説明

通信方法、移動エージェント装置、及びホームエージェント装置

【課題】端末や訪問先のネットワークに特別な機能を備えることなく端末のネットワーク間移動を可能とする。
【解決手段】MNと、当該MNに接続されたMFAと、MNのホームネットワークに接続されたHAとを備える通信システムにおいて、HAは、MNのレイヤ3アドレスと登録要求の発信元のレイヤ3アドレスとを対応付けて保持する。MFAは、MNからのレイヤ2フレームをカプセリングしてHAに送信する。HAはデカプセリングしてホームネットワークにフレームを送出する。HAは、ホームネットワークからレイヤ2フレームを受信すると、宛先レイヤ3アドレスが登録されていることを確認し、当該宛先レイヤ3アドレスに対応付けて登録されている登録要求の発信元のレイヤ3アドレスに向けてレイヤ2フレームをカプセリングして送信し、MFAは、カプセリングされたレイヤ2フレームをデカプセリングしてMNに送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末がネットワーク間を移動しても、移動前と移動後でIPアドレスを変更することなく通信を行うための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
端末がネットワーク間を移動しても同じIPアドレスを用いて通信を継続するための従来技術として、例えばRFC3344で規定されているMobile IP技術がある。
【0003】
RFC3344で規定されているMobile IPのしくみでは、Mobile IPをサポートするネットワークに予めFA(Foreign Agent)を設置しておく。端末(MN)がそのネットワークに接続されると、Mobile IPのプロトコルを使ってFAを発見し、自身のアドレス情報をFAに通知する。また、FAはインターネット上に設置されたHA(Home Agent)に対し、端末が接続されたことを通知し、HAは端末に関するアドレス情報を登録する。通信相手端末(CN)から上記の端末に向けて発信されたパケットは、HA向けにルーティングされ、HAはそのパケットの宛先アドレスが自身に登録されている端末のものであればパケットをカプセリングしてFAに送信する。FAではカプセルから取り出したパケットを、当該訪問先ネットワークのLANにおけるレイヤ2機能を使って端末に送信する。また、端末から発信されたパケットはFAが捕捉し、通信相手端末にルーティングされる。
【0004】
また、FAを使わない構成も可能である(これをCoAモードと呼ぶ)。CoAモードでは、端末(MN)が訪問先ネットワークに接続されると、DHCP等により訪問先ネットワークのアドレス(CoA:Care of Address)が端末に付与される。また、端末は固定のIPアドレスを有しており、その固定のIPアドレスとCoAとをHAに登録する。通信相手端末からの端末向けのパケットはHAにルーティングされ、CoAを利用して端末に送信される。
【非特許文献1】C. E. Perkins, “IP Mobility Support for IPv4,” RFC3344, Aug, 2002
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の従来技術におけるFAを用いるモードでは、訪問先ネットワークにFAを設置する必要があり、FAのないネットワークに端末が移動した場合には通信を行うことができない。また、FAモードとCoAモードの両方において、端末にMobile IPの機能をインストールしておく必要があるため、Mobile IPの機能をインストールすることが困難な機器(例えばコピー機やPOSレジスタ)では従来のMobile IP技術を利用することができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、端末や訪問先のネットワークに特別な機能を備えることなく端末のネットワーク間移動を可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、ユーザ端末と、当該ユーザ端末に接続された移動エージェント装置と、前記ユーザ端末のホームネットワークに接続されたホームエージェント装置とを備える通信システムにおける通信方法であって、前記ホームエージェント装置は、前記移動エージェント装置から送信される登録要求に基づき、前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスと前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスとを対応付けてアドレス対応表に登録し、前記移動エージェント装置は前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスを保持し、前記ユーザ端末から通信相手端末に対してパケットを送信する場合において、前記移動エージェント装置は、前記ユーザ端末からレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける発信元レイヤ3アドレスが登録されている場合に、受信したレイヤ2フレームをカプセリングして前記ホームエージェント装置に送信し、前記ホームエージェント装置は、カプセリングされた前記レイヤ2フレームをデカプセリングして前記レイヤ2フレームを取り出し、当該レイヤ2フレームを前記ホームネットワークに送出し、ホームネットワークを収容するルータが前記通信相手端末宛にパケットを転送し、前記通信相手端末から前記ユーザ端末に対してパケットを送信する場合において、前記ホームエージェント装置は、前記ホームネットワークからレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける宛先レイヤ3アドレスが前記アドレス対応表に登録されていることを確認し、当該宛先レイヤ3アドレスに対応付けて登録されている前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスに向けて前記レイヤ2フレームをカプセリングして送信し、前記移動エージェント装置は、カプセリングされた前記レイヤ2フレームを受信し、デカプセリングして当該レイヤ2フレームを取り出し、前記ユーザ端末に送信することを特徴とする通信方法により解決される。
【0008】
また、上記の課題は、ユーザ端末と、当該ユーザ端末に接続された移動エージェント装置と、前記ユーザ端末のホームネットワークに接続されたホームエージェント装置とを備える通信システムにおける通信方法であって、前記ホームエージェント装置は、前記移動エージェント装置から送信される登録要求に基づき、前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスと前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスとを対応付けてアドレス対応表に登録し、前記移動エージェント装置は前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスを保持し、前記ユーザ端末から通信相手端末に対してパケットを送信する場合において、前記移動エージェント装置は、前記ユーザ端末からレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける発信元レイヤ3アドレスが登録されている場合に、受信したレイヤ2フレームからレイヤ2ヘッダを削除したパケットをカプセリングして前記ホームエージェント装置に送信し、前記ホームエージェント装置は、カプセリングされた前記パケットをデカプセリングして前記パケットを取り出し、レイヤ3ヘッダに基づき当該パケットを転送し、前記通信相手端末から前記ユーザ端末に対してパケットを送信する場合において、前記ホームエージェント装置は当該パケットを受信し、当該パケットのレイヤ3ヘッダにおける宛先レイヤ3アドレスが前記アドレス対応表に登録されていることを確認し、当該宛先レイヤ3アドレスに対応付けて登録されている前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスに向けて前記パケットをカプセリングして送信し、前記移動エージェント装置は、カプセリングされた前記パケットを受信し、デカプセリングして当該パケットを取り出し、前記ユーザ端末に送信することを特徴とする通信方法によっても解決される。
【0009】
前記ホームエージェント装置は、当該ホームエージェント装置に接続されるべきでない第2の移動エージェント装置の識別情報と、当該第2の移動エージェント装置が接続するべき第2のホームエージェント装置のアドレスとを対応付けてアドレス対応表に保持しており、前記ホームエージェント装置は、前記第2の移動エージェント装置から送信された登録要求を受信した場合において、前記アドレス対応表を参照して、前記第2のホームエージェント装置のアドレスを含むリダイレクト応答を前記第2の移動エージェント装置に送信するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端末や訪問先のネットワークに特別な機能を備えることなく端末のネットワーク間移動を可能とする技術を実現することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0012】
(システム概要)
図1を参照して本実施の形態のシステムの概要を説明する。図1に示すように本実施の形態のシステムでは、移動の対象となる端末(以下、MNと呼ぶことにする)とともに移動する移動エージェント装置(以下、MFA(Mobile Foreign Agent)と呼ぶことにする)を備える。また、通信相手端末(以下、CNと呼ぶ)からMN向けに送信されるパケットをMFAに転送する機能を持つホームエージェント装置(以下、HAと呼ぶことにする)が備えられる。MNには特別な機能を一切インストールする必要はない。
【0013】
図1に示すように、MFAは2つのインタフェースを持ち、一方のインタフェースが訪問先ネットワークに接続され、他方のインタフェースはMNに接続される。MFAにはMNのIPアドレスが事前に登録される。また、ホームエージェント装置はMNのホームネットワークに接続される。なお、ホームネットワークのネットワークアドレスとMNのネットワークアドレスとは同じである。
【0014】
以下、図1を参照して動作概要を説明する。MNが接続されたMFAが訪問先のネットワークに接続されると、DHCP等により訪問先ネットワークのIPアドレスがMFAに付与される。そして、MFAは自身のID(本実施の形態ではIDとしてMFAのMACアドレスを用いる)を含む登録要求をHAに送信する。
【0015】
登録要求を受信したHAは、登録要求送信元のIPアドレスとMNのIPアドレスとを対応付けてバインディングキャッシュとして保持する。CNから送信されたMN向けのパケットはHAにルーティングされ、HAはバインディングキャッシュを参照することにより、MNが接続されているMFA宛にパケットをカプセリングして送信する。MNとMFAとはレイヤ2リンクで接続されており、MFAが受信したMN宛のパケットはレイヤ2リンクによりMNに送信される。MNがCN向けにパケットを送信すると、MFAはパケットをカプセリングしてHAに送信する。
【0016】
[登録の手順について]
本発明の適用例としてレイヤ2トンネリング方式とレイヤ3トンネリング方式を後に説明するが、まず、バインディングキャッシュ等の情報の登録手順について説明する。以下で説明する登録手順はレイヤ2トンネリング方式とレイヤ3トンネリング方式とで共通である。
【0017】
HAにはMFAのIDと、その配下に接続されるMN、もしくはHAのアドレス情報が事前に設定されている。これをMFAマスターデータと呼ぶ。MFAマスターデータの例を図2に示す。図2の例では、MACアドレスが1111であるMFAはIPアドレスがA.A.A.AのMNに接続され、MACアドレスが2222のMFAはIPアドレスがB.B.B.BのHAに接続されるべきであることを意味している。
【0018】
まず、MFAに適切なHAのIPアドレスが設定されており、MFAが適切なHAに登録要求を送信する場合の登録手順について図3を参照して説明する。
【0019】
MFAは訪問先のネットワークに接続されるとHAとの間にトンネルを生成するために、HAに対してMFAのMACアドレスを含む登録要求(REG_REQ)を発行する(ステップ1)。
【0020】
HAは登録要求を受信すると、登録要求に含まれるMACアドレスに対応するMNのIPアドレスをMFAマスターデータから取得し、そのIPアドレスを含む登録応答(REG_RES)をMFAに返送する(ステップ2)。MFAはそのIPアドレスを用いてフィルタを生成する。
【0021】
登録応答を受信したMFAは、登録応答確認(REG_ACK)をHAに返す(ステップ3)。登録応答確認を受信したMFAは、バインディングキャッシュテーブルにエントリを作成する。そのエントリには、MNのIPアドレスに加え、登録要求(REG_REQ)パケットの発信元IPアドレス、ポートが着アドレス、着ポートとして記録され、登録要求(REG_REQ)パケットの宛先ポートが発ポートとして記録される。バインディングキャッシュテーブルの一例を図4に示す。なお、MFAとHAとの間にNAPT装置が介在する場合には、登録要求(REG_REQ)パケットの発信元IPアドレス、ポートは、NAPT装置の外側のインタフェースのIPアドレスとポート番号になる。つまり、着アドレス、着ポートとしてNAPT装置の外側のインタフェースのIPアドレスとポート番号が記録される。
【0022】
また、NAPT装置にはFW機能を備えていることが多く、NAPT内部から特定のポート向けのポート番号に対する発信が禁止されている場合、及び外部の特定のポートからの返りのパケットの流入が禁止されている場合がある。よって、本実施の形態では、HAにおいて登録要求(REG_REQ)を受信するポートを予め決定しておらず、MFAは登録応答(REG_RES)を受信できるまで様々なポート番号に対して登録要求(REG_REQ)の送信を試みる。一方、HAでは登録要求(REG_REQ)を受け取り登録応答(REG_RES)を送信したとしても、登録応答がMFAまで届いたという保証はないため、図3で示したとおり、3ウェイハンドシェークを用いて、MFAから登録応答(REG_RES)の送達確認である登録応答確認(REG_ACK)を受信するまではバインディングキャッシュを生成しないこととしている。
【0023】
登録要求(REG_REQ)は定期的にMFAからHAに送信され、バインディングキャッシュのキープアライブとして使用される。HAでは、一定時間以上登録要求(REG_REQ)を受信しなければタイムアウトしてバインディングキャッシュから該当のエントリを削除する。
【0024】
次に、MFAが適切なHAに登録要求を送信しない場合について図5を参照して説明する。MFAに登録されたHAのIPアドレスが、MNのホームネットワークに接続されたHAのIPアドレスでない場合、登録要求を受信したHA1は、MFAのMACアドレスに対応付けてMFAマスタテーブルに格納されている、MNのホームネットワークに接続されたHA2のIPアドレスを取得し、そのIPアドレスを含むリダイレクト応答をMFAに返す(ステップ2)。リダイレクト応答を受信したMFAは、それに含まれるIPアドレスのHA2に対し再び登録要求の発行を試みる(ステップ3)。そして、登録要求の宛先のHA2が、MFAマスタテーブルに当該MFAのMACアドレスに対応するMNのIPアドレスを保持していれば、そのHA2が正しいHAであり、図3で説明したとおり、当該HA2は登録応答を返送する(ステップ4)。また、登録確認応答(ステップ5)を受信してバインディングキャッシュを生成する。
【0025】
このリダイレクト応答機能を用いることにより、以下に説明する自動設定を実現できる。
【0026】
ネットワーク上に、全てのMFAで共通に使用される設定サーバ(図5におけるHA1に相当)を備え、ここに全てのMFAのMACアドレスとそのMFAが接続すべきHAアドレス情報を格納する。MFAは工場出荷時には、設定サーバのIPアドレスを保持しており、この状態でネットワークに接続されると、設定サーバに対して登録要求を発行する。設定サーバは、上記のHAのリダイレクト応答と同様にして、そのMFAが接続するべきHAのIPアドレスを含んだリダイレクト応答を返送する。
【0027】
この方式は、運用中のHAを分割する場合にも利用できる。HAに収容されるMFAの数が多くなり、一台のHA(分割前HAと呼ぶ)を2台に分割した状況であるものとする。この場合、予め新たに2台のHA(分割後HAと呼ぶ)を用意しておく。
【0028】
そして、分割前HAにおけるMFAマスタテーブルのエントリの中で、分割後HAに移すべきMFAのエントリを、分割後HAのアドレスに書き換えておく。そして、分割前HAは、定期的に移設対象MFAから発行される登録要求に対し、分割後HAのIPアドレスを含むリダイレクト応答を返送する。これにより、当該MFAは分割後HAに接続される。
【0029】
以下、レイヤ2トンネリング方式を第1の実施の形態として説明し、レイヤ3トンネリング方式を第2の実施の形態として説明する。
【0030】
(第1の実施の形態)
[システム構成概要]
図6に、レイヤ2トンネリング方式のシステム構成を示す。レイヤ2トンネリング方式では、MFAとHAとが、MNとホームネットワークのルータ間を結ぶレイヤ2ブリッジの役割を果たし、MNが当該レイヤ2ブリッジを経由してホームネットワークのルータに接続される。HAはホームネットワークに接続されており、ホームネットワークにおいてHAはレイヤ2スイッチとして動作する。MFAとMNが訪問先ネットワークに存在する場合における動作概要を次に説明する。
【0031】
MNから送信されるイーサネット(登録商標)フレームは全てMFAが受信する(例えば、MFAのMN側インタフェースをpromiscuousモードとする)。MFAは受信したイーサネット(登録商標)フレーム内のIPヘッダの発信元IPアドレスが登録されているか否かを判定し、登録されていればそのイーサネット(登録商標)フレームをMIPヘッダでイーサネット(登録商標)ヘッダを含めてカプセリングしてHAに送信する。なお、カプセリングして特定の宛先にデータを送信することを“トンネルに送信する”と表現する場合がある。デカプセリングする装置がトンネルの終端点となる。
【0032】
HAは受信したパケットをデカプセリングし、得られたイーサネット(登録商標)フレームをルータに送信する。ルータはレイヤ3ヘッダに基づき通常の動作を行ってパケットを転送する。
【0033】
ルータからホームネットワークに送出されたイーサネット(登録商標)フレームは全てHAが受信する。HAは受信したイーサネット(登録商標)フレームのレイヤ3ヘッダの宛先アドレスが、事前に登録したバインディングキャッシュに登録されたアドレスであるか否かを判定し、登録されたアドレスである場合に、そのイーサネット(登録商標)フレームをMIPヘッダでカプセリングしてMFAに送信する。HAはデカプセリングを行って、イーサネット(登録商標)フレームをMNに送信する。
【0034】
送信するフレームがブロードキャストフレームやマルチキャストフレームである場合、HA、MFAはいずれも無条件にMIPヘッダを付けてパケットを送出する(トンネルに送り出す)。よって、MNやホームネットワーク上にあるルータから発信されたARPはホームネットワーク上の全てのMNが受信することになり、MNがMFAとともにネットワーク間を移動してもIP通信が可能となる。
【0035】
[詳細装置構成]
次に、レイヤ2トンネリング方式を実現するMFAとHAの機能構成を詳細に説明する。図7にMFAの機能構成を示す。図7に示すように、MFAは、登録要求を発行するポーリング処理部11、イーサネット(登録商標)の通信処理を行うEthernet(登録商標)処理部12、13、UDP/IP の通信処理を行うUDP/IP機能部14、上り方向の通信処理を行う上り方向通信処理部15、下り方向の通信処理を行う下り方向通信処理部16、各種テーブル17を有している。MFAはCPUやメモリ等を有するコンピュータに各処理部の処理を実現するためのプログラムを搭載することにより実現可能である。また、各種テーブルはメモリ等の記憶装置に格納される。
【0036】
図7に示すように、各種テーブル17にはHA設定テーブルとMNフィルタテーブルが含まれる。
【0037】
HA設定テーブルにはHA のIP アドレスとポート番号が格納されている。HA設定テーブルはポーリング処理部11により参照され、ポーリング処理部11はこのテーブルに設定されているHA に対して登録要求を定期的に発行する。なお、MFAの初期出荷時には設定サーバのIP アドレスが設定されており、MFAが使用されるときに、登録リダイレクト応答により適切なHAのIP アドレスが上書きされる。また、登録応答(正常な登録応答)によりポート番号が設定される。
【0038】
MNフィルタテーブルには登録応答パケットに格納されているMNのIPアドレスが格納される。なお、MNのIPアドレスを予めMFAに格納しておいてもよい。MNフィルタテーブルは上り方向通信処理部15により参照されるものであり、上り方向通信処理部15はイーサネット(登録商標)フレームを受信すると、フレーム内のIP ヘッダを読み取り、発IP アドレスがこのテーブルに登録されている場合に、そのフレームをMIPヘッダでカプセリングしてHAに送信する。
【0039】
続いて、HAの機能構成を図8を参照して説明する。図8に示すように、HAは、Ethernet(登録商標)処理部21、22、UDP/IP機能部23、上り方向通信処理部24、下り方向通信処理部25、キャッシュ管理部26、MFAマスタテーブル27、及びバインディングキャッシュ28を有している。HAはCPUやメモリ等を有するコンピュータに各処理部の処理を実現するためのプログラムを搭載することにより実現可能である。また、各種テーブルやバインディングキャッシュはメモリ等の記憶装置に格納される。
【0040】
MFA マスタテーブル27にはMFA の情報が管理者等により予め格納される。このMFA の情報は、MFA のハードウェアID情報(本実施形態ではMACアドレス)、IPアドレス、アドレスタイプを含み。それらが対応付けられている。アドレスタイプがMN であればそのアドレスは該当MFA に接続されるMN のIPアドレスであり、アドレスタイプがHA であればそのアドレスは該当MFAが接続するべきHAのIPアドレスを示す。
【0041】
バインディングキャッシュ28は、MNのアドレスとMFAのアドレスとを対応付けた情報である。HAはホームネットワークからフレームを受信したときに、宛先IP アドレスを読み取り、このバインディングキャッシュを検索する。該当IP アドレスが見つかれば、登録されているMFA のIPアドレスとポートに対し、登録されている発ポート番号を発信元ポートとしてカプセリングして送信する。
【0042】
バインディングキャッシュ28は登録応答確認パケットを受信すると自動更新される。HAは、登録要求パケットの発信元MFA が接続されているMN のアドレスをキーとして、登録応答確認パケットの発信元から着アドレス及び着ポートを設定する。またこの登録応答確認パケットの宛先をバインディングキャッシュの発ポートとして設定する。 一定時間以上該当MFA から登録要求がこなければ、該当エントリは古いデータとして削除される。
【0043】
[MIPヘッダ]
ここで、登録関係のMIPパケット、及び通信データのカプセリングに使用されるMIPヘッダについて説明しておく。なお、以下での説明は第2の実施の形態におけるレイヤ3トンネリング方式とも共通である。
【0044】
図9はMFAからHAに対し送出される登録要求パケットのフォーマットを示す図である。
【0045】
Verはシステムのバージョン番号で2に固定である。Typeは登録要求であることを表す05hが設定される。Lengthはpaddingを含めた本パケット全体の長さが設定される。MPDUはHAに分解組み立てを指示する最大パケット長である。(カプセルヘッダを含めて、UDP/IPヘッダは含まないで)この値より大きなデータは、トンネルには送り込むことができない。Hardware ID はMFAに設定されているMACアドレスである。インタフェースが複数ありMACアドレスを複数持つ場合は、そのうちで一番値の小さなものを設定する。
【0046】
ProtocolTypeはトンネルをレイヤ2トンネリングとするかレイヤ3トンネリングのどちらにするのかHAに提案するために使う。レイヤ3トンネリングの場合には、ネットワークアドレスがIPv4なのか、IPv6なのかの指定に使う。AuthLengthはBasicAuthDataフィールドの大きさをバイト数で表したものである。BasicAuthDataは、MFAに設定されたクレデンシャルをRFC2617の基本認証で規定された方式に従って符号化した文字列となる。Paddingはこのパケットの大きさを自由に変えるために、任意のデータを設定してよいフィールドである。
【0047】
図10(a)に、HAからMFAに対し送出される登録応答パケットのフォーマットを示す。Typeには登録応答パケットであることを表す07hが設定される。Lengthにはpaddingを含めた本パケット全体の長さが設定される。Protocol Typeには登録要求に対する結果が設定される。このフィールドが0010hであれば登録承認、0020hであればリダイレクションである。登録承認時にもリダイレクション時にもアドレス情報を通知する。
【0048】
AddressTypeはアドレスのプロトコルであり、これによりひとつのアドレスあたりのデータ長が定まる。Number of Addressで、その後に格納されるアドレスの数が指定される。Address Typeの具体的な値、プロトコル、アドレス長は図10(b)に示す通りである。
【0049】
図11に、HAとMFAで双方で送りあうフレームカプセリングパケット(Data)のフォーマットを示す。TypeにはDataであることを表す10hが設定される。Lengthには本パケット全体の長さが設定される。Protocol Typeは登録時に認証されたトンネル方式(L2トンネル、L3トンネルの種別)が設定される。この識別子がL2を指定すれば、データ部はイーサネット(登録商標)ヘッダを含むL2フレームであり、L3を指定するとIPヘッダを含むIPデータグラムとなる。グループIDは、本パケットがフレーム分割された後のセグメントである場合には非0となっている。GroupIDが非0のときに限り、TotalLengthおよびOffsetフィールドが有効となり、長いデータが分割されてカプセリングされていることを示す。HAやMFAでは、同じGroupIDのデータ片を組み立ててから、MNやCNに送り出す。
【0050】
[動作詳細]
次に、レイヤ2トンネリング方式における各装置の動作を詳細に説明する。なお、以下のMFAとHAの登録動作についてはレイヤ3トンネリング方式と共通である。
(1)MFAの登録動作
まず、MFAの登録動作について説明する。
【0051】
MFAではポーリング処理部11が一定時間ごとに起動される。起動されたポーリング処理部11は、HA設定テーブルを読み取り、登録されているIPアドレスに対して登録要求を発信する。
【0052】
そのときの宛先ポート番号はランダムに選ばれる。応答がなければ次々と異なるポート番号が選ばれて、正常な登録応答が返されるまで、さまざまな宛先ポート番号に登録要求が発信される。
【0053】
下り方向通信処理部16が登録応答を受け取ると、登録応答が正常応答であれば、HA設定テーブルにこのときの登録要求の宛先ポート番号を設定する。以降ポーリング処理部11は、そのポート番号にだけ登録要求を発行することになる。また、正常な登録応答には、MNのIPアドレスが格納されており、この情報をフィルタテーブルに設定する。そしてHAに対して登録応答確認を返送する。
【0054】
登録応答がリダイレクト応答であれば、リダイレクト応答に格納されているIPアドレスでHAテーブルのIPアドレスを上書きして、HAポート番号およびフィルタテーブルをクリアする。これによりポーリング処理部11は新しいHAに対して登録処理を行う。
【0055】
MFAは一定時間以上登録応答を受信しなければ、HAが削除されたものとしてHAテーブルのIPアドレスを初期値に書き戻し、HAポート番号およびフィルタテーブルをクリアする。
(2)HAの登録動作
次に、HAの登録動作を説明する。
【0056】
HAの上り方向通信処理部24がMFAからの登録要求を受け取ると、キャッシュ管理部26に処理を引き渡す。キャッシュ管理部26では登録要求に含まれるMFAのMACアドレスをキーとしてMFAマスターテーブルを検索し、該当レコードを探す。
【0057】
抽出されたレコードのレコードタイプがMNであれば、上り方向通信処理部24は、登録応答パケットに当該MNのIPアドレスを格納し、MFAに対して登録正常応答を返す。一方レコードタイプがHAであれば、リダイレクト先IPアドレスを含む登録リダイレクト応答を返す。
【0058】
HAの上り方向通信処理部24がMFAからの登録応答確認を受け取ると、キャッシュ管理部26に処理が引き渡たされる。キャッシュ管理部26は、登録応答確認もしくは登録要求のパケットのアドレス情報に基づきバインディングキャッシュをアップデートする。
(3)MFAの上り方向データ転送手順
次に、レイヤ2トンネリング方式におけるMFAの上り方向のデータ転送手順について図12のフローチャートを参照して説明する。
【0059】
MFAの上り方向通信処理部は、MNに接続されているインタフェースからすべてのパケットをイーサネット(登録商標)ヘッダを含めて受信する(ステップ1)。受信したイーサネット(登録商標)フレームの宛先アドレスがブロードキャストアドレスやマルチキャストアドレスであれば(ステップ2のYes)トンネル転送動作に入る(ステップ4)。また、受信したイーサネット(登録商標)フレームがIPパケットを含み、発信元IPアドレスがMNフィルタテーブルに登録されている場合にも(ステップ3のYes)、トンネル転送動作に入る(ステップ4)。それ以外の場合は何もしない。
【0060】
ステップ4では、MFAはHA設定テーブルを参照し、HAのIPアドレスとポート番号が登録されていれば、送るべきイーサネット(登録商標)フレームの前にMIP共通ヘッダを付加し、UDPを使って登録されているHAに対しパケットを送信する。
(4)HAの上り方向データ転送手順
次に、レイヤ2トンネリング方式におけるHAの上り方向のデータ転送手順を図13のフローチャートを参照して説明する。
【0061】
HAにおけるMFAからのパケットを受信するインタフェースにおいて、自IPアドレス向けUDPパケットは宛先ポート番号の値にかかわらず全て受信する(ステップ11)。HAは、UDPパケットの後にMIPヘッダがあるか否かを判断し、MIPヘッダがあれば、自HAあてのパケットであると判断する(ステップ12のYes)。
【0062】
受信したパケットが自HAあてパケットであれば、HAは、パケットのMIPヘッダを参照し、登録関連パケットなのかユーザフレーム格納パケットなのかを判断する(ステップ13)。登録関連パケットであれば当該パケットをキャッシュ管理部に引き渡し、前述した登録処理を行う。
【0063】
ユーザフレームパケットであれば、MIPヘッダを取り外しイーサネット(登録商標)フレームをパケットから取り出す(ステップ14)。
【0064】
ステップ14において取り出されたイーサネット(登録商標)フレームがユニキャストでありPDUがIPパケットであれば(ステップ15のユニキャスト)、宛先IPアドレスを取り出す。そしてバインディングキャッシュを参照し、該当IPアドレスが登録されているかどうかを調べる(ステップ16)。もしバインディングキャッシュに当該IPアドレスがあれば、そのイーサネット(登録商標)フレームごと再カプセル化してトンネルに送り出す(ステップ17)。
【0065】
当該IPアドレスがバインディングキャッシュに存在しなければ(ステップ16のNo)、そのイーサネット(登録商標)フレームは、ホームネットワーク側に送り出されることにより、その宛先MACアドレス保持者(ホームネットワークのルータ等)が受信する(ステップ18)。
【0066】
ステップ15において、イーサネット(登録商標)フレームの宛先MACアドレスがブロードキャストもしくはマルチキャストアドレス宛であれば、HAはホームネットワークに当該イーサネット(登録商標)フレームを送出するとともに、バインディングキャッシュを参照して現在開設されているすべてのトンネルに対して、イーサネット(登録商標)フレームを再カプセル化して送出する(ステップ19)。送り先のIPアドレスとUDPポート、および発信元ポート番号はバインディングキャッシュの該当エントリの登録に従う。これによりブロードキャスト/マルチキャストフレームは移動中か否かに関わらず、ホームネットワークに接続されているすべてのノードが受信する。よって移動中同士のMN間であってもARPメカニズムが動作するために、モバイルIP通信が実現できる。
(5)HAの下り方向のデータ転送手順
次に、レイヤ2トンネリング方式におけるHAの下り方向のデータ転送手順について図14を参照して説明する。
【0067】
HAは、当該HAのホームネットワークに接続されているインタフェースにおいてすべてのパケットをイーサネット(登録商標)ヘッダを含めて受信する(ステップ21)。
【0068】
受信したイーサネット(登録商標)フレームがユニキャストでありPDUがIPパケットであれば(ステップ22のユニキャスト)、宛先IPアドレスを抽出しバインディングキャッシュを参照して該当MNが登録されているかどうか(移動中かどうか)を調べる(ステップ23)。バインディングキャッシュにそのIPアドレスが登録されていなければそれ以上何もしない。
【0069】
バインディングキャッシュに宛先IPアドレスが登録されていれば(ステップ23のYes)、そのイーサネット(登録商標)フレームごとカプセル化してトンネルに送り出す(ステップ24)。送り先のIPアドレスとUDPポート、および発信元ポート番号はバインディングキャッシュの該当エントリの登録に従う。
【0070】
受信したイーサネット(登録商標)フレームの宛先MACアドレスがブロードキャストもしくはマルチキャストであれば(ステップ22のブロードキャスト等)、バインディングキャッシュに登録されているすべてのトンネルに対しそのフレームをカプセル化して送り出す(ステップ25)。送り先のIPアドレスとUDPポート、および発信元ポート番号はバインディングキャッシュの該当エントリの登録に従う。
(6)MFAの下り方向のデータ転送手順
次に、レイヤ2トンネリング方式におけるMFAの下り方向のデータ転送手順について図15を参照して説明する。
【0071】
MFAの訪問先ネットワークに接続されているインタフェースには、訪問先ネットワークのDHCP等のアドレス割り当て機能によりIPアドレスが割り当てられる。HAからのパケットはこのインタフェースに着信する。
【0072】
MFAは、HAからのパケットをUDPデータグラムとして受信する(ステップ31)。データグラムにはMIPヘッダが含まれているので、デカプセル化を行い、ヘッダを削除することによりイーサネット(登録商標)フレームを抽出する(ステップ32)。
【0073】
デカプセル化されたイーサフレームをMNの接続されているインタフェースに送り出す(ステップ33)。イーサネット(登録商標)フレームがブロードキャストやマルチキャストであれば、該当インタフェースに接続されているすべてのMNが受け取ることになる。イーサネット(登録商標)フレームがユニキャストフレームであれば、その宛先のMACアドレスをもつMNだけがそのイーサネット(登録商標)フレームを受け取る。
【0074】
(第2の実施の形態)
[システム構成概要]
次に、本発明の第2の実施の形態としてのレイヤ3トンネリング方式について説明する。図16にレイヤ3トンネリング方式のシステム構成を示す。レイヤ3トンネリング方式では、HAはルータ(レイヤ3スイッチ)として動作する。以下、レイヤ3トンネリング方式の動作概要を説明する。
【0075】
MFAにおいてMNと接続されるインタフェースはIPアドレスを持たず、MFAはMNから発信される全てのイーサネット(登録商標)フレームを受信する。また、MNからARPリクエストが送信されると、MFAはそのARPリクエストの発信元IPアドレスがフィルタに登録されているMNのIPアドレスと一致するか否かを判定し、一致する場合に、MFAはそのARPに対して自分のMACアドレスを応答する。つまり、MFAはプロキシARPとして振舞う。
【0076】
続いてMNからはユニキャストフレームが送られてくる。発信元IPアドレスがフィルタに登録されたものであれば、MFAは、イーサネット(登録商標)ヘッダを削除し、IPヘッダからカプセル化してHAに送信する。HAはトンネルから受信したフレームをデカプセル化し、IPパケットを取り出す。そして、HAはIPヘッダに基づき適切な宛先にIPパケットを転送する。つまり、HAはルータとして機能する。
【0077】
HAがCNもしくはホームネットワークからIPデータグラムを受信した場合には、HAはバインディングキャッシュを参照し、宛先IPアドレスが登録されていれば、そのエントリに記載されている着アドレスに基づきIP-in-IPカプセリングを行ってトンネル経由でMFAにパケットを送信する。MFAは宛先のIPアドレスがフィルタに記載されているアドレスに一致するか否かを判定し、一致するならば、ARPを用いて宛先のMACアドレスを得て、イーサネット(登録商標)ヘッダを付加してユニキャストフレームとしてMNに送り出す。
【0078】
MFA、HAの装置構成をそれぞれ図17、図18に示す。図17、18に示すように、それぞれARP処理部を備える点が第1の実施の形態のMFA、HAと異なる。
【0079】
[動作詳細]
次に、レイヤ3トンネリング方式における各装置の動作を詳細に説明する。
(1)MFAの上り方向のデータ転送手順
まず、レイヤ3トンネリング方式におけるMFAの上り方向のデータ転送手順について図19を参照して説明する。
【0080】
MFAのMN側インターフェースでは自MACアドレスあてのイーサネット(登録商標)フレームを受信する。また、ブロードキャストフレームであればARPリクエストのみを受信する(ステップ41)。
【0081】
受信したフレームがARPリクエストである場合(ステップ42のARP)、MFAは通信要求元のIPアドレスを取りだしてMNフィルターテーブルと照合し、もしそのアドレスがフィルターテーブルに登録してあれば(ステップ43のYes)、そのARPリクエストはMNから発せられたものであるのでステップ44に進む。
【0082】
ステップ44において、MFAは、ARPリクエストの要求先IPアドレスがいかなるものであろうとも、自分のMACアドレスをTarget MACに設定したリプライをMNに対して返送する。これによりMNから発せられるユニキャストフレームはMFAが受信できる。
【0083】
ステップ42において、MFAが自MACアドレス宛てのユニキャストフレームを受信した場合、MFAは、受信したユニキャストフレームのイーサネット(登録商標)ヘッダを取り外し、PDUがIPデータグラムであることを確認する。そのIPヘッダから発信元IPアドレスがMNフィルターテーブルに登録されているものであることを確認できれば(ステップ45のYes)、IPデータグラムをカプセル化し、UDPを使いHAに送信する(ステップ46)。
(2)HAの上り方向データ転送手順
次に、レイヤ3トンネリング方式におけるHAの上り方向データ転送手順について図20を参照して説明する。
【0084】
HAのインターネット側インタフェースは、CNからホームネットワークに向けられて送られたIPパケット、及びトンネルを通じてMNから送られてくるカプセル化されたIPパケットの2種類を受信する。
【0085】
HAがパケットを受信すると(ステップ51)、そのパケットがトンネルから受信したパケットか、CNから送信されたパケットか判定する(ステップ52)。ここでは、パケットが自IPアドレス宛でUDPデータグラムになっておりその後にMIPヘッダがあれば、トンネルから受信されたフレームであると判定する。それ以外のIPデータグラムはCNから発せられたものとして判定する。
【0086】
HAは、受信パケットがトンネルから受信されたパケットであると判定した場合(ステップ52のトンネル)、MIPヘッダを取り除き、通常のIPパケットとする(ステップ53)。CNから受信したIPパケットである場合には(ステップ52のCN)そのまま次の処理に移る。
【0087】
続いて、HAは、IPパケットの宛先IPアドレスがホームネットワークであれば、バインディングキャッシュを参照し宛先MNが登録されているかどうかを調べる(ステップ54)。該当アドレスがバインディングキャッシュに見つかれば、そのIPパケットはカプセル化されて指定のアドレス、ポートに送り出される(ステップ55)。バインディングキャッシュに宛先IPアドレスが見つからなければ(ステップ54のNo)、IPアドレスに応じてIPパケットを転送する(ステップ56)。つまり、IPアドレスがホームネットワークを示していればIPパケットをホームネットワーク側に送り出し、IPパケットの宛先がホームネットワークでない場合、それはCN向けであるのでそのIPパケットをインターネット向けに送り出す。
(3)HAの下り方向のデータ転送手順
次に、レイヤ3トンネリング方式におけるHAの下り方向のデータ転送手順について図21を参照して説明する。
【0088】
HAは、MN側インターフェースでは自MACあてのイーサネット(登録商標)フレーム、および、ブロードキャストフレームのうちARPリクエストのみを受信する(ステップ61)。
【0089】
ステップ62において、受信したイーサネット(登録商標)フレームがARPリクエストであれば(ステップ62のYes)、通信要求先のTarget IP を取り出す(ステップ63)。そのアドレスは自IPアドレスであるか、もしくはバインディングキャッシュと照合し一致するMNが登録されているかどうかを判定する(ステップ64)。もし判定結果が合致すれば(ステップ64のOK)、ARPリプライを返すためにステップ65に進む。合致しなければ、HAはARPリプライを返すべきではないために何もしない。
【0090】
ステップ65において、つまりARPリクエストの要求先IPアドレスが自IPアドレス(これはホームネットワークに接続されているノードがインターネットに接続するためにデフォルトルートであるHAにパケットを送ろうとしたときに発生する)、もしくは移動中のMNを指向している場合には、いったんHAがパケットを受け取らなければならないためにARPリプライで応答する(ステップ65)。返送するARPリプライには、HAのホームネットワーク側に接続されているインタフェースのMACアドレスを格納する。
【0091】
ステップ62において、受信したイーサネット(登録商標)フレームが自MACアドレスあてのユニキャストフレームであれば(ステップ62のNo)、HAは、受信したユニキャストフレームのイーサネット(登録商標)ヘッダを取り外してPDUがIPデータグラムであることを確認し、そのIPヘッダから宛先IPアドレスを取り出す(ステップ66)。そのIPアドレスがバインディングキャッシュに登録されているものであれば(ステップ67のYes)、カプセル化してUDPを使い該当のMFAに送り出す(ステップ68)。ステップ67において、IPアドレスがバインディングキャッシュに登録されているものでなければ、それはCN向けであるのでそのIPパケットをインターネット向けに送り出す(ステップ69)。
(4)MFAの下り方向のデータ転送手順
次に、レイヤ3トンネリング方式におけるMFAの下り方向のデータ転送手順について図22を参照して説明する。
【0092】
MFAの訪問先ネットワークに接続されているインタフェースは、訪問先ネットワークにおけるDHCP等のアドレス割り当て機能を使ってネットワークアドレスを割り当てられている。MFAはHAからのパケットをこのインタフェースで受信する(ステップ71)。受信したパケットはUDPデータグラムとして受信される。データグラムにはMIPヘッダが含まれているのでヘッダを削除することによりIPパケットがデカプセル化される(ステップ72)。そのIPヘッダに含まれる宛先IPアドレスを取り出し、MNフィルターテーブルを参照する。アドレス情報が合致すれば(ステップ73のYes)、そのIPパケットを通常のARP処理を使ってMN側ネットワークに送り出す(ステップ74)。
【0093】
以上説明したように、第1、第2の実施の形態で説明したシステムを用いることにより、MNや移動先ネットワークに特別な仕組みを備えることなくモバイルIPを実現することが可能となる。特にMNに特別な仕組みを備える必要がないことから、特別なソフトウェアを事前にインストールすることのできないコピー機やPOSレジスタをMNとして使用できる。
【0094】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態のシステムの概要図である。
【図2】MFAマスターデータの例を示す図である。
【図3】正常な登録手順を説明するための図である。
【図4】バインディングキャッシュの例を示す図である。
【図5】リダイレクトを含む登録手順を説明するための図である。
【図6】レイヤ2トンネリング方式のシステム構成図である。
【図7】レイヤ2トンネリング方式におけるMFAの機能構成図である。
【図8】レイヤ2トンネリング方式におけるHAの機能構成図である。
【図9】MFAからHAに対し送出される登録要求パケットのフォーマットを示す図である。
【図10】HAからMFAに対し送出される登録応答パケットのフォーマットを示す図である。
【図11】HAとMFAで双方で送りあうフレームカプセリングパケット(Data)のフォーマットを示す図である。
【図12】レイヤ2トンネリング方式におけるMFAの上り方向のデータ転送手順を説明するための図である。
【図13】レイヤ2トンネリング方式におけるHAの上り方向のデータ転送手順を説明するための図である。
【図14】レイヤ2トンネリング方式におけるHAの下り方向のデータ転送手順を説明するための図である。
【図15】レイヤ2トンネリング方式におけるMFAの下り方向のデータ転送手順を説明するための図である。
【図16】レイヤ3トンネリング方式のシステム構成図である。
【図17】レイヤ3トンネリング方式におけるMFAの機能構成図である。
【図18】レイヤ3トンネリング方式におけるHAの機能構成図である。
【図19】レイヤ3トンネリング方式におけるMFAの上り方向のデータ転送手順を説明するための図である。
【図20】レイヤ3トンネリング方式におけるHAの上り方向データ転送手順を説明するための図である。
【図21】レイヤ3トンネリング方式におけるHAの下り方向のデータ転送手順を説明するための図である。
【図22】レイヤ3トンネリング方式におけるMFAの下り方向のデータ転送手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0096】
11 ポーリング処理部
12、13 Ethernet(登録商標)処理部
14 UDP/IP機能部
15 上り方向通信処理部
16 下り方向通信処理部
17 各種テーブル
18 ARP処理部
21、22 Ethernet(登録商標)処理部
23 UDP/IP機能部
24 上り方向通信処理部
25 下り方向通信処理部
26 キャッシュ管理部
27 MFAマスタテーブル
28 バインディングキャッシュ
29 ARP処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末と、当該ユーザ端末に接続された移動エージェント装置と、前記ユーザ端末のホームネットワークに接続されたホームエージェント装置とを備える通信システムにおける通信方法であって、
前記ホームエージェント装置は、前記移動エージェント装置から送信される登録要求に基づき、前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスと前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスとを対応付けてアドレス対応表に登録し、前記移動エージェント装置は前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスを保持し、
前記ユーザ端末から通信相手端末に対してパケットを送信する場合において、前記移動エージェント装置は、前記ユーザ端末からレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける発信元レイヤ3アドレスが登録されている場合に、受信したレイヤ2フレームをカプセリングして前記ホームエージェント装置に送信し、
前記ホームエージェント装置は、カプセリングされた前記レイヤ2フレームをデカプセリングして前記レイヤ2フレームを取り出し、当該レイヤ2フレームを前記ホームネットワークに送出し、ホームネットワークを収容するルータが前記通信相手端末宛にパケットを転送し、
前記通信相手端末から前記ユーザ端末に対してパケットを送信する場合において、前記ホームエージェント装置は、前記ホームネットワークからレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける宛先レイヤ3アドレスが前記アドレス対応表に登録されていることを確認し、当該宛先レイヤ3アドレスに対応付けて登録されている前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスに向けて前記レイヤ2フレームをカプセリングして送信し、
前記移動エージェント装置は、カプセリングされた前記レイヤ2フレームを受信し、デカプセリングして当該レイヤ2フレームを取り出し、前記ユーザ端末に送信する
ことを特徴とする通信方法。
【請求項2】
ユーザ端末と、当該ユーザ端末に接続された移動エージェント装置と、前記ユーザ端末のホームネットワークに接続されたホームエージェント装置とを備える通信システムにおける通信方法であって、
前記ホームエージェント装置は、前記移動エージェント装置から送信される登録要求に基づき、前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスと前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスとを対応付けてアドレス対応表に登録し、前記移動エージェント装置は前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスを保持し、
前記ユーザ端末から通信相手端末に対してパケットを送信する場合において、前記移動エージェント装置は、前記ユーザ端末からレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける発信元レイヤ3アドレスが登録されている場合に、受信したレイヤ2フレームからレイヤ2ヘッダを削除したパケットをカプセリングして前記ホームエージェント装置に送信し、
前記ホームエージェント装置は、カプセリングされた前記パケットをデカプセリングして前記パケットを取り出し、レイヤ3ヘッダに基づき当該パケットを転送し、
前記通信相手端末から前記ユーザ端末に対してパケットを送信する場合において、前記ホームエージェント装置は当該パケットを受信し、当該パケットのレイヤ3ヘッダにおける宛先レイヤ3アドレスが前記アドレス対応表に登録されていることを確認し、当該宛先レイヤ3アドレスに対応付けて登録されている前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスに向けて前記パケットをカプセリングして送信し、
前記移動エージェント装置は、カプセリングされた前記パケットを受信し、デカプセリングして当該パケットを取り出し、前記ユーザ端末に送信する
ことを特徴とする通信方法。
【請求項3】
前記ホームエージェント装置は、当該ホームエージェント装置に接続されるべきでない第2の移動エージェント装置の識別情報と、当該第2の移動エージェント装置が接続するべき第2のホームエージェント装置のアドレスとを対応付けてアドレス対応表に保持しており、
前記ホームエージェント装置は、前記第2の移動エージェント装置から送信された登録要求を受信した場合において、前記アドレス対応表を参照して、前記第2のホームエージェント装置のアドレスを含むリダイレクト応答を前記第2の移動エージェント装置に送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信方法。
【請求項4】
前記移動エージェント装置は、前記ユーザ端末からARPリクエストを受信した場合において、当該ARPリクエストの発信元レイヤ3アドレスが当該移動エージェント装置に登録されていることを確認すると、自身のMACアドレスをARPリクエストに対する応答として前記ユーザ端末に送信することを特徴とする請求項2に記載の通信方法。
【請求項5】
ユーザ端末と、当該ユーザ端末に接続された移動エージェント装置と、前記ユーザ端末のホームネットワークに接続されたホームエージェント装置とを備える通信システムにおいて使用される前記移動エージェント装置であって、
前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスを保持する記憶手段と、
前記ユーザ端末からレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける発信元レイヤ3アドレスが前記記憶手段に登録されている場合に、受信したレイヤ2フレームをカプセリングして前記ホームエージェント装置に送信する手段と、
カプセリングされたレイヤ2フレームを前記ホームエージェント装置から受信し、デカプセリングして当該レイヤ2フレームを取り出し、前記ユーザ端末に送信する手段と
を有することを特徴とする移動エージェント装置。
【請求項6】
ユーザ端末と、当該ユーザ端末に接続された移動エージェント装置と、前記ユーザ端末のホームネットワークに接続されたホームエージェント装置とを備える通信システムにおいて使用される前記移動エージェント装置であって、
前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスを保持する記憶手段と、
前記ユーザ端末からレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける発信元レイヤ3アドレスが前記記憶手段に登録されている場合に、受信したレイヤ2フレームからレイヤ2ヘッダを削除して得たパケットをカプセリングして前記ホームエージェント装置に送信する手段と、
カプセリングされたパケットを前記ホームエージェント装置から受信し、デカプセリングしてパケットを取り出し、前記ユーザ端末に送信する手段と
を有することを特徴とする移動エージェント装置。
【請求項7】
前記移動エージェント装置は、前記ユーザ端末からARPリクエストを受信した場合において、当該ARPリクエストの発信元レイヤ3アドレスが前記記憶手段に登録されている場合に、自身のMACアドレスをARPリクエストに対する応答として前記ユーザ端末に送信することを特徴とする請求項6に記載の移動エージェント装置。
【請求項8】
ユーザ端末と、当該ユーザ端末に接続された移動エージェント装置と、前記ユーザ端末のホームネットワークに接続されたホームエージェント装置とを備える通信システムにおける前記ホームエージェント装置であって、
前記移動エージェント装置から送信される登録要求に基づき、前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスと前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスとを対応付けてアドレス対応表に登録する手段と、
通信相手端末宛のパケットを含むカプセリングされたレイヤ2フレームを前記移動エージェント装置から受信し、デカプセリングして前記レイヤ2フレームを取り出し、当該レイヤ2フレームを前記ホームネットワークのルータに送信する手段と、
前記ホームネットワークからパケットを含むレイヤ2フレームを受信し、当該レイヤ2フレーム内のレイヤ3ヘッダにおける宛先レイヤ3アドレスが前記アドレス対応表に登録されている場合に、当該宛先レイヤ3アドレスに対応付けて登録されている前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスに向けて前記レイヤ2フレームをカプセリングして送信する手段と
を有することを特徴とするホームエージェント装置。
【請求項9】
ユーザ端末と、当該ユーザ端末に接続された移動エージェント装置と、前記ユーザ端末のホームネットワークに接続されたホームエージェント装置とを備える通信システムにおける前記ホームエージェント装置であって、
前記移動エージェント装置から送信される登録要求に基づき、前記ユーザ端末のレイヤ3アドレスと前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスとを対応付けてアドレス対応表に登録する手段と、
カプセリングされた通信相手端末宛のパケットをデカプセリングして当該パケットを取り出し、レイヤ3ヘッダに基づき当該パケットを前記通信相手端末に向けて転送する手段と、
受信したパケットのレイヤ3ヘッダにおける宛先レイヤ3アドレスが前記アドレス対応表に登録されていることを確認し、当該宛先レイヤ3アドレスに対応付けて登録されている前記登録要求の発信元のレイヤ3アドレスに向けて前記パケットをカプセリングして送信する手段と
を有することを特徴とするホームエージェント装置。
【請求項10】
前記ホームエージェント装置は、当該ホームエージェント装置に接続されるべきでない第2の移動エージェント装置の識別情報と、当該第2の移動エージェント装置が接続するべき第2のホームエージェント装置のアドレスとを対応付けてアドレス対応表に保持しており、
前記ホームエージェント装置は、前記第2の移動エージェント装置から送信された登録要求を受信した場合において、前記アドレス対応表を参照して、前記第2のホームエージェント装置のアドレスを含むリダイレクト応答を前記第2の移動エージェント装置に送信することを特徴とする請求項8又は9に記載のホームエージェント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2007−142648(P2007−142648A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−331763(P2005−331763)
【出願日】平成17年11月16日(2005.11.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2005年9月8日 社団法人電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会技術研究報告 信学技報Vol.105 No.278」に発表
【出願人】(397014282)株式会社エヌ・ティ・ティ ピー・シー コミュニケーションズ (5)
【Fターム(参考)】