受信信号から所定の周波数のみ通過させる受信フィルタ部421、受信信号の利得を調整する受信信号利得調整部422、アナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換部423、受信した信号全体の同期を補正(受信信号は送信モデムと受信モデム間の周波数偏差を含むが、その偏差を補正)する同期補正部424、受信信号の時間/周波数変換を行なうための高速フーリエ変換(FFT)部4
25、高速フーリエ変換(FFT)部425で変換された後の座標軸上のマップデータから「0」「1」の2進信号に変換するマップ→データ変換部426、定義されたフレーム構造の2進信号を分解し、所望の情報を抽出するフレーム分解部427で構成されている。
【0024】
送信部43は、フレーム組立部431、フレームデータをマップデータに変換するデータ→マップ変換部432、信号を周波数/時間変換するための逆フーリエ変換(IFFT)部433、送信信号のタイミングを調整する送信タイミング調整部434、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部435、送信信号の利得を調整する送信信号利得調整部436で構成されている。
【0025】
同期・キャリア検出及びタイミング生成部44は、高速フーリエ変換(FFT)部425から出力された情報から送信モデムと受信モデム間の周波数偏差を検出し、また高速フーリエ変換(FFT)部425から出力された情報からキャリア信号やFFTタイミング情報などを検出する同期・キャリア検出部441、同期・キャリア検出部441で検出された情報を元に各種のタイミング信号を生成するタイミング生成部442、タイミング生成部442で生成された信号から通信路切替部60のスイッチ部63の切り替えタイミング信号を生成する通信路切替タイミング生成部443で構成されている。
なお、タイミング生成部442で生成されたタイミング信号により、高速フーリエ変換(FFT)部425および逆フーリエ変換(IFFT)部433のフーリエ動作が行なわれるようになっている。また、同期・キャリア検出部441で検出された信号により、受信同期補正部424および送信タイミング調整部434で信号全体を補正するようにしている。
【0026】
データ保持・制御部45は、隣接する中継機40などの装置から伝送されたデータを一時的に保持すると共に、保持したデータを中継するために送信部43側に送るか、LANなどで接続されるパソコンなどの外部機器(図示省略)にデータを送るか、あるいは外部機器からのデータを送信部43に送るかといった制御を行なう。
なお、パソコンなどの外部機器は、中継機40に必ずしも接続されるものではなく、中継機40には外部機器が接続されず、中継動作のみ行なうものもある。
【0027】
上記構成において、全ての通信路切替部60を同期させるための起動時における動作説明を図3に基づいて説明する。
まず、図3(a)に示すように、通信システムの同期を取る前の起動時には、各中継機40に接続された通信路切替部60a〜60cの全てのスイッチ部63は通信線30の上流側通信線に接続された入出力接続点61側に倒れている。この状態で親機10から同期用の信号が送信されると、その同期用信号は通信線30a、端子台50aおよび通信路切替部60aを介して最初の中継機40aが受信する。
中継機40aは、図2に示す受信部42の高速フーリエ変換(FFT)部425で復調された信号から同期・キャリア検出部441で同期用信号を検出する。同期・キャリア検出部441で検出された同期用信号からタイミング情報を得る。1回の同期信号で必要な精度のタイミング情報が得られない場合は複数回前記動作を繰り返す。このようにして、中継機40aは親機10と同期がとれた状態となる。
【0028】
次に、中継機40aは親機10との同期完了後、図3(b)に示すように、中継機40aの通信路切替部60aのスイッチ部63は、同期したタイミングに従い一定周期で交互に切替え動作を開始する。
中継機40bは、スイッチ部63のスイッチが入出力接続点62側に倒れ、通信線30bと端子台50bと通信路切替部60bを介して中継機40aと中継機40bが接続される期間に、中継機40aは同期用信号を送信し、その同期用信号は通信線30bおよび端
子台50bおよび通信路切替部60bを介して中継機40bが受信する。中継機40bは、図2に示す受信部42の高速フーリエ変換(FFT)部425で復調された信号から同期・キャリア検出部441で同期用信号を検出する。同期・キャリア検出部441で検出された同期用信号からタイミング情報を得る。1回の同期信号で必要な精度のタイミング情報が得られない場合は複数回前記動作を繰り返す。このようにして中継機40bは中継機40aと同期がとれた状態となる。以下、同様にして、順次に中継機40cも、中継機40bと同期がとれた状態となる。
【0029】
こうして、全ての中継機40が真近の上流側中継機40と各々同期がとれた状態になり、その状態では全ての中継機40の通信路切替部60のスイッチ部63は、同期したタイミングにより一定周期で交互に切替動作が行われている。この一定周期の時間は同期信号の周期のN倍(Nは1以上の整数)である。
通信路切替部60のスイッチ部63の切り替わり動作は、前述したように、所定の中継機40nに接続されたスイッチ部63が上流側通信路の入出力接続点61に接続されるときは、中継機40nの下流側にある隣接中継機40n+1に接続されたスイッチ部63は下流側通信路の入出力接続点62に接続される。また、逆に所定の中継機40nに接続されたスイッチ部63が下流側通信路の入出力接続点62に接続されるときは、中継機nの下流側にある隣接中継機n+1に接続されたスイッチ部63は上流側通信路の入出力接続点61に接続される。
【0030】
このような通信システムにおいて、同期がとれた後のデータ情報を時分割中継伝送した場合の親機10と子機20間の中継機40の動作状態を時間t軸にしたがって図4に基づいて説明する。
この図4に示すように、周期1(図1(a))では、中継機40aのスイッチ部63が上流側通信路(親機側)に倒れ、かつ下流側通信路の中継機40bのスイッチ部63は下流側通信路(中継機40c側)に倒れることで、親機10と中継機40aが通信線30a経由で接続され両者間の通信が可能となり、かつ中継機40b側の通信線30bとは分離される。それゆえ、周期1に中継機40bを含めたそれ以遠の中継機40が通信しても親機10−中継機40a区間の信号に干渉することはない。
【0031】
即ち、親機10と中継機40aとの中継区間1から1つずれた中継区間3において、中継機40bのスイッチ部63が下流側通信路(中継機40c側)に倒れ、かつ下流側通信路の中継機40cのスイッチ部63は上流側通信路(中継機40b側)に倒れることで、中継機40bと中継機40cが通信線30c経由で接続され両者間の通信が可能となる。こうして中継区間1と中継区間3が信号の干渉を起こすことなく同時に通信できる。
【0032】
周期1に続く周期2(図1(b))では、中継機40aのスイッチ部63が下流側通信路(中継機40b側)に倒れ、同時に中継機40bのスイッチ部63は上流側通信路(中継機40a側)に倒れることで、中継機40aと中継機40bが通信線30b経由で接続され両者間の通信が可能となり、かつ中継機40c側の通信線30cとは分離される。それゆえ、その同じ時間帯に中継機40cを含めたそれ以遠の中継機40が通信しても中継機40a―中継機40b区間の信号に干渉することはない。
【0033】
即ち、中継機40aと中継機40bの中継区間2から1つずれた中継区間4において、中継機40cのスイッチ部63が下流側通信路(子機20側)に倒れることで、中継機40cと子機20とが通信線30d経由で接続され両者間の通信が可能となる。こうして中継区間2と中継区間4が信号の干渉を起こすことなく同時に通信できる。
このように、周期1では親機10と中継機40a間の中継区間1と、中継機40bと中継機40c間の中継区間3が通信可能で、中継機40aと中継機40bとの間の中継区間2、中継機40cと子機20の間の中継区間4は通信不可である。
次に、周期2では、中継機40aと中継機40bの間の中継区間2と、中継機40cと子機20の間の中継区間4は通信可能で、親機10と中継機40aの間の中継区間1、中継機40bと中継機40cの間の中継区間3は通信不可である。
【0034】
全中継機40が同期して上記動作を行うことで、中継機40の送信信号到達範囲が上流もしくは下流の隣接中継機に限定され、信号の干渉を起こすことなく1つ飛ばしの中継区間は同一期間に同時通信できるため、複数の中継区間があっても信号統轄範囲では1区間でしか通信できなかった従来の時分割中継伝送に比べ、通信効率(速度)を向上させることができる。
【0035】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2における通信システムを図5〜図6に基づいて説明する。図5は通信システムの概略構成図とそれに使用されるローパスフィルタの構成図、図6はフィルタの周波数特性を示す図である。
図5(a)において、実施の形態1と異なるのは、通信線30と中継機40との間に接続される端子台50を短絡するように、データ通信の通信周波数帯を遮断できるローパスフィルタ80で接続するようにして、通信線30a〜30dを電気的に中継区間単位で独立させるようにしたものである。図5(b)は端子台50に接続されるローパスフィルタ80を拡大して示したものである。その他の構成は実施の形態1と同じにつき、同じ符号を付して説明を省略する。
【0036】
ローパスフィルタ80のフィルタ特性は、図6に示すように遮断周波数fc以上の周波数の信号は遮断し、遮断周波数fc以下の周波数は通過するようになっており、本来伝送すべき画像データあるいは文字データの周波数は遮断周波数fc以上のf1〜f2の範囲にあるので、これらのデータは中継機40を介さずには伝送できないようになっている。
一方、ローパスフィルタ80は遮断周波数fc以下の周波数、例えば音声などの電話による信号は通過できるので、そのような信号を伝送するようにする。
このようにすれば、中継機40などの故障でデータが伝送できなくなっても、親機10と子機20との間は電話などで話すことが出来、電話とデータの伝送が共存できるようになる。
【0037】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3における通信システムを図7に基づいて説明する。実施の形態3の発明は、実施の形態2のローパスフィルタ80の代わりにフェライトコアを用いて、通信線30a〜30dを電気的に中継区間単位で独立させるようにしたものである。
図7(a)は端子台50を短絡するよう通信線30に巻かれたフェライトコア90の構成図を示し、実施の形態2で使用したローパスフィルタ80の代わりに用いられるものである。
フェライトコア90は、図7(b)に示すように、コアを上下半分に分割して、それを密着させる形で通信線30に巻くようにし、コアの磁力でデータ通信の通信周波数帯を遮断するようにしたものである。
このようにフェライトコア90を用いれば、通信線30が中継区間単位で物理的に分断されていない場合でも、実施の形態1の中継方法を用いることができる。
【0038】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4における通信システムを図8に基づいて説明する。
図8は通信システムの概略構成図を示し、親機10と中継機40aの間、あるいは中継機40aと中継機40bの間の通信線30a(30a1と30a2で構成)、30b(30b1と30b2で構成)に、最下流側の子機20とは別の複数の子機200a〜200n、200n+1〜200mを接続したものである。
なお、複数の子機200a〜200n、200n+1〜200mの通信線30への接続は、図示では端子台50を介して接続しているが、接続個所や接続方法は、特に特定されるものではない。その他の構成は実施の形態1の図1と同じに付き、同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
子機200a〜200n、200n+1〜200mは、その上流側の親機10または中継機40が各子機200a〜200n、200n+1〜200mの通信を管理する構成をとるようにする。即ち、子機200a〜200nは親機10が管理し、子機200n+1〜200mは中継機40aが管理するようにする。
そして、子機200a〜200nは、親機10と中継機40aとが通信可能な周期に、親機10または中継機40aとの間でデータ伝送の送受を行なう。また、子機200n+1〜200mは、中継機40aと中継機40bとが通信可能な周期に、中継機40aまたは中継機40bとの間でデータ伝送の送受を行なう。
【0040】
このように、親機10と中継機40間または複数の中継機40間の通信線30に複数の子機200a〜200n、200n+1〜200mを接続することで、今までの中継機40間の同時並行伝送のみならず、その間に接続された各子機にもデータの同時並行伝送を可能とするでき、用途が拡大できる。
なお、親機10と中継機40間または複数の中継機40間の通信線30に接続される子機は複数に限らず1個でもよい。
【符号の説明】
【0041】
10:親機、 20:子機、
30、30a〜30d:通信線、 40:中継機、
41:送受信切替部、 42:受信部、
43:送信部、 44:同期・キャリア検出及びタイミング生成部、
45:データ保持・制御部、
441:同期・キャリア検出部、 442:タイミング生成部、
443:通信路切替タイミング生成部、
50:端子台(伝送路結合部)、 60:通信路切替部、
61:入出力接続点、 62:入出力接続点、
63:スイッチ部、 70a、70b:通信路結合部、
80:ローパスフィルタ、 90:フェライトコア、
200a〜200n、200n+1〜200m:子機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親機と子機との間を複数の中継機を介して通信線で接続してデータを送受信するようにした通信システムにおいて、上記中継機と上記通信線の接続個所に、上記通信線の上流側通信路と下流側通信路にそれぞれ接続される2つの入出力接続点と、上記中継機の送受信切替部に接続され、上記2つの入出力接続点に交互に接続される動作を行うスイッチ部を有した通信路切替部を設け、上記通信路切替部のスイッチ部の切り替わりタイミングは全中継機で同期させ、所定の中継機nに接続されたスイッチ部が上流側通信路の入出力接続点に接続されるときは、上記中継機nの下流側にある隣接中継機n+1に接続されたスイッチ部は下流側通信路の入出力接続点に接続されるようにした通信システム。
【請求項2】
上記通信路切替部のスイッチ部は、一定周期で交互に切替動作を行なうようにした請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
同期を取る前の起動時においては、上記通信路切替部の全てのスイッチ部が上流側通信路の入出力接続点に接続され、上流側の親機または中継機からの同期信号を受信して同期が完了した中継機に接続されたスイッチ部は、下流側通信路の入出力接続点に切替接続するようにした請求項1または請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
上記中継機が接続される通信線の上流側通信路と下流側通信路との間に、データ通信を行なう周波数帯の信号を遮断できるフィルタを接続してなる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項5】
上記フィルタは、データ通信を行なう周波数帯よりも低い周波数帯の信号は通過させるローパスフィルタで構成された請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
上記中継機が接続される通信線の周囲に、データ通信を行なう周波数帯の信号を遮断できるフェライトコアを配置してなる請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
上記親機と中継機間または複数の中継機間の通信線に子機を接続してなる請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−227872(P2012−227872A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96065(P2011−96065)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】