説明

通信制御方法、移動通信システム及び移動端末装置

【課題】移動端末装置で十分に再送制御用のソフトバッファメモリが確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制すること。
【解決手段】基地局装置eNBにおいて情報ビットをチャネル符号化するステップ(ST802)と、インターリーブ後の符号化ビットに対してレートマッチング処理を行うステップ(ST804)と、レートマッチング後の符号化ビット長に応じた送信データを移動端末装置UEに送信するステップ(ST806)と、移動端末装置UEにおいて送信データを受信するステップ(ST807)と、受信データをチャネル復号化するステップ(ST810)と、受信データの一部を移動端末装置UEのソフトバッファメモリのサイズに応じて廃棄してソフトバッファメモリに格納するステップ(ST812,ST813)と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御方法、移動通信システム及び移動端末装置に関し、特に、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制する通信制御方法、移動通信システム及び移動端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)ネットワークにおいては、周波数利用効率の向上、データレートの向上を目的として、HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)やHSUPA(High Speed Uplink Packet Access)を採用することにより、W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)をベースとしたシステムの特徴を最大限に引き出すことが行われている。このUMTSネットワークについては、更なる高速データレート、低遅延などを目的としてロングタームエボリューション(LTE:Long Term Evolution)が検討されている。
【0003】
第3世代のシステムは、概して5MHzの固定帯域を用いて、下り回線で最大2Mbps程度の伝送レートを実現できる。一方、LTE方式のシステムにおいては、1.4MHz〜20MHzの可変帯域を用いて、下り回線で最大300Mbps及び上り回線で75Mbps程度の伝送レートを実現できる。また、UMTSネットワークにおいては、更なる広帯域化及び高速化を目的として、LTEの後継のシステムも検討されている(例えば、LTEアドバンスト(LTE−A))。例えば、LTE−Aにおいては、LTE仕様の最大システム帯域である20MHzを、100MHz程度まで拡張することが予定されている。
【0004】
LTE方式のシステム(LTEシステム)においては、誤り訂正(FEC:Forward Error Correction)と再送制御(ARQ:Automatic Repeat reQuest)とを組み合わせて用いるハイブリッドARQ(HARQ)を適用することが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。このHARQにおいては、移動端末装置UEから誤りがあった受信データの再送を要求することで、例えば、移動端末装置UE側における雑音に起因するランダムな誤りに有効に対応することが可能である。
【0005】
特に、LTEシステムにおいては、ソフトコンバイニングを伴うHARQを適用することが提案されている。このソフトコンバイニングを伴うHARQは、誤りがあった受信データを、再送制御用のバッファメモリ(より具体的には、LLR(Log Likelihood Ratio)保管バッファメモリ)に蓄積し、後に再送されるデータ(再送データ)と合成することにより、信頼性の高い受信データを得る手法である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TS 36.212“Multiplexing and channel coding
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したソフトコンバイニングを伴うハイブリッドARQにおいては、移動端末装置UEで十分に再送制御用のバッファメモリ(ソフトバッファメモリ)が確保される場合に信頼性の高い受信データを得ることができ、データ伝送時における伝送特性を改善できる。しかしながら、移動端末装置UEで十分に再送制御用のソフトバッファメモリが確保されない場合には、データ伝送時における伝送特性が劣化する事態が発生し得る。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、移動端末装置で十分に再送制御用のソフトバッファメモリが確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制できる通信制御方法、移動通信システム及び移動端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の通信制御方法は、基地局装置において情報ビットをチャネル符号化するステップと、チャネル符号化後の符号化ビットに対してレートマッチング処理を行うステップと、レートマッチング後の符号化ビット長に応じた送信データを前記移動端末装置に送信するステップと、前記移動端末装置において前記送信データを受信するステップと、受信データをチャネル復号化するステップと、前記受信データの一部を前記移動端末装置のソフトバッファメモリのサイズに応じて廃棄して当該ソフトバッファメモリに格納するステップと、を具備することを特徴とする。
【0010】
本発明の通信制御方法によれば、送信データを構成する符号化ビットの一部が、基地局装置で廃棄されることが防止される。このため、移動端末装置においては、これらのパリティビットを含む受信データ(符号化ビット)に基づいて伝送特性を改善できる。この結果、移動端末装置において、ソフトバッファメモリが十分に確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、移動端末装置で十分にソフトバッファメモリが確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】LTEシステムの基地局装置のデータ伝送時における処理の説明図である。
【図2】LTEシステムのデータ再送時における基地局装置及び移動端末装置の処理の説明図である。
【図3】LTEシステムのデータ再送時における基地局装置及び移動端末装置の処理の説明図である。
【図4】LTEシステムのデータ再送時における基地局装置及び移動端末装置の処理の説明図である。
【図5】本実施の形態に係る通信制御方法のデータ伝送時における処理の説明図である。
【図6】本実施の形態に係る通信制御方法が適用される基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本実施の形態に係る通信制御方法が適用される移動端末装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本実施の形態に係る通信制御方法のデータ伝送時におけるシーケンス図である。
【図9】第1の変形例に係る通信制御方法のデータ伝送時における処理の説明図である。
【図10】第1の変形例に係る通信制御方法が適用される基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図11】HARQプロセス数が8個の場合にバッファメモリに設定されるソフトバッファの説明図である。
【図12】第2の変形例に係る通信制御方法により受信データを処理する場合の一例の説明図である。
【図13】第2の変形例に係る通信制御方法により受信データを処理する場合の他例の説明図である。
【図14】第2の変形例に係る通信制御方法が適用される移動端末装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明を通信制御方法、並びに、この通信制御方法が適用される移動端末装置UE及び基地局装置eNBに具現化して説明するが、これに限定されるものではない。本発明の通信制御方法が適用され、或いは、この通信制御方法が適用される移動端末装置UE及び基地局装置eNBを備える移動通信システムとしても成立するものである。
【0014】
まず、LTEシステムのデータ伝送時における処理について、図1〜図4を参照しながら説明する。図1は、LTEシステムの基地局装置eNBのデータ伝送時における処理の説明図である。図2〜図4は、LTEシステムのデータ再送時における基地局装置eNB及び移動端末装置UEの処理の説明図である。なお、図2においては、誤りがあった受信データが格納される、再送制御用のバッファメモリ(LLR保管バッファメモリ、以下「ソフトバッファ」という)が移動端末装置UEで十分に確保される場合の処理を示し、図3及び図4においては、ソフトバッファが移動端末装置UEで十分に確保されない場合の処理を示している。
【0015】
データ伝送を行う場合、基地局装置eNBは、図1に示すように、まず、トランスポートブロックのサイズ(TBS)に応じた情報ビットに対して24ビット長の巡回冗長検査(CRC)ビットを付加する。CRCビットを付加することで、移動端末装置UE側で復号したトランスポートブロックに誤りがあるかどうかを検出できる。なお、復号誤りの検出結果は、例えば、下りリンクのHARQプロトコルにおけるデータ再送のトリガとして使用される。
【0016】
そして、基地局装置eNBは、CRCビットが付加された情報ビットに対してコードブロック分割を行う(Codeblock segmentation)。このコードブロック分割により、トランスポートブロックは、ターボ符号化器で定義されたブロック長の範囲内の複数のコードブロックに分割される。基地局装置eNBは、コードブロック分割を行った場合、さらに24ビット長のCRCビットをコードブロック毎に付加する。コードブロック毎にCRCを付加することにより、復号したコードブロックの誤りを早期に検出でき、結果として繰り返し処理を伴う復号処理を早いタイミングで終了できる。
【0017】
次に、基地局装置eNBは、CRCが付加されたコードブロック毎にチャネル符号化を行う。この場合、CRCが付加された各コードブロックに対して、符号化率1/3のターボ符号化が行われ、ビット長Kの符号化ビットが求められる。チャネル符号化された符号化ビットには、コードブロック毎の情報ビット(システマティックビット)と、パリティビット(第1パリティビットp1、第2パリティビットp2)とが含まれる。
【0018】
さらに、基地局装置eNBは、チャネル符号化された符号化ビットに対してレートマッチング処理を施す。この場合、パリティビットに対して、レートの微調整のために穿孔(Puncturing)又は反復(Repetition)によるレートマッチングが適用される。ここでは、レート1/2のレートマッチング処理が行われビット長Eの符号化ビットが得られる。レートマッチングされた符号化ビットは、所定の変調方式によって変調された後、下りリンクで移動端末装置UEに送信される。
【0019】
このように基地局装置eNBからデータ伝送が行われる場合において、移動端末装置UEで受信データに誤りがあったものとする。ソフトコンバイニングを伴うHARQが適用される場合、移動端末装置UEにおいては、図2に示すように、誤りがあった受信データがソフトバッファに格納される(初回送信された受信データ)。そして、移動端末装置UEから誤りがあった受信データの再送が要求される。
【0020】
図2に示すように、移動端末装置UEにおいて、ソフトバッファが十分に確保される場合(より具体的には、ソフトバッファサイズNcbが、チャネル符号化後の符号化ビットのビット長K(以下、「チャネル符号化ビット長K」という)以上である場合)、移動端末装置UEから再送要求を受け取ると、基地局装置eNBは、チャネル符号化後の符号化ビットに含まれるパリティビットの一部を再送データとして送信する。この場合、再送データは、移動端末装置UEにおいて、ソフトバッファに格納される(再送後の受信データ)。移動端末装置UEにおいては、この再送データと、ソフトバッファに蓄積された受信データ(初回送信された受信データ)とを合成することにより、信頼性の高い受信データを得ることが可能となる。
【0021】
なお、ソフトコンバイニングを伴うHARQは、CC(chase Combining)と、IR(Incremental Redundancy)とに区分される。CCは、データ再送の際に、初回伝送の時に使用されたパリティビットと同一のパリティビットを送信する方式である。IRは、データ再送の際に、初回伝送の時に使用されたパリティビットと異なるパリティビットを送信する方式である。再送要求に応じて基地局装置eNBから再送されるパリティビットは、ソフトコンバイニングを伴うHARQの種別に応じて変化する。
【0022】
一方、図3及び図4に示すように、移動端末装置UEにおいて、ソフトバッファが十分に確保されない場合(より具体的には、ソフトバッファサイズNcbがチャネル符号化ビット長Kより小さい場合)には、基地局装置eNBにおいて、レートマッチング処理に先行してパリティビットの廃棄処理(Discarding処理)が行われる。この廃棄処理においては、チャネル符号化後の符号化ビットに含まれるパリティビットが、移動端末装置UEにて確保されるソフトバッファサイズNcbに応じて廃棄される。より具体的には、ソフトバッファサイズNcbを上回る分のパリティビットが廃棄される。なお、ソフトバッファサイズNcbは、通信開始時にCapability情報の一部として、移動端末装置UEから基地局装置eNBに通知される。
【0023】
ここで、移動端末装置UEにおけるソフトバッファサイズNcbは、有限である。また、ソフトバッファサイズNcbは、基地局装置eNBとの通信環境に依存して変化する。例えば、基地局装置eNBとの間で行われるHARQプロセス数(最大8プロセス)や、基地局装置eNBとの間で行われるMIMO(Multi Input Multi Output)伝送時のコードワード数(最大2コードワード)に応じて分割される。これらの場合、ソフトバッファサイズNcbは、分割数に応じて縮小される。また、LTE−Aシステムのように、伝送帯域幅の拡張のためにキャリアアグリゲーションが用いられる場合、ソフトバッファサイズNcbは、通信に利用される基本周波数ブロック(以下、「コンポーネントキャリア」という)の数に応じて分割され、更に縮小されることが考えられる。
【0024】
図3においては、移動端末装置UEにおけるソフトバッファサイズNcbが、レートマッチング後の符号化ビットのビット長E(以下、「レートマッチング後の符号化ビット長E」という)以上である場合について示している。ソフトバッファサイズNcbがチャネル符号化ビット長Kより小さい場合であっても、レートマッチング後の符号化ビット長Eよりも大きい場合、初回の送信データにおける伝送特性は、ソフトバッファサイズNcbがチャネル符号化ビット長K以上である場合(図2に示す場合)と同等に維持される。
【0025】
一方、図4においては、移動端末装置UEにおけるソフトバッファサイズNcbがレートマッチング後の符号化ビット長Eより小さい場合について示している。ソフトバッファサイズNcbがレートマッチング後の符号化ビット長Eより小さい場合、レートマッチングにおける反復処理によって情報ビットの一部が複製される。この場合、レートマッチング後の符号化ビットには、情報ビットの一部が重複して含まれる。そして、このように情報ビットの一部が重複する符号化ビットに応じた送信データが移動端末装置UEに送信される。この場合、初回の送信データにおける伝送特性は、廃棄されたパリティビットの減少に応じて、ソフトバッファサイズNcbがチャネル符号化ビット長K以上である場合(図2に示す場合)と比べて劣化する。
【0026】
このように移動端末装置UEにてソフトバッファが十分に確保されない場合においては、基地局装置eNBでソフトバッファサイズNcbに応じてパリティビットの一部が廃棄される。なお、ソフトバッファサイズが更に小さくなると情報ビットも破棄される。基地局装置eNBで廃棄されるパリティビットは、移動端末装置UEで利用することによりデータ伝送時における伝送特性の改善に寄与するものである。本発明者らは、これらのパリティビットが移動端末装置UEで利用されることなく基地局装置eNBで廃棄されることに起因してデータ伝送時における伝送特性が劣化していることに着目し、本発明をするに至ったものである。
【0027】
本発明の骨子は、基地局装置eNBでチャネル符号化後の符号化ビットを、ソフトバッファサイズNcbに応じて廃棄することなく、レートマッチング後の符号化ビット長Eに応じた送信データを送信し、移動端末装置UEで当該送信データを受信して復号し、受信データに誤りが生じた場合には、ソフトバッファサイズNcbに応じて受信データの一部を廃棄してソフトバッファに格納することである。これにより、基地局装置eNBでソフトバッファサイズcbに応じてパリティビットの一部が廃棄されるのを防止し、これらのパリティビットに基づいて移動端末装置UEで伝送特性を改善することができるので、ソフトバッファが十分に確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制できる。
【0028】
図5は、本実施の形態に係る通信制御方法のデータ伝送時における処理の説明図である。図5においては、ソフトバッファが移動端末装置UEで十分に確保されない場合の処理を示している。特に、図5においては、移動端末装置UEにおけるソフトバッファサイズNcbが、レートマッチング後の符号化ビット長Eより小さい場合について示している。
【0029】
本実施の形態に係る通信制御方法において、基地局装置eNBは、移動端末装置UEにおけるソフトバッファサイズNcbに関わらず、レートマッチング処理に先行してチャネル符号化後の符号化ビットの廃棄処理を行うことはない。この場合、基地局装置eNBは、図2に示すように、ソフトバッファが十分に確保される場合(より具体的には、ソフトバッファサイズNcbがチャネル符号化ビット長K以上である場合)と同様に、チャネル符号化された符号化ビットに対してレートマッチング処理を施す。そして、基地局装置eNBは、このレートマッチング後の符号化ビット長Eに応じた送信データを移動端末装置UEに送信する。
【0030】
移動端末装置UEは、この送信データを受信して復号する。この場合、基地局装置eNBにて廃棄処理が行われていない。このため、受信データを構成する符号化ビットには、情報ビットの一部の複製が含まれず、ソフトバッファが十分に確保される場合と同等のパリティビットが含まれる。このような受信データを移動端末装置UEで復号することにより、初回の送信データにおいては、ソフトバッファが十分に確保される場合と同等の伝送特性を得ることができる。このため、移動端末装置UEにおいて、ソフトバッファが十分に確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制できる。この際、移動端末装置UEは、瞬時的なバッファを用いて、送信された符号ビットのLLRを計算して蓄積する。
【0031】
受信データに誤りが生じた場合においては、移動端末装置UEは、ソフトバッファサイズNcbに応じて受信データの一部を廃棄してソフトバッファに格納する(Discarding処理)。これにより、ソフトバッファが十分に確保されない場合においても、基地局装置eNBで廃棄処理を行う場合と同様に、受信データの一部をソフトバッファに適切に格納できる。移動端末装置UEからの再送要求に応じて基地局装置eNBから再送データが送信された場合、移動端末装置UEは、再送データと、ソフトバッファに格納された受信データとを合成する。
【0032】
図6は、本実施の形態に係る通信制御方法が適用される基地局装置eNBの構成を示すブロック図である。なお、図6に示す基地局装置eNBは、本発明に係る通信制御方法を説明するために簡略化されているが、LTEシステム又はLTE−Aシステムで利用される基地局装置eNBが通常に備える構成については備えているものとする。
【0033】
図6に示すように、基地局装置eNBは、CRC付加部101と、チャネル符号化部102と、インターリーバ103と、廃棄処理部104と、レートマッチング部105と、バッファメモリ106と、変調部107と、制御部108とを含んで構成されている。図6に示す基地局装置eNBは、制御部108の制御の下、図1〜図4に示すデータ伝送又はデータ再送に必要な処理を行う。特に、図6に示す基地局装置eNBは、制御部108の制御の下、通信する移動端末装置UEの能力に応じてチャネル符号化後の符号化ビットの廃棄処理の有無を切り替える。
【0034】
CRC付加部101は、入力される情報ビットにパケットデータ単位のエラー検査のためのCRCビットを付加する。ここで、情報ビットには、24ビット長のCRCビットが付加される。また、CRC付加部101は、コードブロック分割後のコードブロック毎にCRCビットを付加する。
【0035】
チャネル符号化部102は、CRCビットを含むパケットデータを所定の符号化方式を利用して所定の符号率で符号化する。具体的には、チャネル符号化部102は、符号化率1/3のターボ符号化を行い、符号化ビットを得る。パケットデータは、システマティックビットと、このシステマティックビットのエラー制御ビットであるパリティビットに符号化される。なお、チャネル符号化部102で使用される符号化率は、制御部108から与えられる。ここでは、符号化率1/3のターボ符号化を用いる場合について説明するが、他の符号化率や他の符号化方式を利用することも可能である。
【0036】
インターリーバ103は、チャネル符号化後の符号化ビットの順序をランダムに再配置する(インターリーブ処理)。インターリーブ処理は、バーストエラーによるデータ伝送損失を最小化するために行われる。なお、インターリーブされた符号化ビットは、再送のためのバッファメモリ106に格納される。移動端末装置UEから再送要求を受け付けた場合、制御部108の制御の下、バッファメモリ106に格納された送信パケットの一部又は全部が変調部107に出力される。
【0037】
廃棄処理部104は、符号化ビットの一部(パリティビット)を廃棄する。例えば、移動端末装置UEがRel.8 LTEシステムのみに対応する場合において、移動端末装置UEのソフトバッファが十分に確保されない場合にチャネル符号化後の符号化ビットの一部を廃棄する(図3及び図4参照)。一方、移動端末装置UEが本発明に係る通信制御方法に対応する場合には、廃棄処理部104は、チャネル符号化後の符号化ビットに対する廃棄処理を行わない。この場合、廃棄処理部104による廃棄処理の有無は、制御部108からの指示に応じて行われる。すなわち、制御部108から与えられる移動端末装置UEの能力情報(ソフトバッファサイズを含む)に応じて廃棄処理の有無が切り替えられる。
【0038】
レートマッチング部105は、符号化ビットに対して反復(Repetition)及び穿孔(Puncturing)を行うことによって、符号化ビットのレートマッチングを行う。例えば、レートマッチング部105は、チャネル符号化後の符号化ビット長Kが、レートマッチング後の符号化ビット長Eより大きい場合に穿孔を行う(図3、図5参照)。一方、レートマッチング部105は、チャネル符号化後の符号化ビット長Kが、レートマッチング後の符号化ビット長Eより小さい場合に反復を行う(図4参照)。
【0039】
変調部107は、レートマッチング部105(又はバッファメモリ106)から入力された符号化ビットを所定の変調方式によって変調する。なお、変調部107で使用される変調方式は、制御部108から与えられる。変調方式には、例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、8PSK、16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、64QAMなどが含まれる。変調部107により変調された符号化ビットは、送信データとして下りリンクで移動端末装置UEに送信される。
【0040】
制御部108は、基地局装置eNBの全体の動作を制御する。例えば、現在の無線チャネル状態に応じてチャネル符号化部102の符号化率及び変調部107の変調方式を決定する。また、制御部108は、移動端末装置UEから通信開始時に通知される能力情報(ソフトバッファサイズを含む)に応じて、廃棄処理部103の廃棄処理の有無を決定する。さらに、制御部108は、移動端末装置UEから送信される応答信号(ACK/NACK)に応じて再送制御を行う。応答信号ACK(Acknowledge)を受信した場合には、バッファメモリ106内の対応する送信パケットを削除する。一方、応答信号NACK(Non−Acknowledge)を受信した場合には、バッファメモリ106内の対応する送信パケットの一部又は全部を抽出し、変調部107を介して移動端末装置UEに再送する。
【0041】
図7は、本実施の形態に係る通信制御方法が適用される移動端末装置UEの構成を示すブロック図である。なお、図7に示す移動端末装置UEにおいては、本発明に係る通信制御方法を説明するために簡略化されているが、LTEシステム又はLTE−Aシステムで利用される移動端末装置UEが通常に備える構成については備えているものとする。
【0042】
図7に示すように、移動端末装置UEは、復調部201と、デインターリーバ202と、合成部203と、廃棄処理部204と、バッファメモリ205と、チャネル復号化部206と、CRC検査部207と、制御部208とを含んで構成されている。図7に示す移動端末装置UEは、制御部208の制御の下、図5に示すように、受信データの一部を廃棄してソフトバッファに格納する。
【0043】
復調部201は、基地局装置eNBから受信されたデータ(受信データ)を復調する。この場合、復調部201は、基地局装置eNBの変調部107で使用された変調方式に対応する復調方式によって復調する。これにより、受信データに含まれる符号化ビットが求められる。
【0044】
デインターリーバ202は、復調部201から入力された符号化ビットに対して、デインターリービング処理を行う。この場合、デインターリーバ202は、基地局装置eNBのインターリーバ104のインターリービング方法に対応するデインターリービング方法によってデインターリービング処理を行う。
【0045】
合成部203は、バッファメモリ205に格納された同一のパケットの符号化ビットを、現在受信された符号化ビットと合成する。バッファメモリ205に格納された同一のパケットの符号化ビットが存在しない場合、つまり、初回伝送である場合、合成部203は、現在受信された符号化ビットを廃棄処理部204及びチャネル復号化部206に出力する。
【0046】
廃棄処理部204は、合成部203からの符号化ビットの一部を廃棄する。廃棄処理部204は、バッファメモリ205の一部又は全部に設定されたソフトバッファサイズに応じて、合成部203からの符号化ビットの一部を廃棄する。より具体的には、廃棄処理部204は、ソフトバッファサイズを上回る分の符号化ビットの一部(パリティビット)を廃棄する。なお、ソフトバッファサイズが合成部203からの符号化ビット長以上である場合には、符号化ビットの一部を廃棄することはない。
【0047】
ソフトバッファ(バッファメモリ205)には、廃棄処理部204により一部が廃棄された符号化ビットが格納される。また、廃棄処理部204により廃棄処理を受けなかった符号化ビットも格納される。格納された符号化ビットは、合成部203によって、再受信された符号化ビットとの合成に利用される。このようにソフトバッファサイズより大きい符号化ビットを受信した場合には、廃棄処理部204で当該符号化ビットの一部が廃棄され、ソフトバッファに格納される。このため、移動端末装置UEにおいて、十分にソフトバッファが確保されない場合においても、基地局装置eNBで廃棄処理を行う場合と同様に、受信データ(符号化ビット)の一部をソフトバッファに適切に格納できる。
【0048】
チャネル復号化部206は、合成部203からの符号化ビットを所定の復号化方式で復号化することによって復元する。この場合、チャネル復号化部206は、基地局装置eNBのチャネル符号化部102の符号化方式に対応するターボ復号方式を使用する。ターボ復号方式によって合成部203からの符号化ビットを復号化することで、システマティックビット及びパリティビットに基づいて情報ビットが復元される。
【0049】
CRC検査部207は、復元された情報ビットからパケット単位でCRCビットを抽出する。そして、抽出されたCRCビットを利用してパケットが誤りを有するか否かを判断する。CRC検査部207による判断結果は、制御部208に出力される。CRC検査部207によって、誤りを有しないと判断されたパケット内の情報ビットは上位レイヤに出力される。
【0050】
制御部208は、移動端末装置UEの全体の動作を制御する。例えば、CRC検査部207による判断結果において、パケットが誤りを有しない場合には、制御部208は、当該パケットの受信を確認する応答信号ACKを基地局装置eNBに送信する。一方、パケットが誤りを有する場合には、制御部208は、当該パケットの再送を要求する応答信号NACKを基地局装置eNBに送信する。応答信号ACKを送信する場合、制御部208は、ソフトバッファの初期化を行う。この場合、ソフトバッファ内における当該パケットに対する符号化ビットが除去される。一方、応答信号NACKを送信する場合には、ソフトバッファの初期化を行わない。この場合、ソフトバッファ内における当該パケットに対する符号化ビットは残る。
【0051】
図8は、本実施の形態に係る通信制御方法のデータ伝送時におけるシーケンス図である。図8において、移動端末装置UEは、本通信制御方法に対応するものとする。また、移動端末装置UEは、ソフトバッファサイズが、レートマッチング後の符号化ビット長Eより小さいものとする。さらに、図8においては、基地局装置eNBから移動端末装置UEに送信データを初回送信する場合の処理について示している。
【0052】
図8に示すように、情報ビットが入力されると、CRC付加部101は、パケットデータ単位のエラー検査のためのCRCビットを付加する(ステップST801)。CRC付加部101からCRCビットを含むパケットデータを受け取ると、チャネル符号化部102は、符号化率1/3のターボ符号方式によりチャネル符号化を行い、符号化ビットを得る(ステップST802)。
【0053】
インターリーバ103は、レートマッチング後の符号化ビットの順序をランダムに再配置(インターリーブ)する(ステップST803)。インターリーブされた符号化ビットは、再送のためのバッファメモリ106に格納されるが、図8においては省略している。レートマッチング部105は、インターリーブ後の符号化ビットに対してレートマッチングを行う(ステップST804)。この場合、移動端末装置UEが本通信制御方法に対応することから、廃棄処理部104による符号化ビットの廃棄処理は行われない。このため、図4に示すように、レートマッチング後の符号化ビットに情報ビットが重複して含まれることはない。レートマッチング後の符号化ビットには、図2に示すように、ソフトバッファが十分に確保される場合と同等のパリティビットが含まれる。
【0054】
変調部107は、インターリーバ103(又はバッファメモリ106)から入力された符号化ビットを所定の変調方式によって変調する(ステップST805)。変調部107により変調された符号化ビットは、送信データとして下りリンクで移動端末装置UEに送信される(ステップST806)。
【0055】
基地局装置eNBからの送信データが移動端末装置UEで受信される(ステップST807)。復調部201は、この受信データを復調する(ステップST808)。この場合、受信データは、基地局装置eNBの変調部107で使用された変調方式に対応する復調方式によって復調される。復調された符号化ビットに対し、デインターリーバ202は、デインターリービング処理を行う(ステップST809)。
【0056】
デインターリーブされた符号化ビットは、合成部203に出力される。ここで、基地局装置eNBからの送信データは、初回送信されたものであるため、バッファメモリ(ソフトバッファ)205に同一パケットに対する符号化ビットは格納されていない。チャネル復号化部206は、合成部203からの符号化ビットを所定の復号化方式で復号化することによって復元する(ステップST810)。この場合、符号化ビットは、基地局装置eNBのチャネル符号化部102の符号化方式に対応するターボ復号方式でチャネル復号化される。これにより、送信データに含まれる情報ビットが復元される。
【0057】
CRC検査部207においては、復元された情報ビットからパケット単位でCRCビットが抽出される。そして、抽出されたCRCビットを利用してパケットが誤りを有するか否かが判断される(CRC検査:ステップST811)。CRC検査部207によって、誤りを有しないと判断されたパケット内の情報ビットは上位レイヤに出力される。
【0058】
ST810のチャネル復号化処理と並行して、合成部203から符号化ビットが廃棄処理部204に出力される。廃棄処理部204は、この符号化ビットの一部を廃棄する(ステップST812)。この場合、ソフトバッファサイズがレートマッチング後の符号化ビット長Eより小さいことから、ソフトバッファサイズを上回る分の符号化ビットの一部(パリティビット)が廃棄される。そして、一部が廃棄された符号化ビットがバッファメモリ(ソフトバッファ)205に格納される(ステップST813)。
【0059】
このように本実施の形態に係る通信制御方法によれば、送信データを構成する符号化ビットの一部が、基地局装置eNBで廃棄されることが防止される。このため、移動端末装置UEにおいては、これらのパリティビットを含む受信データ(符号化ビット)に基づいて伝送特性を改善することができる。この結果、移動端末装置UEにおいて、ソフトバッファが十分に確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制できる。
【0060】
図8に示すシーケンスに従って初回送信が行われる場合において、受信データに誤りが生じた場合、移動端末装置UEから基地局装置eNBに対して、NACK応答信号を送信することで、送信データを再送が要求される。一方、バッファメモリ205に格納された符号化ビットは維持される。
【0061】
再送要求を受けると、基地局装置eNBは、バッファメモリ106から対応する送信データを再送する。再送データは、初期送信された送信データと同様に、復調処理及びデインターリーブ処理を経て合成部203に出力される。合成部203は、この再送データに対する符号化ビットと、バッファメモリ(ソフトバッファ)205に格納された受信データに対する符号化ビットとを合成する。そして、その合成後の符号化ビットは、チャネル復号化及びCRC検査を経て、情報ビットとして出力される。なお、再送データに誤りが生じた場合には、同様の再送制御が繰り返される。
【0062】
一般に、再送制御を行う際、基地局装置eNBにおいては、前回送信と同一ビット列を再送する方式(例えば、CC(chase Combining)や、前回送信と異なるビット列を再送するIR(Incremental Redundancy))送信方式がある。通常、単一の送信方式を各再送機会で用いる。共通の送信方式を繰り返し用いる場合には、データ伝送特性の改善が見込めない場合がある。
【0063】
このため、本実施の形態に係る通信制御方法は、再送制御を行う場合において、所定回数でパリティビットの送信方式を切り替える。すなわち、CCにて所定回数だけ再送制御を行った場合には、パリティビットの送信方式をIRに切り替えて再送制御を行う。逆に、IRにて所定回数だけ再送制御を行った場合には、パリティビットの送信方式をCCに切り替えて再送制御を行う。
【0064】
このように所定回数でパリティビットの送信方式を切り替えることにより、移動端末装置UEで複数のパリティビットを使用して受信データに対する符号化ビットを合成できる。この結果、同一のパリティビットの送信方式を繰り返し使用する場合に比べて、データ再送時における伝送特性を改善できる。
【0065】
パリティビットの送信方式の切り替えは、制御部108で行われる。すなわち、この場合、制御部108は、切り替え部として機能する。この場合、制御部108は、バッファメモリ106に格納された、チャネル符号化後の符号化ビットに基づいてパリティビットの送信方式を切り替える。具体的には、チャネル符号化後の符号化ビットに含まれるパリティビットのうち、再送データとして選択されるパリティビットを切り替えることで、パリティビットの送信方式を切り替える。
【0066】
図9は、本実施の形態の第1の変形例に係る通信制御方法のデータ伝送時における処理の説明図である。図9においては、図5と同様に、ソフトバッファが移動端末装置UEで十分に確保されない場合の処理を示している。特に、図9においては、移動端末装置UEにおけるソフトバッファのサイズNcbが、レートマッチング後の符号化ビット長Eよりも小さい場合について示している。
【0067】
第1の変形例に係る通信制御方法において、基地局装置eNBは、移動端末装置UEにおけるソフトバッファのサイズNcbに関わらず、レートマッチング処理に先行して、チャネル符号化後の符号化ビットの一定量の廃棄処理を行う。すなわち、複数のコンポーネントキャリアで送受信が可能な移動端末装置に用いる移動通信システムにおいては、上記符号化ビットの一定量は、コンポーネントキャリアの数に関わらず、単一のコンポーネントキャリアのみで送受信が可能な移動端末装置のソフトバッファメモリのサイズで決定される。但し、基地局装置eNBは、廃棄処理後の符号化ビット長が、レートマッチング後の符号化ビット長Eを上回る範囲内で廃棄処理を行う。例えば、基地局装置eNBは、Release8で規定されたLTE(以下、「Rel.8 LTE」という)の仕様に応じて廃棄処理を行う。この場合、チャネル符号化後の符号化ビットには、実際に該当移動端末装置UEに用いられるコンポーネントキャリア数に関わらず、単一のコンポーネントキャリアに対応するソフトバッファサイズNcbに応じて廃棄処理が施される。このようにすることで、Rel.8 LTEの基地局処理を利用できるメリットがある。
【0068】
次に、基地局装置eNBは、一部が廃棄されたチャネル符号化後の符号化ビットに対してレートマッチング処理を施す。そして、基地局装置eNBは、このレートマッチング後の符号化ビット長Eに応じた送信データを移動端末装置UEに送信する。
【0069】
移動端末装置UEは、この送信データEを受信して復号する。この場合、基地局装置eNBにおいて、ソフトバッファのサイズNcbとは無関係に廃棄処理が行われ、且つ、廃棄処理後の符号化ビット長が、レートマッチング後の符号化ビット長Eを上回る範囲内で廃棄処理が行われている。このため、受信データを構成する符号化ビットには、情報ビットの一部の複製が含まれず、ソフトバッファが十分に確保される場合と同等のパリティビットが含まれる。このような受信データを移動端末装置UEで復号することにより、初回の送信データにおいては、ソフトバッファが十分に確保される場合と同等の伝送特性を得ることができる。このため、移動端末装置UEにおいて、ソフトバッファが十分に確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制できる。
【0070】
受信データに誤りが生じた場合においては、移動端末装置UEは、ソフトバッファサイズNcbに応じて受信データの一部を廃棄してソフトバッファに格納する(Discarding処理)。これにより、ソフトバッファが十分に確保されない場合においても、基地局装置eNBで廃棄処理を行う場合と同様に、受信データの一部をソフトバッファに適切に格納できる。移動端末装置UEからの再送要求に応じて基地局装置eNBから再送データが送信された場合、移動端末装置UEは、再送データと、ソフトバッファに格納された受信データとを合成する。
【0071】
図10は、第1の変形例に係る通信制御方法が適用される基地局装置eNBの構成を示すブロック図である。なお、図10に示す基地局装置eNBは、図6に示す上記実施の形態に係る基地局装置eNBと同様に、LTEシステム又はLTE−Aシステムで利用される基地局装置eNBが通常に備える構成については備えているものとする。なお、第1の変形例に係る通信制御方法に適用される移動端末装置UEについては、上記実施の形態に係る移動端末装置UE(図7)と共通するため、その説明を省略する。
【0072】
図10に示す基地局装置eNBにおいては、廃棄処理部104Aを備える点で、上記実施の形態に係る基地局装置eNBと相違する。なお、図10に示す基地局装置eNBにおいて、上記実施の形態に係る基地局装置eNB(図6)と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
廃棄処理部104Aは、移動端末装置UEが第1の変形例に係る通信制御方法に対応する場合において、移動端末装置UEのソフトバッファが十分に確保されない場合にチャネル符号化後の符号化ビットを一定量だけ廃棄する点で、上記実施の形態に係る廃棄処理部104と相違する。廃棄処理部104Aは、廃棄処理後の符号化ビット長が、レートマッチング後の符号化ビット長Eを上回る範囲内で廃棄処理を行う。
【0074】
具体的には、廃棄処理部104Aは、Release8で規定されたLTE(以下、「Rel.8 LTE」という)の仕様に応じて廃棄処理を行う。この場合、廃棄処理部104Aは、チャネル符号化後の符号化ビットに対し、単一のコンポーネントキャリアに対応するソフトバッファサイズに応じて廃棄処理を施す。単一のコンポーネントキャリアに対応するソフトバッファサイズに応じて廃棄処理を施す場合、廃棄処理後の符号化ビット長が、レートマッチング後の符号化ビット長Eより小さくなることはない。
【0075】
仮に、通信に複数のコンポーネントキャリアが利用される場合、移動端末装置UEのソフトバッファサイズは、コンポーネントキャリア数に応じて縮小される。これに伴い、ソフトバッファサイズが、レートマッチング後の符号化ビット長Eより小さくなる事態が想定される。廃棄処理部104Aは、通信に複数のコンポーネントキャリアが利用される場合においても、単一のコンポーネントキャリアに対応するソフトバッファサイズに応じて廃棄処理を行う。これにより、廃棄処理後の符号化ビット長が、レートマッチング後の符号化ビット長Eより小さくなるのを確実に防止できる。この場合、移動端末装置UEで受信されるデータ(受信データ)を構成する符号化ビットには、情報ビットの一部の複製が含まれず、ソフトバッファが十分に確保される場合と同等のパリティビットが含まれる。このような受信データを移動端末装置UEで復号することにより、初回の送信データにおいては、ソフトバッファが十分に確保される場合と同等の伝送特性を得ることができる。このため、移動端末装置UEにおいて、ソフトバッファが十分に確保されない場合においても、データ伝送時における伝送特性の劣化を抑制できる。また、Rel.8 LTEシステムの仕様を利用できることから、新たな制御を規定する必要がない。
【0076】
なお、廃棄処理部104Aは、上記実施の形態に係る廃棄処理部103と同様に、例えば、移動端末装置UEがRel.8 LTEシステムのみに対応する場合において、移動端末装置UEのソフトバッファが十分に確保されない場合にチャネル符号化後の符号化ビットの一部を廃棄する機能を備える(図3及び図4参照)。この場合、廃棄処理部104Aによる廃棄処理の切り替えは、制御部108からの指示に応じて行われる。すなわち、制御部108から与えられる移動端末装置UEの能力情報(ソフトバッファサイズを含む)に応じて廃棄処理が切り替えられる。
【0077】
上述した本実施の形態に係る通信制御方法、並びに、第1の変形例に係る通信制御方法においては、移動端末装置UEのバッファメモリ205に設定されたソフトバッファを活用することを前提としている。しかしながら、ソフトバッファが設定されたバッファメモリ205を有効に活用する観点から更に変形することが可能である。以下、ソフトバッファが設定されるバッファメモリ205を有効に活用する第2の変形例について説明する。
【0078】
上述したように、移動端末装置UEにおけるソフトバッファサイズは、基地局装置eNBとの間で行われるHARQプロセス数(最大8プロセス)などに応じて分割される。図11は、HARQプロセス数が8個の場合にバッファメモリ205に設定されるソフトバッファの説明図である。この場合、バッファメモリ205は、図11に示すように、各HARQプロセス(HARQプロセス1〜HARQプロセス8)に応じて8個のソフトバッファSB1〜SB8に分割される。なお、HARQプロセス数に応じたソフトバッファサイズは、パーシステントリソースが割り当てられた移動端末装置UEに対して、呼設定プロセスを通じてシグナリングされる。
【0079】
しかしながら、このようにバッファメモリ205が分割された場合においても、実際の再送制御で全てのソフトバッファSB1〜SB8が利用されるとは限らない。再送制御は、無線チャネルの状態に大きく依存するものであり、必要となるソフトバッファ数は変動し得るからである。このため、図11に示すようにバッファメモリ205が分割された場合においても、実際の再送制御では、その一部のみのソフトバッファが利用される場合が少なくない(図12A参照)。例えば、ソフトバッファは、再送時のパケット合成に必要であるため、誤りが発生したHARQプロセスのみをソフトバッファに格納することで利用するバッファの量を低減することが可能である。
【0080】
本実施の形態の第2の変形例に係る通信制御方法においては、移動端末装置UEにおいて、バッファメモリ205に設定された複数のソフトバッファの使用状況を監視し、その使用状況に応じて受信データの一部を格納するメモリ領域(具体的には、ソフトバッファ)を変える。例えば、第2の変形例に係る通信制御方法においては、バッファメモリ205に設定された複数のソフトバッファのうち、再送制御に利用されていないソフトバッファを含む複数のソフトバッファに受信データの一部を格納する。これにより、分割された単一のソフトバッファに限定されず、複数のソフトバッファを有効に利用できるので、データ伝送の伝送特性を改善できる。
【0081】
図12は、第2の変形例に係る通信制御方法により受信データを処理する場合の一例の説明図である。図12Aにおいては、バッファメモリ205に設定された8個のソフトバッファSB1〜SB8のうち、一部(4個)のソフトバッファSB1〜SB4が実際の再送制御で利用される場合について示している。すなわち、残りのソフトバッファSB5〜SB8については、利用されておらず、再送制御での利用を待機している状態である。
【0082】
第2の変形例に係る通信制御方法においては、図12Aに示すように、実際の再送制御に利用されていないソフトバッファSB5〜SB8を用いて受信データを処理する。例えば、図12Bに示すように、HARQプロセス8用のソフトバッファSB8を、一時的にHARQプロセス1用のソフトバッファに用いる。この場合には、本来のHARQプロセス1用のソフトバッファSB1に受信データの一部が格納できない場合であっても、その一部をHARQプロセス8用のソフトバッファSB8に格納できる。この結果、基地局装置eNBからの受信データを柔軟に処理することが可能となる。
【0083】
図13は、第2の変形例に係る通信制御方法により受信データを処理する場合の他例の説明図である。第2の変形例に係る通信制御方法においては、図13に示すように、バッファメモリ205に設定された8個のソフトバッファSB1〜SB8を、複数のコンポーネントキャリア(図13においては、2つのコンポーネントキャリア)間で共有して管理する。また、各ソフトバッファSB1〜SB8には、それぞれのコンポーネントキャリアにおいて誤りが発生したHARQプロセスのみが割り当てられる。
【0084】
例えば、第1のコンポーネントキャリア(CC1)にてHARQプロセス1、3、5〜7に誤りが発生し、第2のコンポーネントキャリア(CC2)にてHARQプロセス1〜3に誤りが発生した場合には、図13Aに示すように、誤りが発生したHARQプロセスをソフトバッファSB1〜SB8に割り当てる。再送でACKとなったプロセスのバッファは空にして、他の誤りが発生したプロセスに割り当てられるようにする。その後、第1のコンポーネントキャリア(CC1)にてHARQプロセス1に誤りが発生し、第2のコンポーネントキャリア(CC2)にてHARQプロセス1〜7に誤りが発生した状況に移行した場合には、図13Bに示すように、誤りが発生したHARQプロセスをソフトバッファSB1〜SB8に割り当てる。なお、通信に利用される複数のコンポーネントキャリアにおいて、誤りが発生したHARQプロセスが8個を上回った場合には、そのパケットをバッファメモリ205に格納せずに廃棄する。このように複数のコンポーネントキャリア間でソフトバッファを共有して管理することにより、有限のソフトメモリの効率的に利用でき、データ伝送の伝送特性を改善できる。
【0085】
図14は、第2の変形例に係る通信制御方法が適用される移動端末装置UEの構成を示すブロック図である。なお、図14に示す移動端末装置UEは、図7に示す上記実施の形態に係る移動端末装置UEと同様に、LTEシステム又はLTE−Aシステムで利用される移動端末装置UEが通常に備える構成については備えているものとする。なお、第2の変形例に係る通信制御方法に適用される基地局装置eNBについては、上記実施の形態又は第1の変形例に係る基地局装置eNB(図6、図10)と共通するため、その説明を省略する。
【0086】
図14に示す移動端末装置UEにおいては、制御部208Aを備える点で、上記実施の形態に係る移動端末装置UEと相違する。なお、図14に示す移動端末装置UEにおいて、上記実施の形態に係る移動端末装置UE(図7)と共通する構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0087】
制御部208Aは、上記実施の形態に係る移動端末装置UEの制御部208の機能に加え、第2の変形例に係る通信制御方法に必要となるバッファメモリ205の管理機能(以下、「メモリ管理機能」という)を備える。ここで、メモリ管理機能には、バッファメモリ205に設定された複数のソフトバッファのうち、再送制御に用いられるソフトバッファと、再送制御に用いられないソフトバッファとを管理する第1の機能が含まれる。また、メモリ管理機能には、再送制御に利用されていないHARQプロセス用のソフトバッファを、他のHARQプロセス用のソフトバッファに割り当てる第2の機能が含まれる。さらに、メモリ管理機能には、第2の機能で他のHARQプロセス用のソフトバッファに割り当てたHARQプロセス用のソフトバッファを、本来のHARQプロセス用のソフトバッファに復帰させる第3の機能が含まれる。さらに、メモリ管理機能には、第2の機能により再送制御に利用されていないHARQプロセス用のソフトバッファを、他のHARQプロセス用のソフトバッファに割り当てた場合に、廃棄処理部204の動作(廃棄処理)を制御する第4の機能が含まれる。
【0088】
第2の変形例に係る通信制御方法によれば、移動端末装置UEにおいて、バッファメモリ205に設定された複数のソフトバッファのうち、再送制御に利用されていないソフトバッファを含む複数のソフトバッファを用いて受信データを処理する。これにより、分割された単一のソフトバッファに限定されず、複数のソフトバッファを有効に利用できるので、基地局装置eNBからの受信データを柔軟に処理することができ、データ伝送の伝送特性を改善できる。特に、バッファメモリ205に設定された複数のソフトバッファを、複数のコンポーネントキャリアで共有する場合には、ソフトバッファを効率的に利用でき、データ伝送の伝送特性を更に改善できる。
【0089】
なお、第2の変形例に係る通信制御方法においては、上記実施の形態又は第1の変形例に係る通信制御方法と以下のように組み合わせることができる。例えば、実際に再送制御に利用されていないソフトバッファが存在する場合には、第2の変形例に係る通信制御方法によって複数のソフトバッファを用いて受信データを処理する一方、実際に再送制御に利用されていないソフトバッファが存在しない場合には、上記実施の形態又は第1の変形例に係る通信制御方法によって単一のソフトバッファを用いて移動端末装置UE側で廃棄処理を行う。このように組み合わせることにより、バッファメモリ205を有効に活用しながら、データ伝送特性を改善できる。
【0090】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0091】
eNB 基地局装置
UE 移動端末装置
SB1〜SB8 ソフトバッファ
101 CRC付加部
102 チャネル符号化部
103 インターリーバ
104、104A 廃棄処理部
105 レートマッチング部
106 バッファメモリ
107 変調部
108 制御部
201 復調部
202 デインターリーバ
203 合成部
204 廃棄処理部
205 バッファメモリ
206 チャネル復号化部
207 CRC検査部
208、208A 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置において情報ビットをチャネル符号化するステップと、チャネル符号化後の符号化ビットに対してレートマッチング処理を行うステップと、レートマッチング後の符号化ビット長に応じた送信データを移動端末装置に送信するステップと、前記移動端末装置において前記送信データを受信するステップと、受信データをチャネル復号化するステップと、前記受信データの一部を前記移動端末装置のソフトバッファメモリのサイズに応じて廃棄して当該ソフトバッファメモリに格納するステップと、を具備することを特徴とする通信制御方法。
【請求項2】
前記基地局装置において、前記チャネル符号化後の符号化ビットを前記ソフトバッファメモリのサイズに応じて廃棄することなくレートマッチング処理を行うことを特徴とする請求項1記載の通信制御方法。
【請求項3】
前記基地局装置において、前記チャネル符号化後の符号化ビットの一定量を廃棄した後に前記レートマッチング処理を行うことを特徴とする請求項1記載の通信制御方法。
【請求項4】
複数のコンポーネントキャリアで送受信が可能な移動端末装置に用いる移動通信システムにおいて、前記符号化ビットの一定量は、コンポーネントキャリアの数に関わらず、単一のコンポーネントキャリアのみで送受信が可能な移動端末装置のソフトバッファメモリのサイズで決定されることを特徴とする請求項3記載の通信制御方法。
【請求項5】
前記基地局装置が前記移動端末装置から前記受信データの再送要求を受けたときに、前記送信データを再送するステップを具備し、前記送信データの再送回数に応じて、パリティビットの送信方式であるChase Combiningと、Incremental Redundancyとを切り替えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の通信制御方法。
【請求項6】
情報ビットをチャネル符号化するチャネル符号化部、チャネル符号化後の符号化ビットに対してレートマッチング処理を行うレートマッチング部、及びレートマッチング後の符号化ビット長に応じた送信データを移動端末装置に送信する送信部を有する基地局装置と、
前記送信データを受信する受信部、受信データをチャネル復号化するチャネル復号化部、及び前記受信データの一部を前記移動端末装置のソフトバッファメモリサイズに応じて廃棄する廃棄処理部を有する移動端末装置と、を具備することを特徴とする移動通信システム。
【請求項7】
前記基地局装置は、前記レートマッチング処理に先行して、前記チャネル符号化後の符号化ビットの一定量を廃棄する廃棄処理部を具備することを特徴とする請求項6記載の移動通信システム。
【請求項8】
複数のコンポーネントキャリアで送受信が可能な移動端末装置に用いる移動通信システムにおいて、前記符号化ビットの一定量は、コンポーネントキャリアの数に関わらず、単一のコンポーネントキャリアのみで送受信が可能な移動端末装置のソフトバッファメモリのサイズで決定されることを特徴とする請求項7記載の移動通信システム。
【請求項9】
前記基地局装置が前記移動端末装置から前記受信データの再送要求を受けたときに、前記送信データの再送回数に応じて、パリティビットの送信方式であるChase Combiningと、Incremental Redundancyとを切り替える切り替え部を具備することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の移動通信システム。
【請求項10】
基地局装置からの送信データを受信する受信部と、受信データをチャネル復号化するチャネル復号化部と、前記受信データの一部又は全部を移動端末装置の使用可能なソフトバッファメモリサイズに応じて廃棄する廃棄処理部と、を具備することを特徴とする移動端末装置。
【請求項11】
前記ソフトバッファメモリの使用状況を監視し、前記使用状況に応じて前記受信データの一部又は全部を格納する領域を変える制御部をさらに具備することを特徴とする請求項10記載の移動端末装置。
【請求項12】
前記制御部は、複数のコンポーネントキャリアで前記基地局装置からの送信データを受信する場合に前記複数のコンポーネントキャリア間で前記ソフトバッファメモリを共有することを特徴とする請求項11記載の移動端末装置。
【請求項13】
前記制御部は、第1のコンポーネントキャリアにて誤りが発生したHARQプロセスに対応する受信データと、第2のコンポーネントキャリアにて誤りが発生したHARQプロセスに対応する受信データとを前記ソフトバッファメモリに割り当てることを特徴とする請求項12記載の移動端末装置。
【請求項14】
前記制御部は、前記受信データの一部を格納する領域に応じて前記廃棄処理部の動作を制御することを特徴とする請求項11記載の移動端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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