通信機能付き着衣、内視鏡システム、および位置推定方法
【課題】カプセル型内視鏡の推定位置情報の精度を向上させる。
【解決手段】外部機器と無線通信可能な素子が複数実装されており、素子の各々と通信可能な制御部を備える着衣において、素子が識別情報保持手段と、発信信号を受信する外部信号受信手段と、受信したタイミングを検知し、タイミングに基づいたタイミング信号を生成する信号生成手段と、タイミング信号に該識別情報を関連付けて制御部に送信する送信手段とを有し、制御部が、各素子の位置情報を該識別情報に関連付けて保持する位置情報保持手段と、タイミング信号を受信する受信手段と、該受信したタイミング信号に関連付けられた該識別情報に基づいて送信元素子の位置情報を取得する位置情報取得手段と、該受信されたタイミング信号の各々と、当該の各タイミング信号に対応する該位置情報に基づいて、該外部機器の位置情報を算出する位置算出手段とを有する構成である。
【解決手段】外部機器と無線通信可能な素子が複数実装されており、素子の各々と通信可能な制御部を備える着衣において、素子が識別情報保持手段と、発信信号を受信する外部信号受信手段と、受信したタイミングを検知し、タイミングに基づいたタイミング信号を生成する信号生成手段と、タイミング信号に該識別情報を関連付けて制御部に送信する送信手段とを有し、制御部が、各素子の位置情報を該識別情報に関連付けて保持する位置情報保持手段と、タイミング信号を受信する受信手段と、該受信したタイミング信号に関連付けられた該識別情報に基づいて送信元素子の位置情報を取得する位置情報取得手段と、該受信されたタイミング信号の各々と、当該の各タイミング信号に対応する該位置情報に基づいて、該外部機器の位置情報を算出する位置算出手段とを有する構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部機器と無線通信可能な素子が複数実装されており、該素子の各々と通信可能な制御部を備える通信機能付き着衣に関する。また、このような通信機能付き着衣を備える内視鏡システムに関する。また、カプセル型内視鏡と無線通信可能な素子が複数実装された着衣を用いて、患者の体腔内に投入されたカプセル型内視鏡の位置を推定する位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内を診断するための機器として、可撓性ケーブルの先端に撮像素子を搭載した電子内視鏡が広く知られ実用に供されている。上記電子内視鏡は、撮像素子によって得られた画像信号をホスト機器に送出する。ホスト機器は、当該の画像信号を受け取ると所定の処理を施してモニタに出力する。これによりモニタに患者の体腔内が表示され、術者は、患者の体内を診断することができる。
【0003】
ここで、近年、上記電子内視鏡とは別の形態の、ホスト機器との通信を無線で行うカプセル形状の内視鏡(以下、「カプセル型内視鏡」という)が提案され、国によっては実用化されている。例えば下記特許文献1に、カプセル型内視鏡を備えたシステムの一例が開示されている。
【0004】
下記特許文献1には、カプセル型内視鏡と無線通信するためのホスト側の機器として、複数のアンテナ素子およびデータレコーダを搭載したアンテナアレーベルトが示されている。下記特許文献1によれば、各アンテナ素子がカプセル型内視鏡から発信された信号を受信すると、データレコーダは、それらの信号に基づいて患者の体内の情報を取得すると共にその各々の受信強度を測定する。そして、データレコーダは、その測定結果に基づいてカプセル型内視鏡の位置を推定し、推定結果に応じた処理を実行する。
【特許文献1】特開2003−19111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、患者の体内は、骨や水、脂肪等の種々の物質で構成されており、電波を伝搬させる媒体として一様でない。従って、カプセル型内視鏡からの発信信号の減衰率がカプセル型内視鏡とアンテナ素子との間に介在する体内の構成物質に応じて変化する。このため、カプセル型内視鏡−アンテナ素子間の疑似距離と、受信強度との関係が一定でなくばらついたものとなる。結果として、カプセル型内視鏡の位置によっては上記疑似距離が誤差を多く含むものとなり、この場合、高精度の推定位置情報を得ることができない。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みて、カプセル型内視鏡の推定位置情報の精度を向上させることが可能な通信機能付き着衣、内視鏡システム、および位置推定方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係る通信機能付き着衣は、外部機器と無線通信可能な素子が複数実装されており、素子の各々と通信可能な制御部を備える着衣である。本発明の通信機能付き着衣の素子は、自己の識別情報を保持した識別情報保持手段と、該外部機器から発信された発信信号を受信する外部信号受信手段と、該発信信号を受信したタイミングを検知し、該検知されたタイミングに基づいたタイミング信号を生成する信号生成手段と、該生成されたタイミング信号に該識別情報を関連付けて制御部に送信する送信手段とを有することを特徴としたものである。また、本発明の通信機能付き着衣の制御部は、各素子の位置情報を該識別情報に関連付けて保持する位置情報保持手段と、素子の各々から送信されたタイミング信号を受信する受信手段と、位置情報保持手段から、該受信したタイミング信号に関連付けられた該識別情報に基づいて送信元素子の位置情報を取得する位置情報取得手段と、該受信されたタイミング信号の各々と、当該の各タイミング信号に対応する該位置情報に基づいて、該外部機器の位置情報を算出する位置算出手段とを有することを特徴としたものである。
【0008】
このような構成によれば、外部機器と各素子との疑似距離を電波の伝搬時間に基づいて算出して当該外部機器の位置情報を得ることができる。電波の伝搬速度は、媒体に対する依存性が比較的低い。従って、外部機器からの信号が如何なる場所を通過する場合であっても、外部機器−素子間の疑似距離と、伝搬時間との関係は比較的一定に保たれる。このため上記疑似距離の誤差が小さくなり、結果、外部機器の位置を高い精度で推定することが可能となる。
【0009】
なお、上記信号生成手段は、例えば該検知されたタイミングと所定のタイミングとの時間差を検出し、該検出結果に基づいてタイミング信号を生成する構成であっても良い。
【0010】
上記所定のタイミングは、例えば素子の内部クロックの立ち上がりのタイミングであっても良い。
【0011】
また、上記通信機能付き着衣において、制御部は、例えば素子の各々に所定の信号を配信するように構成されても良い。この場合、素子の内部クロックが制御部からの該所定の信号に基づいて補正され、全ての素子の該内部クロックが同期した状態になる。
【0012】
また、上記通信機能付き着衣において、制御部は、例えば所定の条件を満たす素子を基準素子として設定する基準設定手段を更に備えたものであっても良い。この場合、位置算出手段は、基準素子のタイミング信号と他の素子のタイミング信号の各々とにおける該発信信号の受信タイミングの位相差を算出する。次いで、該算出された位相差に基づいて該外部機器に対する基準素子と他の素子の各々との疑似距離差を算出する。そして、該算出された疑似距離差の各々と、位置情報保持手段に保持された位置情報の各々を用いて該外部機器の位置情報を算出する。
【0013】
また、上記通信機能付き着衣において、素子および制御部は、例えば信号伝送可能なシート上に実装され、各素子間および各素子と制御部との通信が2D−DSTのアルゴリズムに基づいて実施されるよう構成されたものであっても良い。
【0014】
また、上記通信機能付き着衣において、位置算出手段は、例えば受信手段に受信された該タイミング信号が所定数以上であるときには該外部機器の位置情報を算出し、当該タイミング信号が該所定数に満たないときにはエラーと判断して該外部機器の位置情報を算出しないよう構成されたものであっても良い。
【0015】
また、上記通信機能付き着衣は、例えば素子の各々の位置を測定する位置測定手段を更に備えたものであっても良い。この場合、位置情報保持手段は、該測定された位置の情報を各素子の該識別情報に関連付けて保持する。
【0016】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る内視鏡システムは、患者の体腔内に投入され、該患者の体内の情報を無線で発信するカプセル型内視鏡と、上記通信機能付き着衣であって、素子によりカプセル型内視鏡と無線通信する通信機能付き着衣とを備えることを特徴としたシステムである。
【0017】
このような構成によれば、カプセル型内視鏡と各素子との疑似距離を電波の伝搬時間に基づいて算出して当該カプセル型内視鏡の位置情報を得ることができる。電波の伝搬速度は、媒体に対する依存性が比較的低い。従って、カプセル型内視鏡からの信号が如何なる場所を通過する場合であっても、カプセル型内視鏡−素子間の疑似距離と、伝搬時間との関係は比較的一定に保たれる。このため上記疑似距離の誤差が小さくなり、結果、カプセル型内視鏡の位置を高い精度で推定することが可能となる。
【0018】
なお、上記カプセル型内視鏡は、例えば該体腔内を撮像して画像信号を生成する画像信号生成手段を有し、該画像信号を無線で発信するよう構成されたものであっても良い。この場合、素子が有する信号生成手段は、該画像信号を受信するタイミングを検知する。
【0019】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る位置推定方法は、カプセル型内視鏡と無線通信可能な素子が複数実装された着衣を用いて、患者の体腔内に投入されたカプセル型内視鏡の位置を推定する方法である。本発明に係る位置推定方法は、規定位置に設置されたカプセル型内視鏡の送信電力をモニタして第一の信号を発信するタイミングと、素子の各々の受信電力をモニタして素子の各々において該第一の信号が受信されるタイミングとを検知するタイミング検知ステップと、該検知結果に基づいて該規定位置と素子の各々との疑似距離を算出する疑似距離算出ステップと、該算出された疑似距離に基づいて素子の各々の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、該体腔内に投入されたカプセル型内視鏡から素子の各々が第二の信号を受信してその受信タイミングを検知する受信タイミング検知ステップと、該検知された受信タイミングに関する情報を収集するタイミング情報収集ステップと、該収集された受信タイミングに関する情報と各素子の位置情報に基づいて、カプセル型内視鏡の位置情報を算出する位置算出ステップとを含む方法である。
【0020】
このような方法によれば、カプセル型内視鏡と各素子との疑似距離を電波の伝搬時間に基づいて算出して当該カプセル型内視鏡の位置情報を得ることができる。電波の伝搬速度は、媒体に対する依存性が比較的低い。従って、カプセル型内視鏡からの信号が如何なる場所を通過する場合であっても、カプセル型内視鏡−素子間の疑似距離と、伝搬時間との関係は比較的一定に保たれる。このため上記疑似距離の誤差が小さくなり、結果、カプセル型内視鏡の位置を高い精度で推定することが可能となる。また、上記方法によれば、患者の体型に依存して変わる各素子の位置の情報をカプセル型内視鏡投入前に予め取得できるため、カプセル型内視鏡の推定位置情報の精度が更に向上する。また、上記方法によれば、各素子の位置情報をカプセル型内視鏡を利用して取得することができる。従って、各素子の位置を測定するために専用の機器を用意する必要がなくコスト面でメリットがある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カプセル型内視鏡の推定位置情報の精度を向上させることが可能な通信機能付き着衣、内視鏡システム、および位置推定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の内視鏡システムについて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態の内視鏡システム10の構成を示したブロック図である。図1に示されるように、内視鏡システム10は、カプセル型内視鏡100、アンテナ付きジャケット200、およびモニタ付きPC(Personal Computer)を含む外部処理システム300を備える。術者は、本実施形態の内視鏡システム10を用いることにより、患者1の体内の様相を観察・診断することができる。
【0024】
図2に、カプセル型内視鏡100の構成をブロック図で示す。図2を参照して、カプセル型内視鏡100の構成およびその機能について説明する。
【0025】
図2に示されるように、カプセル型内視鏡100は、患者1の体腔内に投入されるカプセル形状の内視鏡である。カプセル型内視鏡100は、電源部102、制御部104、メモリ106、2つの照明部108、対物光学系110、固体撮像素子112、送受信部114、およびアンテナ部116を備える。
【0026】
電源部102は、各構成要素に電源を供給する内蔵バッテリである。制御部104は、各構成要素を統括的に制御するためのICチップである。メモリ106は、各種データやプログラムを格納する記憶媒体である。照明部108は、体腔内を照明する光源である。対物光学系110は、体腔内を観察するための対物レンズである。固体撮像素子112は、体腔内を撮像するものであり、例えばCCD(Charge Coupled Devices)やC−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)である。送受信部114は、外部機器との間で通信を行うための通信インターフェースである。アンテナ部116は、電波を送受信するためのエレメントである。
【0027】
カプセル型内視鏡100は、電源がオンされて患者1の体腔内に投入されると、照明部108によって当該の体腔内を照明する。体腔内の壁部等で反射された光は、対物光学系110に入射して像を結ぶ。
【0028】
固体撮像素子112は、その受光面が対物光学系110の像側焦点面上に位置するように設置されている。従って、対物光学系110のパワーにより結像した光は、固体撮像素子112に受光される。固体撮像素子112は、受光した光を光電変換して画像信号を生成する。
【0029】
送受信部114は、生成された画像信号を変調して、アンテナ部116を介して外部に発信する。アンテナ部116から発信された画像信号は、アンテナ付きジャケット200に受信される。
【0030】
次に、アンテナ付きジャケット200について説明する。
【0031】
アンテナ付きジャケット200は、体内を診断するために患者1に着用させるジャケットであり、例えば特開2004−328409号公報や、特開2005−245937号公報、非特許文献(株式会社セルクロス、[平成19年1月検索]、インターネット、〈http://www.cellcross.co.jp/technology.html〉)等に開示された2D−DST(2 Dimension- Diffusive Signal-Transmission)を実行可能に構成されている。これらの刊行物に記載されるように、2D−DSTテクノロジでは、シート上に散在された複数の素子(以下、「DSTチップ」という)の各々が、信号の中継点となり、当該の信号を目的地に向けてパケットで伝送する。
【0032】
図1に示されるように、アンテナ付きジャケット200には、DSTチップ230がその全域に渡ってマトリクス状に配置されている。DSTチップ230は、2D−DSTを実行するためのチップであり、他の素子と通信するのに有線ケーブルや銅箔のパターンを必要としない。従って、アンテナ付きジャケット200では、DSTチップ230を高い自由度で配置することが可能であると共に、その柔軟性や耐久性が通常の衣服に比べて遜色のないものとなっている。また、DSTチップ230は、微小なサイズで構成されたチップであることから高密度実装が可能となっている。
【0033】
図3に、図1のA−A断面図を示す。A−A断面図は、DSTチップ230を含む、アンテナ付きジャケット200の側断面図である。図3に示されるように、アンテナ付きジャケット200は、二つの信号層(信号層210およびグランド層212)、これらの信号層を互いに絶縁するための絶縁層214、およびこれらの信号層と外部とを絶縁するための絶縁層216および218の計五つの層から構成されている。これらの層は、絶縁層216、グランド層212、絶縁層214、信号層210、絶縁層218の順に積層されている。DSTチップ230は、グランド層212および絶縁層214に跨るように、これらの層構造内に埋設されている。なお、アンテナ付きジャケット200の積層構造には種々の形態があり、例えば各DSTチップ230に電源を供給するための層が独立したものもある。
【0034】
なお、信号層210およびグランド層212は、例えば導電ゴムや導電体が織り込まれた布等で構成されており、柔軟性および導電性を有する。また、絶縁層214、216、および218は、例えば絶縁ゴムや絶縁フィルム、絶縁性を有した布等で構成されており、柔軟性および絶縁性を有する。各DSTチップ230は、グランド層212により接地されており、信号層210を媒体として他の素子に信号を伝送することができる。
【0035】
図4に、DSTチップ230の構成をブロック図で示す。図4に示されるように、DSTチップ230は、制御部231、アンテナ232、送受信部233、メモリ234、および通信部235を備える。DSTチップ230は、これらの構成要素を用いて所定の機能を達成する。
【0036】
DSTチップ230で達成される機能は、大別すると2つある。1つは通信機能である。通信機能は、制御部231と送受信部233が連携して動作することにより達成される。具体的には、送受信部233が、制御部231の制御下でアンテナ232を介してカプセル型内視鏡100と通信する。これにより、例えばDSTチップ230からカプセル型内視鏡100に電源が供給され、カプセル型内視鏡100からDSTチップ230には上記画像信号が受け渡される。制御部231は、カプセル型内視鏡100からの画像信号をメモリ234に一時的に保持させる。
【0037】
DSTチップ230で達成されるもう1つの機能は、2D−DSTを実行する機能である。この機能は、制御部231、メモリ234、および通信部235が連携して動作することにより達成される。メモリ234は、例えば2D−DSTを実行するためのアルゴリズムや自己のアドレス等を記憶している。通信部235は、各DSTチップ230を接続する通信インターフェースである。制御部231は、上記アルゴリズムを実行させて2D−DSTを行い、通信部235を介して上記画像信号を他のDSTチップ230に伝送する。各DSTチップ230において2D−DSTが実行されることにより、上記画像信号は、所定の目的地に向けて伝送されていく。ここで、本実施形態における所定の目的地とは、制御ユニット220のことである。
【0038】
制御ユニット220について説明する。図1に示されるように、制御ユニット220は、アンテナ付きジャケット200に備えられる。図5に、制御ユニット220の構成をブロック図で示す。制御ユニット220は、制御部221、電源222、通信部223、メモリ224、信号処理部225、およびインターフェース部226を備える。
【0039】
制御ユニット220は、各DSTチップ230に対する統括的な制御を実行する。これは、制御部221、電源222、通信部223、およびメモリ224が連携して動作することにより達成される。制御部221は、制御ユニット220の統括的な制御を実行する。通信部223は、制御ユニット220をDSTチップ230と通信させるための通信インターフェースである。メモリ224は、例えば2D−DSTを実行するためのアルゴリズムや各種データを格納したものである。制御部221は上記アルゴリズムを実行し、通信部223を制御してDSTチップ230と通信する。そして、当該の通信において、各DSTチップ230に対してアドレスを割り当てたり上記画像信号を伝送する経路の情報を提供したりする。また、制御部221は、電源222からの駆動電流を、信号層210を介して各DSTチップ230に供給する。
【0040】
また、制御ユニット220は、DSTチップ230からの伝送信号、すなわち画像信号を処理して所定の形式のビデオ信号を生成する。そして、生成されたビデオ信号を外部処理システム300に出力する。これは、制御部221、信号処理部225、およびインターフェース部226が連携して動作することにより達成される。信号処理部225は、制御部221の制御下で上記画像信号に所定の処理を施して、外部処理システム300で表示可能なビデオ信号に変換する。信号処理部225により生成されたビデオ信号は、インターフェース部226を介して外部処理システム300に出力される。
【0041】
外部処理システム300は例えば周知のPCであり、制御ユニット220からのビデオ信号を用いて患者1の体腔内の様相をモニタに表示させたり、解析処理を行ってその解析結果をモニタに表示させたりすることができる。なお、ここでいう解析とは、例えば上記ビデオ信号から得られる画像情報に基づいて、体腔内の表面形状や画像情報の色成分毎の分布等を分析し、通常状態(正常部分)と異なる状態の部分を抽出することを示す。これにより、大量に取得された画像情報に基づき、異常がありそうな部分の候補を予めピックアップすることができ、診断の高速化等が可能となる。
【0042】
ここで、本実施形態のアンテナ付きジャケット200では、各DSTチップ230で受信された画像信号に基づいてカプセル型内視鏡100の位置を推定することが可能である。以下、これについて詳説する。
【0043】
カプセル型内視鏡100の位置を推定する処理(以下、「位置推定処理」という)を実行するためには、先ず、各DSTチップ230の座標情報を診断前に測定する必要がある。これは、アンテナ付きジャケット200が患者の身体にフィットするように着用されており、患者の体型に依存して各DSTチップ230の位置関係が変わるためである。図6に、各DSTチップ230の座標情報を測定する処理(以下、「チップ位置測定処理」という)を説明するための図を示す。また、図7に、チップ位置測定処理のフローチャートを示す。チップ位置測定処理は、制御ユニット220により実行される。
【0044】
なお、チップ位置測定処理の対象はアンテナ付きジャケット200に実装された全てのDSTチップ230であるが、ここでは図面を分かり易くするため、2つのDSTチップ(より正確には2つのDSTチップの位置)のみを図示して説明を行うものとする。また、実際のチップ位置測定処理はDSTチップ230の三次元の座標情報を測定するものであるが、図6では図面を明瞭にするため、二次元の座標情報を説明する内容に留まる。また、図6において、点A、Bのそれぞれに1つのDSTチップ230が位置するものとする。説明の便宜上、点A、Bに位置するDSTチップ230に対してそれぞれ「DSTチップ230A」、「DSTチップ230B」の符番を記す。以降の段落および図面においても同様のルールで符番を記す。
【0045】
先ず、患者1を例えば診察台等に寝かせた後(すなわち患者1の姿勢を診断時の状態にさせた後)、術者は、所定の発信源を規定位置P1に設置する。所定の発信源は、制御ユニット220と通信可能な機器であり、リファレンス信号を発信する機能を有する。所定の発信源は、ユーザ・オペレーションに呼応して、或いは所定のタイミング毎にリファレンス信号を発信する。
【0046】
なお、所定の発信源は、例えば各DSTチップ230の位置を測定するための専用の機器であっても良く、或いはカプセル型内視鏡100そのものであっても良い。後者の場合、専用の機器を用意する必要がなく、コスト面でメリットがある。また、規定位置P1、および後述するその他の規定位置は、制御ユニット220にとって既知の位置であるものとする。
【0047】
図7に示されるように、制御ユニット220は、所定の発信源がリファレンス信号を発信する発信タイミングと、各DSTチップ230がそのリファレンス信号を受信する受信タイミングをモニタする(ステップ1、以下、明細書及び図面においてステップを「S」と略記)。
【0048】
具体的には、S1の処理において制御ユニット220は、所定の発信源の送信電力と各DSTチップ230の受信電力をモニタし、送信電力が第一の閾値以上となった時点の情報を上記発信タイミング、受信電力が第二の閾値以上となった時点の情報を上記受信タイミングとして取得する。次いで、取得された各タイミングの情報に基づいて、所定の発信源から各DSTチップ230へのリファレンス信号の伝搬時間を算出する。なお、制御ユニット220は、各DSTチップ230から上記受信タイミングの情報と共にアドレスも取得する。制御ユニット220は、各DSTチップ230のアドレスを取得することにより、各受信タイミングが何れのDSTチップ230のものであるかを識別することができる。
【0049】
制御ユニット220は、各伝搬時間を算出すると、その算出結果に基づいて所定の発信源と各DSTチップ230との疑似距離を算出する(S2)。これにより、図6(a)に示されるように、DSTチップ230Aは、規定位置P1から疑似距離dAだけ離れた円周CA上に位置することが分かる。また、DSTチップ230Bは規定位置P1から疑似距離dBだけ離れた円周CB上に位置することが分かる。
【0050】
次に、術者は、所定の発信源を規定位置P2に設置する。そして、制御ユニット220により、上記と同様に、所定の発信源と各DSTチップ230のタイミングがモニタされ(S3)、次いで、そのモニタ結果に基づいて疑似距離が算出される(S4)。これにより、図6(b)に示されるように、制御ユニット220は、DSTチップ230Aの位置が、円周CAと、規定位置P2から疑似距離dA’だけ離れた円周CA’との交点、すなわち点A又は点A’の何れかであることを算出結果から得る。また、DSTチップ230Bの位置が、円周CBと、規定位置P2から疑似距離dB’だけ離れた円周CB’との交点、すなわち点B又は点B’の何れかであることを算出結果から得る。
【0051】
ここで、点A又は点A’(および点B又は点B’)の何れか一方がアンテナ付きジャケット200上の位置を示し、もう一方がアンテナ付きジャケット200から明らかに離れた位置を示すものとなる。ここでは、点AおよびBがアンテナ付きジャケット200上の位置を示し、点A’およびB’がアンテナ付きジャケット200とは明らかに離れた位置を示すものとする。この場合、制御ユニット220は、点A’およびB’の位置情報を切り捨てて、DSTチップ230A、230Bそれぞれの位置を点A、Bに特定する(S5)。
【0052】
制御ユニット220は、S5の処理に次いで、各DSTチップ230の位置情報を所定の座標系に適合させるよう、周知の座標変換処理を施して(S6)、チップ位置測定処理を終了させる。
【0053】
以上説明した処理により、制御ユニット220は、全てのDSTチップ230の座標情報を取得する。なお、取得された各座標情報は、対応するアドレスと関連付けられて例えばメモリ224に保存される。
【0054】
なお、三次元の座標情報を求めるためには、所定の発信源を更に別の規定位置に設置して、S1および2(又はS3および4)と同様の処理を実行すれば良い。この場合、制御ユニット220は、更に得られる疑似距離に基づいて各DSTチップ230の位置を三次元空間内の2点に絞り込むことができる。制御ユニット220は、ここでもアンテナ付きジャケット200とは明らかに離れた位置の情報を切り捨てることにより、各DSTチップ230の位置を一点に特定することができる。
【0055】
なお、S5の処理の代替として、S1および2(又はS3および4)と同様の処理を更にもう一回実行することにより、各DSTチップ230の位置を2点から1点に絞り込むことができる。
【0056】
また、上記実施形態では所定の発信源を各規定位置に順々に設置しているが、別の実施の形態では、所定の発信源が各規定位置に予め設置されていても良い。この場合、所定の発信源を設置する作業が省略されるため、チップ位置測定処理が迅速に実行されるようになる。
【0057】
チップ位置測定処理が完了して各DSTチップ230の位置が測定されると、カプセル型内視鏡100が患者1の体腔内に投入されて診断が開始される。そして診断開始と共に位置推定処理も実行される。図8に、各DSTチップ230で実行されるチップ側位置推定処理のフローチャートを示す。また、図9に、制御ユニット220で実行されるユニット側位置推定処理のフローチャートを示す。本実施形態では、各DSTチップ230と制御ユニット220が連携して動作することより、カプセル型内視鏡100の推定位置を得ることができる。
【0058】
本実施形態では、各DSTチップ230の内部クロックを利用してカプセル型内視鏡100の推定位置情報を取得する。従って、より精度の高い推定位置情報を得るためには各内部クロックの同期が取れていることが望ましい。しかし、内部クロックには個体差がある。このため、各内部クロックは、通常は同期が取れてない状態にあり、また、同期が取れていても時間の経過と共に徐々にずれる。本実施形態では、上記問題を解消するため、以下に説明されるクロック調整信号を用いて各DSTチップ230の内部クロックのタイミングを定期的に同期させる。
【0059】
図9に示されるように、制御ユニット220は、自己に内蔵された第一のカウンタ(不図示)を参照して、クロック調整信号を送信するタイミングか否かを判定する(S21)。そして、第一のカウンタのカウント値が所定値であるとき、クロック調整信号を送信するタイミングであると判定する(S21:YES)。次いで、各DSTチップ230にクロック調整信号を送信する(S22)。なお、第一のカウンタは、図9のユニット側位置推定処理実行中は常にカウントアップされ、当該のユニット側位置推定処理開始時およびリターン時にリセットされる。
【0060】
図8に示されるように、各DSTチップ230は、制御ユニット220からのクロック調整信号を受信したか否かを判定する(S11)。そして、クロック調整信号を受信したと判定した場合には(S11:YES)、受信したクロック調整信号に基づいて内部クロック(より正確には制御部231の内部クロック)を調整して(S12)、S13の処理に進む。また、DSTチップ230は、クロック調整信号を受信していないと判定した場合には(S11:NO)、S12の処理を実行することなくS13の処理に進む。
【0061】
ここで、図10に、クロック調整信号と、各DSTチップ230の内部クロックとの関係を示す。図10では、DSTチップ230A、230B、230Cの3つのDSTチップを代表して示す。また、図10において縦軸が振幅を示し、横軸が時間を示す。また、図10(a)がクロック調整信号の波形を示し、図10(b)、(c)、(d)がそれぞれ、DSTチップ230A、230B、230Cの内部クロックの波形を示す。
【0062】
なお、各DSTチップ230は、制御ユニット220からの距離がそれぞれ異なる。従って、各DSTチップ230において信号伝送の遅延量がそれぞれ異なる。本実施形態では、各DSTチップ230が自己に対応する遅延量のオフセット値を予め保持し、当該のオフセット値を参照して各種処理を実行するものとする。以降の段落では、説明の煩雑さを避けるため、遅延量がオフセットされている前提で(すなわち遅延量を考慮せず)、各処理についての説明を行う。
【0063】
図10の時刻T1は、各DSTチップ230がクロック調整信号を受信したタイミングである。図10(b)乃至(d)に示されるように、時刻T1以前は、各内部クロックの個体差が原因で同期が取れていない状態にある。しかし、時刻T1に各DSTチップ230でクロック調整信号が受信されると、各DSTチップ230は、内部クロックとクロック調整信号の両方の立ち上がりのタイミングを一致させるようにクロック補正を行う。これにより、各DSTチップ230の内部クロックは同期の取れた状態となる。
【0064】
なお、第一のカウンタにおける上記所定値は、各内部クロックのずれ量が所定の許容範囲を超えないように考慮された値である。従って、各内部クロックは、互いのずれ量が所定の許容範囲を超える前に補正される。この結果、各内部クロックは、実質的に常に同期が取れた状態となる。
【0065】
カプセル型内視鏡100は、患者1の体腔内に投入された後、所定の信号を定期的に発信している。図8に示されるように、各DSTチップ230は、内部クロックの同期が取れている状態で該所定の信号を受信待機する(S13)。なお、ここでいう所定の信号とは、例えば上記画像信号であっても良く、或いは位置推定処理用のリファレンス信号であっても良い。
【0066】
各DSTチップ230は、カプセル型内視鏡100から該所定の信号を受信すると(S13:YES)、その受信タイミングと内部クロックとを比較して位相差を検出する。具体的には、DSTチップ230は内部クロックよりも高い別のクロックを生成し、当該クロックをカウントして受信タイミングと内部クロックとを比較し、その位相差検出を行う。次いで、検出された位相差の情報と自己のアドレスとを関連付けた信号を生成する(S14、なお、ここで生成された信号を「位相差信号」という)。各DSTチップ230は、生成した位相差信号を制御ユニット220に向けて伝送し(S15)、図8のチップ側位置推定処理をリターンする。
【0067】
図11は、各DSTチップ230で検出される位相差を説明するための図である。図11(a)、(b)、(c)にはそれぞれ、DSTチップ230A、230B、230Cの該所定の信号の受信電力と内部クロックとの関係が示される。図11において縦軸が振幅を示し、横軸が時間を示す。また、図11(a)、(b)、(c)の各々において上段が内部クロックを示し、下段が該所定の信号の受信電力を示す。
【0068】
図11に示されるように、上記位相差は、内部クロックの立ち上がりのタイミングと、該所定の信号の受信開始時の立ち上がりのタイミングとの位相の差である。DSTチップ230A、230B、230Cはそれぞれ、位相差pda、pdb、pdcを検出する。なお、内部クロックは、全てのDSTチップ230が時間的に同一の周期内に該所定の信号を受信するよう、その周期が十分に長く設定されている。
【0069】
制御ユニット220は、1つの位相差信号を受信する毎に第二のカウンタ(不図示)を1インクリメントする。そして、図9に示されるように、上記カウンタを参照してn個以上の位相差信号を受信したか否か(すなわち上記カウンタのカウント値がn以上か否か)を所定のタイミング毎に判定する(S23)。なお、ここでの所定のタイミングは、同じDSTチップ230から位相差信号を複数回受信することのないように設定されたタイミングである。従って、nは、位相差信号の発信元のDSTチップ230の数と必ず一致する。
【0070】
制御ユニット220は、受信した位相差信号がn個以上であると判定した場合には(S23:YES)、S24の位置算出処理を実行する。一方、受信した位相差信号がn個に満たないと判定した場合には(S23:NO)、図9のユニット側位置推定処理がエラーであると判断して(S25)、当該のユニット側位置推定処理をリターンする。なお、上記カウンタは、ユニット側位置推定処理がリターンされると「0」にリセットされる。また、上記nは、三次元の推定位置情報を得る場合には例えば「4」である。
【0071】
図12は、S24の位置算出処理を説明するための図である。S24の処理において制御ユニット220は、受信した各位相差信号に基づいてカプセル型内視鏡100の現在の推定位置を算出する。なお、実際の位置算出処理は三次元位置を算出するものであるが、図12では図6と同様に、二次元位置を説明する内容に留まる。図12を参照して、S24の位置算出処理について説明する。
【0072】
S24の処理において制御ユニット220は、先ず、所定の条件を満たすDSTチップ230を基準チップに設定する。本実施形態では、DSTチップ230Aが基準チップとして設定されるものとする。なお、ここでいう所定の条件には、例えば規定のDSTチップ230であること、制御ユニット220に最初に受信された位相差信号に対応するDSTチップ230であること、受信強度が最も高いDSTチップ230であること等がある。なお、最後に挙げた条件の場合、例えば上記位相差信号に受信強度の情報を関連付ける必要がある。
【0073】
制御ユニット220は、基準チップ設定に次いで、基準チップと各DSTチップ230の位相差信号および座標情報に基づいてカプセル型内視鏡100が位置し得る仮想的な双曲線を求める。図12(a)に、DSTチップ230Aと230Bの位相差信号に基づいて得られる双曲線h1を示す。図12(b)に、DSTチップ230Aと230Cの位相差信号に基づいて得られる双曲線h2を示す。双曲線h1は、点A、Bからの距離の差が一定となる点の軌跡である。また、双曲線h2は、点A、Cからの距離の差が一定となる点の軌跡である。
【0074】
詳細には、制御ユニット220は、位相差pdaとpdbの差分(すなわちDSTチップ230Aにカプセル型内視鏡100からの電波が到来した時刻と、DSTチップ230Bに当該の電波が到来した時刻との差)を疑似距離に変換して、カプセル型内視鏡100からDSTチップ230Aまでの距離と、カプセル型内視鏡100からDSTチップ230Bまでの距離との差を算出する。次いで、DSTチップ230Aと230Bの座標情報および上記距離差に基づいて第一の関数、すなわち双曲線h1を取得する。また、制御ユニット220は、DSTチップ230Aと230Cとに対しても同様の処理を行い、第二の関数すなわち双曲線h2を取得する。
【0075】
カプセル型内視鏡100は、双曲線h1上に位置し、且つ双曲線h2上にも位置する。すなわちカプセル型内視鏡100は、交点P’1又はP’2の何れかに位置する。ここで、通常、一方の交点の座標情報が患者1の体腔内に位置を示し、もう一方の交点の座標情報が患者1から明らかに離れた位置を示すものとなる。制御ユニット220は、カプセル型内視鏡100が患者1の体腔内に位置することから、後者の座標情報を除外する。そして、前者の座標情報をカプセル型内視鏡100の現在の推定位置情報として取得して、図9のユニット側位置推定処理をリターンする。
【0076】
制御ユニット220は、ユニット側位置推定処理で取得した推定位置情報を外部処理システム300に送信する。外部処理システム300は、受信した推定位置情報を用いて各種処理を実行する。
【0077】
なお、カプセル型内視鏡100の三次元の推定位置情報を取得するためには、DSTチップ230Aと更に別のDSTチップ230の双曲線を求めれば良い。この場合、制御ユニット220は、双曲線h1、h2、および更に得られる双曲線に基づいて、カプセル型内視鏡100の推定位置を三次元空間内の2点に絞り込むことができる。制御ユニット220は、ここでも患者1とは明らかに離れた交点の座標情報を切り捨てることにより、カプセル型内視鏡100の推定位置を一点に特定することができる。
【0078】
以上のように本実施形態においては、カプセル型内視鏡100と各DSTチップ230との疑似距離を算出するのに電波の伝搬時間を採用している。電波の伝搬速度は、媒体に対する依存性が比較的低い。従って、カプセル型内視鏡100からの発信信号が体内の如何なる場所を通過する場合であっても、カプセル型内視鏡100−DSTチップ230間の疑似距離と、伝搬時間との関係は比較的一定に保たれる。このため上記疑似距離の誤差が小さくなり、結果、カプセル型内視鏡100の位置を高い精度で推定することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態においては、診断に先立って図7のチップ位置測定処理を実行する。これにより、上述したように、各DSTチップ230の高精度な位置情報を用いてカプセル型内視鏡100の位置推定処理を実行することができる。このため、カプセル型内視鏡100の位置をより高い精度で推定することが可能となる。
【0080】
以上が本発明の実施の形態である。本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。例えば図7のチップ位置測定処理の対象は、本実施形態のように全てのDSTチップ230でなくても良く、特定のDSTチップ230のみであっても良い。
【0081】
図9のS23の処理における位相差信号の受信数が多ければ多いほど、より多くの双曲線を求めることができる。また、S24の処理において位置推定を算出するのに用いる双曲線が多ければ多いほど、疑似距離の誤差を低減させて高精度の推定位置を得ることが可能となる。従って、各DSTチップ230の受信状態が良好な場合は、全てのDSTチップ230の位相差信号を用いてカプセル型内視鏡100の推定位置情報を算出するようにしても良い。
【0082】
また、図10ではクロック調整信号と各内部クロックの周波数が同一であるが、クロック調整信号の周波数はこれに限定されない。クロック調整信号の周波数は、一周期が全DSTチップ230中の最も長い遅延時間(最も大きな遅延量)よりも長い周波数であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態の内視鏡システムの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態のカプセル型内視鏡の構成を示したブロック図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施の形態のDSTチップの構成を示したブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態の制御ユニットの構成を示したブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態において制御ユニットが実行するチップ位置測定処理を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態において制御ユニットが実行するチップ位置測定処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態においてDSTチップが実行するチップ側位置推定処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態において制御ユニットが実行するユニット側位置推定処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態のクロック調整信号と、各DSTチップの内部クロックとの関係を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態のDSTチップで検出される位相差を説明するための図である。
【図12】図9のS24の位置算出処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0084】
100 カプセル型内視鏡
200 アンテナ付きジャケット
230 DSTチップ
300 外部処理システム
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部機器と無線通信可能な素子が複数実装されており、該素子の各々と通信可能な制御部を備える通信機能付き着衣に関する。また、このような通信機能付き着衣を備える内視鏡システムに関する。また、カプセル型内視鏡と無線通信可能な素子が複数実装された着衣を用いて、患者の体腔内に投入されたカプセル型内視鏡の位置を推定する位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の体内を診断するための機器として、可撓性ケーブルの先端に撮像素子を搭載した電子内視鏡が広く知られ実用に供されている。上記電子内視鏡は、撮像素子によって得られた画像信号をホスト機器に送出する。ホスト機器は、当該の画像信号を受け取ると所定の処理を施してモニタに出力する。これによりモニタに患者の体腔内が表示され、術者は、患者の体内を診断することができる。
【0003】
ここで、近年、上記電子内視鏡とは別の形態の、ホスト機器との通信を無線で行うカプセル形状の内視鏡(以下、「カプセル型内視鏡」という)が提案され、国によっては実用化されている。例えば下記特許文献1に、カプセル型内視鏡を備えたシステムの一例が開示されている。
【0004】
下記特許文献1には、カプセル型内視鏡と無線通信するためのホスト側の機器として、複数のアンテナ素子およびデータレコーダを搭載したアンテナアレーベルトが示されている。下記特許文献1によれば、各アンテナ素子がカプセル型内視鏡から発信された信号を受信すると、データレコーダは、それらの信号に基づいて患者の体内の情報を取得すると共にその各々の受信強度を測定する。そして、データレコーダは、その測定結果に基づいてカプセル型内視鏡の位置を推定し、推定結果に応じた処理を実行する。
【特許文献1】特開2003−19111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、患者の体内は、骨や水、脂肪等の種々の物質で構成されており、電波を伝搬させる媒体として一様でない。従って、カプセル型内視鏡からの発信信号の減衰率がカプセル型内視鏡とアンテナ素子との間に介在する体内の構成物質に応じて変化する。このため、カプセル型内視鏡−アンテナ素子間の疑似距離と、受信強度との関係が一定でなくばらついたものとなる。結果として、カプセル型内視鏡の位置によっては上記疑似距離が誤差を多く含むものとなり、この場合、高精度の推定位置情報を得ることができない。
【0006】
そこで、本発明は上記の事情に鑑みて、カプセル型内視鏡の推定位置情報の精度を向上させることが可能な通信機能付き着衣、内視鏡システム、および位置推定方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一態様に係る通信機能付き着衣は、外部機器と無線通信可能な素子が複数実装されており、素子の各々と通信可能な制御部を備える着衣である。本発明の通信機能付き着衣の素子は、自己の識別情報を保持した識別情報保持手段と、該外部機器から発信された発信信号を受信する外部信号受信手段と、該発信信号を受信したタイミングを検知し、該検知されたタイミングに基づいたタイミング信号を生成する信号生成手段と、該生成されたタイミング信号に該識別情報を関連付けて制御部に送信する送信手段とを有することを特徴としたものである。また、本発明の通信機能付き着衣の制御部は、各素子の位置情報を該識別情報に関連付けて保持する位置情報保持手段と、素子の各々から送信されたタイミング信号を受信する受信手段と、位置情報保持手段から、該受信したタイミング信号に関連付けられた該識別情報に基づいて送信元素子の位置情報を取得する位置情報取得手段と、該受信されたタイミング信号の各々と、当該の各タイミング信号に対応する該位置情報に基づいて、該外部機器の位置情報を算出する位置算出手段とを有することを特徴としたものである。
【0008】
このような構成によれば、外部機器と各素子との疑似距離を電波の伝搬時間に基づいて算出して当該外部機器の位置情報を得ることができる。電波の伝搬速度は、媒体に対する依存性が比較的低い。従って、外部機器からの信号が如何なる場所を通過する場合であっても、外部機器−素子間の疑似距離と、伝搬時間との関係は比較的一定に保たれる。このため上記疑似距離の誤差が小さくなり、結果、外部機器の位置を高い精度で推定することが可能となる。
【0009】
なお、上記信号生成手段は、例えば該検知されたタイミングと所定のタイミングとの時間差を検出し、該検出結果に基づいてタイミング信号を生成する構成であっても良い。
【0010】
上記所定のタイミングは、例えば素子の内部クロックの立ち上がりのタイミングであっても良い。
【0011】
また、上記通信機能付き着衣において、制御部は、例えば素子の各々に所定の信号を配信するように構成されても良い。この場合、素子の内部クロックが制御部からの該所定の信号に基づいて補正され、全ての素子の該内部クロックが同期した状態になる。
【0012】
また、上記通信機能付き着衣において、制御部は、例えば所定の条件を満たす素子を基準素子として設定する基準設定手段を更に備えたものであっても良い。この場合、位置算出手段は、基準素子のタイミング信号と他の素子のタイミング信号の各々とにおける該発信信号の受信タイミングの位相差を算出する。次いで、該算出された位相差に基づいて該外部機器に対する基準素子と他の素子の各々との疑似距離差を算出する。そして、該算出された疑似距離差の各々と、位置情報保持手段に保持された位置情報の各々を用いて該外部機器の位置情報を算出する。
【0013】
また、上記通信機能付き着衣において、素子および制御部は、例えば信号伝送可能なシート上に実装され、各素子間および各素子と制御部との通信が2D−DSTのアルゴリズムに基づいて実施されるよう構成されたものであっても良い。
【0014】
また、上記通信機能付き着衣において、位置算出手段は、例えば受信手段に受信された該タイミング信号が所定数以上であるときには該外部機器の位置情報を算出し、当該タイミング信号が該所定数に満たないときにはエラーと判断して該外部機器の位置情報を算出しないよう構成されたものであっても良い。
【0015】
また、上記通信機能付き着衣は、例えば素子の各々の位置を測定する位置測定手段を更に備えたものであっても良い。この場合、位置情報保持手段は、該測定された位置の情報を各素子の該識別情報に関連付けて保持する。
【0016】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る内視鏡システムは、患者の体腔内に投入され、該患者の体内の情報を無線で発信するカプセル型内視鏡と、上記通信機能付き着衣であって、素子によりカプセル型内視鏡と無線通信する通信機能付き着衣とを備えることを特徴としたシステムである。
【0017】
このような構成によれば、カプセル型内視鏡と各素子との疑似距離を電波の伝搬時間に基づいて算出して当該カプセル型内視鏡の位置情報を得ることができる。電波の伝搬速度は、媒体に対する依存性が比較的低い。従って、カプセル型内視鏡からの信号が如何なる場所を通過する場合であっても、カプセル型内視鏡−素子間の疑似距離と、伝搬時間との関係は比較的一定に保たれる。このため上記疑似距離の誤差が小さくなり、結果、カプセル型内視鏡の位置を高い精度で推定することが可能となる。
【0018】
なお、上記カプセル型内視鏡は、例えば該体腔内を撮像して画像信号を生成する画像信号生成手段を有し、該画像信号を無線で発信するよう構成されたものであっても良い。この場合、素子が有する信号生成手段は、該画像信号を受信するタイミングを検知する。
【0019】
また、上記の課題を解決する本発明の一態様に係る位置推定方法は、カプセル型内視鏡と無線通信可能な素子が複数実装された着衣を用いて、患者の体腔内に投入されたカプセル型内視鏡の位置を推定する方法である。本発明に係る位置推定方法は、規定位置に設置されたカプセル型内視鏡の送信電力をモニタして第一の信号を発信するタイミングと、素子の各々の受信電力をモニタして素子の各々において該第一の信号が受信されるタイミングとを検知するタイミング検知ステップと、該検知結果に基づいて該規定位置と素子の各々との疑似距離を算出する疑似距離算出ステップと、該算出された疑似距離に基づいて素子の各々の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、該体腔内に投入されたカプセル型内視鏡から素子の各々が第二の信号を受信してその受信タイミングを検知する受信タイミング検知ステップと、該検知された受信タイミングに関する情報を収集するタイミング情報収集ステップと、該収集された受信タイミングに関する情報と各素子の位置情報に基づいて、カプセル型内視鏡の位置情報を算出する位置算出ステップとを含む方法である。
【0020】
このような方法によれば、カプセル型内視鏡と各素子との疑似距離を電波の伝搬時間に基づいて算出して当該カプセル型内視鏡の位置情報を得ることができる。電波の伝搬速度は、媒体に対する依存性が比較的低い。従って、カプセル型内視鏡からの信号が如何なる場所を通過する場合であっても、カプセル型内視鏡−素子間の疑似距離と、伝搬時間との関係は比較的一定に保たれる。このため上記疑似距離の誤差が小さくなり、結果、カプセル型内視鏡の位置を高い精度で推定することが可能となる。また、上記方法によれば、患者の体型に依存して変わる各素子の位置の情報をカプセル型内視鏡投入前に予め取得できるため、カプセル型内視鏡の推定位置情報の精度が更に向上する。また、上記方法によれば、各素子の位置情報をカプセル型内視鏡を利用して取得することができる。従って、各素子の位置を測定するために専用の機器を用意する必要がなくコスト面でメリットがある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、カプセル型内視鏡の推定位置情報の精度を向上させることが可能な通信機能付き着衣、内視鏡システム、および位置推定方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の内視鏡システムについて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態の内視鏡システム10の構成を示したブロック図である。図1に示されるように、内視鏡システム10は、カプセル型内視鏡100、アンテナ付きジャケット200、およびモニタ付きPC(Personal Computer)を含む外部処理システム300を備える。術者は、本実施形態の内視鏡システム10を用いることにより、患者1の体内の様相を観察・診断することができる。
【0024】
図2に、カプセル型内視鏡100の構成をブロック図で示す。図2を参照して、カプセル型内視鏡100の構成およびその機能について説明する。
【0025】
図2に示されるように、カプセル型内視鏡100は、患者1の体腔内に投入されるカプセル形状の内視鏡である。カプセル型内視鏡100は、電源部102、制御部104、メモリ106、2つの照明部108、対物光学系110、固体撮像素子112、送受信部114、およびアンテナ部116を備える。
【0026】
電源部102は、各構成要素に電源を供給する内蔵バッテリである。制御部104は、各構成要素を統括的に制御するためのICチップである。メモリ106は、各種データやプログラムを格納する記憶媒体である。照明部108は、体腔内を照明する光源である。対物光学系110は、体腔内を観察するための対物レンズである。固体撮像素子112は、体腔内を撮像するものであり、例えばCCD(Charge Coupled Devices)やC−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)である。送受信部114は、外部機器との間で通信を行うための通信インターフェースである。アンテナ部116は、電波を送受信するためのエレメントである。
【0027】
カプセル型内視鏡100は、電源がオンされて患者1の体腔内に投入されると、照明部108によって当該の体腔内を照明する。体腔内の壁部等で反射された光は、対物光学系110に入射して像を結ぶ。
【0028】
固体撮像素子112は、その受光面が対物光学系110の像側焦点面上に位置するように設置されている。従って、対物光学系110のパワーにより結像した光は、固体撮像素子112に受光される。固体撮像素子112は、受光した光を光電変換して画像信号を生成する。
【0029】
送受信部114は、生成された画像信号を変調して、アンテナ部116を介して外部に発信する。アンテナ部116から発信された画像信号は、アンテナ付きジャケット200に受信される。
【0030】
次に、アンテナ付きジャケット200について説明する。
【0031】
アンテナ付きジャケット200は、体内を診断するために患者1に着用させるジャケットであり、例えば特開2004−328409号公報や、特開2005−245937号公報、非特許文献(株式会社セルクロス、[平成19年1月検索]、インターネット、〈http://www.cellcross.co.jp/technology.html〉)等に開示された2D−DST(2 Dimension- Diffusive Signal-Transmission)を実行可能に構成されている。これらの刊行物に記載されるように、2D−DSTテクノロジでは、シート上に散在された複数の素子(以下、「DSTチップ」という)の各々が、信号の中継点となり、当該の信号を目的地に向けてパケットで伝送する。
【0032】
図1に示されるように、アンテナ付きジャケット200には、DSTチップ230がその全域に渡ってマトリクス状に配置されている。DSTチップ230は、2D−DSTを実行するためのチップであり、他の素子と通信するのに有線ケーブルや銅箔のパターンを必要としない。従って、アンテナ付きジャケット200では、DSTチップ230を高い自由度で配置することが可能であると共に、その柔軟性や耐久性が通常の衣服に比べて遜色のないものとなっている。また、DSTチップ230は、微小なサイズで構成されたチップであることから高密度実装が可能となっている。
【0033】
図3に、図1のA−A断面図を示す。A−A断面図は、DSTチップ230を含む、アンテナ付きジャケット200の側断面図である。図3に示されるように、アンテナ付きジャケット200は、二つの信号層(信号層210およびグランド層212)、これらの信号層を互いに絶縁するための絶縁層214、およびこれらの信号層と外部とを絶縁するための絶縁層216および218の計五つの層から構成されている。これらの層は、絶縁層216、グランド層212、絶縁層214、信号層210、絶縁層218の順に積層されている。DSTチップ230は、グランド層212および絶縁層214に跨るように、これらの層構造内に埋設されている。なお、アンテナ付きジャケット200の積層構造には種々の形態があり、例えば各DSTチップ230に電源を供給するための層が独立したものもある。
【0034】
なお、信号層210およびグランド層212は、例えば導電ゴムや導電体が織り込まれた布等で構成されており、柔軟性および導電性を有する。また、絶縁層214、216、および218は、例えば絶縁ゴムや絶縁フィルム、絶縁性を有した布等で構成されており、柔軟性および絶縁性を有する。各DSTチップ230は、グランド層212により接地されており、信号層210を媒体として他の素子に信号を伝送することができる。
【0035】
図4に、DSTチップ230の構成をブロック図で示す。図4に示されるように、DSTチップ230は、制御部231、アンテナ232、送受信部233、メモリ234、および通信部235を備える。DSTチップ230は、これらの構成要素を用いて所定の機能を達成する。
【0036】
DSTチップ230で達成される機能は、大別すると2つある。1つは通信機能である。通信機能は、制御部231と送受信部233が連携して動作することにより達成される。具体的には、送受信部233が、制御部231の制御下でアンテナ232を介してカプセル型内視鏡100と通信する。これにより、例えばDSTチップ230からカプセル型内視鏡100に電源が供給され、カプセル型内視鏡100からDSTチップ230には上記画像信号が受け渡される。制御部231は、カプセル型内視鏡100からの画像信号をメモリ234に一時的に保持させる。
【0037】
DSTチップ230で達成されるもう1つの機能は、2D−DSTを実行する機能である。この機能は、制御部231、メモリ234、および通信部235が連携して動作することにより達成される。メモリ234は、例えば2D−DSTを実行するためのアルゴリズムや自己のアドレス等を記憶している。通信部235は、各DSTチップ230を接続する通信インターフェースである。制御部231は、上記アルゴリズムを実行させて2D−DSTを行い、通信部235を介して上記画像信号を他のDSTチップ230に伝送する。各DSTチップ230において2D−DSTが実行されることにより、上記画像信号は、所定の目的地に向けて伝送されていく。ここで、本実施形態における所定の目的地とは、制御ユニット220のことである。
【0038】
制御ユニット220について説明する。図1に示されるように、制御ユニット220は、アンテナ付きジャケット200に備えられる。図5に、制御ユニット220の構成をブロック図で示す。制御ユニット220は、制御部221、電源222、通信部223、メモリ224、信号処理部225、およびインターフェース部226を備える。
【0039】
制御ユニット220は、各DSTチップ230に対する統括的な制御を実行する。これは、制御部221、電源222、通信部223、およびメモリ224が連携して動作することにより達成される。制御部221は、制御ユニット220の統括的な制御を実行する。通信部223は、制御ユニット220をDSTチップ230と通信させるための通信インターフェースである。メモリ224は、例えば2D−DSTを実行するためのアルゴリズムや各種データを格納したものである。制御部221は上記アルゴリズムを実行し、通信部223を制御してDSTチップ230と通信する。そして、当該の通信において、各DSTチップ230に対してアドレスを割り当てたり上記画像信号を伝送する経路の情報を提供したりする。また、制御部221は、電源222からの駆動電流を、信号層210を介して各DSTチップ230に供給する。
【0040】
また、制御ユニット220は、DSTチップ230からの伝送信号、すなわち画像信号を処理して所定の形式のビデオ信号を生成する。そして、生成されたビデオ信号を外部処理システム300に出力する。これは、制御部221、信号処理部225、およびインターフェース部226が連携して動作することにより達成される。信号処理部225は、制御部221の制御下で上記画像信号に所定の処理を施して、外部処理システム300で表示可能なビデオ信号に変換する。信号処理部225により生成されたビデオ信号は、インターフェース部226を介して外部処理システム300に出力される。
【0041】
外部処理システム300は例えば周知のPCであり、制御ユニット220からのビデオ信号を用いて患者1の体腔内の様相をモニタに表示させたり、解析処理を行ってその解析結果をモニタに表示させたりすることができる。なお、ここでいう解析とは、例えば上記ビデオ信号から得られる画像情報に基づいて、体腔内の表面形状や画像情報の色成分毎の分布等を分析し、通常状態(正常部分)と異なる状態の部分を抽出することを示す。これにより、大量に取得された画像情報に基づき、異常がありそうな部分の候補を予めピックアップすることができ、診断の高速化等が可能となる。
【0042】
ここで、本実施形態のアンテナ付きジャケット200では、各DSTチップ230で受信された画像信号に基づいてカプセル型内視鏡100の位置を推定することが可能である。以下、これについて詳説する。
【0043】
カプセル型内視鏡100の位置を推定する処理(以下、「位置推定処理」という)を実行するためには、先ず、各DSTチップ230の座標情報を診断前に測定する必要がある。これは、アンテナ付きジャケット200が患者の身体にフィットするように着用されており、患者の体型に依存して各DSTチップ230の位置関係が変わるためである。図6に、各DSTチップ230の座標情報を測定する処理(以下、「チップ位置測定処理」という)を説明するための図を示す。また、図7に、チップ位置測定処理のフローチャートを示す。チップ位置測定処理は、制御ユニット220により実行される。
【0044】
なお、チップ位置測定処理の対象はアンテナ付きジャケット200に実装された全てのDSTチップ230であるが、ここでは図面を分かり易くするため、2つのDSTチップ(より正確には2つのDSTチップの位置)のみを図示して説明を行うものとする。また、実際のチップ位置測定処理はDSTチップ230の三次元の座標情報を測定するものであるが、図6では図面を明瞭にするため、二次元の座標情報を説明する内容に留まる。また、図6において、点A、Bのそれぞれに1つのDSTチップ230が位置するものとする。説明の便宜上、点A、Bに位置するDSTチップ230に対してそれぞれ「DSTチップ230A」、「DSTチップ230B」の符番を記す。以降の段落および図面においても同様のルールで符番を記す。
【0045】
先ず、患者1を例えば診察台等に寝かせた後(すなわち患者1の姿勢を診断時の状態にさせた後)、術者は、所定の発信源を規定位置P1に設置する。所定の発信源は、制御ユニット220と通信可能な機器であり、リファレンス信号を発信する機能を有する。所定の発信源は、ユーザ・オペレーションに呼応して、或いは所定のタイミング毎にリファレンス信号を発信する。
【0046】
なお、所定の発信源は、例えば各DSTチップ230の位置を測定するための専用の機器であっても良く、或いはカプセル型内視鏡100そのものであっても良い。後者の場合、専用の機器を用意する必要がなく、コスト面でメリットがある。また、規定位置P1、および後述するその他の規定位置は、制御ユニット220にとって既知の位置であるものとする。
【0047】
図7に示されるように、制御ユニット220は、所定の発信源がリファレンス信号を発信する発信タイミングと、各DSTチップ230がそのリファレンス信号を受信する受信タイミングをモニタする(ステップ1、以下、明細書及び図面においてステップを「S」と略記)。
【0048】
具体的には、S1の処理において制御ユニット220は、所定の発信源の送信電力と各DSTチップ230の受信電力をモニタし、送信電力が第一の閾値以上となった時点の情報を上記発信タイミング、受信電力が第二の閾値以上となった時点の情報を上記受信タイミングとして取得する。次いで、取得された各タイミングの情報に基づいて、所定の発信源から各DSTチップ230へのリファレンス信号の伝搬時間を算出する。なお、制御ユニット220は、各DSTチップ230から上記受信タイミングの情報と共にアドレスも取得する。制御ユニット220は、各DSTチップ230のアドレスを取得することにより、各受信タイミングが何れのDSTチップ230のものであるかを識別することができる。
【0049】
制御ユニット220は、各伝搬時間を算出すると、その算出結果に基づいて所定の発信源と各DSTチップ230との疑似距離を算出する(S2)。これにより、図6(a)に示されるように、DSTチップ230Aは、規定位置P1から疑似距離dAだけ離れた円周CA上に位置することが分かる。また、DSTチップ230Bは規定位置P1から疑似距離dBだけ離れた円周CB上に位置することが分かる。
【0050】
次に、術者は、所定の発信源を規定位置P2に設置する。そして、制御ユニット220により、上記と同様に、所定の発信源と各DSTチップ230のタイミングがモニタされ(S3)、次いで、そのモニタ結果に基づいて疑似距離が算出される(S4)。これにより、図6(b)に示されるように、制御ユニット220は、DSTチップ230Aの位置が、円周CAと、規定位置P2から疑似距離dA’だけ離れた円周CA’との交点、すなわち点A又は点A’の何れかであることを算出結果から得る。また、DSTチップ230Bの位置が、円周CBと、規定位置P2から疑似距離dB’だけ離れた円周CB’との交点、すなわち点B又は点B’の何れかであることを算出結果から得る。
【0051】
ここで、点A又は点A’(および点B又は点B’)の何れか一方がアンテナ付きジャケット200上の位置を示し、もう一方がアンテナ付きジャケット200から明らかに離れた位置を示すものとなる。ここでは、点AおよびBがアンテナ付きジャケット200上の位置を示し、点A’およびB’がアンテナ付きジャケット200とは明らかに離れた位置を示すものとする。この場合、制御ユニット220は、点A’およびB’の位置情報を切り捨てて、DSTチップ230A、230Bそれぞれの位置を点A、Bに特定する(S5)。
【0052】
制御ユニット220は、S5の処理に次いで、各DSTチップ230の位置情報を所定の座標系に適合させるよう、周知の座標変換処理を施して(S6)、チップ位置測定処理を終了させる。
【0053】
以上説明した処理により、制御ユニット220は、全てのDSTチップ230の座標情報を取得する。なお、取得された各座標情報は、対応するアドレスと関連付けられて例えばメモリ224に保存される。
【0054】
なお、三次元の座標情報を求めるためには、所定の発信源を更に別の規定位置に設置して、S1および2(又はS3および4)と同様の処理を実行すれば良い。この場合、制御ユニット220は、更に得られる疑似距離に基づいて各DSTチップ230の位置を三次元空間内の2点に絞り込むことができる。制御ユニット220は、ここでもアンテナ付きジャケット200とは明らかに離れた位置の情報を切り捨てることにより、各DSTチップ230の位置を一点に特定することができる。
【0055】
なお、S5の処理の代替として、S1および2(又はS3および4)と同様の処理を更にもう一回実行することにより、各DSTチップ230の位置を2点から1点に絞り込むことができる。
【0056】
また、上記実施形態では所定の発信源を各規定位置に順々に設置しているが、別の実施の形態では、所定の発信源が各規定位置に予め設置されていても良い。この場合、所定の発信源を設置する作業が省略されるため、チップ位置測定処理が迅速に実行されるようになる。
【0057】
チップ位置測定処理が完了して各DSTチップ230の位置が測定されると、カプセル型内視鏡100が患者1の体腔内に投入されて診断が開始される。そして診断開始と共に位置推定処理も実行される。図8に、各DSTチップ230で実行されるチップ側位置推定処理のフローチャートを示す。また、図9に、制御ユニット220で実行されるユニット側位置推定処理のフローチャートを示す。本実施形態では、各DSTチップ230と制御ユニット220が連携して動作することより、カプセル型内視鏡100の推定位置を得ることができる。
【0058】
本実施形態では、各DSTチップ230の内部クロックを利用してカプセル型内視鏡100の推定位置情報を取得する。従って、より精度の高い推定位置情報を得るためには各内部クロックの同期が取れていることが望ましい。しかし、内部クロックには個体差がある。このため、各内部クロックは、通常は同期が取れてない状態にあり、また、同期が取れていても時間の経過と共に徐々にずれる。本実施形態では、上記問題を解消するため、以下に説明されるクロック調整信号を用いて各DSTチップ230の内部クロックのタイミングを定期的に同期させる。
【0059】
図9に示されるように、制御ユニット220は、自己に内蔵された第一のカウンタ(不図示)を参照して、クロック調整信号を送信するタイミングか否かを判定する(S21)。そして、第一のカウンタのカウント値が所定値であるとき、クロック調整信号を送信するタイミングであると判定する(S21:YES)。次いで、各DSTチップ230にクロック調整信号を送信する(S22)。なお、第一のカウンタは、図9のユニット側位置推定処理実行中は常にカウントアップされ、当該のユニット側位置推定処理開始時およびリターン時にリセットされる。
【0060】
図8に示されるように、各DSTチップ230は、制御ユニット220からのクロック調整信号を受信したか否かを判定する(S11)。そして、クロック調整信号を受信したと判定した場合には(S11:YES)、受信したクロック調整信号に基づいて内部クロック(より正確には制御部231の内部クロック)を調整して(S12)、S13の処理に進む。また、DSTチップ230は、クロック調整信号を受信していないと判定した場合には(S11:NO)、S12の処理を実行することなくS13の処理に進む。
【0061】
ここで、図10に、クロック調整信号と、各DSTチップ230の内部クロックとの関係を示す。図10では、DSTチップ230A、230B、230Cの3つのDSTチップを代表して示す。また、図10において縦軸が振幅を示し、横軸が時間を示す。また、図10(a)がクロック調整信号の波形を示し、図10(b)、(c)、(d)がそれぞれ、DSTチップ230A、230B、230Cの内部クロックの波形を示す。
【0062】
なお、各DSTチップ230は、制御ユニット220からの距離がそれぞれ異なる。従って、各DSTチップ230において信号伝送の遅延量がそれぞれ異なる。本実施形態では、各DSTチップ230が自己に対応する遅延量のオフセット値を予め保持し、当該のオフセット値を参照して各種処理を実行するものとする。以降の段落では、説明の煩雑さを避けるため、遅延量がオフセットされている前提で(すなわち遅延量を考慮せず)、各処理についての説明を行う。
【0063】
図10の時刻T1は、各DSTチップ230がクロック調整信号を受信したタイミングである。図10(b)乃至(d)に示されるように、時刻T1以前は、各内部クロックの個体差が原因で同期が取れていない状態にある。しかし、時刻T1に各DSTチップ230でクロック調整信号が受信されると、各DSTチップ230は、内部クロックとクロック調整信号の両方の立ち上がりのタイミングを一致させるようにクロック補正を行う。これにより、各DSTチップ230の内部クロックは同期の取れた状態となる。
【0064】
なお、第一のカウンタにおける上記所定値は、各内部クロックのずれ量が所定の許容範囲を超えないように考慮された値である。従って、各内部クロックは、互いのずれ量が所定の許容範囲を超える前に補正される。この結果、各内部クロックは、実質的に常に同期が取れた状態となる。
【0065】
カプセル型内視鏡100は、患者1の体腔内に投入された後、所定の信号を定期的に発信している。図8に示されるように、各DSTチップ230は、内部クロックの同期が取れている状態で該所定の信号を受信待機する(S13)。なお、ここでいう所定の信号とは、例えば上記画像信号であっても良く、或いは位置推定処理用のリファレンス信号であっても良い。
【0066】
各DSTチップ230は、カプセル型内視鏡100から該所定の信号を受信すると(S13:YES)、その受信タイミングと内部クロックとを比較して位相差を検出する。具体的には、DSTチップ230は内部クロックよりも高い別のクロックを生成し、当該クロックをカウントして受信タイミングと内部クロックとを比較し、その位相差検出を行う。次いで、検出された位相差の情報と自己のアドレスとを関連付けた信号を生成する(S14、なお、ここで生成された信号を「位相差信号」という)。各DSTチップ230は、生成した位相差信号を制御ユニット220に向けて伝送し(S15)、図8のチップ側位置推定処理をリターンする。
【0067】
図11は、各DSTチップ230で検出される位相差を説明するための図である。図11(a)、(b)、(c)にはそれぞれ、DSTチップ230A、230B、230Cの該所定の信号の受信電力と内部クロックとの関係が示される。図11において縦軸が振幅を示し、横軸が時間を示す。また、図11(a)、(b)、(c)の各々において上段が内部クロックを示し、下段が該所定の信号の受信電力を示す。
【0068】
図11に示されるように、上記位相差は、内部クロックの立ち上がりのタイミングと、該所定の信号の受信開始時の立ち上がりのタイミングとの位相の差である。DSTチップ230A、230B、230Cはそれぞれ、位相差pda、pdb、pdcを検出する。なお、内部クロックは、全てのDSTチップ230が時間的に同一の周期内に該所定の信号を受信するよう、その周期が十分に長く設定されている。
【0069】
制御ユニット220は、1つの位相差信号を受信する毎に第二のカウンタ(不図示)を1インクリメントする。そして、図9に示されるように、上記カウンタを参照してn個以上の位相差信号を受信したか否か(すなわち上記カウンタのカウント値がn以上か否か)を所定のタイミング毎に判定する(S23)。なお、ここでの所定のタイミングは、同じDSTチップ230から位相差信号を複数回受信することのないように設定されたタイミングである。従って、nは、位相差信号の発信元のDSTチップ230の数と必ず一致する。
【0070】
制御ユニット220は、受信した位相差信号がn個以上であると判定した場合には(S23:YES)、S24の位置算出処理を実行する。一方、受信した位相差信号がn個に満たないと判定した場合には(S23:NO)、図9のユニット側位置推定処理がエラーであると判断して(S25)、当該のユニット側位置推定処理をリターンする。なお、上記カウンタは、ユニット側位置推定処理がリターンされると「0」にリセットされる。また、上記nは、三次元の推定位置情報を得る場合には例えば「4」である。
【0071】
図12は、S24の位置算出処理を説明するための図である。S24の処理において制御ユニット220は、受信した各位相差信号に基づいてカプセル型内視鏡100の現在の推定位置を算出する。なお、実際の位置算出処理は三次元位置を算出するものであるが、図12では図6と同様に、二次元位置を説明する内容に留まる。図12を参照して、S24の位置算出処理について説明する。
【0072】
S24の処理において制御ユニット220は、先ず、所定の条件を満たすDSTチップ230を基準チップに設定する。本実施形態では、DSTチップ230Aが基準チップとして設定されるものとする。なお、ここでいう所定の条件には、例えば規定のDSTチップ230であること、制御ユニット220に最初に受信された位相差信号に対応するDSTチップ230であること、受信強度が最も高いDSTチップ230であること等がある。なお、最後に挙げた条件の場合、例えば上記位相差信号に受信強度の情報を関連付ける必要がある。
【0073】
制御ユニット220は、基準チップ設定に次いで、基準チップと各DSTチップ230の位相差信号および座標情報に基づいてカプセル型内視鏡100が位置し得る仮想的な双曲線を求める。図12(a)に、DSTチップ230Aと230Bの位相差信号に基づいて得られる双曲線h1を示す。図12(b)に、DSTチップ230Aと230Cの位相差信号に基づいて得られる双曲線h2を示す。双曲線h1は、点A、Bからの距離の差が一定となる点の軌跡である。また、双曲線h2は、点A、Cからの距離の差が一定となる点の軌跡である。
【0074】
詳細には、制御ユニット220は、位相差pdaとpdbの差分(すなわちDSTチップ230Aにカプセル型内視鏡100からの電波が到来した時刻と、DSTチップ230Bに当該の電波が到来した時刻との差)を疑似距離に変換して、カプセル型内視鏡100からDSTチップ230Aまでの距離と、カプセル型内視鏡100からDSTチップ230Bまでの距離との差を算出する。次いで、DSTチップ230Aと230Bの座標情報および上記距離差に基づいて第一の関数、すなわち双曲線h1を取得する。また、制御ユニット220は、DSTチップ230Aと230Cとに対しても同様の処理を行い、第二の関数すなわち双曲線h2を取得する。
【0075】
カプセル型内視鏡100は、双曲線h1上に位置し、且つ双曲線h2上にも位置する。すなわちカプセル型内視鏡100は、交点P’1又はP’2の何れかに位置する。ここで、通常、一方の交点の座標情報が患者1の体腔内に位置を示し、もう一方の交点の座標情報が患者1から明らかに離れた位置を示すものとなる。制御ユニット220は、カプセル型内視鏡100が患者1の体腔内に位置することから、後者の座標情報を除外する。そして、前者の座標情報をカプセル型内視鏡100の現在の推定位置情報として取得して、図9のユニット側位置推定処理をリターンする。
【0076】
制御ユニット220は、ユニット側位置推定処理で取得した推定位置情報を外部処理システム300に送信する。外部処理システム300は、受信した推定位置情報を用いて各種処理を実行する。
【0077】
なお、カプセル型内視鏡100の三次元の推定位置情報を取得するためには、DSTチップ230Aと更に別のDSTチップ230の双曲線を求めれば良い。この場合、制御ユニット220は、双曲線h1、h2、および更に得られる双曲線に基づいて、カプセル型内視鏡100の推定位置を三次元空間内の2点に絞り込むことができる。制御ユニット220は、ここでも患者1とは明らかに離れた交点の座標情報を切り捨てることにより、カプセル型内視鏡100の推定位置を一点に特定することができる。
【0078】
以上のように本実施形態においては、カプセル型内視鏡100と各DSTチップ230との疑似距離を算出するのに電波の伝搬時間を採用している。電波の伝搬速度は、媒体に対する依存性が比較的低い。従って、カプセル型内視鏡100からの発信信号が体内の如何なる場所を通過する場合であっても、カプセル型内視鏡100−DSTチップ230間の疑似距離と、伝搬時間との関係は比較的一定に保たれる。このため上記疑似距離の誤差が小さくなり、結果、カプセル型内視鏡100の位置を高い精度で推定することが可能となる。
【0079】
また、本実施形態においては、診断に先立って図7のチップ位置測定処理を実行する。これにより、上述したように、各DSTチップ230の高精度な位置情報を用いてカプセル型内視鏡100の位置推定処理を実行することができる。このため、カプセル型内視鏡100の位置をより高い精度で推定することが可能となる。
【0080】
以上が本発明の実施の形態である。本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。例えば図7のチップ位置測定処理の対象は、本実施形態のように全てのDSTチップ230でなくても良く、特定のDSTチップ230のみであっても良い。
【0081】
図9のS23の処理における位相差信号の受信数が多ければ多いほど、より多くの双曲線を求めることができる。また、S24の処理において位置推定を算出するのに用いる双曲線が多ければ多いほど、疑似距離の誤差を低減させて高精度の推定位置を得ることが可能となる。従って、各DSTチップ230の受信状態が良好な場合は、全てのDSTチップ230の位相差信号を用いてカプセル型内視鏡100の推定位置情報を算出するようにしても良い。
【0082】
また、図10ではクロック調整信号と各内部クロックの周波数が同一であるが、クロック調整信号の周波数はこれに限定されない。クロック調整信号の周波数は、一周期が全DSTチップ230中の最も長い遅延時間(最も大きな遅延量)よりも長い周波数であれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の形態の内視鏡システムの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態のカプセル型内視鏡の構成を示したブロック図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】本発明の実施の形態のDSTチップの構成を示したブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態の制御ユニットの構成を示したブロック図である。
【図6】本発明の実施の形態において制御ユニットが実行するチップ位置測定処理を説明するための図である。
【図7】本発明の実施の形態において制御ユニットが実行するチップ位置測定処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態においてDSTチップが実行するチップ側位置推定処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態において制御ユニットが実行するユニット側位置推定処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態のクロック調整信号と、各DSTチップの内部クロックとの関係を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態のDSTチップで検出される位相差を説明するための図である。
【図12】図9のS24の位置算出処理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0084】
100 カプセル型内視鏡
200 アンテナ付きジャケット
230 DSTチップ
300 外部処理システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器と無線通信可能な素子が複数実装されており、前記素子の各々と通信可能な制御部を備える通信機能付き着衣において、
前記素子は、
自己の識別情報を保持した識別情報保持手段と、
該外部機器から発信された発信信号を受信する外部信号受信手段と、
該発信信号を受信したタイミングを検知し、該検知されたタイミングに基づいたタイミング信号を生成する信号生成手段と、
該生成されたタイミング信号に該識別情報を関連付けて前記制御部に送信する送信手段と、を有し、
前記制御部は、
各前記素子の位置情報を該識別情報に関連付けて保持する位置情報保持手段と、
前記素子の各々から送信されたタイミング信号を受信する受信手段と、
前記位置情報保持手段から、該受信したタイミング信号に関連付けられた該識別情報に基づいて送信元素子の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
該受信されたタイミング信号の各々と、当該の各タイミング信号に対応する該位置情報に基づいて、該外部機器の位置情報を算出する位置算出手段と、を有すること、を特徴とする通信機能付き着衣。
【請求項2】
前記信号生成手段は、該検知されたタイミングと所定のタイミングとの時間差を検出し、該検出結果に基づいてタイミング信号を生成すること、を特徴とする請求項1に記載の通信機能付き着衣。
【請求項3】
該所定のタイミングは、前記素子の内部クロックの立ち上がりのタイミングであること、を特徴とする請求項2に記載の通信機能付き着衣。
【請求項4】
前記制御部は前記素子の各々に所定の信号を配信し、
前記素子の内部クロックが前記制御部からの該所定の信号に基づいて補正され、全ての前記素子の該内部クロックが同期した状態になること、を特徴とする請求項3に記載の通信機能付き着衣。
【請求項5】
前記制御部は、所定の条件を満たす素子を基準素子として設定する基準設定手段を更に備え、
前記位置算出手段は、
前記基準素子のタイミング信号と他の前記素子のタイミング信号の各々とにおける該発信信号の受信タイミングの位相差を算出し、
該算出された位相差に基づいて該外部機器に対する前記基準素子と前記他の素子の各々との疑似距離差を算出し、
該算出された疑似距離差の各々と、前記位置情報保持手段に保持された位置情報の各々を用いて該外部機器の位置情報を算出すること、を特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の通信機能付き着衣。
【請求項6】
前記素子および前記制御部は信号伝送可能なシート上に実装され、各前記素子間および各前記素子と前記制御部との通信は2D−DSTのアルゴリズムに基づいて実施されること、を特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の通信機能付き着衣。
【請求項7】
前記位置算出手段は、前記受信手段に受信された該タイミング信号が所定数以上であるときには該外部機器の位置情報を算出し、当該タイミング信号が該所定数に満たないときにはエラーと判断して該外部機器の位置情報を算出しないこと、を特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の通信機能付き着衣。
【請求項8】
前記素子の各々の位置を測定する位置測定手段を更に備え、
前記位置情報保持手段は、該測定された位置の情報を各前記素子の該識別情報に関連付けて保持すること、を特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の通信機能付き着衣。
【請求項9】
患者の体腔内に投入され、該患者の体内の情報を無線で発信するカプセル型内視鏡と、
請求項1から請求項8の何れかに記載の通信機能付き着衣であって、前記素子により前記カプセル型内視鏡と無線通信する通信機能付き着衣と、を備えたこと、を特徴とする内視鏡システム。
【請求項10】
前記カプセル型内視鏡は、該体腔内を撮像して画像信号を生成する画像信号生成手段を有し、該画像信号を無線で発信し、
前記信号生成手段は、該画像信号を受信するタイミングを検知すること、を特徴とする請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
カプセル型内視鏡と無線通信可能な素子が複数実装された着衣を用いて、患者の体腔内に投入されたカプセル型内視鏡の位置を推定する位置推定方法において、
規定位置に設置されたカプセル型内視鏡の送信電力をモニタして第一の信号を発信するタイミングと、前記素子の各々の受信電力をモニタして前記素子の各々において該第一の信号が受信されるタイミングとを検知するタイミング検知ステップと、
該検知結果に基づいて該規定位置と前記素子の各々との疑似距離を算出する疑似距離算出ステップと、
該算出された疑似距離に基づいて前記素子の各々の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
該体腔内に投入されたカプセル型内視鏡から前記素子の各々が第二の信号を受信してその受信タイミングを検知する受信タイミング検知ステップと、
該検知された受信タイミングに関する情報を収集するタイミング情報収集ステップと、
該収集された受信タイミングに関する情報と各前記素子の位置情報に基づいて、カプセル型内視鏡の位置情報を算出する位置算出ステップと、を含む、位置推定方法。
【請求項1】
外部機器と無線通信可能な素子が複数実装されており、前記素子の各々と通信可能な制御部を備える通信機能付き着衣において、
前記素子は、
自己の識別情報を保持した識別情報保持手段と、
該外部機器から発信された発信信号を受信する外部信号受信手段と、
該発信信号を受信したタイミングを検知し、該検知されたタイミングに基づいたタイミング信号を生成する信号生成手段と、
該生成されたタイミング信号に該識別情報を関連付けて前記制御部に送信する送信手段と、を有し、
前記制御部は、
各前記素子の位置情報を該識別情報に関連付けて保持する位置情報保持手段と、
前記素子の各々から送信されたタイミング信号を受信する受信手段と、
前記位置情報保持手段から、該受信したタイミング信号に関連付けられた該識別情報に基づいて送信元素子の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
該受信されたタイミング信号の各々と、当該の各タイミング信号に対応する該位置情報に基づいて、該外部機器の位置情報を算出する位置算出手段と、を有すること、を特徴とする通信機能付き着衣。
【請求項2】
前記信号生成手段は、該検知されたタイミングと所定のタイミングとの時間差を検出し、該検出結果に基づいてタイミング信号を生成すること、を特徴とする請求項1に記載の通信機能付き着衣。
【請求項3】
該所定のタイミングは、前記素子の内部クロックの立ち上がりのタイミングであること、を特徴とする請求項2に記載の通信機能付き着衣。
【請求項4】
前記制御部は前記素子の各々に所定の信号を配信し、
前記素子の内部クロックが前記制御部からの該所定の信号に基づいて補正され、全ての前記素子の該内部クロックが同期した状態になること、を特徴とする請求項3に記載の通信機能付き着衣。
【請求項5】
前記制御部は、所定の条件を満たす素子を基準素子として設定する基準設定手段を更に備え、
前記位置算出手段は、
前記基準素子のタイミング信号と他の前記素子のタイミング信号の各々とにおける該発信信号の受信タイミングの位相差を算出し、
該算出された位相差に基づいて該外部機器に対する前記基準素子と前記他の素子の各々との疑似距離差を算出し、
該算出された疑似距離差の各々と、前記位置情報保持手段に保持された位置情報の各々を用いて該外部機器の位置情報を算出すること、を特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の通信機能付き着衣。
【請求項6】
前記素子および前記制御部は信号伝送可能なシート上に実装され、各前記素子間および各前記素子と前記制御部との通信は2D−DSTのアルゴリズムに基づいて実施されること、を特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の通信機能付き着衣。
【請求項7】
前記位置算出手段は、前記受信手段に受信された該タイミング信号が所定数以上であるときには該外部機器の位置情報を算出し、当該タイミング信号が該所定数に満たないときにはエラーと判断して該外部機器の位置情報を算出しないこと、を特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の通信機能付き着衣。
【請求項8】
前記素子の各々の位置を測定する位置測定手段を更に備え、
前記位置情報保持手段は、該測定された位置の情報を各前記素子の該識別情報に関連付けて保持すること、を特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の通信機能付き着衣。
【請求項9】
患者の体腔内に投入され、該患者の体内の情報を無線で発信するカプセル型内視鏡と、
請求項1から請求項8の何れかに記載の通信機能付き着衣であって、前記素子により前記カプセル型内視鏡と無線通信する通信機能付き着衣と、を備えたこと、を特徴とする内視鏡システム。
【請求項10】
前記カプセル型内視鏡は、該体腔内を撮像して画像信号を生成する画像信号生成手段を有し、該画像信号を無線で発信し、
前記信号生成手段は、該画像信号を受信するタイミングを検知すること、を特徴とする請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
カプセル型内視鏡と無線通信可能な素子が複数実装された着衣を用いて、患者の体腔内に投入されたカプセル型内視鏡の位置を推定する位置推定方法において、
規定位置に設置されたカプセル型内視鏡の送信電力をモニタして第一の信号を発信するタイミングと、前記素子の各々の受信電力をモニタして前記素子の各々において該第一の信号が受信されるタイミングとを検知するタイミング検知ステップと、
該検知結果に基づいて該規定位置と前記素子の各々との疑似距離を算出する疑似距離算出ステップと、
該算出された疑似距離に基づいて前記素子の各々の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
該体腔内に投入されたカプセル型内視鏡から前記素子の各々が第二の信号を受信してその受信タイミングを検知する受信タイミング検知ステップと、
該検知された受信タイミングに関する情報を収集するタイミング情報収集ステップと、
該収集された受信タイミングに関する情報と各前記素子の位置情報に基づいて、カプセル型内視鏡の位置情報を算出する位置算出ステップと、を含む、位置推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−401(P2009−401A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165931(P2007−165931)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】
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