通信改善装置、通信システムおよび物品情報取扱設備
【課題】 複数のトランスポンダと、トランスポンダに対して通信可能なリーダアンテナとを備える通信装置の通信環境を改善する。
【解決手段】 各トランスポンダ23が配置される領域28と、リーダアンテナ24との間に、電波を吸収するシートから成り、電波を透過可能な領域33が形成される電波吸収体30が設けられる。このような電波吸収体30を設けることによって、通信可能領域28に1つだけトランスポンダ23が配置されるように、通信可能領域28を小さく絞り込むことができる。しかも電波吸収体30は、リーダアンテナ24の部分的周囲に設けられる。このようにしてリーダアンテナ24とトランスポンダ23との間の通信不良の発生を防止し、好適に無線通信可能な通信環境を実現することができる。
【解決手段】 各トランスポンダ23が配置される領域28と、リーダアンテナ24との間に、電波を吸収するシートから成り、電波を透過可能な領域33が形成される電波吸収体30が設けられる。このような電波吸収体30を設けることによって、通信可能領域28に1つだけトランスポンダ23が配置されるように、通信可能領域28を小さく絞り込むことができる。しかも電波吸収体30は、リーダアンテナ24の部分的周囲に設けられる。このようにしてリーダアンテナ24とトランスポンダ23との間の通信不良の発生を防止し、好適に無線通信可能な通信環境を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ(リーダアンテナ)とトランスポンダとを備える通信装置の通信環境を改善するための通信改善装置、ならびにそれを備える通信システムおよび物品情報取扱設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来の技術の物品情報取扱設備101を簡略化して示す正面図である。物品情報取扱設備101は、物品102の情報を取得する設備であり、複数の物品102を搬送する搬送装置103と、各物品102の情報を取得するための通信装置104とを備えている。通信装置104は、各物品102にそれぞれ装着されるトランスポンダであるICタグ105と、各ICタグ105と無線通信するリーダアンテナ106とを備えている。これらの位置関係は図11に限定されることはなく、リーダアンテナ106が搬送装置103の下方にあることも、横方向にあることもある。また搬送装置103がない場合もある。
【0003】
リーダアンテナ106は、そのリーダアンテナ106の通信可能領域107に、搬送装置103によって搬送される各物品102の移動経路が含まれるように設けられる。各ICタグ105は、リーダアンテナ106の通信可能領域107に存在する場合、リーダアンテナ106からの要求信号に応答して、物品102の情報を表す応答信号を送信する。したがってリーダアンテナ106は、搬送装置103によって搬送される物品102が通信可能領域107を通過するときに、物品102に装着されているICタグ105から物品102の情報を読取ることができる。
【0004】
通信装置104には、リーダアンテナ106の通信可能領域107に1つだけICタグ105が存在する状況を想定して設計される1対1対応型の装置(例えば低出力型のハンディリーダなど)と、リーダアンテナ106の通信可能領域107に複数のICタグ105が存在する状況を想定して設計される1対多対応型の装置(例えば高出力型のリーダアンテナなど)とが、少なくとも存在する。通常の場合、1対1対応型の通信装置104では、通信可能領域107に1つだけICタグ105が存在し、リーダアンテナ106によってICタグ105の情報を読取ることができる。しかし、この場合でも通信可能領域107に複数のICタグ105があれば複数の読み取りも可能となる。一般にUHF帯RFIDタグシステムは、長距離通信を想定しており、通信可能距離もより遠くまで到達し、通信可能領域107もより広くなる。よって現在のUHF帯タグシステムは、電波到達エリアの点からも、多くのICタグ105の情報を読み取る能力を有しているといえる。
【0005】
図11は、通信可能領域107に配置されるICタグ105が装着された物品102に斜線のハッチングを付して示しており、リーダアンテナ106の通信可能領域107に複数のICタグ105が存在する状態を示している。リーダはアンテナを兼用する場合と独立の場合があり、兼用の場合はリーダが、独立の場合はリーダアンテナが電波送受信源となる。本発明でリーダアンテナとしているのは電波の送受信機能を有する部材であるとしてのことであり、リーダとアンテナが一体化している場合はリーダがこれに代用する。1対1対応型の通信装置104は、リーダアンテナ106の構成が簡素であるなどの利点を有しているが、通信可能領域107に複数のICタグ105が存在する状態の場合、リーダアンテナ106が複数のICタグ105と全て同じ周波数では無線通信することはできない。この理由は、同じ周波数同士では干渉の問題が発生するし、ICタグ105の読み取り順を制御できないこともあり、全てのICタグ105を確実に読み取ることは困難となる。するとこれらすべてのICタグ105と同時に通信することができないので、情報の読取不良を生じてしまうおそれがある。
【0006】
UHF帯RFIDタグシステムにおいて実用化されている周波数割り当ておよび共用化技術を述べる。共用化技術とは、1個のリーダが多数のICタグと通信したり、複数のリーダが1個のタグと通信したり、複数のリーダの電波到達領域が重なる場合などのタグシステムにおける電波干渉回避技術である。通信装置104で用いる電波の周波数として割り当てられている通信周波数帯には、細分割した複数の通信周波数域があり、それらを利用することで互いに異なる通信周波数域で通信することによって、1つのリーダアンテナ106にて複数のICタグ105と同時に通信することができる。具体的には、952MHz〜954MHzの高出力タイプの通信は9つのチャンネル(CH)に分割されていて、低出力タイプには952MHz〜95MHzで計14CHに分割されている。複数のICタグ105が存在しても、各ICタグ105との無線通信において、まったく同じ周波数を利用しないことで、狭い周波数域ながら干渉を低減する運用法が工夫されている。
【0007】
現在採用されているキャリアセンスと呼ばれる干渉防止策は、LBT技術(Listen
Before Talk)である。同一CHの電波に対して、リーダの持つLBT技術(同一CHの電波を感知すれば、同じCHの出力を控える機能)により発信タイミングを変えることで干渉を回避するものである。これにより干渉問題が減らすことが可能となった。しかし、他CHの電波に対してはLBTが効果なく同じ時間に通信できるため、他CHであっても近似するCHの場合(例えば、1CHに対する2CHや3CHの場合)には他のリーダアンテナ6との通信が成立することがある。この結果、他リーダアンテナとの通信成立により、本来のリーダアンテナ106とは通信不良となってしまう。これがタグコンフュージョンと呼ばれる問題であり、近似CHの電波のフィルタリングの課題である。この問題は、ゲートシステムが複数並んだ場合で指摘されている未だ解決されていない課題である。
【0008】
LBT技術が同一CHの電波を感知すれば、同じCHの出力を控える機能であるために浮上してきた問題がある。リーダアンテナ106はLBT技術より電波出力のタイミングが電波の出力と出力停止を交互に行うことになっており、停止時間中に電波を検知し、そのリーダが発信するCHと同一CHの電波の空きを確認してから、出力するという動作を取る。例えば物品を複数のコンベアベルトが平行して敷設されている物流ラインで運ぶ場合などで、複数のリーダアンテナ106が近くにある場合、本来、各リーダアンテナ106はリアルタイムで物品のICタグ105を読み取るはずであるが、近接に存在するリーダアンテナ106がたまたま同一CHの電波を出力していると、読むべきリーダアンテナ106が必要なタイミングでの出力を待ってしまい、その待ち時間に物品が通過することで読み取りミスを生じる現象をいう。LBT技術の待ち時間発生に起因するレスポンスの遅れ(リアルタイム性の欠如)の課題である。これもゲートシステムが複数並んだ場合に指摘される未解決の課題である。
【0009】
以上に加え、RFIDにおいて無線通信するリーダやICタグ105の場合、とくにICタグ105は、低価格化の制限のため高度な共用化技術を採用しにくい事情もある。そしてICタグ105は、バッテリレスタイプが主であり、このバッテリレスのICタグ105では、まずリーダから電力を供給して起動させる必要があるため、通信するまでに時間を要するという事情もある。
【0010】
さらに通信を困難にするのは、リーダアンテナ106から放射された要求信号が金属等から成る物体にて反射して、位相が変わった状態でICタグ105に到来してきた場合、および他のリーダアンテナ106、特に同一CHや近いCHの電波を放射しているリーダアンテナ106からの要求信号がICタグ105に到来した場合などであり、ICタグ105がこれらの要求信号に応答することによって、本来通信すべきリーダアンテナ106との正常な通信ができなくなる場合がある。またそれらの混信により信号は届いても、信号の位相に変化が生じてしまい情報が読み取れない場合もある。また信号の混信の場合だけでなく、電波の進行波と反射波(ときには他の機器からの直接波の場合もある)の干渉により通信領域107に定在波が発生し、場所によっては不感領域(null点)が発生することがある。このようにリーダアンテナ106による読取不良は、前述の様々な要因が絡み合って生じるので、読取不良を無くし、完全な読取り実現は非常に難しくなる。
【0011】
これらは電波の指向性の問題である。指向性はアンテナの種類に大きく影響を受ける。一般に用いるリーダアンテナ106はパッチアンテナで構成される。パッチアンテナはダイポールアンテナより指向性は高いが、アレーアンテナよりは指向性が低い汎用アンテナである。パッチアンテナにて5m〜10mもの読み取り距離を得るような電波を放射する場合はどうしても横方向(上下も含めて広がるため楕円球状)に電波の広がりが発生する。読み取り距離を抑えたい場合はリーダアンテナの出力を抑え、電波を弱くすればよいが、読み取り距離を確保しながら、なお広がりを抑えるには別の工夫が必要になる。
また日本の場合、RFID用途に認可されたUHF帯の周波数も狭いが、さらに実用現場においても狭い空間で運用されることが多く、複数のICタグ105および複数のリーダアンテナ106が接近することがある。ICタグ105やリーダアンテナ106が接近すると電波干渉の問題が発生しやすくなり、ICタグ105の読み落としが頻発し、結果的にRFIDタグシステムの信頼性を築けず、普及を阻害する可能性がある。さらに物品の移動速度の問題が加わってくると処理が間に合わなくなり、さらに信頼性が低下する。とくに物流関係へのRFIDタグシステムの普及には、指向性の問題を解決する必要がある。
【0012】
以上の問題の解決手段の1つに、アンテナの指向性を高くすることが考えられる。指向性が高いとは、電波が放射される方向の周囲の広がり範囲が小さいことを意味している。電波到達距離を損なわず、指向性を制御することにより、干渉を低減したRFIDタグシステムの使用方法を提案できる。
【0013】
一般にリーダアンテナ106に用いられるパッチアンテナは、共振板とGND(グランド)板の二枚の導体板が平行に配置された構成であり、コスト的に有利であり、最も汎用的なリーダアンテナ106として使用されている。パッチアンテナは二枚の導体板の間からしみ出すように発生した電界が、共振板方向のさらにその先に飛んでいくアンテナである。この際、GND板を共振板よりも大きくすることで、電界をより共振板方向に集中するようにしているが、GND板のサイズによっては横方向や後方向にも漏れる電界が生じている。これらの漏洩電界がRFIDシステムの干渉問題にも関与してくるため、これらの漏洩を同時に抑えた指向性制御装置(本発明の通信改善装置)が求められる。
【0014】
パッチアンテナを一枚だけ用いるよりも、4枚や6枚を二列など複数列に近づけて並べることで指向性が絞れる場合がある。しかし、この場合パッチアンテナの境付近では干渉にてnull点が発生することがあり、とくに遠距離だけでなく近距離に物品がある場合の読み取りが不安定になることがある。
【0015】
これとは別に指向性の高いアンテナとして、たとえばアレーアンテナが知られている。しかしアレーアンテナはサイズも大きく、コストアップにつながり、通信装置104に容易に用いることはできない。このようにアンテナの指向性を高くすることも困難である。
【0016】
電波の指向性を制御する方法として、アンテナのサイド板として金属板を用いる方法がある。しかし、金属板を用いた場合は、上述の横方向や後方向にも漏れる電界を遮蔽することはできても、エネルギ的に消失させてはいないため、その電波が反射して通信可能領域107を想定外の形状にしたり、通信可能領域107以外のICタグ105を読み取ることがある。金属板間で定在波が生じたり、反射波が生じて通信環境が劣化する場合がある。
【0017】
またRFIDタグシステムにおいては、リーダアンテナ106の近くを大型の金属製物品が通過することも多く、この際にリーダアンテナ106と金属製物品間で定在波が発生することがあり、読み取りが不安定になったり、通信可能領域107以外のICタグ105を読み取るという問題が発生する場合がある。これは単なる指向性制御の手段のみでは解決しない問題である。
【0018】
高速自動車道の出入口において通行料金を自動的に収受するETCなどと呼ばれるシステムにおける不要な電波の遮蔽または吸収のための構造が、たとえば特許文献1,2に示されている。しかしながらこのような特許文献1,2に示される構成では、図11を参照して説明したような課題を解決することはできない。
【0019】
さらに特許文献3には、非接触式無線データキャリアを用いたシステムにおける電波吸収体の使用法が挙げられている。この場合の使用方法は不要電波の反射を抑えるために、非接触データキャリアの近傍の位置に電波吸収体を用いるものであり、本発明のようにアンテナの周囲に用いて電波の指向性制限と遮蔽性を達成しようとしたものはない。
【0020】
【特許文献1】特開2005−243868号公報
【特許文献2】特開2005−109095号公報
【特許文献3】特開2002−230507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述のように従来の技術の各装置では、リーダアンテナ106によるICタグ105からの情報の読取が不良となってしまう場合がある。読取不良を防止できる構成は存在していない。
【0022】
本発明の目的は、複数のトランスポンドをリーダによって各トランスポンドと順次通信する場合に、リーダアンテナとトランスポンダとの間の通信不良の発生を防止することができる指向性制御技術を有する通信改善装置、ならびにそれを備える通信システムおよび物品情報取扱設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、リーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置の通信環境を改善するための通信改善装置であって、
各トランスポンダが配置されるトランスポンダ配置領域と、リーダアンテナとの間またはリーダアンテナの部分的な周囲に設けられ、リーダアンテナとトランスポンダとの間の無線通信に用いられる電波あるいは不要電波を吸収および遮蔽する電波吸収体から成り、無線通信に用いられる電波を透過可能な透過領域が形成され、その透過領域を介してリーダアンテナとトランスポンダとが無線通信するように配置したり、または透過領域を有す電波吸収体形成体に透過領域からトランスポンダを搬入することで、アンテナの電波指向性を制御し、かつ他の周囲への電波を吸収および遮蔽することを特徴とする通信改善装置である。
【0024】
また本発明は、無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層と電波吸収層が積層された電波吸収体であることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層のシールド性能が20dB以上、かつ無線通信周波数の電波に対する電波吸収層の吸収性能が10dB以上あることを特徴とする。
【0026】
また本発明は、透過領域が、単数または複数個形成され、その形状は、線状、スリット状、スロット状、円形状、楕円形状、多角形状、角部が曲線状である多角形状、不定形状、それらが組み合わされた形状で、かつ二次元または三次元状の形状の少なくとも1つから選ばれることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、透過領域が、方形、楕円形もしくは多角形等であり、x方向とy方向の長さが異なることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記透過領域はその領域の大きさが可変であり、設置される位置調節が可能であることを特徴とする。
【0029】
また本発明は、前記通信改善装置を備えるリーダアンテナまたはリーダアンテナゲートである。
【0030】
また本発明は、単数もしくは複数のリーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置と、前記通信改善装置とを備える通信システムである。
【0031】
また本発明は、リーダおよび通信改善装置の少なくともいずれか一方は、トランスポンダ配置領域に対して変位可能に設けられることを特徴とする。
【0032】
また本発明は、前記通信システムと、
通信システムの通信装置が備える各トランスポンダが個別に装着される物品を搬送する搬送装置とを備える物品情報取扱設備である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、トランスポンダ配置領域とリーダアンテナとの間またはリーダアンテナの部分的な周囲に電波吸収体が設けられる。この電波吸収体は、リーダアンテナとトランスポンダとの間の無線通信に用いられる電波(以下「利用電波」という)あるいは不要電波を吸収および遮蔽するシートから成り、利用電波を透過可能な透過領域が形成されている。リーダアンテナは、各トランスポンダの内、透過領域に臨む位置およびその周辺に配置されるトランスポンダとだけ、通信可能である。このような電波吸収体を設けることによって、リーダアンテナの通信可能領域に配置されるトランスポンダの数が少なくなるように、トランスポンダ配置領域において、リーダアンテナによってトランスポンダと通信可能な通信可能領域を通信可能距離は変わらないままで絞り込むことができる。または透過領域を有す電波吸収体形成体に透過領域からトランスポンダを搬入する形式として、差し入れられたトランスポンダを読み取り、電波吸収体の背面側にあるトランスポンダを読み取らないという、確実な読み取りを実現できる。これも通信可能領域の制御である。
【0034】
さらに電波吸収体の透過領域以外の領域では、利用電波あるいは不要電波が吸収および遮蔽されるので、利用電波あるいは不要電波の反射および干渉を防ぎ、定在波が立ってしまうことを防ぐことができる。しかもその電波吸収体は、その透過領域の形状を非対称とすることや、透過領域の位置の変更を可能とすることで任意に電波の指向性や通信可能距離を調整することができる。これらによってリーダアンテナによる通信可能距離を低下させることなく、電波指向性を高めることが可能となる。このようにして無線通信特性を改善して、通信可能領域に配置されるトランスポンダの数を少なくする(絞り込む)ことで、今まで制御できなかった電波の反射や干渉を防ぐことが可能となり、単数もしくは複数のリーダアンテナを用いて、複数のトランスポンドと通信する場合に、リーダアンテナとトランスポンダとの間の通信不良の発生を防止し、リーダアンテナとトランスポンダとの間で好適に無線通信可能な通信環境を実現することができる。さらに金属製物品がリーダアンテナの前を通過する場合もリーダアンテナと物品間の電波干渉の発生を抑制することが可能となる。
【0035】
本発明の工夫した点は以下の通りである。(1)電波吸収性と電波遮蔽性を共に有する電波吸収体をリーダアンテナの近くで用いて、電波到達距離を落とさずに指向性制御を実現させたこと、(2)透過領域の形状を任意変更すること等で、指向性制御可能としたこと、(3)近い距離での電波吸収特性を発現するため、磁性損失性を有する電波吸収体を用いたこと、である。(1)に関しては、ホーンアンテナなど金属を用いた電波の指向性制御法は存在した。しかし、RFIDシステムにおいてはどの方向から来る電波もあるため、金属板をそのままで用いると、例えば外周部は電波反射板となる。またリーダアンテナから横方向や後方向に漏洩する電波を抑制する必要もあり、両方を達成するため電波吸収性と電波遮蔽性を共に有する電波吸収体を使用している。(2)は、(1)により不要電波を吸収させた後、透過領域の形状を制御することで指向性を制御している。形状に非対称性を与えたり、または角度を変更したりして、電波到達距離を低下させずに、指向性を上げる条件をみつけている。(3)は、近傍界のように電波吸収体が電波発信源に近づくと、インピーダンスは磁界成分が電界成分よりも小さくなり、遠方界用に設計した電波吸収体が使用できなくなる。この際、電波吸収体に透磁率を有する磁性体から成る吸収層を有していれば、その層の効果で電波の磁界成分に損失を与えることができ、近距離でも電波吸収効果を有することが期待できる。少なくとも定在波は発生しない。このようにRFIDシステムの電波吸収体には近い距離や斜め入射角度でも吸収性能に優れた電波吸収体が要求されている。さらに薄型化の要求もあるため、これらに応じるために透磁率成分を利用したパターン型電波吸収体を使用している。例えば、磁界を利用するようなUHF帯の通信手段の場合には、この透磁率が指向性制御に有効に働くことになる。
【0036】
以上を組み合わせて、リーダアンテナの近くで用いることができる通信改善装置を得ることができた。
【0037】
また本発明によれば、電波吸収体に、単数または複数個の透過領域が設けられ、その透過領域は、線状、スリット状、スロット状、円形状、楕円形状、多角形状、角部が曲線状の多角形状、不定形状、それらが組み合わされた形状で、かつ二次元または三次元状の形状の少なくとも1つから選ばれる形状を有している。このような透過領域を設けることで、リーダアンテナからの利用電波が必要十分な位置に到達される程度に、通信可能領域を絞り込むことができる。
【0038】
また本発明によれば、電波吸収体に設けられる方形、楕円形もしくは多角形等の透過領域のx方向とy方向の長さを変えている。このような透過領域の形状とすることで、リーダアンテナからの電波の指向性をx方向とy方向で変えることが可能となる。
【0039】
また本発明によれば、透過領域を形成する電波吸収体や透過領域を位置調整可能とすることで、現場にて、あるいはICタグの貼られる物品に合わせて最適指向性に調整することが可能となる。
【0040】
また本発明によれば、前述の優れた効果を達成する通信改善装置によって、通信装置の通信環境を改善し、優れた通信環境を実現することができる。したがって通信装置のリーダアンテナと各トランスポンダとの間で、好適に通信可能なリーダアンテナやリーダアンテナゲートを実現することができる。
【0041】
また本発明によれば、トランスポンダ配置領域に対して、リーダアンテナおよび通信改善装置の少なくともいずれか一方を変位させ、トランスボンダの位置に指向性を合わせて通信可能領域を変更することできる。したがってより好適な無線通信による通信環境を実現することができる。
【0042】
また本発明によれば、前述の通信システムの各トランスポンダを、各物品に装着し、物品の情報を保持可能とした各トランスポンダを構成することによって、各物品を搬送装置で搬送しながら、物品の情報を取扱うことができる。このように好適に情報を取扱うことができる物品情報取扱設備を実現することができる。物品の情報の取扱には、たとえば各トランスポンダに保持させた物品の情報の取得、および各トランスポンダによる物品の情報の格納保持の少なくともいずれか一方が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図1は、本発明の実施の一形態の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。物品情報取扱設備20は、複数の物品21に関する情報を取扱うための装置であり、情報の取扱には、情報の取得および情報の格納保持の少なくともいずれか一方が含まれる。物品21の情報には、たとえば物品21の種類、名称、番号、価格などが含まれる。また物品21の情報は、物品21の履歴情報(製造場所、生産地、製造年月日、環境データ等)、物品21が食品である場合のその食品のレシピ、物品21の取り扱い方法の情報などであってもよい。この物品情報取扱設備20の用途は、物品21の情報を取扱う用途であれば、特に限定されるものではないが、たとえば物品21の在庫管理を目的として、物品21の入庫および出庫を確認するために用いられてもよいし、たとえば複数の物品21を販売するときに各物品21毎の価格を取得して合計金額を求めるために用いられてもよい。
【0044】
物品情報取扱設備20は、各物品21を搬送する搬送装置22と、各物品21にそれぞれ装着される複数のトランスポンダ23および各トランスポンダ23との間で無線通信可能なリーダアンテナ24を有する通信装置25と、通信装置25の通信環境を良好にするための通信改善装置26とを備える。通信装置25と通信改善装置26とを含んで通信システムが構成される。さらに物品情報取扱設備20には、制御装置27を備え、この制御装置27は、リーダアンテナ24に通信可能に有線接続されている。リーダアンテナ24とトランスボンダ23の位置関係は図1に限定されることはなく、リーダアンテナ24が搬送装置22の下方にあることも、横方向にあることもその他の位置にあることもまた搬送装置22を用いない場合があるのは前述の通りである。
【0045】
搬送装置22は、物品21を保持して搬送可能な構成であれば、特に限定されるものではない。本実施の形態では、搬送装置22は、たとえばベルトコンベアなどのコンベアによって実現され、各物品21を乗載して、搬送方向Aへ搬送することができる。搬送装置22は必須のものではなく、例えば人の手やフォークリフトなどその他の手段で移動させることは可能である。また物品21は、特に限定されるものではなく、商品であってもよいし、部品や中間品であってもよく、試験の対象となる試験体またはその試験体が収容される容器であってもよい。
【0046】
リーダアンテナ24は、電波から成る要求信号を送受信する電子機器であり、リーダ27にて制御される。このリーダアンテナ24は、たとえば搬送装置22の上方に、搬送装置22に対向するようにして、たとえば図示しない支持装置によって支持されて、定位置に設けられる。リーダアンテナ24は、要求信号を搬送装置22に向けて送受信する。
【0047】
図2は、本発明の実施の他の形態の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。リーダアンテナ24の位置は、物品の横方向、上下方向や斜め方向などが任意に選択することができる。リーダアンテナ24は複数であってもよい。図1との違いは、物品が縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過する場合を示している。さらにリーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、物品21に面する方向に透過領域を有している。
【0048】
図3は、物品21を示す斜視図である。図1を併せて参照して、各トランスポンダ23は、たとえばタグによって実現されるが、タグに限定されるものではない。またタグは、シート状であってもよいし、チップ状であってもよいし、ボタン状、ラベル状、カード状等であってもよい。さらにタグは、ICなどの半導体装置を備える構成であってもよいし、半導体装置を備えていない構成であってもよい。
【0049】
本実施の形態では、各トランスポンダ23は、シート状のタグであり、各物品21の表面部に、たとえば貼着されて装着される。各トランスポンダ23は、各物品21に個別に、1つずつ設けられる。このように各トランスポンダ23は、搬送装置22に保持される物品21に装着されている。したがって各物品21が搬送装置に保持された状態で、各トランスポンダ23が配置される領域がトランスポンダ配置領域28となる。また図2の場合では、積載された複数の物品21に装着された各トランスポンダ23を一単位として配置される領域がトランスポンダ配置領域28となる。
【0050】
また各トランスポンダ23は、各物品21が搬送装置22によって搬送されることに伴なって移動する。このときの各トランスポンダ23の移動する流域が各トランスポンダ23の移動経路となる。この移動経路は、トランスポンダ配置領域28と一致している。以下、移動経路にも、トランスポンダ配置領域と同一の符号「28」を付す。
【0051】
リーダアンテナ24は、通信改善装置26が設けられない状態で、リーダアンテナ24がトランスポンダ23と通信可能な通信可能領域29と、トランスポンダ配置領域28とが、互いに部分的に重なり合うように設けられる。したがってトランスポンダ配置領域28であって、かつリーダアンテナ24の通信可能領域29でもある領域部分(以下「重複領域」という)31が存在する。
【0052】
このようなリーダアンテナ24と各トランスポンダ23とを含んで構成される通信装置25では、リーダアンテナ24から送信される要求信号を、重複領域31に配置されるトランスポンダ23が受信し、そのトランスポンダ23が要求信号に応答し、要求信号によって要求される動作を実行する。この要求信号によって要求される動作は、特に限定されるものではないが、たとえば、トランスポンダ23が保持している情報をリーダ24に送る動作であってもよいし、リーダアンテナ24から与えられる情報を格納して保持する動作であってもよい、トランスポンダ23が保持している情報をリーダアンテナ24に送るとともに、リーダアンテナ24から与えられる情報を格納して保持する動作であってもよいし、情報を取扱うその他の動作であってもよい。各トランスポンダ23が要求信号に応答して、リーダアンテナ24に情報を送る信号は、応答信号である。
【0053】
リーダ−ICタグの通信周波数は、電波方式である300MHz帯、430MHz帯、UHF帯、2.4GHz帯、5.8GHz帯等を想定しているが、他の周波数でも構わない。ミリ波帯域を利用することも可能である。ここでいうUHF帯とは800MHz〜1GHzの中の周波数を部分的に使用する通信電波の帯域であり、各国で認可された周波数帯域がある。2.4GHz帯は、2,400MHz以上2,500MHz未満の電波であり、具体的にはRFID用では、日本では2,400MHz以上2483.5MHz以下の範囲を含む電波である。
【0054】
リーダアンテナ24は、要求信号を送信し、トランスポンダ23に保持している情報を送信させることによって、トランスポンダ23から情報を読取り、またはトランスポンダ23に情報を与えてトランスポンダ23にその情報を保持させるようにして、トランスポンダ23に情報を書込むことができる。リーダアンテナ24と各トランスポンダ23とを備える通信装置25では、リーダアンテナ24と、各トランスポンダ23とは、各トランスポンダ23がリーダアンテナ24に対して相対的に変位しながら互いに無線通信する。リーダアンテナ24とトランスポンダ23とは、リーダアンテナ24が絶対位置を変えるにように変位して相対的に変位する構成であってもよいが、本実施の形態では、各トランスポンダ23が各物品21の搬送に伴って絶対位置を変えるにように変位して相対的に変位する構成である。
【0055】
制御装置27は、リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの応答信号を受信させる。制御装置27は、たとえばリーダアンテナ24によって各トランスポンダ23から読取らせた情報を、表示しまたは他の装置に与える構成であってもよいし、リーダアンテナ24によって各トランスポンダ23から読取らせた情報を利用して、他の装置を制御する構成であってもよい。また制御装置27は、たとえばリーダアンテナ24によって各トランスポンダ23に書込みさせる情報を生成してリーダアンテナ24に与える構成であってもよい。
【0056】
図4は、通信改善装置26の電波吸収体30を示す斜視図である。図1を併せて参照して、通信改善装置26は、簡便な構造でリーダアンテナ24から放射される電波の到達領域を制限可能な装置であり、リーダアンテナ24として既存のリーダアンテナを用い、既存の出力で電波を放射させるように用いて、電波の到達領域をトランスポンダ23のある位置および周辺領域に限定しようとするものである。つまり通信改善装置26は、電波の到達領域を小さく制限することによって、通信可能領域27を小さく絞り込む装置であり、これによって本来通信すべきリーダアンテナ24とトランスポンダ23との通信環境が良い状態となるようにする装置である。
【0057】
したがって通信改善装置26は、前述の通信装置25における通信環境を改善する装置であり、リーダアンテナ24と各トランスポンダ23との間の通信環境を改善して良好にする装置である。この通信改善装置26は、電波吸収体または電波遮蔽体に周波数選択表面(Frequency Selective Surface;略称F.S.S)技術を組み合わせたものであり、本実施の形態では、電波吸収体30を備える。これは透過領域33をスロットアンテナとして動作させて、そのアンテナ部分で再放射される電波でICタグ23と通信しようとするものである。電波吸収体30に用いた導体層35に周波数に合わせた切り込みを入れることでこれを実現している。ただし、切り込み部分は厳密にアンテナ化していなくても隙間部分から漏れる電波を利用することで通信することも可能である。電波吸収体30は、図示しない支持装置によって支持されて、トランスポンダ配置領域28と、リーダアンテナ24との間に設けられる。この電波吸収体30は、電波を吸収する吸収体であるが、電波を遮蔽する機能も併せて有している。
【0058】
トランスポンダ配置領域28は、細長く延びる棒状の領域であり、本実施の形態では一仮想直線に沿って延びる領域である。リーダアンテナ24における電波を放射する位置(信号の送信位置)の中心(以下「放射中心」という)と、トランスポンダ配置領域28における放射中心に最も近い位置とを結ぶ仮想軸線32を想定して、電波吸収体30は、仮想軸線32に対して垂直に配置され、リーダアンテナ24から間隔をあけた距離Dの位置に配置される。
【0059】
図5は、電波吸収体30の一部を示す断面図である。電波吸収体30は、通信装置25において無線通信に用いられる電波(以下「利用電波」という)を吸収するシートから成る。電波吸収体30は、利用電波を吸収可能な構成であれば、特に限定されるものではなく、どのような構成であってもよい。あくまでも一例ではあるが、電波吸収体30は、導電性材料から成る導体層35を有し、この導体層35の厚み方向の少なくとも一方側に積層されて、吸収層36を有する。
【0060】
導体層35は、たとえばアルミニウム、銅などの金属または導電性インクから成る。導体層35としては、金属板、金属箔および金属蒸着フィルム、導電インク層などを用いることができるが利用電波の波長よりも小さい寸法の空隙を有するメッシュ構造物、導電性織布、導電性不織布、導電性発泡体などを用いることも可能である。
【0061】
電波吸収体30が電波吸収体として動作するためには、背面部に電磁波反射層となる導体層35(本発明では電波遮蔽層を兼ねる。)が必要である。しかし、背面方向に金属板を用いるなど、導体層35を代用するものがある場合は、電波吸収体30に導体板35が一体化していなくてよい。
【0062】
吸収層36は、少なくとも損失層を有し、この損失層によって電波のエネルギを損失させて吸収する。損失層は、磁性損失および誘電損失の少なくともいずれか一方を利用して電波を吸収する構成である。また吸収層は、導電性材料から成る導体パターンが形成されるパターン層を有する構成でもよい。本発明では、磁性損失および誘電損失の両方を利用している。磁性損失の利用が好適であるが、近傍界の電波吸収効果が少なくなってもよい場合もあり、効果は落ちるが、誘電損失のみの利用の場合もある。
【0063】
吸収体の吸収層を構成する材料、パターン層の導体パターンの形状などは、特に限定されるものではない。また吸収体の各層の厚み、導体パターンの寸法などは、吸収すべき電波の周波数に合せて決定される。
【0064】
このように導体層35と吸収層36とを含んで電波吸収体30が構成され、図4において上方となる吸収層36側から入射する電波を吸収することができる。したがって電波吸収体30は、吸収層36をリーダアンテナ24に対向させるようにして配置され、リーダアンテナ24から放射される利用電波を吸収することができる。
【0065】
また導体層35の吸収層36とは反対側に、吸収層36と同様のもう1つの吸収層37を設けるようにしてもよい。これによってリーダアンテナ24とは反対側のトランスポンダ配置領域28側から入射される利用電波も吸収することができる。
【0066】
このように電波吸収体30は、少なくともリーダアンテナ24側から入射する利用電波を吸収するように構成され、本実施の形態では、トランスポンダ配置領域28側から到来する利用電波あるいは不要電波を吸収するように構成される。
【0067】
RFIDタグシステム用途における電波吸収体30は、特定周波数(通信周波数)の反射波を発生しない電波遮蔽体として機能する。電波遮蔽体としては金属板などを利用すれば有効であるが、その場合は反射波が発生し、進行波との間で干渉し定在波が発生して読み取り不良が生じる。電波吸収体30のような反射波も透過波も生じない電波遮蔽体が、RFID通信改善用途には適している。
【0068】
本実施の形態では、パターン層を有する電波吸収体30を用いているが、もちろんこれに限定されることはなく、電波を吸収するものであれば、λ/4型電波吸収体、カーボン系含浸織布、カーボン系含浸不織布、フェライト、カルボニル鉄などの磁性材料を含有してなる電波吸収体、フェライト板やセラミックスなどの電波吸収体によることも可能である。
【0069】
電波吸収体30は、その形状が限定されるものではないが、たとえば平板状であり、厚み方向に見た形状が長方形状である。本発明において、長方形状に、正方形状が含まれることは言うまでもない。また電波吸収体30は、仮想軸線32に平行に投影した場合、この電波吸収体30が設けられない状態でのリーダアンテナ24による通信可能領域29の全体が、電波吸収体30に包含されるように設けられる。したがって電波吸収体30の外周部によって囲まれる領域内にリーダアンテナ24による通信可能領域29が収まっている。
【0070】
電波吸収体30には、中央部に利用電波を透過可能な透過領域33を有している。透過領域33は、本実施の形態では、透孔部を形成することによって実現され、透孔部が透過領域33となる。透過領域33の形状は、限定されるものではないが、たとえば厚み方向に見た形状が長方形状である。電波吸収体30は、仮想軸線32が透過領域33の中心を通り、リーダアンテナ24と各トランスポンダ23とは、透過領域33を介して無線通信するように配置される。
【0071】
また電波吸収体30は、仮想軸線32に平行に投影した場合、この電波吸収体30が設けられない状態でのリーダアンテナ24による通信可能領域29に、透過領域33が包含されるように設けられる。したがって通信可能領域29内に透過領域33が収まっている。
【0072】
電波吸収体30が設けられると、リーダアンテナ24は、各トランスポンダ23の内、透過領域33に臨む位置に配置されるトランスポンダ23とだけ、通信可能である。リーダアンテナ24は、重複領域31に配置されるトランスポンダ23と通信可能であるが、電波吸収体30が設けられることによって、重複領域31が絞り込まれて小さくなり、透過領域33に臨む位置だけになる。このように重複領域31を小さくすることによって、重複領域31に1つだけトランスポンダ23が配置されるようにして、重複領域31に複数のトランスポンダ23が同時に配置されてしまうことを防ぎ、または重複領域31に複数のトランスポンダ23が同時に配置されてしまうことを抑制することができる。
【0073】
重複領域31に複数のトランスポンダ23が配置されないことが好ましいが、重複領域31に複数のトランスボンダ23が同時に配置される場合であっても、電波吸収体30を設置される前より、通信可能領域29に入るトランスボンダ23の数が減る場合は、それに応じた読み取り率の向上を得ることができる。したがって重複領域31に複数のトランスポンダ23が同時に配置される確立を小さくできれば、通信改善という本発明の効果を達成することができる。つまり重複領域31に1つだけトランスボンダ23が配置されるようにすることが可能な通信改善装置26はもちろん、重複領域31に同時に配置されるトランスポンダ23の数を減少させる通信改善装置26も、本発明に含まれる。
【0074】
さらに電波吸収体30の透過領域33以外の領域では、利用電波が吸収されるので、利用電波の反射および干渉を防ぎ、定在波が立ってしまうことを防ぐことができる。しかもその電波吸収体30は、リーダアンテナ24から間隔をあけて設けて配置することで、利用電波または不要電波を吸収および遮蔽して、反射および干渉を防ぐことができる。しかもリーダアンテナ24から放射される電波を電波吸収体30が近い距離のため吸収することがない現象を回避でき、リーダアンテナ24による通信可能距離を低下させることがない。
【0075】
このようにして通信装置25の通信環境を改善し、リーダアンテナ24が、通信可能領域29に1つだけトランスポンダ23が存在する場合にトランスポンダ23と好適に通信可能なリーダアンテナであっても、複数のトランスポンダ23と通信することができる。これによってリーダアンテナ24と各トランスポンダ23との間の通信不良の発生を防止し、リーダアンテナ24とトランスポンダ23との間で好適に無線通信を可能にする。
【0076】
また図2の場合は、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設けている。側面部分や背面部分電波吸収体30が存在することで、リーダアンテナ24の横方向や後方向に放射される電波を吸収および遮蔽したり、且つ他から進入してくる電波を抑えることができ、透過領域により電波の指向性を高めることと合わせて、リーダアンテナ24と所望の一単位の各トランスポンダ23との間で好適に無線通信を可能にする。
【0077】
さらに電波吸収体30により形成される透過領域であるが、リーダアンテナ24の電波の指向性を増すために透過領域を狭めた場合に、狭めすぎるとその透過領域を通過した後に回折波が発生することになり、かえって指向性が制御できない場合がでてきた。つまり指向性を高めるのに適正な透過領域の幅を選定する必要があるということである。逆にいえば、この関係により、指向性を高めたい方向と指向性を広いままにしておきたい方向を制御できることが可能になる。
【0078】
具体的には、例えば図2の積載された複数の物品21に装着された各トランスポンダ23を一単位として配置される領域がトランスポンダ配置領域28とすると、すぐ後からやってくる次の積載された複数の物品21に装着された各トランスポンダ23を一単位として配置される領域がトランスポンダ配置領域28は読み取らないというように、縦方向を全て読み取るように電波の指向性は低くして、且つ横方向の読み取り範囲としてトランスポンダ23をカバーできる程度と電波の指向性を高くするといった指向性に異方性を付与できることになる。
【0079】
さらに前述のリーダアンテナ24と各トランスポンダ23とを備える通信装置25と、前述の通信改善装置26とを備えて、通信システムが構成される。このような通信システムでは、前述の優れた効果を達成する通信改善装置26によって、通信装置25の通信環境を改善し、優れた通信環境を実現することができる。したがって通信装置25のリーダアンテナ24と各トランスポンダ23との間で、好適に通信可能な通信システムを実現することができる。
【0080】
さらにこの通信システムと、搬送装置22とを備えて、物品情報取扱設備20が構成される。この物品情報取扱設備20では、各物品21を搬送装置22で搬送しながら、物品21の情報を取扱うことができる。このように好適に情報を取扱うことができる物品情報取扱設備20を実現することができる。物品21の情報の取扱には、たとえば各トランスポンダ23に保持させた物品21の情報の読出し、および各トランスポンダ23への物品21の情報の書込みの少なくともいずれか一方が含まれる。
【0081】
図6は、本発明の実施の他の形態で用いられる電波吸収体30Aを示す斜視図である。この図6に示す電波吸収体30Aは、図4の電波吸収体30に代えて用いられる電波吸収体であり、図4の電波吸収体30と対応する部分には同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図6の電波吸収体30Aの透過領域33は、厚み方向に見た形状が円形状となるように形成されている。このような電波吸収体30Aであっても同様の効果を達成することができる。
【0082】
図7は、本発明の実施のさらに他の形態で用いられる電波吸収体30Bを示す断面図である。図8は、電波吸収体30Bを示す斜視図である。図7および図8に示す電波吸収体30Bは、図4の電波吸収体30に代えて用いられる電波吸収体であり、図4の電波吸収体30と対応する部分には同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図7および図8の電波吸収体30Bは、平板状ではなく、錐台の側面状、本実施の形態では、角錐台の側面状の形状を有している。この角錐台の小さい方の底面に位置する部分に透過領域33を有する。
【0083】
また図7および図8の電波吸収体30Bは、その全体が、リーダアンテナ24に対して間隔をあけ、凹となる側をリーダアンテナ24に対向させて、軸線が仮想軸線32と一致するように配置される。さらに図7および図8の電波吸収体30Bは、透過領域33の周囲の部分のトランスポンダ配置領域28に対する距離をもって配置されている。このような電波吸収体30Bであっても同様の効果を達成することができる。
【0084】
また本発明の実施のさらに他の形態として、円錐台の側面状の形状を有する電波吸収体を用いてもよい。この場合、たとえば透過領域は、図6の電波吸収体30と同様に円形状に形成される。このような電波吸収体であっても同様の効果を達成することができる。
【0085】
図9は、本発明の実施のさらに他の形態で用いられる電波吸収体30Cを示す断面図である。図10は、電波吸収体30Cを示す斜視図である。図9および図10に示す電波吸収体30Cは、図5の電波吸収体30に代えて用いられる電波吸収体であり、図4の電波吸収体30と対応する部分には同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図9および図10の電波吸収体30Cは、筒状の周壁部40と、周壁部40の軸線方向一端部を塞ぐ底壁部41とを有する、有底筒状に形成される。本実施の形態では、周壁部40は、軸線に垂直な断面の形状が長方形となる四角筒状であり、底壁部41は、長方形状である。透過領域33は、底壁部41の中央部に形成される。
【0086】
また図9および図10の電波吸収体30Cは、その全体が、リーダアンテナ24に対して間隔をあけ、凹となる側をリーダアンテナ24に対向させ、底壁部41が仮想軸線32に対して垂直となり、仮想軸線32が透過領域33の中心を通るように、配置される。また本実施の形態では、リーダアンテナ24が周壁部40によって外方から囲まれるように、電波吸収体30Cが設けられる。さらに図7および図8の電波吸収体30Bは、透過領域33の周囲の部分のトランスポンダ配置領域28に対する距離をもって配置されている。このような電波吸収体30Bであっても同様の効果を達成することができる。
【0087】
また本発明の実施のさらに他の形態として、周壁部40が円筒状である電波吸収体を用いてもよい。この場合、透過領域は、長方形であってもよいし、円形状であってもよい。このような電波吸収体30であっても同様の効果を達成することができる。
【0088】
さらに透過領域を有する電波吸収体形成体を作成し、その透過領域からトランスポンダを搬入することで電波吸収体形成体内に位置するトランスポンダを確実に読み取ることができる。具体的には電波吸収体形成体の内部にリーダアンテナ24を備え、透過領域を介して、読み取りたいICタグ105を貼った物品を形成体の内部に差し込む。すると透過領域以外は電波吸収体にて囲まれているため、それらの電波吸収体面の背面にあるICタグ105を読み取ることはなくなり、確実に内部のトランスポンダを読み取ることが可能となる。これもリーダライタ24の読み取り領域を制御する、つまり指向性を制御する一方法である。この場合に形成体を作製する際に、電波吸収体の突合せ部分にアルミテープ等を使用することで、シールド性を高めて読み取りを確実にすることが好ましい。
【0089】
本発明の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、構成を変更することができる。
以下にシミュレーション結果と実験結果を示す。
【0090】
まず、実施例の電波吸収体30の製造法および性能評価結果を記す。本実施例では、図12に示す積層体1から成るパターン型電波吸収体を使用している。積層体1は、導体層2、誘電体層3、吸収層4およびパターン層5がこの順に積層されて構成される。パターン層5として図13記載のパターン形状をアルミ蒸着PETシートからエッチング処理にて形成したシートを用いた。
【0091】
図13のパターン層5は、パターンとして複数の放射形パターン130と、複数の略方形パターン131とを有する。各放射形パターン130は、略十文字形に形成され、x方向およびy方向に行列状に規則正しく整列配置される。各放射形パターン130は、十文字の交差部分における4つの角部を円弧状にした形状である。略方形パターン131は、放射形パターン130に囲まれる領域に、放射形パターン130から間隔110をあけて配置され、放射形パターン130に囲まれる領域を塗潰すようにそれぞれ配置される。
【0092】
吸収層4は、塩化ビニル樹脂100phrにフェライト粉445phrおよびグラファイト70phrを加熱混練した後、カレンダー成形にてシートを作成した。この吸収層4は、950MHz帯での複素比透磁率の実部(μ’)が2.6、虚部(μ”)が1.0、複素比誘電率の実部(ε’)が31、虚部(ε”)が2であるシートを厚さ1.5mmで用いている。さらに誘電体層3として、厚み方向に対し長く伸びるような扁平状発泡構造を有するポリプロピレン樹脂発泡体(磁性はなく、950MHz帯での複素比誘電率の実部(ε’)が1.25、虚部(ε”)が0.05)の5.5mm厚を用い、導体層2としてアルミ蒸着PETシートを使用した。接着剤にて各層を積層固定後、総厚7.5mm、900mm×1,800mmのサイズでの重量7.5kgのUHF帯用電波吸収体30を得た。この電波吸収体30は、カッター等で裁断や穴加工が可能であり、容易に各構造の通信改善装置を作成することができた。
【0093】
なお本発明で用いた導体層2は、アルミ蒸着層が400〜500Åのアルミ蒸着PETシートである。そのシートの、KEC法による1GHzでのシールド性を測定したところ、電界シールド性が45dB、磁界シールド性が28dBであった。電波吸収体30の電波遮蔽性能としては、パターン層5側からは電波吸収性能と電界シールド性を合計した約60dBとみることができ、導体層2側からは電界シールド性の45dBがそのまま残ると考えてよい。導体層2が吸収層4等と相俟って、電波遮蔽層として機能する。
【0094】
電波吸収測定は、自由空間測定法により行い、電波送受信用アンテナとしてダブルリッジドアンテナを使用し、ネットワークアナライザーHP8720ESに同軸ケーブルで接続して、ネットワークアナライザーのゲート設定による周辺電波干渉波の除去、及びアンテナ同士の直接波の除去後を行った後、900mm×1,800mmのサイズにて測定を行った。電波吸収性能は図14の通りである。用いた電波吸収体30は、UHF帯にて安定して15dB超の電波吸収性能を有していた。さらに図15に斜入射特性を評価した結果を示す。この電波吸収体30は上述の電波吸収体(発泡体タイプ)とその電波吸収体30の構成の中で誘電体層3のみ合板(6.5mm厚)に材質を変更したもの(合板タイプ)である。吸収層4の配合は同じであるが、合板を用いた場合は2mm厚としている。結果、45°の斜入射においても15〜20dB近いリターンロスを示している。パターン層5、透磁率を持つ吸収層4、誘電体層3の材質選定の効果が相俟って、斜入射特性が改善したのである。
【0095】
図16の構成の通信改善装置26に対して、図に示す通りz方向の寸法を可変にしてリーダアンテナ24を被覆して、アンテナ指向性を計算した。なお図16は背面板を有している。結果を表1に示す。自由空間の場合に比べてz方向の通信到達距離を近くあるいはそれ以上としながら(表1の鉛直方向の絶対利得が自由空間に匹敵する値をとりながら)も指向性の尺度となる半値角を小さくすることができている。なお、シミュレーションで得られたパッチアンテナ(通信改善装置未使用時)の半値角は約31°であり、実際のパッチアンテナの半値角とほぼ同じであった。半値角は、リーダアンテナから電波が放射される方向(鉛直方向)をz方向として描く電界放射パターンに於いて、そのz軸方向の絶対利得が3dB低下したところを半径として円を描き、最初の電界放射パターンとの交点を求め、z軸に対してその交点が何度ずれているかを求めることで決めている。実際の電波の放射角はこの半値角の2倍となるが、指向性を決める指針としてこの半値角が用いられる。
【0096】
【表1】
【0097】
通信改善装置26のサイズを横(x)500mm、縦(y)500mm、高さ(z)300mmとし、開口部の寸法hyを変更して放射特性を計算した結果を図17に示す。ここで図17の縦軸および横軸は、無指向性アンテナの通信距離に対する、電界強度の割合から決定した通信距離到達度合いである。自由空間の結果との相対比較により通信距離パターンを求めている。これらによりhxの寸法を大きくすると、鉛直方向の放射特性が向上、且つz−y面の放射特性の半値角が狭くなるが、z−x面放射特性の半値角はほとんど変化しない、ことがわかった。hxの寸法を大きくすると、鉛直方向の放射特性が向上、且つz−x面の放射特性の半値角が狭くなるが、z−y面放射特性の半値角はほとんど変化しない、となった(以上、表1参照)。図2の場合のように物品の積載方向には半値角を大きくして、物品の搬送方向には半値角を小さくしたいというような場合は、この開口部寸法のx方向を広くして、y方向を狭くすれば、好適な半値角を提供することが可能となる。
【0098】
さらに通信改善装置26の寸法を変更した場合の構成を図18に示し、結果を表2および図19,20に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
奥行き寸法であるzを150mm、350mmとしたところ、開口部寸法(x方向)と奥行き寸法(z方向)に依存して、絶対利得が高く且つ指向性の高い条件が存在することがわかった。例えば、奥行き寸法z=150mmのときに開口部寸法hxを400mmから585mmの間で設定すると、半値角は23.5°から29.5°の間で調整できることになる。この関係は奥行き寸法を固定すると開口幅によって条件変更することが可能であり、現場での最適調整が可能となってきた。固定条件とした通信改善装置の横寸法および縦寸法を小型化するなど変更することは可能である。
【0101】
シミュレーション結果を実際のタグ読み取り試験にて確認した。リーダとしてオムロン製V750−BA50C04−JP、リーダアンテナ24としてオムロン製V750−HS01LA−JP(直線偏波)、タグは市販のUHF帯金属対応タグを金属板(サイズ:900mm×1,800mm)に貼り、その位置を変更して読み取り試験を行った。通信試験条件を図21に示す。図21(a)は、横から見たときの各寸法条件を示し、図21(b)は、上から見たときの各寸法条件を示す。読み取り試験条件は、10回繰り返し読み取りを行い、そこで何回読み取りに成功したかを評価している。通信改善装置26を使用しない場合と実施例17の通信改善装置を使用した場合を比較した。結果を図22に示す。図22(a)は、本発明の通信改善装置を使用しなかった場合の結果を示し、図22(b)は、通信改善装置を使用した改善結果を示す。図22(a)に示した通信改善装置26を使用しない場合に比べて、図22(b)に示した改善結果では明らかに読み取り領域が狭まり、到達距離はほぼ同じレベルを維持できている。
【0102】
この実験で注意するところは、全面金属板に金属対応タグを貼っているところである。この環境ではリーダアンテナ24から放射された電波が反射し、リーダアンテナ24と金属板間に定在波が発生し、読み取りが不安定となったり、電波が飛散してしまうのであるが、電波吸収体30の場合はこれを抑制することができるため、周辺への影響を抑えることができる。この場合に例えばアレーアンテナ等にて電波を絞っても、金属板から反射する電波は抑えられない。その反射波が他のリーダアンテナゲートに影響を与えることもあるのである。この定在波抑制効果が電波を絞ることに付加される本発明の効果となる。つまりリーダアンテナ24の周囲(背面部分など)に電波吸収体30を配置することで、金属製物品とリーダアンテナ24が向かいあうことになっても、その間での定在波発生を抑制することができ、通信改善を可能にすることができる。
【0103】
同じような効果はさらに図23に示すような構成でも得ることができる。図23の場合はサイド板を角度可変とすることで、現場にて指向性や読み取り度合いを調整することが可能となる。この場合に、すべての辺が同じ角度を有している必要はないし、傾斜面を有してない辺があってもよい。図23の大きい長方形の辺に相当する部分が透過領域33であり、小さい長方形の辺がリーダアンテナ24の背面部に当たる。本実施例ではこの部分には電波吸収体30を配置することなる。
【0104】
50cm×90cmの電波吸収体30を3面、50cm×50cmの電波吸収体30を2面組み立てて、箱型の電波吸収体形成体を作成した。この場合は前面の90cm×90cmが透過領域となる。その形成体の内部にリーダアンテナ24を配置し、トランスポンダ10個の読み取り試験を行った。形成体の内部の10枚の読み取りは成功し、透過領域の外部にあるトランスポンダは読み取るものの、他の方向(電波吸収体30の背面方向)にあるトランスポンダはまったく読まなかった。電波吸収体30の吸収特性と遮蔽特性が有効であった。透過領域は作業者がトランスポンダの出し入れをするために設けており、その方向にさえトランスポンダを置かなければ、他のトランスポンダを誤読することは解消された。重要文書等のRFID管理における情報管理手段として有効であることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の一形態の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。
【図2】本発明の実施のさらに他の携帯の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。
【図3】物品21を示す斜視図である。
【図4】通信改善装置26の電波吸収体23を示す斜視図である。
【図5】電波吸収体30の一部を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の他の形態で用いられる電波吸収体30Aを示す斜視図である。
【図7】本発明の実施のさらに他の形態で用いられる電波吸収体30Bを示す断面図である。
【図8】電波吸収体30Bを示す斜視図である。
【図9】本発明の実施のさらに他の形態で用いられる電波吸収体30Cを示す断面図である。
【図10】電波吸収体30Cを示す斜視図である。
【図11】従来の技術の物品情報取扱設備1を簡略化して示す正面図である。
【図12】実施例に用いた電波吸収体30の断面図である。
【図13】実施例に用いた電波吸収体30に使用したパターン層の模様である。
【図14】実施例に用いた電波吸収体30の電波吸収特性である。
【図15】実施例に用いた電波吸収体30の電波吸収特性(斜入射特性)である。
【図16】本発明の実施の通信改善装置26の他の形態を示す斜視図である。
【図17】本発明の実施の通信改善装置26を用いた場合の開口部Y方向寸法hyと絶対利得の関係を示す図である。
【図18】本発明の実施の通信改善装置26の他の形態を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の通信改善装置26を用いた場合の開口部X方向寸法hxと絶対利得の関係を示す図である。
【図20】本発明の実施の通信改善装置26を用いた場合の開口部X方向寸法hxと半値角(z−x面)との関係の関係を示す図である。
【0106】
【図21】実験で行った通信試験条件である。
【図22】通信改善装置26を用いた実験結果である。
【図23】本発明の実施の通信改善装置26の他の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0107】
20 物品情報取扱設備
21 物品
22 搬送装置
23 トランスポンダ
24 リーダアンテナ
25 通信装置
26 通信改善装置
28 トランスポンダ配置領域
29 通信可能領域
30,30A〜30C 電波吸収体
31 重複領域
33 透過領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーダ(リーダアンテナ)とトランスポンダとを備える通信装置の通信環境を改善するための通信改善装置、ならびにそれを備える通信システムおよび物品情報取扱設備に関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来の技術の物品情報取扱設備101を簡略化して示す正面図である。物品情報取扱設備101は、物品102の情報を取得する設備であり、複数の物品102を搬送する搬送装置103と、各物品102の情報を取得するための通信装置104とを備えている。通信装置104は、各物品102にそれぞれ装着されるトランスポンダであるICタグ105と、各ICタグ105と無線通信するリーダアンテナ106とを備えている。これらの位置関係は図11に限定されることはなく、リーダアンテナ106が搬送装置103の下方にあることも、横方向にあることもある。また搬送装置103がない場合もある。
【0003】
リーダアンテナ106は、そのリーダアンテナ106の通信可能領域107に、搬送装置103によって搬送される各物品102の移動経路が含まれるように設けられる。各ICタグ105は、リーダアンテナ106の通信可能領域107に存在する場合、リーダアンテナ106からの要求信号に応答して、物品102の情報を表す応答信号を送信する。したがってリーダアンテナ106は、搬送装置103によって搬送される物品102が通信可能領域107を通過するときに、物品102に装着されているICタグ105から物品102の情報を読取ることができる。
【0004】
通信装置104には、リーダアンテナ106の通信可能領域107に1つだけICタグ105が存在する状況を想定して設計される1対1対応型の装置(例えば低出力型のハンディリーダなど)と、リーダアンテナ106の通信可能領域107に複数のICタグ105が存在する状況を想定して設計される1対多対応型の装置(例えば高出力型のリーダアンテナなど)とが、少なくとも存在する。通常の場合、1対1対応型の通信装置104では、通信可能領域107に1つだけICタグ105が存在し、リーダアンテナ106によってICタグ105の情報を読取ることができる。しかし、この場合でも通信可能領域107に複数のICタグ105があれば複数の読み取りも可能となる。一般にUHF帯RFIDタグシステムは、長距離通信を想定しており、通信可能距離もより遠くまで到達し、通信可能領域107もより広くなる。よって現在のUHF帯タグシステムは、電波到達エリアの点からも、多くのICタグ105の情報を読み取る能力を有しているといえる。
【0005】
図11は、通信可能領域107に配置されるICタグ105が装着された物品102に斜線のハッチングを付して示しており、リーダアンテナ106の通信可能領域107に複数のICタグ105が存在する状態を示している。リーダはアンテナを兼用する場合と独立の場合があり、兼用の場合はリーダが、独立の場合はリーダアンテナが電波送受信源となる。本発明でリーダアンテナとしているのは電波の送受信機能を有する部材であるとしてのことであり、リーダとアンテナが一体化している場合はリーダがこれに代用する。1対1対応型の通信装置104は、リーダアンテナ106の構成が簡素であるなどの利点を有しているが、通信可能領域107に複数のICタグ105が存在する状態の場合、リーダアンテナ106が複数のICタグ105と全て同じ周波数では無線通信することはできない。この理由は、同じ周波数同士では干渉の問題が発生するし、ICタグ105の読み取り順を制御できないこともあり、全てのICタグ105を確実に読み取ることは困難となる。するとこれらすべてのICタグ105と同時に通信することができないので、情報の読取不良を生じてしまうおそれがある。
【0006】
UHF帯RFIDタグシステムにおいて実用化されている周波数割り当ておよび共用化技術を述べる。共用化技術とは、1個のリーダが多数のICタグと通信したり、複数のリーダが1個のタグと通信したり、複数のリーダの電波到達領域が重なる場合などのタグシステムにおける電波干渉回避技術である。通信装置104で用いる電波の周波数として割り当てられている通信周波数帯には、細分割した複数の通信周波数域があり、それらを利用することで互いに異なる通信周波数域で通信することによって、1つのリーダアンテナ106にて複数のICタグ105と同時に通信することができる。具体的には、952MHz〜954MHzの高出力タイプの通信は9つのチャンネル(CH)に分割されていて、低出力タイプには952MHz〜95MHzで計14CHに分割されている。複数のICタグ105が存在しても、各ICタグ105との無線通信において、まったく同じ周波数を利用しないことで、狭い周波数域ながら干渉を低減する運用法が工夫されている。
【0007】
現在採用されているキャリアセンスと呼ばれる干渉防止策は、LBT技術(Listen
Before Talk)である。同一CHの電波に対して、リーダの持つLBT技術(同一CHの電波を感知すれば、同じCHの出力を控える機能)により発信タイミングを変えることで干渉を回避するものである。これにより干渉問題が減らすことが可能となった。しかし、他CHの電波に対してはLBTが効果なく同じ時間に通信できるため、他CHであっても近似するCHの場合(例えば、1CHに対する2CHや3CHの場合)には他のリーダアンテナ6との通信が成立することがある。この結果、他リーダアンテナとの通信成立により、本来のリーダアンテナ106とは通信不良となってしまう。これがタグコンフュージョンと呼ばれる問題であり、近似CHの電波のフィルタリングの課題である。この問題は、ゲートシステムが複数並んだ場合で指摘されている未だ解決されていない課題である。
【0008】
LBT技術が同一CHの電波を感知すれば、同じCHの出力を控える機能であるために浮上してきた問題がある。リーダアンテナ106はLBT技術より電波出力のタイミングが電波の出力と出力停止を交互に行うことになっており、停止時間中に電波を検知し、そのリーダが発信するCHと同一CHの電波の空きを確認してから、出力するという動作を取る。例えば物品を複数のコンベアベルトが平行して敷設されている物流ラインで運ぶ場合などで、複数のリーダアンテナ106が近くにある場合、本来、各リーダアンテナ106はリアルタイムで物品のICタグ105を読み取るはずであるが、近接に存在するリーダアンテナ106がたまたま同一CHの電波を出力していると、読むべきリーダアンテナ106が必要なタイミングでの出力を待ってしまい、その待ち時間に物品が通過することで読み取りミスを生じる現象をいう。LBT技術の待ち時間発生に起因するレスポンスの遅れ(リアルタイム性の欠如)の課題である。これもゲートシステムが複数並んだ場合に指摘される未解決の課題である。
【0009】
以上に加え、RFIDにおいて無線通信するリーダやICタグ105の場合、とくにICタグ105は、低価格化の制限のため高度な共用化技術を採用しにくい事情もある。そしてICタグ105は、バッテリレスタイプが主であり、このバッテリレスのICタグ105では、まずリーダから電力を供給して起動させる必要があるため、通信するまでに時間を要するという事情もある。
【0010】
さらに通信を困難にするのは、リーダアンテナ106から放射された要求信号が金属等から成る物体にて反射して、位相が変わった状態でICタグ105に到来してきた場合、および他のリーダアンテナ106、特に同一CHや近いCHの電波を放射しているリーダアンテナ106からの要求信号がICタグ105に到来した場合などであり、ICタグ105がこれらの要求信号に応答することによって、本来通信すべきリーダアンテナ106との正常な通信ができなくなる場合がある。またそれらの混信により信号は届いても、信号の位相に変化が生じてしまい情報が読み取れない場合もある。また信号の混信の場合だけでなく、電波の進行波と反射波(ときには他の機器からの直接波の場合もある)の干渉により通信領域107に定在波が発生し、場所によっては不感領域(null点)が発生することがある。このようにリーダアンテナ106による読取不良は、前述の様々な要因が絡み合って生じるので、読取不良を無くし、完全な読取り実現は非常に難しくなる。
【0011】
これらは電波の指向性の問題である。指向性はアンテナの種類に大きく影響を受ける。一般に用いるリーダアンテナ106はパッチアンテナで構成される。パッチアンテナはダイポールアンテナより指向性は高いが、アレーアンテナよりは指向性が低い汎用アンテナである。パッチアンテナにて5m〜10mもの読み取り距離を得るような電波を放射する場合はどうしても横方向(上下も含めて広がるため楕円球状)に電波の広がりが発生する。読み取り距離を抑えたい場合はリーダアンテナの出力を抑え、電波を弱くすればよいが、読み取り距離を確保しながら、なお広がりを抑えるには別の工夫が必要になる。
また日本の場合、RFID用途に認可されたUHF帯の周波数も狭いが、さらに実用現場においても狭い空間で運用されることが多く、複数のICタグ105および複数のリーダアンテナ106が接近することがある。ICタグ105やリーダアンテナ106が接近すると電波干渉の問題が発生しやすくなり、ICタグ105の読み落としが頻発し、結果的にRFIDタグシステムの信頼性を築けず、普及を阻害する可能性がある。さらに物品の移動速度の問題が加わってくると処理が間に合わなくなり、さらに信頼性が低下する。とくに物流関係へのRFIDタグシステムの普及には、指向性の問題を解決する必要がある。
【0012】
以上の問題の解決手段の1つに、アンテナの指向性を高くすることが考えられる。指向性が高いとは、電波が放射される方向の周囲の広がり範囲が小さいことを意味している。電波到達距離を損なわず、指向性を制御することにより、干渉を低減したRFIDタグシステムの使用方法を提案できる。
【0013】
一般にリーダアンテナ106に用いられるパッチアンテナは、共振板とGND(グランド)板の二枚の導体板が平行に配置された構成であり、コスト的に有利であり、最も汎用的なリーダアンテナ106として使用されている。パッチアンテナは二枚の導体板の間からしみ出すように発生した電界が、共振板方向のさらにその先に飛んでいくアンテナである。この際、GND板を共振板よりも大きくすることで、電界をより共振板方向に集中するようにしているが、GND板のサイズによっては横方向や後方向にも漏れる電界が生じている。これらの漏洩電界がRFIDシステムの干渉問題にも関与してくるため、これらの漏洩を同時に抑えた指向性制御装置(本発明の通信改善装置)が求められる。
【0014】
パッチアンテナを一枚だけ用いるよりも、4枚や6枚を二列など複数列に近づけて並べることで指向性が絞れる場合がある。しかし、この場合パッチアンテナの境付近では干渉にてnull点が発生することがあり、とくに遠距離だけでなく近距離に物品がある場合の読み取りが不安定になることがある。
【0015】
これとは別に指向性の高いアンテナとして、たとえばアレーアンテナが知られている。しかしアレーアンテナはサイズも大きく、コストアップにつながり、通信装置104に容易に用いることはできない。このようにアンテナの指向性を高くすることも困難である。
【0016】
電波の指向性を制御する方法として、アンテナのサイド板として金属板を用いる方法がある。しかし、金属板を用いた場合は、上述の横方向や後方向にも漏れる電界を遮蔽することはできても、エネルギ的に消失させてはいないため、その電波が反射して通信可能領域107を想定外の形状にしたり、通信可能領域107以外のICタグ105を読み取ることがある。金属板間で定在波が生じたり、反射波が生じて通信環境が劣化する場合がある。
【0017】
またRFIDタグシステムにおいては、リーダアンテナ106の近くを大型の金属製物品が通過することも多く、この際にリーダアンテナ106と金属製物品間で定在波が発生することがあり、読み取りが不安定になったり、通信可能領域107以外のICタグ105を読み取るという問題が発生する場合がある。これは単なる指向性制御の手段のみでは解決しない問題である。
【0018】
高速自動車道の出入口において通行料金を自動的に収受するETCなどと呼ばれるシステムにおける不要な電波の遮蔽または吸収のための構造が、たとえば特許文献1,2に示されている。しかしながらこのような特許文献1,2に示される構成では、図11を参照して説明したような課題を解決することはできない。
【0019】
さらに特許文献3には、非接触式無線データキャリアを用いたシステムにおける電波吸収体の使用法が挙げられている。この場合の使用方法は不要電波の反射を抑えるために、非接触データキャリアの近傍の位置に電波吸収体を用いるものであり、本発明のようにアンテナの周囲に用いて電波の指向性制限と遮蔽性を達成しようとしたものはない。
【0020】
【特許文献1】特開2005−243868号公報
【特許文献2】特開2005−109095号公報
【特許文献3】特開2002−230507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述のように従来の技術の各装置では、リーダアンテナ106によるICタグ105からの情報の読取が不良となってしまう場合がある。読取不良を防止できる構成は存在していない。
【0022】
本発明の目的は、複数のトランスポンドをリーダによって各トランスポンドと順次通信する場合に、リーダアンテナとトランスポンダとの間の通信不良の発生を防止することができる指向性制御技術を有する通信改善装置、ならびにそれを備える通信システムおよび物品情報取扱設備を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、リーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置の通信環境を改善するための通信改善装置であって、
各トランスポンダが配置されるトランスポンダ配置領域と、リーダアンテナとの間またはリーダアンテナの部分的な周囲に設けられ、リーダアンテナとトランスポンダとの間の無線通信に用いられる電波あるいは不要電波を吸収および遮蔽する電波吸収体から成り、無線通信に用いられる電波を透過可能な透過領域が形成され、その透過領域を介してリーダアンテナとトランスポンダとが無線通信するように配置したり、または透過領域を有す電波吸収体形成体に透過領域からトランスポンダを搬入することで、アンテナの電波指向性を制御し、かつ他の周囲への電波を吸収および遮蔽することを特徴とする通信改善装置である。
【0024】
また本発明は、無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層と電波吸収層が積層された電波吸収体であることを特徴とする。
【0025】
また本発明は、無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層のシールド性能が20dB以上、かつ無線通信周波数の電波に対する電波吸収層の吸収性能が10dB以上あることを特徴とする。
【0026】
また本発明は、透過領域が、単数または複数個形成され、その形状は、線状、スリット状、スロット状、円形状、楕円形状、多角形状、角部が曲線状である多角形状、不定形状、それらが組み合わされた形状で、かつ二次元または三次元状の形状の少なくとも1つから選ばれることを特徴とする。
【0027】
また本発明は、透過領域が、方形、楕円形もしくは多角形等であり、x方向とy方向の長さが異なることを特徴とする。
【0028】
また本発明は、前記透過領域はその領域の大きさが可変であり、設置される位置調節が可能であることを特徴とする。
【0029】
また本発明は、前記通信改善装置を備えるリーダアンテナまたはリーダアンテナゲートである。
【0030】
また本発明は、単数もしくは複数のリーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置と、前記通信改善装置とを備える通信システムである。
【0031】
また本発明は、リーダおよび通信改善装置の少なくともいずれか一方は、トランスポンダ配置領域に対して変位可能に設けられることを特徴とする。
【0032】
また本発明は、前記通信システムと、
通信システムの通信装置が備える各トランスポンダが個別に装着される物品を搬送する搬送装置とを備える物品情報取扱設備である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、トランスポンダ配置領域とリーダアンテナとの間またはリーダアンテナの部分的な周囲に電波吸収体が設けられる。この電波吸収体は、リーダアンテナとトランスポンダとの間の無線通信に用いられる電波(以下「利用電波」という)あるいは不要電波を吸収および遮蔽するシートから成り、利用電波を透過可能な透過領域が形成されている。リーダアンテナは、各トランスポンダの内、透過領域に臨む位置およびその周辺に配置されるトランスポンダとだけ、通信可能である。このような電波吸収体を設けることによって、リーダアンテナの通信可能領域に配置されるトランスポンダの数が少なくなるように、トランスポンダ配置領域において、リーダアンテナによってトランスポンダと通信可能な通信可能領域を通信可能距離は変わらないままで絞り込むことができる。または透過領域を有す電波吸収体形成体に透過領域からトランスポンダを搬入する形式として、差し入れられたトランスポンダを読み取り、電波吸収体の背面側にあるトランスポンダを読み取らないという、確実な読み取りを実現できる。これも通信可能領域の制御である。
【0034】
さらに電波吸収体の透過領域以外の領域では、利用電波あるいは不要電波が吸収および遮蔽されるので、利用電波あるいは不要電波の反射および干渉を防ぎ、定在波が立ってしまうことを防ぐことができる。しかもその電波吸収体は、その透過領域の形状を非対称とすることや、透過領域の位置の変更を可能とすることで任意に電波の指向性や通信可能距離を調整することができる。これらによってリーダアンテナによる通信可能距離を低下させることなく、電波指向性を高めることが可能となる。このようにして無線通信特性を改善して、通信可能領域に配置されるトランスポンダの数を少なくする(絞り込む)ことで、今まで制御できなかった電波の反射や干渉を防ぐことが可能となり、単数もしくは複数のリーダアンテナを用いて、複数のトランスポンドと通信する場合に、リーダアンテナとトランスポンダとの間の通信不良の発生を防止し、リーダアンテナとトランスポンダとの間で好適に無線通信可能な通信環境を実現することができる。さらに金属製物品がリーダアンテナの前を通過する場合もリーダアンテナと物品間の電波干渉の発生を抑制することが可能となる。
【0035】
本発明の工夫した点は以下の通りである。(1)電波吸収性と電波遮蔽性を共に有する電波吸収体をリーダアンテナの近くで用いて、電波到達距離を落とさずに指向性制御を実現させたこと、(2)透過領域の形状を任意変更すること等で、指向性制御可能としたこと、(3)近い距離での電波吸収特性を発現するため、磁性損失性を有する電波吸収体を用いたこと、である。(1)に関しては、ホーンアンテナなど金属を用いた電波の指向性制御法は存在した。しかし、RFIDシステムにおいてはどの方向から来る電波もあるため、金属板をそのままで用いると、例えば外周部は電波反射板となる。またリーダアンテナから横方向や後方向に漏洩する電波を抑制する必要もあり、両方を達成するため電波吸収性と電波遮蔽性を共に有する電波吸収体を使用している。(2)は、(1)により不要電波を吸収させた後、透過領域の形状を制御することで指向性を制御している。形状に非対称性を与えたり、または角度を変更したりして、電波到達距離を低下させずに、指向性を上げる条件をみつけている。(3)は、近傍界のように電波吸収体が電波発信源に近づくと、インピーダンスは磁界成分が電界成分よりも小さくなり、遠方界用に設計した電波吸収体が使用できなくなる。この際、電波吸収体に透磁率を有する磁性体から成る吸収層を有していれば、その層の効果で電波の磁界成分に損失を与えることができ、近距離でも電波吸収効果を有することが期待できる。少なくとも定在波は発生しない。このようにRFIDシステムの電波吸収体には近い距離や斜め入射角度でも吸収性能に優れた電波吸収体が要求されている。さらに薄型化の要求もあるため、これらに応じるために透磁率成分を利用したパターン型電波吸収体を使用している。例えば、磁界を利用するようなUHF帯の通信手段の場合には、この透磁率が指向性制御に有効に働くことになる。
【0036】
以上を組み合わせて、リーダアンテナの近くで用いることができる通信改善装置を得ることができた。
【0037】
また本発明によれば、電波吸収体に、単数または複数個の透過領域が設けられ、その透過領域は、線状、スリット状、スロット状、円形状、楕円形状、多角形状、角部が曲線状の多角形状、不定形状、それらが組み合わされた形状で、かつ二次元または三次元状の形状の少なくとも1つから選ばれる形状を有している。このような透過領域を設けることで、リーダアンテナからの利用電波が必要十分な位置に到達される程度に、通信可能領域を絞り込むことができる。
【0038】
また本発明によれば、電波吸収体に設けられる方形、楕円形もしくは多角形等の透過領域のx方向とy方向の長さを変えている。このような透過領域の形状とすることで、リーダアンテナからの電波の指向性をx方向とy方向で変えることが可能となる。
【0039】
また本発明によれば、透過領域を形成する電波吸収体や透過領域を位置調整可能とすることで、現場にて、あるいはICタグの貼られる物品に合わせて最適指向性に調整することが可能となる。
【0040】
また本発明によれば、前述の優れた効果を達成する通信改善装置によって、通信装置の通信環境を改善し、優れた通信環境を実現することができる。したがって通信装置のリーダアンテナと各トランスポンダとの間で、好適に通信可能なリーダアンテナやリーダアンテナゲートを実現することができる。
【0041】
また本発明によれば、トランスポンダ配置領域に対して、リーダアンテナおよび通信改善装置の少なくともいずれか一方を変位させ、トランスボンダの位置に指向性を合わせて通信可能領域を変更することできる。したがってより好適な無線通信による通信環境を実現することができる。
【0042】
また本発明によれば、前述の通信システムの各トランスポンダを、各物品に装着し、物品の情報を保持可能とした各トランスポンダを構成することによって、各物品を搬送装置で搬送しながら、物品の情報を取扱うことができる。このように好適に情報を取扱うことができる物品情報取扱設備を実現することができる。物品の情報の取扱には、たとえば各トランスポンダに保持させた物品の情報の取得、および各トランスポンダによる物品の情報の格納保持の少なくともいずれか一方が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
図1は、本発明の実施の一形態の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。物品情報取扱設備20は、複数の物品21に関する情報を取扱うための装置であり、情報の取扱には、情報の取得および情報の格納保持の少なくともいずれか一方が含まれる。物品21の情報には、たとえば物品21の種類、名称、番号、価格などが含まれる。また物品21の情報は、物品21の履歴情報(製造場所、生産地、製造年月日、環境データ等)、物品21が食品である場合のその食品のレシピ、物品21の取り扱い方法の情報などであってもよい。この物品情報取扱設備20の用途は、物品21の情報を取扱う用途であれば、特に限定されるものではないが、たとえば物品21の在庫管理を目的として、物品21の入庫および出庫を確認するために用いられてもよいし、たとえば複数の物品21を販売するときに各物品21毎の価格を取得して合計金額を求めるために用いられてもよい。
【0044】
物品情報取扱設備20は、各物品21を搬送する搬送装置22と、各物品21にそれぞれ装着される複数のトランスポンダ23および各トランスポンダ23との間で無線通信可能なリーダアンテナ24を有する通信装置25と、通信装置25の通信環境を良好にするための通信改善装置26とを備える。通信装置25と通信改善装置26とを含んで通信システムが構成される。さらに物品情報取扱設備20には、制御装置27を備え、この制御装置27は、リーダアンテナ24に通信可能に有線接続されている。リーダアンテナ24とトランスボンダ23の位置関係は図1に限定されることはなく、リーダアンテナ24が搬送装置22の下方にあることも、横方向にあることもその他の位置にあることもまた搬送装置22を用いない場合があるのは前述の通りである。
【0045】
搬送装置22は、物品21を保持して搬送可能な構成であれば、特に限定されるものではない。本実施の形態では、搬送装置22は、たとえばベルトコンベアなどのコンベアによって実現され、各物品21を乗載して、搬送方向Aへ搬送することができる。搬送装置22は必須のものではなく、例えば人の手やフォークリフトなどその他の手段で移動させることは可能である。また物品21は、特に限定されるものではなく、商品であってもよいし、部品や中間品であってもよく、試験の対象となる試験体またはその試験体が収容される容器であってもよい。
【0046】
リーダアンテナ24は、電波から成る要求信号を送受信する電子機器であり、リーダ27にて制御される。このリーダアンテナ24は、たとえば搬送装置22の上方に、搬送装置22に対向するようにして、たとえば図示しない支持装置によって支持されて、定位置に設けられる。リーダアンテナ24は、要求信号を搬送装置22に向けて送受信する。
【0047】
図2は、本発明の実施の他の形態の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。リーダアンテナ24の位置は、物品の横方向、上下方向や斜め方向などが任意に選択することができる。リーダアンテナ24は複数であってもよい。図1との違いは、物品が縦方向に積載されてリーダアンテナ24の前を通過する場合を示している。さらにリーダアンテナ24の周囲を電波吸収体30で囲い、物品21に面する方向に透過領域を有している。
【0048】
図3は、物品21を示す斜視図である。図1を併せて参照して、各トランスポンダ23は、たとえばタグによって実現されるが、タグに限定されるものではない。またタグは、シート状であってもよいし、チップ状であってもよいし、ボタン状、ラベル状、カード状等であってもよい。さらにタグは、ICなどの半導体装置を備える構成であってもよいし、半導体装置を備えていない構成であってもよい。
【0049】
本実施の形態では、各トランスポンダ23は、シート状のタグであり、各物品21の表面部に、たとえば貼着されて装着される。各トランスポンダ23は、各物品21に個別に、1つずつ設けられる。このように各トランスポンダ23は、搬送装置22に保持される物品21に装着されている。したがって各物品21が搬送装置に保持された状態で、各トランスポンダ23が配置される領域がトランスポンダ配置領域28となる。また図2の場合では、積載された複数の物品21に装着された各トランスポンダ23を一単位として配置される領域がトランスポンダ配置領域28となる。
【0050】
また各トランスポンダ23は、各物品21が搬送装置22によって搬送されることに伴なって移動する。このときの各トランスポンダ23の移動する流域が各トランスポンダ23の移動経路となる。この移動経路は、トランスポンダ配置領域28と一致している。以下、移動経路にも、トランスポンダ配置領域と同一の符号「28」を付す。
【0051】
リーダアンテナ24は、通信改善装置26が設けられない状態で、リーダアンテナ24がトランスポンダ23と通信可能な通信可能領域29と、トランスポンダ配置領域28とが、互いに部分的に重なり合うように設けられる。したがってトランスポンダ配置領域28であって、かつリーダアンテナ24の通信可能領域29でもある領域部分(以下「重複領域」という)31が存在する。
【0052】
このようなリーダアンテナ24と各トランスポンダ23とを含んで構成される通信装置25では、リーダアンテナ24から送信される要求信号を、重複領域31に配置されるトランスポンダ23が受信し、そのトランスポンダ23が要求信号に応答し、要求信号によって要求される動作を実行する。この要求信号によって要求される動作は、特に限定されるものではないが、たとえば、トランスポンダ23が保持している情報をリーダ24に送る動作であってもよいし、リーダアンテナ24から与えられる情報を格納して保持する動作であってもよい、トランスポンダ23が保持している情報をリーダアンテナ24に送るとともに、リーダアンテナ24から与えられる情報を格納して保持する動作であってもよいし、情報を取扱うその他の動作であってもよい。各トランスポンダ23が要求信号に応答して、リーダアンテナ24に情報を送る信号は、応答信号である。
【0053】
リーダ−ICタグの通信周波数は、電波方式である300MHz帯、430MHz帯、UHF帯、2.4GHz帯、5.8GHz帯等を想定しているが、他の周波数でも構わない。ミリ波帯域を利用することも可能である。ここでいうUHF帯とは800MHz〜1GHzの中の周波数を部分的に使用する通信電波の帯域であり、各国で認可された周波数帯域がある。2.4GHz帯は、2,400MHz以上2,500MHz未満の電波であり、具体的にはRFID用では、日本では2,400MHz以上2483.5MHz以下の範囲を含む電波である。
【0054】
リーダアンテナ24は、要求信号を送信し、トランスポンダ23に保持している情報を送信させることによって、トランスポンダ23から情報を読取り、またはトランスポンダ23に情報を与えてトランスポンダ23にその情報を保持させるようにして、トランスポンダ23に情報を書込むことができる。リーダアンテナ24と各トランスポンダ23とを備える通信装置25では、リーダアンテナ24と、各トランスポンダ23とは、各トランスポンダ23がリーダアンテナ24に対して相対的に変位しながら互いに無線通信する。リーダアンテナ24とトランスポンダ23とは、リーダアンテナ24が絶対位置を変えるにように変位して相対的に変位する構成であってもよいが、本実施の形態では、各トランスポンダ23が各物品21の搬送に伴って絶対位置を変えるにように変位して相対的に変位する構成である。
【0055】
制御装置27は、リーダアンテナ24を制御し、リーダアンテナ24から要求信号を送信させ、トランスポンダ23からの応答信号を受信させる。制御装置27は、たとえばリーダアンテナ24によって各トランスポンダ23から読取らせた情報を、表示しまたは他の装置に与える構成であってもよいし、リーダアンテナ24によって各トランスポンダ23から読取らせた情報を利用して、他の装置を制御する構成であってもよい。また制御装置27は、たとえばリーダアンテナ24によって各トランスポンダ23に書込みさせる情報を生成してリーダアンテナ24に与える構成であってもよい。
【0056】
図4は、通信改善装置26の電波吸収体30を示す斜視図である。図1を併せて参照して、通信改善装置26は、簡便な構造でリーダアンテナ24から放射される電波の到達領域を制限可能な装置であり、リーダアンテナ24として既存のリーダアンテナを用い、既存の出力で電波を放射させるように用いて、電波の到達領域をトランスポンダ23のある位置および周辺領域に限定しようとするものである。つまり通信改善装置26は、電波の到達領域を小さく制限することによって、通信可能領域27を小さく絞り込む装置であり、これによって本来通信すべきリーダアンテナ24とトランスポンダ23との通信環境が良い状態となるようにする装置である。
【0057】
したがって通信改善装置26は、前述の通信装置25における通信環境を改善する装置であり、リーダアンテナ24と各トランスポンダ23との間の通信環境を改善して良好にする装置である。この通信改善装置26は、電波吸収体または電波遮蔽体に周波数選択表面(Frequency Selective Surface;略称F.S.S)技術を組み合わせたものであり、本実施の形態では、電波吸収体30を備える。これは透過領域33をスロットアンテナとして動作させて、そのアンテナ部分で再放射される電波でICタグ23と通信しようとするものである。電波吸収体30に用いた導体層35に周波数に合わせた切り込みを入れることでこれを実現している。ただし、切り込み部分は厳密にアンテナ化していなくても隙間部分から漏れる電波を利用することで通信することも可能である。電波吸収体30は、図示しない支持装置によって支持されて、トランスポンダ配置領域28と、リーダアンテナ24との間に設けられる。この電波吸収体30は、電波を吸収する吸収体であるが、電波を遮蔽する機能も併せて有している。
【0058】
トランスポンダ配置領域28は、細長く延びる棒状の領域であり、本実施の形態では一仮想直線に沿って延びる領域である。リーダアンテナ24における電波を放射する位置(信号の送信位置)の中心(以下「放射中心」という)と、トランスポンダ配置領域28における放射中心に最も近い位置とを結ぶ仮想軸線32を想定して、電波吸収体30は、仮想軸線32に対して垂直に配置され、リーダアンテナ24から間隔をあけた距離Dの位置に配置される。
【0059】
図5は、電波吸収体30の一部を示す断面図である。電波吸収体30は、通信装置25において無線通信に用いられる電波(以下「利用電波」という)を吸収するシートから成る。電波吸収体30は、利用電波を吸収可能な構成であれば、特に限定されるものではなく、どのような構成であってもよい。あくまでも一例ではあるが、電波吸収体30は、導電性材料から成る導体層35を有し、この導体層35の厚み方向の少なくとも一方側に積層されて、吸収層36を有する。
【0060】
導体層35は、たとえばアルミニウム、銅などの金属または導電性インクから成る。導体層35としては、金属板、金属箔および金属蒸着フィルム、導電インク層などを用いることができるが利用電波の波長よりも小さい寸法の空隙を有するメッシュ構造物、導電性織布、導電性不織布、導電性発泡体などを用いることも可能である。
【0061】
電波吸収体30が電波吸収体として動作するためには、背面部に電磁波反射層となる導体層35(本発明では電波遮蔽層を兼ねる。)が必要である。しかし、背面方向に金属板を用いるなど、導体層35を代用するものがある場合は、電波吸収体30に導体板35が一体化していなくてよい。
【0062】
吸収層36は、少なくとも損失層を有し、この損失層によって電波のエネルギを損失させて吸収する。損失層は、磁性損失および誘電損失の少なくともいずれか一方を利用して電波を吸収する構成である。また吸収層は、導電性材料から成る導体パターンが形成されるパターン層を有する構成でもよい。本発明では、磁性損失および誘電損失の両方を利用している。磁性損失の利用が好適であるが、近傍界の電波吸収効果が少なくなってもよい場合もあり、効果は落ちるが、誘電損失のみの利用の場合もある。
【0063】
吸収体の吸収層を構成する材料、パターン層の導体パターンの形状などは、特に限定されるものではない。また吸収体の各層の厚み、導体パターンの寸法などは、吸収すべき電波の周波数に合せて決定される。
【0064】
このように導体層35と吸収層36とを含んで電波吸収体30が構成され、図4において上方となる吸収層36側から入射する電波を吸収することができる。したがって電波吸収体30は、吸収層36をリーダアンテナ24に対向させるようにして配置され、リーダアンテナ24から放射される利用電波を吸収することができる。
【0065】
また導体層35の吸収層36とは反対側に、吸収層36と同様のもう1つの吸収層37を設けるようにしてもよい。これによってリーダアンテナ24とは反対側のトランスポンダ配置領域28側から入射される利用電波も吸収することができる。
【0066】
このように電波吸収体30は、少なくともリーダアンテナ24側から入射する利用電波を吸収するように構成され、本実施の形態では、トランスポンダ配置領域28側から到来する利用電波あるいは不要電波を吸収するように構成される。
【0067】
RFIDタグシステム用途における電波吸収体30は、特定周波数(通信周波数)の反射波を発生しない電波遮蔽体として機能する。電波遮蔽体としては金属板などを利用すれば有効であるが、その場合は反射波が発生し、進行波との間で干渉し定在波が発生して読み取り不良が生じる。電波吸収体30のような反射波も透過波も生じない電波遮蔽体が、RFID通信改善用途には適している。
【0068】
本実施の形態では、パターン層を有する電波吸収体30を用いているが、もちろんこれに限定されることはなく、電波を吸収するものであれば、λ/4型電波吸収体、カーボン系含浸織布、カーボン系含浸不織布、フェライト、カルボニル鉄などの磁性材料を含有してなる電波吸収体、フェライト板やセラミックスなどの電波吸収体によることも可能である。
【0069】
電波吸収体30は、その形状が限定されるものではないが、たとえば平板状であり、厚み方向に見た形状が長方形状である。本発明において、長方形状に、正方形状が含まれることは言うまでもない。また電波吸収体30は、仮想軸線32に平行に投影した場合、この電波吸収体30が設けられない状態でのリーダアンテナ24による通信可能領域29の全体が、電波吸収体30に包含されるように設けられる。したがって電波吸収体30の外周部によって囲まれる領域内にリーダアンテナ24による通信可能領域29が収まっている。
【0070】
電波吸収体30には、中央部に利用電波を透過可能な透過領域33を有している。透過領域33は、本実施の形態では、透孔部を形成することによって実現され、透孔部が透過領域33となる。透過領域33の形状は、限定されるものではないが、たとえば厚み方向に見た形状が長方形状である。電波吸収体30は、仮想軸線32が透過領域33の中心を通り、リーダアンテナ24と各トランスポンダ23とは、透過領域33を介して無線通信するように配置される。
【0071】
また電波吸収体30は、仮想軸線32に平行に投影した場合、この電波吸収体30が設けられない状態でのリーダアンテナ24による通信可能領域29に、透過領域33が包含されるように設けられる。したがって通信可能領域29内に透過領域33が収まっている。
【0072】
電波吸収体30が設けられると、リーダアンテナ24は、各トランスポンダ23の内、透過領域33に臨む位置に配置されるトランスポンダ23とだけ、通信可能である。リーダアンテナ24は、重複領域31に配置されるトランスポンダ23と通信可能であるが、電波吸収体30が設けられることによって、重複領域31が絞り込まれて小さくなり、透過領域33に臨む位置だけになる。このように重複領域31を小さくすることによって、重複領域31に1つだけトランスポンダ23が配置されるようにして、重複領域31に複数のトランスポンダ23が同時に配置されてしまうことを防ぎ、または重複領域31に複数のトランスポンダ23が同時に配置されてしまうことを抑制することができる。
【0073】
重複領域31に複数のトランスポンダ23が配置されないことが好ましいが、重複領域31に複数のトランスボンダ23が同時に配置される場合であっても、電波吸収体30を設置される前より、通信可能領域29に入るトランスボンダ23の数が減る場合は、それに応じた読み取り率の向上を得ることができる。したがって重複領域31に複数のトランスポンダ23が同時に配置される確立を小さくできれば、通信改善という本発明の効果を達成することができる。つまり重複領域31に1つだけトランスボンダ23が配置されるようにすることが可能な通信改善装置26はもちろん、重複領域31に同時に配置されるトランスポンダ23の数を減少させる通信改善装置26も、本発明に含まれる。
【0074】
さらに電波吸収体30の透過領域33以外の領域では、利用電波が吸収されるので、利用電波の反射および干渉を防ぎ、定在波が立ってしまうことを防ぐことができる。しかもその電波吸収体30は、リーダアンテナ24から間隔をあけて設けて配置することで、利用電波または不要電波を吸収および遮蔽して、反射および干渉を防ぐことができる。しかもリーダアンテナ24から放射される電波を電波吸収体30が近い距離のため吸収することがない現象を回避でき、リーダアンテナ24による通信可能距離を低下させることがない。
【0075】
このようにして通信装置25の通信環境を改善し、リーダアンテナ24が、通信可能領域29に1つだけトランスポンダ23が存在する場合にトランスポンダ23と好適に通信可能なリーダアンテナであっても、複数のトランスポンダ23と通信することができる。これによってリーダアンテナ24と各トランスポンダ23との間の通信不良の発生を防止し、リーダアンテナ24とトランスポンダ23との間で好適に無線通信を可能にする。
【0076】
また図2の場合は、透過領域を残してリーダアンテナ24の周囲に電波吸収体30を設けている。側面部分や背面部分電波吸収体30が存在することで、リーダアンテナ24の横方向や後方向に放射される電波を吸収および遮蔽したり、且つ他から進入してくる電波を抑えることができ、透過領域により電波の指向性を高めることと合わせて、リーダアンテナ24と所望の一単位の各トランスポンダ23との間で好適に無線通信を可能にする。
【0077】
さらに電波吸収体30により形成される透過領域であるが、リーダアンテナ24の電波の指向性を増すために透過領域を狭めた場合に、狭めすぎるとその透過領域を通過した後に回折波が発生することになり、かえって指向性が制御できない場合がでてきた。つまり指向性を高めるのに適正な透過領域の幅を選定する必要があるということである。逆にいえば、この関係により、指向性を高めたい方向と指向性を広いままにしておきたい方向を制御できることが可能になる。
【0078】
具体的には、例えば図2の積載された複数の物品21に装着された各トランスポンダ23を一単位として配置される領域がトランスポンダ配置領域28とすると、すぐ後からやってくる次の積載された複数の物品21に装着された各トランスポンダ23を一単位として配置される領域がトランスポンダ配置領域28は読み取らないというように、縦方向を全て読み取るように電波の指向性は低くして、且つ横方向の読み取り範囲としてトランスポンダ23をカバーできる程度と電波の指向性を高くするといった指向性に異方性を付与できることになる。
【0079】
さらに前述のリーダアンテナ24と各トランスポンダ23とを備える通信装置25と、前述の通信改善装置26とを備えて、通信システムが構成される。このような通信システムでは、前述の優れた効果を達成する通信改善装置26によって、通信装置25の通信環境を改善し、優れた通信環境を実現することができる。したがって通信装置25のリーダアンテナ24と各トランスポンダ23との間で、好適に通信可能な通信システムを実現することができる。
【0080】
さらにこの通信システムと、搬送装置22とを備えて、物品情報取扱設備20が構成される。この物品情報取扱設備20では、各物品21を搬送装置22で搬送しながら、物品21の情報を取扱うことができる。このように好適に情報を取扱うことができる物品情報取扱設備20を実現することができる。物品21の情報の取扱には、たとえば各トランスポンダ23に保持させた物品21の情報の読出し、および各トランスポンダ23への物品21の情報の書込みの少なくともいずれか一方が含まれる。
【0081】
図6は、本発明の実施の他の形態で用いられる電波吸収体30Aを示す斜視図である。この図6に示す電波吸収体30Aは、図4の電波吸収体30に代えて用いられる電波吸収体であり、図4の電波吸収体30と対応する部分には同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図6の電波吸収体30Aの透過領域33は、厚み方向に見た形状が円形状となるように形成されている。このような電波吸収体30Aであっても同様の効果を達成することができる。
【0082】
図7は、本発明の実施のさらに他の形態で用いられる電波吸収体30Bを示す断面図である。図8は、電波吸収体30Bを示す斜視図である。図7および図8に示す電波吸収体30Bは、図4の電波吸収体30に代えて用いられる電波吸収体であり、図4の電波吸収体30と対応する部分には同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図7および図8の電波吸収体30Bは、平板状ではなく、錐台の側面状、本実施の形態では、角錐台の側面状の形状を有している。この角錐台の小さい方の底面に位置する部分に透過領域33を有する。
【0083】
また図7および図8の電波吸収体30Bは、その全体が、リーダアンテナ24に対して間隔をあけ、凹となる側をリーダアンテナ24に対向させて、軸線が仮想軸線32と一致するように配置される。さらに図7および図8の電波吸収体30Bは、透過領域33の周囲の部分のトランスポンダ配置領域28に対する距離をもって配置されている。このような電波吸収体30Bであっても同様の効果を達成することができる。
【0084】
また本発明の実施のさらに他の形態として、円錐台の側面状の形状を有する電波吸収体を用いてもよい。この場合、たとえば透過領域は、図6の電波吸収体30と同様に円形状に形成される。このような電波吸収体であっても同様の効果を達成することができる。
【0085】
図9は、本発明の実施のさらに他の形態で用いられる電波吸収体30Cを示す断面図である。図10は、電波吸収体30Cを示す斜視図である。図9および図10に示す電波吸収体30Cは、図5の電波吸収体30に代えて用いられる電波吸収体であり、図4の電波吸収体30と対応する部分には同一の符号を付し、異なる点についてだけ説明する。図9および図10の電波吸収体30Cは、筒状の周壁部40と、周壁部40の軸線方向一端部を塞ぐ底壁部41とを有する、有底筒状に形成される。本実施の形態では、周壁部40は、軸線に垂直な断面の形状が長方形となる四角筒状であり、底壁部41は、長方形状である。透過領域33は、底壁部41の中央部に形成される。
【0086】
また図9および図10の電波吸収体30Cは、その全体が、リーダアンテナ24に対して間隔をあけ、凹となる側をリーダアンテナ24に対向させ、底壁部41が仮想軸線32に対して垂直となり、仮想軸線32が透過領域33の中心を通るように、配置される。また本実施の形態では、リーダアンテナ24が周壁部40によって外方から囲まれるように、電波吸収体30Cが設けられる。さらに図7および図8の電波吸収体30Bは、透過領域33の周囲の部分のトランスポンダ配置領域28に対する距離をもって配置されている。このような電波吸収体30Bであっても同様の効果を達成することができる。
【0087】
また本発明の実施のさらに他の形態として、周壁部40が円筒状である電波吸収体を用いてもよい。この場合、透過領域は、長方形であってもよいし、円形状であってもよい。このような電波吸収体30であっても同様の効果を達成することができる。
【0088】
さらに透過領域を有する電波吸収体形成体を作成し、その透過領域からトランスポンダを搬入することで電波吸収体形成体内に位置するトランスポンダを確実に読み取ることができる。具体的には電波吸収体形成体の内部にリーダアンテナ24を備え、透過領域を介して、読み取りたいICタグ105を貼った物品を形成体の内部に差し込む。すると透過領域以外は電波吸収体にて囲まれているため、それらの電波吸収体面の背面にあるICタグ105を読み取ることはなくなり、確実に内部のトランスポンダを読み取ることが可能となる。これもリーダライタ24の読み取り領域を制御する、つまり指向性を制御する一方法である。この場合に形成体を作製する際に、電波吸収体の突合せ部分にアルミテープ等を使用することで、シールド性を高めて読み取りを確実にすることが好ましい。
【0089】
本発明の実施の形態は、本発明の例示に過ぎず、構成を変更することができる。
以下にシミュレーション結果と実験結果を示す。
【0090】
まず、実施例の電波吸収体30の製造法および性能評価結果を記す。本実施例では、図12に示す積層体1から成るパターン型電波吸収体を使用している。積層体1は、導体層2、誘電体層3、吸収層4およびパターン層5がこの順に積層されて構成される。パターン層5として図13記載のパターン形状をアルミ蒸着PETシートからエッチング処理にて形成したシートを用いた。
【0091】
図13のパターン層5は、パターンとして複数の放射形パターン130と、複数の略方形パターン131とを有する。各放射形パターン130は、略十文字形に形成され、x方向およびy方向に行列状に規則正しく整列配置される。各放射形パターン130は、十文字の交差部分における4つの角部を円弧状にした形状である。略方形パターン131は、放射形パターン130に囲まれる領域に、放射形パターン130から間隔110をあけて配置され、放射形パターン130に囲まれる領域を塗潰すようにそれぞれ配置される。
【0092】
吸収層4は、塩化ビニル樹脂100phrにフェライト粉445phrおよびグラファイト70phrを加熱混練した後、カレンダー成形にてシートを作成した。この吸収層4は、950MHz帯での複素比透磁率の実部(μ’)が2.6、虚部(μ”)が1.0、複素比誘電率の実部(ε’)が31、虚部(ε”)が2であるシートを厚さ1.5mmで用いている。さらに誘電体層3として、厚み方向に対し長く伸びるような扁平状発泡構造を有するポリプロピレン樹脂発泡体(磁性はなく、950MHz帯での複素比誘電率の実部(ε’)が1.25、虚部(ε”)が0.05)の5.5mm厚を用い、導体層2としてアルミ蒸着PETシートを使用した。接着剤にて各層を積層固定後、総厚7.5mm、900mm×1,800mmのサイズでの重量7.5kgのUHF帯用電波吸収体30を得た。この電波吸収体30は、カッター等で裁断や穴加工が可能であり、容易に各構造の通信改善装置を作成することができた。
【0093】
なお本発明で用いた導体層2は、アルミ蒸着層が400〜500Åのアルミ蒸着PETシートである。そのシートの、KEC法による1GHzでのシールド性を測定したところ、電界シールド性が45dB、磁界シールド性が28dBであった。電波吸収体30の電波遮蔽性能としては、パターン層5側からは電波吸収性能と電界シールド性を合計した約60dBとみることができ、導体層2側からは電界シールド性の45dBがそのまま残ると考えてよい。導体層2が吸収層4等と相俟って、電波遮蔽層として機能する。
【0094】
電波吸収測定は、自由空間測定法により行い、電波送受信用アンテナとしてダブルリッジドアンテナを使用し、ネットワークアナライザーHP8720ESに同軸ケーブルで接続して、ネットワークアナライザーのゲート設定による周辺電波干渉波の除去、及びアンテナ同士の直接波の除去後を行った後、900mm×1,800mmのサイズにて測定を行った。電波吸収性能は図14の通りである。用いた電波吸収体30は、UHF帯にて安定して15dB超の電波吸収性能を有していた。さらに図15に斜入射特性を評価した結果を示す。この電波吸収体30は上述の電波吸収体(発泡体タイプ)とその電波吸収体30の構成の中で誘電体層3のみ合板(6.5mm厚)に材質を変更したもの(合板タイプ)である。吸収層4の配合は同じであるが、合板を用いた場合は2mm厚としている。結果、45°の斜入射においても15〜20dB近いリターンロスを示している。パターン層5、透磁率を持つ吸収層4、誘電体層3の材質選定の効果が相俟って、斜入射特性が改善したのである。
【0095】
図16の構成の通信改善装置26に対して、図に示す通りz方向の寸法を可変にしてリーダアンテナ24を被覆して、アンテナ指向性を計算した。なお図16は背面板を有している。結果を表1に示す。自由空間の場合に比べてz方向の通信到達距離を近くあるいはそれ以上としながら(表1の鉛直方向の絶対利得が自由空間に匹敵する値をとりながら)も指向性の尺度となる半値角を小さくすることができている。なお、シミュレーションで得られたパッチアンテナ(通信改善装置未使用時)の半値角は約31°であり、実際のパッチアンテナの半値角とほぼ同じであった。半値角は、リーダアンテナから電波が放射される方向(鉛直方向)をz方向として描く電界放射パターンに於いて、そのz軸方向の絶対利得が3dB低下したところを半径として円を描き、最初の電界放射パターンとの交点を求め、z軸に対してその交点が何度ずれているかを求めることで決めている。実際の電波の放射角はこの半値角の2倍となるが、指向性を決める指針としてこの半値角が用いられる。
【0096】
【表1】
【0097】
通信改善装置26のサイズを横(x)500mm、縦(y)500mm、高さ(z)300mmとし、開口部の寸法hyを変更して放射特性を計算した結果を図17に示す。ここで図17の縦軸および横軸は、無指向性アンテナの通信距離に対する、電界強度の割合から決定した通信距離到達度合いである。自由空間の結果との相対比較により通信距離パターンを求めている。これらによりhxの寸法を大きくすると、鉛直方向の放射特性が向上、且つz−y面の放射特性の半値角が狭くなるが、z−x面放射特性の半値角はほとんど変化しない、ことがわかった。hxの寸法を大きくすると、鉛直方向の放射特性が向上、且つz−x面の放射特性の半値角が狭くなるが、z−y面放射特性の半値角はほとんど変化しない、となった(以上、表1参照)。図2の場合のように物品の積載方向には半値角を大きくして、物品の搬送方向には半値角を小さくしたいというような場合は、この開口部寸法のx方向を広くして、y方向を狭くすれば、好適な半値角を提供することが可能となる。
【0098】
さらに通信改善装置26の寸法を変更した場合の構成を図18に示し、結果を表2および図19,20に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
奥行き寸法であるzを150mm、350mmとしたところ、開口部寸法(x方向)と奥行き寸法(z方向)に依存して、絶対利得が高く且つ指向性の高い条件が存在することがわかった。例えば、奥行き寸法z=150mmのときに開口部寸法hxを400mmから585mmの間で設定すると、半値角は23.5°から29.5°の間で調整できることになる。この関係は奥行き寸法を固定すると開口幅によって条件変更することが可能であり、現場での最適調整が可能となってきた。固定条件とした通信改善装置の横寸法および縦寸法を小型化するなど変更することは可能である。
【0101】
シミュレーション結果を実際のタグ読み取り試験にて確認した。リーダとしてオムロン製V750−BA50C04−JP、リーダアンテナ24としてオムロン製V750−HS01LA−JP(直線偏波)、タグは市販のUHF帯金属対応タグを金属板(サイズ:900mm×1,800mm)に貼り、その位置を変更して読み取り試験を行った。通信試験条件を図21に示す。図21(a)は、横から見たときの各寸法条件を示し、図21(b)は、上から見たときの各寸法条件を示す。読み取り試験条件は、10回繰り返し読み取りを行い、そこで何回読み取りに成功したかを評価している。通信改善装置26を使用しない場合と実施例17の通信改善装置を使用した場合を比較した。結果を図22に示す。図22(a)は、本発明の通信改善装置を使用しなかった場合の結果を示し、図22(b)は、通信改善装置を使用した改善結果を示す。図22(a)に示した通信改善装置26を使用しない場合に比べて、図22(b)に示した改善結果では明らかに読み取り領域が狭まり、到達距離はほぼ同じレベルを維持できている。
【0102】
この実験で注意するところは、全面金属板に金属対応タグを貼っているところである。この環境ではリーダアンテナ24から放射された電波が反射し、リーダアンテナ24と金属板間に定在波が発生し、読み取りが不安定となったり、電波が飛散してしまうのであるが、電波吸収体30の場合はこれを抑制することができるため、周辺への影響を抑えることができる。この場合に例えばアレーアンテナ等にて電波を絞っても、金属板から反射する電波は抑えられない。その反射波が他のリーダアンテナゲートに影響を与えることもあるのである。この定在波抑制効果が電波を絞ることに付加される本発明の効果となる。つまりリーダアンテナ24の周囲(背面部分など)に電波吸収体30を配置することで、金属製物品とリーダアンテナ24が向かいあうことになっても、その間での定在波発生を抑制することができ、通信改善を可能にすることができる。
【0103】
同じような効果はさらに図23に示すような構成でも得ることができる。図23の場合はサイド板を角度可変とすることで、現場にて指向性や読み取り度合いを調整することが可能となる。この場合に、すべての辺が同じ角度を有している必要はないし、傾斜面を有してない辺があってもよい。図23の大きい長方形の辺に相当する部分が透過領域33であり、小さい長方形の辺がリーダアンテナ24の背面部に当たる。本実施例ではこの部分には電波吸収体30を配置することなる。
【0104】
50cm×90cmの電波吸収体30を3面、50cm×50cmの電波吸収体30を2面組み立てて、箱型の電波吸収体形成体を作成した。この場合は前面の90cm×90cmが透過領域となる。その形成体の内部にリーダアンテナ24を配置し、トランスポンダ10個の読み取り試験を行った。形成体の内部の10枚の読み取りは成功し、透過領域の外部にあるトランスポンダは読み取るものの、他の方向(電波吸収体30の背面方向)にあるトランスポンダはまったく読まなかった。電波吸収体30の吸収特性と遮蔽特性が有効であった。透過領域は作業者がトランスポンダの出し入れをするために設けており、その方向にさえトランスポンダを置かなければ、他のトランスポンダを誤読することは解消された。重要文書等のRFID管理における情報管理手段として有効であることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の実施の一形態の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。
【図2】本発明の実施のさらに他の携帯の物品情報取扱設備20を簡略化して示す断面図である。
【図3】物品21を示す斜視図である。
【図4】通信改善装置26の電波吸収体23を示す斜視図である。
【図5】電波吸収体30の一部を示す断面図である。
【図6】本発明の実施の他の形態で用いられる電波吸収体30Aを示す斜視図である。
【図7】本発明の実施のさらに他の形態で用いられる電波吸収体30Bを示す断面図である。
【図8】電波吸収体30Bを示す斜視図である。
【図9】本発明の実施のさらに他の形態で用いられる電波吸収体30Cを示す断面図である。
【図10】電波吸収体30Cを示す斜視図である。
【図11】従来の技術の物品情報取扱設備1を簡略化して示す正面図である。
【図12】実施例に用いた電波吸収体30の断面図である。
【図13】実施例に用いた電波吸収体30に使用したパターン層の模様である。
【図14】実施例に用いた電波吸収体30の電波吸収特性である。
【図15】実施例に用いた電波吸収体30の電波吸収特性(斜入射特性)である。
【図16】本発明の実施の通信改善装置26の他の形態を示す斜視図である。
【図17】本発明の実施の通信改善装置26を用いた場合の開口部Y方向寸法hyと絶対利得の関係を示す図である。
【図18】本発明の実施の通信改善装置26の他の形態を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の通信改善装置26を用いた場合の開口部X方向寸法hxと絶対利得の関係を示す図である。
【図20】本発明の実施の通信改善装置26を用いた場合の開口部X方向寸法hxと半値角(z−x面)との関係の関係を示す図である。
【0106】
【図21】実験で行った通信試験条件である。
【図22】通信改善装置26を用いた実験結果である。
【図23】本発明の実施の通信改善装置26の他の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0107】
20 物品情報取扱設備
21 物品
22 搬送装置
23 トランスポンダ
24 リーダアンテナ
25 通信装置
26 通信改善装置
28 トランスポンダ配置領域
29 通信可能領域
30,30A〜30C 電波吸収体
31 重複領域
33 透過領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置の通信環境を改善するための通信改善装置であって、
各トランスポンダが配置されるトランスポンダ配置領域と、リーダアンテナとの間またはリーダアンテナの部分的な周囲に設けられ、リーダアンテナとトランスポンダとの間の無線通信に用いられる電波または不要電波を吸収および遮蔽する電波吸収体から成り、無線通信に用いられる電波を透過可能な透過領域が形成され、その透過領域を介してリーダアンテナとトランスポンダとが無線通信するように配置したり、または透過領域を有す電波吸収体形成体に透過領域からトランスポンダを搬入することで、リーダアンテナの電波指向性を制御し、かつ他の周囲への電波を吸収および遮蔽することを特徴とする通信改善装置。
【請求項2】
無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層と電波吸収層が積層された電波吸収体であることを特徴とする請求項1記載の通信改善装置。
【請求項3】
無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層のシールド性能が20dB以上、かつ無線通信周波数の電波に対する電波吸収層の吸収性能が10dB以上あることを特徴とする請求項1または2記載の通信改善装置。
【請求項4】
透過領域は、単数または複数個形成され、その形状は、線状、スリット状、スロット状、円形状、楕円形状、多角形状、角部が曲線状である多角形状、不定形状、それらが組み合わされた形状で、かつ二次元または三次元状の形状の少なくとも1つから選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の通信改善装置。
【請求項5】
透過領域は、方形、楕円形もしくは多角形等であり、x方向とy方向の長さが異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の通信改善装置。
【請求項6】
前記透過領域はその領域の大きさが可変であり、設置される位置調節が可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の通信改善装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の通信改善装置を備えるリーダアンテナまたはリーダアンテナゲート。
【請求項8】
単数もしくは複数のリーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置と、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の通信改善装置とを備える通信システム。
【請求項9】
リーダアンテナおよび通信改善装置の少なくともいずれか一方は、トランスポンダ配置領域に対して変位可能に設けられることを特徴とする請求項7または8に記載の通信システム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の通信システムと、
通信システムの通信装置が備える各トランスポンダが個別に装着される物品を搬送する搬送装置とを備える物品情報取扱設備。
【請求項1】
リーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置の通信環境を改善するための通信改善装置であって、
各トランスポンダが配置されるトランスポンダ配置領域と、リーダアンテナとの間またはリーダアンテナの部分的な周囲に設けられ、リーダアンテナとトランスポンダとの間の無線通信に用いられる電波または不要電波を吸収および遮蔽する電波吸収体から成り、無線通信に用いられる電波を透過可能な透過領域が形成され、その透過領域を介してリーダアンテナとトランスポンダとが無線通信するように配置したり、または透過領域を有す電波吸収体形成体に透過領域からトランスポンダを搬入することで、リーダアンテナの電波指向性を制御し、かつ他の周囲への電波を吸収および遮蔽することを特徴とする通信改善装置。
【請求項2】
無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層と電波吸収層が積層された電波吸収体であることを特徴とする請求項1記載の通信改善装置。
【請求項3】
無線通信周波数の電波に対する電波遮蔽層のシールド性能が20dB以上、かつ無線通信周波数の電波に対する電波吸収層の吸収性能が10dB以上あることを特徴とする請求項1または2記載の通信改善装置。
【請求項4】
透過領域は、単数または複数個形成され、その形状は、線状、スリット状、スロット状、円形状、楕円形状、多角形状、角部が曲線状である多角形状、不定形状、それらが組み合わされた形状で、かつ二次元または三次元状の形状の少なくとも1つから選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の通信改善装置。
【請求項5】
透過領域は、方形、楕円形もしくは多角形等であり、x方向とy方向の長さが異なることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の通信改善装置。
【請求項6】
前記透過領域はその領域の大きさが可変であり、設置される位置調節が可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の通信改善装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の通信改善装置を備えるリーダアンテナまたはリーダアンテナゲート。
【請求項8】
単数もしくは複数のリーダアンテナと、リーダアンテナとの間で無線通信する複数のトランスポンダとを備える通信装置と、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の通信改善装置とを備える通信システム。
【請求項9】
リーダアンテナおよび通信改善装置の少なくともいずれか一方は、トランスポンダ配置領域に対して変位可能に設けられることを特徴とする請求項7または8に記載の通信システム。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の通信システムと、
通信システムの通信装置が備える各トランスポンダが個別に装着される物品を搬送する搬送装置とを備える物品情報取扱設備。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図22】
【図2】
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【図4】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図23】
【図22】
【公開番号】特開2008−99266(P2008−99266A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240235(P2007−240235)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】
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