説明

通信光検知に用いられる光ファイバコネクタ

【課題】通信光の一部を取り出すための光取り出し部を容易に位置合わせすることができる光ファイバコネクタを提供する。
【解決手段】光ファイバからなる光伝送路同士を光接続するための光ファイバコネクタにおいて、当該光ファイバコネクタは、少なくとも、フェルールと、前記フェルールを保持するフェルールホルダとからなり、前記フェルールは、前記光伝送路と光結合する光ファイバと、前記光伝送路から前記光ファイバへ伝播した通信光の一部を取り出す光取り出し部とを有し、前記フェルールホルダは、前記フェルールを位置決めするフェルール位置決め突起と、前記フェルール位置決め突起に形成され、前記光取り出し部にて取り出された前記通信光の一部を検知する光検知部を前記光取り出し部に対向する位置に挿入させる光検知部挿入孔とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送路中に設置され、光伝送路の通信状況を確認する光検知器が取り付け可能な光ファイバコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信の分野においては、高速・大容量伝送が可能な光ファイバが伝送線路の主流となり、さらなる発展が期待されている。これに伴い、特に、データセンタや局舎などの光通信関連設備では、光伝送路の変更や廃止、増設などの工事が頻繁に行われるようになってきた。
【0003】
このような光通信関連設備の光伝送路を伝送する通信光は、可視光領域にない不可視光であるため、目視にて確認することができない。そのため、光伝送路が使用されているか否かといった運用状態を容易に把握できず、その運用状態の把握に時間がかかったり、あるいは、使用されている光伝送路の光コネクタを使用されていないものと勘違いして抜いてしまうヒューマンエラーなどの懸念があったり、光通信関連設備における未使用の光伝送路を有効に活用することができないといった問題があった。
【0004】
そこで、光通信関連設備の保守性や運用効率を向上させるため、光ファイバを接続した状態で光伝送路における通信光の有無を目視確認するための多くの手段が検討されている。
【0005】
特許文献1には、光ファイバが内蔵されて割スリーブ内で突き合わせ接続されるフェルールの端面同士間に、ギャップを設け、そのギャップに光透過性樹脂からなる導波体を設け、導波体の上方に導かれた通信光の一部を蛍光体で受光し、通信光の伝送の有無を検知するようにした通信光検知器が記載されている。
【0006】
また、特許文献2には、光ファイバを内蔵した2つのフェルール間に光導波路基板を配置し、通信光の一部を光導波路基板にて分岐して通信光出力部へ取り出すことにより、通信光の有無を確認する方法が提案されている。
【0007】
特許文献3には、通信光の一部を分岐して取り出す分岐器を使用し、分岐光の端末部に可視光変換素子を取り付ける構造の通信光検知器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−170488号公報
【特許文献2】特開2004−133071号公報
【特許文献3】特開2003−218813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の通信光検知器では、該通信光検知器を組み立てる際に、通信光検知器内の非常に狭いギャップ内に導波体、光導波路基板、分岐部などの通信光の一部を光検知部へ取り出すための光取り出し部を設ける。このとき、例えば、パワーモニタ等を用いて通信光の損失を測定しながら光軸や光検知部に対する光取り出し部の位置あわせを行うような手間のかかる作業が必要であった。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みて通信光の一部を取り出すための光取り出し部を容易に位置合わせすることができる光ファイバコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、光ファイバからなる光伝送路同士を光接続するための光ファイバコネクタにおいて、当該光ファイバコネクタは、少なくとも、フェルールと、前記フェルールを保持するフェルールホルダとからなり、前記フェルールは、前記光伝送路と光結合する光ファイバと、前記光伝送路から前記光ファイバへ伝播した通信光の一部を取り出す光取り出し部とを有し、前記フェルールホルダは、前記フェルールを位置決めするフェルール位置決め突起と、前記フェルール位置決め突起に形成され、前記光取り出し部にて取り出された前記通信光の一部を検知する光検知部を前記光取り出し部に対向する位置に挿入させる光検知部挿入孔と、を有することを特徴とする光ファイバコネクタを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記光取り出し部は、前記フェルールに形成された溝部から構成されることを特徴とする光ファイバコネクタを提供する。
【0013】
また、本発明は、前記光取り出し部は、前記フェルールに形成された溝部と、前記溝部に形成された細溝部とから構成されることを特徴とする光ファイバコネクタを提供する。
【0014】
また、本発明は、前記フェルールは、その少なくとも一方の端部に内在するように接続され、前記光伝送路を光接続するためのスリーブを有する光ファイバコネクタを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記フェルールは、その少なくとも一方の端部に前記フェルールホルダの端部に保持されるプラグロック片を有する光ファイバコネクタを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記プラグロック片は、その内部に前記フェルールの端部に接続されたスリーブを内在する光ファイバコネクタを提供する。
【0017】
また、本発明は、前記フェルールホルダおよび前記フェルールは、第1のアダプタハウジングと第2のアダプタハウジングとがその端面同士を突き合わせて接続されてなるアダプタハウジングの内部に配置されている光ファイバコネクタを提供する。
【0018】
また、本発明は、前記アダプタハウジングは、前記第1のアダプタハウジングと前記第2のアダプタハウジングとの接続部分に、前記フェルールホルダの前記光検知部挿入孔に連通する挿入孔を有する光ファイバコネクタを提供する。
【0019】
また、本発明は、前記アダプタハウジングは、該アダプタハウジングに回動するように接続されて前記挿入孔を塞ぐ孔カバーを有する光ファイバコネクタを提供する。
【0020】
また、本発明は、前記孔カバーは、前記挿入孔を塞いだ状態で、前記光取り出し部から取り出された可視光を目視可能に形成される光ファイバコネクタを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、通信光の一部を取り出すための光取り出し部を容易に位置合わせすることができる光ファイバコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態にかかる光ファイバコネクタの一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる光ファイバコネクタに取り付けられる光検知器の一実施の形態を示す外観斜視図である。
【図3】図1に示す光ファイバコネクタを光伝送路中に設けたときの状態を示す外観斜視図である。
【図4】図3に示す光ファイバコネクタを構成する部品およびその組立方法を示す図である。
【図5】図4に示すフェルールとフェルールホルダの詳細を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るフェルールとフェルールホルダの組立方法を示す図である。
【図7】図1に示す光ファイバコネクタと図2に示す光検知器の取り付け状況を示す図である。
【図8】図1に示す光ファイバコネクタと図2に示す光検知器の取り付け状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明にかかる通信光検知に用いられる光ファイバコネクの実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0024】
[光ファイバコネクタの構成]
図1は、本発明にかかる通信光検知に用いられる光ファイバコネクタ1(以下、光ファイバコネクタという)の一実施の形態を示す表側の外観斜視図である。
【0025】
図1において、光ファイバコネクタ1は左方アダプタハウジング(第1アダプタハウジング)11、右方アダプタハウジング(第2アダプタハウジング)12、および孔カバー14を備えて構成され、左方アダプタハウジング11および右方アダプタハウジング12の各端部から光伝送路を光ファイバコネクタ1内へ案内させる光コネクタプラグ13が挿入され結合されるものである。
【0026】
左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12は、光コネクタプラグ13が挿入される端部と対向する端部同士が突き合わされ、圧着接続、あるいは図示しない結合子によって結合されて一体化されることによりアダプタハウジングを形成する。左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12の突き合せする接続部分には、それぞれ半円状の切欠きが形成されており、これらの切欠きは一体化された時に、光ファイバコネクタ1に光検知器2の光検知部22を挿入するための光検知部挿入孔(挿入孔)18を形成する。なお、この光検知部挿入孔18に光検知部22が挿入されると、光検知部22の端面が光取り出し部と対向することとなる。
【0027】
左方アダプタハウジング11および右方アダプタハウジング12の光コネクタプラグ13が挿入される端部は開口部29とされ、光コネクタプラグ13が接合される。
【0028】
孔カバー14は、左方アダプタハウジング11の対向する一対の側面の各々に連結させるための脚部16を有する。この脚部16の左方アダプタハウジング11と連結させる端部が回動自在となるように左方アダプタハウジング11の側面に接続してあり、これによって孔カバー14は開閉可能とされ、孔カバー14を閉じた際に孔カバー14の内面に設けた突起15によって光検知部挿入孔18を塞ぐことができる。
【0029】
左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12の側面には光ファイバコネクタ1に光検知器2を配置させるときに光検知器2の位置決めをするための光検知器位置決め溝19がそれぞれ形成される。
【0030】
[光検知器の構成]
図2は、通信光の有無を確認する際に本発明にかかる光ファイバコネクタ1へ取り付けられる光検知器2の外観斜視図である。図2に示す光検知器2は、光検知器本体部21と、光検知器本体部21の底面(図面では下方)から一方に伸びて光ファイバコネクタ1内を伝播する通信光の一部を検知するための光検知部22とを備える。
【0031】
光検知部22は例えばPD(フォトダイオード)素子からなり、光検知器本体部21にはこのPD素子にて受光した通信光の一部である漏れ光(漏洩光)を可視光に変換して出力する光出力部(図示せず、以下同じ)と、漏洩光の有無を表示する表示手段と、これら光検知部22、光出力部及び表示手段を制御する回路基板が備えられる。
【0032】
光検知器2は、光検知器本体部21の底面に光検知部22の周囲に設けられた光検知器位置決め用脚部23を備え、本実施の形態の場合、光検知器位置決め用脚部23は4本とされている。光検知器位置決め用脚部23は、左方アダプタハウジング11及び右方アダプタハウジング12の側面に沿って各2本ずつ、左方アダプタハウジング11、および右方アダプタハウジング12の幅の間隔を置かれて並設してある。すなわち、光検知器位置決め用脚部23は、左方アダプタハウジング11および右方アダプタハウジング12に設けられた光検知器位置決め溝19に嵌合させるように各々が配置されている。光検知器位置決め用脚部23と光検知器位置決め溝19とを嵌合させることで、同時に光検知部22を光検知部挿入孔18へストレスなく挿入できる。
【0033】
光検知器2は、通信光を検知できるもので上述した機能等を逸脱しない範囲であれば構成を追加、変更したものであってもよい。
【0034】
[光ファイバコネクタの詳細構成]
以下、本実施の形態に係る光ファイバコネクタ1の詳細な構成を図3〜図6に基づいて説明する。
【0035】
(1)光伝送路中の構成
図3に、図1に示す光ファイバコネクタ1を光伝送路中に設けたときの状態を示す外観斜視図を示す。光ファイバコネクタ1が光伝送路中に設けられると、光ファイバ1を構成する左方アダプタハウジング11、右方アダプタハウジング12が備える開口部29に光コネクタプラグ13が接合され、図3に示す構成となる。
【0036】
(2)光ファイバコネクタの部品詳細及び各部品の作用
図4は、図1に示す光ファイバコネクタ1を構成する部品を示したものである。図4において、フェルール30を中心にして左右にそれぞれスリーブ31、32、プラグロック片33、34および左方アダプタハウジング11、右方アダプタハウジング12が配設してある。
【0037】
通信光検知に用いられる光ファイバコネクタ1は、開口部29から光コネクタプラグ13が挿入されているときに、光コネクタプラグ13内の光ファイバからなる光伝送路の端面がスリーブ31、32の内部でフェルール30の端面と接続される。
【0038】
フェルール30は、スリーブ31、32の内部にフェルール30の端部が内在するように設けられ、光伝送路の端面がスリーブ31、32に内在するフェルール30の端面と接続され、フェルール30の外側からフェルール30を保持するフェルールホルダ35がフェルール30とスリーブ31、32のフェルール30が内在する側の端部を覆うように配設される。
【0039】
また、スリーブ31、32のフェルール30と接続されていない端部側からプラグロック片33、34をスリーブ31、32がプラグロック片33、34の内部に内在するように挿入することによってスリーブ31、32がプラグロック片33、34の内部で保持され、プラグロック片33、34は、その端部33a、34aがフェルールホルダ35の端部に保持される。
【0040】
さらに、プラグロック片33、34の端部33a、34aと対向する端部側から左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12を、フェルール30を保持させたフェルールホルダ35と、スリーブ31、32を内在させたプラグロック片33、34とともに収納するように突き合わせ、左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12との端面を嵌合または溶着などによって接続することにより、光ファイバコネクタ1が得られる。なお、前述したように左方アダプタハウジング11には孔カバー14が取り付けられる。
【0041】
図5は、図4に示すフェルール30とフェルールホルダ35の詳細を示す図である。なお、フェルールホルダ35は断面形状を示す。
【0042】
図5において、フェルール30は全体が略円柱状の形状をなし、フェルール30の内部には長手方向に沿って光ファイバ41が内在している。また、フェルール30の長手方向の中央部には、通信光の一部を取り出すための光取り出し部を構成する溝部42が形成される。溝部42は、フェルール30の外表面から光ファイバ41に達しない状態で、光ファイバ41に近接する位置までの深さを有して形成される。この溝部42の底面は長手方向の平面と同一平面とされる。従って、ほぼ半球状を有する溝として形成され、その両側は円柱状部44となる。
【0043】
溝部42の中央部に細溝部43が形成される。この細溝部43は溝部42の底面から少なくとも光ファイバ41を貫く位置までの深さを有する。光ファイバ41を貫くこの細溝部43には屈折率整合用の樹脂が注入される。すなわち、溝部42は、その溝部42の表面に、光ファイバ41を横断する方向に、溝部42よりも細幅の他の溝部(細溝部43)を備えることになる。そして、光ファイバ41を貫くように形成した細溝部43には樹脂が注入される。
【0044】
このように、本実施の形態においては、フェルール30の長手方向の中央部に形成された溝部42と、溝部42の中央部に形成された細溝部43とから光取り出し部が形成される。しかし、本発明の実施の形態はこれに限られるものではなく、例えば細溝部43を形成せず、フェルール30の長手方向の中央部に形成された溝部42のみで光取り出し部を構成しても良い。この実施の形態によれば、例えば溝部42と細溝部43とで光取り出し部を構成した場合、光ファイバ41を貫くように形成した細溝部43に樹脂を注入しなければならないが、光ファイバ41から通信光の一部を取り出すようにして光ファイバを切断しない構成、すなわち、溝部42のみで光取り出し部を構成した場合、樹脂の注入工程を不要とすることができる。
【0045】
フェルールホルダ35は、外表面が平面である基板部45を有する。フェルールホルダ35の内部の中央には、フェルール30を収納する収納部49が設けられている。この収納部49には、中央にフェルール30の溝部と嵌合し、光検知部挿入孔50が設けられているフェルール位置決め突起51と、その長手方向両側に、フェルールの円柱状部44を収納するための円柱状部用収納部52が設けられている。
【0046】
フェルール位置決め突起51の上面はフェルール30がフェルール30の周方向に回転するのを防ぐ回転防止面53としての機能を有し、フェルール位置決め突起51の外側の側面はフェルール30の光軸方向の位置決めをするための位置決め面54としての機能を有することになる。
【0047】
(3)フェルールとフェルールホルダの組立方法
図6に、本実施の形態に係るフェルール30とフェルールホルダ35の組立方法を示す。
【0048】
まず、図6(a)に示すように、フェルールホルダ35の光検知部挿入孔50が設けられている側面に対向する側面側から、溝部42が光検知部挿入孔50に対向する向きでフェルール30をフェルールホルダ35に挿入する。
【0049】
フェルール30をフェルールホルダ35に挿入した後、図6(b)に示すように、光検知部挿入孔50、位置決め面54、回転防止面53から構成されるフェルール位置決め突起51を、フェルール30に形成される溝部42に嵌め込む、すなわち嵌合させる。フェルール位置決め突起51を溝部42に嵌合させた状態では、溝部42の底面は、フェルール位置決め突起51の回転防止面53に当接し、溝部42の側面は、それぞれフェルール位置決め突起51の位置決め面54に当接する。これによって、フェルール30の光取り出し部を構成する溝部42の位置が決定されることになる。この場合に、フェルール30の両側の円柱状部44はそれぞれ円柱状部用収納部52に収納されてフェルール30全体がフェルールホルダ35に収納され、光検知部挿入孔50は、溝部42に対向した配置となる。このように、本実施の形態においては回転防止面53および位置決め面54が設けられているので、フェルール30に形成された光取り出し部を構成する溝部42の位置決めを容易に行うことができる。
【0050】
フェルール30をフェルールホルダ35に挿入嵌合して取り付けた後、図6(c)に示すように、フェルール30(図6(c)では図示せず)の端面にスリーブ31、32を当接させる。スリーブ31、32を当接させた後、図6(d)に示すように、プラグロック片33、34を、フェルールホルダ35の左右側から取り付ける。このとき、スリーブ32がプラグロック片34の筒状部に挿入されるように、スリーブ31がプラグロック片33が備える筒状部に挿入されるようにして取り付けがなされる。プラグロック片34が備える端部34aの両側面には嵌合爪aが形成されており、該嵌合爪aをフェルールホルダ35の両側面に形成された嵌合爪孔aに嵌合させることで、プラグロック片34がフェルールホルダ35に固定される。同様に、プラグロック片33が備える端部33aの両側面には嵌合爪bが形成されており、該嵌合爪bをフェルールホルダ35の両側面に形成された嵌合爪孔bに嵌合させることで、プラグロック片33がフェルールホルダ35に固定される。プラグロック片33、34の筒状部にはそれぞれスリーブ31、32が挿入保持されている。従って、プラグロック片33、34がフェルールホルダ35に固定されることで、スリーブ31、32は、その端面がフェルール30の端面に当接した状態で固定保持される。
【0051】
プラグロック片33、34が固定されたフェルールホルダ35は、図6(e)に示すように、左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12に挿入される。ここで、左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12の内側には、フェルールホルダ35の形状に合わせた図示しない位置決め機構が形成されている。これにより、左方アダプタハウジング11に挿入された該フェルールホルダ35は、左方アダプタハウジング11に形成された半円状の切欠きの縁部が光検知部挿入孔50の縁部と一致する位置で位置決めされる。このようにして位置決めされたフェルールホルダ35に右方アダプタハウジング12を挿入すると、同様に右方アダプタハウジング12に形成された半円状の切欠きの縁部が光検知部挿入孔50の縁部と一致する位置でフェルールホルダ35が位置決めされる。左方アダプタハウジング11、右方アダプタハウジング12によりフェルールホルダ35が位置決めされると、図に示す左方アダプタハウジング11の端面と右方アダプタハウジング12の端面とが突き合わされた状態となる。この状態で、両端面を嵌合または溶着などによって接続することにより、左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12とが接続される。
【0052】
左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12とが接続されたら、図6(f)に示すように、孔カバー14を左方アダプタハウジング11に取り付ける。孔カバー14の脚部16、16には、図示するようにそれぞれの内側に突起が設けてある。該突起を左方アダプタハウジング11の側面に対称に形成された孔部に挿入、嵌合することにより、孔カバー14は回動自在に左方アダプタハウジング11の側面に接続される。
【0053】
孔カバー14は、光検知部挿入孔18、50を塞いだ状態で、光取り出し部から取り出された可視光を目視可能に形成されている。
【0054】
具体的に、孔カバー14は、可視光領域の波長帯(750nm以下)に対して透明あるいは半透明材料で形成され、あるいは、可視光領域の波長帯を透過し、可視光領域よりも長波となる通信光領域の波長帯を遮断する遮断材料で形成される。
【0055】
または、孔カバー14は、突起15を貫通する1つ以上の微小孔が形成されており、この微小孔は、孔カバー14が光検知部挿入孔18、50を塞いだ状態において、通信光の一部を取り出すための光取り出し部を目視可能なように形成されている。
【0056】
これらにより、孔カバー14によって光検知部挿入孔18、50を塞いだ状態でも、光検知部挿入孔18、50内に漏洩した可視光を外部から目視により確認することができる。
【0057】
以上図6に基づいて説明したように、フェルール30、フェルールホルダ35、スリーブ31、32、プラグロック片33、34は組み立てられ、両側にあるアダプタハウジング11、12内に組み込まれて、光ファイバコネクタ1が形成されることになる。この場合に、左方アダプタハウジング11と右方アダプタハウジング12と突き合せ接続することによって形成された、図6(f)に示す光検知部挿入孔18は、その位置がフェルールホルダ35の光検知部挿入孔50の位置に合わされ、また、孔の大きさが光検知部挿入孔50の孔の大きさと同じか、それよりも若干大きいものである。この光検知部挿入孔18、50が連通することで、光検知部挿入孔18から光検知部挿入孔50に向けての光検知器2の光検知部22の挿入が可能とされる。
【0058】
[光ファイバコネクタの作用]
(1)光ファイバコネクタの組み立て
図7は、通信光の有無を確認する際に、組み立てられた光ファイバコネクタ1に図2に示す光検知器2を取り付ける前の状態を示す。
【0059】
光検知部22を光検知部挿入孔18に対向配置し、光検知器位置決め用脚部23を光検知器位置決め溝19に嵌合させるように挿入する。この場合に、光検知部22は、その端面(底面)がフェルールホルダ35の光検知部挿入孔50内に配設され、溝部42および細溝部43に対向する。このような溝部42、細溝部43の形成は、光検知器2の光検知部22を光ファイバに近接すなわち通信光の一部を取り出す光取り出し部に近接させることができるため、検知感度を向上させるのに有効となる。
【0060】
(2)通信光検知動作
図8は、通信光の有無を確認する際に、組み立てられた光ファイバコネクタ1に図2に示す光検知器2を取り付けた状態を示す。
【0061】
光検知器2は、光ファイバコネクタ1に通信光が伝播されていないことを表示する第1の表示部61と、光ファイバコネクタ1に通信光が伝播されていることを表示する第2の表示部62と、電源のオン/オフを切り替える電源スイッチ63とを備える。
【0062】
図8に示す電源スイッチ63により光検知器2の電源をオンにし、計測開始すると、光伝送路に通信光が伝播している場合、通信光の一部が細溝部43から漏れ、光検知部22によって検知され、その検知された光に基づいて光検知器2内で信号処理がなされて第2の表示部62が点灯する。これにより、光ファイバコネクタ1に通信光が伝播されていることが目視にて確認できる。
【0063】
光伝送路に通信光が伝播していない場合、通信光が漏れることはなく、光検知部22にて光がゼロであることが検知され、これに基づいて信号処理がなされて、第1の表示部61が点灯する。これにより、光ファイバコネクタ1に通信光が伝播されていないことが目視にて確認できる。
【0064】
このようにして、光伝送路が使用されているか否かといった運用状態が容易に把握され、その運用状態の把握に時間を要することなく、使用されている光伝送路の光コネクタを使用されていないものと勘違いして抜いてしまうヒューマンエラーを防ぐことができる。
【0065】
上述したように孔カバー14は、可視光を外部から目視可能に形成されているので、孔カバー14によって光検知部挿入孔18、50を塞いだ状態でも通信中の回線を遮断することなく、目視により通信の有無を判別することができる。
【0066】
本実施例では、漏洩光を通信光軸と垂直方向(円周方向)に漏らし、通信光軸の円周延長線上に設けたフェルールホルダ35の光検知部挿入孔18、50から漏洩光を検知することができる光ファイバコネクタ1が構成される。本実施例は、この光ファイバコネクタ1に、孔カバー14を取り付け得る。
【0067】
本実施例によれば、孔カバー14は可視光が外部から目視可能に形成されているため、開通前の施工確認作業で光ファイバ41に可視光を入射して、光検知部挿入孔18、50から漏洩した可視光を孔カバー14を開けることなく、通信光軸と垂直方向に可視光を漏洩させ目視によって通信の有無をすることができる。
【0068】
このように、光検知部挿入孔18、50を孔カバー14によって塞いだ状態で回線経路が分かり、回線の開通ミスがあっても直ちにミスの位置を発見することができる。
【符号の説明】
【0069】
1…光ファイバコネクタ、2…光検知器、11…左方アダプタハウジング、12…右方アダプタハウジング、13…光コネクタプラグ、14…孔カバー、16…脚部、18…光検知部挿入孔(挿入孔)、19…光検知器位置決め溝、21…光検知器本体部、22…光検知部、23…光検知器位置決め用脚部、29…開口部、30…フェルール、35…フェルールホルダ、41…光ファイバ、42…溝部、43…細溝部、44…円柱状部、45…基板部、49…収納部、50…光検知部挿入孔、51…フェルール位置決め突起、52…円柱状部用収納部、53…回転防止面、54…位置決め面、61…第1の表示部、62…第2の表示部、63…電源スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバからなる光伝送路同士を光接続するための光ファイバコネクタにおいて、
当該光ファイバコネクタは、少なくとも、フェルールと、前記フェルールを保持するフェルールホルダと、からなり、
前記フェルールは、前記光伝送路と光結合する光ファイバと、前記光伝送路から前記光ファイバへ伝播した通信光の一部を取り出す光取り出し部とを有し、
前記フェルールホルダは、前記フェルールを位置決めするフェルール位置決め突起と、前記フェルール位置決め突起に形成され、前記光取り出し部にて取り出された前記通信光の一部を検知する光検知部を前記光取り出し部に対向する位置に挿入させる光検知部挿入孔とを有すること
を特徴とする光ファイバコネクタ。
【請求項2】
前記光取り出し部は、前記フェルールに形成された溝部から構成されることを特徴とする請求項1記載の光ファイバコネクタ。
【請求項3】
前記光取り出し部は、前記フェルールに形成された溝部と、前記溝部に形成された細溝部とから構成されることを特徴とする請求項1記載の光ファイバコネクタ。
【請求項4】
前記フェルールは、その少なくとも一方の端部に内在するように接続され、前記光伝送路を光接続するためのスリーブを有する請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバコネクタ。
【請求項5】
前記フェルールは、その少なくとも一方の端部に前記フェルールホルダの端部に保持されるプラグロック片を有する請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバコネクタ。
【請求項6】
前記プラグロック片は、その内部に前記フェルールの端部に接続されたスリーブを内在する請求項5記載の光ファイバコネクタ。
【請求項7】
前記フェルールホルダおよび前記フェルールは、第1のアダプタハウジングと第2のアダプタハウジングとがその端面同士を突き合わせて接続されてなるアダプタハウジングの内部に配置されている請求項1乃至6のいずれかに記載の光ファイバコネクタ。
【請求項8】
前記アダプタハウジングは、前記第1のアダプタハウジングと前記第2のアダプタハウジングとの接続部分に、前記フェルールホルダの前記光検知部挿入孔に連通する挿入孔を有する請求項7記載の光ファイバコネクタ。
【請求項9】
前記アダプタハウジングは、該アダプタハウジングに回動するように接続されて前記挿入孔を塞ぐ孔カバーを有する請求項8記載の光ファイバコネクタ。
【請求項10】
前記孔カバーは、前記挿入孔を塞いだ状態で、前記光取り出し部から取り出された可視光を目視可能に形成されることを特徴とする請求項9記載の光ファイバコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−150279(P2011−150279A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160253(P2010−160253)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(504026856)株式会社アドバンスト・ケーブル・システムズ (64)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【出願人】(399035766)エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社 (321)
【Fターム(参考)】