説明

通信端末装置及び通信方法

【課題】バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができる通信端末装置及び通信方法を提供すること。
【解決手段】通信端末装置1Aは、前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8に対してデータの送信が可能な装置である。通信端末装置1Aは、データ読み出し部10と、データが前席ディスプレイ3に受信されるまでに要する時間と、データが後席ディスプレイ8に受信されるまでに要する時間との差である遅延時間を検出する遅延時間検出部11とを備える。データ読み出し部10は、前席ディスプレイ3にデータが受信される時刻と、後席ディスプレイ8にデータが受信される時刻とが一致するように、遅延時間に基づき、前席ディスプレイ3へ送信するためのデータを読み出す時刻と、後席ディスプレイ8へ送信するためのデータを読み出す時刻とを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信端末装置及び通信方法においては、映像データを複数の端末から出力する場合や、対応する映像データと音声データとを別々の端末から出力する場合のように、複数のデータを別々の端末から出力する場合がある。このような場合に、通信端末装置から送信されたデータが各端末に受信されるまでに要する時間の差を考慮して、複数のデータを同期させて出力する技術が従来から知られている。
【0003】
例えば、特開2003−46901号公報記載のリップシンク制御装置では、受信手段であるセットトップボックスによりデジタル放送を受信し、AVアンプ等の外部機器のデコーダを利用して音声を出力している。この際、セットトップボックスは、受信したデジタル放送から音声ストリームを分離し、当該音声ストリームをデコードせずに外部機器に出力すると共に、音声ストリームをデコードして得た音声信号を外部機器に出力する。また、セットトップボックスは、受信したデジタル放送から映像ストリームを分離し、当該映像ストリームをデコードして得た映像信号を外部機器に出力する。音声信号と映像信号とは、音声ストリーム及び映像ストリームに含まれるタイムスタンプ情報を用いてリップシンクがとられる。外部機器は、当該外部機器に内蔵されたデコーダにより、セットトップボックスから供給された音声ストリームを音声信号にデコードする。そして、外部機器は、遅延量測定器により、セットトップボックスからの音声信号と、デコーダからの音声信号との間の遅延量を測定し、この遅延量に基づいて、映像信号及びデコーダからの音声信号のいずれか一方を遅延させて出力することで、映像信号と音声信号とを同期させて出力している。このリップシンク制御装置のような通信端末装置は、運用が比較的容易であるため、CATVのような大規模なシステムには適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−46901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような通信端末装置及び通信方法では、データの出力を遅延させて出力時刻を一致させるために、データを一時的に記憶するためのバッファが個々の端末にそれぞれ必要となる。一方、近年、ICT(Information Communication Technology)の進歩により、超高速通信技術を駆使して、ハイビジョンデータやブルーレイデータのような大容量のデータを伝送する場合がある。そうすると、より大容量のバッファが個々の端末に必要となり、安価であることが望まれる端末が高コスト化するおそれがある。
【0006】
また、近年、ネットワーク経由でコンテンツ等を配信する場合、データの圧縮解凍やファイル形式の変更のためのコーデックや、著作権保護等のために、データの符号化及び復号を介してデータを各端末に送信する場合がある。符号化及び復号を介すると、その分、通信端末装置から送信されたデータが各端末に受信されるまでに要する時間が増加するため、バッファが記憶すべきデータが増大する。従って、さらに端末の高コスト化を招くおそれがある。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができる通信端末装置及び通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信端末装置は、複数の端末に対してデータの送信が可能な通信端末装置において、記憶媒体からデータを読み出すデータ読み出し手段と、データ読み出し手段で読み出したデータが第一の端末に受信されるまでに要する時間と、データ読み出し手段で読み出したデータが第二の端末に受信されるまでに要する時間との差である遅延時間を検出する遅延時間検出手段と、を備え、データ読み出し手段は、第一の端末にデータが受信される時刻と第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、遅延時間検出手段により検出された遅延時間に基づき、第一の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻と第二の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻とを調整することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る通信端末装置では、遅延時間検出手段により遅延時間が検出され、当該遅延時間に基づき、第一の端末にデータが受信される時刻と、第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、第一の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻と、第二の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻とが調整される。従って、バッファに一時的にデータを保存しなくても、第一の端末にデータが受信される時刻と、第二の端末にデータが受信される時刻とが一致し、第一の端末及び第二の端末から同期させてデータを出力することができる。よって、バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができる。
【0010】
また、データ読み出し手段で読み出したデータを記憶可能な記憶手段を備え、遅延時間が所定時間以下の場合には、記憶手段によりデータを記憶し、第一の端末にデータが受信される時刻と、第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、当該記憶されたデータを第一の端末又は第二の端末に送信することが好ましい。こうすると、遅延時間が所定時間より短い場合には、記憶手段によりデータを一時的に記憶することで、第一の端末及び第二端末からデータを同期させて出力し、一方、遅延時間が所定時間より長く、記憶すべきデータの容量が記憶手段の容量を超えるような場合等には、遅延時間に基づきデータを読み出す時刻を調整する方式に移行することが可能となる。
【0011】
また、データ読み出し手段と第一の端末との間の通信経路、及び、データ読み出し手段と第二の端末との間の通信経路の少なくとも一方には、データ読み出し手段で読み出したデータを符号化する符号化手段と、当該符号化手段で符号化されたデータを復号する復号手段とが設けられており、遅延時間検出手段は、符号化手段がデータの符号化に要する時間と、符号化手段により符号化されたデータを復号手段が復号するのに要する時間とを考慮して、遅延時間を検出することが好ましい。符号化及び復号を介すると、遅延時間が長くなって大容量のバッファが必要となるため、バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができるという本発明の効果がより好適に発揮される。
【0012】
本発明に係る通信方法は、複数の端末に対してデータを送信する通信方法において、記憶媒体から読み出したデータが第一の端末に受信されるまでに要する時間と、記憶媒体から読み出したデータが第二の端末に受信されるまでに要する時間との差である遅延時間を検出し、第一の端末にデータが受信される時刻と第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、遅延時間に基づき、第一の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻と第二の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻とを調整することを特徴とする。
【0013】
本発明に係る通信方法では、遅延時間が検出され、当該遅延時間に基づき、第一の端末にデータが受信される時刻と、第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、第一の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻と、第二の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻とが調整される。従って、バッファに一時的にデータを保存しなくても、第一の端末にデータが受信される時刻と、第二の端末にデータが受信される時刻とが一致し、第一の端末及び第二の端末から同期させてデータを出力することができる。よって、バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができる。
【0014】
また、遅延時間が所定時間以下の場合には、記憶媒体から読み出したデータを記憶し、第一の端末にデータが受信される時刻と、第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、当該記憶されたデータを第一の端末又は第二の端末に送信することが好ましい。こうすると、遅延時間が所定時間より短い場合には、記憶媒体から読み出したデータを一時的に記憶することで、第一の端末及び第二端末からデータを同期させて出力し、一方、遅延時間が所定時間より長く、記憶すべきデータの容量が大きい場合等には、遅延時間に基づきデータを読み出す時刻を調整する方法に移行することが可能となる。
【0015】
また、記憶媒体から読み出したデータの符号化に要する時間と、当該符号化されたデータの復号に要する時間とを考慮して、遅延時間を検出し、第一の端末、及び、第二の端末の少なくとも一方には、記憶媒体から読み出したデータの符号化、及び、当該符号化されたデータの復号を介して、データを送信することが好ましい。符号化及び復号を介すると、遅延時間が長くなって大容量のバッファが必要となるため、バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができるという本発明の効果がより好適に発揮される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができる通信端末装置及び通信方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態に係る通信端末装置を示すブロック図である。
【図2】図1の通信端末装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】時刻同期処理を示す概念図である。
【図4】車内ネットワーク遅延時間測定処理を示す概念図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る通信端末装置を示すブロック図である。
【図6】図5の通信端末装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る通信端末装置及び通信方法の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、同一又は相当要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0019】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る通信端末装置を示すブロック図である。図1に示すように、通信端末装置1Aは、例えば車両Vに設けられた車内マルチメディアシステム100に適用されている。車両Vには、ヘッドユニットU1及びRSE(Rear Seat Entertainment)ユニットU2が搭載されている。ヘッドユニットU1は、DVD2、前席ディスプレイ(第一の端末)3、エンコーダ(符号化手段)4、及び第一通信部5を備えている。RSEユニットU2は、第二通信部6、デコーダ(復号手段)7、及び後席ディスプレイ(第二の端末)8を備えている。
【0020】
DVD2は、DVDディスク、ブルーレイディスク、及び内蔵されたハードディスク等の記憶媒体に記憶された映像データや音声データ等のデータを読み出して端末に送信するものであり、前席ディスプレイ3及びエンコーダ4に接続されている。DVD2は、読み出したデータを前席ディスプレイ3及びエンコーダ4に送信する。
【0021】
前席ディスプレイ3は、データを出力する端末であり、前席に座った乗員が視認できる位置に設けられている。前席ディスプレイ3は、例えば液晶ディスプレイやスピーカ等を含んで構成されている。
【0022】
エンコーダ4は、データを符号化するものである。符号化としては、データの圧縮解凍、データのファイル形式の変更、及び、データの暗号化等が挙げられる。エンコーダ4は、第一通信部5に接続されており、符号化したデータを第一通信部5に送信する。
【0023】
第一通信部5は、RSEユニットU2との間でデータの送受信を行うものであり、車内ネットワークNを介して、第二通信部6に接続されている。第一通信部5は、ヘッドユニットU1に設けられた不図示のクロックに接続されている。
【0024】
車内ネットワークNとしては、IEEEで標準化されているEthernet(登録商標) AVBや、ノード間での時刻同期が可能なネットワークを採用することができる。これにより、車内ネットワークNに接続されたヘッドユニットU1及びRSEユニットU2が、同期した時計(カウンタ値)を持つことが可能となっている。
【0025】
第二通信部6は、ヘッドユニットU1との間でデータの送受信を行うものである。第二通信部6は、RSEユニットU2に設けられた不図示のクロックに接続されている。第二通信部6は、デコーダ7に接続されており、第一通信部5から受信したデータをデコーダ7に送信する。
【0026】
デコーダ7は、エンコーダ4により符号化されたデータを復号するものである。デコーダ7は、後席ディスプレイ8に接続されており、復号したデータを後席ディスプレイ8に送信する。
【0027】
後席ディスプレイ8は、データを出力する端末であり、後席に座った乗員が視認できる位置に設けられている。後席ディスプレイ8は、前席ディスプレイ3と同様、例えば液晶ディスプレイやスピーカ等を含んで構成されている。
【0028】
次に、通信端末装置1Aについて、詳細に説明する。通信端末装置1Aは、DVD2により読み出したデータを前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8から同期させて出力させることを可能とするものである。通信端末装置1Aは、データ読み出し部(データ読み出し手段)10及び遅延時間検出部(遅延時間検出手段)11を備えている。
【0029】
データ読み出し部10は、記憶媒体に記憶されたデータを読み出すものである。データ読み出し部10は、同一の記憶媒体から別々に独立してデータを読み出す、いわゆるランダムアクセスが可能となっている。
【0030】
遅延時間検出部11は、データ読み出し部10で読み出したデータが前席ディスプレイ3に受信されるまでに要する時間と、データ読み出し部10で読み出したデータが後席ディスプレイ8に受信されるまでに要する時間との差である遅延時間を検出するものである。遅延時間検出部11は、例えば、ヘッドユニットU1内に設けられたECU(Electric Control Unit)により構成することができる。遅延時間検出部11は、例えば、DVD2に設けられている。なお、遅延時間検出部11は、DVD2以外の部分に設けられていてもよい。
【0031】
遅延時間検出部11は、データ読み出し部10で読み出したデータをエンコーダ4が符号化するのに要するエンコーダ遅延時間Teを記憶することが可能となっている。エンコーダ遅延時間Teは、エンコーダ4に固有の固定値となっている。また、遅延時間検出部11は、エンコーダ4により符号化されたデータをデコーダ7が復号するのに要するデコーダ遅延時間Tdを記憶することが可能となっている。デコーダ遅延時間Tdは、デコーダ7に固有の固定値となっている。なお、エンコーダ遅延時間Te及びデコーダ遅延時間Tdは、予め遅延時間検出部11に記憶されていてもよいし、エンコーダ4やデコーダ7が車内マルチメディアシステム100に接続されたとき等に、遅延時間検出部11に送信され記憶されてもよい。
【0032】
次に、本実施形態に係る通信端末装置1Aの動作について説明する。図2は、図1の通信端末装置の動作を示すフローチャートであって、本実施形態に係る通信方法を示すものである。
【0033】
図2に示すように、通信端末装置1Aの動作は、遅延時間検出部11がエンコーダ遅延時間Te及びデコーダ遅延時間Tdを保持することから始まる(ステップS10)。次に、遅延時間検出部11は、ヘッドユニットU1及びRSEユニットU2のクロックを同期する時刻同期処理を行う(ステップS12)。
【0034】
図3は、時刻同期処理を示す概念図である。図3に示すように、時刻同期処理では、まず、遅延時間検出部11から時刻同期処理開始の指令を受けた第一通信部5が、ヘッドユニットU1のクロックから現在の時刻である時刻T1を取得し、時刻T1を第二通信部6に送信する。このとき、第一通信部5が時刻T1を送信してから第二通信部6が時刻T1を受信するまで、時間t1がかかる。時刻T1を受信した第二通信部6は、RSEユニットU2のクロックの時刻をT1に設定する。このとき、ヘッドユニットU1のクロックの時刻は、時刻(T1+t1)となる。
【0035】
次に、第二通信部6は、第一通信部5に対して返送の要求を送信する。このとき、第二通信部6が要求を送信してから第一通信部5が要求を受信するまで、時間t1がかかる。要求を受信した第一通信部5は、第二通信部6に対して返送パケットを送信する。このとき、第一通信部5が返送パケットを送信してから第二通信部6が返送パケットを受信するまで、時間t1がかかる。従って、第二通信部6が要求を送信してから第二通信部6が返送パケットを受信するまでの時間RTT=2×t1となる。よって、第二通信部6が返送パケットを受信したとき、RSEユニットU2のクロックの時刻は、時刻(T1+2×t1)となる。
【0036】
以上より、第二通信部6は、ヘッドユニットU1のクロックに対するRSEユニットU2のクロックの遅延は、時間t1であると認識する。そして、第二通信部6は、RSEユニットU2のクロックの時刻を補正し、時刻同期処理が完了する。これにより、ヘッドユニットU1のクロックの時刻、及び、RSEユニットU2のクロックの時刻は、いずれも時刻T3となる。第一通信部5は、遅延時間検出部11に対して、時刻同期処置完了の通知を送信する。
【0037】
図2に戻り、次に、遅延時間検出部11は、車内ネットワーク遅延時間Tnetを測定する車内ネットワーク遅延時間測定処置を行う(ステップS14)。車内ネットワーク遅延時間Tnetは、データが車内ネットワークNを経由するのに要する時間である。
【0038】
図4は、車内ネットワーク遅延時間測定処理を示す概念図である。図4に示すように、車内ネットワーク遅延時間測定処理では、まず、遅延時間検出部11から車内ネットワーク遅延時間測定処理開始の指令を受けた第一通信部5が、ヘッドユニットU1のクロックから現在の時刻である時刻T4を取得し、時刻T4を第二通信部6に送信する。このとき、第一通信部5が時刻T4を送信してから第二通信部6が時刻T4を受信するまで、時間t2がかかる。従って、第二通信部6が時刻T4を受信する際、RSEユニットU2のクロックは時刻(T4+t2)となる。これにより、第二通信部6は、車内ネットワーク遅延時間Tnet=t2と認識する。
【0039】
次に、第二通信部6は、第一通信部5に対して車内ネットワーク遅延時間Tnet=t2との通知を送信する。そして、第一通信部5は車内ネットワーク遅延時間Tnet=t2と設定し、車内ネットワーク遅延時間測定処理が完了する。第一通信部5は、車内ネットワーク遅延時間測定処理完了の通知と共に、車内ネットワーク遅延時間Tnetを遅延時間検出部11に送信する。
【0040】
図2に戻り、次に、遅延時間検出部11は、以下の式(1)により、データ読み出し部10で読み出したデータが前席ディスプレイ3に受信されるまでに要する時間と、データ読み出し部10で読み出したデータが後席ディスプレイ8に受信されるまでに要する時間との差である遅延時間(Tf−Tr)を算出する(ステップS16)。
(Tf−Tr)=(Te+Tnet+Td)・・・(1)
【0041】
次に、DVD2は、再生を開始する(ステップS18)。データ読み出し部10は、後席ディスプレイ8へ送信するためのデータを記憶媒体から読み出し、車内ネットワークNを介して、後席ディスプレイ8へ送信する(ステップS20)。このとき、データ読み出し部10が後席ディスプレイ8へ送信するためのデータを読み出す時刻は、時刻Trとなる。
【0042】
次に、データ読み出し部10は、時刻Trから遅延時間(Tf−Tr)経過後、前席ディスプレイ3へ送信するためのデータを記憶媒体から読み出し、前席ディスプレイ3へ送信する。そして、前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8は、受信したデータを出力する(ステップS22)。
【0043】
このとき、データ読み出し部10が前席ディスプレイ3へ送信するためのデータを読み出す時刻は、時刻Tfとなる。また、前席ディスプレイ3からデータが出力される時刻、及び、後席ディスプレイ8からデータが出力される時刻も、それぞれ時刻Tfとなり、前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8からデータが同期して出力される。そして、一連の動作は終了する。
【0044】
以上、本実施形態に係る通信端末装置1A及び通信方法では、遅延時間検出部11により遅延時間(Tf−Tr)が検出され、当該遅延時間(Tf−Tr)に基づき、前席ディスプレイ3にデータが受信される時刻Tfと、後席ディスプレイ8にデータが受信される時刻Tfとが一致するように、前席ディスプレイ3へ送信するためのデータを読み出す時刻Tfと、後席ディスプレイ8へ送信するためのデータを読み出す時刻Trとが調整される。従って、バッファに一時的にデータを保存しなくても、前席ディスプレイ3にデータが受信される時刻Tfと、後席ディスプレイ8にデータが受信される時刻Tfとが一致し、前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8から同期させてデータを出力することができる。よって、バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る通信端末装置1A及び通信方法では、上述のように、データ読み出し部10と後席ディスプレイ8との間の通信経路に、データ読み出し部10で読み出したデータを符号化するエンコーダ4と、当該エンコーダ4で符号化されたデータを復号するデコーダ7とが設けられており、遅延時間検出部11は、エンコーダ4がデータの符号化に要するエンコーダ遅延時間Teと、エンコーダ4により符号化されたデータをデコーダ7が復号するのに要するデコーダ遅延時間Tdとを考慮して、遅延時間(Tf−Tr)を検出する。そして、後席ディスプレイ8には、記憶媒体から読み出したデータの符号化、及び、当該符号化されたデータの復号を介して、データが送信されている。ここで、符号化及び復号を介すると、遅延時間が長くなって大容量のバッファが必要となるため、バッファを必要とすることなく、複数のデータを同期させて出力することができるという本発明の効果がより好適に発揮される。
【0046】
[第二実施形態]
図5は、本発明の第二実施形態に係る通信端末装置を示すブロック図である。図2に示すように、本実施形態に係る車内マルチメディアシステム200に適用された通信端末装置1Bが、第一実施形態に係る通信端末装置1A(図1参照)と異なる点は、バッファ(記憶手段)12及びセレクタ13を備える点である。
【0047】
バッファ12は、データ読み出し部10と接続されており、データ読み出し部10が読み出した所定時間分のデータを一時的に記憶することが可能となっている。この所定時間は、バッファ一時記憶可能時間Tbufとされており、遅延時間検出部11に記憶される。なお、バッファ一時記憶可能時間Tbufは、予め遅延時間検出部11に記憶されていてもよいし、バッファ12が車内マルチメディアシステム200に接続されたとき等に、遅延時間検出部11に送信され記憶されてもよい。
【0048】
セレクタ13は、DVD2、バッファ12、及び前席ディスプレイ3と接続されており、DVD2から送信されるデータ、及び、バッファ12から送信されるデータのいずれか一方を、前席ディスプレイ3に送信する。
【0049】
次に、本実施形態に係る通信端末装置1Bの動作について説明する。図6は、図5の通信端末装置の動作を示すフローチャートであり、本実施形態に係る通信方法を示すものである。
【0050】
図6に示すように、通信端末装置1Bの動作は、遅延時間検出部11が、エンコーダ遅延時間Te、デコーダ遅延時間Td、及びバッファ一時記憶可能時間Tbufを保持することから始まる(ステップS30)。次に、遅延時間検出部11は、時刻同期処理を行う(ステップS32)。このステップS32は、図2のステップS12と同様に実行される。
【0051】
次に、遅延時間検出部11は、車内ネットワーク遅延時間測定処置を行う(ステップS34)。このステップS34は、図2のステップS14と同様に実行される。
【0052】
次に、遅延時間検出部11は、遅延時間(Tf−Tr)を算出する(ステップS36)。このステップS36は、図2のステップS16と同様に実行される。
【0053】
次に、遅延時間検出部11は、遅延時間(Tf−Tr)がバッファ一時記憶可能時間Tbufよりも大きいか否かを判定する(ステップS38)。
【0054】
ステップS38にて、遅延時間(Tf−Tr)がバッファ一時記憶可能時間Tbufよりも大きいと判定された場合、DVD2は、再生を開始する(ステップS40)。データ読み出し部10は、後席ディスプレイ8へ送信するためのデータを時刻Trに記憶媒体から読み出し、車内ネットワークNを介して、後席ディスプレイ8へ送信する(ステップS42)。
【0055】
次に、データ読み出し部10は、前席ディスプレイ3へ送信するためのデータを時刻Tfに記憶媒体から読み出し、前席ディスプレイ3へ送信する。そして、前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8は、時刻Tfにデータを出力する(ステップS44)。ステップS40,S42,S44は、それぞれ図2のステップS18,S20,S22と同様に実行される。そして、一連の動作は終了する。
【0056】
一方、ステップS38にて、遅延時間(Tf−Tr)がバッファ一時記憶可能時間Tbufよりも大きくないと判定された場合、DVD2は、再生を開始する(ステップS46)。次に、データ読み出し部10は、データを記憶媒体から読み出し、バッファ12及びエンコーダ4に送信する(ステップS48)。このとき、データ読み出し部10がデータを読み出す時刻は、時刻Trとなる。
【0057】
次に、バッファ12は、時刻Trから遅延時間(Tf−Tr)経過後、一時記憶した遅延時間(Tf−Tr)分のデータを前席ディスプレイ3に送信する。前席ディスプレイ3は、バッファ12から受信したデータを出力する。また、後席ディスプレイ8は、車内ネットワークNを介して受信したデータを出力する(ステップS50)。このとき、前席ディスプレイ3からデータが出力される時刻、及び、後席ディスプレイ8からデータが出力される時刻は、それぞれ時刻Tfとなり、前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8からデータが同期して出力される。そして、一連の動作は終了する。
【0058】
このような本実施形態に係る通信端末装置1B及び通信方法は、第一実施形態に係る通信端末装置1Aと略同様な効果を奏する。加えて、本実施形態に係る通信端末装置1B及び通信方法では、データ読み出し部10で読み出したデータを記憶可能なバッファ12を備え、遅延時間(Tf−Tr)がバッファ一時記憶可能時間Tbuf以下の場合には、バッファ12によりデータを記憶し、前席ディスプレイ3にデータが受信される時刻と、後席ディスプレイ8にデータが受信される時刻とが一致するように、当該記憶されたデータを前席ディスプレイ3に送信するため、遅延時間(Tf−Tr)がバッファ一時記憶可能時間Tbufより短い場合には、バッファ12によりデータを一時的に記憶することで、前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8からデータを同期させて出力し、一方、遅延時間(Tf−Tr)がバッファ一時記憶可能時間Tbufより長く、記憶すべきデータの容量がバッファ12の容量を超えるような場合等には、遅延時間(Tf−Tr)に基づきデータを読み出す時刻を調整する方式に移行することができる。これにより、本実施形態に係る通信端末装置1B及び通信方法は、車内マルチメディアシステム200内に新しい機器が追加された場合や、車内マルチメディアシステム200の構成が変化して車内ネットワーク遅延時間Tnetの値が大きくなった場合等に対応することが可能となる。
【0059】
以上、本発明の通信端末装置及び通信方法に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、通信端末装置1A,1Bに接続されている端末は、前席ディスプレイ3及び後席ディスプレイ8の二つだが、これら以外の端末が更に接続されてもよい。
【0060】
また、例えば、上記実施形態に係る通信端末装置1A,1B及び通信方法は、それぞれ車内マルチメディアシステム100,200に適用されているが、DVD、ディスプレイ、スピーカ等をネットワーク経由で相互に接続した他のマルチメディアシステムや、CATV等に適用も可能であり、要は、複数の端末に対してデータの送信を行うシステムに対して適用が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B…通信端末装置、3…前席ディスプレイ(第一の端末)、4…エンコーダ(符号化手段)、7…デコーダ(復号手段)、8…後席ディスプレイ(第二の端末)、10…データ読み出し部(データ読み出し手段)、11…遅延時間検出部(遅延時間検出手段)、12…バッファ(記憶手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末に対してデータの送信が可能な通信端末装置において、
記憶媒体からデータを読み出すデータ読み出し手段と、
前記データ読み出し手段で読み出したデータが第一の端末に受信されるまでに要する時間と、前記データ読み出し手段で読み出したデータが第二の端末に受信されるまでに要する時間との差である遅延時間を検出する遅延時間検出手段と、を備え、
前記データ読み出し手段は、前記第一の端末にデータが受信される時刻と前記第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、前記遅延時間検出手段により検出された前記遅延時間に基づき、前記第一の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻と前記第二の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻とを調整すること、
を特徴とする通信端末装置。
【請求項2】
前記データ読み出し手段で読み出したデータを記憶可能な記憶手段を備え、
前記遅延時間が所定時間以下の場合には、前記記憶手段によりデータを記憶し、前記第一の端末にデータが受信される時刻と、前記第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、当該記憶されたデータを前記第一の端末又は前記第二の端末に送信する請求項1に記載の通信端末装置。
【請求項3】
前記データ読み出し手段と前記第一の端末との間の通信経路、及び、前記データ読み出し手段と前記第二の端末との間の通信経路の少なくとも一方には、前記データ読み出し手段で読み出したデータを符号化する符号化手段と、当該符号化手段で符号化されたデータを復号する復号手段とが設けられており、
前記遅延時間検出手段は、前記符号化手段がデータの符号化に要する時間と、前記符号化手段により符号化されたデータを前記復号手段が復号するのに要する時間とを考慮して、前記遅延時間を検出する請求項1又は2に記載の通信端末装置。
【請求項4】
複数の端末に対してデータを送信する通信方法において、
記憶媒体から読み出したデータが第一の端末に受信されるまでに要する時間と、記憶媒体から読み出したデータが第二の端末に受信されるまでに要する時間との差である遅延時間を検出し、
前記第一の端末にデータが受信される時刻と前記第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、前記遅延時間に基づき、前記第一の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻と前記第二の端末へ送信するためのデータを読み出す時刻とを調整すること、
を特徴とする通信方法。
【請求項5】
前記遅延時間が所定時間以下の場合には、記憶媒体から読み出したデータを記憶し、前記第一の端末にデータが受信される時刻と、前記第二の端末にデータが受信される時刻とが一致するように、当該記憶されたデータを前記第一の端末又は前記第二の端末に送信する請求項4に記載の通信方法。
【請求項6】
記憶媒体から読み出したデータの符号化に要する時間と、当該符号化されたデータの復号に要する時間とを考慮して、前記遅延時間を検出し、
前記第一の端末、及び、前記第二の端末の少なくとも一方には、記憶媒体から読み出したデータの符号化、及び、当該符号化されたデータの復号を介して、データを送信する請求項4又は5に記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−90187(P2013−90187A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229698(P2011−229698)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】