説明

通信制御装置、通信制御装置の制御方法、制御プログラム、および制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体

【課題】QoSを確保する対象でないデータフローの優先度を下げて該データフローを伝送する。
【解決手段】HGW101aは、アクセスネットワーク702からホームネットワーク501に送信されるデータフローの通信パケットから、送信元の通信アドレスおよび送信先の通信アドレスを抽出するパケット振り分け処理部141と、該抽出した送信元の通信アドレスと送信先の通信アドレスとの組が、キュー割り当て情報記憶部23に記憶されていない場合、上記データフローを、優先度を下げてホームネットワーク501へ伝送するパケット送出処理部142とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデータフローを同時に伝送する通信ネットワークにおいて、当該データフローのQoS(Quality of Service)制御を行なう通信制御装置、通信制御装置の制御方法、制御プログラム、および制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット上に設置されたコンテンツサーバなどのコンテンツ提供装置にて提供される、映像や音声など、リアルタイムで伝送する必要のあるデータフロー(以下、リアルタイムデータフロー)を、ユーザ宅内のSTB(セットトップボックス)、テレビ、VoIP(Voice over Internet Protocol)受信機などの受信装置にて受信することができるサービスが提供されている。これらのサービスでは、一般的に、受信装置にてデータをダウンロードしながら再生を行なうストリーミング伝送が利用される。映像データは一般的にサイズが大きいので、受信装置にてダウンロードが完了してから再生を開始する場合、ユーザが映像の受信を指示してから映像が視聴可能となるまでに要する時間が長くなり、利便性を損なうこととなる。したがって、視聴可能となるまでの待ち時間を短くし、利便性を高めるために、ストリーミング伝送が必要となる。また、音声通話においては、会話を成り立たせるために、ユーザが発話している音声を遅延無く相手側のユーザに伝送する必要があるため、ストリーミング伝送が必要となる。
【0003】
ところで、コンテンツ提供装置から伝送されるデータフローは、IP(Internet Protocol)網やNGN(Next Generation Network)などの、サービスプロバイダの基地局とユーザ宅との間に設けられるアクセスネットワークを介して、一旦、HGW(Home Gateway)などのルータで受信された後、さらに、ユーザ宅内に構築されたLAN(Local Area Network)(以下、ホームネットワーク)を介して、STBやテレビなどに伝送される。
【0004】
ホームネットワークには、STBやテレビなどの受信装置の他に、PC(Personal Computer)などの端末が接続していることが多い。PCでは、リアルタイムデータフローだけではなく、インターネット上のWebコンテンツの閲覧、電子メールの送受信、FTP(File Transfer Protocol)によるデータ転送などのように、リアルタイムで伝送する必要のないデータフロー(以下、非リアルタイムデータフロー)を、インターネット上に設置されたサーバ装置から受信することができる。この場合においても、サーバ装置から伝送されるデータフローは、アクセスネットワーク、HGW、およびホームネットワークを介して、PCに伝送される。
【0005】
なお、データフローとは、連続して伝送する必要のある一連のデータを指す。連続して伝送する必要のある一連のデータとは、例えば、1つの映像コンテンツ、または、1つの音声コンテンツなど、意味のあるひとまとまりのデータである。したがって、1つのデータフローには複数のパケットが属する。また、パケットとは、データを所定形式のフレームに組み立て、該フレームに対し、送信先のアドレスなどの各種情報を付加したものである。各装置間のデータの送受信は、パケットの送受信によりデータを運ぶパケット通信にて行われるのが一般的である。
【0006】
(QoS技術)
ところで、非リアルタイムデータフローの伝送では、ある程度の伝送遅延やジッタ(伝送遅延のゆらぎ)が発生しても、受信装置でのデータの再生に大きく影響しない。例えば、FTPによるデータのダウンロード中に伝送遅延やジッタが発生しても、ダウンロードが完了するまでの時間は遅くなるものの、ダウンロードしたデータを使用するときには、伝送遅延やジッタの影響はない。
【0007】
これに対して、リアルタイムデータフローをストリーミング伝送する場合においては、伝送遅延やジッタは、受信装置での映像や音声の再生の乱れにつながるため、所定の範囲に抑える必要がある。つまり、受信装置が、コンテンツ提供装置から、リアルタイムデータフローを、高速かつ高品質で受信するためには、当該リアルタイムデータフローが伝送される各ネットワークにおいて、当該リアルタイムデータフローのパケットの伝送品質が適切に確保されていなければならない。
【0008】
このように、伝送されるデータの種類に従って、適切な品質を確保しながら、複数のデータを同時かつ効率的に伝送する技術を、QoS(Quality of Service)技術と称する。QoS技術は、優先制御型QoS(Prioritized QoS)とパラメータ保証型QoS(Parameterized QoS)とに大きく分類される。優先制御型QoSおよびパラメータ保証型QoSなどの仕組みを基本的な技術として用いることにより、通信ネットワーク全体におけるアクセス競合を避けることができ、QoSを実現することができる。
【0009】
(優先制御型QoS)
優先制御型QoSでは、データを送信する通信装置が、データの種類およびデータを送受信する通信装置の特性などに応じた優先度を、送信データのパケットに付与する。そして、パケットに付与された優先度に基づいて、送信データを制御することにより、QoSを実現している。なお、優先度のパケットへの付与方法としては、パケットのヘッダ部分に、優先度を示す値を格納するためのフィールド(以下、優先度フィールド)を予め設けておき、パケット毎に優先度フィールドの値を設定する方法が一般的である。
【0010】
例えば、リアルタイムデータは非リアルタイムデータに比べて、より高い伝送品質が求められるので、リアルタイムデータのパケットには、非リアルタイムデータのパケットよりも高い優先度の値を、優先度フィールドに設定しておくのが一般的である。そして、送信装置または通信ネットワーク上の中継装置が、各パケットの優先度フィールドの値に基づいて、パケットの送信タイミングを決定することにより、QoSを実現する。
【0011】
(アクセスネットワークにおけるデータフローの伝送)
次に、リアルタイムデータフローのパケットの伝送品質が適切に確保されない例について説明する。ここでは、ホームネットワーク上のSTBやテレビなどの受信装置にてリアルタイムデータフローを受信すると同時に、当該ホームネットワーク上のPCなどの端末にて非リアルタイムデータフローを受信するというユースケースを想定する。
【0012】
リアルタイムデータフローは、通常、ほぼ一定の伝送レート(伝送帯域)で伝送される。これに対して、非リアルタイムデータフローは、通信ネットワークの回線容量(回線速度、伝送帯域幅)を可能な限り使用して伝送されることが多い。言い換えれば、通信ネットワークの伝送帯域にできるだけ空きが生じないように伝送されることが多い。ただし、伝送経路上で最も回線容量の少ない(伝送帯域幅の狭い)通信ネットワークの回線容量の上限を超えて伝送されることはない。なお、非リアルタイムデータフローの具体的な伝送方法については、受信装置や送信装置の実装に依存するため、その詳細については説明を省略する。
【0013】
したがって、上記想定したユースケースのように、リアルタイムデータフローと非リアルタイムデータフローとが、同一の通信ネットワーク上にて同時期に伝送される場合、リアルタイムデータフローが使用する伝送帯域以外の伝送帯域は、非リアルタイムデータフローによって占有されることとなり、通常、通信ネットワークの伝送帯域には空きが無い状態となる。
【0014】
この状態において、リアルタイムデータフローの伝送レートが瞬間的に(一時的に)高くなると、リアルタイムデータフローの伝送レートと非リアルタイムデータフローの伝送レートとの合計が、通信ネットワークの回線容量を上回ることとなる。この結果、リアルタイムデータの伝送遅延やジッタが発生し、受信装置において映像や音声の再生の乱れが生じるという問題が発生する。特に、アクセスネットワークでは、その上流であるインターネット、および、その下流であるホームネットワークと比べると、一般的に回線容量が少ないため、上記問題が発生する可能性が高い。
【0015】
図15(a)を参照しながら、アクセスネットワーク上で複数のデータフローを伝送するときに、伝送帯域が不足する様子について説明する。図15(a)は、アクセスネットワーク上で2種類のデータフローを伝送するときの、各データフローが使用する伝送帯域の時間的推移の一例を示す図である。なお、ここでは、アクセスネットワークの回線容量は、70Mbps(ビット/秒)であるものとする。また、以下では、映像コンテンツのデータフローおよびFTPのデータフローを、それぞれ「映像データフロー」および「FTPデータフロー」とも称する。
【0016】
まず、時刻T51では、リアルタイムデータフローである映像データフロー、および、非リアルタイムデータフローであるFTPデータフローが伝送されているものとする。この時点では、映像データフローが10Mbpsの伝送帯域を使用し、また、FTPデータフローが60Mbpsの伝送帯域を使用するものと仮定する。この場合、時刻T51では、映像データフローおよびFTPデータフローが使用する伝送帯域の合計は、アクセスネットワークの回線容量と同じであり、いずれのデータフローの伝送帯域も不足していない。したがって、伝送遅延やジッタは発生しないので、各データフローを受信する受信装置では受信データが欠損せず、データの再生が乱れることはない。
【0017】
次に、時刻T52では、図示のように、映像データフローの伝送レートが一時的に増加し、また、FTPデータフローの伝送レートが一時的に減少したと仮定する。しかしながら、時刻T52においても、映像データフローおよびFTPデータフローが使用する伝送帯域の合計は、アクセスネットワークの回線容量と同じであるので、いずれのデータフローの伝送帯域も不足しない。
【0018】
次に、時刻T53では、図示のように、映像データフローの伝送レートが時刻T52での伝送レートのままであるが、FTPデータフローの伝送レートが時刻T52での伝送レートに戻ったと仮定する。この場合、映像データフローおよびFTPデータフローが使用する伝送帯域の合計は、アクセスネットワークの回線容量よりも大きくなる。つまり、伝送帯域が不足するため、例えば、映像データフローに伝送遅延やジッタが発生する。その結果、映像データフローの受信装置において映像や音声の再生の乱れが発生することとなる。
【0019】
なお、図15(a)を用いて説明した、アクセスネットワーク上で伝送した2種類のデータフローを、アクセスネットワークよりも回線容量が大きい通信ネットワーク上で伝送する際は、伝送遅延等の問題は生じない。図15(b)を参照しながら、図15(a)を用いて説明した、アクセスネットワーク上で伝送した2種類のデータフローを、アクセスネットワークよりも回線容量が大きい通信ネットワーク上で伝送する様子について説明する。
【0020】
図示のように、どの時刻においても、映像データフローおよびFTPデータフローが使用する伝送帯域の合計は、この通信ネットワークの回線容量よりも十分小さくなり、この通信ネットワークの伝送帯域には空きがある状態である。映像データフローおよびFTPデータフローが使用する伝送帯域の合計が、アクセスネットワークの回線容量である70Mbpsを超えることはないからである。
【0021】
このように、アクセスネットワークよりも回線容量が大きい通信ネットワークでは、伝送遅延等の問題は生じない。したがって、インターネットおよびホームネットワークは、通常、アクセスネットワークよりも回線容量が大きいので、映像データフローおよびFTPデータフローの伝送レートが多少増減しても、伝送遅延等の問題は生じない。
【0022】
(先行技術)
受信装置における映像や音声の再生の再生品質の向上を図る技術として、サービスサイトであるコンテンツサーバが、端末装置の通信速度に応じて決定したコンテンツの送信速度(圧縮率)で、コンテンツを端末装置に送信する技術が、特許文献1に開示されている。特許文献1では、次の手順によりコンテンツを端末装置に送信する。すなわち、(1)端末装置が、通信回線を識別可能な端末データを、通信速度サーバに送信すると、通信速度サーバが端末データに基づいて端末装置の通信速度を識別する。(2)そして、通信速度サーバは、当該識別した通信速度を端末装置に送信し、端末装置は当該通信速度をコンテンツサーバに送信する。(3)そして、コンテンツサーバは、上記通信速度に基づいて、上記端末装置に対するコンテンツの送信速度を決定し、当該決定した送信速度で、コンテンツを端末装置に送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2005−130134号公報(公開日:平成17年5月19日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
特許文献1に開示されている技術では、サービスサイトであるコンテンツサーバは、コンテンツの送信速度(圧縮率)を変更する機能を具備する必要がある。したがって、上記機能を具備していないサービスサイトでは、特許文献1に開示されている技術を適用することができない。全てのサービスサイトに上記機能を具備させることは実質的に不可能であるため、特許文献1に開示されている技術を用いて、受信装置がアクセスする全てのサービスサイトから送信されるコンテンツの再生品質を向上させることはできないという問題がある。
【0025】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、QoSを確保する対象でないデータフローの優先度を下げて該データフローを伝送する通信制御装置、通信制御装置の制御方法、制御プログラム、および制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決するために、本発明に係る通信制御装置は、データ受信装置が接続する第1通信ネットワークと、データ送信装置が接続する第2通信ネットワークとに接続され、上記データ送信装置が上記データ受信装置に送信する、複数の通信パケットから構成されるデータフローの、上記第1通信ネットワークへの伝送を制御する通信制御装置であって、上記データフローを構成する各通信パケットは、該通信パケットの送信元となる上記データ送信装置の通信アドレス、および、該通信パケットの送信先となる上記データ受信装置の通信アドレスを含んでおり、上記データ送信装置の通信アドレスと上記データ受信装置の通信アドレスとを対応付けて予め記憶する第1記憶部と、上記データフローを構成する上記通信パケットから、上記送信元の通信アドレスおよび上記送信先の通信アドレスを抽出する送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段と、上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した、上記送信元の通信アドレスと上記送信先の通信アドレスとの組が、上記第1記憶部に記憶されていないとき、上記データ送信装置が上記データ受信装置へ送信する上記データフローを、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送するデータフロー伝送制御手段とを備えることを特徴としている。
【0027】
また、本発明に係る通信制御装置の制御方法は、データ受信装置が接続する第1通信ネットワークと、データ送信装置が接続する第2通信ネットワークとに接続され、上記データ送信装置の通信アドレスと上記データ受信装置の通信アドレスとを対応付けて予め記憶する第1記憶部を備え、上記データ送信装置が上記データ受信装置に送信する、複数の通信パケットから構成されるデータフローの、上記第1通信ネットワークへの伝送を制御する通信制御装置の制御方法であって、上記データフローを構成する各通信パケットは、該通信パケットの送信元となる上記データ送信装置の通信アドレス、および、該通信パケットの送信先となる上記データ受信装置の通信アドレスを含んでおり、上記データフローを構成する上記通信パケットから、上記送信元の通信アドレスおよび上記送信先の通信アドレスを抽出する送信元アドレス/送信先アドレス抽出ステップと、上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出ステップにて抽出した、上記送信元の通信アドレスと上記送信先の通信アドレスとの組が、上記第1記憶部に記憶されていないとき、上記データ送信装置が上記データ受信装置へ送信する上記データフローを、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送するデータフロー伝送制御ステップとを含むことを特徴としている。
【0028】
上記の構成によれば、データ送信装置がデータ受信装置に送信するデータフローを構成する通信パケットから、送信元の通信アドレスおよび送信先の通信アドレスを抽出することができる。そして、該抽出した送信元の通信アドレスと送信先の通信アドレスとの組が、第1記憶部に記憶されていないとき、データ送信装置がデータ受信装置へ送信するデータフローを、優先度を下げて第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0029】
よって、データ送信装置がデータ受信装置に送信するデータフローを第1通信ネットワークへ伝送する際、該データフローを構成する通信パケットの送信元の通信アドレスと送信先の通信アドレスとの組が、第1記憶部に記憶されていないときは、該データフローの優先度を下げて伝送するように制御することができる。逆に言えば、該データフローを構成する通信パケットの送信元の通信アドレスと送信先の通信アドレスとの組が、第1記憶部に記憶されているときは、該データフローを第1通信ネットワークへ伝送する際、該データフローの優先度を下げずに伝送する。その結果、優先度を下げずに伝送するデータフローは、優先度を下げて伝送するデータフローよりも、優先的に第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0030】
ここで、複数のデータ送信装置のそれぞれから送信されるデータフローが同一の通信ネットワーク上で伝送される状況において、それぞれのデータフローを、優先度を制御せずに伝送すると、背景技術の欄にて説明したように、いずれかのデータフローが瞬間的または一時的に伝送レートが増加したとき、伝送遅延やジッタが発生する事態が起こり得る。例えば、FTPデータフローなどの非リアルタイムデータフローは、通常、通信ネットワークの回線容量を最大限に使用する伝送レート(伝送帯域)で伝送され、一方、映像データフローなどのリアルタイムデータフローは、通常、ほぼ一定の伝送レート(伝送帯域)で伝送される。したがって、映像配信サーバから送信される映像データフロー、および、FTPサーバから送信されるFTPデータフローが同一の通信ネットワーク上で伝送される状況において、映像データフローの伝送レートが瞬間的または一時的に増加した場合、FTPデータフローの伝送レートと映像データフローの伝送レートとの合計が、通信ネットワークの回線容量を超える場合があり、その場合、映像データフローの伝送遅延やジッタが発生する可能性がある。
【0031】
しかしながら、本発明によれば、優先的に伝送する必要のない(QoSを確保する対象でない)データフローの優先度を下げ、優先的に伝送する必要がある(QoSを確保する対象である)データフローの優先度を下げないので、この結果、優先的に伝送する必要がある(QoSを確保する対象である)データフローを優先的に伝送することができる。つまり、例えば、FTPサーバから送信されるFTPデータフローの優先度を下げ、映像配信サーバから送信される映像データフローの優先度を下げないので、結果的に、映像配信サーバから送信される映像データフローを優先的に伝送することができる。
【0032】
したがって、本発明によれば、複数のデータフローを同時に伝送する通信ネットワークにおいて、QoSを確保する対象であるデータフローを、優先的に伝送することができるという効果を奏する。そして、例えば、映像データフローおよびFTPデータフローを同時に伝送する通信ネットワークにおいて、伝送遅延やジッタ等の影響を受けやすい映像データフローをFTPデータフローよりも優先的に伝送することによって、映像データフローの伝送遅延やジッタ等の発生を抑えることができるので、映像データフローを受信するデータ受信装置において映像や音声の再生の乱れの発生を抑えることができるという効果を奏する。つまり、映像データフローなどのリアルタイムデータフローのQoSを確保することができるという効果を奏する。
【0033】
さらに、一般的に知られているウィンドウ制御により、データ送信装置にて通信パケットの送信量を制御することができる通信プロトコルを用いて、データフローが送信される場合、QoSを確保する対象であるデータフローを、より優先的に伝送することができるので、以下で説明する。
【0034】
本発明により優先度を下げて伝送されるデータフローを受信するデータ受信装置では、当該データフローに属するパケットの受信量が、優先度を下げない場合と比べて減少する。これに応じて、データ受信装置にてパケットを受信したことに対するデータ送信装置へのACK(acknowledge)パケットの量が減少する。この結果、データ送信装置では、優先度が下げられたデータフローの送出量を抑える制御が行なわれる。つまり、データ送信装置から当該データフローを第2通信ネットワークに送出する際の伝送レートが低下する。したがって、当該低下した量だけ、第2通信ネットワークの伝送帯域に空きが生じるので、優先度が下げられていない(優先的に伝送する必要がある)データフローが当該空きの伝送帯域を使用することが可能となる。そのため、優先度が下げられていない(優先的に伝送する必要がある)データフローの伝送レートが瞬間的または一時的に増加しても、第2通信ネットワークの回線容量を超えない可能性が高まるので、その結果、優先度が下げられていない映像データフローなどのリアルタイムデータフローのQoSを、より確実に確保することができるという効果を奏する。
【0035】
さらに、本発明に係る通信制御装置は、上記データフロー伝送制御手段は、優先度を下げて伝送する上記データフローを、所定の制限値を超えない伝送レートにて伝送する構成としてもよい。
【0036】
上記の構成によれば、さらに、優先度を下げて第1通信ネットワークへ伝送するデータフローを、所定の制限値を超えない伝送レートにて第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0037】
よって、優先度を下げずに第1通信ネットワークへ伝送するデータフローについては、伝送レートを制限せずに伝送することができる。その結果、優先度を下げずに伝送するデータフローを、上記制限値を超えない伝送レートにて伝送するデータフローよりも、優先的に第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0038】
したがって、複数のデータフローを同時に伝送する通信ネットワークにおいて、QoSを確保する対象であるデータフローを、優先的に伝送することができるという効果を奏する。
【0039】
さらに、本発明に係る通信制御装置は、優先的に送信する対象である上記データフローを伝送するために必要な伝送レートを、上記データフロー毎に予め記憶する第2記憶部と、上記第2通信ネットワークの回線容量を予め記憶する第3記憶部と、優先的に送信する対象である上記データフローの上記通信パケットを一時的に格納する優先パケット保持部と、上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した、上記送信元の通信アドレスと上記送信先の通信アドレスとの組が、上記第1記憶部に記憶されている場合、上記データフローの上記通信パケットを上記優先パケット保持部に格納する通信パケット格納手段と、上記優先パケット保持部に格納されている上記通信パケットから構成される上記データフローのそれぞれの上記伝送レートを上記第2記憶部から取得し、該取得した全ての上記伝送レートの合計値を算出する優先伝送レート算出手段と、上記第3記憶部に記憶されている上記第2通信ネットワークの回線容量から、上記伝送レート算出手段が算出した合計値を減算することによって、上記制限値を算出する送出レート算出手段とをさらに備える構成としてもよい。
【0040】
上記の構成によれば、さらに、送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した、送信元の通信アドレスと送信先の通信アドレスとの組が、第1記憶部に記憶されている場合、データフローの通信パケットを優先パケット保持部に格納することができる。そして、優先パケット保持部に格納されている通信パケットから構成されるデータフローのそれぞれの伝送レートを第2記憶部から取得し、該取得した全ての伝送レートの合計値を算出することができる。そして、第3記憶部に記憶されている第2通信ネットワークの回線容量から、上記算出した合計値を減算することによって、上記制限値を算出することができる。
【0041】
よって、優先的に伝送する対象でないデータフローを、上記制限値を超えない伝送レートにて、上記第1通信ネットワークへ伝送することができる。つまり、優先的に送信する必要があるデータフローについては、必要な伝送帯域を確保した状態で、第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0042】
したがって、優先的に送信する必要があるデータフローのQoSをより確実に確保することができるという効果を奏する。
【0043】
特に、第2通信ネットワークの回線容量が、第1通信ネットワークの回線容量よりも少ない場合、優先度を下げて伝送するデータフローを、上記算出した制限値を超えない伝送レートにて第1通信ネットワークへ伝送するとともに、優先的に送信する必要があるデータフローを、伝送レートを制限せずに第1通信ネットワークへ伝送することによって、第2通信ネットワークおよび第1通信ネットワークのいずれにおいても、各データフローの伝送レートの合計値が第2通信ネットワークの回線容量を上回る可能性が低くなる。そのため、優先的に送信する必要があるデータフローの伝送遅延やジッタ等の発生をより確実に抑えることができるので、例えば映像データフローを受信するデータ受信装置において映像や音声の再生の乱れの発生をより確実に抑えることができるという効果を奏する。
【0044】
さらに、本発明に係る通信制御装置は、上記データ受信装置は、上記データ送信装置の通信アドレスを要求する第1リクエストを送信するとともに、上記第1リクエストに対するレスポンスに含まれる上記データ送信装置の通信アドレスに基づいて、上記データ送信装置に対して、上記データフローを要求する第2リクエストを送信するものであり、上記データ送信装置は、ドメインに属し、上記第2リクエストの応答として上記データフローを上記データ受信装置に送信するものであって、上記第1リクエストは、上記データ送信装置が属するドメインのドメイン名と、上記データ受信装置の通信アドレスを含んでおり、上記第1記憶部は、上記データ受信装置の通信アドレスに対応付けられた上記データ送信装置の通信アドレスに対応付けて、さらに、該データ送信装置のドメイン名を記憶するものであり、上記第2記憶部は、優先的に送信する対象である上記データフローを伝送するために必要な伝送レートを、当該データフローを送信する上記データ送信装置のドメイン名と対応付けて記憶するものであって、上記レスポンスから上記データ送信装置のドメイン名および上記データ受信装置の通信アドレスを抽出するドメイン名/アドレス抽出手段と、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名に対応付けられた、上記データ送信装置の通信アドレスを取得するアドレス取得手段と、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名が、上記第2記憶部に記憶されているとき、上記アドレス取得手段が取得した上記データ送信装置の通信アドレスと、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ受信装置の通信アドレスとを対応付けて、上記第1記憶部に格納する伝送制御情報生成手段とをさらに備え、上記優先伝送レート算出手段は、上記優先パケット保持部に格納されている上記通信パケットの上記送信元の通信アドレスに対応付けられた上記データ送信装置のドメイン名を、上記第1記憶部から取得するとともに、該取得したドメイン名毎に、該取得したドメイン名に対応付けられた上記伝送レートを上記第2記憶部から取得し、該取得した全ての上記伝送レートの合計値を算出する構成としてもよい。
【0045】
上記の構成によれば、さらに、上記レスポンスからデータ送信装置のドメイン名およびデータ受信装置の通信アドレスを抽出することができる。そして、該抽出したデータ送信装置のドメイン名に対応付けられた、データ送信装置の通信アドレスを取得することができる。また、該抽出したデータ送信装置のドメイン名が、第2記憶部に記憶されているとき、上記抽出したデータ受信装置の通信アドレスと、上記取得したデータ送信装置の通信アドレスとを対応付けて、第1記憶部に格納することができる。また、優先パケット保持部に格納されている通信パケットの送信元の通信アドレスに対応付けられたデータ送信装置のドメイン名を、第1記憶部から取得するとともに、該取得したドメイン名毎に、該取得したドメイン名に対応付けられた伝送レートを第2記憶部から取得し、該取得した全ての伝送レートの合計値を算出することができる。
【0046】
よって、第2リクエストの応答としてデータ送信装置から送信されたデータフローを第1通信ネットワークへ伝送する際、該データ送信装置のドメイン名が第2記憶部に記憶されていないときは、該データ送信装置の通信アドレスと、第2リクエストを送信したデータ受信装置の通信アドレスとの組が、第1記憶部に格納されないので、該データフローを、制限値を超えない伝送レートにて伝送することができる。逆に言えば、データ送信装置のドメイン名が第2記憶部に記憶されているとき、該データ送信装置から送信されるデータフローを第1通信ネットワークへ伝送する際、伝送レートを制限せずに伝送することができるので、該データフローは、制限値を超えない伝送レートにて伝送するデータフローよりも、優先的に第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0047】
また、優先パケット保持部に格納されている通信パケットを送信したデータ送信装置のドメイン名に対応付けられた伝送レートに基づいて、上記制限値を算出することができる。
【0048】
したがって、複数のデータフローを同時に伝送する通信ネットワークにおいて、QoSを確保する対象であるデータフローを、該データフローを送信するデータ送信装置のドメイン名に従って優先的に伝送することができるという効果を奏する。
【0049】
さらに、本発明に係る通信制御装置は、上記第2記憶部は、優先的に送信する対象であるデータフローを送信する上記データ送信装置のドメイン名とともに、優先的に送信する対象でないデータフローを送信する上記データ送信装置のドメイン名を記憶し、さらに、該ドメイン名に対応付けて、該ドメイン名を有する上記データ送信装置が送信するデータフローが優先的に送信する必要があるか否かを示す優先要否情報を記憶するものであり、上記第1記憶部は、上記データ受信装置の通信アドレスに対応付けられた上記データ送信装置の通信アドレスに対応付けて、さらに、上記優先要否情報を記憶するものであり、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名に対応付けられた上記優先要否情報を、上記第2記憶部から取得する第1優先要否情報取得手段をさらに備え、上記伝送制御情報生成手段は、上記アドレス取得手段が取得した上記データ送信装置の通信アドレスと、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ受信装置の通信アドレスと、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名と、上記第1優先要否情報取得手段が取得した上記優先要否情報とを対応付けて、上記第1記憶部に格納するものであって、上記データフロー伝送制御手段は、さらに、上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した上記送信元の通信アドレスに対応付けられた上記優先要否情報を、上記第1記憶部から取得する第2優先要否情報取得手段を備え、上記第2優先要否情報取得手段が取得した上記優先要否情報が、上記データフローが優先的に送信する必要がないことを示すものである場合、上記データ送信装置が上記データ受信装置へ送信する上記データフローを、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送する構成としてもよい。
【0050】
上記の構成によれば、さらに、ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名に対応付けられた上記優先要否情報を、上記第2記憶部から取得することができる。また、アドレス取得手段が取得したデータ送信装置の通信アドレスと、ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出したデータ受信装置の通信アドレスと、ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出したデータ送信装置のドメイン名と、第1優先要否情報取得手段が取得した優先要否情報とを対応付けて、第1記憶部に格納することができる。そして、送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した送信元の通信アドレスに対応付けられた優先要否情報を、第1記憶部から取得することができる。そして、第2優先要否情報取得手段が取得した優先要否情報が、データフローが優先的に送信する必要がないことを示すものである場合、データ送信装置がデータ受信装置へ送信するデータフローを、優先度を下げて第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0051】
よって、データ送信装置から送信されたデータフローを第1通信ネットワークへ伝送する際、該データ送信装置のドメイン名と対応付けて第2記憶部に記憶されている優先要否情報が、該データ送信装置が送信するデータフローが優先的に送信する対象でないことを示すものである場合、該データ送信装置から送信されたデータフローの優先度を下げて伝送するように制御することができる。逆に言えば、データ送信装置のドメイン名と対応付けて第2記憶部に記憶されている優先要否情報が、該データ送信装置が送信するデータフローが優先的に送信する必要があることを示すものである場合、該データ送信装置から送信されるデータフローを第1通信ネットワークへ伝送する際、該データフローの優先度を下げずに伝送することとなる。以上の結果、該データフローは、優先度を下げて伝送するデータフローよりも優先的に第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0052】
したがって、本発明によれば、第2記憶部に記憶されているドメイン名に対応づけられた優先要否情報に従って、各ドメイン名を有するデータ送信装置から送信されるデータフローの優先度を下げずに伝送するか、または、優先度を下げて伝送することができるという効果を奏する。
【0053】
さらに、本発明に係る通信制御装置は、上記データ送信装置のドメイン名と上記優先要否情報とを対応付けて入力可能なユーザインタフェースを上記データ受信装置に提示するとともに、上記ユーザインタフェースにて入力された、上記データ送信装置のドメイン名と上記優先要否情報とを対応付けて、上記第2記憶部に格納する優先要否情報設定手段をさらに備える構成としてもよい。
【0054】
上記の構成によれば、データ送信装置のドメイン名と上記優先要否情報とを対応付けて入力可能なユーザインタフェースを上記データ受信装置に提示するとともに、ユーザインタフェースにて入力された、データ送信装置のドメイン名と優先要否情報とを対応付けて、第2記憶部に格納することができる。
【0055】
よって、ユーザが、データ送信装置のドメイン名と優先要否情報とを対応付けて入力することができる。つまり、ユーザが、各データフローについて、優先度を下げずに伝送するか、または、優先度を下げて伝送するかを指定することができる。
【0056】
したがって、ユーザの意思によって、QoSを確保すべきデータフローを設定することができるという効果を奏する。
【0057】
さらに、本発明に係る通信制御装置は、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送する対象である上記データフローは、上記データ送信装置にて上記通信パケットの送信量を制御することができる通信プロトコルを用いて、上記データ送信装置が上記データ受信装置に送信する構成としてもよい。
【0058】
上記の構成によれば、さらに、優先度を下げて第1通信ネットワークへ伝送する対象であるデータフローは、データ送信装置にて通信パケットの送信量を制御する通信プロトコルにて送信される。
【0059】
よって、優先的に送信する対象でないデータフローの優先度を下げて第1通信ネットワークへ伝送すると、該データフローの通信パケット量が減少するので、上記レスポンスの量も減少することとなり、その結果、上記通信プロトコルの制御によって、データ送信装置から第2通信ネットワークに送出される該データフローの通信パケット量が減少する。そのため、第2通信ネットワークにおいて、優先的に送信する対象でないデータフローが使用する伝送帯域(伝送レート)が減少するので、第2通信ネットワークにおいて伝送帯域の空きを設けることができる。つまり、優先的に送信するデータフローと優先的に送信する対象でないデータフローとが、第2通信ネットワークにて同時期に伝送される場合であっても、第2通信ネットワークにて優先的に送信するデータフローが使用する伝送帯域以外の伝送帯域の全てを、優先的に送信する対象でないデータフローが占有してしまうことがなくなる。
【0060】
したがって、優先的に送信するデータフローの伝送レートが瞬間的に(一時的に)高くなったとしても、優先的に送信するデータフローの伝送レートと優先的に送信する対象でないデータフローの伝送レートとの合計が、第2通信ネットワークの回線容量を上回らない確率を高めることができる。そして、第2通信ネットワークの回線容量が第1通信ネットワークの回線容量よりも小さい場合、上記通信経路上の全ての通信ネットワークの回線容量を上回らない確率を高めることができる。
【0061】
そのため、第2通信ネットワークおよび第1通信ネットワークにおいて、優先的に送信するデータフローの伝送遅延やジッタを抑制することができるので、データ受信装置において、例えば、優先的に送信するデータフローである映像データフローの映像や音声の再生の乱れを抑制することができるという効果を奏する。
【0062】
なお、上記通信制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記通信制御装置をコンピュータにて実現させる上記通信制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0063】
以上のように、本発明に係る通信制御装置は、上記データ送信装置の通信アドレスと上記データ受信装置の通信アドレスとを対応付けて予め記憶する第1記憶部と、上記データフローを構成する上記通信パケットから、上記送信元の通信アドレスおよび上記送信先の通信アドレスを抽出する送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段と、上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した、上記送信元の通信アドレスと上記送信先の通信アドレスとの組が、上記第1記憶部に記憶されていないとき、上記データ送信装置が上記データ受信装置へ送信する上記データフローを、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送するデータフロー伝送制御手段とを備えている。
【0064】
また、本発明に係る通信制御装置の制御方法は、上記データフローを構成する上記通信パケットから、上記送信元の通信アドレスおよび上記送信先の通信アドレスを抽出する送信元アドレス/送信先アドレス抽出ステップと、上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出ステップにて抽出した、上記送信元の通信アドレスと上記送信先の通信アドレスとの組が、上記第1記憶部に記憶されていないとき、上記データ送信装置が上記データ受信装置へ送信する上記データフローを、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送するデータフロー伝送制御ステップとを含んでいる。
【0065】
よって、データ送信装置から送信されたデータフローを第1通信ネットワークへ伝送する際、該データフローを構成する通信パケットの送信元の通信アドレスと送信先の通信アドレスとの組が、第1記憶部に記憶されていないときは、該データフローの優先度を下げて伝送するように制御することができる。逆に言えば、該データフローを構成する通信パケットの送信元の通信アドレスと送信先の通信アドレスとの組が、第1記憶部に記憶されているとき、該データフローを第1通信ネットワークへ伝送する際、該データフローの優先度を下げずに伝送する。その結果、該データフローは、優先度を下げて伝送するデータフローよりも優先的に、第1通信ネットワークへ伝送することができる。
【0066】
したがって、本発明によれば、複数のデータフローを同時に伝送する通信ネットワークにおいて、QoSを確保する対象であるデータフローを、優先的に伝送することができるという効果を奏する。そして、例えば、映像データフローおよびFTPデータフローを同時に伝送する通信ネットワークにおいて、伝送遅延やジッタ等の影響を受けやすい映像データフローをFTPデータフローよりも優先的に伝送することによって、映像データフローの伝送遅延やジッタ等の発生を抑えることができるので、映像データフローを受信するデータ受信装置において映像や音声の再生の乱れの発生を抑えることができるという効果を奏する。つまり、映像データフローなどのリアルタイムデータフローのQoSを確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信制御装置(HGW)の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る通信制御装置を含む通信制御システムの基本構成例を模式的に示すブロック図である。
【図3】図2で示した通信制御システムの具体的構成の一例を模式的に示すブロック図である。
【図4】図1に示した通信制御装置(HGW)にてデータフローをホームネットワークに送出する際の伝送レートを制限すると、結果的に、当該データフローのアクセスネットワークでの伝送レートが低下する様子の一例を示す模式図である。
【図5】図3で示した通信制御システムにおいて、通信制御装置(HGW)にてデータフローの伝送を制御する様子の一例を模式的に示したシーケンス図である。
【図6】図1に示した通信制御装置(HGW)がパケットを受信した際の処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【図7】図1に示した通信制御装置(HGW)における、キュー割り当て情報生成処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【図8】図1に示した通信制御装置(HGW)における、伝送レート制御処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【図9】図1および図12で示した通信制御装置(HGW)が提供する、簡易版のQoS対象設定画面の画面例を示す模式図である。
【図10】図1で示した通信制御装置(HGW)が提供する、詳細版のQoS対象設定画面の画面例を示す模式図である。
【図11】図1で示した通信制御装置(HGW)にてデータフローの伝送レートを制限したときにおける、アクセスネットワークにて使用される伝送帯域の時間的推移の一例を示す模式図である。
【図12】本発明の他の一実施形態に係る通信制御装置(HGW)の概略構成を示すブロック図である。
【図13】図12で示した通信制御装置(HGW)が提供する、QoS対象設定画面の画面例を示す模式図である。
【図14】図12で示した通信制御装置(HGW)にてデータフローの伝送レートを制限したときにおける、アクセスネットワークにて使用される伝送帯域の時間的推移の一例を示す模式図である。
【図15】図15(a)は、従来技術における、アクセスネットワーク上で2種類のデータフローを伝送するときの、各データフローが使用する伝送帯域の時間的推移の一例を示す図である。図15(b)は、従来技術における、アクセスネットワークよりも回線容量が大きい通信ネットワーク上上で2種類のデータフローを伝送する様子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本明細書において、「パケット」とは、通信ネットワークにて伝送される通信パケットを指す。
【0069】
また、本明細書において、「データフロー」とは、連続して伝送する必要のある一連のデータに属する1または複数のパケットを指す。連続して伝送する必要のある一連のデータとは、例えば、1つの映像コンテンツ、または、1つの音声コンテンツなど、意味のあるひとまとまりのデータである。したがって、例を挙げると、サーバ装置に保持されている1つの映像コンテンツのファイルを、複数の連続するパケットとして受信装置に送信する際の、当該パケットの群が、データフローである。
【0070】
そして、映像コンテンツのデータフローおよびFTPのデータフローを、それぞれ「映像データフロー」および「FTPデータフロー」とも称する。また、映像データフローに属するパケットを「映像データパケット」とも称し、FTPデータフローに属するパケットを「FTPデータパケット」とも称する。
【0071】
また、本明細書において、「リアルタイムデータフロー」とは、映像や音声などのストリーミング伝送にてリアルタイムで伝送する必要のあるデータフローを指す。また、「非リアルタイムデータフロー」とは、FTPによるデータ転送などのように、リアルタイムで伝送する必要のないデータフローを指す。
【0072】
また、優先的に伝送する必要のあるデータフローを、「優先データフロー」とも称する。リアルタイムデータフローは、ストリーミング伝送にてリアルタイムで伝送する必要があるので、通常、優先データフローである。ただし、リアルタイムデータフローであっても、ユーザが、優先的に伝送する必要がないと指定することは可能であるものとする。また、優先的に伝送する必要がないデータフローを、「非優先データフロー」とも称する。非リアルタイムデータフローは、リアルタイムで伝送する必要がないので、通常、非優先データフローである。
【0073】
また、優先的に伝送する必要があることを、「QoSを確保する対象である」とも称する。また、優先的に伝送する必要がないこと、「QoSを確保する対象でない」とも称する。
【0074】
(通信制御システムの基本構成)
図2を参照しながら、各実施形態に係る通信制御装置を含む通信制御システムの基本構成について説明する。図2は、各実施形態に係る通信制御装置を含む通信制御システム900の基本構成例を模式的に示すブロック図である。図示のように、通信制御システム900は、通信制御装置100、1または複数のサーバ(データ送信装置)600、および、1または複数のデータ送受信装置(データ受信装置)400を少なくとも含んで構成される。
【0075】
通信制御装置100は、図示のように、第1通信ネットワーク500および第2通信ネットワーク700に通信可能に接続されている。また、サーバ600は、第2通信ネットワーク700に通信可能に接続されている。また、データ送受信装置400は、第1通信ネットワーク500に通信可能に接続されている。
【0076】
通信制御装置100は、サーバ600とデータ送受信装置400との間でやりとりされるパケットの伝送を制御し、QoSを実現する装置である。通信制御装置100の代表例としては、HGW(Home Gateway)が挙げられる。この場合、第1通信ネットワーク500は、例えば、ユーザ宅に構築されたLANなどのホームネットワークである。また、第2通信ネットワーク700は、例えば、ユーザ宅外に構築された通信ネットワーク(つまり、インターネットおよびアクセスネットワーク)である。なお、第1通信ネットワーク500および第2通信ネットワーク700は、それぞれ、単一の通信ネットワークであってもよいし、複数の通信ネットワークから構成されるものであってもよい。
【0077】
データ送受信装置400は、例えば、映像コンテンツ、FTPにて転送されるデータ、VoIPデータなどの各種データを送受信する端末であり、具体的には、STB、PC(Personal Computer)などである。他には、TV(通信ネットワークに接続可能なもの)、ハードディスクレコーダ(通信ネットワークに接続可能なもの)、IPパケットをアナログ電話信号に変換する装置であるVoIPアダプタなどが挙げられる。なお、VoIPアダプタの機能を内蔵した電話機であるIP電話機、映像データや音声データをIPパケットとして送信する装置であるIPカメラ、ネットワークアクセス可能なハードディスクであるNAS(Network Attached Storage)など、最終的にデータを受信(または送信)する端末を含めてデータ送受信装置400としてもよい。
【0078】
サーバ600は、各種コンテンツ等を提供するサーバ装置であり、例えば、映像コンテンツを提供する映像配信サーバ、FTPによるデータ転送が可能なFTPサーバ、DNS(Domain Name System)サーバなどである。
【0079】
上記構成において、サーバ600が、データ送受信装置400からの要求に応じて、データ送受信装置400に向けてデータフローを送信すると、その経路上に存在する通信制御装置100が、該データフローを、第2通信ネットワーク700から第1通信ネットワーク500に伝送する。
【0080】
このとき、通信制御装置100が、データフローの送信元であるサーバ600のドメイン名に応じて、該データフローが伝送レートを制限する対象であるか否かを判定し、伝送レートを制限する対象である場合は、上記データフローに属するパケットを第1通信ネットワーク500へ送出する際の伝送レートが所定の制限値以下になるように制限することが、本発明の概要である。
【0081】
以下で、図2で示した通信制御システム900の具体的構成例を用いて本発明を説明する。
【0082】
(通信制御システムの具体的構成例)
図3を参照しながら、図2で示した通信制御システム900の具体的構成例について説明する。図3は、図2で示した通信制御システム900の具体的構成の一例を模式的に示すブロック図である。図3では、図2で示した各装置および通信ネットワークのそれぞれに対して、具体例を当てはめている。
【0083】
まず、ホームネットワーク501が、図2で示した第1通信ネットワーク500に相当する。ホームネットワーク501は、Ethernet(登録商標)(以下、単に、Ethernetと表記)で構成されるLANを想定している。
【0084】
次に、インターネット701、アクセスネットワーク702、および基地局703が、図2で示した第2通信ネットワーク700に相当する。アクセスネットワーク702は、FTTH(Fiber To The Home)を想定している。基地局703は、サービスプロバイダのルータ等を想定しており、アクセスネットワーク702とインターネット701とを接続するものである。
【0085】
なお、アクセスネットワーク702の回線容量は、一般的に知られているように、インターネット701およびホームネットワーク501より小さいことが多い。ここでは、インターネット701およびホームネットワーク501の回線容量は100Mbps以上であり、アクセスネットワーク702の回線容量は70Mbpsであるものとして説明する。
【0086】
次に、STB401、STB402、STB403、およびPC404が、図2で示したデータ送受信装置400に相当する。なお、STB401、STB402、およびSTB403のそれぞれは、受信した映像を表示するために、HDMI(High Definition Multimedia Interface)などのAVケーブルにて、テレビ405、テレビ406、およびテレビ407と通信可能に接続されている。
【0087】
なお、STB401、STB402、STB403、およびPC404のIPアドレス(通信アドレス)は、それぞれ、「192.168.0.1」、「192.168.0.2」、「192.168.0.3」、および「192.168.0.4」であるものとする。
【0088】
次に、DNSサーバ601、映像配信サーバ602、映像配信サーバ603、映像配信サーバ604、FTPサーバ605、およびアップデートサーバ606が、図2で示したサーバ600に相当する。
【0089】
DNSサーバ601は、一般的なDNSサーバである。つまり、ドメイン名毎に、対応するIPアドレスを管理しており、外部装置から、問合せ対象となる装置のIPアドレスを問合せるメッセージであって、該問合せ対象となる装置のドメイン名を含むメッセージ(以下、DNS問合せメッセージ(第1リクエスト))を受信する。そして、該受信したDNS問合せメッセージに含まれる問合せ対象の装置のドメイン名に対応するIPアドレスを含む応答メッセージを、DNS問合せメッセージの送信元に返信する(すなわち、名前解決をすることができる)。以下では、上記応答メッセージをDNS応答メッセージと称する。
【0090】
次に、映像配信サーバ602、映像配信サーバ603、および映像配信サーバ604は、映像コンテンツをストリーミングデータとして提供する、一般的な映像配信サーバである。なお、映像配信サーバ602、映像配信サーバ603、および映像配信サーバ604にて提供されるサービス内容(例えば、配信する映像のフォーマットや映像を伝送するための通信プロトコルなど)は異なるものとし、ここでは、映像配信サーバ602が提供しているサービスを「映像配信サービスA」と称し、映像配信サーバ603が提供しているサービスを「映像配信サービスB」と称し、映像配信サーバ604が提供しているサービスを「映像配信サービスC」と称する。
【0091】
次に、FTPサーバ605は、FTPによるデータ転送が可能な、一般的なFTPサーバである。
【0092】
次に、アップデートサーバ606は、HGW101(通信制御装置)の販売元などが運営するデータサーバを想定しており、HGW101のQoS対象記憶部22(後述)にて記憶するデータの更新情報や更新プログラムを、所定の通信プロトコルを用いてHGW101に提供するサーバである。そのために、アップデートサーバ606は、QoS対象記憶部22のエントリを構成するデータ(サービス名、ドメイン名、必要伝送レートの組)を外部に提供可能な状態で記憶している。なお、アップデートサーバ606への、上記データの格納は、アップデートサーバ606の管理者が行なうものとする。また、アップデートサーバ606にて記憶されているドメイン名は、一般的な正規表現で記述されていてもよい。正規表現の用途については後述する。
【0093】
なお、映像配信サーバ602、映像配信サーバ603、映像配信サーバ604、およびFTPサーバ605のIPアドレスは、それぞれ、「101.101.101.1」、「102.102.102.1」、「103.103.103.1」、および「201.201.201.1」であるものとする。また、映像配信サーバ602、映像配信サーバ603、映像配信サーバ604、およびFTPサーバ605のドメイン名は、それぞれ、「sv1.vod. service-a. co.jp」、「vod1.service-b.co.jp」、「service-c.co.jp」、および「ftp.co.jp」であるものとする。
【0094】
最後に、HGW101が、図2で示した通信制御装置100に相当する。また、HGW101は一般的なDNSサーバの機能をさらに備えるものとし、STB401、STB402、STB403、およびPC404は、HGW101をデフォルトのDNSサーバとして認識しているものとする。
【0095】
上記構成において、例えば、ユーザが、テレビ405にて、映像配信サービスAの映像コンテンツを視聴する場合は、STB401が、HGW101を介して、映像配信サーバ602から映像データフローを受信し、該受信した映像データフローをテレビ405に出力する。また、他のユーザが、PC404にて、FTPによりデータをダウンロードする場合は、PC404が、HGW101を介して、FTPサーバ605からFTPデータフローを受信し、該受信したFTPデータフローを自装置に保存する。
【0096】
なお、STB401、STB402、およびSTB403は、映像配信サーバ602、映像配信サーバ603、および映像配信サーバ604のいずれかにアクセスするにあたり、HGW101を介して、DNSサーバ601に、アクセス先のIPアドレスの問合せを行なうものとする。同様に、PC404は、FTPサーバ605にアクセスするにあたり、HGW101を介して、DNSサーバ601に、FTPサーバ605のIPアドレスの問合せを行なうものとする。
【0097】
なお、以下では、単にデータ送受信装置400と表記する場合は、特に指定している場合を除き、STB401、STB402、STB403、およびPC404の総称であるものとする。また、単にサーバ600と表記する場合は、特に指定している場合を除き、DNSサーバ601、映像配信サーバ602、映像配信サーバ603、映像配信サーバ604、FTPサーバ605、およびアップデートサーバ606の総称であるものとする。
【0098】
(本発明の概要)
本発明の特徴は、アクセスネットワーク702からホームネットワーク501に向けて流れるデータフローについて、HGW101にて、優先的に伝送する必要があるか否か(つまり、QoSを確保する対象であるか否か)を判定し、優先的に伝送する必要がないと判定した場合は、当該データフローをHGW101からホームネットワーク501に送出する際に、優先度を下げて送出することである。
【0099】
また、本発明のさらなる特徴は、データフローを優先的に伝送する必要があるか否かを、該データフローを送信するサーバ600のドメイン名に応じて判定することである。具体的には、アクセスネットワーク702からホームネットワーク501に流れるデータフローを送信したサーバ600のドメイン名が、HGW101に予め記憶しているドメイン名と異なる場合、当該データフローをHGW101からホームネットワーク501に送出する際に、優先度を下げて送出する。
【0100】
ここで、「優先度を下げて送出する」とは、特に、データフローの伝送レートが制限値以下になるように制限することである。例えば、データフローが、アクセスネットワーク702からHGW101に30Mbpsで伝送されてきたとき、ホームネットワーク501へ送出する際は、20Mbps以下になるように制限して送出する等である。以下では、上記制限値を「レート制限値LR」とも称する。なお、レート制限値LRの算出方法については、後述する。
【0101】
例えば、QoSを確保する対象であることがユーザの操作等により予め指定されているサービスを提供するサーバ600のドメイン名として、映像配信サーバ602のドメイン名のみがHGW101に記憶されている場合を例に挙げる。この場合において、HGW101が、FTPサーバ605から送信されるFTPデータフローのパケットを受信したときは、FTPサーバ605のドメイン名と自装置に予め記憶したドメイン名とが異なるため、該受信したパケットをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートが、レート制限値LR以下になるように制限する。一方、映像配信サーバ602から送信される映像データフローのパケットを受信したときは、映像配信サーバ602のドメイン名と自装置に予め記憶したドメイン名とが一致するため、該受信したパケットの伝送レートを制限せずに、ホームネットワーク501に送出する。
【0102】
さらには、アクセスネットワーク702からホームネットワーク501に流れるデータフローを送信したサーバ600のドメイン名と、自装置に予め記憶しているドメイン名とが一致した場合であっても、QoSを確保する対象ではない(つまり、優先的に伝送する必要がない)ことがユーザの操作等により予め指定されているサービスであれば、当該データフローをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートがレート制限値LR以下になるように制限してもよい。
【0103】
例えば、QoSを確保する対象でないことがユーザの操作等により予め指定されているサービスを提供するサーバ600のドメイン名として、映像配信サーバ603のドメイン名がHGW101に記憶されている場合を例に挙げる。この場合、HGW101は、映像配信サーバ603から送信される映像データフローのパケットを受信したとき、映像配信サーバ603のドメイン名と自装置に予め記憶したドメイン名とが一致するが、該受信したパケットをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートがレート制限値LR以下になるように制限する。映像配信サーバ603のドメイン名が、自装置に記憶されているものの、QoSを確保する対象でないことがユーザの操作等により指定されたサービスであるからである。
【0104】
そして、このように、HGW101にて、データフローをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートを制限すると、結果的に、当該データフローのアクセスネットワーク702での伝送レートを抑えることができる(これについては後述する)。これを、非優先データフローに対して適用すると、HGW101にて、非優先データフローをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートを制限することにより、結果的に、当該非優先データフローのアクセスネットワーク702での伝送レートを抑えることができる。
【0105】
その結果、優先データフローと非優先データフローとが、アクセスネットワーク702にて同時期に伝送される場合であっても、アクセスネットワーク702において、優先データフローが使用する伝送帯域以外の伝送帯域の全てを、非優先データフローが占有してしまうことがなくなる。つまり、アクセスネットワーク702における伝送帯域に“空き”を設けることができる。
【0106】
したがって、優先データフローの伝送レートが瞬間的に(一時的に)高くなったとしても、優先データフローの伝送レートと非優先データフローの伝送レートとの合計が、アクセスネットワーク702の回線容量を上回らない確率を高めることができる。そして、アクセスネットワーク702は、サーバ600とデータ送受信装置400との通信経路上で最も回線容量が少ないので、優先データフローの伝送レートと非優先データフローの伝送レートとの合計が、アクセスネットワーク702の回線容量を上回らなければ、その結果、上記通信経路上の全ての通信ネットワークの回線容量を上回らないこととなる。
【0107】
したがって、本発明によれば、サーバ600とデータ送受信装置400との通信経路上の全ての通信ネットワークにおいて、優先データフローの伝送遅延やジッタを抑制することができるので、データ送受信装置400において、例えば、優先データフローであるリアルタイムデータフローの映像や音声の再生の乱れを抑制することができるという効果を奏する。
【0108】
なお、伝送レートを制限するパケット、および、伝送レートを制限しないパケットのそれぞれを、ホームネットワーク501に送出するために、HGW101は、1または複数のパケットを一時的にバッファリングするとともに、当該バッファリングしたパケットをホームネットワーク501に順次送出する、FIFO(First In First Out)のキューを2つ備えている。1つは、伝送レートを制限せずに、パケットをホームネットワーク501に送出するために用いるキュー(後述する、レート非制限キュー(優先パケット保持部)143)であり、もう1つは、伝送レートがレート制限値LR以下になるように制限しつつ、パケットをホームネットワーク501に送出するために用いるキュー(後述する、レート制限キュー144)である。
【0109】
(ホームネットワークに送出するパケットの伝送レートを制限することにより、アクセスネットワークでの伝送レートを抑えることができる理由)
ここでは、上述したように、“データフローをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートを制限すると、結果的に、当該データフローのアクセスネットワーク702での伝送レートを抑えることができる”理由について説明する。
【0110】
まず、データフローをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートを制限すると、データ送受信装置400にて受信されるパケットの量が減少することとなる。これに応じて、データ送受信装置400が、上記受信したパケットの応答としてサーバ600に返信するACK(acknowledge)パケットの量も減少することとなる。
【0111】
一方、サーバ600では、データ受信装置の受信状況に応じて、サーバ装置から送信するパケットの量を制御するために、一般的に知られているウィンドウ制御が行なわれているものとする。そのため、データ送受信装置400から返信されたACKパケットの量が減少すると、これに応じて、データ送受信装置400に向けて送信する後続のパケットの送出量を抑える制御が行なわれる。その結果、アクセスネットワーク702にて送信されるパケットの量が減少し、その結果として、データフローの伝送レートが低下する。
【0112】
ここで、図4を用いて、HGW101にてデータフローをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートを制限すると、結果的に、当該データフローのアクセスネットワーク702での伝送レートが低下する様子について説明する。図4は、HGW101にてデータフローをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートを制限すると、結果的に、当該データフローのアクセスネットワーク702での伝送レートが低下する様子の一例を示す模式図である。
【0113】
図4に示すように、時刻T11から時刻T16の間に、FTPサーバ605がアクセスネットワーク702を介してHGW101にFTPデータフローを順次送信し、さらに、HGW101がホームネットワーク501を介してPC404に上記FTPデータフローを順次送信している。
【0114】
なお、HGW101は、時刻T11から時刻T13の間は、FTPデータフローの伝送レートを制限せず、かつ、時刻T13から時刻T16の間は、FTPデータフローの伝送レートを制限するものとして説明する。なお、FTPデータフローの伝送レートの制限を開始するトリガとしては、例えば、HGW101が、映像配信サーバ602からアクセスネットワーク702を介して送信された映像データフローを、時刻T13から受信し始めたことなどが挙げられる。この場合、映像データフローを優先的に伝送させるために、FTPデータフローの伝送レートの制限を開始する。
【0115】
まず、時刻T11から時刻T12における、FTPデータフローに属するFTPデータパケットの流れについて説明する。
【0116】
図示のように、FTPサーバ605が3つのFTPデータパケットF1、F2、F3をPC404に向けて送信したとする。なお、FTPサーバ605はPC404との事前のネゴシエーションによって、PC404が3つまでのFTPデータパケットをバッファリングすることが可能であることを知り得ているものとする(実際には、3つより多くのパケットをバッファリングすることが可能であるが、説明の簡略化のため、ここでは3つとしている)。そして、FTPデータパケットF1、F2、F3を受信したHGW101は、伝送レートを制限せずに、これらFTPデータパケットをホームネットワーク501に送出する。そして、PC404は、これらFTPデータパケットを受信すると、各FTPデータパケットに対するACKパケットをFTPサーバ605に返信する。
【0117】
続いて、FTPサーバ605は、FTPデータパケットF1、F2、F3に対するACKパケットを全て受信したので、時刻T12から時刻T13において、後続の新たな3つのFTPデータパケットF4、F5、F6をPC404に向けて送信する。そして、FTPデータパケットF4、F5、F6を受信したHGW101は、伝送レートを制限せずに、これらFTPデータパケットをホームネットワーク501に送出する。そして、PC404は、これらFTPデータパケットを受信すると、各FTPデータパケットに対するACKパケットをFTPサーバ605に返信する。
【0118】
続いて、FTPサーバ605は、FTPデータパケットF4、F5、F6に対するACKパケットを全て受信したので、時刻T13から時刻T14において、後続の新たな3つのFTPデータパケットF7、F8、F9をPC404に向けて送信する。
【0119】
ここで、HGW101では、時刻T13からFTPデータフローの伝送レートを制限している。例えば、単位時間毎に、FTPデータパケットを1つだけホームネットワーク501に送出するように制限したとする。この場合、FTPデータパケットF7、F8、F9を受信したHGW101は、これら全てのFTPデータパケットをPC404に送信せず、図示のように、この時点ではFTPデータパケットF7だけをホームネットワーク501に送出し、FTPデータパケットF8およびF9は自装置にバッファリングする。そして、PC404は、FTPデータパケットF7を受信すると、FTPデータパケットF7に対するACKパケットをFTPサーバ605に返信する。
【0120】
続いて、FTPサーバ605は、FTPデータパケットF7に対するACKパケットのみを受信したので、時刻T14から時刻T15においては、後続の新たな1つのFTPデータパケットF10のみをPC404に送信する。つまり、アクセスネットワーク702を流れるFTPデータパケットの量が3つから1つに減少するので、その結果、FTPデータデータフローのアクセスネットワーク702での伝送レートが低下する。
【0121】
そして、HGW101では、引き続きFTPデータフローの伝送レートを制限しているので、FTPデータパケットF10を自装置にバッファリングするとともに、既にバッファリングしているFTPデータパケットF8をホームネットワーク501に送出する。そして、PC404は、FTPデータパケットF8を受信すると、FTPデータパケットF8に対するACKパケットをFTPサーバ605に返信する。
【0122】
時刻T15から時刻T16においても、同様に、FTPサーバ605は、後続の新たな1つのFTPデータパケットF11のみをPC404に送信する。HGW101では、FTPデータパケットF11を自装置にバッファリングするとともに、既にバッファリングしているFTPデータパケットF9をホームネットワーク501に送出する。
【0123】
以上のように、HGW101にて、データフローをホームネットワーク501に送出する際の伝送レートを制限すると、結果的に、当該データフローのアクセスネットワーク702での伝送レートを低下させることができる。
【0124】
なお、上述したように、サーバ600にて、ACKパケットに基づいたウィンドウ制御を行なうことにより、アクセスネットワーク702での伝送レートが低下することを期待しているので、HGW101にて伝送レートを制限する対象となるデータフローは、ウィンドウ制御機能を備える通信プロトコル(例えば、TCP(Transmission Control Protocol)など)でやりとりされるものであることが望ましい。つまり、HGW101は、ウィンドウ制御機能を備える通信プロトコルによって伝送されるデータフローの伝送を制御することができる装置であることが望ましい。
【0125】
(レート制限値LRの算出方法)
アクセスネットワーク702の回線容量を「AC」と略記し、優先データフローの伝送に必要な伝送レートの合計を「DC」と略記すると、HGW101は、次式により、非優先データフローを送出する際のレート制限値LRの値を算出するものとする。
【0126】
LR=AC−DC
ここで、ACの値は、例えば、以下に示す2種類の方法によって求めることができる。すなわち、(1)HGW101が、アクセスネットワーク702との接続処理において、基地局703から取得したり、(2)ユーザが、速度測定サイトなどを利用して測定し、HGW101に予め登録することが考えられる。
【0127】
次に、DCの値は、以下に示す2種類の方法のいずれかによって求めることを想定している。
【0128】
1つ目の方法は、優先データフローを、ユーザが予め、後述するQoS対象記憶部22に登録しておく方法である。そして、HGW101は、登録された優先データフローの伝送に必要な伝送レートを、QoS対象記憶部22を参照して求める。なお、どのデータフローを優先的に伝送するかは、工場出荷時などに予めHGW101に設定されているものとし、ユーザが登録操作を行なわなくてもHGW101は動作するものとする。
【0129】
また、各データフローが、それぞれ何本づつ伝送されるかについて、HGW101が検出してもよいし、ユーザに、データフロー毎の本数を指定させてもよい。また、ユーザにデータフローの本数を指定させる代わりに、データフローを受信するデータ送受信装置400の個数を指定させてもよい。なお、データフロー毎の本数をユーザに指定させた場合、HGW101は、データフロー毎に指定された本数分の伝送レートを常に確保してもよい。また、サービス毎に伝送する本数は固定とし、HGW101は、サービス毎に固定された本数分の伝送レートを常に確保するようにしてもよい。例えば各サービスにつき1本のデータフローが伝送されるものと想定して、伝送レートの計算を行なう。
【0130】
2つ目の方法は、優先データフローの伝送レートの合計値を、ユーザがHGW101に予め登録しておく方法である。上記の合計値は、ユーザがサービス毎にマニュアルやサービス事業者のWebサイト等で調べて入手し、受信する予定のあるサービスで必要な伝送レートを計算し、HGW101に登録すればよい。また、優先データフローの伝送レートの合計値の代わりに、非優先データフローの伝送レートの合計値を登録してもよい。
【0131】
以上のように、ACの値の求め方、および、DCの値の求め方は、それぞれ複数種類あるが、それらをどのように組み合わせて用いてもよい。
【0132】
例えば、ACの値については、HGW101が、アクセスネットワーク702を介して基地局703と接続する処理において、基地局703から取得する方法と、DCの値については、優先データフローを、ユーザがHGW101に予め登録する方法とを組み合わせてもよい。以下では、この組み合わせを、「組み合わせA」と表記する。
【0133】
また、ACの値については、ユーザが、速度測定サイトなどを利用して測定し、HGW101に予め登録する方法と、DCの値については、優先データフローの伝送レートの合計値を、ユーザがHGW101に予め登録する方法とを組み合わせてもよい。以下では、この組み合わせを、「組み合わせB」と表記する。なお、組み合わせBの場合、レート制限値LRは、予め登録されたACの値およびDCの値から、事前に算出可能である。
【0134】
(HGWにてデータフローの伝送を制御する様子の概要)
図5を参照しながら、図3で示した通信制御システム900において、HGW101にてデータフローの伝送を制御する様子について説明する。図5は、図3で示した通信制御システム900において、HGW101にてデータフローの伝送を制御する様子の一例を模式的に示したシーケンス図である。
【0135】
まず、あるユーザが、PC404にて、FTPサーバ605にて提供されるデータを受信(ダウンロード)する流れ(図5では、シーケンスP1と表記)について、説明する。
【0136】
PC404に対して、FTPサーバ605にて提供されるデータを取得するユーザ操作(例えば、Webブラウザソフトを実行して所定のデータをダウンロードする操作)が行われると、PC404は、FTPデータの受信を開始する処理(受信開始処理)として、デフォルトのDNSサーバ(ここでは、HGW101)に対して、FTPサーバ605のIPアドレス(通信アドレス)を問合せるDNS問合せメッセージを送信する(ステップS201)。
【0137】
なお、受信開始処理は、一般的に知られている方法を用いて行なえばよい。例えば、PC404において、FTPのクライアントソフトウェアが動作しており、1または複数のダウンロード対象をユーザが選択できるようになっているものとする。
【0138】
そして、ユーザが、ダウンロード対象を選択すると、該ダウンロード対象に対応づけられているURI(Uniform Resource Identifiers)が特定される。ここでは、例えば「ftp://ftp.co.jp/downloaddata001」というURIが特定されるものとする。そして、PC404は、上記特定されたURIからドメイン名を取得する。上記例では、「ftp.co.jp」というドメイン名を取得する。そして、該取得したドメイン名に対応するIPアドレスを問合せるためのDNS問合せメッセージを、デフォルトのDNSサーバに送信する。このDNS問合せメッセージには、該取得したドメイン名が含まれている。
【0139】
なお、DNS問合せメッセージを送信する相手先は、デフォルトのDNSサーバ(HGW101)であるが、デフォルトのDNSサーバのIPアドレスは、例えば、ユーザがキーボード操作等によって予めPC404に設定したり、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)などの一般的な技術を用いて予めPC404が取得することが考えられるが、本発明の本質的部分ではないので、ここではその説明を省略する。
【0140】
続いて、HGW101が、PC404からDNS問合せメッセージを受信したときの処理について説明する。ここでは、HGW101は、該受信したDNS問合せメッセージに含まれるドメイン名に対応するIPアドレスを直接管理していないものとして説明する。この場合、HGW101は、さらに、DNSサーバ601に対して、上記ドメイン名を含んだDNS問合せメッセージを送信する(ステップS202)。DNSサーバ601は、例えばサービスプロバイダの提供するDNSサーバであり、DNSサーバ601のIPアドレスは、ユーザがHGW101に予め登録したり、HGW101がDHCPを用いて予め取得する。なお、一般的には、複数のDNSサーバを経由して再帰的に名前解決が行われるが、ここでは説明を省略するために、HGW101はDNSサーバ601に問合せを行なえば、FTPサーバ605のIPアドレスを取得できるものとして説明する。また、一般的にはサービス提供者がDNSサーバを構築し、自己の提供するサーバのIPアドレスを管理しているが、ここではDNSサーバ601が全てのサーバのIPアドレスを管理しているものとする。
【0141】
続いて、DNSサーバ601が、HGW101からDNS問合せメッセージを受信したときの処理について説明する。DNSサーバ601は、各ドメイン名に対応するIPアドレスを記憶しており、DNS問合せメッセージに対して適切なDNS応答メッセージを送信する。従って、DNSサーバ601は、「ftp.co.jp」というFTPサーバ605のドメイン名に対応するIPアドレスである「201.201.201.1」を含めたDNS応答メッセージを、HGW101に返信する(ステップS203)。
【0142】
そして、HGW101は、上記DNS応答メッセージを受信すると、問合せ元であるPC404に、上記DNS応答メッセージを転送する。これを受信したPC404は、ドメイン名「ftp.co.jp」に対応するIPアドレスが、「201.201.201.1」であることを知ることができるので、FTPサーバ605に対してデータのダウンロードを要求することが可能となる。
【0143】
HGW101は、PC404にDNS応答メッセージを返信した後、HGW101にて後ほど転送するパケットの伝送を制御するために、当該パケットを、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれに格納するかを示す情報(以下、キュー割り当て情報)を生成する処理(以下、キュー割り当て情報生成処理)を行なう(ステップS204)。
【0144】
ここで、キュー割り当て情報生成処理の概要について説明する。キュー割り当て情報生成処理は、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名のサーバから、DNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400に向けて送信されるパケットを、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれに格納するかを示すキュー割り当て情報を生成し、後述するキュー割り当て情報記憶部23に格納する処理である。
【0145】
ここで、キュー割り当て情報は、(1)サーバ600のドメイン名を示す1または複数のデータ、および、(2)サーバ600のドメイン名と、サーバ600から送信されるデータフローを優先的に伝送するか否かを示す情報(以下、優先要否情報とも称する)とを予め対応付けた1または複数のデータ、のどちらかに基づいて生成する。上記(1)および(2)を、以下では「QoS対象データ」とも称する。
【0146】
キュー割り当て情報の生成について、QoS対象データが上記(1)である場合と、上記(2)である場合とに分けて、具体的に説明する。
【0147】
まず、QoS対象データが上記(1)である場合について説明する。この場合、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名が、QoS対象データに含まれていなければ、当該ドメイン名のサーバから上記DNS応答メッセージを送信先のデータ送受信装置400に向けて送信されるパケットを、レート制限キュー144から送出することを示すキュー割り当て情報を生成する。一方、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名が、QoS対象データに含まれていれば、当該ドメイン名のサーバから上記DNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400に向けて送信されるパケットを、レート非制限キュー143から送出することを示すキュー割り当て情報を生成する。
【0148】
次に、QoS対象データが上記(2)である場合について説明する。この場合、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名が、QoS対象データに含まれていれば、さらに、当該ドメイン名に対応付けて記憶されている優先要否情報を参照し、当該参照した優先要否情報が“優先的に伝送する”ことを示す情報であれば、当該ドメイン名のサーバから上記DNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400に向けて送信されるパケットは、レート非制限キュー143から送出することを示すキュー割り当て情報を生成する。
【0149】
一方、上記参照した優先要否情報が“優先的に伝送しない”ことを示す情報であれば、当該ドメイン名のサーバから上記DNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400に向けて送信されるパケットを、レート制限キュー144から送出することを示すキュー割り当て情報を生成する。
【0150】
なお、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名が、QoS対象データに含まれていなければ、当該ドメイン名のサーバから上記DNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400に向けて送信されるパケットを、レート制限キュー144から送出することを示すキュー割り当て情報を生成する。
【0151】
ここで、QoS対象データについて、具体例を挙げて説明する。例えば、映像配信サーバ602から送信されるデータフローが優先データフローである(以下、“QoS対象である”とも称する)場合、映像配信サーバ602のドメイン名を示すデータが、QoS対象データとなり得る。
【0152】
さらに、映像配信サーバ602のドメイン名と、映像配信サーバ602から送信されるデータフローは優先的に伝送することを示す優先要否情報とを対応付けたデータが、QoS対象データとなり得る。
【0153】
また、例えば、映像配信サーバ604から送信されるデータフローが非優先データフローである(以下、“QoS対象でない”とも称する)場合は、映像配信サーバ604のドメイン名と、映像配信サーバ604から送信されるデータフローは優先的に伝送しないことを示す情報とを対応付けたデータが、QoS対象データとなり得る。
【0154】
なお、あるサーバ600から送信されるデータフローについては、優先的に伝送する必要が常に無い(常にQoS対象ではない)場合、当該サーバ600のドメイン名は、QoS対象データに含めない。例えば、FTPサーバ605から送信されるデータフローは、常に非優先データフローとしてよい(常にQoS対象ではない)ので、FTPサーバ605のドメイン名は、QoS対象データに含めない。そのため、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名がQoS対象データに含まれていない場合、キュー割り当て情報生成処理を実行しても、キュー割り当て情報は生成されない。つまり、HGW101は、ステップS204にて、キュー割り当て情報生成処理を実行するが、キュー割り当て情報は生成されない。
【0155】
なお、後述する伝送レート制御処理にて、キュー割り当て情報生成処理にて生成されたキュー割り当て情報に従って、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名を有するサーバからDNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400に向けて送信されるデータフローに属するパケットを、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれかに格納する。なお、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名がキュー割り当て情報に含まれていない場合、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名を有するサーバからDNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400に向けて送信されるデータフローに属するパケットは、レート制限キュー144に格納する。伝送レート制御処理の詳細については、後述する。
【0156】
ここで、図5に示すシーケンス図の説明に戻る。PC404は、DNS応答メッセージを受信した後、FTPデータの受信を開始するために、FTPサーバ605に向けて、データをダウンロードする要求を行なう(第2リクエスト)(ステップS205)。そして、PC404から上記要求を受信したFTPサーバ605は、その応答として、PC404に向けてFTPデータフローを送信する(ステップS206)。
【0157】
そして、経路上のHGW101は、そのFTPデータフローを受信すると、伝送レート制御処理を行ない、該受信したFTPデータフローに属するFTPデータパケットを、レート制限キュー144に格納する(ステップS207)。ここでは、FTPサーバ605のドメイン名が、ステップS204で行なったキュー割り当て情報生成処理にて生成したキュー割り当て情報に含まれていないので、上記受信したFTPデータフローに属するFTPデータパケットは、レート制限キュー144に格納される。
【0158】
一方、この時点では、レート非制限キュー143に格納されたパケットは存在しない。そのため、レート制限キュー144に格納されたFTPデータパケットは、伝送レートを制限されることなく送出される(図5では、“通常伝送”と表記)。
【0159】
そして、HGW101から転送されたFTPデータパケットをPC404が受信し、FTPデータを自装置に保存する(ステップS208)。
【0160】
次に、PC404がFTPデータフローを受信している途中に、PC404のユーザとは異なるユーザが、テレビ405にて、映像配信サーバ602にて提供される映像配信サービスAの映像コンテンツを視聴するまでの流れ(図5では、シーケンスP2と表記)について、説明する。
【0161】
ユーザは、STB401に接続されたテレビ405の画面を見ながら、STB401を操作して、映像配信サーバ602にて提供される映像コンテンツを視聴するユーザ操作を行なう。STB401は、ユーザ操作を受け付けると、映像コンテンツの受信を開始する処理(受信開始処理)として、デフォルトのDNSサーバ(HGW101)に対して、映像配信サーバ602のIPアドレス(通信アドレス)を問合せるDNS問合せメッセージを送信する(ステップS301)。映像コンテンツの受信を開始する処理は、一般的に知られている方法を用いて行なえばよい。例えば、STB401が、1または複数のダウンロード対象である映像コンテンツのサムネイルが表示されているメニュー画面を生成し、表示部にメニュー画面を表示しているものとする。この画面のデータは、例えばHTML(HyperText Markup Language)で記述されており、映像配信サーバ602とは別のポータルサーバ(不図示)から提供されており、STB401がインターネット701経由でポータルサーバにアクセスしてHTMLを取得するものとする(この通信シーケンスについては図示していない)。そして、各サムネイルには、ダウンロード対象であるデータの保存場所を示すURIが対応付けられているものとする。ここでは、例えば「http://sv1.vod.service-a.co.jp/content001」というURIが特定されるものとする。そして、STB401は、上記特定されたURIからドメイン名を取得する。上記例では、「sv1.vod.service-a.co.jp」というドメイン名を取得する。そして、該取得したドメイン名に対応するIPアドレスを問合せるためのDNS問合せメッセージを、デフォルトのDNSサーバに送信する。このDNS問合せメッセージには、該取得したドメイン名が含まれている。
【0162】
続いて、ステップS202で説明した流れと同様に、HGW101は、STB401からDNS問合せメッセージを受信したとき、DNSサーバ601に対して、上記ドメイン名を含んだDNS問合せメッセージを送信する(ステップS302)。
【0163】
続いて、ステップS203で説明した流れと同様に、DNSサーバ601は、HGW101からDNS問合せメッセージを受信したとき、映像配信サーバ602のIPアドレスである「101.101.101.1」を含めたDNS応答メッセージを、HGW101に返信する(ステップS303)。デフォルトのDNSサーバのIPアドレスは、例えば、ユーザがリモコン操作等によってSTB401に設定したり、DHCPなどを用いてSTB401が自動的に取得する。
【0164】
そして、HGW101は、上記DNS応答メッセージを受信すると、問合せ元であるSTB401に、上記DNS応答メッセージを転送する。これを受信したSTB401は、映像配信サーバ602のIPアドレスが「101.101.101.1」であることを知ることができるので、映像配信サーバ602に対して映像データを要求することが可能となる。
【0165】
HGW101は、STB401にDNS応答メッセージを返信した後、ステップS204と同様に、キュー割り当て情報生成処理を実行し、キュー割り当て情報の生成を試みる(ステップS304)。
【0166】
ここで、映像配信サーバ602から送信される映像データフローが優先データフローである場合、映像配信サーバ602のドメイン名と、映像配信サーバ602から送信される映像データフローは優先的に伝送することを示す優先要否情報とを対応付けたデータが、QoS対象データとして記憶されているので、キュー割り当て情報生成処理によって、映像配信サーバ602からSTB401に向けて送信されるパケットは、レート非制限キュー143から送出することを示すキュー割り当て情報が生成される。
【0167】
一方、STB401は、DNS応答メッセージを受信した後、映像コンテンツの受信を開始するために、映像配信サーバ602に向けて、映像データの要求を行なう(第2リクエスト)(ステップS305)。なお、上記要求の手順は、サービスや通信プロトコルによって様々であり、例えば、複数回のパケットの送受信を伴う場合もあり得るが、発明の本質的部分ではないので、ここではその説明を省略する。
【0168】
そして、STB401から上記要求を受信した映像配信サーバ602は、その応答として、STB401に向けて映像データフローを送信する(ステップS306)。
【0169】
そして、経路上のHGW101は上記映像データフローを受信すると、伝送レート制御処理を行ない、該受信した映像データフローに属する映像データパケットを、レート非制限キュー143に格納する(ステップS307)。ここでは、映像配信サーバ602のドメイン名が、ステップS304で行なったキュー割り当て情報生成処理にて生成したキュー割り当て情報に含まれるので、上記受信した映像データフローに属する映像データパケットは、レート非制限キュー143に格納される。したがって、レート制限キュー144に格納された映像データパケットは、伝送レートを制限されることなく送出される(図5では、“通常伝送”と表記)。
【0170】
そして、HGW101から転送された映像データパケットをSTB401が受信し、映像信号に変換(デコード)してテレビ405に出力することによって、映像が再生される(ステップS308)。
【0171】
次に、シーケンスP2にて映像データフローの送信が開始された後における、FTPデータフローの伝送の様子(図5では、シーケンスP3と表記)について、説明する。
【0172】
FTPサーバ605からは、ステップS206にてPC404に向けて送信したFTPデータフローが、引き続き、送信されているものとする。そして、経路上のHGW101は、ステップS207と同様に、FTPデータフローを受信すると、伝送レート制御処理を行ない、該受信したFTPデータフローに属するFTPデータパケットを、レート制限キュー144に格納する(ステップS401)。
【0173】
このとき、ステップS307にて説明したように、レート非制限キュー143に格納されているパケット(つまり、映像データパケット)が存在する。レート非制限キュー143に格納されているパケットは優先的に伝送する必要があるため、レート制限キュー144に格納されたFTPデータパケットは、伝送レートが制限された状態で、レート制限キュー144から送出される(図5では、“レート制限伝送”と表記)。
【0174】
そして、HGW101から転送されたFTPデータパケットをPC404が受信し、FTPデータを自装置に保存する(ステップS402)。
【0175】
以上で説明した流れでFTPデータパケットおよび映像データパケットが送信されることにより、PC404にてFTPサーバ605にて提供されるデータを取得することができ、また、テレビ405にて映像配信サーバ602にて提供される映像コンテンツを視聴することができる。そして、FTPデータパケットは、映像データパケットが送信されていないときは、HGW101にて伝送レートを制限されることなくホームネットワーク501に送出されるが、映像データパケットが送信されているときは、伝送レートを制限されつつホームネットワーク501に送出される。その結果、アクセスネットワーク702でのFTPデータパケットの伝送レートを抑えることができ、その結果、映像データフローとFTPデータフローとが、アクセスネットワーク702にて同時期に伝送される場合であっても、映像データフローの伝送遅延やジッタを抑制することができる。
【0176】
なお、図5では、シーケンスP1とシーケンスP2とが時間的に重複して実行されていないが、シーケンスP1とシーケンスP2とが時間的に重複して実行されてもよい。この場合、HGW101には、STB401からのDNS問合せメッセージ、および、PC404からのDNS問合せメッセージが同時期に到着することがある。また、映像配信サーバ602から送信される映像データパケット、および、FTPサーバ605から送信されるFTPデータパケットが同時期に到着することがある。このような場合であっても、上述したように各処理が実施され、映像配信サーバ602から送信される映像データパケットは、HGW101のレート非制限キュー143に格納されるのに対して、FTPサーバ605から送信されるFTPデータパケットはHGW101のレート制限キュー144に格納される。そして、HGW101では、レート非制限キュー143内のパケットを優先的に送出する。
【0177】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について、図1から図11に基づいて説明すると以下の通りである。本実施の形態では、HGW101が、上述した組み合わせAの方法にて求めたACの値およびDCの値から算出したレート制限値LRに基づいて、非優先データフローの伝送レートを制限する形態について説明する。なお、本実施の形態に係るHGW101を、特に、HGW101aと表記する。
【0178】
(HGWの構成)
次に、図1を参照しながら、通信制御装置100としてのHGW101aの概略構成について説明する。図1は、HGW101aの概略構成を示すブロック図である。
【0179】
図1に示すようにHGW101aは、主制御部10、記憶部20、WAN(Wide Area Network)側通信部31、およびLAN側通信部32を含んで構成される。
【0180】
主制御部10は、記憶部20、WAN側通信部31、およびLAN側通信部32の制御を行なうとともに、所定の演算処理を行なうものである。所定の演算処理としては、例えば、データ送受信装置400から送信されるDNS問合せメッセージの受信処理などがある。主制御部10の詳細な構成については後述する。
【0181】
記憶部20は、主制御部10が実行する(1)各部の制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)アプリケーションプログラム、および、(4)これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記憶するものである。記憶部20は、フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成される。また、記憶部20は、RAM(Random Access Memory)などの揮発性の記憶装置によって構成される、主制御部10が上述の各種プログラムを実行する過程でデータを一時的に保持するための作業領域を有している。
【0182】
そして、記憶部20は、特に、サーバアドレス記憶部21、QoS対象記憶部(第2記憶部)22、およびキュー割り当て情報記憶部(第1記憶部)23を含んでいる。
【0183】
サーバアドレス記憶部21は、サーバ600のドメイン名とIPアドレスとの組を、読み出し可能な状態で記憶するものである。サーバアドレス記憶部21は、例えば下記の表1に示すようなデータ構造とすることができる。表1は、サーバアドレス記憶部21のデータ構造の一例を示す表である。表1に示すように、サーバアドレス記憶部21は、「ドメイン名」および「サーバIPアドレス」の組から成るエントリを記憶する。「ドメイン名」は、サーバ600のドメイン名を表す文字列である。「サーバIPアドレス」は、サーバ600のIPアドレスである。
【0184】
なお、サーバアドレス記憶部21は、1つのドメイン名に対して、複数のIPアドレスが対応づけて記憶する場合もあり得る。これは、サーバ600の負荷を分散させたり、データのバックアップを行なうために、セカンダリサーバが構築されている場合があるからである。表1では、例えば、「sv1.vod.service-a.co.jp」というドメイン名のサーバ600のIPアドレスとして、「101.101.101.1」および「101.101.101.2」が記憶されている。
【0185】
【表1】

【0186】
次に、QoS対象記憶部22は、サーバ600で提供されているサービスの名称、サーバ600のドメイン名、サーバ600から送信されるデータフローを伝送するために必要な伝送レート、および、サーバ600から送信されるデータフローを優先的に伝送するか否かを示す優先要否情報の組を、読み出し可能な状態で記憶するものである。なお、優先的に伝送するか否かを示す優先要否情報をユーザが設定できる構成(後述)としない場合は、優先要否情報は記憶させなくてもよい。
【0187】
QoS対象記憶部22は、例えば下記の表2に示すようなデータ構造とすることができる。表2は、QoS対象記憶部22のデータ構造の一例を示す表である。表2の例では、QoS対象記憶部22は、「サービス名」、「ドメイン名」、「必要伝送レート」、および「優先要否情報」の組から成るエントリを記憶する。
【0188】
「サービス名」は、サーバ600にて提供されるサービスの名称である。「ドメイン名」は、サーバ600のドメイン名を表す文字列である。
【0189】
「必要伝送レート」は、サーバ600データフローを伝送するために必要な伝送レートを示す値である。一般的には、瞬間的(一時的)に伝送レートが大きくなることが起こり得るため、「必要伝送レート」には、実際に必要な伝送レートよりも数%程度大きい値を格納しておくことが望ましい。
【0190】
「優先要否情報」は、サーバ600から送信されるデータフローを優先的に伝送するか否かを示す優先要否情報である。なお、“要”は、データフローを優先的に伝送する必要があることを示し、“否”は、データフローを優先的に伝送する必要がないことを示す。
【0191】
なお、優先要否情報が“否”であるデータフローは、HGW101aでは、FTPデータフローなどの非優先データフローと同等に扱われることとなる。また、「優先要否情報」カラムの値は、後述するQoS対象設定画面161などを用いてユーザが設定することができる。したがって、優先データフローについても、優先的に伝送するか否かをユーザが設定することができる。
【0192】
なお、優先的に伝送するか否かを示す優先要否情報をユーザが設定できる(後述するQoS対象設定画面161を用いて設定する)構成にしない場合(つまり、ユーザが優先要否情報を設定できない構成とする場合)は、全てのエントリの「優先要否情報」カラムの値を“要”としておいてもよいし、「優先要否情報」カラムを設けなくてもよい。
【0193】
また、「必要伝送レート」の値は、後述する制限レート算出処理部145が、レート制限キュー144に格納されたパケットをLAN側通信部32に送出する際のレート制限値LRを算出する処理において参照される。
【0194】
表2では、例えば、「*.vod.service-a.co.jp」というドメイン名のサーバ600が提供している「映像配信サービスA」というサービスのデータフローの伝送に必要な伝送レートは「10Mbps」であり、「優先要否情報」カラムの値が“要”であるので、当該データフローは優先的に伝送する旨が記憶されている。
【0195】
ここで、「ドメイン名」において使用されている“*”という文字は、任意の文字列を表す文字である。従って、例えば「sv1.vod.service-a.co.jp」および「sv2.vod.service-a.co.jp」は、いずれも「*.vod.service-a.co.jp」という表現に含まれる。よって、上記で例示した「映像配信サービスA」というサービスを提供しているサーバ600のドメイン名は、「sv1.vod.service-a.co.jp」および「sv2.vod.service-a.co.jp」のいずれであってもよいこととなる。さらに言えば、ドメイン名として「*.vod.service-a.co.jp」という表現で記述しておけば、例えば「sv3.vod.service-a.co.jp」というドメイン名のサーバ600が今後新たに設置された場合であっても、QoS対象記憶部22のエントリを更新する必要がない。同様に、「vod*.service-d.com」という表現は、「vod001.service-d.com」や「vod002.service-d.com」等というドメイン名を含んでいる。ドメイン名の表記方法としては一般的に用いられる正規表現によって記述されてもよい。例えば、一般的な正規表現においては、特定の種類(アルファベットや数字や記号)の任意の文字を示したり、特定の文字数の任意の文字列を示したりすることが可能である。
【0196】
なお、QoS対象記憶部22の各エントリは、例えば、HGW101aの工場出荷時などの時点で、各サーバ600にて提供可能なサービス毎に、予め格納しておけばよい。この場合、HGW101aの販売元などが独自に各サーバ600のドメイン名を調査したり、サーバ600を運営するサービス業者から各サーバ600のドメイン名の情報を入手するなどして、HGW101aの販売元で把握した情報を予め格納する。また、後述するQoS対象設定画面161および162のいずれかを用いて、ユーザが、QoS対象記憶部22の各エントリを更新することも可能である。なお、各サービスのデータフローが現在伝送されているか否かにかかわらず、QoS対象記憶部22には、HGW101aがパケットを転送する可能性のある全てのサービスに対応するエントリを格納しておくことが望ましい。
【0197】
【表2】

【0198】
次に、キュー割り当て情報記憶部23は、サーバ600から送信されるデータフローに属するパケットを、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれに格納するかを示す情報などを、読み出し可能な状態で記憶するものである。なお、優先的に伝送するか否かを示す優先要否情報をユーザが設定できる構成としない場合は、レート非制限キュー143とレート制限キュー144とを区別する必要がないので、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれに格納するかを示す情報を記憶しなくてもよい。
【0199】
キュー割り当て情報記憶部23は、例えば下記の表3に示すようなデータ構造とすることができる。表3は、キュー割り当て情報記憶部23のデータ構造の一例を示す表である。表3の例では、キュー割り当て情報記憶部23は、「ドメイン名」、「サーバIPアドレス」、「クライアントIPアドレス」、「割り当てキュー」、および「最終受信日時」の組から成るエントリを記憶する。
【0200】
「ドメイン名」は、サーバ600のドメイン名を表す文字列である。「ドメイン名」カラムの値は、QoS対象記憶部22の「ドメイン名」カラムの値がコピーされる。QoS対象記憶部22のデータ構造と同様に「ドメイン名」は、“*”を使用した表現や、一般的に用いられる正規表現によって記述されてもよい。なお、「ドメイン名」カラムは必ずしも設けなくてもよい。
【0201】
「サーバIPアドレス」は、サーバ600のIPアドレスである。「クライアントIPアドレス」は、データ送受信装置400のIPアドレスである。
【0202】
「割り当てキュー」は、サーバ600から送信されるデータフローに属するパケットを、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれに格納するかを示す情報である。「割り当てキュー」カラムの値が“レート非制限”であると、レート非制限キュー143に格納することを示し、“レート制限”であると、レート制限キュー144に格納することを示す。
【0203】
なお、優先的に伝送するか否かを示す優先要否情報をユーザが設定できる構成としない場合は、レート非制限キュー143とレート制限キュー144とを区別する必要がないので、全てのエントリの「割り当てキュー」カラムの値を“レート非制限”としておいてもよいし、「割り当てキュー」カラムを設けなくてもよい。
【0204】
また、「割り当てキュー」カラムと、QoS対象記憶部22の「優先要否情報」カラムとは、実質的に同じ情報を格納するカラムである。つまり、データフローを優先的に伝送する必要があることがユーザより指定されている場合は、QoS対象記憶部22のエントリの「優先要否情報」カラムの値は“要”であるとともに、キュー割り当て情報記憶部23の「割り当てキュー」カラムの値は“レート非制限”である。また、データフローを優先的に伝送する必要がないことがユーザより指定されている場合は、QoS対象記憶部22の「優先要否情報」カラムの値は“否”であるとともに、キュー割り当て情報記憶部23の「割り当てキュー」カラムの値は“レート制限”である。つまり、「優先要否情報」カラムの値が決まれば、「割り当てキュー」カラムの値が決まる。ただし、後述するQoS対象設定画面161および162を用いることにより、ユーザは、「優先要否情報」カラムの値と「割り当てキュー」カラムの値とを、個別に更新することができる。
【0205】
「最終受信日時」は、サーバ600から送信されるデータフローに属するパケットをHGW101aが最後に受信した日時である。タイムアウトの判定などに用いるものである。
【0206】
表3では、例えば、「*.vod.service-a.co.jp」の表現に合致するドメイン名のサーバ600(IPアドレスは、「101.101.101.1」、「101.101.101.2」、「101.101.101.3」、「101.101.101.4」のいずれであってもよい)から、IPアドレスが「192.168.0.1」であるSTB401へ送信されるパケットは、「レート非制限キュー143」に格納すること、および、該パケットをHGW101aが最後に受信した日時が「2009年1月16日10時50分10秒」である旨が記憶されている。
【0207】
なお、「ドメイン名」、「サーバIPアドレス」、および「クライアントIPアドレス」の少なくともいずれかが異なる毎に、異なるエントリがキュー割り当て情報記憶部23に記憶される。したがって、データフローの送信元のサーバ600のドメイン名は同じであるが、当該データフローの送信先のデータ送受信装置400のIPアドレスが異なる場合(つまり、異なるデータ送受信装置400が、同じサービスのデータフローを受信する場合)、それぞれに対応するエントリがキュー割り当て情報記憶部23に記憶される。また、データフローの送信元のサーバ600のドメイン名は異なるが、当該データフローの送信先のデータ送受信装置400のIPアドレスは同じである場合(つまり、1台のデータ送受信装置400が、異なるサービスのデータフローを受信する場合)、それぞれに対応するエントリがキュー割り当て情報記憶部23に記憶される。
【0208】
また、データ送受信装置400のIPアドレスがDHCPを用いて付与されたものである場合には、再起動時などに変更される可能性があるので、キュー割り当て情報記憶部23には、さらに、データ送受信装置400のMAC(Media Access Control)アドレスを含めて記憶してもよい。データ送受信装置400のMACアドレスは、例えば、HGW101aとデータ送受信装置400とがARP(Address Resolution Protocol)などの通信プロトコルをやりとりすることによって取得することができるが、本発明の本質的部分ではないので、ここではその説明を省略する。
【0209】
【表3】

【0210】
なお、記憶部20は、必ずしもHGW101aに備えられる必要はなく、外部記憶装置として、読み取り可能な状態でHGW101aに接続される構成であってもよい。例えば、記憶部20は、インターネット701上やホームネットワーク501上の外部記憶装置として、HGW101aと通信可能に接続される構成であってもよい。
【0211】
WAN側通信部31は、アクセスネットワーク702を介して接続される装置との通信を行なうものである。本実施の形態では、アクセスネットワーク702を介して、基地局703との通信を行なう。そのために、WAN側通信部31は、一般的なモデム機能などを備えている。
【0212】
LAN側通信部32は、Ethernetを介して接続される装置との通信を行なうものである。本実施の形態では、LAN側通信部32は、ホームネットワーク501を介して、データ送受信装置400との通信を行なう。
【0213】
次に、主制御部10について詳細に説明する。主制御部10は、パケット転送処理部11、DNS処理部(ドメイン名/アドレス抽出手段、アドレス取得手段)12、キュー割り当て情報生成処理部(伝送制御情報生成手段、第1優先要否情報取得手段)13、伝送レート制御処理部14、QoS対象設定処理部(優先要否情報設定手段)16、およびQoS対象更新処理部17を含んでいる。
【0214】
まず、パケット転送処理部11について説明する。パケット転送処理部11は、まず、WAN側通信部31がアクセスネットワーク702を介してサーバ600から受信したパケット、および、LAN側通信部32がホームネットワーク501を介してデータ送受信装置400から受信したパケットの宛先が、HGW101aであるか否かを解析する。
【0215】
そして、上記解析の結果、上記受信したパケットの宛先がHGW101aでないことがわかり、かつ、上記受信したパケットの宛先がWAN側の装置(つまり、サーバ600など)である場合、パケット転送処理部11は、上記受信したパケットの転送処理を行なう。すなわち、ホームネットワーク501を介してデータ送受信装置400から受信した、WAN側の装置宛のパケットを、WAN側通信部31に転送する。
【0216】
一方、上記解析の結果、上記受信したパケットの宛先がHGW101aでないことがわかり、かつ、上記受信したパケットの宛先がLAN側の装置(つまり、データ送受信装置400など)である場合、パケット転送処理部11は、上記受信したパケットを、伝送レート制御処理部14に送信し、伝送レート制御処理部14に後続の処理を行なわせる。
【0217】
なお、パケットの宛先がLAN側であるか、または、WAN側であるかは、IPアドレスを解析することによって判別可能であり、これは一般的なルーティングの処理であるので、ここではその説明を省略する。また、パケットの転送処理では、一般的に、NAT(Network Address Translation)処理やNAPT(Network Address Port Translation)処理が行われるが、本発明の本質的部分ではないので、ここではその説明を省略する。
【0218】
また、パケット転送処理部11は、上記受信したパケットパケットの宛先を解析した結果、上記受信したパケットの宛先がHGW101aであることがわかれば、さらに、該パケットがDNS問合せメッセージまたはDNS応答メッセージのパケットであるか否かを解析する。そして、該パケットがDNS問合せメッセージまたはDNS応答メッセージのパケットであることがわかれば、DNS処理部12に後続の処理を行なわせる。
【0219】
さらに、パケット転送処理部11は、データ送受信装置400から、後述するQoS対象設定画面161および162のいずれかの提供を求める旨を含むパケットを受信すると、QoS対象設定処理部16に後続の処理を行なわせる。
【0220】
さらに、パケット転送処理部11は、データ送受信装置400から、アップデートサーバ606へのアクセスを求める旨を含むパケットを受信すると、QoS対象更新処理部17に後続の処理を行なわせる。
【0221】
次に、DNS処理部12について説明する。DNS処理部12は、DNSに関する一般的な処理を行なうものである。DNS処理部12は、パケット転送処理部11が受信したパケットが、データ送受信装置400から送信されたDNS問合せメッセージのパケットである場合、まず、該DNS問合せメッセージに含まれる、問合せ対象の装置のドメイン名およびデータ送受信装置400のIPアドレスを抽出する(ドメイン名/アドレス抽出手段)。そして、該抽出したドメイン名を含むエントリがサーバアドレス記憶部21に格納されているか否かを検索する。
【0222】
そして、上記検索の結果、上記ドメイン名を含むエントリがサーバアドレス記憶部21に格納されている場合、DNS処理部12は、サーバアドレス記憶部21から、上記ドメイン名に対応するIPアドレスを取得し(アドレス取得手段)、該取得したIPアドレスを含むDNS応答メッセージを、パケット転送処理部11を介して、上記DNS問合せメッセージの送信元のデータ送受信装置400に返信する。
【0223】
一方、上記検索の結果、上記ドメイン名を含むエントリがサーバアドレス記憶部21に格納されていない場合、DNS処理部12は、パケット転送処理部11を介して、上記ドメイン名を含む新たなDNS問合せメッセージを、DNSサーバ601に送信する。その後、DNSサーバ601からパケット転送処理部11を介して、上記新たなDNS問合せメッセージに対するDNS応答メッセージを受信すると、該DNS応答メッセージに含まれるドメイン名とIPアドレスとの組をサーバアドレス記憶部21に格納するとともに、該DNS応答メッセージを、パケット転送処理部11を介して、DNS問合せメッセージの送信元のデータ送受信装置400に転送する。
【0224】
なお、DNS処理部12は、DNSサーバ601からDNS応答メッセージを受信したとき、併せて、該DNS応答メッセージに含まれるTTL(Time To Live)を取得する。そして、DNS応答メッセージを受信してから上記取得したTTLで示される期間を経過した時点で、サーバアドレス記憶部21に格納した、該DNS応答メッセージに含まれるドメイン名とIPアドレスとの組を削除する。DNS問合せメッセージの送信元のデータ送受信装置400に返信するDNS応答メッセージにもTTL値を含めるが、DNSサーバ601から取得したTTL値とは独立して決定し、データ送受信装置400にてDNSキャッシュが早めに削除されるように短い値とする。
【0225】
次に、キュー割り当て情報生成処理部13について説明する。キュー割り当て情報生成処理部13は、キュー割り当て情報生成処理を行なうものである。キュー割り当て情報生成処理部13は、DNS処理部12が、DNS問合せメッセージの送信元のデータ送受信装置400に、DNS応答メッセージを送信した後、必要に応じて、キュー割り当て情報記憶部23を更新する。
【0226】
具体的には、キュー割り当て情報生成処理部13は、まず、QoS対象記憶部22の全てのエントリを検索し、「ドメイン名」カラムの値が、DNS応答メッセージに含まれる問合せ対象の装置のドメイン名と一致するエントリを抽出する。このとき、エントリが抽出されない場合は、データ送受信装置400がアクセスしようとしているサーバ600(すなわち、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名を有するサーバ600)が提供するサービスは、QoS対象記憶部22にて管理されていないサービスであるため、上記サーバ600から送信されるパケットは、QoS対象ではなく、優先的に伝送しないものであることとなる。したがって、この場合、キュー割り当て情報生成処理部13は処理を終了する。つまり、キュー割り当て情報記憶部23を更新しない。
【0227】
一方、QoS対象記憶部22から、「ドメイン名」カラムの値が、DNS応答メッセージに含まれる問合せ対象の装置のドメイン名と一致するエントリが抽出された場合、さらに、該抽出されたエントリから「優先要否情報」カラムの値を取得する。
【0228】
続いて、キュー割り当て情報生成処理部13は、サーバアドレス記憶部21の全てのエントリを検索し、QoS対象記憶部22から上記抽出したエントリの「ドメイン名」カラムの値と一致する値を「ドメイン名」カラムに有するエントリを抽出する。そして、該抽出したエントリの「サーバIPアドレス」カラムを参照することによって、データ送受信装置400がアクセスしようとしているサーバ600(すなわち、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名を有するサーバ600)のIPアドレスを取得する。なお、複数のIPアドレスが該当する場合は、全てを取得する。
【0229】
続いて、キュー割り当て情報生成処理部13は、QoS対象記憶部22から取得した「優先要否情報」カラムの値、および、サーバアドレス記憶部21から取得したIPアドレスなどを用いて、キュー割り当て情報記憶部23を更新する(伝送制御情報生成手段)。
【0230】
具体的には、(1)「ドメイン名」カラムの値が、QoS対象記憶部22から上記抽出したエントリのドメイン名であり、(2)「サーバIPアドレス」カラムの値が、サーバアドレス記憶部21から上記取得したIPアドレスであり、(3)「クライアントIPアドレス」カラムの値が、DNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400のIPアドレスであり、(4)「割り当てキュー」カラムの値が、「レート非制限」または「レート制限」であり(つまり、QoS対象記憶部22から取得したエントリの「優先要否情報」カラムの値が「要」の場合は「レート非制限」とし、「否」の場合は「レート制限」とする)、(5)「最終受信日時」カラムの値がNULL値であるエントリを、キュー割り当て情報記憶部23に生成する。
【0231】
なお、「最終受信日時」カラムの値は、現在のシステム時刻であってもよい。また、サーバアドレス記憶部21から取得したIPアドレスが複数ある場合は、それに応じて上記生成されるエントリの数も複数となる。
【0232】
なお、QoS対象記憶部22が「優先要否情報」を記憶しない構成であって、キュー割り当て情報記憶部23が「割り当てキュー」を記憶しない構成である場合は、キュー割り当て情報生成処理部13は、以下のように処理を行なう。
【0233】
まず、キュー割り当て情報生成処理部13は、QoS対象記憶部22の全てのエントリを検索し、「ドメイン名」カラムの値が、DNS応答メッセージに含まれる問合せ対象の装置のドメイン名と一致するエントリを抽出する。エントリが抽出されない場合は処理を終了する。
【0234】
続いて、キュー割り当て情報生成処理部13は、サーバアドレス記憶部21の全てのエントリを検索し、QoS対象記憶部22から上記抽出したエントリの「ドメイン名」カラムの値と一致する値を「ドメイン名」カラムに有するエントリを抽出する。そして、該抽出したエントリの「サーバIPアドレス」カラムを参照することによって、データ送受信装置400がアクセスしようとしているサーバ600(すなわち、DNS応答メッセージに含まれるドメイン名を有するサーバ600)のIPアドレスを取得する。なお、複数のIPアドレスが該当する場合は、全てを取得する。
【0235】
続いて、キュー割り当て情報生成処理部13は、サーバアドレス記憶部21から取得したIPアドレスなどを用いて、キュー割り当て情報記憶部23を更新する(伝送制御情報生成手段)。
【0236】
具体的には、(1)「ドメイン名」カラムの値が、QoS対象記憶部22から上記抽出したエントリのドメイン名であり、(2)「サーバIPアドレス」カラムの値が、サーバアドレス記憶部21から上記取得したIPアドレスであり、(3)「クライアントIPアドレス」カラムの値が、DNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400のIPアドレスであり、(4)「最終受信日時」カラムの値がNULL値であるエントリを、キュー割り当て情報記憶部23に生成する。
【0237】
ここで、表1、表2、および表3を参照しながら、キュー割り当て情報生成処理部13が行なうキュー割り当て情報生成処理について、具体例を挙げて説明する。ここでは、サーバアドレス記憶部21は、表1に示すデータを記憶しており、QoS対象記憶部22は、表2に示すデータを記憶しているものとする。また、キュー割り当て情報記憶部23は、表3に示すデータ構造であるとする。そして、IPアドレスが「192.168.0.1」であるSTB401から送信された、「sv1.vod.service-a.co.jp」というドメイン名を問合せ対象とするDNS問合せメッセージに対する処理を、DNS処理部12が行ったとする。
【0238】
この場合、上述のとおり、キュー割り当て情報生成処理部13は、まず、QoS対象記憶部22から「sv1.vod.service-a.co.jp」というドメイン名を含むエントリを抽出する。「sv1.vod.service-a.co.jp」という文字列は、「*.vod.service-a.co.jp」という表現に含まれる。したがって、「サービス名」カラムの値が「映像配信サービスA」であるエントリが抽出されることとなる。なお、当該エントリの「優先要否情報」カラムの値は「要」であることがわかる。
【0239】
次に、キュー割り当て情報生成処理部13は、「*.vod.service-a.co.jp」というドメイン名を含むエントリを、サーバアドレス記憶部21から抽出する。よって、サーバアドレス記憶部21の「ドメイン名」カラムの値が「sv1.vod.service-a.co.jp」であるエントリ、および、「sv2.vod.service-a.co.jp」であるエントリが抽出される。そして、当該エントリの「サーバIPアドレス」カラムの値は、「101.101.101.1」、「101.101.101.2」、「101.101.101.3」、および「101.101.101.4」であることがわかる。
【0240】
そして、キュー割り当て情報生成処理部13は、QoS対象記憶部22から上記得られた「ドメイン名」および「優先要否情報」カラムの値、並びに、サーバアドレス記憶部21から上記得られた「サーバIPアドレス」カラムの値などに基づいて、表3に示すデータを、キュー割り当て情報記憶部23に格納する。つまり、(1)「ドメイン名」カラムの値が「*.vod.service-a.co.jp」、「サーバIPアドレス」カラムの値が「101.101.101.1」、「クライアントIPアドレス」カラムの値が「192.168.0.1」、「割り当てキュー」カラムの値が「レート非制限」であるエントリ、(2)「ドメイン名」カラムの値が「*.vod.service-a.co.jp」、「サーバIPアドレス」カラムの値が「101.101.101.2」、「クライアントIPアドレス」カラムの値が「192.168.0.1」、「割り当てキュー」カラムの値が「レート非制限」であるエントリ、(3)「ドメイン名」カラムの値が「*.vod.service-a.co.jp」、「サーバIPアドレス」カラムの値が「101.101.101.3」、「クライアントIPアドレス」カラムの値が「192.168.0.1」、「割り当てキュー」カラムの値が「レート非制限」であるエントリ、(4)「ドメイン名」カラムの値が「*.vod.service-a.co.jp」、「サーバIPアドレス」カラムの値が「101.101.101.4」、「クライアントIPアドレス」カラムの値が「192.168.0.1」、「割り当てキュー」カラムの値の値が「レート非制限」であるエントリをそれぞれ生成する。
【0241】
次に、伝送レート制御処理部14について説明する。伝送レート制御処理部14は、伝送レート制御処理を行なうものである。伝送レート制御処理部14は、パケット転送処理部11から送信されたパケットを、キュー割り当て情報記憶部23に格納されているエントリに基づいて、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれかに格納する処理を行なう。そして、レート制限キュー144に格納されたパケットを、伝送レートを制限しつつ、LAN側通信部32に送出するとともに、レート非制限キュー143に格納されたパケットを、伝送レートを制限せずに、LAN側通信部32に送出する。そのために、伝送レート制御処理部14は、パケット振り分け処理部(送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段、第2優先要否情報取得手段、通信パケット格納手段)141、パケット送出処理部(データフロー伝送制御手段)142、および制限レート算出処理部(優先伝送レート算出手段、送出レート算出手段)145を備えている。
【0242】
パケット振り分け処理部141は、パケット転送処理部11から送信されたパケットを、キュー割り当て情報記憶部23に格納されているエントリに基づいて、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれかに格納する処理を行なう。
【0243】
具体的には、まず、パケット振り分け処理部141は、パケット転送処理部11から送信されたパケットから、送信元IPアドレスおよび送信先IPアドレスを抽出する。そして、キュー割り当て情報記憶部23のエントリから、「サーバIPアドレス」カラムの値が、上記抽出した送信元IPアドレスと一致し、かつ、「クライアントIPアドレス」カラムの値が、上記抽出した送信先IPアドレスと一致するエントリを抽出する。なお、上記エントリが複数ある場合は、そのすべてを抽出する。
【0244】
そして、上記エントリが抽出された場合、パケット振り分け処理部141は、上記抽出されたエントリの「割り当てキュー」カラムの値を取得する。そして、「割り当てキュー」カラムの値が“レート非制限”である場合、上記抽出されたエントリの「サーバIPアドレス」カラムの値および「クライアントIPアドレス」カラムの値を、それぞれ送信元IPアドレスおよび送信先IPアドレスとして有するパケットを、レート非制限キュー143に格納する。
【0245】
一方、「割り当てキュー」カラムの値が“レート制限”である場合は、上記抽出されたエントリの「サーバIPアドレス」カラムの値および「クライアントIPアドレス」カラムの値を、それぞれ送信元IPアドレスおよび送信先IPアドレスとして有するパケットを、レート制限キュー144に格納する。
【0246】
また、上記エントリが抽出された場合は、上記抽出されたエントリの「最終受信日時」カラムの値を、HGW101aが上記パケットを受信した日時で上書きする。なお、受信日時ではなく、HGW101aからパケットが送信された日時を格納してもよい。
【0247】
なお、上記エントリが抽出されない場合、パケット転送処理部11から送信されたパケットを、レート制限キュー144に格納する。
【0248】
また、キュー割り当て情報記憶部23が「割り当てキュー」を記憶しない構成である場合は、パケット振り分け処理部141は、上記抽出されたエントリの「サーバIPアドレス」カラムの値および「クライアントIPアドレス」カラムの値を、それぞれ送信元IPアドレスおよび送信先IPアドレスとして有するパケットを、レート非制限キュー143に格納する。さらに、上記抽出されたエントリの「サーバIPアドレス」カラムの値を送信元IPアドレスとして有さない、または、上記抽出されたエントリの「クライアントIPアドレス」カラムを送信先IPアドレスとして有さないパケットについては、レート制限キュー144に格納する。
【0249】
なお、パケット振り分け処理部141は、「レート制限モード」(後述するように、レート制限キュー144に格納されたパケットの伝送レートを制限すべき状態)であるか否かに関係なく、パケット転送処理部11から送信されたパケットを、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144のいずれかに格納する処理を行なう。つまり、レート制限モードでない場合に、パケット転送処理部11から送信された全てのパケットを、レート非制限キュー143に格納することは行なわない。
【0250】
次に、パケット送出処理部142は、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144を備えるとともに、これらキューに格納されたパケットをLAN側通信部32に送出するものである。
【0251】
パケット送出処理部142は、レート非制限キュー143に格納されたパケットを送出するときは、伝送レートを制限せずに、LAN側通信部32に送出する(つまり、優先的に伝送する)。
【0252】
一方、レート制限キュー144に格納されたパケットを送出するときは、まず、レート制限モードであるか否かを調べる。その結果、レート制限モードでなければ、伝送レートを制限せずに、レート制限キュー144に格納されたパケットをLAN側通信部32に送出する。また、レート制限モードであるときは、制限レート算出処理部145が算出したレート制限値LRを上限とした伝送レートで、レート制限キュー144に格納されたパケットをLAN側通信部32に送出する(言い換えれば、優先度を下げて伝送する)。
【0253】
なお、後述するQoS対象設定画面161にて、後述するQoS機能がオフに設定されている場合、パケット送出処理部142は、レート制限モードにかかわらず、伝送レートを制限せずに、レート非制限キュー143に格納されたパケットをLAN側通信部32に送出する。
【0254】
なお、レート非制限キュー143に格納されているパケットの個数が、予め定められた閾値を超えた場合は、パケット送出処理部142は、レート非制限キュー143に格納されているパケットの個数が予め定められた閾値を下回るまで、レート制限キュー144に格納されているパケットを送出しないように制御する。レート非制限キュー143に格納されているパケットを優先的に送出するためである。
【0255】
また、パケット送出処理部142は、「レート制限モード」を管理する。レート制限モードとは、レート制限キュー144に格納されたパケットの伝送レートを制限する状態である。レート制限モードであるか否かは、レート非制限キュー143にパケットが格納されているか否かを調べることによって決定する。具体的には、レート非制限キュー143にパケットが格納されている場合は、レート非制限キュー143に格納されているパケットを優先的に伝送する必要があるため、レート制限モードであると決定する。一方、レート非制限キュー143にパケットが格納されない状態が所定時間(例えば数秒)継続したときは、優先的に伝送するパケットが無い状態であることから、レート制限キュー144に格納されたパケットの伝送を制限しなくてもよいので、レート制限モードでないと決定する。
【0256】
なお、レート制限モードであるか否かを示す情報は、パケット送出処理部142内部のメモリ等にて保持してもよいし、ファイル等に読み出し可能に出力してもよい。
【0257】
次に、制限レート算出処理部145は、レート制限キュー144に格納されたパケットをLAN側通信部32に送出する際のレート制限値LRを算出するものである。既に述べたように、LRは、アクセスネットワーク702の回線容量ACと、優先データフローの伝送に必要な伝送レートの合計値DCとの差である。
【0258】
まず、制限レート算出処理部145は、HGW101aが、アクセスネットワーク702との接続処理において基地局703から取得した情報に基づいて、予めACの値を求める。ユーザが予めHGW101aにACの値を登録してもよい。
【0259】
なお、制限レート算出処理部145は、上記求めたACの値、および、上記登録されたACの値を、記憶部20(第3記憶部)に、読み出し可能に格納する。制限レート算出処理部145内のメモリやファイルに格納してもよい。
【0260】
次に、制限レート算出処理部145は、レート非制限キュー143に格納されているパケットから、送信元IPアドレスおよび送信先IPアドレスを抽出する。そして、キュー割り当て情報記憶部23のエントリから、「サーバIPアドレス」カラムの値が、上記抽出した送信元IPアドレスと一致し、かつ、「クライアントIPアドレス」カラムの値が、上記抽出した送信先IPアドレスと一致するエントリを抽出する。そして、QoS対象記憶部22のエントリのうち、「ドメイン名」カラムの値が、キュー割り当て情報記憶部23から上記抽出したエントリの「ドメイン名」カラムの値と一致するエントリを、重複することなく抽出する。そして、抽出した全てのエントリの「必要伝送レート」の値を合計することによって、DCの値を求める。
【0261】
そして、最後に、制限レート算出処理部145は、ACの値とDCの値との差を計算することにより、LRの値を算出する。なお、算出したLRの値は、パケット送出処理部142が参照可能な状態で、制限レート算出処理部145内部のメモリに保持したり、ファイル等に出力する。
【0262】
また、レート非制限キュー143に格納されているパケットは、時間とともに変わるので、制限レート算出処理部145は、所定周期で、LRの値を計算する。
【0263】
ここで、伝送レート制御処理部14が行なう伝送レート制御処理について、具体例を挙げて説明する。ここでは、キュー割り当て情報記憶部23は、表3に示すデータを記憶しているものとする。そして、IPアドレスが「101.101.101.1」である映像配信サーバ602から、IPアドレスが「192.168.0.1」であるSTB401に向けて、映像データフローが送信されたとする。
【0264】
この場合、パケット転送処理部11は、上記映像データフローに属するパケットを伝送レート制御処理部14に送信する。そして、伝送レート制御処理部14のパケット振り分け処理部141は、キュー割り当て情報記憶部23に格納されているエントリとの照合を行ない、「サーバIPアドレス」カラムの値が「101.101.101.1」であって、かつ、「クライアントIPアドレス」カラムの値が「192.168.0.1」であるエントリを抽出する。そして、該抽出されたエントリの「割り当てキュー」カラムの値を参照する。そして、この場合、「割り当てキュー」カラムの値は、“レート非制限”であるので、パケット振り分け処理部141は、上記映像データパケットを、レート非制限キュー143に格納する。
【0265】
そして、パケット送出処理部142が、上記映像データパケットを、伝送レートを制限せずに、レート非制限キュー143から送出する(つまり、優先的に伝送する)。
【0266】
一方、IPアドレスが「201.201.201.1」であるFTPサーバ605から、IPアドレスが「192.168.0.4」であるPC404に向けて、FTPデータフローが送信されたとする。
【0267】
この場合も、パケット転送処理部11は、上記FTPデータフローに属するパケットを伝送レート制御処理部14に送信する。そして、伝送レート制御処理部14のパケット振り分け処理部141は、キュー割り当て情報記憶部23に格納されているエントリとの照合を行なうが、エントリは抽出されない。よって、パケット振り分け処理部141は、上記FTPデータパケットを、レート制限キュー144に格納する。
【0268】
そして、パケット送出処理部142が、上記FTPデータパケットを、伝送レートを制限しつつ、レート制限キュー144から送出する(言い換えれば、優先度を下げて伝送する)。ただし、上述したように、伝送レートを制限しつつ送出するのは、レート制限モードのとき(つまり、同時期に、レート非制限キュー143から送出されるパケットが存在するとき)のみである。レート制限モードでないときは、パケット送出処理部142は、上記FTPデータパケットを、伝送レートを制限せずに、レート制限キュー144から送出する。
【0269】
次に、QoS対象設定処理部16について説明する。QoS対象設定処理部16は、パケット転送処理部11を介してデータ送受信装置400から受信した要求に応じて、QoS対象記憶部22およびキュー割り当て情報記憶部23に格納されているデータを更新するためのユーザインタフェースであるQoS対象設定画面161および162を構成する所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信する。すなわち、QoS対象設定処理部16は、一般的なWebサーバの機能を含んでいる。なお、QoS対象設定画面161および162は、データ送受信装置400のユーザが、HGW101aに、キュー割り当て情報生成処理および伝送レート制御処理に関する各種設定を行なうことができる画面である。QoS対象設定画面161および162については後述する。
【0270】
そして、QoS対象設定処理部16は、データ送受信装置400のユーザがQoS対象設定画面161にて入力した内容に基づいて、QoS対象記憶部22に格納されているデータを更新する。また、データ送受信装置400のユーザがQoS対象設定画面162にて入力した内容に基づいて、QoS対象記憶部22およびキュー割り当て情報記憶部23に格納されているデータを更新する。この更新処理については、後述するQoS対象設定画面161および162の説明時に、併せて説明する。なお、上記更新処理があったとき、QoS対象設定画面161またはQoS対象設定画面162の表示を更新する必要がある場合は、それらを構成する所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信する。
【0271】
また、QoS対象設定処理部16は、QoS対象更新処理部17がQoS対象記憶部22に新たなエントリを生成した旨の通知に応じて、QoS対象設定画面161および162のいずれかの表示を更新するために、QoS対象設定画面161および162を構成する所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信する。
【0272】
次に、QoS対象更新処理部17について説明する。QoS対象更新処理部17は、パケット転送処理部11を介してアップデートサーバ606と通信し、アップデートサーバ606から、QoS対象記憶部22の新たなエントリを追加するためのデータ(具体的には、サービス名、ドメイン名、必要伝送レート、および優先要否情報の組)を取得する。該取得を行なうタイミングは特に限定されず、例えば、所定周期でアップデートサーバ606にアクセスし、上記データを取得してもよいし、また例えば、上記QoS対象設定画面161および162にて所定のユーザ操作があった旨をデータ送受信装置400から受信したことをトリガとしてアップデートサーバ606にアクセスし、上記データを取得してもよい。
【0273】
そして、上記取得したデータに基づいて、QoS対象更新処理部17は、QoS対象記憶部22に新たなエントリを生成する。さらに、このとき、上記新たにエントリを生成した旨をQoS対象設定処理部16に通知する。
【0274】
なお、QoS対象更新処理部17の処理については、後述するQoS対象設定画面161および162を説明する際にも説明する。
【0275】
(HGWがパケットを受信した際の処理の流れ)
次に、図6を参照しながら、HGW101aがパケットを受信した際の処理の流れの概要について説明する。図6は、HGW101aがパケットを受信した際の処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【0276】
まず、HGW101aは起動直後、パケットの受信を待つ状態となる(ステップS501)。そして、パケット転送処理部11がパケットを受信すると(ステップS501にてYES)、該受信したパケットの宛先が、HGW101aであるか否かを解析する(ステップS502)。
【0277】
そして、上記解析の結果、上記受信したパケットの宛先がHGW101aでないことがわかり(ステップS502にてNO)、かつ、上記受信したパケットの宛先がアクセスネットワーク702側(つまり、WAN側)である(ステップS503にてNO)場合、パケット転送処理部11が、上記受信したパケットの転送処理を行なう(ステップS504)。すなわち、データ送受信装置400から受信したパケットを、WAN側通信部31に転送する。
【0278】
一方、ステップS503にて、上記受信したパケットの宛先がホームネットワーク501側(つまり、LAN側)である場合(ステップS503にてYES)、当該パケットを、伝送レート制御処理部14に送信し、伝送レート制御処理部14が伝送レート制御処理を行なう(ステップS505)。すなわち、サーバ600から受信したパケットを自装置にバッファリングしつつ、LAN側通信部32へ送出する。伝送レート制御処理の流れについては、別のフローチャートを用いて後述する。
【0279】
一方、ステップS502での解析の結果、上記受信したパケットの宛先がHGW101aであることがわかれば(ステップS502にてYES)、パケット転送処理部11は、さらに、該パケットがDNS問合せメッセージのパケットまたはDNS応答メッセージのパケット(以下、DNSパケット)であるか否かを解析する(ステップS506)。
【0280】
そして、該パケットがDNSパケットであることがわかれば(ステップS506にてYES)、DNS処理部12は、既に述べたように、DNSに関する一般的な処理を行なう(ステップS507)。つまり、必要に応じてDNSサーバ601とのやりとりを行ない、最終的に、DNS問合せメッセージの送信元に、DNS応答メッセージを送信する。なお、DNSサーバ601に問合せた結果として得られた問合せ対象のIPアドレスは、サーバアドレス記憶部21に記憶される。
【0281】
DNS問合せメッセージの送信元にDNS応答メッセージを送信した後、キュー割り当て情報生成処理部13は、キュー割り当て情報生成処理を行なう(ステップS508)。キュー割り当て情報処理の流れについては、別のフローチャートを用いて後述する。
【0282】
なお、ステップS506にて、受信したパケットがDNSパケットでないことがわかれば(ステップS506にてNO)、当該受信したパケットに応じた処理を行なう(ステップS509)。例えば、QoS対象設定画面161および162の表示処理などが、ステップS509で行われる処理に含まれる。
【0283】
なお、このフローチャートでは、パケット転送処理部11が、QoS対象設定画面161および162の提供を求める内容を含むパケット、および、アップデートサーバ606へのアクセスを求める内容を含むパケットを受信した際の処理の流れについては省略している。また、本発明に関係のないパケットの処理についても省略している。
【0284】
(キュー割り当て情報生成処理の流れ)
次に、図7を参照しながら、キュー割り当て情報生成処理部13が行なうキュー割り当て情報生成処理の流れの概要について説明する。図7は、キュー割り当て情報生成処理部13が行なうキュー割り当て情報生成処理の流れの概要を示すフローチャートである。なお、QoS対象記憶部22は表2に示すデータ構造であり、キュー割り当て情報記憶部23は表3に示すデータ構造であるとする。
【0285】
まず、DNS処理部12が、パケット転送処理部11が受信したDNS問合せメッセージの送信元に対して、対応するDNS応答メッセージを、パケット転送処理部11を介して送信した場合(ステップS701にてYES)、キュー割り当て情報生成処理部13が、QoS対象記憶部22の全てのエントリを検索し、「ドメイン名」カラムの値が、上記DNS応答メッセージに含まれる問合せ対象の装置のドメイン名と一致するエントリを抽出する(ステップS702)。
【0286】
そして、上記エントリが抽出された場合(ステップS703にてYES)、キュー割り当て情報生成処理部13は、サーバアドレス記憶部21の全てのエントリを検索し、ステップS702にて抽出されたエントリの「ドメイン名」カラムの値と一致する値を「ドメイン名」カラムに有するエントリを抽出する(ステップS704)。
【0287】
そして、上記エントリが抽出された場合(ステップS705にてYES)、キュー割り当て情報生成処理部13は、以下のエントリをキュー割り当て情報記憶部23に生成する(ステップS706)。すなわち、(1)「ドメイン名」カラムの値には、ステップS704にて抽出したエントリのドメイン名を設定し、(2)「サーバIPアドレス」カラムの値には、ステップS704にて抽出したエントリのIPアドレスを設定し、(3)「クライアントIPアドレス」カラムの値には、DNS応答メッセージの送信先のデータ送受信装置400のIPアドレスを設定し、(4)「割り当てキュー」カラムの値には、ステップS702にて抽出したエントリの「優先要否情報」カラムの値が「要」の場合は「レート非制限」を、また、「否」の場合は「レート制限」を設定し、(5)「最終受信日時」カラムの値には、NULLを設定したエントリを生成する。
【0288】
なお、「最終受信日時」カラムの値は、現在のシステム時刻を格納してもよい。また、ステップS704にて抽出したエントリが複数ある場合は、それに応じて上記生成されるエントリも複数生成される。
【0289】
そして、ステップS706の後、または、ステップS702にてエントリが抽出されない場合(ステップS703にてNO)、または、ステップS704にてエントリが抽出されない場合(ステップS705にてNO)、DNS応答メッセージに含まれる問合せ対象の装置のドメイン名の全てについてキュー割り当て情報生成処理を行なったかどうか(換言すれば、一つのDNS応答メッセージで複数のドメイン名についての応答が行われており、その複数のドメイン名の全てについてキュー割り当て情報生成処理を行なったかどうか)を判定する(ステップS707)。そして、全てのドメイン名についてキュー割り当て情報生成処理を行なっていない場合(ステップS707にてNO)、未処理のドメイン名について、ステップS702〜S706を繰り返す。
【0290】
一方、全てのドメイン名についてキュー割り当て情報生成処理を行なった場合(ステップS707にてYES)、および、ステップS701にてDNS応答メッセージを送信していない場合(ステップS701にてNO)、キュー割り当て情報生成処理部13は、処理を終了する(エンド)。
【0291】
(伝送レート制御処理の流れ)
次に、図8を参照しながら、伝送レート制御処理部14が行なう伝送レート制御処理の流れの概要について説明する。図8は、伝送レート制御処理部14が行なう伝送レート制御処理の流れの概要を示すフローチャートである。なお、キュー割り当て情報記憶部23は、表3に示すデータ構造であるとする。
【0292】
まず、パケット振り分け処理部141が、パケット転送処理部11から送信されたパケットに含まれる、送信元のIPアドレスおよび送信先のIPアドレスを抽出する(ステップS901)。
【0293】
そして、パケット振り分け処理部141が、キュー割り当て情報記憶部23のすべてのエントリを検索し、「サーバIPアドレス」カラムの値が、パケット転送処理部11から送信されたパケットの送信元IPアドレスと一致し、かつ、「クライアントIPアドレス」カラムの値が、当該パケットの送信先IPアドレスと一致するエントリを抽出する(ステップS902)。なお、上記エントリが複数ある場合は、そのすべてを抽出する。
【0294】
そして、上記エントリが抽出された場合(ステップS903にてYES)、伝送レート制御処理部14は、上記抽出されたエントリの「割り当てキュー」カラムの値を取得する(ステップS904)。そして、「割り当てキュー」カラムの値が“レート非制限”である場合は、パケット転送処理部11から送信されたパケットを、レート非制限キュー143に格納する(ステップS905)。続いて、パケット送出処理部142は、伝送レートを制限せずに、レート非制限キュー143に格納されたパケットを、LAN側通信部32に送出する(ステップS906)。
【0295】
一方、エントリが抽出されない場合(ステップS903にてNO)、および、ステップS904にて調べた「割り当てキュー」カラムの値が“レート制限”である場合、パケット振り分け処理部141は、パケット転送処理部11から送信されたパケットを、レート制限キュー144に格納する(ステップS907)。
【0296】
続いて、パケット送出処理部142が、現在、レート制限モードであるか否かを調べる(ステップS908)。そして、レート制限モードでない場合(ステップS908にてNO)、伝送レートを制限せずに、レート制限キュー144に格納されたパケットを、LAN側通信部32に送出する(ステップS909)。一方、レート制限モードである場合(ステップS908にてYES)、パケット送出処理部142は、制限レート算出処理部145が算出したレート制限値LR以下になるように伝送レートを制限しつつ、レート制限キュー144に格納されたパケットを、LAN側通信部32に送出する(ステップS910)。
【0297】
なお、実際には、パケットは、各キューに格納された後、直ちにキューから送出されない場合がある。また、キューにパケットが格納されている間に、新たなパケットをWAN側通信部31にて受信した場合は、該受信したパケットと、現在キューに格納されているパケットとを並列して、伝送レート制御処理を行なう。
【0298】
また、レート非制限キュー143に格納されているパケットの個数が、予め定められた閾値を超えた場合は、レート非制限キュー143に格納されているパケットを優先的に送出すること目的として、レート非制限キュー143に格納されているパケットの個数が予め定められた閾値を下回るまで、レート制限キュー144に格納されているパケットを送出しないように制御する。
【0299】
(簡易版のQoS対象設定画面)
次に、図9および図10を参照しながら、QoS対象設定画面161および162について説明する。まず、図9は、設定可能な項目が少ない簡易版のQoS対象設定画面161の画面例を示す模式図である。
【0300】
本画面は、一般的なWebサーバの機能を含むQoS対象設定処理部16がデータ送受信装置400からの要求に応じて提供するものであり、データ送受信装置400のユーザがWebブラウザなどを用いてアクセスする。なお、本画面にアクセスするための方法としては、HGW101aのルーティング機能等に関する設定を行なうための画面(一般的なルータの設定画面)上に、本画面へ移動するためのリンクを設けておいてもよいし、ユーザが本画面のURLをWebブラウザに直接入力してもよい。また、HGW101aに入出力装置を接続し、該接続した入出力装置から設定できるようにしてもよい。
【0301】
本画面では、図示のように、(1)QoS機能をオンにするかオフにするかについてユーザが入力可能な入力フィールドN1、および、(2)サーバ600にて提供されている映像配信サービスを優先的に享受するか否か(つまり、映像データフローを優先的に伝送するか否か)についてユーザが入力可能な入力フィールドN2を設けている。ここでは、入力フィールドN1およびN2として、プルダウンメニューやリストボックスなどを想定しているが、特に限定されるものではない。
【0302】
ここで、「QoS機能をオンにする」とは、レート制限モードを有効にすることを指すものとする。また、上記「QoS機能をオフにする」とは、レート制限モードを無効にすることを指すものとする。よって、QoS機能がオフに設定されているときは、レート制限モードであっても、HGW101aは、伝送レートを制限せずに、レート制限キュー144に格納されたパケットを、LAN側通信部32に送出する。
【0303】
なお、HGW101a以外の装置にて何らかのQoS処理が行われ、それらの処理と本発明におけるQoS処理を同時利用した場合に不都合が発生する場合に、QoS機能をオフにすることが考えられる。例えば、サーバ600が予めDSCP(Differentiated Services Code)値を付与した上でパケットを送信する場合に、HGW101aで伝送レートを制限されると不都合が発生することが考えられる。例えば、サーバ600にて設定された優先度と、HGW101aで行なう伝送レートの制限とに不整合がある場合、サーバ600にて設定された優先度でパケットが伝送されないことになる。
【0304】
また、QoS機能をオンにするかオフにするかを示す情報が、記憶部20に記憶され、QoS対象設定処理部16が本画面を提供するときは、QoS機能をオンにするかオフにするかを示す情報を記憶部20から読み出し、該読み出した値に応じて、入力フィールドN1に値を表示する。
【0305】
また、QoS機能をオンにするかオフにするかを示す情報を記憶部20に記憶するタイミングは、入力フィールドN1に入力があったときでもよいし、本画面下部にある「決定」ボタンB3を押下したときであってもよい。また、QoS機能がオフに設定されたときは、入力フィールドN2などをユーザが入力不可となるように制御してもよい。
【0306】
次に、入力フィールドN2について説明する。QoS対象設定処理部16は、QoS対象記憶部22の内容を読み出して、入力フィールドN2に値を表示する。具体的には、QoS対象記憶部22の「優先要否情報」カラムの値を読み出して、サービス名毎に表示する。なお、QoS対象設定処理部16は、「優先要否情報」カラムの値が「要」である場合は、図示のように「する」に変換して表示し、「優先要否情報」カラムの値が「否」である場合は、図示のように「しない」に変換して表示する。
【0307】
そして、入力フィールドN2にユーザからの入力があったとき、QoS対象設定処理部16は、QoS対象記憶部22を更新する。具体的には、入力フィールドN2にて優先する旨が入力されたサービスを「サービス名」カラムの値として有するQoS対象記憶部22のエントリを抽出し、該エントリの「優先要否情報」カラムの値を、「要」に更新する。また、入力フィールドN2にて優先しない旨が入力されたサービスを「サービス名」カラムの値として有するエントリを抽出し、該エントリの「優先要否情報」カラムの値を、「否」に更新する。
【0308】
なお、上記更新のタイミングは、入力フィールドN2にユーザからの入力があったときに限定されるものではなく、QoS対象設定画面161の「決定」ボタンB3が押下されたときであってもよい。
【0309】
上述のように、単に、優先するか否かのみをユーザに入力させる理由は、QoSの設定に詳しくないユーザでも、比較的容易にQoSに関する設定を可能とするためである。詳細な設定を行ないたいユーザは、「詳細設定」ボタンB1を押下することにより、後述する、設定可能な項目が多い詳細版のQoS対象設定画面162にて各種設定が可能である。
【0310】
次に、「サービスを追加」ボタンB2について説明する。ユーザが「サービスを追加」ボタンB2を押下すると、QoS対象更新処理部17が、アップデートサーバ606と通信し、アップデートサーバ606から、QoS対象記憶部22の新たなエントリを追加するためのデータ(サービス名、ドメイン名、必要伝送レート、および優先要否情報の組)を取得する。例えば、アップデートサーバ606に、QoS対象記憶部22に格納されていないデータとして、サービス名が「映像配信サーバE」、ドメイン名が「service-e.co.jp」、必要伝送レートが「15Mbps」、優先要否情報が「要」という組のデータが存在するとき、該データを取得する。そして、該取得したデータに基づいて、QoS対象更新処理部17は、QoS対象記憶部22に新たなエントリを生成する。上記例では、「サービス名」カラムの値が「映像配信サーバE」、「ドメイン名」カラムの値が「service-e.co.jp」、「必要伝送レート」カラムの値が「15Mbps」、「優先要否情報」カラムの値が「要」というエントリを生成する。
【0311】
なお、上記取得を行なうタイミングは、「サービスを追加」ボタンB2をユーザが押下したときに限定されるものではなく、例えば、所定周期でアップデートサーバ606にアクセスして上記データを取得してもよい。その際、QoS対象記憶部22に新たなエントリを生成する場合は、ユーザに対して所定の確認メッセージを表示してもよい。
【0312】
また、QoS対象更新処理部17が、QoS対象記憶部22に上記新たなエントリを生成したとき、その旨をQoS対象設定処理部16に通知する。該通知を受信したQoS対象設定処理部16は、簡易版のQoS対象設定画面161を更新するために、QoS対象設定画面161を構成する所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信する。例えば、上述の例では、「映像配信サーバE」で提供されるサービスを優先的に享受するか否かについてユーザが入力可能な入力フィールドN2を画面上に表示するように構成された所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信する。
【0313】
(詳細版のQoS対象設定画面)
次に、図10を参照しながら、詳細版のQoS対象設定画面162の画面例について説明する。図10は、詳細版のQoS対象設定画面162の画面例を示す模式図である。
【0314】
本画面は、QoS対象設定処理部16がデータ送受信装置400からの要求に応じて提供するものであり、データ送受信装置400のユーザがWebブラウザなどを用いてアクセスする。本画面では、図9で示した簡易版のQoS対象設定画面161よりもさらに詳しい設定が可能である。
【0315】
なお、図9で示した簡易版のQoS対象設定画面161にて「詳細設定」ボタンB1を押下したときに本画面に遷移することを想定しているが、これに限定されるものではなく、HGW101aのルーティング機能等に関する設定を行なうための画面(一般的なルータの設定画面)に、本画面へ移動するためのリンクを設けておいてもよいし、ユーザが本画面のURLをWebブラウザに直接入力してもよい。
【0316】
本画面では、図示のように、(1)映像配信サービスの名称、(2)映像配信サービスのドメイン名、(3)映像配信サービスにて伝送されるデータフローが必要とする伝送レート、(4)映像配信サービスのデータフローを受信しているデータ送受信装置400の装置名、(5)該データ送受信装置400のIPアドレス、(6)該データ送受信装置400にて、映像配信サービスを優先的に享受するか否か(つまり、映像データフローを優先的に伝送するか否か)、および、(7)データ送受信装置400毎の、映像配信サービスのデータフローの現在の伝送レートを表示する。
【0317】
なお、上記(4)および(7)は、必ずしも表示しなくてもよい。また、上記(5)のIPアドレスに加えて、さらに、データ送受信装置400のMACアドレスを表示してもよい。
【0318】
上記(1)、(2)、(3)、(6)については、QoS対象記憶部22の内容を読み出して表示する。具体的には、QoS対象記憶部22の「サービス名」カラムの値、「ドメイン名」カラムの値、「必要伝送レート」カラムの値、「優先要否情報」カラムの値を、それぞれ表示する。また、上記(5)については、キュー割り当て情報記憶部23の内容を読み出して表示する。具体的には、キュー割り当て情報記憶部23の「クライアントIPアドレス」カラムの値を表示する。
【0319】
なお、上記(4)は、HGW101aが所定の通信プロトコルを用いてデータ送受信装置400から取得したり、ユーザが入力するなどして表示すればよい。
【0320】
また、上記(7)は、HGW101aが各データフローの伝送レートを計測して表示すればよい。例えば、過去1秒間の平均レートや、過去の瞬間最大レートを表示する。なお、伝送レートは、逐次変化するので、所定周期で再計測するとともに、再表示する。また、所定周期で再表示する代わりに、QoS対象設定画面162の表示時に算出した伝送レートを表示し続けてもよい。
【0321】
そして、上記(3)については、入力フィールドN3により、伝送レートを示す数値が入力可能であり、上記(6)については、入力フィールドN4により、優先要否情報が入力可能であり、上記(2)については、入力フィールドN5により、任意の文字列が入力可能である。入力フィールドN3およびN4は、プルダウンやリストボックスなどを想定しており、入力フィールドN5はテキストボックスを想定しているが、特に限定されるものではない。
【0322】
入力フィールドN3にて、伝送レートが入力されたときは、QoS対象設定処理部16は、QoS対象記憶部22を更新する。具体的には、入力フィールドN3にて伝送レートが入力されたサービスを「サービス名」カラムの値として有するQoS対象記憶部22のエントリを抽出し、該エントリの「必要伝送レート」カラムの値を上記入力された値で更新する。
【0323】
なお、上記更新のタイミングは、入力フィールドN3にユーザの入力があったときに限定されるものではなく、QoS対象設定画面162の「決定」ボタンB5が押下されたときであってもよい。
【0324】
入力フィールドN4にて、優先要否情報が入力されたときは、QoS対象設定処理部16は、キュー割り当て情報記憶部23を更新する。具体的には、入力フィールドN4にて値が入力されたサービスのドメイン名を「ドメイン名」カラムの値として有するとともに、入力フィールドN4にて値が入力された装置のIPアドレスを「クライアントIPアドレス」カラムの値として有するキュー割り当て情報記憶部23のエントリを抽出し、該エントリの「割り当てキュー」カラムの値を更新する。入力フィールドN4の値が“する”であれば、「割り当てキュー」カラムの値を“レート非制限”に更新し、また、入力フィールドN4の値が“しない”であれば、「割り当てキュー」カラムの値を“レート制限”に更新する。
【0325】
なお、上記更新のタイミングは、入力フィールドN4にユーザの入力があったときに限定されるものではなく、QoS対象設定画面162の「決定」ボタンB5が押下されたときであってもよい。
【0326】
また、このように、映像配信サービスを優先的に享受するか否かについて、データ送受信装置400毎に、入力可能としている理由は、例えば、映像配信サービスAのデータフローを受信しているデータ送受信装置400として、STB401およびPC404がある場合、STB401への映像配信サービスAのデータフローは優先的に伝送したいが、PC404への映像配信サービスAのデータフローは優先的に伝送しなくてよいような場合に、データ送受信装置400毎に設定可能であるのが望ましいためである。
【0327】
また、入力フィールドN5にて、ドメイン名がユーザに入力されたときは、QoS対象設定処理部16はQoS対象記憶部22を更新する。具体的には、入力フィールドN5にてドメイン名がユーザに入力されたサービスを「サービス名」カラムの値として有するQoS対象記憶部22のエントリを抽出し、該エントリの「ドメイン名」カラムの値を上記入力されたドメイン名で更新する。
【0328】
また、データフローを受信しているデータ送受信装置400がない映像配信サービスについては、上記(4)は「無し」と表示し、上記(5)、(6)、(7)は「−」と表示し、入力フィールドN4はユーザが入力できないようにすればよい。図10に示す画面では、映像配信サービスCおよび映像配信サービスDがこれに該当する。
【0329】
また、本画面を表示しているときに、映像配信サービスのデータフローを受信するデータ送受信装置400が増減された場合には、その増減を本画面に反映するために、再度、QoS対象設定画面162を構成する所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信してもよい。
【0330】
次に、「サービスを追加」ボタンB4について説明する。「サービスを追加」ボタンB4をユーザが押下したときの動作は、図9で示した画面において「サービスを追加」ボタンB2をユーザが押下したときと同様である。すなわち、QoS対象更新処理部17が、アップデートサーバ606と通信し、アップデートサーバ606から、QoS対象記憶部22の新たなエントリを追加するためのデータ(サービス名、ドメイン名、および必要伝送レートの組)を取得する。そして、該取得したデータに基づいて、QoS対象更新処理部17は、QoS対象記憶部22に新たなエントリを生成する。そして、QoS対象更新処理部17が、QoS対象記憶部22に上記新たなエントリを生成したとき、その旨をQoS対象設定処理部16に通知し、QoS対象設定処理部16は、上記新たなエントリの内容を表示するように、詳細版のQoS対象設定画面162を更新する。
【0331】
(アクセスネットワークにおいてデータフローが使用する伝送帯域の推移)
次に、図11を参照しながら、HGW101aにてホームネットワーク501へ送出するデータフローの伝送レートを制限した場合における、アクセスネットワーク702における伝送帯域の使用状況について説明する。図11は、HGW101aにてホームネットワーク501へ送出するデータフローの伝送レートを制限した場合における、アクセスネットワーク702にて使用される伝送帯域の時間的推移の一例を示す模式図である。
【0332】
なお、この例におけるアクセスネットワーク702の回線容量は70Mbpsであり、インターネット701およびホームネットワーク501の回線容量は100Mbpsであるものとする。また、QoS対象記憶部22は、表2に示すデータを記憶しているものとする。そして、FTPサーバ605からFTPデータフローが、映像配信サーバ602から映像配信サービスAの映像データフローが、映像配信サーバ603から映像配信サービスBの映像データフローが、映像配信サーバ604から映像配信サービスCの映像データフローが、それぞれ伝送されるものとする。
【0333】
まず、時刻T1までは、FTPデータフローのみが伝送されているとする。このとき、FTPサーバ605のドメイン名を有するエントリは、キュー割り当て情報記憶部23に格納されていないので、パケット振り分け処理部141は、FTPデータフローのパケットをレート制限キュー144に格納する。しかしながら、この時点では、レート非制限キュー143に格納されるデータフローがないため、レート制限モードではない。
【0334】
よって、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートを制限せずに送出する。その結果、ホームネットワーク501の回線容量である100Mbpsを最大限に使用するように、FTPデータフローのパケットが送出される。
【0335】
したがって、この時点でのアクセスネットワーク702におけるFTPデータフローの伝送レートは、図示のとおり、アクセスネットワーク702の回線容量である70Mbpsとなる。なお、図示のとおり、FTPのデータフローの伝送レートは、時間の経過とともに多少増減している(図11に示すグラフの凹部分)。同図では、増減の幅は、一定の時間幅および一定のレート幅としているが、これは説明の簡略化のためであり、実際には、時間やレートの変動幅は一定とは限らない。他のデータフローについても同様である。
【0336】
次に、時刻T1から、映像配信サービスAの映像データフローの伝送が開始されたとする。映像配信サーバ602のドメイン名を有するエントリが、キュー割り当て情報記憶部23に格納されており、かつ、当該エントリの「割り当てキュー」の値が“レート非制限”であるので、パケット振り分け処理部141は、映像配信サービスAの映像データフローのパケットを、レート非制限キュー143に格納する。
【0337】
よって、この時点からレート制限モードとなるので、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートがレート制限値LR以下になるように制限しつつ、送出する。
【0338】
このとき、アクセスネットワーク702の回線容量が70Mbpsであり、また、映像配信サービスAの映像データフローの必要伝送レートは10Mbpsである(QoS対象記憶部22を参照することにより分かる)ことから、制限レート算出処理部145が算出するレート制限値LRは、60Mbps(=70Mbps−10Mbps)となる。
【0339】
よって、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたパケットを、60Mbpsに制限して送出する。
【0340】
したがって、この時点でのアクセスネットワーク702におけるFTPデータフローの伝送レートは、図示のとおり、60Mbpsとなる。そして、残りの10Mbpsで、映像配信サービスAの映像データフロー(必要伝送レートが10Mbps)が伝送されるので、映像データフローの伝送遅延等の発生を抑制することができる。
【0341】
なお、図11では、時刻T1で、直ちに、FTPデータフローの伝送レートが60Mbpsに制限されるように記載しているが、正確には、FTPデータフローの伝送レートは時刻T1から徐々に低下していき、また、映像配信サービスAの映像データフローの伝送レートは時刻T1から徐々に上昇する。しかしながら、同図では、説明の簡略化のため、記載を省略している。
【0342】
また、時刻T11から時刻T12の期間において、映像配信サービスAの映像データフローの伝送レートが一時的に高くなっている(10Mbps以上になっている)。既に述べた通り、HGW101aでは、レート非制限キュー143に格納されたパケットは、レート制限キュー144に格納されたパケットよりも優先的に送出されるので、このように、伝送帯域が不足する場合は、図示のとおり、FTPデータフローが使用する伝送帯域が減り、映像配信サービスAの映像データフローの伝送帯域が増える。
【0343】
また、例えば時刻T13から時刻T14の期間では、FTPデータフローは、制限された60Mbpsの伝送帯域の全てを使用しているものの、映像配信サービスAの映像データフローの伝送帯域には空きが生じている。このように空きが生じる理由は、通常は、QoS対象記憶部22に記憶されている「必要伝送レート」が、実際に必要な伝送レートよりも多めに設定されることが多いためである。しかしながら、FTPデータフローの伝送レートは制限されているので、上記のように伝送帯域に空きがあっても、その空きを使用してFTPデータフローが伝送されることはない。
【0344】
次に、時刻T2から、映像配信サービスBの映像データフローの伝送が開始されたとする。映像配信サーバ603のドメイン名を有するエントリが、キュー割り当て情報記憶部23に格納されており、かつ、当該エントリの「割り当てキュー」の値が“レート非制限”であるので、パケット振り分け処理部141は、映像配信サービスBの映像データフローのパケットを、レート非制限キュー143に格納する。よって、時刻T2からは、映像配信サービスAおよび映像配信サービスBの映像データフローが、レート非制限キュー143に格納されている。
【0345】
そのため、引き続き、レート制限モードが維持され、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートがレート制限値LR以下になるように制限しつつ、送出する。
【0346】
このとき、アクセスネットワーク702の回線容量が70Mbpsであり、また、映像配信サービスAの映像データフローの必要伝送レートは10Mbpsであり、映像配信サービスBの映像データフローの必要伝送レートは15Mbpsであり、制限レート算出処理部145が算出するレート制限値LRは、45Mbps(=70Mbps−10Mbps−15Mbps)となる。
【0347】
よって、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、45Mbpsに制限して送出する。
【0348】
したがって、この時点でのアクセスネットワーク702におけるFTPデータフローの伝送レートは、図示のとおり、45Mbpsとなる。そして、残りの25Mbpsで、映像配信サービスAの映像データフロー(必要伝送レートが10Mbps)および映像配信サービスBの映像データフロー(必要伝送レートが15Mbps)が伝送されるので、映像データフローの伝送遅延等の発生を抑制することができる。
【0349】
次に、時刻T3から、映像配信サービスCの映像データフローの伝送が開始されたとする。映像配信サーバ603のドメイン名を有するエントリが、キュー割り当て情報記憶部23に格納されており、かつ、当該エントリの「割り当てキュー」の値が“レート制限”であるので、パケット振り分け処理部141は、映像配信サービスCの映像データフローのパケットを、レート制限キュー144に格納する。つまり、時刻T3からは、FTPデータフローおよび映像配信サービスCの映像データフローが、レート制限キュー144に格納され、また、映像配信サービスAおよび映像配信サービスBの映像データフローが、レート非制限キュー143に格納される。
【0350】
したがって、制限レート算出処理部145が算出するレート制限値LRは、45Mbpsのまま変わらない。
【0351】
そして、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローおよび映像配信サービスCの映像データフローのパケットを、合計が45Mbps以下になるように制限して送出する。
【0352】
したがって、この時点でのアクセスネットワーク702におけるFTPデータフローおよび映像配信サービスCの映像データフローの伝送レートは、図示のとおり、45Mbpsとなる。そして、残りの25Mbpsで、映像配信サービスAの映像データフロー(必要伝送レートが10Mbps)および映像配信サービスBの映像データフロー(必要伝送レートが15Mbps)が伝送されるので、映像配信サービスAおよび映像配信サービスBの映像データフローについては、伝送遅延等の発生を抑制することができる。
【0353】
なお、この場合、映像配信サービスCの映像データフローは、FTPデータフローと同等の優先度で伝送帯域を使用することとなる。ただし、伝送遅延やジッタが生じない程度に十分な伝送帯域を確保できるとは限らないため、映像配信サービスCの映像データフローを受信するデータ送受信装置400では、映像等の再生が乱れる可能性がある。
【0354】
次に、時刻T4にて、映像配信サービスCの映像データフローの伝送が終了すると、時刻T2からT3の期間と同様に、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、45Mbpsに制限して送出する。
【0355】
次に、時刻T5にて、映像配信サービスBの映像データフローの伝送が終了すると、時刻T1からT2の期間と同様に、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、60Mbpsに制限して送出する。
【0356】
最後に、時刻T6にて、映像配信サービスAの映像データフローの伝送が終了すると、時刻T1以前と同様に、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートを制限せずに送出する。
【0357】
なお、上述では、FTPデータフロー、映像配信サービスAの映像データフロー、映像配信サービスBの映像データフロー、および、映像配信サービスCの映像データフローが、それぞれ1本ずつ伝送されるものとして説明したが、同じ映像データフローが複数本伝送される場合であっても、同様である。例えば、FTPデータフローが伝送されているときに、映像配信サービスAの映像データフローが2本伝送される場合、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、50Mbps(=70Mbps−10Mbps×2)に制限して送出する。
【0358】
〔実施の形態2〕
本発明の他の一実施形態について、図12から図14に基づいて説明すると以下の通りである。本実施の形態では、HGW101が、上述した組み合わせBの方法にて求めたACの値およびDCの値から算出したレート制限値LRに基づいて、非優先データフローの伝送レートを制限する形態について説明する。なお、本実施の形態に係るHGW101を、特に、HGW101bと表記する。
【0359】
なお、説明の便宜上、実施の形態1にて示した各部材と同一の機能を有する部材には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。同様に、実施の形態1にて示した各処理と同一の処理には、同一の符号を付記し、その説明を省略する。
【0360】
(HGWの構成)
次に、図12を参照しながら、通信制御装置100としてのHGW101bの概略構成について説明する。図12は、HGW101bの概略構成を示すブロック図である。
【0361】
図12に示すように、HGW101bは、主制御部10b、記憶部20b、WAN側通信部31、およびLAN側通信部32を含んで構成される。
【0362】
記憶部20bは、HGW101aが備える記憶部20に加えて、新たに、レート情報記憶部(第3記憶部)24を備えている。レート情報記憶部24は、アクセスネットワーク702の回線容量であるACの値、および、優先データフローの伝送に必要な伝送レートの合計値であるDCの値を、読み出し可能な状態で記憶するものである。
【0363】
次に、主制御部10bは、記憶部20b、WAN側通信部31、およびLAN側通信部32の制御を行なうとともに、所定の演算処理を行なうものである。
【0364】
主制御部10bは、パケット転送処理部11、DNS処理部12、キュー割り当て情報生成処理部13、伝送レート制御処理部14b、QoS対象設定処理部(優先要否情報設定手段)16b、およびQoS対象更新処理部17を含んでいる。
【0365】
伝送レート制御処理部14bは、パケット振り分け処理部141、パケット送出処理部(データフロー伝送制御手段)142b、および制限レート算出処理部(優先伝送レート算出手段、送出レート算出手段)145bを備えている。
【0366】
パケット送出処理部142bはパケット送出処理部142と同様に、レート非制限キュー143およびレート制限キュー144を備えるとともに、これらキューに格納されたパケットをLAN側通信部32に送出するものである。レート非制限キュー143に格納されたパケットを送出するときは、伝送レートを制限せずに、LAN側通信部32に送出する(つまり、優先的に伝送する)。一方、レート制限キュー144に格納されたパケットを送出するときは、レート制限モードでなければ、伝送レートを制限せずに、レート制限キュー144に格納されたパケットをLAN側通信部32に送出する。また、レート制限モードであるときは、制限レート算出処理部145bが算出したレート制限値LRを上限とした伝送レートで、レート制限キュー144に格納されたパケットをLAN側通信部32に送出する(言い換えれば、優先度を下げて伝送する)。
【0367】
次に、制限レート算出処理部145bは、レート情報記憶部24に格納されている、ACの値およびDCの値を読み出し、該読み出した値に基づいてレート制限値LRを算出する。なお、算出したLRの値は、パケット送出処理部142bが参照可能な状態で、制限レート算出処理部145b内部のメモリに保持したり、ファイル等に出力する。
【0368】
次に、QoS対象設定処理部16bは、パケット転送処理部11を介してデータ送受信装置400から受信した要求に応じて、QoS対象記憶部22、キュー割り当て情報記憶部23、およびレート情報記憶部24に格納されているデータを更新するためのユーザインタフェースであるQoS対象設定画面261および262を構成する所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信する。すなわち、QoS対象設定処理部16bは、一般的なWebサーバの機能を含んでいる。なお、QoS対象設定画面262は、データ送受信装置400のユーザが、HGW101bに、ACの値およびDCの値を設定することができる画面である。QoS対象設定画面262については後述する。
【0369】
そして、QoS対象設定処理部16bは、データ送受信装置400のユーザがQoS対象設定画面261にて入力した内容に基づいて、QoS対象記憶部22に格納されているデータを更新する。また、データ送受信装置400のユーザがQoS対象設定画面262にて入力した内容に基づいて、レート情報記憶部24に格納されているデータを更新する。
【0370】
なお、上記更新処理があったとき、QoS対象設定画面261またはQoS対象設定画面262の表示を更新する必要がある場合は、それらを構成する所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信する。
【0371】
また、QoS対象設定処理部16は、QoS対象更新処理部17がQoS対象記憶部22に新たなエントリを生成した旨の通知に応じて、QoS対象設定画面261および262のいずれかの表示を更新するために、QoS対象設定画面261および262を構成する所定のデータ(例えば、HTMLデータ)を、データ送受信装置400に送信する。
【0372】
(HGWがパケットを受信した際の処理の流れ)
HGW101bがパケットを受信した際の処理の流れは、図6を用いて説明した、HGW101aがパケットを受信した際の処理の流れと同様であるので、ここでは説明を省略する。ただし、ステップS505にて伝送レート制御処理を行なう動作主体が、伝送レート制御処理部14bである点が異なる。
【0373】
また、伝送レート制御処理部14bが行なう伝送レート制御処理の流れは、図8を用いて説明した、伝送レート制御処理部14が行なう伝送レート制御処理の流れと同様であるので、ここでは説明を省略する。ただし、ステップS910にて、パケット送出処理部142は、制限レート算出処理部145bが算出したレート制限値LR以下になるように伝送レートを制限する点が異なる。
【0374】
(QoS対象設定画面)
次に、QoS対象設定画面261および262について説明する。QoS対象設定画面261の画面例は、図10で示したQoS対象設定画面161の画面例と同じであるので、ここでは説明を省略する。ただし、QoS対象設定画面261では、「詳細設定」ボタンB1を押下することにより、QoS対象設定画面262に遷移する点が異なる。
【0375】
次に、図13を参照しながら、QoS対象設定画面262の画面例について説明する。図13は、QoS対象設定画面262の画面例を示す模式図である。本画面は、QoS対象設定処理部16bがデータ送受信装置400からの要求に応じて提供するものであり、データ送受信装置400のユーザがWebブラウザなどを用いてアクセスする。
【0376】
なお、QoS対象設定画面261にて「詳細設定」ボタンB1を押下したときに本画面に遷移することを想定しているが、これに限定されるものではなく、HGW101bのルーティング機能等に関する設定を行なうための画面(一般的なルータの設定画面)に、本画面へ移動するためのリンクを設けておいてもよいし、ユーザが本画面のURLをWebブラウザに直接入力してもよい。また、HGW101bに入出力装置を接続し、該接続した入出力装置から設定できるようにしてもよい。
【0377】
本画面では、図示のように、(1)アクセスネットワーク702の回線容量AC、(2)優先データフローの現在の伝送レートおよび該伝送レートの合計値、並びに(3)優先データフローの伝送に必要な伝送レートの合計値DCを表示する。
【0378】
上記(1)および(3)については、レート情報記憶部24に記憶されている内容を読み出して表示する。
【0379】
また、上記(2)については、QoS対象記憶部22の「優先要否情報」カラムの値が「要」に設定されているサービスのデータフローの現在の伝送レートを計測して表示する。例えば、過去1秒間の平均レートや、過去の瞬間最大レートを計測して表示する。なお、伝送レートは、逐次変化するので、所定周期で再計測するとともに、再表示する。また、所定周期で再表示する代わりに、QoS対象設定画面262の表示時に算出した伝送レートを表示し続けてもよい。
【0380】
図示の例では、映像配信サービスAの映像データフローおよび映像配信サービスAの映像データフローが優先的に伝送されるデータフローであり、それぞれの現在の伝送レートが、9.5Mbpsおよび14.0Mbpsであること、および、それらの合計値が23.5Mbpsであることを表示している。
【0381】
なお、優先データフローの現在の伝送レートを表示する代わりに、データ送受信装置400毎の、優先データフローの現在の伝送レートを表示してもよい。
【0382】
また、ACの値は、入力フィールドN6によりユーザが入力可能であり、DCの値は、入力フィールドN7によりユーザが入力可能である。入力フィールドN6およびN7は、テキストボックスを想定しているが、特に限定されるものではない。なお、ユーザは、優先データフローの現在の伝送レートおよび該伝送レートの合計値を参考にして、入力フィールドN7にDCの値を入力する。
【0383】
入力フィールドN6にてACの値が入力されたとき、QoS対象設定処理部16bは、レート情報記憶部24に記憶しているACの値を更新する。また、入力フィールドN7にてDCの値が入力されたとき、QoS対象設定処理部16bは、レート情報記憶部24に記憶しているDCの値を更新する。
【0384】
なお、上記更新のタイミングは、入力フィールドN6およびN7にユーザの入力があったときに限定されるものではなく、QoS対象設定画面262の「決定」ボタンB6が押下されたときであってもよい。
【0385】
(アクセスネットワークにおいてデータフローが使用する伝送帯域の推移)
次に、図14を参照しながら、HGW101bにてホームネットワーク501へ送出するデータフローの伝送レートを制限した場合における、アクセスネットワーク702における伝送帯域の使用状況について説明する。図14は、HGW101bにてホームネットワーク501へ送出するデータフローの伝送レートを制限した場合における、アクセスネットワーク702にて使用される伝送帯域の時間的推移の一例を示す模式図である。
【0386】
なお、この例におけるアクセスネットワーク702の回線容量は70Mbpsであり、インターネット701およびホームネットワーク501の回線容量は100Mbpsであるものとする。また、QoS対象記憶部22は、表2に示すデータを記憶しているものとする。そして、FTPサーバ605からFTPデータフローが、映像配信サーバ602から映像配信サービスAの映像データフローが、映像配信サーバ603から映像配信サービスBの映像データフローが、映像配信サーバ604から映像配信サービスCの映像データフローが、それぞれ伝送されるものとする。
【0387】
そして、ユーザは、映像配信サービスA(必要伝送レートは10Mbps)および映像配信サービスB(必要伝送レートは15Mbps)を優先的に受信したいため、それらの伝送レートの合計値(25Mbps)を、HGW101bに予め登録しているものとする。また、ユーザは、アクセスネットワーク702の回線容量の値(70Mbps)を、HGW101bに予め登録しているものとする。したがって、この場合、レート制限値LRは、常に、45Mbps(=70Mbps−25Mbps)である。なお、ユーザは、各サービスのデータフローの必要伝送レートを、データ送受信装置400のマニュアルやWebサイトなどを調べることによって取得するものとする。
【0388】
まず、時刻T21までは、FTPデータフローのみが伝送されているとする。このとき、FTPサーバ605のドメイン名を有するエントリは、キュー割り当て情報記憶部23に格納されていないので、パケット振り分け処理部141は、FTPデータフローのパケットをレート制限キュー144に格納する。しかしながら、時刻T21までは、レート非制限キュー143に格納されるデータフローがないため、レート制限モードではない。
【0389】
よって、パケット送出処理部142bは、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートを制限せずに送出する。その結果、ホームネットワーク501の回線容量である100Mbpsを最大限に使用するように、FTPデータフローのパケットが送出される。
【0390】
したがって、この時点でのアクセスネットワーク702におけるFTPデータフローの伝送レートは、図示のとおり、アクセスネットワーク702の回線容量である70Mbpsとなる。なお、図11でも説明したとおり、FTPのデータフローの伝送レートは、時間の経過とともに多少増減している(図14に示すグラフの凹部分)。増減の幅は、一定の時間幅および一定のレート幅としているが、これは説明の簡略化のためである。
【0391】
次に、時刻T21から、映像配信サービスAの映像データフローの伝送が開始されたとする。映像配信サーバ602のドメイン名を有するエントリが、キュー割り当て情報記憶部23に格納されており、かつ、当該エントリの「割り当てキュー」の値が“レート非制限”であるので、パケット振り分け処理部141は、映像配信サービスAの映像データフローのパケットを、レート非制限キュー143に格納する。
【0392】
よって、この時点からレート制限モードとなるので、パケット送出処理部142bは、レート制限キュー144に格納されているFTPデータフローのパケットを、伝送レートがレート制限値LRである45Mbps以下になるように制限しつつ、送出する。
【0393】
そして、残りの25Mbpsで、映像配信サービスAの映像データフロー(必要伝送レートが10Mbps)が伝送されるので、映像データフローの伝送遅延等の発生を抑制することができる。
【0394】
なお、図14では、時刻T21で、直ちに、映像データフローの伝送レートが伝送されるように記載しているが、本来であれば、映像配信サービスAの映像データフローの伝送レートは時刻T21から徐々に上昇する。しかしながら、同図では、説明の簡略化のため、記載を省略している。
【0395】
次に、時刻T22から、映像配信サービスBの映像データフローの伝送が開始されたとする。映像配信サーバ603のドメイン名を有するエントリが、キュー割り当て情報記憶部23に格納されており、かつ、当該エントリの「割り当てキュー」の値が“レート非制限”であるので、パケット振り分け処理部141は、映像配信サービスBの映像データフローのパケットを、レート非制限キュー143に格納する。よって、時刻T22からは、映像配信サービスAおよび映像配信サービスBの映像データフローが、レート非制限キュー143に格納されている。
【0396】
そのため、引き続き、レート制限モードが維持され、パケット送出処理部142bは、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートがレート制限値LRである45Mbps以下になるように制限しつつ、送出する。
【0397】
そして、残りの25Mbpsで、レート非制限キュー143に格納された映像配信サービスAの映像データフロー(必要伝送レートが10Mbps)および映像配信サービスBの映像データフロー(必要伝送レートが15Mbps)が伝送されるので、映像データフローの伝送遅延等の発生を抑制することができる。
【0398】
なお、時刻T22から時刻T23の期間であっても、映像データフローの伝送帯域には空きが生じる場合がある。このように空きが生じる理由は、通常は、QoS対象記憶部22に記憶されている「必要伝送レート」が、実際に必要な伝送レートよりも多めに設定されることが多いためである。しかしながら、FTPデータフローの伝送レートは45Mbpsに制限されているので、上記のように伝送帯域に空きがあっても、その空きを使用してFTPデータフローが伝送されることはない。
【0399】
次に、時刻T23から、映像配信サービスCの映像データフローの伝送が開始されたとする。映像配信サーバ603のドメイン名を有するエントリが、キュー割り当て情報記憶部23に格納されており、かつ、当該エントリの「割り当てキュー」の値が“レート制限”であるので、パケット振り分け処理部141は、映像配信サービスCの映像データフローのパケットを、レート制限キュー144に格納する。つまり、時刻T23からは、FTPデータフローおよび映像配信サービスCの映像データフローが、レート制限キュー144に格納され、また、映像配信サービスAおよび映像配信サービスBの映像データフローが、レート非制限キュー143に格納される。そして、レート制限値LRは、45Mbpsのまま変わらない。
【0400】
したがって、FTPデータフローおよび映像配信サービスCの映像データフローの伝送レートの合計値は、45Mbpsである。そして、残りの25Mbpsで、映像配信サービスAの映像データフロー(必要伝送レートが10Mbps)および映像配信サービスBの映像データフロー(必要伝送レートが15Mbps)が伝送されるので、映像配信サービスAおよび映像配信サービスBの映像データフローについては、伝送遅延等の発生を抑制することができる。
【0401】
なお、この場合、映像配信サービスCの映像データフローは、FTPデータフローと同等の優先度で伝送帯域を使用することとなる。ただし、伝送遅延やジッタが生じない程度に十分な伝送帯域を確保できるとは限らないため、映像配信サービスCの映像データフローを受信するデータ送受信装置400では、映像等の再生が乱れる可能性がある。
【0402】
次に、時刻T24にて、映像配信サービスCの映像データフローの伝送が終了すると、時刻T22からT23の期間と同様に、パケット送出処理部142bは、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートが45Mbps以下になるように制限して送出するとともに、残りの25Mbpsで、レート非制限キュー143に格納された映像配信サービスAの映像データフローおよび映像配信サービスBの映像データフローを送出する。
【0403】
次に、時刻T25にて、映像配信サービスBの映像データフローの伝送が終了すると、時刻T21からT22の期間と同様に、パケット送出処理部142bは、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートが45Mbps以下になるように制限して送出するとともに、残りの25Mbpsで、レート非制限キュー143に格納された映像配信サービスAの映像データフローを送出する。
【0404】
最後に、時刻T26にて、映像配信サービスAの映像データフローの伝送が終了すると、時刻T21以前と同様に、パケット送出処理部142bは、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、伝送レートが45Mbps以下になるように制限して送出する。
【0405】
なお、上述では、FTPデータフロー、映像配信サービスAの映像データフロー、映像配信サービスBの映像データフロー、および、映像配信サービスCの映像データフローが、それぞれ1本ずつ伝送されるものとして説明したが、同じ映像データフローが複数本伝送される場合であっても、同様である。例えば、FTPデータフローが伝送されているときに、映像配信サービスAの映像データフローが2本伝送される場合であっても、パケット送出処理部142は、レート制限キュー144に格納されたFTPデータフローのパケットを、45Mbpsに制限して送出する。
【0406】
〔付記事項〕
(優先的に伝送するデータフローの伝送レート)
映像データフローなどは、一定の伝送レートを保って伝送されるものではなく、一時的に(瞬間的に)伝送レートが増減する場合がある。一時的に(瞬間的に)伝送レートが増加したとき、予め確保していた伝送帯域を越える場合があり、その場合、伝送遅延やパケットロストが発生することとなる。
【0407】
このような問題を解決するためには、QoS対象記憶部22の「必要伝送レート」カラムの値を、実際に必要な伝送レートよりも大きい値に設定しておくことが望ましい。例えば、HGW101の工場出荷時に、HGW101の販売元などが、実際に必要な伝送レートよりも数%程度大きい値を格納しておくことが考えられる。また、全てのデータフローについて、一律に、実際に必要な伝送レートよりも1Mbps大きい値を格納しておいてもよい。
【0408】
また、ユーザが、QoS対象設定画面161(162)を用いて、実際に必要な伝送レートよりも大きい値を設定してもよい。なお、このように設定することを、ユーザに促すために、HGW101のマニュアルにその旨を記載しておいたり、QoS対象設定画面161(162)にその旨を表示しておくことが望ましい。また、HGW101が、ユーザが設定した値を、当該値よりも数%程度大きい値に変換してもよい。
【0409】
(パケットに付与された優先度に応じた伝送)
サーバ600が、「優先度」を付与したパケットを送信する場合、HGW101は、その優先度に応じて、パケットをホームネットワーク501へ送出する順序を変更してもよい。なお、IPネットワーク上で伝送されるパケットの優先度とは、IPv4(IP Version 4)ヘッダの先頭から2バイト目のDSCPと称されるフィールドの上位3ビットで表わされる値、または、IPv6(IP Version 6)ヘッダのトラヒッククラスフィールドに含まれるDSCPと称されるフィールドの上位3ビットで表わされる値である。
【0410】
例えば、上述の各実施の形態では、優先的に伝送しないことが設定されている、映像配信サービスBの映像データパケットは、FTPデータパケットと同様に、レート制限キュー144に格納され、FTPデータパケットと同じ優先度でレート制限キュー144から送出される。しかしながら、仮に、映像配信サービスBの映像データパケットにFTPデータパケットよりも高い優先度が付与されている場合、FTPデータパケットよりも優先的に、レート制限キュー144から送出するようにしてもよい。なお、この場合であっても、レート制限値LRを超えた伝送レートで伝送されることはない。つまり、優先的に伝送することが設定されている映像配信サービスAおよび映像配信サービスCの映像データパケットよりは、優先度が低いままである。
【0411】
また、例えば、優先的に伝送することが設定されている映像配信サービスAの映像データパケット、および、映像配信サービスCの映像データパケットのそれぞれに、異なる優先度が付与されている場合、より高い優先度が付与されている映像データパケットを、レート非制限キュー143から優先的に送出するようにしてもよい。なお、優先データフローを伝送する伝送帯域を十分確保できるように、非優先データフローの伝送レートをレート制限値LR以下に制限するため、通常は、映像配信サービスAおよび映像配信サービスCの映像データパケットのそれぞれに優先度が付与されていても、いずれの映像データパケットも伝送遅延等が発生することなく伝送することができる。しかしながら、優先度を考慮したパケットの伝送を行なうことにより、仮に、非優先データフローのレート制限値LRの設定が不十分である場合(優先データフローに割り当てる伝送帯域が足りない場合や、ユーザ設定に不備がある場合)であっても、少なくとも、高い優先度が付与されているパケットだけは、できるだけ伝送遅延等が発生することなく伝送させることができるという利点がある。
【0412】
(レート非制限キューに格納するデータフローの数の制限)
すべての優先データフローのパケットをレート非制限キュー143に格納し、当該格納されたパケットをホームネットワーク501に送出していくと、伝送帯域が不足する場合が起こり得る。そのため、レート非制限キュー143に格納するパケットが属するデータフローの数を制限してもよい。
【0413】
例えば、映像配信サービスAの映像データフロー(10Mbps)が8本伝送されているときに、全てのデータフローに属するパケットをレート非制限キュー143に格納し、当該格納されたパケットをホームネットワーク501に送出していくと、ホームネットワーク501の回線容量は超えないが、アクセスネットワーク702の回線容量である70Mpbsを越えてしまうので、その結果、各データフローを受信するデータ送受信装置400の全てにおいて、アクセスネットワーク702での伝送帯域が不足し、映像や音声の再生が乱れることとなる。そこで、レート非制限キュー143に格納するデータフローを、例えば、7本までに制限することによって、当該7本分のデータフローの伝送帯域は確実に確保することができる。ただし、この場合、レート制限キュー144から送出可能な伝送レートが0Mbpsになるので、実質的には、レート非制限キュー143に格納されたパケットのみが、ホームネットワーク501に伝送されることとなる。
【0414】
また、各映像データフローの伝送帯域が一時的に増加した場合、伝送帯域が不足するので、レート非制限キュー143に格納するデータフローを、さらに余裕を持たせて、例えば、6本までに制限してもよい。
【0415】
また、伝送が開始された順に、データフローを、レート非制限キュー143に格納してゆき、予め定められた規定数に達した後は、レート制限キュー144に格納することが考えられる。
【0416】
また、レート非制限キュー143に格納しているデータフローの送信が停止した場合に、QoS対象フローであるにもかかわらず、レート制限キュー144に格納されているデータフローがあれば、その格納先をレート非制限キュー143に変更するようにしてもよい。
【0417】
(DNS処理部の構成)
上述の実施の形態では、HGW101がDNS処理部12を備える形態について述べたが、これに限定されるものではない。DNS処理部12は必ずしもHGW101に備えられる必要はなく、外部装置としてHGW101と通信可能に(例えばEthernetを介して)接続される構成でもよい。
【0418】
(DNS問合せメッセージの送信先)
上述の実施の形態では、STB401などのデータ送受信装置400は、映像コンテンツの受信を開始する処理(受信開始処理)として、デフォルトのDNSサーバとしてのHGW101に対して、映像配信サーバ603のIPアドレスを問合せるDNS問合せメッセージを送信し、HGW101は、上記DNS問合せメッセージに対するDNS応答メッセージに含まれるドメイン名に基づいてキュー割り当て情報生成処理を行なう形態について述べたが、必ずしもこれに限定されず、映像コンテンツの受信を開始する前にアクセスする別のサーバに対するDNS問合せメッセージに対応するDNS応答メッセージを元に、キュー割り当て情報生成処理を行ってもよい。
【0419】
例えば、データ送受信装置400が、ポータルサーバのIPアドレスを問合せるDNS問合せメッセージを送信し、HGW101が、上記DNS問合せメッセージに対するDNS応答メッセージに含まれるドメイン名に基づいて、キュー割り当て情報生成処理を行ってもよい。ここで、上記ポータルサーバとは、例えば、ユーザが映像配信サービスを享受するために最初にアクセスするポータルサイトを提供するサーバを想定している。そして、該ポータルサイトでは、映像配信サービスで提供される映像コンテンツのサムネイルなどを表示し、ユーザに映像コンテンツを選択させることができるものを想定している。
【0420】
映像配信サーバのドメイン名は、サービス提供側の都合により、追加、削除、変更などの修正が施される場合があり得るが、ポータルサーバのドメイン名については修正されることは比較的少ない。データ送受信装置400などの装置においては、工場出荷時にポータルサーバのドメイン名が記憶されており、電源が投入されたときにはこのドメイン名にアクセスしてポータルサイトを最初にユーザに提示し、そこからコンテンツを選択させるように構成されるのが一般的である。ポータルサーバのドメイン名が変更された場合、データ送受信装置400の電源投入時には、ポータルサイトが表示されずエラーが表示されることになり、ユーザの利便性が著しく低下する。データ送受信装置400のアップデートなどによりデータ送受信装置400に登録されているポータルサーバのドメイン名を変更すれば対応は可能であるが、アップデート作業を全ユーザが行なうとは限らないので、サービス提供側としてもポータルサーバのドメイン名は変更しにくい。これに対して、映像配信サーバのドメイン名は、ポータルサイトでユーザがコンテンツを選択した時点でデータ送受信装置400が取得するので、変更しても大きな問題にはならない。
【0421】
映像配信サーバのドメイン名が変更された場合において、該変更後のドメイン名がQoS対象記憶部22に記憶されていないものとなった場合は、上記変更されたドメイン名を有する映像配信サーバから送信されるパケットに対して、キュー割り当て情報生成処理が実行されないこととなる。従って、修正されることの少ないポータルサーバのドメイン名をQoS対象記憶部22、キュー割り当て情報記憶部23、サーバアドレス記憶部21のそれぞれの「ドメイン名」カラムの値とし、キュー割り当て情報生成処理を行なうようにしてもよい。
【0422】
なお、ポータルサーバのIPアドレスと実際に映像データパケットを送信する映像配信サーバのIPアドレスは異なるため、ポータルサーバのIPアドレスとSTBのIPアドレスに合致したパケットを優先伝送するように設定されていると、映像配信サーバからSTBに送信される映像データパケットが優先的に伝送されないこととなる。この場合は、STBのIPアドレスのみを用いて、優先的に伝送するか否かについての判定を行なうことが考えられる。ただし、この場合、STBが受信(または送信)するパケットは全て優先的伝送されることになるので、本来、優先的に伝送する必要のないパケット(例えばSTBが受信するWebデータ等)まで優先的に伝送されることになり、全体としてのQoS制御の効率は低下してしまう。
【0423】
なお、実施の形態は上述の他に、以下のようにも表現できる。
【0424】
[1]本発明に係る通信制御装置は、第1ネットワークに所属する装置から、第2ネットワークに所属する装置へと送信されるフローを転送する通信制御装置であって、転送するフローについて、前記第1ネットワークにおける伝送レートを制御する伝送レート制御手段を有し、転送するフローが、QoS保証が必要なフローであるか否かを判定するQoSフロー判定手段をさらに有し、前記QoSフロー判定手段により、QoS保証が必要なフローであると判定されなかったフローについて、前記伝送レート制御手段により、第1ネットワークにおける伝送レートを低下させてもよい。
【0425】
[2]さらに、本発明に係る通信制御装置は、前記伝送レート制御手段は、TCPのフローを、第2ネットワークに送信する際のレートを低下させてもよい。
【0426】
[3]さらに、本発明に係る通信制御装置は、前記QoSフロー判定手段は、QoS保証が必要なフローの送信装置が属するドメイン名を記憶するQoS対象記憶手段を有し、DNS応答パケットを解析して、DNS問い合わせの対象のドメイン名を抽出するドメイン名抽出手段を有し、前記QoS対象記憶手段に記憶されたドメイン名と、前記ドメイン名抽出手段によって抽出されたドメイン名が一致するか否かによってQoS保証が必要か否かを判定してもよい。
【0427】
最後に、主制御部10は、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよいし、ハードウェアロジックによって構成してもよい。ソフトウェアによって実現する場合は、HGW101は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアであるHGW101の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、HGW101に供給し、HGW101内のコンピュータ(またはCPUやMPU(Micro Processing Unit))が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0428】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0429】
また、HGW101を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394ケーブル、USBケーブル、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0430】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0431】
本発明は、通信ネットワークにおける通信パケットの伝送を制御する通信制御装置に好適に利用することができる。特に、ホームネットワークとアクセスネットワークとを接続するHGWに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0432】
11 パケット転送処理部
12 DNS処理部(ドメイン名/アドレス抽出手段、アドレス取得手段)
13 キュー割り当て情報生成処理部(伝送制御情報生成手段、第1優先要否情報取得手段)
14 伝送レート制御処理部
14b 伝送レート制御処理部
16 QoS対象設定処理部(優先要否情報設定手段)
16b QoS対象設定処理部(優先要否情報設定手段)
21 サーバアドレス記憶部
22 QoS対象記憶部(第2記憶部)
23 キュー割り当て情報記憶部(第1記憶部)
24 レート情報記憶部(第3記憶部)
100 通信制御装置
101 HGW(通信制御装置)
101a HGW(通信制御装置)
101b HGW(通信制御装置)
141 パケット振り分け処理部(送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段、第2優先要否情報取得手段、通信パケット格納手段)
142 パケット送出処理部(データフロー伝送制御手段)
142b パケット送出処理部(データフロー伝送制御手段)
143 レート非制限キュー(優先パケット保持部)
144 レート制限キュー
145 制限レート算出処理部(優先伝送レート算出手段、送出レート算出手段)
145b 制限レート算出処理部(優先伝送レート算出手段、送出レート算出手段)
400 データ送受信装置(データ受信装置)
401 STB(データ受信装置)
402 STB(データ受信装置)
403 STB(データ受信装置)
404 PC(データ受信装置)
500 第1通信ネットワーク
501 ホームネットワーク(第1通信ネットワーク)
600 サーバ(データ送信装置)
601 DNSサーバ
602 映像配信サーバ(データ送信装置)
603 映像配信サーバ(データ送信装置)
604 映像配信サーバ(データ送信装置)
605 FTPサーバ(データ送信装置)
700 第2通信ネットワーク
702 アクセスネットワーク(第2通信ネットワーク)
703 基地局
900 通信制御システム
LR レート制限値(制限値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ受信装置が接続する第1通信ネットワークと、データ送信装置が接続する第2通信ネットワークとに接続され、上記データ送信装置が上記データ受信装置に送信する、複数の通信パケットから構成されるデータフローの、上記第1通信ネットワークへの伝送を制御する通信制御装置であって、
上記データフローを構成する各通信パケットは、該通信パケットの送信元となる上記データ送信装置の通信アドレス、および、該通信パケットの送信先となる上記データ受信装置の通信アドレスを含んでおり、
上記データ送信装置の通信アドレスと上記データ受信装置の通信アドレスとを対応付けて予め記憶する第1記憶部と、
上記データフローを構成する上記通信パケットから、上記送信元の通信アドレスおよび上記送信先の通信アドレスを抽出する送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段と、
上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した、上記送信元の通信アドレスと上記送信先の通信アドレスとの組が、上記第1記憶部に記憶されていないとき、上記データ送信装置が上記データ受信装置へ送信する上記データフローを、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送するデータフロー伝送制御手段とを備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
上記データフロー伝送制御手段は、さらに、優先度を下げて伝送する上記データフローを、所定の制限値を超えない伝送レートにて伝送することを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
優先的に送信する対象である上記データフローを伝送するために必要な伝送レートを、上記データフロー毎に予め記憶する第2記憶部と、
上記第2通信ネットワークの回線容量を予め記憶する第3記憶部と、
優先的に送信する対象である上記データフローの上記通信パケットを一時的に格納する優先パケット保持部と、
上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した、上記送信元の通信アドレスと上記送信先の通信アドレスとの組が、上記第1記憶部に記憶されている場合、上記データフローの上記通信パケットを上記優先パケット保持部に格納する通信パケット格納手段と、
上記優先パケット保持部に格納されている上記通信パケットから構成される上記データフローのそれぞれの上記伝送レートを上記第2記憶部から取得し、該取得した全ての上記伝送レートの合計値を算出する優先伝送レート算出手段と、
上記第3記憶部に記憶されている上記第2通信ネットワークの回線容量から、上記伝送レート算出手段が算出した合計値を減算することによって、上記制限値を算出する送出レート算出手段とをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
上記データ受信装置は、上記データ送信装置の通信アドレスを要求する第1リクエストを送信するとともに、上記第1リクエストに対するレスポンスに含まれる上記データ送信装置の通信アドレスに基づいて、上記データ送信装置に対して、上記データフローを要求する第2リクエストを送信するものであり、
上記データ送信装置は、ドメインに属し、上記第2リクエストの応答として上記データフローを上記データ受信装置に送信するものであって、
上記第1リクエストは、上記データ送信装置が属するドメインのドメイン名と、上記データ受信装置の通信アドレスを含んでおり、
上記第1記憶部は、上記データ受信装置の通信アドレスに対応付けられた上記データ送信装置の通信アドレスに対応付けて、さらに、該データ送信装置のドメイン名を記憶するものであり、
上記第2記憶部は、優先的に送信する対象である上記データフローを伝送するために必要な伝送レートを、当該データフローを送信する上記データ送信装置のドメイン名と対応付けて記憶するものであって、
上記レスポンスから上記データ送信装置のドメイン名および上記データ受信装置の通信アドレスを抽出するドメイン名/アドレス抽出手段と、
上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名に対応付けられた、上記データ送信装置の通信アドレスを取得するアドレス取得手段と、
上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名が、上記第2記憶部に記憶されているとき、上記アドレス取得手段が取得した上記データ送信装置の通信アドレスと、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ受信装置の通信アドレスとを対応付けて、上記第1記憶部に格納する伝送制御情報生成手段とをさらに備え、
上記優先伝送レート算出手段は、上記優先パケット保持部に格納されている上記通信パケットの上記送信元の通信アドレスに対応付けられた上記データ送信装置のドメイン名を、上記第1記憶部から取得するとともに、該取得したドメイン名毎に、該取得したドメイン名に対応付けられた上記伝送レートを上記第2記憶部から取得し、該取得した全ての上記伝送レートの合計値を算出することを特徴とする請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
上記第2記憶部は、優先的に送信する対象であるデータフローを送信する上記データ送信装置のドメイン名とともに、優先的に送信する対象でないデータフローを送信する上記データ送信装置のドメイン名を記憶し、さらに、該ドメイン名に対応付けて、該ドメイン名を有する上記データ送信装置が送信するデータフローが優先的に送信する必要があるか否かを示す優先要否情報を記憶するものであり、
上記第1記憶部は、上記データ受信装置の通信アドレスに対応付けられた上記データ送信装置の通信アドレスに対応付けて、さらに、上記優先要否情報を記憶するものであり、
上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名に対応付けられた上記優先要否情報を、上記第2記憶部から取得する第1優先要否情報取得手段をさらに備え、
上記伝送制御情報生成手段は、上記アドレス取得手段が取得した上記データ送信装置の通信アドレスと、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ受信装置の通信アドレスと、上記ドメイン名/アドレス抽出手段が抽出した上記データ送信装置のドメイン名と、上記第1優先要否情報取得手段が取得した上記優先要否情報とを対応付けて、上記第1記憶部に格納するものであって、
上記データフロー伝送制御手段は、さらに、
上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出手段が抽出した上記送信元の通信アドレスに対応付けられた上記優先要否情報を、上記第1記憶部から取得する第2優先要否情報取得手段を備え、
上記第2優先要否情報取得手段が取得した上記優先要否情報が、上記データフローが優先的に送信する必要がないことを示すものである場合、上記データ送信装置が上記データ受信装置へ送信する上記データフローを、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送することを特徴とする請求項4に記載の通信制御装置。
【請求項6】
上記データ送信装置のドメイン名と上記優先要否情報とを対応付けて入力可能なユーザインタフェースを上記データ受信装置に提示するとともに、上記ユーザインタフェースにて入力された、上記データ送信装置のドメイン名と上記優先要否情報とを対応付けて、上記第2記憶部に格納する優先要否情報設定手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の通信制御装置。
【請求項7】
優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送する対象である上記データフローは、上記データ送信装置にて上記通信パケットの送信量を制御することができる通信プロトコルを用いて、上記データ送信装置が上記データ受信装置に送信するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項8】
データ受信装置が接続する第1通信ネットワークと、データ送信装置が接続する第2通信ネットワークとに接続され、上記データ送信装置の通信アドレスと上記データ受信装置の通信アドレスとを対応付けて予め記憶する第1記憶部を備え、上記データ送信装置が上記データ受信装置に送信する、複数の通信パケットから構成されるデータフローの、上記第1通信ネットワークへの伝送を制御する通信制御装置の制御方法であって、
上記データフローを構成する各通信パケットは、該通信パケットの送信元となる上記データ送信装置の通信アドレス、および、該通信パケットの送信先となる上記データ受信装置の通信アドレスを含んでおり、
上記データフローを構成する上記通信パケットから、上記送信元の通信アドレスおよび上記送信先の通信アドレスを抽出する送信元アドレス/送信先アドレス抽出ステップと、
上記送信元アドレス/送信先アドレス抽出ステップにて抽出した、上記送信元の通信アドレスと上記送信先の通信アドレスとの組が、上記第1記憶部に記憶されていないとき、上記データ送信装置が上記データ受信装置へ送信する上記データフローを、優先度を下げて上記第1通信ネットワークへ伝送するデータフロー伝送制御ステップとを含むことを特徴とする通信制御装置の制御方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の通信制御装置が備えるコンピュータを動作させる制御プログラムであって、上記コンピュータを上記の各手段として機能させるための制御プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の制御プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−71595(P2011−71595A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218692(P2009−218692)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】