説明

通信機能内蔵コネクタ

【課題】通信アドレスの設定を簡素化するとともに、容易に当該通信アドレスの確認を外部から行うことができる通信機能内蔵コネクタを提供する。
【解決手段】通信機能内蔵コネクタ1は、通信モジュール4が相手側通信装置との間の通信で用いる通信アドレスを設定するためのアドレス設定端子6を備え、ハウジング2から露出するように取り付けられ、アドレス設定端子6に通信アドレスに対応した導通パターンを設定するとともに、通信アドレスに対応して色が異なるアドレス設定部品7を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相手側通信装置と通信する機能を内蔵した通信機能内蔵コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車、貨物車等の車両には、エアコンやワイパー、パワーウィンドウなどを構成するモータなどの多種多様な電気機器が搭載されている。前記電気機器に電力や制御信号などを伝えるために、ワイヤハーネスを配索している。ワイヤハーネスは、複数の電線と、電線の端末に接続される端子金具を収容するコネクタとを備えている。電線は、導電性の芯線と、該芯線を被覆する絶縁性の被覆部と、を備えた所謂被覆電線である。
【0003】
前述したワイヤハーネスのコネクタとして、各種のアクチュエータなどの電子機器とコンピュータなどの電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)とをデータ通信によるネットワークで接続するために、回路素子などを内蔵した機能内蔵コネクタ(例えば、特許文献1参照)が用いられている。この種の機能内蔵コネクタは、回路素子などを実装したリードフレームをハウジング内に内蔵している。
【0004】
特許文献1に示す機能内蔵コネクタは、通信アドレス設定用の少なくとも1つの接続部と、除去可能な状態でグランド電位に設定されて設けられ、対応する各接続部に電気的に接続される少なくとも1つの電極部とが設けられ、CPUが各接続部の電位レベルに基づいて通信アドレスの設定を受け付ける。そして、設定すべき通信アドレスに応じて電極部を除去し、電極部と導通される接続部を決定することにより、通信アドレス設定を行っていた。
【0005】
複数の機能内蔵コネクタを共通の通信線に接続して通信を行う場合、通信アドレスやID(identification data)を、上述したように設定可能な構成を設ける、予め内蔵回路に設定する、不揮発性メモリ等に予め記憶する等を行うことで、各機能内蔵コネクタ同士の信号の授受を可能としていた。しかしながら、機能内蔵コネクタは個別にID等を設定する必要があり、外観が同じものだと誤接続される可能性があったため、通信システムにおける機能内蔵コネクタの形状、外見を異ならせることで、誤組み付けの防止が図られてきた。即ち、機能内蔵コネクタの共通化を図ることが困難であるという問題が生じていた。また、機能内蔵コネクタはID等の割り振り機能を設ける必要があった場合は、コストが高くなってしまうという問題が生じていた。
【0006】
そのような問題に対応するために、例えば特許文献2に示す通信中継コネクタが提案されている。特許文献2に示す通信中継コネクタは、第1通信装置からの電線が接続された第1コネクタ10と、第1通信装置の通信対象となる第2通信装置からの電線が接続された第2コネクタ20と、第1コネクタ10及び第2コネクタ20の各々と接続される複数の端子37を有し且つ第1通信装置と第2通信装置との間の通信を複数の端子37を介して中継する通信中継ユニット30と、を有する通信中継コネクタ1において、第1コネクタ10が、通信中継ユニット30の複数の端子37の中の設定用端子37bに、通信で用いる通信アドレスに対応した導通パターンを設定する通信アドレス設定手段13を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−285411号公報
【特許文献2】特開2010−192382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載された通信中継コネクタは、第1コネクタ10に通信アドレス設定手段13を有し、電線と通信アドレスを設定する構造が一体となっている。そのため、一度通信中継ユニット30に第1コネクタ10を取り付けてしまうと、通信アドレス設定手段13の識別ができないため、通信アドレスを外部から確認することが困難であるという問題があった。したがって、通信アドレスを確認する場合は、通信アドレス設定手段13を取り外して確認するか、導通検査等で確認する必要があり、例えば、誤ったアドレスが設定された場合などに、それを確認するのが煩雑であるという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、通信アドレスの設定を簡素化するとともに、容易に当該通信アドレスの確認を外部から行うことができる通信機能内蔵コネクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、ハウジングと、相手側通信装置に接続するために設けられている接続部と、前記ハウジングに設けられ前記相手側通信装置と通信する通信部と、を備えた通信機能内蔵コネクタにおいて、前記通信部が、前記相手側通信装置との間の通信で用いる通信アドレスを設定するための設定用端子を備えているとともに、少なくとも一部が前記ハウジングから露出するように取り付けられ、前記設定用端子に前記通信アドレスに対応した導通パターンを設定するとともに、前記通信アドレスに対応した識別が施されている通信アドレス設定手段を有していることを特徴とする通信機能内蔵コネクタである。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記設定用端子が、前記通信アドレスを設定するアドレス用端子と、前記アドレス用端子のレベルを定めるレベル設定用端子と、から構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、通信中継部が、相手側通信装置との間の通信で用いる通信アドレスを設定するための設定用端子を備え、少なくとも一部がハウジングから露出するように取り付けられ、設定用端子に通信アドレスに対応した導通パターンを設定する通信アドレス設定手段を有しているので、通信アドレス設定手段によって通信アドレスの設定簡素化が図れるとともに、通信アドレス設定手段を除いて部品の共通化をすることができる。また、通信アドレス設定手段がハウジングから露出するように取り付けられるために、外部から当該通信アドレス設定手段を視認することができ、例えば通信アドレス設定手段の色や形状で区別することで、容易に通信アドレスの確認をすることができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、設定用端子が、アドレス設定用端子とレベル設定用端子とから構成されているので、レベル設定用端子と、任意のアドレス設定用端子とを電気的に接続することで通信アドレスを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態にかかる通信機能内蔵コネクタの構成図である。
【図2】図1に示された通信モジュールの構成図である。
【図3】図1に示された通信機能内蔵コネクタの通信アドレス例の説明図である。
【図4】図1に示された通信機能内蔵コネクタの通信アドレス例の説明図である。
【図5】図1に示された通信機能内蔵コネクタの通信アドレス例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態を図1ないし図5を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる通信機能内蔵コネクタ1の構成図である。
【0016】
本発明の一実施形態にかかる通信機能内蔵コネクタ1は、図1に示すように、ハウジング2と、通信モジュール4と、アドレス設定部品7と、を備えている。
【0017】
ハウジング2は、絶縁性の合成樹脂等によって略直方体状に形成されている。ハウジング2は、その一端側にフード部3を有している。フード部3は、内側に図示しない相手側通信装置と接続された電線に取り付けられている相手方のコネクタが進入して嵌合する。つまり、フード部3が、相手方のコネクタと接続するための接続部となる。また、ハウジング2は、その内部に後述する通信モジュール4を内蔵している。
【0018】
通信部としての通信モジュール4は、図1や図2に示すように、相手方コネクタに対応した複数の接続端子5と、後述するアドレス設定部品7に対応したアドレス設定端子6と、を有して構成している。
【0019】
通信モジュール4は、例えば集積回路、複数のディスクリートで構成した部品、マイクロプロセッサ、DSP(digital signal processor)、ASIC(application specific IC)等の任意の構成で実現することができ、例えばボンディングワイヤ等によって接続端子5及びアドレス設定端子6と電気的に接続されている。なお、本実施形態では、通信モジュールは、ICチップ等を合成樹脂で封止し且つ扁平な箱状に形成した場合について説明する。
【0020】
複数の接続端子5は、図1に示すように、フード部3内に突出して図示しない相手方のコネクタの端子等と電気的に接続される。
【0021】
設定用端子としてのアドレス設定端子6は、図1や図2に示すように、レベル設定用端子6aと、アドレス用端子6b、6c、6dと、から構成されている。レベル設定用端子6aは、アドレス用端子6b、6c、6dのレベルを定めるための端子であり、接地電位(GND)または電源電圧(Vcc)が出力される。アドレス用端子6b、6c、6dは、後述するアドレス設定部品7によってレベル設定用端子6aと電気的に接続されることで、アドレスが設定される端子であり、本実施形態では、アドレス用端子6bがノード0(ID0)を示すアドレスに設定する端子、アドレス用端子6cがノード1(ID1)を示すアドレスに設定する端子、アドレス用端子6dがノード2(ID2)を示すアドレスに設定する端子となっている。
【0022】
アドレス設定部品7は、図1に示したように基部71と、設定用突起72と、を備えている。基部71は絶縁性樹脂などで略直方体状に形成されている。設定用突起72は、基部71から突出するように設けられており、金属などの導電性の部材で形成されている。設定用突起72は、通信モジュール4のアドレス設定用端子6に取り付けられた際に、レベル設定用端子6aと電気的に接続される突起72aと、アドレス用端子6b、6c、6dのいずれかと電気的に接続される突起72bと、の2つが設けられている。なお、突起72a、72bは、例えば円筒状に形成されアドレス設定端子6を円筒内に侵入されて電気的に接続されるようになっている。また、突起72a、72bは、基部71内で電気的に接続されている。
【0023】
アドレス設定部品7は、通信モジュール4のアドレス設定用端子6に取り付けられた際に、ハウジング2から基部71の設定用突起72が設けられた面の反対側の面を含む部分が露出する。したがって、ハウジング2には、アドレス設定用端子6が位置付けられる部分に、アドレス設定部品7を挿入できるような開口が形成されている。
【0024】
本実施形態のアドレス設定部品7は、アドレス設定部品7a、7b、7cの3種類があり、それぞれ、アドレス設定部品7aがノード0を示すアドレスに設定するためのもの、アドレス設定部品7bがノード1を示すアドレスに設定するためのもの、アドレス設定部品7cがノード2を示すアドレスに設定するためのものとなっている。これらアドレス設定部品7a、7b、7cは突起72bの位置が異なっている。つまり、この突起72bの位置によって通信アドレスに対応した導通パターンが設定される。また、アドレス設定部品7a、7b、7cは、通信アドレスに対応した識別のために基部71がそれぞれ異なる色で形成されている。
【0025】
次に、上述した構成の通信機能内蔵コネクタ1における通信アドレス設定時の構成を図3〜図5を参照して説明する。
【0026】
図3は、ノード0を示すアドレスに設定した状態を示したものである。即ち、通信モジュール4のアドレス設定端子6にアドレス設定部品7aを取り付けている。この場合、アドレス設定部品7aの設定用突起72の突起72aはレベル設定用端子6aに接続され、突起72bはアドレス用端子6bと電気的に接続される。突起72aと突起72bは上述したように基部71内で電気的に接続されているので、アドレス設定部品7aを通してアドレス用端子6bがレベル設定用端子6aが出力するレベルに設定される。そして、通信モジュール4のICチップ等が、アドレス用端子6bに設定されたレベルを検出し、ノード0を示すアドレスに自身を設定する。
【0027】
図4は、ノード1を示すアドレスに設定した状態を示したものである。即ち、通信モジュール4のアドレス設定端子6にアドレス設定部品7bを取り付けている。この場合、アドレス設定部品7bの設定用突起72の突起72aはレベル設定用端子6aに接続され、突起72bはアドレス用端子6cと電気的に接続される。突起72aと突起72bは上述したように基部71内で電気的に接続されているので、アドレス設定部品7bを通してアドレス用端子6cがレベル設定用端子6aが出力するレベルに設定される。そして、通信モジュール4のICチップ等が、アドレス用端子6cに設定されたレベルを検出し、ノード1を示すアドレスに自身を設定する。
【0028】
図5は、ノード2を示すアドレスに設定した状態を示したものである。即ち、通信モジュール4のアドレス設定端子6にアドレス設定部品7cを取り付けている。この場合、アドレス設定部品7cの設定用突起72の突起72aはレベル設定用端子6aに接続され、突起72bはアドレス用端子6dと電気的に接続される。突起72aと突起72bは上述したように基部71内で電気的に接続されているので、アドレス設定部品7cを通してアドレス用端子6dがレベル設定用端子6aが出力するレベルに設定される。そして、通信モジュール4のICチップ等が、アドレス用端子6dに設定されたレベルを検出し、ノード2を示すアドレスに自身を設定する。
【0029】
また、図3〜図5に示したように、それぞれ異なる色に形成されたアドレス設定部品7a〜7cは、ハウジング2に取り付けられた際に一部が外部に露出するため、露出した色を見分けることで、どの通信アドレスに設定されているかを容易に確認できる。
【0030】
本実施形態によれば、通信機能内蔵コネクタ1は、通信モジュール4が相手側通信装置との間の通信で用いる通信アドレスを設定するためのアドレス設定端子6を備え、ハウジング2から露出するように取り付けられ、アドレス設定端子6に通信アドレスに対応した導通パターンを設定するアドレス設定部品7を有しているので、アドレス設定部品7がハウジング2から露出するように取り付けられるために、外部からアドレス設定部品7を視認することができ、アドレス設定部品7は設定する通信アドレスに対応して色を異なられているので、容易に通信アドレスの確認をすることができる。
【0031】
また、通信機能内蔵コネクタ1は、アドレス設定部品7をアドレスに対応して取り付けるだけでよいので通信アドレスの設定簡素化が図れるとともに、アドレス設定部品7を除いて、例えば、ハウジング2や通信モジュール4などの部品の共通化をすることができコストダウンを図ることができる。
【0032】
また、アドレス設定端子6が、レベル設定用端子6aとアドレス設定用端子6b、6c、6dとから構成されているので、レベル設定用端子6aと、アドレス設定用端子6b、6c、6dのいずれかと電気的に接続することで通信アドレスを設定することができる。
【0033】
なお、上述した実施形態では、アドレス設定部品7は通信アドレスに対応して色を異ならせていたが、形状を異ならせてもよいし、露出部分に通信アドレス等を印字するなど、外部から確認できるような識別を施してもよい。つまり、少なくとも通信アドレスに対応した識別が施されている部分が外部から確認できればよい。
【0034】
また、上述した実施形態では、相手側通信装置と接続するためのコネクタのみを図示したが、特許文献2に記載されているような2つの通信装置の通信を中継するようなコネクタに適用することもできる。その場合、2つの通信装置とそれぞれ接続するための2つのコネクタと、アドレス設定部品7と、は勿論互いに干渉しない位置に設ける必要がある。
【0035】
なお、上述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 通信機能内蔵コネクタ
2 ハウジング
3 フード部(接続部)
4 通信モジュール(通信部)
6 アドレス設定端子(設定用端子)
6a レベル設定用端子(設定用端子)
6b アドレス用端子(設定用端子)
7 アドレス設定部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、相手側通信装置に接続するために設けられている接続部と、前記ハウジングに設けられ前記相手側通信装置と通信する通信部と、を備えた通信機能内蔵コネクタにおいて、
前記通信部が、前記相手側通信装置との間の通信で用いる通信アドレスを設定するための設定用端子を備えているとともに、
少なくとも一部が前記ハウジングから露出するように取り付けられ、前記設定用端子に前記通信アドレスに対応した導通パターンを設定するとともに、前記通信アドレスに対応した識別が施されている通信アドレス設定手段を有している
ことを特徴とする通信機能内蔵コネクタ。
【請求項2】
前記設定用端子が、前記通信アドレスを設定するアドレス用端子と、前記アドレス用端子のレベルを定めるレベル設定用端子と、から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の通信機能内蔵コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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