説明

通信制御装置

【課題】当初に選択された通信モードでの通信に発呼先が対応できない場合であっても通信を完了できる可能性を高める。
【解決手段】プロトコル処理部1bは、伝送対象データを送信する必要が生じたことに応じて、アプリケーションモードを表したモード情報(m=application)を含んだ発呼情報(INVITEコマンド)をNGN6へと送出する。主制御部1eは、通信可能であることが発呼情報への応答としてNGN6から通知されたことに応じて、伝送対象データをそのままアプリケーションモードを使用して送信するための第1の処理を行う。主制御部1eは、通信不可能であることが発呼情報への応答としてNGN6から通知されたことに応じて、伝送対象データを前記オーディオモードで伝送可能な伝送データに変換した上でオーディオモードを使用して送信するための第2の処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
NGN(next generation network)のような音声通信とデータ通信との双方をサポートした通信網を介しての通信を制御する通信制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
NGNでは、通信モードとしてオーディオモード、ビデオモードおよびアプリケーションモード等がそれぞれ規定されており、それらを適宜に選択して使用できる。これらの通信モードは、伝送対象とするデータの種類がそれぞれ異なる。
【0003】
しかしながら、NGNに接続される通信端末はこれらの通信モードの全てに対応しているとは限らない。そして、発呼元の通信端末が選択したモードでの通信に発呼先の通信端末が対応できなかった場合には、発呼元の通信端末はその通信をエラーとして終了される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のようにNGNのような複数の通信モードを選択的に利用できる通信網を利用した通信では、発呼元において発呼先の能力に合わない通信モードを選択してしまった場合には、通信を完了することができなかった。
【0005】
なお特許文献1には、ファクシミリ通信におけるG4モードとG3モードとを自動的に切り替える技術が開示されている。しかしながら、G4モードおよびG3モードはいずれも画像データを伝送するモードであって、NGNのような通信網における通信モードとは異なる。
【0006】
このような事情から、当初に選択された通信モードでの通信に発呼先が対応できない場合であっても通信を完了できる可能性を高めることができるようにすることが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様による通信制御装置は、音声データを伝送する第1の伝送モードと前記音声データとは異なるデータを伝送する第2伝送モードとを選択的に使用可能であるとともに、発呼先を識別する識別情報および使用する伝送モードを表したモード情報とを含んだ発呼情報を発呼元の通信端末から受けたことに応じて前記識別情報で識別される発呼先との通信を前記モード情報で表された伝送モードで行うことが可能であるか否かを前記通信端末に対して通知する通信網に前記通信端末として接続される通信制御装置において、伝送対象データを送信する必要が生じたことに応じて、前記第2の伝送モードを表したモード情報を含んだ前記発呼情報を前記通信網へと送出する送出手段と、通信可能であることが前記送出手段により送出した前記発呼情報への応答として前記通信網から通知されたことに応じて、前記伝送対象データをそのまま前記第2の伝送モードを使用して送信するための第1の処理を行う第1の処理手段と、通信不可能であることが前記送出手段により送出した前記発呼情報への応答として前記通信網から通知されたことに応じて、前記伝送対象データを前記音声データに変換した上で前記第1の伝送モードを使用して送信するための第2の処理を行う第2の処理手段とを備える。
【発明の効果】
【0008】
当初に選択された通信モードでの通信に発呼先が対応できない場合であっても通信を完了できる可能性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る通信制御装置の構成とこの通信制御装置が含まれる通信システムの構成とを示すブロック図。
【図2】図1中の主制御部の処理のフローチャート。
【図3】アプリケーションモードでの発呼処理における通信制御装置とNGNとのコマンドの授受に関わるシーケンス図。
【図4】アプリケーションモードでの発呼処理における通信制御装置とNGNとのコマンドの授受に関わるシーケンス図。
【図5】オーディオモードでの発呼処理における通信制御装置とNGNとのコマンドの授受に関わるシーケンス図。
【図6】G3FAX送信処理における図1中の主制御部の処理のフローチャート。
【図7】第2の実施形態に係る通信制御装置の構成とこの通信制御装置が含まれる通信システムの構成とを示すブロック図。
【図8】G3FAX送信処理における図7中の主制御部の処理のフローチャート。
【図9】第3の実施形態に係る通信制御装置の構成とこの通信制御装置が含まれる通信システムの構成とを示すブロック図。
【図10】G3FAX送信処理における図9中の主制御部の処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係る通信制御装置1の構成とこの通信制御装置1が含まれる通信システムの構成とを示すブロック図である。
【0012】
図1に示す通信システムは、通信制御装置1、ゲートウェイ(G/W)2、インターネットファクシミリ装置(I−FAX)3、コンピュータ4、LAN5、NGN6、ゲートウェイ7、通信制御装置8、インターネットファクシミリ装置9、コンピュータ10、LAN11、ゲートウェイ12、G3ファクシミリ装置(G3−FAX)13、アナログ網14およびG3ファクシミリ装置15を含む。
【0013】
通信制御装置1には、ゲートウェイ2、インターネットファクシミリ装置3およびコンピュータ4が、LAN5を介して接続されている。通信制御装置1は、インターネットファクシミリ装置3およびコンピュータ4がNGN6を介して通信するための処理を行う。
【0014】
通信制御装置1は、LANインタフェース部(LAN I/F部)1a、プロトコル処理部1b、データ変換部1c、記憶部1dおよび主制御部1eを含む。そしてこれらの各部は、バス1fを介して互いに接続されている。
【0015】
LANインタフェース部1aは、LAN5を介してゲートウェイ2、インターネットファクシミリ装置3およびコンピュータ4とデータを授受するための各種の周知の処理を行う。
【0016】
プロトコル処理部1bは、NGN6での通信のために規定されたプロトコルを実行するための処理を行う。なお、ここではRFC3261で規定されたプロトコルを使用することとする。従ってプロトコル処理部1bは、RFC3261で規定された各種のコマンドを送受信する機能を備える。
【0017】
データ変換部1cは、画像データのデータ形式を変換する。またデータ変換部1cは、画像データではないデータを画像データに変換する。
【0018】
記憶部1dは、各種のデータを記憶する。
【0019】
主制御部1eは、後述するように通信制御装置1の各部を制御する。
【0020】
ゲートウェイ2は、LAN5のほかに、NGN6にも接続される。またゲートウェイ2には、アナログ網14用のアナログ通信端末を接続するためのTELポートを備える。ゲートウェイ2は、LAN5およびアナログ網14とNGN6との間の各種の条件の違いを整合させるための種々の周知の処理を行い、LAN5に接続された機器およびアナログ通信端末がNGN6を介して通信することを可能とする。
【0021】
インターネットファクシミリ装置3は、コンピュータネットワークおよびアナログ網14を介して画像通信を行う。コンピュータネットワーク経由でのデータの送受信のためのLANポートと公衆網経由での信号の送受信のためのTELポートとを有し、LANポートがLAN5に、またTELポートがゲートウェイ2のTELポートに接続される。インターネットファクシミリ装置3は、LAN5を介して取得したデータをアナログのファクシミリ伝送信号に変換してTELポートから送出する、いわゆるオフランプ機能を備える。
【0022】
コンピュータ4は、例えばパーソナルコンピュータであり、各種のディジタルデータを送受信する端末装置として使用されるものである。コンピュータ4はLANインタフェース部を内蔵し、LAN5に接続されている。
【0023】
NGN6としては、例えば東日本電信電話株式会社および西日本電信電話株式会社により「フレッツ光ネクスト」サービスが提供されている通信網が利用できる。このNGN6では、RFC3261で規定されたプロトコルにより呼の設定が行われる。またNGN6では、オーディオモード、ビデオモードおよびアプリケーションモードを選択的に使用できる。オーディオモードは、音声通信を行うためのモードである。ビデオモードは、動画通信を行うためのモードである。アプリケーションモードは、任意のディジタルデータを高速に伝送するモードである。
【0024】
ゲートウェイ7は、NGN6およびLAN11に接続される。ゲートウェイ7は、LAN11とNGN6との間の各種の条件の違いを整合させるための種々の周知の処理を行い、LAN11に接続された機器がNGN6を介して通信することを可能とする。
【0025】
通信制御装置8は、LAN11に接続されている。通信制御装置8は、インターネットファクシミリ装置9およびコンピュータ10がNGN6を介して通信するための処理を行う。通信制御装置8は、通信制御装置1と同様な構成を有する。
【0026】
インターネットファクシミリ装置9は、LAN11に接続されている。インターネットファクシミリ装置9は、コンピュータネットワークを介して画像通信を行う。
【0027】
コンピュータ10は、例えばパーソナルコンピュータであり、各種のディジタルデータを送受信する端末装置として使用されるものである。コンピュータ4はLANインタフェース部を内蔵し、LAN11に接続されている。
【0028】
ゲートウェイ12は、NGN6およびG3ファクシミリ装置13に接続される。ゲートウェイ12は、LAN11とアナログ網との間の各種の条件の違いを整合させるための種々の周知の処理を行い、G3ファクシミリ装置13がNGN6を介して通信することを可能とする。
【0029】
G3ファクシミリ装置13は、G3規格に従った画像通信を行う。G3ファクシミリ装置13は、ゲートウェイ12に接続されている。
【0030】
アナログ網14は、例えばPSTN(public switched telephone network)であり、音声帯域のアナログ信号を伝送する。アナログ網14はNGN6と網間接続されている。
【0031】
G3ファクシミリ装置15は、G3規格に従った画像通信を行う。G3ファクシミリ装置15は、アナログ網14に接続されている。
【0032】
次に通信制御装置1の動作について説明する。
【0033】
コンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3が保持している伝送対象データをアプリケーションモードを使用してNGN6で伝送しようとするとき、その旨の要求がコンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3から通信制御装置1へ与えられる。そしてこの要求を受けると通信制御装置1では、主制御部1eが図2に示すような処理を開始する。
【0034】
ステップSa1において主制御部1eは、アプリケーションモードでの発呼をプロトコル処理部1bに対して指示する。
【0035】
この指示を受けるとプロトコル処理部1bは、RFC3261で規定されたプロトコルに従った発呼処理を開始する。
【0036】
図3はアプリケーションモードでの発呼処理における通信制御装置1とNGN6とのコマンドの授受に関わるシーケンス図である。なお、発呼処理においては、NGN6と発呼先とのコマンドの授受も行われるが、これについては図3では図示を省略している。なお、プロトコル処理部1bとのコマンドの授受は、NGN6に含まれたSIP(session initiation protocol)サーバとの間で行われる。そしてこのコマンドの授受は、バス1f、LANインタフェース部1a、LAN5およびゲートウェイ2を介して行われる。
【0037】
図3に示すようにプロトコル処理部1bはまず、発呼先の識別番号や「m=application」を示した情報を含んだINVITEコマンドをNGN6へと送出する。そうするとNGN6からは、100(Tring)コマンドが返される。こののちに、発呼先の呼び出しがNGN6から行われるとともに、呼び出し中であることを示す180(Ringing)コマンドがNGN6からプロトコル処理部1bに送られる。
【0038】
発呼先が例えばインターネットファクシミリ装置9またはコンピュータ10であるならば、その通信を通信制御装置8が制御することによってアプリケーションモードを使用することが可能である。そこでこの場合には、200(OK)コマンドがNGN6からプロトコル処理部1bに送られる。
【0039】
プロトコル処理部1bは、200(OK)コマンドを受信したことによって通信が成立したことを認識した上で、それに対する応答としてAckコマンドをNGN6に送る。
【0040】
ところで、発呼先が例えばG3ファクシミリ装置13,15のいずれかである場合、アプリケーションモードを使用しての通信を行うことができない。そしてこの場合には図4に示すように、100(Tring)コマンドの後に488(Not Acceptable Here)コマンドがNGN6からプロトコル処理部1bに送られる。そうするとプロトコル処理部1bは、通信が成立しないことを認識し、今回の発呼の取消を要求するためにCANCELコマンドをNGN6へと送る。これに応じてNGN6は、発呼処理を取り止めて、200(OK)コマンドをプロトコル処理部1bへと送る。なお、488(Not Acceptable Here)コマンドはWarningコマンドのうちの1つである。通信が成立しない場合に、488(Not Acceptable Here)コマンド以外のWarningコマンドがNGN6から発呼元に送られることもある。プロトコル処理部1bは、いずれのWarningコマンドが到来した場合でも、上記と同様に処置する。
【0041】
プロトコル処理部1bは、通信が成立したか否かを主制御部1eに通知する。
【0042】
さて、ステップSa2において主制御部1eは、プロトコル処理部1bからの上記の通知を待ち、この通知に基づいて通信が成立したか否かを確認する。そして通信が成立した場合には、主制御部1eはステップSa2からステップSa3へ進む。
【0043】
ステップSa3において主制御部1eは、伝送対象データをコンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3から取得し、そのままゲートウェイ2へと送り出す。ゲートウェイ2は、既に成立しているアプリケーションモードを使用したセッションを利用して、相手先に向けてNGN6へと伝送対象データを送信する。そして伝送対象データを送信し終えたならば主制御部1eは、図2の処理を終了する。
【0044】
さて、図4に示すような手順が実行されて通信が成立しなかった場合には、主制御部1eはステップSa2からステップSa4へ進む。
【0045】
ステップSa4において主制御部1eは、通信を成立させることができなかった発呼処理の中で、488(Not Acceptable Here)コマンドが受信されたか否かを確認する。そして488(Not Acceptable Here)コマンドが受信されていたならば、主制御部1eはステップSa4からステップSa5へ進む。
【0046】
ステップSa5において主制御部1eは、伝送対象データが画像データであるか、あるいは画像データに変換することが可能なデータであるかを確認する。ここで画像データに変換することが可能なデータとは、例えばテキストデータなどである。あるいは、ユーザにより画像データへの変換が許容されている場合に画像データに変換することが可能なデータであると判定しても良い。そして、伝送対象データが画像データであるか、あるいは画像データに変換することが可能なデータであるならば、主制御部1eはステップSa5からステップSa6へ進む。
【0047】
ステップSa6において主制御部1eは、オーディオモードでの発呼をプロトコル処理部1bに対して指示する。
【0048】
この指示を受けるとプロトコル処理部1bは、RFC3261で規定されたプロトコルに従った発呼処理を開始する。
【0049】
図5はオーディオモードでの発呼処理における通信制御装置1とNGN6とのコマンドの授受に関わるシーケンス図である。
【0050】
図5に示すようにプロトコル処理部1bはまず、発呼先の識別番号や「m=audio」を示した情報を含んだINVITEコマンドをNGN6へと送出する。そうするとNGN6からは、100(Tring)コマンドが返される。こののちに、発呼先の呼び出しがNGN6から行われるとともに、呼び出し中であることを示す180(Ringing)コマンドがNGN6からプロトコル処理部1bに送られる。
【0051】
発呼先が例えばファクシミリ装置13,15のいずれかであるならば、オーディオモードを使用した通信を行うことが可能である。そこでこの場合には、200(OK)コマンドがNGN6からプロトコル処理部1bに送られる。
【0052】
プロトコル処理部1bは、200(OK)コマンドを受信したことによって通信が成立したことを認識した上で、それに対する応答としてAckコマンドをNGN6に送る。
【0053】
さて、ステップSa7において主制御部1eは、プロトコル処理部1bからの通知を待ち、この通知に基づいて通信が成立したか否かを確認する。そして通信が成立した場合には、主制御部1eはステップSa7からステップSa8へ進む。
【0054】
ステップSa8において主制御部1eは、伝送対象データをG3ファクシミリ通信を利用して送信するためのG3FAX送信処理を実行する。
【0055】
図6はG3FAX送信処理における主制御部1eの処理のフローチャートである。
【0056】
ステップSb1において主制御部1eは、伝送対象データをコンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3から取得する。なお主制御部1eは、ここで取得した伝送対象データを、記憶部1dに一時的に記憶しておく。
【0057】
ステップSb2において主制御部1eは、伝送対象データがインターネットファクシミリ装置3が対応するデータ形式であるか否かを確認する。そして伝送対象データにインターネットファクシミリ装置3が対応可能ではないならば、主制御部1eはステップSb2からステップSb3へ進む。
【0058】
ステップSb3において主制御部1eは、伝送対象データが画像データであるか否かを確認する。そして主制御部1eは、画像データであるならばステップSb4へ、また画像データではないならばステップSb5へ進む。
【0059】
ステップSb4において主制御部1eは、伝送対象データのデータ形式をインターネットファクシミリ装置3が対応可能なデータ形式に変換するようにデータ変換部1cに指示する。この指示に応じてデータ変換部1cは、例えばPDF形式からTIFF形式に変換するように伝送対象データを変換する。
【0060】
ステップSb5において主制御部1eは、伝送対象データをインターネットファクシミリ装置3が対応可能なデータ形式の画像データに変換するようにデータ変換部1cに指示する。この指示に応じてデータ変換部1cは、例えばテキストデータをTIFF形式の画像データとするように伝送対象データを変換する。
【0061】
伝送対象データがインターネットファクシミリ装置3が対応するデータ形式であった場合、伝送対象データのデータ形式の変換が完了した場合、あるいは伝送対象データの画像データへの変換が完了した場合に主制御部1eは、ステップSb2、ステップSb4およびステップSb5のいずれかからステップSb6へ進む。
【0062】
ステップSb6において主制御部1eは、伝送対象データをインターネットファクシミリ装置3へと送り、オフランプ送信するように指示する。なお、ここでインターネットファクシミリ装置3へと送る伝送対象データは、ステップSb2からステップSb6に移行した場合にはステップSb1で取得した伝送対象データであり、ステップSb4からステップSb6に移行した場合にはデータ変換部1cによりデータ形式が変換されたのちの伝送対象データであり、ステップSb5からステップSb6に移行した場合にはデータ変換部1cによる変換で得られた画像データである。そして上記の要求に応じてインターネットファクシミリ装置3は、与えられた伝送対象データをアナログのファクシミリ伝送信号に変換し、これをゲートウェイ2へと送出する。ゲートウェイ2は、PCM(pulse code modulation)などによりディジタル化するみなし音声方式か、あるいはITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication sector)の勧告T.38に準拠した方式を使用して、ファクシミリ伝送信号をファクシミリ伝送データに変換する。そしてゲートウェイ2は、既に成立しているオーディオモードを使用したセッションを利用して、相手先に向けてNGN6へとファクシミリ伝送データを送信する。
【0063】
ところで、アプリケーションモードでの発呼処理の際に488(Not Acceptable Here)コマンドが受信されていなかった場合、伝送対象データが画像データでも、画像データに変換が可能なデータでもなかった場合、さらにはオーディオモードでの発呼処理でも通信が成立しなかった場合には、主制御部1eはステップSa4,5,7からステップSa9,10,11へそれぞれ進む。そしてステップSa9,10,11において主制御部1eは、それぞれの状況に応じたエラー処理を行った上で、伝送対象データの送信を断念して図2の処理を終了する。
【0064】
以上のように通信制御装置1によれば、アプリケーションモードでの発呼処理に際してNGN6から488(Not Acceptable Here)コマンドが送られてきた場合には、オーディオモードでの発呼処理を自動的に試みる。そしてこれにより通信が成立したならば、G3ファクシミリ通信を利用してのデータ送信を試みる。従って、G3ファクシミリ装置13,15に対するデータ送信に際してアプリケーションモードが選択されてしまった場合には、G3ファクシミリ通信を利用したデータ送信が自動的に行われて、データ送信を完了することが可能である。
【0065】
そして通信制御装置1では、G3ファクシミリ通信は、インターネットファクシミリ装置3のオフランプ送信機能を利用することで実現することも可能である。このため、通信制御装置1はG3ファクシミリ通信のための機能を有している必要がない。
【0066】
(第2の実施形態)
図7は第2の実施形態に係る通信制御装置21の構成とこの通信制御装置21が含まれる通信システムの構成とを示すブロック図である。なお、図7において図1と同一部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図7に示す通信システムは、ゲートウェイ2、インターネットファクシミリ装置3、コンピュータ4、LAN5、NGN6、ゲートウェイ7、通信制御装置8、インターネットファクシミリ装置9、コンピュータ10、LAN11、ゲートウェイ12、G3ファクシミリ装置13、アナログ網14、G3ファクシミリ装置15および通信制御装置21を含む。すなわち図7に示す通信システムは、図1に示した通信システムにおける通信制御装置1に代えて通信制御装置21を備えたものとなっている。
【0068】
通信制御装置21には、ゲートウェイ2、インターネットファクシミリ装置3およびコンピュータ4が、LAN5を介して接続されている。通信制御装置21は、インターネットファクシミリ装置3およびコンピュータ4がNGN6を介して通信するための処理を行う。
【0069】
通信制御装置21は、LANインタフェース部1a、プロトコル処理部1b、記憶部1d、データ変換部21aおよび主制御部21bを含む。そしてこれらの各部は、バス1fを介して互いに接続されている。すなわち通信制御装置21は、第1の実施形態の通信制御装置1におけるデータ変換部1cおよび主制御部1eに代えてデータ変換部21aおよび主制御部21bを備えて構成される。
【0070】
データ変換部21aは、画像データではないデータを画像データに変換する。またデータ変換部21aは、画像データをファクシミリ伝送データに変換する。
【0071】
主制御部21bは、後述するように通信制御装置21の各部を制御する。
【0072】
次に通信制御装置21の動作について説明する。
【0073】
コンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3が保持している伝送対象データをアプリケーションモードを使用してNGN6で伝送しようとするとき、その旨の要求がコンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3から通信制御装置21へ与えられる。そしてこの要求を受けると通信制御装置21では、主制御部21bが図2に示す処理を第1の実施形態とほぼ同様に実施する。ただし主制御部21bが実行する処理においては、ステップSa8におけるG3FAX送信処理の内容が、第1の実施形態にて主制御部1eが実行する処理とは異なっている。
【0074】
図8はG3FAX送信処理における主制御部21bの処理のフローチャートである。
【0075】
ステップSc1において主制御部21bは、伝送対象データをコンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3から取得する。なお主制御部21bは、ここで取得した伝送対象データを、記憶部1dに一時的に記憶しておく。
【0076】
ステップSc2において主制御部21bは、伝送対象データが画像データであるか否かを確認する。そして主制御部21bは、画像データではないならばステップSc3へ進む。
【0077】
ステップSc3において主制御部21bは、伝送対象データを画像データに変換するようにデータ変換部21aに指示する。この指示に応じてデータ変換部21aは、例えばテキストデータをTIFF形式の画像データとするように伝送対象データを変換する。
【0078】
伝送対象データが画像データであった場合、あるいは伝送対象データの画像データへの変換が完了した場合に主制御部21bは、ステップSc2およびステップSc3のいずれかからステップSc4へ進む。
【0079】
ステップSc4において主制御部21bは、伝送対象データをファクシミリ伝送データに変換するようにデータ変換部21aに指示する。この指示に応じてデータ変換部21aは、伝送対象データをファクシミリ伝送データに変換する。なお、ファクシミリ伝送データは、伝送対象データ(画像データ)が表す画像の情報を含むとともにG3規格に準拠したアナログのファクシミリ伝送信号を、PCMなどによりディジタル化するみなし音声方式か、あるいはITU−Tの勧告T.38に準拠した方式を使用してディジタル化して得られるデータである。また、ここでファクシミリ伝送データへと変換する伝送対象データは、ステップSc2からステップSc4に移行した場合にはステップSb1で取得した伝送対象データであり、ステップSc3からステップSc4に移行した場合にはデータ変換部1cによる変換で得られた画像データである。
【0080】
ステップSc5において主制御部21bは、データ変換部21aによる上記の変換処理により得られたファクシミリ伝送データを、LAN5を介してゲートウェイ2へと送る。そうするとゲートウェイ2は、既に成立しているオーディオモードを使用したセッションを利用して、相手先に向けてNGN6へとファクシミリ伝送データを送信する。
【0081】
以上のように通信制御装置21によれば、アプリケーションモードでの発呼処理に際してNGN6から488(Not Acceptable Here)コマンドが送られてきた場合には、オーディオモードでの発呼処理を自動的に試みる。そしてこれにより通信が成立したならば、G3ファクシミリ通信を利用してのデータ送信を試みる。従って、G3ファクシミリ装置13,15に対するデータ送信に際してアプリケーションモードが選択されてしまった場合には、G3ファクシミリ通信を利用したデータ送信が自動的に行われて、データ送信を完了することが可能である。
【0082】
そして通信制御装置21では、G3ファクシミリ通信を実現するためのファクシミリ伝送データの生成を行う機能を有しているので、第1の実施形態のように別の装置に頼ることなくG3ファクシミリ通信を実現できる。つまり通信制御装置21によれば、別の装置にオフランプ送信を要求することが不可能である環境においてもG3ファクシミリ通信を利用した伝送対象データの送信を実現することが可能である。
【0083】
(第3の実施形態)
図9は第3の実施形態に係る通信制御装置31の構成とこの通信制御装置31が含まれる通信システムの構成とを示すブロック図である。なお、図9において図1と同一部分については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0084】
図9に示す通信システムは、ゲートウェイ2、インターネットファクシミリ装置3、コンピュータ4、LAN5、NGN6、ゲートウェイ7、通信制御装置8、インターネットファクシミリ装置9、コンピュータ10、LAN11、ゲートウェイ12、G3ファクシミリ装置13、アナログ網14、G3ファクシミリ装置15および通信制御装置31を含む。すなわち図9に示す通信システムは、図1に示した通信システムにおける通信制御装置1に代えて通信制御装置31を備えたものとなっている。
【0085】
通信制御装置31には、ゲートウェイ2、インターネットファクシミリ装置3およびコンピュータ4が、LAN5を介して接続されている。通信制御装置31は、インターネットファクシミリ装置3およびコンピュータ4がNGN6を介して通信するための処理を行う。
【0086】
通信制御装置31は、LANインタフェース部1a、プロトコル処理部1b、記憶部1d、データ変換部31a、伝送信号生成部31bおよび主制御部31cを含む。そしてこれらの各部は、バス1fを介して互いに接続されている。すなわち通信制御装置31は、第1の実施形態における通信制御装置1におけるデータ変換部1cおよび主制御部1eに代えてデータ変換部31aおよび主制御部31cを備えるとともに、さらに伝送信号生成部31bを追加して構成される。
【0087】
データ変換部31aは、画像データではないデータを画像データに変換する。
【0088】
伝送信号生成部31bは、伝送対象データ(画像データ)が表す画像の情報を含むとともにG3規格に準拠したアナログのファクシミリ伝送信号を生成する。
【0089】
主制御部31cは、後述するように通信制御装置31の各部を制御する。
【0090】
次に通信制御装置31の動作について説明する。
【0091】
コンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3が保持している伝送対象データをアプリケーションモードを使用してNGN6で伝送しようとするとき、その旨の要求がコンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3から通信制御装置31へ与えられる。そしてこの要求を受けると通信制御装置31では、主制御部31cが図2に示す処理を第1の実施形態とほぼ同様に実施する。ただし主制御部31cが実行する処理においては、ステップSa8におけるG3FAX送信処理の内容が、第1の実施形態にて主制御部1eが実行する処理とは異なっている。
【0092】
図10はG3FAX送信処理における主制御部31cの処理のフローチャートである。
【0093】
ステップSd1において主制御部31cは、伝送対象データをコンピュータ4またはインターネットファクシミリ装置3から取得する。なお主制御部31cは、ここで取得した伝送対象データを、記憶部1dに一時的に記憶しておく。
【0094】
ステップSd2において主制御部31cは、伝送対象データが画像データであるか否かを確認する。そして主制御部31cは、画像データではないならばステップSd3へ進む。
【0095】
ステップSd3において主制御部31cは、伝送対象データを画像データに変換するようにデータ変換部31aに指示する。この指示に応じてデータ変換部31aは、例えばテキストデータをTIFF形式の画像データとするように伝送対象データを変換する。
【0096】
伝送対象データが画像データであった場合、あるいは伝送対象データの画像データへの変換が完了した場合に主制御部31cは、ステップSd2およびステップSd3のいずれかからステップSd4へ進む。
【0097】
ステップSd4において主制御部31cは、伝送対象データに応じたファクシミリ伝送信号を生成するように伝送信号生成部31bに指示する。この指示に応じて伝送信号生成部31bは、伝送対象データに応じたファクシミリ伝送信号を生成する。なお、ファクシミリ伝送信号は、伝送対象データ(画像データ)が表す画像の情報を含むとともにG3規格に準拠したアナログのファクシミリ伝送信号である。また、ここでファクシミリ伝送信号の生成に使用する伝送対象データは、ステップSd2からステップSd4に移行した場合にはステップSd1で取得した伝送対象データであり、ステップSd3からステップSd4に移行した場合にはデータ変換部1cによる変換で得られた画像データである。
【0098】
伝送信号生成部31bは、生成したファクシミリ伝送信号をゲートウェイ2のTELポートに送る。そうするとゲートウェイ2は、PCMなどによりディジタル化するみなし音声方式か、あるいはITU−Tの勧告T.38に準拠した方式を使用して、ファクシミリ伝送信号をファクシミリ伝送データに変換する。そしてゲートウェイ2は、既に成立しているオーディオモードを使用したセッションを利用して、相手先に向けてNGN6へとファクシミリ伝送データを送信する。
【0099】
以上のように通信制御装置31によれば、アプリケーションモードでの発呼処理に際してNGN6から488(Not Acceptable Here)コマンドが送られてきた場合には、オーディオモードでの発呼処理を自動的に試みる。そしてこれにより通信が成立したならば、G3ファクシミリ通信を利用してのデータ送信を試みる。従って、G3ファクシミリ装置13,15に対するデータ送信に際してアプリケーションモードが選択されてしまった場合には、G3ファクシミリ通信を利用したデータ送信が自動的に行われて、データ送信を完了することが可能である。
【0100】
そして通信制御装置31では、G3ファクシミリ通信を実現するためのファクシミリ伝送信号の生成を行う機能を有しているので、第1の実施形態のように別の装置に頼ることなくG3ファクシミリ通信を実現できる。つまり通信制御装置31によれば、別の装置にオフランプ送信を要求することが不可能である環境においてもG3ファクシミリ通信を利用した伝送対象データの送信を実現することが可能である。
【0101】
この実施形態は、次のような種々の変形実施が可能である。
【0102】
通信制御装置1,21,31が備える機能を、インターネットファクシミリ装置やコンピュータに組み込んでも良い。
【0103】
通信網は、NGNとは異なる網であっても良い。
【0104】
488(Not Acceptable Here)コマンド以外のWarningコマンドのいずれかを受けた場合にも、G3FAX送信処理を行っても良い。
【0105】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1,8,21,31…通信制御装置、2,7,12…ゲートウェイ(G/W)、3,9…インターネットファクシミリ装置(I−FAX)、4,10…コンピュータ、5,11…LAN、6…NGN、13,15…G3ファクシミリ装置(G3−FAX)、14…アナログ網、1a…LANインタフェース部(LAN I/F部)、1b…プロトコル処理部、1c,21a,31a…データ変換部、1d…記憶部、1e,21b,31c…主制御部、1f…バス、31b…伝送信号生成部。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0107】
【特許文献1】特許第3247944号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声データを伝送する第1の伝送モードと前記音声データとは異なるデータを伝送する第2伝送モードとを選択的に使用可能であるとともに、発呼先を識別する識別情報および使用する伝送モードを表したモード情報とを含んだ発呼情報を発呼元の通信端末から受けたことに応じて前記識別情報で識別される発呼先との通信を前記モード情報で表された伝送モードで行うことが可能であるか否かを前記通信端末に対して通知する通信網に前記通信端末として接続される通信制御装置において、
伝送対象データを送信する必要が生じたことに応じて、前記第2の伝送モードを表したモード情報を含んだ前記発呼情報を前記通信網へと送出する送出手段と、
通信可能であることが前記送出手段により送出した前記発呼情報への応答として前記通信網から通知されたことに応じて、前記伝送対象データをそのまま前記第2の伝送モードを使用して送信するための第1の処理を行う第1の処理手段と、
通信不可能であることが前記送出手段により送出した前記発呼情報への応答として前記通信網から通知されたことに応じて、前記伝送対象データを前記第1の伝送モードで伝送可能な伝送データに変換した上で前記第1の伝送モードを使用して送信するための第2の処理を行う第2の処理手段とを具備したことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記通信制御装置は、外部から与えられるアナログの伝送信号を前記伝送データに変換して前記前記通信網に送出するゲートウェイと、外部からの要求に応じて前記伝送対象データを前記伝送信号に変換して前記ゲートウェイに出力する機能を備えた通信端末装置と連携して前記通信網を介しての前記伝送対象データの伝送を行わせるものであり、
前記第2の処理手段は、前記伝送対象データを前記伝送信号に変換して前記ゲートウェイに出力するように前記通信端末装置に要求する処理を前記第2の処理として行うことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記通信制御装置は、外部から与えられる前記伝送データを前記通信網へと送出するゲートウェイと連携して前記通信網を介しての前記伝送対象データの伝送を行わせるものであり、
かつ前記通信制御装置は、前記通信対象データを前記伝送データに変換する変換手段をさらに備え、
前記第2の処理手段は、前記前記伝送対象データを前記伝送データに変換するように前記変換手段を制御するとともに、前記変換手段による変換で得られた伝送データを前記ゲートウェイへと与える処理を前記第2の処理として行うことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記通信制御装置は、外部から与えられる伝送信号を前記音声データに変換して前記前記通信網に送出するゲートウェイと連携して前記通信網を介しての前記伝送対象データの伝送を行わせるものであり、
かつ前記通信制御装置は、前記伝送対象データを前記伝送信号に変換する変換手段をさらに備え、
前記第2の処理手段は、前記伝送対象データを前記伝送信号に変換するように前記変換手段を制御するとともに、前記変換手段による変換で得られた前記伝送信号を前記ゲートウェイへと与える処理を前記第2の処理として行うことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記通信網は、IETF(internet engineering task force)によるRFC(request for comments)3261に準拠した次世代ネットワークであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記第2の処理手段は、前記RFC3261で規定された488(Not Acceptable Here)コマンドを前記通信網から受信したことに応じて前記第2の処理を行うことを特徴とする請求項5に記載の通信制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−193050(P2011−193050A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55013(P2010−55013)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【出願人】(399041158)西日本電信電話株式会社 (215)
【Fターム(参考)】